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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1277104
審判番号 不服2012-13906  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-20 
確定日 2013-07-25 
事件の表示 特願2008-301405号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月10日出願公開、特開2010-124974号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成20年11月26日の特許出願であって、平成24年4月20日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年4月24日)、これに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年7月20日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の平成24年2月27日付け手続補正書に
「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入球を条件として、遊技者に付与される遊技利益の種類を示す特別図柄を決定する特別図柄決定手段と、該特別図柄決定手段によって決定された特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示制御手段と、該特別図柄の変動表示中に実行される演出の態様ごとに分類される複数の演出モードの中から1の演出モードを決定し、該演出モードに基づいて演出を実行する演出制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記遊技機の所定箇所に設けられ、前記遊技機の任意の部位に加えられた圧力の変化をアナログの電圧信号に変換して出力する検出手段と、
前記検出手段から出力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換して出力するアナログ-デジタル変換器と、
前記アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号から、前記遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分を抽出する第1フィルタ手段と、
前記第1フィルタ手段から出力される前記第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号が所定の第1条件を満たすと前記圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段と、
を備え、
前記演出制御手段は、前記第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて前記複数の演出モードの中から1の演出モードを決定することを特徴とする遊技機。」とあったものを、
「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入球を条件として、遊技者に付与される遊技利益の種類を示す特別図柄を決定する特別図柄決定手段と、該特別図柄決定手段によって決定された特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示制御手段と、該特別図柄の変動表示中に実行される演出の態様ごとに分類される複数の演出モードの中から1の演出モードを決定し、該演出モードに基づいて演出を実行する演出制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記遊技機の所定箇所に設けられ、前記遊技機の任意の部位に加えられた圧力の変化をアナログの電圧信号に変換して出力する検出手段と、
前記検出手段から出力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換して出力するアナログ-デジタル変換器と、
前記アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号を第1のデジタルフィルタで濾波することで、当該デジタルの電圧信号から、前記遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号を抽出する第1フィルタ手段と、
前記第1フィルタ手段から出力される前記第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号が所定の第1条件を満たすと前記圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段と、
を備え、
前記演出制御手段は、前記第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて前記複数の演出モードの中から1の演出モードを決定することを特徴とする遊技機。」と補正するものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、第1フィルタ手段について、本件補正前に「前記アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号から、前記遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分を抽出する第1フィルタ手段」とあったものを「前記アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号を第1のデジタルフィルタで濾波することで、当該デジタルの電圧信号から、前記遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号を抽出する第1フィルタ手段」と限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-212313号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審により付与。以下同様。)。
ア 「【請求項1】
遊技者が遊技中に物理的に操作部位を動かして信号を発生させる操作スイッチ手段と、
該操作スイッチ手段が操作されたときに、該操作部位に印加された加速度を検出する加速度センサと、
該加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を越えたとき、該操作部位の強打操作に対し、注意を促す表示、または音声を発生する警報手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を越えたとき、遊技中の遊技動作の少なくとも一部を中止する遊技動作中止手段を、さらに設けたことを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
始動入賞口に遊技球が入賞すると、複数の図柄を変動表示する図柄変動表示装置と、抽選用の乱数を取得して大当り等の抽選を行なう大当り抽選手段と、該抽選手段によりリーチ演出などを含む遊技演出の実施が決定された場合、図柄変動表示装置に複数の遊技演出を選択的に表示する演出実行手段と、遊技者が図柄変動表示装置に表示される遊技演出を選択するために操作される操作スイッチと、を備えたパチンコ遊技機において、
