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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E06B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E06B
審判 全部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正  E06B
審判 全部無効 2項進歩性  E06B
管理番号 1277236
審判番号 無効2012-800031  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-03-16 
確定日 2013-08-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4839108号発明「引戸装置の改修方法及び改修引戸装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯等
本件は、特許法41条により特願2002-64460号(以下、「優先基礎出願」という。)に基づいて優先権を主張して出願した特願2003-62183号(以下、「原出願」という。)の一部を、特許法44条1項の規定により新たな出願とした特願2006-74123号(以下、「本件特許出願」という。)の特許であり、その経緯概要は以下のとおりである。

平成14年 3月 8日 優先基礎出願(特願2002-64460号)
平成15年 3月 7日 原出願(特願2003-62183号)

平成18年 3月17日 本件特許出願(特願2006-74123号)
平成21年 9月14日 手続補正
平成22年 1月14日 拒絶査定
平成22年 4月16日 審判請求
平成23年 9月 2日 審決
平成23年10月 7日 設定登録(特許第4839108号)

平成24年 3月16日 無効審判請求
平成24年 6月 5日 答弁書
平成24年 7月13日 審理事項通知
平成24年 9月11日 口頭審理陳述要領書(被請求人提出)
平成24年 9月11日 口頭審理陳述要領書(請求人提出)
平成24年 9月25日 口頭審理、審理終結通知(口頭審理において)

第2.本件審判事件にかかる両当事者の主張

請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。
1.請求人の主張
請求人は、平成24年3月16日付けの審判請求書において、「特許第4839108号の特許は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め」(請求の趣旨)、以下の理由により、本件特許発明(請求項1?6)は特許を受けることができないものであるから、特許法123条1項の規定により無効にされるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1?13号証を提出した。
請求人は、審判請求書4頁7行?14頁16行において、請求項1に関して主張しており、請求項2?6に関して明示的に主張していない。しかし、審判請求書3頁下から5行?4頁3行には「本件特許発明(請求項1-6)は、以下の理由のいずれによっても無効とされるべきものである。/-理由1-(請求項3及び請求項6を除く)/特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされた特許である。/-理由2-/特許法第36条第4項第1号又は第6項第1号、同第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた特許である。」との記載、審判請求書の全記載から判断して、審判請求書4頁7行?14頁16行においては、請求項1を代表として主張したものであり、「-理由1-」においては請求項2、4、5、「-理由2-」においては請求項2?6についても同様の主張を実質的にしているものと認められる。したがって、請求人が請求項1についてのみ主張していても、実質的に他の請求項についても主張しているものと認められる場合には、本審決においては他の請求項を含めて無効理由の対象として判断する。

【無効理由1】(特許法17条の2第3号)
本件特許は、第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
【無効理由2】(特許法36条)
本件特許(請求項1?6)は、特許法36条6項1号、2号及び4項1号に規定する要件を満たしていないものであり、無効とされるべきものである。
【無効理由3】(特許法29条2項)
本件特許(請求項1?6)は、特許法29条2項に規定により特許を受けることができないものであり、無効とされるべきものである。

[証拠方法]
甲第9号証について、審判請求書44頁においては公開公報として記載されているが、添付書類としてマイクロフィルムが添付されているので、44頁の記載は誤記であって正しくは下記のようにマイクロフィルムであると認める。
甲第1号証 実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)の マイクロフィルム
甲第2号証 実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)の マイクロフィルム
甲第3号証 特開2002-285757号公報
甲第4号証 雑誌 建築技術 No.395 1984年7月1日発行 株 式会社建築技術 表紙、第5,6ページ(目次)、第186? 189ページ 第245ページ(奥付け)、裏表紙
甲第5号証 特開昭61-229086号公報
甲第6号証 実公昭58-45431号公報
甲第7号証 特開平7-286439号公報
甲第8号証 特開平11-50749号公報
甲第9号証 実願昭53-123666号(実開昭55-40156号)の マイクロフィルム
甲第10号証 特開2002-81155号公報
甲第11号証 特開平9-177437号公報
甲第12号証 特開平8-93325号公報
甲第13号証 本件に係る平成22年4月16日付け審判請求書(拒絶査定 不服審判請求事件)

更に、平成24年9月11日付け口頭審理陳述要領書において、審判請求書の無効理由1?3により無効にすべきと主張するとともに、周知例として甲第14?21号証を提出している。

[証拠方法]
甲第14?17号証について、口頭審理陳述要領書16頁においては公開公報として記載されているが、添付書類としてマイクロフィルムが添付されているので、16頁の記載は誤記であって正しくは下記のようにマイクロフィルムであると認める。
甲第14号証 実願昭56-47034号(実開昭57-158886号) のマイクロフィルム
甲第15号証 実願昭54-182567号(実開昭56-100676号 )のマイクロフィルム
甲第16号証 実願昭51-55639号(実開昭52-149545号) のマイクロフィルム
甲第17号証 実願昭53-35269号(実開昭54-138442号) のマイクロフィルム
甲第18号証 特開昭56-135685号公報
甲第19号証 特開昭48-16439号公報
甲第20号証 特開昭48-104337号公報
甲第21号証 特公昭49-25012号公報

なお、周知技術と甲第14?21号証との関係が口頭審理陳述要領書では不明確であったので、口頭審理において合議体より審尋したところ、請求人は以下のとおり陳述した。
「平成24年9月11日付け口頭審理陳述要領書に添付の甲第14号証ないし甲第21号証について
A「改修に際して既設下枠を残存させること」
B「支持部材(取付補助部材)を基準に改修用引戸枠を既設引戸枠に取り付け、支持部材を取り付けの基準とすること」
C「室内側寄り部分を支持部材で支持し、室外側部分を既設下枠に支持させること」
D「改修用引戸枠の取り付けに際して既設下枠の不要部分を切除すること」
E「改修後の開口部面積をできるだけ大きくすること」
として、
甲第14号証はA、D
甲第15号証はA、E
甲第16号証はA、B、E
甲第17号証はA、C
甲第18号証はA、B、D
甲第19号証はA、B、D
甲第20号証はA、B、D
甲第21号証はA、B
の周知例である。」

2.被請求人の主張
被請求人は、平成24年6月5日付けで答弁書を、平成24年9月11日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求め」(答弁の趣旨)、本件特許発明(請求項1?6)について、無効理由1?3は理由がない旨主張するとともに、乙第1、2号証を提出している。

[証拠方法]
乙第1号証 特許願2002-64460号
乙第2号証 特開2003-328645号公報

第3.本件特許発明

本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次のとおりのもの(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明6」という。)と認める。

「【請求項1】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項2】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し、前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し、前記改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項3】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すると共に、室内側案内レールを切断して撤去し、前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項4】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項5】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し、
前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し、
前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項6】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に、室内側案内レールは切断して撤去され、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。」

第4.容易性判断の基準日の検討

被請求人は、被請求人が提出した平成24年9月11日付け口頭審理陳述要領書の3頁15?20行において「本件特許の請求項1記載の発明は、国内優先権主張を伴う出願において新しく導入された技術的事項と、先の出願にも優先主張を伴なう出願にも共通的に記載されている技術的事項、即ち法律的には優先権の主張の基礎とされた先の出願の出願時になされたものとみなされる事項とからなるから、本件特許の原出願の優先権主張の基礎となる出願時点で公開されていない甲第3号証は、本願特許発明における先の出願の出願時になされたものとみなされる事項の進歩性を阻却する証拠にはなりえない。」と主張するので検討する。

特許法41条2項は、同法29条の適用に係る優先権主張の効果について、「・・・優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面・・・に記載された発明・・・についての・・・第29条・・・の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす」と規定し、後の出願に係る発明のうち、先の出願の当初明細書等に記載された発明に限り、その出願時を同法29条の適用につき限定的に遡及させることを定めている。すなわち、後の出願に係る発明が先の出願の当初明細書等に記載されたものでない場合には出願時の遡及は認められないというべきである。
ここで、「後の出願に係る発明」について検討すると、特許請求の範囲は特許出願人が請求項毎に特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載したもの(特許法36条5項)であるから、「後の出願に係る発明」は「後の出願の特許請求の範囲の請求項に記載された発明」と解すべきである。なお、被請求人の主張のように、請求項1に記載された事項を分割して得られた部分(「国内優先権主張を伴う出願において新しく導入された技術的事項」の部分と、「先の出願にも優先主張を伴なう出願にも共通的に記載されている技術的事項」の部分)は、それぞれ発明を特定するための事項であったとしても、「後の出願に係る発明」ではない。
また、被請求人は、平成24年9月11日付け口頭審理陳述要領書の3頁7?13行において、「特許・実用新案審査基準の第IV部 優先権 第2章 3.国内優先権の効果」を引用しているが、被請求人の審査基準における引用箇所の直後には、
「4.国内優先権の主張の効果についての判断
4.1 基本的な考え方
・・・
優先権主張を伴う後の出願の請求項に係る発明が、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載されているといえるためには、後の出願の明細書等の記載を考慮して把握される後の出願の請求項に係る発明が、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである必要がある。
・・・
優先権の主張の効果の判断は、原則として請求項毎に行う。」
と記載されており、審査基準には「後の出願に係る発明」は「後の出願の請求項に係る発明」であることが示されている。
以上を総合すると、優先権の主張の効果を認めるためには、「後の出願の請求項に係る発明」が先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載されているか否か検討する必要がある。

そこで、本件特許について検討する。少なくとも、請求項1?3の「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」及び請求項4?6の「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり」は、原出願の出願当初の明細書には記載されているものの、優先基礎出願の出願当初の明細書には記載されておらず、これは被請求人も認めている(答弁書20頁17行?21頁6行)。
したがって、「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」又は「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり」を発明特定事項として含む請求項1?6に係る発明は、優先基礎出願の出願当初の明細書には記載されていないから、本件特許出願は特許法29条の規定の適用については、優先基礎出願の時にされたものとみなすことはできず、原出願の出願の時(平成15年3月7日)を出願日とみなすべきであり、甲第3号証及び甲第10号証を含め、請求人の提出した甲第1?12、14?21号証は、本件出願前に頒布されたものと認められる。

以上のとおり、被請求人の主張は、採用することはできない。

第5.本件特許発明にかかる検討

1.無効理由1について(新規事項の追加)
(1)請求人の主張する無効理由
請求人は、概略以下のように主張している(審判請求書4頁7行?8頁15行)。
本件特許の請求項1、2に記載された発明は、「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」の構成Aを有する引戸装置の改修方法であり、請求項4、5に記載された発明は、「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり」の構成Bを有する改修引戸装置である。
しかし、このような改修方法及び改修引戸装置は、室内側案内レールを残存させた構成Cをも含むものであるが、当該構成Cは本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初の明細書等」という)に記載された範囲内の事項ではない。
よって、本件特許は、第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正(構成A、Bを加入した平成21年9月14日付けの手続補正。)をした特許出願に対してされたものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