該操作スイッチには加速度センサが設けられると共に、操作スイッチが有効なときに点灯表示される表示手段が設けられ、該操作スイッチの操作押圧力に応じて加速度センサから出力される信号に基づき遊技演出を決定する遊技演出決定手段が設けられ、該加速度センサから設定値を越える加速度信号が出力された場合、該操作スイッチが強打されたとして前記図柄変動表示装置に注意表示を行うと共に、遊技演出表示を中止する演出中止手段を設けたことを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項4】
信頼度の異なる複数のリーチ演出を予め記憶しておき、前記操作スイッチの操作時に加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を超えた場合、信頼度の高いリーチ演出のみを表示し、加速度が低いほど各種の信頼度のリーチ演出を表示することを特徴とする請求項3記載のパチンコ遊技機。
」(【特許請求の範囲】)
イ 「本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、強打されやすい操作スイッチの破損を未然に防止し、また、操作押圧力に応じて、異なった遊技動作を行うことができる遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明の請求項1の遊技機は、遊技者が遊技中に物理的に操作部位を動かして信号を発生させる操作スイッチ手段と、該操作スイッチ手段が操作されたときに、該操作部位に印加された加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を越えたとき、該操作部位の強打操作に対し、注意を促す表示を行い、または音声を発生する警報手段と、を備えたことを特徴とする。」(段落【0006】?【0007】)
ウ 「上記請求項1の遊技機では、遊技者が遊技中に操作スイッチ手段を操作したとき、加速度センサによって、操作部位に印加された加速度つまり、操作部位を操作したときに操作部位に印加される加速度が検出される。そして、加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を越えたとき、警報手段の動作により、操作部位の強打操作に対し、「強く押さないでください」などの注意を促す表示または音声を発生させる。これにより、遊技者に対し操作スイッチ手段への強打に対する注意を促して、強打されやすい操作スイッチ手段の破損を未然に防止し、スイッチ類の故障を少なくすると共に、その寿命を延ばすことができる。
さらに、上記請求項3のパチンコ遊技機では、遊技中に、始動入賞口に球が入賞すると、抽選用の乱数を取得して大当り抽選を行なうと共に、図柄変動表示装置において複数の図柄(例えば3列の図柄)の変動表示が開始される。大当り抽選によって決定された、外れ、外れリーチ、当りリーチ、大当りなどの抽選結果に応じて図柄変動と遊技演出が決定されて、図柄変動表示装置にその遊技演出が図柄変動と共に表示される。
図柄変動の開始後、操作スイッチの有効を示す点灯表示が行われ、その点灯表示を視認した遊技者が操作スイッチをオン操作する。操作スイッチのオン操作時に、加速度センサからその操作押圧力を示す信号が出力され、リーチの際には、その信号に基づき、表示するリーチ演出の有無が決定される。例えば、リーチ信頼度の異なる複数のリーチ演出が予め記憶され、抽選によって表示するリーチ演出が決定されるが、例えば操作スイッチの操作時に加速度センサが検出する加速度の閾値を低い方から第1設定値、第2設定値、第3設定値を設定し、検出された加速度が第2設定値と第3設定値の間にあって比較的大きい場合は、信頼度の高いリーチ演出のみを表示し、加速度が第1設定値と第2設定値の間にあって中程度の場合、信頼度が中程度以上のリーチ演出を表示し、加速度が第1設定値より低く比較的弱い場合、信頼度が低いリーチ演出から高い演出まで全てのリーチ演出を表示可能とする。
さらに、遊技者が操作スイッチを操作した際の操作押圧力の加速度が第3設定値以上であってスイッチを強打したような場合、「強く押さないでください」などの注意表示を図柄変動表示装置に行い、リーチ演出は中止する。
このように、遊技者は、操作スイッチの操作押圧力に応じて、リーチ演出などの遊技演出を、好みに合わせて自由に選択することができる。また、遊技者が操作スイッチを強打した場合には、リーチ演出表示が中止されて、注意表示がなされるため、操作スイッチの強打を効果的に止めさせることができ、操作スイッチの故障を低減し、その寿命を延ばすことができる。」(段落【0011】?【0015】)
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はパチンコ遊技機の正面図を示し、図2は操作スイッチの断面図を示し、図3は遊技機の制御系の構成を示すブロック図を示している。
遊技機の本体枠1には図示しない中枠が開閉可能に取り付けられ、中枠の前面に前面枠2が開閉可能に取り付けられている。中枠の中央部には、遊技盤5が着脱可能に取り付けられ、また、中枠の下部中央には、球発射装置10が設置され、遊技盤5上には中央の遊技領域を囲うように外レール3と内レール4が配設されている。
球発射装置10の正面側つまり前面枠2の内側には、図1のように、受け皿7から送られる遊技球を1個ずつ発射装置に供給するための球送り装置12が配設されている。図1のように、前面枠2の右側下部に発射ハンドル9が設けられ、その左側には、リーチ演出を選択するための操作スイッチ6が設けられている。
操作スイッチ6は、図2に示すように、押ボタン式のスイッチであり、押ボタン61が上下動可能に配設され、内部にコイルばね64が上方にボタンを付勢して配設されている。押ボタン61の下側に可動接点と固定接点とからなるスイッチ接点62が設けられ、さらに、固定接点の下側に、加速度センサ63が設けられている。
この加速度センサ63は、遊技者が押ボタン61を押圧操作した際の押ボタン61にかかる加速度を検出するもので、例えば検出した加速度に応じて抵抗値を変化させるピエゾ抵抗素子によって構成される。そのピエゾ抵抗素子は、例えば他の抵抗器と共にブリッジ接続され、ブリッジ回路には定電圧電源から電圧が印加され、ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化したときに変化するブリッジ回路の電圧を、検出信号として出力する。また、押ボタン61は透明プラスチックにより構成され、その内部には操作スイッチ6の操作が有効となったとき、点灯する表示用LED65が内蔵されている。
なお、操作スイッチ6には、上記のようにスイッチ接点62と加速度センサ63を設けて構成したが、操作スイッチを加速度センサのみで構成することもできる。その場合、操作スイッチの押ボタンが押圧されたときに加速度センサから出力される信号が所定レベル以上の場合、オン信号として入力する構成とすればよい。さらに、中枠1の内側左部に、入賞時に賞球を払い出す賞球払出装置11が縦に取り付けられ、賞球払出装置11の下部には賞球送出口が賞球を受け皿7に送るように設けられている。」(段落【0016】?【0021】)
オ 「図2に示すように、パチンコ遊技機の制御系は、パチンコゲームの基本的な動作を制御し始動条件成立時には図柄変動コマンドを出力する主制御部20と、主制御部20からの図柄変動コマンドを入力し図柄の変動表示制御を行う図柄制御部30と、主制御部20からコマンドデータを入力し音声の発生を制御する音声制御部40と、主制御部20からのコマンドデータを入力し装飾ランプなどの点灯を制御するランプ制御部50とから構成される。
主制御部20は、基本的にはCPUを主要部としたCPUユニットから構成され、予め記憶されたプログラムに基づき各種の処理を実施するCPU21、そのプログラムデータを記憶する読み出し専用のROM22、CPU21のワークエリアとして動作し、データ等を一時的に記憶し、入賞球数をカウントする領域、ラウンド数をカウントする領域を設けた読み書き可能なRAM23、及び入出力回路24を有して構成される。
入出力回路24には、上記の始動入賞口検出器14、大入賞口検出器18、継続入賞口検出器19、普通入賞口検出器12aなどが入力系に接続され、大入賞口ソレノイド11cと始動入賞口ソレノイドがその出力系に接続される。