(2)無効理由1についての検討
本件特許出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲(以下、「本件当初明細書」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、前記既設下枠の室内側部分に、取付け補助部材をビスで取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜する底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠を前記取付け補助部材に取付けることで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項2】
改修用引戸枠の改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用縦枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着し、
前記改修用引戸枠を既設引戸枠内に室外側から挿入し、その室外側上枠シール材を開口部の上縁部に接すると共に、前記室外側竪枠シール材を開口部の縦縁部に接するようにした請求項1記載の引戸装置の改修方法。
【請求項3】
改修用引戸枠を既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠を取付け補助部材に接すると共に、その改修用下枠の底壁の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の底壁の室外寄りに接して支持するようにした請求項1又は2記載の引戸装置の改修方法。
【請求項4】
改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定するようにした請求項1又は2又は3記載の引戸装置の改修方法。
【請求項5】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、その既設下枠の室内側部分に取付け補助部材がビスで取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜する底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠が前記取付け補助部材に取付けてあることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項6】
改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は開口部の上縁部に接し、
改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は開口部の縦縁部に接している請求項5記載の改修引戸装置。
【請求項7】
改修用下枠は取付け補助部材に接していると共に、その改修用下枠の底壁の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の底壁の室外寄りに接して支持している請求項5又は6記載の改修引戸装置。
【請求項8】
改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されている請求項5又は6又は7記載の改修引戸装置。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法、及び、その改修した改修引戸装置に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の技術では、改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので、改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H_(1)が小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題がある。
【0011】
また、改修用下枠13の下枠下地材30は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され、その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1がより小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方法及び改修引戸装置を提供することである。」
「【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、有効開口面積が減少することがなく、広い開口面積が確保できる。
また、既設下枠に取付けした取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」
「【0051】
図3は改修用引戸装置50の既設引戸枠63への取付け手順を説明するための鉛直断面を示す分解図であり、図4は図3の切断面線IV-IVから見た水平断面を示す分解図である。既設引戸枠63に改修用引戸装置50を取付けるにあたって、まず既設下枠56の室外側案内レール114がその付け根付近から切断されて撤去され、室内側案内レール115には取付け補助部材106が上壁部109を上方にして装着され、ビス110によって固定される。こうして取付け補助部材106が室内側案内レール115に取付けられた状態では、前記上壁部109はほぼ水平に配置されている。
前記取付け補助部材106は長手方向全長に亘って取付けても良いし、長手方向複数位置に取付けても良い。
【0052】
改修用下枠69、各改修用竪枠70,71および改修用上枠72は、相互に連結されて四角形の改修用引戸枠78が組立てられ、この組立てられた改修用引戸枠78が前記既設引戸枠63に室外73側から嵌め込まれて装着された後、各竪枠用保持部材74,75が前記装着された改修用引戸枠78の各改修用竪枠70,71と各既設竪枠59,60との間に室内68側からそれぞれ装着される。また改修用上枠72と既設上枠62との間には、上枠用保持部材76が室内68側から装着される。」
「【0060】
・・・
また、本実施の形態によれば既設下枠56の室外側案内レール114を切断して撤去し、取付け補助部材106の上壁部109に改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89を支持しているので、改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅が大きく、有効開口面積が減少することが少ない。」
「【0100】
また、図14に示すように、既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し、取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。
例えば、取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し、そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」

本件当初明細書の上記記載によれば、出願当初の請求項1?8に係る発明(総称して、以下、「本願発明」という。)は、建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法、及び、その改修した改修引戸装置に関するものであり(【0001】)、その目的とするところは、広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方法及び改修引戸装置を提供することにある(【0012】)ことが認められる。そして、「既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、有効開口面積が減少することがなく、広い開口面積が確保できる。」との記載(【0018】)からわかるように、その目的(技術的課題)を達成するために、本願発明では「既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去」することを発明特定事項としているものと認められる。そうすると、室内側案内レールを撤去するか否かは、本願発明の目的(技術的課題)の達成には関与するものではなく、付加的要素に過ぎない。
そして、平成21年9月14日の補正(以下、「本件補正」という。)によって、発明特定事項として「この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」を加入する際に、「室内側案内レールを切断して撤去」することが加入されず、補正後の請求項1、2、4、5に係る発明に室内側案内レールを残存させる発明が含まれるものとなっても、取付け補助部材を背後壁の立面にビスで固着して取付けるに際して室内側案内レールを撤去することが必須のこととは認められないから、室内側案内レールを撤去するか否かは、本願発明の目的(技術的課題)の達成には直接関与するものではなく、付加的要素に過ぎないことに変わりはない。なお、取付け補助部材を背後壁の立面にビスで固着して取付けるに際して室内側案内レール115を撤去することが必須のことでないことを補足すると、例えば、本件当初明細書の図14のような位置関係の場合には室内側案内レール115にビス挿通孔又は切り欠きを形成すれば室内側案内レール115を残存させることができること、室内側案内レール115の上端よりビス110が上方に位置する場合には室内側案内レール115に何の工作をする必要もなく室内側案内レール115を残存させることができること、等は当業者にとって明らかである。
そうすると、本件補正の結果、本件補正発明1、2、4、5が「この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」る際に室内側案内レールを残存させる発明を包含するものであっても、室内側案内レールを残存させることは上述のとおり付加的要素であるから、本件補正が新たな技術的事項を導入するものということはできない。(参考判決:平成16年(行ケ)第4号判決)

したがって、無効理由1は理由がない。

2.無効理由2について(特許法36条)
(1)請求人は、請求項1、2、4、5に係る発明は、室内側案内レールを残存させた構成をも含むものであるが、室内側案内レールを残存させた場合に、取付け補助部材をビスでどのように取り付けるのかは全く記載されていないから、本件特許の請求項1、2、4、5記載の発明は、
当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、あるいは発明の詳細な説明に記載されたものではない旨、「特許法第36条第4項第1号違反」として主張し(審判請求書8頁下から5行?10頁10行)、
発明の詳細な説明に記載していない発明について請求するものである旨、「特許法第36条第6項第1号違反」として主張している(審判請求書11頁10?18行)ので検討する。
平成21年(行ケ)第10252号判決は、「原告は、構成要件e-1及びe-2はバネの作用を要件としていないから、本件発明には、バネの関与なしに構成要件e-1及びe-2を実現し、バネの作用により構成要件e-3を実現するものも包含されるところ、発明の詳細な説明にはその具体的構成の開示がなく、実施可能要件及びサポート要件違反である旨主張する。しかし、構成要件e-1及びe-2は電気スイッチの一般的な機能を規定するもので、本件発明の技術的特徴ではないと考えられるところ、特許法はそうした部分についてまで、実施可能要件及びサポート要件として網羅的に実施例を開示することを要求しているとは解されない、すなわち、構成要件e-1及びe-2の機能におけるバネの関与の有無は発明を特定するための事項ではないところ、かかる発明を特定するための事項ではない技術的事項に着目し、実施可能要件及びサポート要件を問うことは適切ではないと解される。・・・バネの関与なしに構成要件e-1及びe-2を実現し、バネの作用により構成要件e-3を実現する構成が発明の詳細な説明に具体的に記載されていないとしても、実施可能要件及びサポート要件違反であるということはできないから、原告の上記主張は採用することができない。」と説示している。
一方、請求項1、2、4、5に係る発明は、「取付け補助部材」を「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」る点を発明特定事項とするとともに、室内側案内レールを残存させる構成をも技術的範囲に含むものであるが、室内側案内レールを残存させる点は発明特定事項とはしていない。そうすると、上記判決の説示するように、発明特定事項ではない技術的事項に実施可能要件及びサポート要件を問うことは適切ではないと解されるから、「取付け補助部材」を「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」るとともに室内側案内レールを残存させる構成が発明の詳細な説明に具体的に記載されていないとしても、実施可能要件及びサポート要件違反であるということはできない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

仮に、室内側案内レール115を残存させる構成について実施可能要件が求められるものであるとしても、例えば、本件当初明細書の図14のような位置関係の場合には室内側案内レール115にビス挿通孔又は切り欠きを形成すれば室内側案内レール115を残存させることができること、室内側案内レール115の上端よりビス110が上方に位置する場合には室内側案内レールレール115に何の工作をする必要もなく室内側案内レール115を残存させることができること、等は当業者にとって明らかであって、当業者が実施しようとする場合にどのように実施するか理解できないというものではない。

(2)請求人は、平成21年9月14日付け意見書を引用した上で、「自由度を得」るために、又は、「十分な取付け強度」を得るために、当業者は具体的にどのようにすればよいか理解できないのであって、その点でも、本件特許の請求項1?6記載の発明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、あるいは発明の詳細な説明に記載されたものではない旨、「特許法第36条第4項第1号違反」として主張している(審判請求書10頁11行?11頁9行)ので検討する。
平成17年(行ケ)第10067号判決は、「明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているのであれば、特許法36条4項所定の発明の詳細な説明の記載要件を充足するものであり、明細書に「発明における課題を解決すべき手段をその作用効果が関連づけて記載されてい」ないからといって直ちに発明の詳細な説明の記載要件に適合しないものとなるものではなく、これによって特許を受けようとする発明が不明確となり特許請求の範囲の記載要件(特許法36条6項2号)に適合しないことになるものということもできない」と説示している。
そして、平成21年9月14日付け意見書(2頁36?42行)の「効果の非予測性について/・本願発明では、従来想到されていなかった背後壁に取付け補助部材を取付けることが十分な取付け強度が得られることだけではなく、取付け補助部材の取付け側ではない方の、部分の幅、高さ、形状について格段に自由度がえられることを発見し、もって改修の基本的要件としての、各種の既設枠に対応できる比較的簡単な構造で、作業性に優れた改修方法を提供しうるに至ったもので、このような効果は従来例からは予測されなかったものであります。」の記載からみて、「「自由度を得」る、又は、「十分な取付け強度」を得る」という効果は、当該意見書に記載されているものと認められる。一方、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「「自由度を得」る、又は、「十分な取付け強度」を得る」という効果は記載されていない。
したがって、請求人の主張は、被請求人が意見書のみにて主張した「「自由度を得」る、又は、「十分な取付け強度」を得る」効果を奏するように発明をどのように実施すればよいか理解できないというものであり、請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないというものではないから、請求人の主張によっては「明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていれば、記載要件は充足する」とされる特許法36条4項1号の規定に違反するとすることはできない。

(3)請求人は、以下の点で、特許請求の範囲の記載が明確でない旨、「特許法第36条第6項第2号違反」として主張している。
(イ)請求項1?6に係る発明は、室内側案内レールを残存させた構成をも包含するものであるから、請求項1?6に記載された発明は発明の詳細な説明の項に開示された発明と技術的範囲が一致せず、請求項1?6に記載された発明は明確でない。(審判請求書11頁20?26行)
(ロ)「自由度が得られる」という作用・効果は、室内側案内レールを撤去した場合を前提としていることは前述した通りであるが、取付け補助部材に関しては、室内側壁部が背後壁に取付けられ、改修用下枠を支持するとともに、基準となることは理解できても、取付け補助部材全体の構成、形状、高さなどについて請求項1?6には具体的な構成が記載されておらず、前記の「自由度が得られる」との作用効果に関して請求項1?6の構成は明確でない。(審判請求書12頁3行?13頁1行)
(ハ)「十分な取付け強度を得る」及び「作業性に優れた改修方法を提供し得る」ために必須の構成要件を、当業者は取付け補助部材の形状に応じて具体的にどのようにすればよいか理解できないのであって、これらの点でも、本件特許の請求項1?6に係る発明は明確ではない。(審判請求書13頁2?24行)
(ニ)請求項1?6に記載された「室外寄り」、「室内寄り」とは、どのような範囲を限定しようとする用語であるのか不明であり、また、「改修用下枠の上端が(背後壁の上端と)ほぼ同じ高さ」とあるが、引戸装置の改修用下枠では案内レールや背後壁など上端を持つ部分がーつではないので、どの上端をいうのか不明である。(審判請求書13頁25行?14頁16行)
(イ)?(ハ)について、まとめて検討する。
平成21年(行ケ)第10434号判決は、「法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。上記のとおり、法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関して、「特許を受けようとする発明が明確であること。」を要件としているが、同号の趣旨は、それに尽きるのであって、その他、発明に係る機能、特性、解決課題又は作用効果等の記載等を要件としているわけではない。」と説示している。
請求人の主張は、(イ)においては「請求項1?6に記載された発明は発明の詳細な説明の項に開示された発明と技術的範囲が一致」しないことを理由に不明確と主張しており、(ロ)及び(ハ)においては意見書のみにて主張した作用効果を奏するための具体的な構成又は必須な構成が不明であることを理由に不明確と主張するだけであって、特許請求の範囲の記載に関して「特許を受けようとする発明が明確で」はないことを主張するものではないから、請求人の主張によっては特許請求の範囲が不明確とすることはできない。
(二)について検討すると、広辞苑第6版には「寄り」とは「(接尾語的に)・・・に近い方。・・・に寄ったところ。」と語義が記載されており、これによれば請求項1?6に記載された「室内寄りに」及び「室外寄りに」は「室内に近い方」及び「室外に近い方」を意味することは明らかであって、不明確な記載ではない。
また、「改修用下枠の上端」は、字句とおり解釈できるもので、改修用下枠のうち最も上に位置する場所を意味するものであって、不明確な記載ではない。