主制御部20のCPU21は、チューリップや大入賞口11の開閉部材11a開閉などの制御を行うと共に、遊技中に、始動入賞口13に遊技球が入賞するなどして始動条件が成立すると、乱数発生器から例えば大当り抽選用の乱数を取得して、大当り抽選を行ない、さらにその乱数が大当りの場合、通常図柄の大当りか或いは特定図柄の大当りかを決定し、外れ乱数の場合、リーチ、リーチ予告などリーチ演出の決定を行うと共に、はずれの停止図柄を決定する。
また、主制御部20のCPU21は、大当り乱数を取得し、所定図柄に揃って変動図柄が停止して、大当りが確定したとき、大当り信号を発生し、所定の大当り処理を実行する。さらに、CPU21は、それらの抽選結果に基づき、図柄変動コマンドを、図柄制御部30、音声制御部40、及びランプ制御部50に出力する。これらの図柄変動コマンドを入力した図柄制御部30、音声制御部40、及びランプ制御部50は、予め記憶された演出プログラムを選択・決定して実行するように構成される。
さらに、図柄変動表示装置10の図柄変動を制御する図柄制御部30は、主制御部20と同様に、CPUユニットを主要部として構成され、CPU31は、ROM32に予め記憶されたプログラムに基づき、パチンコゲームの進行に応じて、図柄変動表示装置10の表示器に図柄変動を行う。つまり、始動入賞口13に入賞した際などの始動条件の成立時には、図柄変動を開始し、主制御部20から送られた図柄変動コマンドに基づき演出プログラムを決定し、その演出プログラムに対応した図柄変動プログラムを実行するためのデータをROM32から読み出し、図柄変動表示装置10の表示器にそれを表示するように制御を行う。
例えば、CPU21が乱数発生器から取得した乱数による抽選結果がリーチ予告、リーチであった場合、図柄制御部30のCPU31は、そのためのリーチ演出プログラム、リーチ予告演出プログラムなどをROM32から読み出し、図柄変動表示装置10の表示器にそれを表示するように制御する。
さらに、CPU31は、始動入賞時に遊技者が操作スイッチ6をオン操作したとき、その操作スイッチ6の操作押圧力に応じて、つまり加速度センサ63によって検出された加速度信号を入力し、その加速度に応じてリーチ演出を決定するように動作する。例えば、信頼度を20%、30%、50%と各々相違して設定された複数のリーチ演出が予め記憶され、抽選によりそれらのリーチ演出の何れかが決定された場合、CPU31は、操作スイッチ6がオン操作されたとき、操作時の押ボタン61の加速度に応じて、各信頼度のリーチ演出の有無を決定する処理を行なう。
この処理では、例えば信頼度20%のリーチ演出の場合、予め決められた第1設定値より低い加速度の場合(弱の押圧の場合)のみ演出を実施し、加速度が第1設定値以上の場合には演出を実施しない。また、信頼度30%のリーチ演出の場合、第2設定値より低い加速度の場合(弱と中の押圧の場合)のみ演出を実施し、加速度が第2設定値以上の場合(強の押圧の場合)には演出を実施しない。信頼度50%のリーチ演出の場合、全ての加速度の場合に実施するようにしている。つまり、信頼度が50%と高いリーチでは、操作スイッチ6の全ての操作押圧力の場合に演出を実施し、信頼度が20%と低いリーチでは、操作スイッチ6の操作押圧力が第1設定値未満と低い場合にのみ演出が実施されるように動作する。このような複数のリーチ演出と検出された加速度との関係は、予めテーブルデータとして図柄制御部30のROM32に記憶される。
さらに、音声制御部40は、上記主制御部20と同様に、CPUユニットを主要部として構成され、CPU41は、ROM42に予め記憶されたプログラムに基づき、パチンコゲームの進行に応じて、スピーカ45から各種の音声を発生させる。始動入賞口13に入賞した際などの始動条件の成立時には、図柄制御部30から送られた図柄変動コマンドに基づき、演出プログラムを決定し、その演出プログラムに対応した音声を発生するためのデータをROM42から読み出し、スピーカ45から音声を発生させる。また、CPU41は、操作スイッチ6が強打された場合、警告手段として動作し、『強打しないでください』などの音声を発生させるように動作する。」(段落【0027】?【0036】)
カ 「次に、上記構成のパチンコ遊技機の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。パチンコゲームの遊技中に、遊技球が始動入賞口13に入賞すると、始動入賞検出器14がこれを検出し、始動入賞信号をCPU21に送る。
このとき、CPU21は、ステップ100にて、始動条件成立と判定して、次にステップ110に進み、ここで、大当り抽選用の乱数を取得し、次のステップ120で、取得した乱数に基づき、乱数割付テーブルなどを参照して大当り抽選を行い、大当り、リーチ予告、リーチなどの入賞役、リーチ演出または外れなどを決定する。そして次に、ステップ130で、それらの入賞役、リーチ演出などに応じて図柄変動表示装置10に表示する演出プログラムを決定する。
次に、CPU21は、ステップ140で、図柄制御部30に図柄変動表示用の信号を出力し、図柄変動表示装置10に図柄変動表示を開始させ、さらに、操作スイッチ6に内蔵された表示用LED65を点灯表示させ、操作スイッチ6の操作が有効であることを表示する。これによって、遊技者には操作スイッチ6をオン操作可能なことが認識される。
これにより、図柄変動表示装置10には、3列の図柄が上から下に流れるように変動表示され、次のステップ150で、所定の図柄変動時間が経過したか否かを判定し、図柄変動時間が経過するまでは、次にステップ160に進み、下部に設けられた操作スイッチ6がオン操作されたか否かを判定する。操作スイッチ6がオン操作されない場合は再びステップ150に戻り、上記ステップ150と160の処理を繰り返す。
このとき、遊技者が操作スイッチ6を押した場合、ステップ160で、操作スイッチ6がオン操作されたと判定し、次にステップ170に進み、上記ステップ130で決定された変動プログラムと操作止スイッチ6の操作押圧力に応じて、表示するリーチ演出などの実施の有無を決定し、リーチ演出がある場合はそのリーチ演出が図柄変動表示装置10に表示される。
例えば、上記ステップ130で抽選に基づき決定された演出プログラムが、信頼度20%のリーチ演出の場合であって、操作スイッチ6の操作押圧力(加速度センサ63により検出された加速度)が、予め決められた第1設定値より低い加速度の場合(弱の場合)、そのリーチ演出を実施する。しかし、その加速度が第1設定値以上の場合にはリーチ演出は実施されない。
また、ステップ130で決定された演出プログラムが、信頼度30%のリーチ演出の場合であって、操作スイッチ6の操作押圧力が第2設定値より低い加速度の場合(弱と中の場合)には、そのリーチ演出を実施し、加速度が第2設定値以上の場合(強の場合)には演出を実施しない。
また、ステップ130で決定された演出プログラムが、信頼度50%のリーチ演出の場合には、全ての加速度の場合にそのリーチ演出を実施する。このように、信頼度が50%と高いリーチでは、操作スイッチ6の全ての操作押圧力の場合にリーチ演出を実施し、信頼度が20%と低いリーチでは、操作スイッチ6の操作押圧力が第1設定値未満と低い場合にのみ、リーチ演出が実施される。
そして次に、ステップ180に進み、操作スイッチ6が強打されたか否かを判定し、加速度センサ63から出力された操作スイッチ6の操作時の加速度信号が上記第2設定値より高い第3設定値以上の場合、スイッチ6の押ボタン61が強打されたと判定し、次のステップ190にて、図柄変動表示装置10に「強打しないでください」などの注意表示を行なうと共に、リーチ演出を中止する。
これにより、遊技者が操作スイッチ6を強打した場合には、リーチ演出表示が中止されて、注意表示がなされるため、操作スイッチの強打を効果的に止めさせることができ、操作スイッチの故障を未然に防止することができる。」(段落【0038】?【0047】)