(4)以上(1)?(3)において検討したように、請求人の主張はいずれも採用することができない。
そして、本件特許の明細書は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものと認められ、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであって、その技術的範囲は明確であると認められる。
よって、無効理由2は理由がない。

3.無効理由3について(特許法29条2項)
(1)請求人の主張する無効理由
請求人は、本件特許(請求項1?6)は、以下の(1-1)及び(1-2)に示す理由で、特許法29条2項に規定により特許を受けることができないものであり、無効とされるべきものである旨、主張している。
(1-1)甲第1号証を中心とした主張
「本件特許発明(請求項1?6)は、いずれも、甲第1、2号証に記載されている技術事項を基礎として、これに甲第3?12号証に記載されているような業界において公知ないし周知・慣用の技術事項を単に寄せ集めているに過ぎない。よって、本願は特許法第29条第2項の規定により特許されるべきではなく、本件特許発明に係る特許は無効である。」(審判請求書40頁22?26行)
(1-2)甲第3号証を中心とした主張
「本件特許の請求項1に記載の発明は、甲第3号証に記載された発明を基本としてこれに甲第8号証の発明及び業界において周知・慣用の技術事項を勘案することで容易に発明をすることができたものである。」(審判請求書41頁2?4行)「前記[1]甲第1号証を中心とした主張において、述べた[請求項2記載の発明について]?〔請求項8記載の発明について〕と同様であるから、これらをそれぞれ援用する。」(審判請求書44頁5?8行)(ここで、「請求項8」は正しくは「請求項6」の誤記であると認められる。)
なお、請求人の主張において、本件発明の「補助部材」に相当する部分は、甲第3号証における「室内側部材13」、「室外側部材14」及び「断熱材15」からなる「下地材12」であることが、口頭審理において確認された。

(2)甲第1?12号証の記載事項
甲第1号証(実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)のマイクロフィルム)には以下の記載がある。
(記載事項1-1)
「本考案は、建物の開口部に設けられている古いサッシ枠を取外すことなくそのままの状態で、その古いサッシ枠の上から取付けるようにした改装サッシの構造に関するものである。」(2頁3?6行)
(記載事項1-2)
「このように古くなったアルミサッシの取替えが要望されている。
もちろん、この他にも古くなったスチールサッシや木製サッシについても、性能の優れたアルミサッシに取替えたいとする要望が高まっている。」(2頁12?18行)
(記載事項1-3)
「第1図及び第2図において、(A)は老朽化したアルミ製サッシ枠(以下単に旧サッシ枠という)を示し、上枠材(1),下枠材(2),左竪枠材(3)及び右竪枠材(図示せず)を連結して成るものである。
(B)は、新しく取付けられる改装用サッシ枠を示し、上枠材(4),下枠材(5),左竪枠材(6)及び右竪枠材(図示せず)を連結して成るものである。
この改装用サッシ枠(B)の各枠材室外側には旧サッシ枠(A)の各枠材室外側面に当接する支片(7)(8)(9)が設けられるが、下枠材(5)の支片(8)は、建物躯体を成す窓台(10)に固着されるものであるから、旧サッシ下枠材(2)の固着片(11)に当接するように、その下端は室内側へ屈折している。」(4頁7?20行)
(記載事項1-4)
「又、改装用サッシ下枠材(5)の室内側には、旧サッシ下枠材(2)の室内側に添設された木部(12)上に載置固定される取付け片(13)が突設されている。
この取付け片(13)は改装用サッシ枠(A)を室外側から室内側へ向って嵌め込む際に、旧サッシ下枠材(2)の室内側立上り片(14)にぶつからないように、これより上方位置に突設されているので、木部(12)はこの取付け片(13)と窓台(10)の間を埋めるため、及び旧サッシ下枠材(2)を隠蔽するために必要としている。
この木部(12)は、当該実施例のように旧サッシ枠(A)が窓開口部用の場合に、新規に取付けられる。」(5頁1?14行)
(記載事項1-5)
「新旧サッシ枠(A)(B)の間に介在する支持部材(C)は、改装用サッシ枠材(4)(5)(6)の取付け時の安定性をよくするために用いられ、略コ(審決注:原文ではこれを90度左回転させたもの)型状に形成されたスチール材から成る。・・・下枠用の支持部材(C)については、・・・旧サッシ下枠(2)のレール(16)を利用してネジ止めされる。」(5頁15行?6頁6行)
(記載事項1-6)
「而して、枠組み連結した改装用サッシ枠(B)を、旧サッシ枠(A)を取付けたままの窓開口部へ嵌め込み、改装用サッシ下枠材(5)を支持部材(C)上に載置するとともに、その取付け片(13)を木部(12)上に載置して、各枠材(4)(5)(6)の室外側当接用支片(7)(8)(9)を、対応する旧サッシ枠材(1)(2)(3)の室外面に当接する。
そして、改装用下枠材(5)については、上記取付け片(13)を木部(12)にネジ止めし、当接用支片(8)の下端を旧サッシ下枠(2)と重合状態で建物躯体を成す窓台(10)に釘打ち固定する。」(6頁7?17行)
(記載事項1-7)
「又、改装用サッシ枠は支持部材を介して旧サッシ枠に重合するものであるから、安定よく窓開口部に納めることができる」(8頁8?10行)
(記載事項1-8)
第1図には、改装用下枠材(5)は、室外側から室内側に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えていることが、図示されている。
(記載事項1-9)
第1図には、レール(16)が室内側と室外側に2本あり、室内外方向の中央部に位置させた支持部材(C)が旧サッシ下枠(2)の室外側レールにネジ止めされることが図示されている。