上記ア?カの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「始動入賞口13に遊技球が入賞するなどして始動条件が成立すると大当り抽選を行ない、大当りの場合、通常図柄の大当りか或いは、特定図柄の大当りかを決定し、外れの場合、外れの停止図柄を決定する主制御部20のCPU21と、
大当りなどの抽選結果に応じて図柄変動と遊技演出を決定し、図柄変動表示装置10の表示器にその遊技演出を図柄変動と共に表示制御する図柄制御部30のCPU31とから構成されるパチンコ遊技機において、
遊技者が操作スイッチ6の押ボタン61を押圧操作した際の押ボタン61にかかる加速度を、操作押圧力を示す信号として検出するピエゾ抵抗素子によって構成される加速度センサ63と、ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化したときに変化する電圧を検出信号として出力する、ピエゾ抵抗素子が接続されたブリッジ回路とを備え、
図柄制御部30のCPU31は、加速度センサ63により検出された加速度が第2設定値以上で第3設定値未満の場合、押圧を『強』と判定し、加速度が第1設定値以上で第2設定値未満の場合、押圧を『中』と判定し、加速度が第1設定値未満の場合、押圧を『弱』と判定し、また、操作スイッチ6がオン操作されたときに、加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を超えると、予め記憶された信頼度の異なる複数のリーチ演出から、信頼度の高いリーチ演出のみを図柄変動表示装置10の表示器に表示し、加速度が低いほど各種の信頼度のリーチ演出を図柄変動表示装置10の表示器に表示するパチンコ遊技機。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-267977号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
機械的振動を電気的に捕らえて加速度に応じた信号値を出力する加速度センサと、
揺れによる低い衝撃周波数の信号に対して相対的に高い増幅度で信号増幅されるよう周波数特性が設定され、打撃による高い衝撃周波数の信号に対して前記低い衝撃周波数の信号の場合よりも低減された増幅度で信号出力されるよう周波数特性が設定され、前記加速度センサよりの信号を受け、その信号周波数に応じた信号値を出力する周波数特性設定回路と、
この周波数特性設定回路より出力される信号により衝撃を検出する衝撃検出回路と、を備え、
前記低い衝撃周波数に対しては低い加速度値の検出で、前記打撃による高い衝撃周波数に対しては高い加速度値の検出で、それぞれ衝撃を検出することを特徴とする衝撃センサ。
【請求項2】
前記周波数特性設定回路は、揺れによる低い衝撃周波数の信号に対して相対的に高い増幅度で信号増幅し、打撃による高い衝撃周波数の信号に対して前記低い衝撃周波数の信号の場合よりも低減された増幅度で信号出力するローパス増幅回路であることを特徴とする請求項1記載の衝撃センサ。
【請求項3】
前記周波数特性設定回路は、ローパス増幅回路の前段に、前記低い衝撃周波数の内、所定値以下の周波数の信号を低減し、その周波数を超える周波数の信号をパスするハイパスフィルタを備えることを特徴とする請求項2記載の衝撃センサ。」(【特許請求の範囲】)
イ 「この発明はパチンコ遊戯に於ける打撃や揺らしによる不正操作を検出し、ゲーム機の不正遊戯を防止するゲーム機不正監視用の衝撃センサに関する。」(段落【0001】)
ウ 「図6に於いてf1?f5はパチンコ台の建付けを揺らす場合に於ける振動周波数帯を示す、f6或いはf7以上の周波数はパチンコ台を打撃した場合の振動周波数帯を示し、又f1或いはf2以下の周波数は重量車両等が店の前を通過する場合の主な低周波数帯を示す。加速度センサ、つまりピックアップ3の出力は、一般的には図5に示すように周波数に無関係に一定の加速度に対して出力電圧は、一定である。これに対し、ここでは、ピックアップ3より後段の回路部で周波数特性に加工を施す設定を行い、周波数f1?f5の揺れによる振動周波数帯では、検出加速度値をg1?g2と低く、周波数f6以上の打撃による振動周波数帯では検出加速度値をg3以上と高く設定している。
次に上記した図6に示す振動周波数と加速度の関係の特性を実現する回路部を持つ衝撃センサの回路ブロック図を図7に示す。この衝撃センサの回路部は、上記したピックアップ3と、第1のハイパスフィルタ12と、第1のローパス増幅回路13と、第2のハイパスフィルタ14と、第2のローパス増幅回路15と、ウインドーコンパレータ16と、OFF遅延タイマ回路17と、出力回路18と、各回路に電源電圧を供給する定電圧回路19とから構成されている。
この衝撃センサ回路において、加速度ピックアップ3から出力される周波数特性のフラットな信号はf1或いはf2以下の低周波数帯は第1及び第2のハイパスフイルタ12、14でカット減衰される。この低周波数帯のカットされた信号(f1或いはf2を超える周波数帯の信号)は、第1、第2のローパス増幅回路13,15で、揺れによる周波数帯のf1?f5の周波数帯が大きく増幅され検出感度が高められるとともに、それ以上(f6以上)の周波数帯は大きく増幅しないように構成され、高い周波数(f6以上)の検出感度は低下し大きな加速度値しか検出しないようになっている。その後は、図6に示す加速度値の検出される時にウインドウーコンパレータ16は、衝撃検出を出力する。」(段落【0037】?【0038】)

上記ア?ウの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「機械的振動を電気的に捕らえて加速度に応じた信号値を出力する加速度センサと、
加速度センサよりの信号を受け、その信号周波数に応じた信号値を出力する周波数特性設定回路と、
周波数特性設定回路より出力される信号により衝撃を検出する衝撃検出回路とを備えたパチンコ遊戯機の衝撃センサにおいて、
周波数特性設定回路は、低い衝撃周波数の内、重量車両等が店の前を通過する場合の主な低周波数帯を示す、f1或いはf2以下の周波数である所定値以下の周波数の信号を低減し、その周波数を超える周波数の信号をパスするハイパスフィルタを備え、
低い衝撃周波数に対しては低い加速度値の検出で、打撃による高い衝撃周波数に対しては高い加速度値の検出で、それぞれ衝撃を検出するパチンコ遊戯機の衝撃センサ。」

(3)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-174956号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「複数種類の識別情報を変動表示する表示装置と、表示装置における表示演出の態様がそれぞれ異なる複数の遊技演出モードの何れかを手動入力操作により選択変更する演出モード変更入力手段と、遊技の進行を統括する主制御装置からの演出制御コマンドを受信して、選択された演出モードで演出制御コマンドに応じた変動パターンにより表示演出を実行する副制御装置とを有する遊技機において、
前記副制御装置は、
現在設定されている遊技演出モードを記憶する遊技演出モード記憶手段と、
前記複数の遊技演出モード毎に設けられ、演出制御コマンドに対応した変動パターンが予め記憶されている変動パターン記憶手段と、
前記演出モード記憶手段から現在設定されている演出モードを読出し、その読出された演出モードと演出制御コマンドとで決定される変動パターンを前記変動パターン記憶手段から読出して、その変動パターンで表示演出を実行する遊技演出モード実行手段と、
前記遊技演出モード変更入力手段からのモード選択信号に応じて、前記演出モード記憶手段の記憶内容を変更する演出モード変更切換手段と、
待機画面表示期間及び少なくとも変動表示中の何れかの期間においてのみ、前記演出モード変更切換手段を能動化し、それ以外の期間は前記演出モード変更切換手段を不能動化する演出モード変更切換制御手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。」(【特許請求の範囲】)
イ 「本発明は、パチンコ機やスロットマシンに代表される遊技機に関するものである。」(段落【0001】)
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成の遊技機では、待機画面中にのみ、演出モード選択用ボタンの操作が可能となっていた。従って、変動表示中には演出モード選択用ボタンを操作しても受け付けられず、変動表示が終了するまで待たなければならなかった。そのため、上記構成のパチンコ機では、保留球がある場合には保留球がなくなるまで(変動表示が終了するまで)演出モード選択用ボタンの操作ができず、演出モードの変更を希望する遊技者は遊技を中止しなければならず、これに起因して以下に示すような問題を有していた。
即ち、一般に、長時間にわたって大当たりが出現しない場合には、遊技者はいらいら感が増し、特に、高頻度でリーチとなるものの、大当たりが出現しない場合にはいらいら感が増長される。したがって、このような場合には、演出モードを変更して遊技したいものである。ところが、上記構成のパチンコ機では、演出モードを変更するには保留球がなくなるまで遊技を中止しなければならず、いらいら感に拍車をかけることになりかねないという問題を有していた。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、遊技中止に起因したいらいら感を解消することが可能な遊技機を提供することを目的としている。」(段落【0003】?【0005】)
エ 「さらに、灰皿22の上方には、演出モード選択ボタン900が設けられている。この演出モード選択ボタン900は、第1図柄主表示装置42での表示演出の態様が異なる複数の演出モードを選択するためのボタンである。本実施の形態では、3つの演出モードが設定されている。演出モード1は、ナチュラルステージモードとも称されるものであり、図4に示すように、背景としては岩や珊瑚に太陽光が充分に注ぐ状態の浅瀬をイメージした
ものであり、変動図柄は蛸や魚等に数字が付加された数字付キャラクタである。この演出モード1では、泡、又は魚群の出現により大当たりになる可能性が大きいことを予告する表示演出効果が行われる。なお、初期状態では、演出モード1が設定されており、演出モードの選択変更操作がなければ、演出モードは演出モード1の状態のままであり、演出モード1での変動表示が行われる。
演出モード2は、トレジャーステージモードとも称されるものであり、図5に示すように、背景としては海底にローマ神殿が沈んでおり、太陽光が若干注ぐ中層程度の海底の状態をイメージしたものであり、変動図柄は演出モード1と同様の数字付キャラクタである。この演出モード2では、例えば所定のキャラクタが順次出現する態様によって大当たり状態の可能性が大きいことを予告するステップアップ予告等の表示演出効果が行われる。
演出モード3は、ラグーンステージモードとも称されるものであり、図6に示すように、背景として海底に沈没船が存在しており、太陽光が全く注がない深海をイメージしたものであり、変動図柄は演出モード1と同様の数字付キャラクタである。この演出モード3では、例えばボタン予告や連続予告等の表示演出効果が行われる。」(段落【0048】?【0050】)