甲第2号証(実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)のマイクロフィルム)には以下の記載がある。
(記載事項2-1)
「室内側の縁部(13c)を既設サッシの下側サッシ部分(12)の室内側垂直部(12b)に沿わせて取着することにより、前記サッシ取付け部材(13)を既設サッシに固定し、更にその固定されたサッシ取付け部材(13)の窓中心側に突出した縁部(13b),(13c)に新設サッシ(10)の脚部(11b),(11b)が沿うようにその新設サッシ(10)を配置した上で、その縁部(13b)と脚部(11b)とをボルト締め等の手段にて固定することにりより、その新設サッシ(10)の下側サッシ部分(11)を固定することとしていた。」(3頁5?16行)
(記載事項2-2)
「より大きな窓有効面積にしたい場合は、レール部の突条レールを取り払って、サッシ取付け部材の帯状体の一端をレール部上面に載置し、既設サッシのレール部の幅一杯の高低差を利用すると共に適当な寸法のL字状取付け捨枠台を既設のレール部外縁に沿わせて固定して、これに帯状体の他端部において折曲する縁部を取付けて、前述の場合と同様新しいサッシを取付ける。」(8頁4?11行)
(記載事項2-3)
「第3図は、既設サッシの下側サッシ部分(2)における突条レールを切除したレール部(2a)の上に取付け部材(3)を介して新設サッシの下側サッシ部分(1)を取付けた構造を示す。
前記取付け部材(3)は、第2図のものと同様、レール部(2a)の内外方向全幅に相当する幅を有する帯状部(3a)と該帯状部(3a)の室外側となるべき端部から下方に垂設された縁部(3b)とを有する断面略L字状に形成され、室内側の帯状部(3a)の端部はレール部(2a)上に載せ付け、室外側をL字状の取付け捨台(7)を介して取付けるように構成してある。そして、この取付け部材(3)を介して第2図の場合と同様に新設サッシの下側サッシ部分(1)を取付けてある。」(14頁8行?15頁1行)

甲第3号証(特開2002-285757号公報)には以下の記載がある。
(記載事項3-1)
「本発明は、前述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、室外の冷気が残存した既存の金属枠体を通して新設の断熱枠体の室内側部に伝わり難く、新設の断熱枠体の室内側部に結露が生じることがない建具の改修方法を提供することである。」(段落【0008】)
(記載事項3-2)
「第1の発明は、建物躯体の開口部に取付けてある既存の金属建具を断熱建具に改修する方法であって、前記既存の金属建具の金属枠体を建物躯体の開口部に残存させ、この残存した既存の金属枠体を、室内側部と室外側部とに熱が伝わり難くし、新設の断熱建具の断熱枠体を、前記建物躯体の開口部に取付けることを特徴とする建具の改修方法である。」(段落【0009】)
(記載事項3-3)
「建物躯体1、例えばコンクリート又はPC板の開口部2に金属建具、例えば金属引き違い窓が取付けてある。この金属引き違い窓は金属枠体3に図示しない障子戸を引き違いに装着してある。前記金属枠体3を形成する上枠4、下枠5、左右の縦枠6は、室内外側方向に連続した枠本体7と、この枠本体7の内面7aに一体的に設けた複数の内向突片8を有するアルミ押出形材である。」(段落【0019】)
(記載事項3-4)
「前記既存の金属引き違い窓を新設の断熱引き違い窓に改修する手順を説明する。金属枠体3から障子戸を取り外して金属枠体3を残存させる。前述のように金属枠体3を残存させることで、その金属枠体3を建物躯体1から取り外す手間がはぶけ、改修作業効率が向上する。」(段落【0020】)
(記載事項3-5)
「前記残存した既存の金属枠体3における上枠4、下枠5、縦枠6の各内向突片8の図1、図2に斜線で示す部分を切断して除去する。」(段落【0021】)
(記載事項3-6)
「図3、図4に示すように、各枠の枠本体7に下地材12をそれぞれ取付けて穴11を形成した各枠を補強する。この四周の下地材12が新設の断熱引き違い窓の取付用開口部で、前記上枠4、下枠5、縦枠6の内向突片8が切断して除去してあるので、その取付用開口部が大きい。この下地材12は金属、例えばアルミ押出形材の室内側部材13とアルミ押出形材の室外側部材14を断熱材15で連結した断熱形材である。・・・前記下地材12の室内側部材13が枠本体7のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部にビス16で取付けられる。前記下地材12の室外側部材14が枠本体7のスリット状の穴11よりも室外寄りの室外側部にビス17で取付けられる。」(段落【0024】)
(記載事項3-7)
「この後に新設の引き違い窓の断熱枠体20を取付ける。前記新設の断熱枠体20は上枠21、下枠22、左右の縦枠23を枠組みしたもので、その各枠は、金属、例えばアルミ押出形材の室内側部材24と金属、例えばアルミ押出形材の室外側部材25を断熱材26で連結した断熱形材である。前記各室内側部材24を下地材12の室内側部材13に、木、樹脂等の断熱材のスペーサ27を介してビス28で連結する。なお、下枠22の室内側部材24は下地材12の室内側部材13に直接ビス止めする。各室外側部材25を下地材12の室外側部材14に当接し、新設の断熱枠体20を既存の金属枠体3の上に下地材12を介してかぶせるようにして取付ける。」(段落【0025】)
(記載事項3-8)
「このようにすることで、室外の冷気は既存の金属枠体3の室内側部に伝わり難いから、室外の冷気が既存の金属枠体3を通って断熱枠体20の室内側部(室内側部材24)に伝わり難い。しかも、室外の冷気は各枠の室外側部材25と下地材12の室外側部材14に伝わるが、これら室外側部材25,14に伝わった室外の冷気は下地材12の室内側部材13、既存の金属枠体3の室外側部に伝わり難い。」(段落【0026】)
(記載事項3-9)
図1において、内向突片8の付け根付近より上部に斜線が図示されているから、上記記載事項3-5を参酌すると、内向突片は付け根付近から切断されることが示されている。
(記載事項3-10)
図3には、下枠22は、室外側から室内側に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えていることが図示されている。