上記ア?エの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物3には次の発明が記載されていると認められる。
「変動表示中に、演出モード選択ボタン900の操作を可能とすることを目的とし、
複数種類の識別情報を変動表示する第1図柄主表示装置42と、
第1図柄主表示装置42における表示演出の態様が異なる複数の遊技演出モードを選択する演出モード選択ボタン900と、
演出モード記憶手段から現在設定されている演出モードを読出し、その読出された演出モードと演出制御コマンドとで決定される変動パターンを変動パターン記憶手段から読出して、その変動パターンで表示演出を実行する遊技演出モード実行手段と、
演出モード選択ボタン900からのモード選択信号に応じて、演出モード記憶手段の記憶内容を変更する演出モード変更切換手段と、
変動表示中の期間において演出モード変更切換手段を能動化する演出モード変更切換制御手段とを有するパチンコ機。」

3 対比
刊行物1に記載された発明(以下「前者」という。)と本件補正発明(以下「後者」という。)とを対比する。
前者の「始動入賞口13に遊技球が入賞するなどして始動条件が成立すると大当り抽選を行ない、大当りの場合、通常図柄の大当りか或いは、特定図柄の大当りかを決定し、外れの場合、外れの停止図柄を決定する主制御部20のCPU21」は、「主制御部20のCPU21」が大当りを示す「通常図柄」及び「特定図柄」、外れを示す「外れの停止図柄」を決定するものであるから、後者の「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入球を条件として、遊技者に付与される遊技利益の種類を示す特別図柄を決定する特別図柄決定手段」に相当する。

そして、前者の「大当りなどの抽選結果に応じて図柄変動と遊技演出を決定し、図柄変動表示装置10の表示器にその遊技演出を図柄変動と共に表示制御する図柄制御部30のCPU31」と、後者の「特別図柄決定手段によって決定された特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示制御手段と、該特別図柄の変動表示中に実行される演出の態様ごとに分類される複数の演出モードの中から1の演出モードを決定し、該演出モードに基づいて演出を実行する演出制御手段」とは、前者において、図柄制御部30のCPU31は、
図柄変動表示装置10の表示器に図柄変動と遊技演出を表示制御するものであるから、両者は、「特別図柄決定手段によって決定された特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示制御手段と、該特別図柄の変動表示中に演出を実行する演出制御手段」である点で共通する。

また、前者の「パチンコ遊技機」は、後者の「遊技機」に相当し、同様に、
前者の「遊技者が操作スイッチ6の押ボタン61を押圧操作した際の押ボタン61にかかる加速度を、操作押圧力を示す信号として検出するピエゾ抵抗素子によって構成される加速度センサ63と、ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化したときに変化する電圧を検出信号として出力する、ピエゾ抵抗素子が接続されたブリッジ回路」は、ブリッジ回路が、パチンコ遊技機に設けられるものであり、また、押ボタン61に加えられた操作押圧力を変化する電圧信号として出力するものであり、さらに、出力される電圧が操作押圧力に対応するアナログ信号であることは明らかであるから、後者の「遊技機の所定箇所に設けられ、遊技機の任意の部位に加えられた圧力の変化をアナログの電圧信号に変換して出力する検出手段」に相当する。