甲第4号証(雑誌 建築技術 No.395)には以下の記載がある。なお、記載事項4-2の(1)?(9)は、原文では○の中に数字が入っているものである。
(記載事項4-1)
「「アルベスト工法」((株)エービーシー商会)が採用された。この工法は
・古いアルミサッシやスチールサッシ、木製サッシを、建物本体をこわすことなく、一体枠となった取替え専用の新しい高性能アルミサッシと取り替える工法で、溶接や溶断をいっさい使わずに専用の施工器具と金具だけで短時間に取付けできる。」(187頁右欄4?10行)
(記載事項4-2)
「施工手順は、
(1)旧アルミサッシの取りはずし:旧枠周りを残し、バール、専用タガネを使い障子を取りはずす。
(2)無目、方立の切断:専用の電動カッターで切断(写真1参照)。
(3)旧アルミサッシ四方枠に専用金具取付け:枠周りを清掃後、旧アルミサッシ四方枠体に400?500mm間隔でステンレス鋼でできた専用金具をビスで取り付ける(写真2参照)。
(4)新アルミサッシ枠体に専用金具取付け:枠体の四方にステンレス鋼でできた専用金具を取り付ける(上、縦枠金具は枠体面を可動できる)。
(5)新アルミサッシ枠体の取付け:旧枠体内部にはめ込み、上からつり込みの形にして縦、下と順次仮取付けをする(写真3参照)。
(6)微調整、取付け:専用金具を前後、左右、上下に微調整を行ない、本取付けする。
(中略)
(9)内部カバーのはめ込み:両縦枠、上下枠の順にはめ込み取り付ける。」(188頁左欄6行?右欄14行)
(記載事項4-3)
187頁左欄の「アルミ枠基本図」には、
(A)「新しい高性能アルミサッシ」の下枠は、室外から室内に向かって上方へ傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えていること、
(B)図中の下部であって「古いアルミサッシ」の下枠の室外側案内レール相当部分にハッチングが施されそこからの引き出し線に「撤去」と記されており、つまり、「古いアルミサッシ」の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すること、
(C)「新しい高性能アルミサッシ」の下枠の室内寄りに「SUSl.5」と表示されたものが、「古いアルミサッシ」の下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面に接して設けられていること、
(D)「新しい高性能アルミサッシ」の下枠の室外寄りは撤去された室外側案内レール近くに図示されたボルトを介して「古いアルミサッシ」の下枠の室外寄りに接して支持されていること、
が図示されている。

甲第5号証(特開昭61-229086号公報)には以下の記載がある。
(記載事項5-1)
「建物壁体たる建造物躯体1に取付けられている鋼製やアルミニウム製の古い窓枠2のうち不必要な突出部分などを適宜切除し、発錆部分に錆止め塗装を行い、しかる後この古い窓枠2に取付金物4によってアルミニウム製などの新しい窓枠3を取付けるのであるが、まず古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bをビスまたはアンカーボルト(ホールインアンカー)15aによって固着する。この取付金物4b主に鋼または鉄板の曲げ加工によって製作され、その室内側に新しい窓枠3の見込み方向(室内外方向)の取付基準となる垂直取付基準片部6と見付け方向(上下方向)の取付基準となる水平取付基準片部7とが設けられており、室外側には水切り枠9と新しい下枠3bとをビス止めするための室外側垂直片10が適宜設けられて、全体として略階段状の断面形状に形成される。」(2頁右上欄15行?左下欄10行)
(記載事項5-2)
「一方、第4図、特に第5図に示すように新しい窓枠3は予め四周枠状に枠組されると共に、そのうち下枠3bを除いた上枠3a及び左右縦枠3c、3dに上枠及び左右縦枠用取付金物4a、4c、4dを固着したものを一体物5として組立てる。」(2頁左下欄11?15行)
(記載事項5-3)
「以上のように新しい窓枠3にその上枠及び左右縦枠の三方に取付金物4a、4c、4dを取付けてなるものを一体物5として、これを第4図及び第5図に示すように室内側より古い窓枠3内に嵌め入れる。」(2頁右下欄14?18行)
(記載事項5-4)
「しかる後古い窓枠2内で、上記一体物5を垂直状態に立て掛け、その下枠3bを下枠用取付金物4bの見込み方向取付基準片部6に直接に当てつけて見込み方向の心出しを行うと共に、下枠3bと見付け方向取付基準片部7との間に現場合わせで決められた高さのライナーなどの調整具8を介在させるなど間接的に当てつけることによって見付け方向の心出しを行い、それぞれビス20、21によって両者を固着し、さらにまた上枠用取付金物4aの水平片部11においても適宜適当量のライナー22を介在させてビス23によって該水平片部11を古い上枠2aに固着し、同様に垂直片部12を直接に古い上枠2aにビス24によって固着する。」(3頁左上欄3?15行)

甲第6号証(実公昭58-45431号公報)には以下の記載がある。
(記載事項6-1)
「本考案は旧窓枠に新窓枠を取り付けるとき、新窓枠の見込寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関する。」(第1欄31?33行)
(記載事項6-2)
「図に於て1は既存のスチール製下枠にして室内側立上り壁より延出した先端は屈曲して逆U字形を形成し上表面1aは平面である。2は既存のスチール製水切版で先端の水切部は図示を略されており室内側の立上り壁2aは旧下枠の垂下フランシ1bに内装している。3は建造物壁体にして通常コンクリートである。4は内障子用の敷居材である。以上が既設スチールサッシ障子を取り除いた旧窓枠の状態である。5は新窓枠にして其の側面形状は階段状を呈して室外に向つて下り勾配を形成し、その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し、又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5cを形成してる。6はアンカー片にして6aはその基板にして6bは基板と直交するフランジである。」(第2欄7?23行)
(記載事項6-3)
「次に取付工法の一例を概説すると、アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠を現地に運搬し新窓枠の外側フランジ5aを複数本のビス8にて新水切板2’を介して旧窓枠にビス止めする。・・・一方アンカーのフランジ6bを上方より複数本のビス8にて旧窓枠にビス止めする。・・・次にアンカー片6と既存の下枠1を覆う目的にて額縁7をブラインドリベット10にて複数個所固定する。額縁7の室内側端はバネ鋼9にて係止固定される。以上の現地作業にて凡て終了する。」(第3欄12行?第4欄4行)

甲第7号証(特開平7-286439号公報)には以下の記載がある。
(記載事項7-1)
「本発明は、窓・出入り口等の建物開口部に窓枠、ドア枠等の開口部枠を取り付ける方法に関する。」(段落【0001】)
(記載事項7-2)
「下部捨て枠3bの上面には下枠4b及び下部補助部材6bがスペーサ5及び固定金具20を介して取付けられている。」(段落【0015】)
(記載事項7-3)
「固定金具20は下部捨て枠3bの上面に沿うように階段状に屈曲され、スペーサ5,5を介して第1の矩形中空部16及び第2の矩形中空部16´の上面に適宜間隔毎に載置され、ビス18bで固定される。」(段落【0017】)