さらに、前者の「加速度センサ63により検出された加速度が第2設定値以上で第3設定値未満の場合、押圧を『強』と判定し、加速度が第1設定値以上で第2設定値未満の場合、押圧を『中』と判定し、加速度が第1設定値未満の場合、押圧を『弱』と判定」する「図柄制御部30のCPU31」と、後者の「検出手段から出力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換して出力するアナログ-デジタル変換器と、アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号を第1のデジタルフィルタで濾波することで、当該デジタルの電圧信号から、遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号を抽出する第1フィルタ手段と、第1フィルタ手段から出力される第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号が所定の第1条件を満たすと圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段」とは、後者において、「継続的な歪みが加えられたこと」は、本願明細書に「第1検出信号出力手段186aは、第1のデジタルフィルタ184aから出力される電圧信号が所定の第1条件を満たすと、即ち、電圧信号の最大値が所定閾値を超過すると、後述する演出表示に影響を与えるべく当該パチンコ機100の任意の部位に押圧(継続的な歪み)が加えられたことを表す第1検出信号を出力する。」(段落【0061】)と定義されていることから、「押圧が加えられたこと」に相当するといえ、前者においても、ブリッジ回路により、押ボタン61の操作により操作押圧力が加えられたことが検出され、検出された操作押圧力が「強」、「中」、「弱」の条件を満たす場合、条件に応じた、圧力の大きさを示す検出信号を出力することは明らかであるから、両者は、「遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す電圧信号が所定の第1条件を満たすと圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段」である点で共通し、同様に、
前者の「図柄制御部30のCPU31は」、「操作スイッチ6がオン操作されたときに、加速度センサが検出した加速度信号のレベルが設定値を超えると、予め記憶された信頼度の異なる複数のリーチ演出から、信頼度の高いリーチ演出のみを図柄変動表示装置10の表示器に表示し、加速度が低いほど各種の信頼度のリーチ演出を図柄変動表示装置10の表示器に表示する」ことと、後者の「演出制御手段は、第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて複数の演出モードの中から1の演出モードを決定する」こととは、前者において、加速度信号のレベルが設定値を超えた場合、信頼度の高いリーチ演出を決定し、加速度が低いほど、各種の信頼度のリーチ演出を決定するものであるから、両者は、「演出制御手段は、第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて演出を決定する」ことで共通する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入球を条件として、遊技者に付与される遊技利益の種類を示す特別図柄を決定する特別図柄決定手段と、該特別図柄決定手段によって決定された特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示制御手段と、該特別図柄の変動表示中に演出を実行する演出制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記遊技機の所定箇所に設けられ、前記遊技機の任意の部位に加えられた圧力の変化をアナログの電圧信号に変換して出力する検出手段と、
前記遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す電圧信号が所定の第1条件を満たすと前記圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段と、を備え、
前記演出制御手段は、前記第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて前記演出を決定する遊技機。」

[相違点1]
演出制御手段により特別図柄の変動表示中に実行される、第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて決定される演出が、本件補正発明では、演出の態様ごとに分類される複数の演出モードの中から決定される1の演出モードであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、当該発明特定事項を具備しない点。

[相違点2]
本件補正発明では、検出手段から出力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換して出力するアナログ-デジタル変換器と、アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号を第1のデジタルフィルタで濾波することで、当該デジタルの電圧信号から、遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号を抽出する第1フィルタ手段と、第1フィルタ手段から出力される第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号が所定の第1条件を満たすと圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段とを具備するのに対して、刊行物1に記載された発明では、「加速度センサ63により検出された加速度が第2設定値以上で第3設定値未満の場合、押圧を『強』と判定し、加速度が第1設定値以上で第2設定値未満の場合、押圧を『中』と判定し、加速度が第1設定値未満の場合、押圧を『弱』と判定」する図柄制御部30のCPU31を具備するが、検出された加速度の処理は、アナログ信号処理されるものであるから、アナログ信号である電圧信号をデジタル信号である電圧信号に変換するアナログ-デジタル変換器、及び、デジタル信号である電圧信号を第1のデジタルフィルタで濾波することで、第1周波数帯域成分のデジタル信号である電圧信号を抽出する第1フィルタ手段を具備しない点。

4 当審の判断
(1)上記相違点1について
刊行物3には、識別情報を変動表示中に実行される演出を、態様が異なる複数の遊技演出モードの中から選択される一つの遊技演出モードとするパチンコ機の発明が記載されている。
そして、刊行物1に記載された発明は、図柄変動中に演出モードを変更できる機能を有するものでないことから、刊行物3に記載された発明と同様に、演出モードを変更するには、図柄変動が終了する、待機モードまで待たなければならなかったという課題を内在するものである。
また、刊行物1及び3に記載された発明は、パチンコ遊技機という同一の技術分野に属する発明である。
したがって、刊行物1に記載された発明において、待機モードに加えて変動表示中にも演出モードの選択を可能とするために刊行物3に記載された発明を適用して、特別図柄の変動表示中に実行される演出を、演出の態様ごとに分類される複数の演出モードの中から決定される一つの演出モードとすることにより、上記相違点1に係る本件補正発明が具備する発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
まず、刊行物1に記載された発明は、遊技者により操作された押ボタン61の操作押圧力を検出するものである。
そして、遊技機の技術分野において、演出制御に用いられる操作部の押圧信号に振動成分を含むことは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2008-161594号公報の段落【0037】?【0043】、【0068】には、遊技者がスタートレバー41を把持したときに検知される、比較的強い間欠的な圧力の変化である遊技者の握力信号を抽出するために、ひずみゲージの抵抗変化信号から握力の周波数成分を分離し、分離された信号を用いて演出制御を行うことが記載され、特開2006-75222号公報の段落【0045】、【0051】には、スタートレバー41の操作力Fを振動センサを用いて検出し、検出された操作力Fに応じた演出を行うことが記載され、特開2007-7032号公報の段落【0015】には、押圧可能な操作ボタン17が、振動や衝撃などを瞬時に検知し、その衝撃に比例した電圧を出力として取り出せる加速度センサ17aを具備することが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。
また、遊技機の技術分野において、遊技機に加えられる振動を圧力センサや加速度センサにより検出することは本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2002-210185号公報の段落【0031】や、特開2005-168888号公報の段落【0059】や、特開2003-180972号公報の段落【0009】?【0017】や、特開2007-552号公報の段落【0032】、【0072】を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
さらに、刊行物1に記載された発明は、ブリッジ回路に圧力センサや加速度センサが接続されている。
そうすると、刊行物1に記載された発明における、操作押圧力を示す信号としての加速度信号に振動成分が含まれることは、当業者にとって明らかである。

次に、刊行物2には、低い衝撃周波数及び打撃による高い衝撃周波数の衝撃を検出するために、低い衝撃周波数のうち、重量車両等が店の前を通過する場合の主な低周波数帯域を示す、f1或いはf2の信号をハイパスフィルタにより低減させて、検出信号からf2を越える周波数帯域成分の信号を抽出する衝撃センサを備えたパチンコ遊戯機の発明について記載されている。

ところで、遊技機に加えられる振動を検出するためのセンサに関する技術分野において、センサから出力されるアナログ信号をコンピュータにより処理可能とするために、デジタル信号に変換すること、及び、変換されたデジタル信号から必要な周波数帯域成分の信号を抽出するためにデジタルフィルタを介在させることは、本願出願前に広く行われていた技術事項である(例えば、上記特開2002-210185号公報に記載された加速度センサ11から出力された加速度の時系列データに所定のサンプリング(アナログ信号を一定の時間間隔のデジタル信号に変換すること。)を行った後、バンドパスフィルタを通して、所定周波数幅の信号成分を抜き出す周波数変換がなされる(図8(b)を参照。)こと(段落【0033】)や、上記特開2005-168888号公報に記載された人が発声することにより生じる微弱振動を骨伝導マイク41により検出し、骨伝導マイク41から出力される音信号をデジタルサンプリング部51において所定周期のデジタルサンプリング値信号に変換し、人間の音声の主要な周波数帯域のみを通過させるデジタルバンドパスフィルタとして形成された音声抽出フィルタ52により、人間の音声に係る音声を主に抽出すること(段落【0059】、【0070】?【0072】)や、アナログ信号処理においてではあるが、上記特開2003-180972号公報に記載された、操作ハンドル4の内部に取り付けられた圧電素子からなる人感センサ12により検知されたオペレータの手指から伝わる微振動の振動信号を、バンドパスフィルタ22を通過させることにより雑音成分を取り除くこと(段落【0009】?【0017】)を参照。以下「周知の技術事項3」という。)。
このように、遊技機に加えられる振動を検出するためのセンサに関する技術分野において、検出対象に応じて検出された信号から必要とする周波数帯域成分の信号を抽出することは本願出願前に周知の技術的課題であるから、振動成分を含む、操作押圧力を示す信号としての加速度信号を検出する刊行物1に記載された発明においても、ブリッジ回路から出力される検出信号から、押ボタン61が操作されたことにより生じる周波数帯域成分の信号を抽出するという自明の課題を内在するものといえる。
してみると、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、遊技機に加えられる振動を検出可能なセンサに関する発明である点で共通する技術分野に属する発明であるとともに、検出される圧力信号から必要とする周波数帯域成分の信号を抽出するという共通の課題を有するものである。

したがって、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明及び上記周知の技術事項1?3を適用して、ブリッジ回路から出力される電圧信号から、押ボタン61が操作されたことにより生じる周波数帯域成分の信号を抽出させるとともに、信号処理をA/D変換器及びデジタルフィルタを用いたデジタル信号処理にて行い、上記相違点2に係る本件補正発明が具備する発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?3に記載された発明及び周知の技術事項1?3から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物1?3に記載された発明及び周知の技術事項1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年7月20日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年2月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入球を条件として、遊技者に付与される遊技利益の種類を示す特別図柄を決定する特別図柄決定手段と、該特別図柄決定手段によって決定された特別図柄を変動表示する特別図柄変動表示制御手段と、該特別図柄の変動表示中に実行される演出の態様ごとに分類される複数の演出モードの中から1の演出モードを決定し、該演出モードに基づいて演出を実行する演出制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記遊技機の所定箇所に設けられ、前記遊技機の任意の部位に加えられた圧力の変化をアナログの電圧信号に変換して出力する検出手段と、
前記検出手段から出力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換して出力するアナログ-デジタル変換器と、
前記アナログ-デジタル変換器により変換されたデジタルの電圧信号から、前記遊技機の任意の部位に対して継続的な歪みが加えられたことを表す第1周波数帯域成分を抽出する第1フィルタ手段と、
前記第1フィルタ手段から出力される前記第1周波数帯域成分のデジタルの電圧信号が所定の第1条件を満たすと前記圧力の大きさを示す第1検出信号を出力する第1検出信号出力手段と、
を備え、
前記演出制御手段は、前記第1検出信号に示された圧力の大きさに基づいて前記複数の演出モードの中から1の演出モードを決定することを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由において提示された刊行物1?3、刊行物1?3の記載事項及び刊行物1?3に記載された発明は、前記「第2[理由]2」に記載したとおりである。

3 対比
刊行物1に記載された発明と本願発明とを対比する。
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明における限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 [理由]3 対比及び4 当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?3に記載された発明及び周知の技術事項1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?3に記載された発明及び周知の技術事項1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明及び周知の技術事項1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-22 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-12 
出願番号 特願2008-301405(P2008-301405)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
木村 史郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  

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