甲第8号証(特開平11-50749号公報)には以下の記載がある。
(記載事項8-1)
「本発明は、以上のような従来の課題を解消し、断熱効果等が十分でない古い窓を簡単に断熱効果等が高い新しい窓に変え得ることができる窓形成方法を提供するものである。」(段落【0005】)
(記載事項8-2)
「本実施例は、図1,図2に図示するように、一重サッシ8が設けられた公知形状の古い窓枠1から該一重サッシ8を取り外し、残ったこの古い窓枠1をそのまま基礎にして、この古い窓枠1の内面周囲に適宜断熱効果と結露防止効果等を持つプラスチック材等で形成し該古い窓枠1の内面形状に合致する形状の取付部材3を嵌合取り付けし、古い窓枠1の前側に防水効果や断熱効果を有するシール部材4を接着等により設け、シール部材4を間に挟んで前側に二重サッシ9や断熱サッシ等が設けられた公知形状の新しい窓枠2を取り付ける。この古い窓枠1に対する新しい窓枠2の取り付けは、新しい窓枠2を古い窓枠1の前面と取付部材3の図2における下面とに当接させ、ビス5により取り付ける。尚、取付部材3はビス受け作用も発揮する。」(段落【0013】)

甲第9号証(実願昭53-123666号(実開昭55-40156号)のマイクロフィルム)には以下の記載がある。
(記載事項9-1)
「本考案は、立上りを低くして、意匠的にスマートにすると共に、有効開口面積を大きくし、且つ、掃き出しが可能なようにした、古い窓枠に新しい窓枠を取付ける所謂取替サッシの下枠取付構造に関するものである。」(3頁2?6行)
(記載事項9-2)
「前傾斜する既存下枠(1)上に、前端と後端に垂下片(2)と起立片(3)を有する取付金具(4)の下面を添設し、該取付金具(4)と既存下枠(1)とをリベット(5)等により固定すると共に、取付金具(4)上に、前端に水切皿片(6)を有し、後端の立上り壁(7)を低くした新下枠(8)を、立上り壁(7)の上端が取付金具(4)の起立片(3)上よりやゝ突出するようにし支持して、新下枠(8)前後端の垂下片(9)と立上り壁(7)を、ビス(10)(11)を介して、取付金具(4)前後端の垂下片(2)と起立片(3)に固定し、且つ、新下枠(8)後端の立上り壁(7)上端と開口部仕上上面(12)との間に、例えば第二図示の如き前方に上向傾斜面(13)を有する膳板(14)の前後端下を当着して、該膳板(14)を、既存下枠(1)後端の水平片(15)にビス(16)を介して固定してなるものである。」(4頁6行?5頁7行)
(記載事項9-3)
「また、第三図に示すように、新下枠(8)の立上り壁(7)上端が既存下枠(1)の水平片(15)面とほぼ同じ高さにある場合には、膳板(14)は平面状のものとすることは云うまでもない。」(6頁3?6行)

甲第10号証(特開2002-81155号公報)には以下の記載がある。
(記載事項10-1)
「この発明は、スケルトン開口部に形成する壁体の構造に関する。スケルトン開口部は、木軸構造の住宅では棟上となった段階の、鉄骨構造の建物では鉄骨組が完了した段階の、鉄筋コンクリート構造の建物ではコンクリートの打設が完了した段階の、それぞれ、未だ壁が形成されていないいわゆる骨組み段階の建物において、梁もしくは天井と床及び左右の柱もしくは壁によって囲まれた開口部である。なお、壁に設けて窓とする開口部は窓用開口部と称する。」(段落【0001】)
(記載事項10-2)
「図1は、建築中の集合住宅の一部を正面から見たもので、鉄筋コンクリート構造により躯体1を完成したスケルトン状態にある。躯体1は、配筋後、型枠を組み、コンクリートを打設して形成した柱2と梁3及び床4があり、梁3側の垂れ壁5、床4からの立ち上げ壁6、及び左右の柱2a,2bに沿った左右の袖壁7a,7bで囲まれた空間がスケルトン開口部8となっている。」(段落【0008】)
(記載事項10-3)
「スケルトン開口部8に、上取り付けフレーム9、下取り付けフレーム10、方立11(11a,11b)、壁構成体12(12a?12c 図2)及びインフィル13(13a?13d 図3,図5)を用いて壁体を構成する。上取り付けフレーム9、下取り付けフレーム10は、スケルトン開口部8の上辺と下辺に躯体1側のアンカー14a,14bを利用して固定してある(図3)。上取り付けフレーム9は、断面が全体として下方ヘ開口したコ字形の枠材で、断面において水平部15と室外側の垂下片16及び室内側の垂下片17を有し、水平部15の上面に前記アンカー14aとの係合部18を有し、室内側の垂下片17の下部を室内側に屈曲して形成した取り付け片20を有する(図4)。なお、垂下片17の下部で室外側は平らな当接部19となっている。」(段落【0009】)
(記載事項10-4)
「下取り付けフレーム10は、上面を傾斜させた屋外側の水切り部分21と屋内側の支持部分22を一体に成形してあり、支持部分22は、下面側に前記のアンカー14bと係合する係合部23を有し、水切り部分21と支持部分22がつながる個所の上面に室外側立ち上がり片24を有し、支持部分22の室内側は上方に屈曲されて室内側立ち上がり片25となり、その上端部に室外側に突出した水平片26を、また、反対側で室内側に突出した取り付け片27を有している。」(段落【0010】)
(記載事項10-5)
「ついで、壁構成体12であるサッシ12a,12b,12cを室外側からスケルトン開口部8に嵌め、下枠36の室内側当接片38の下端を下取り付けフレーム10の係止突片39の室内側に係止させて、下枠31を下取り付けフレーム10上に載置安定させ、各上枠30の室外側当接片35を上取り付けフレーム9の室外側垂下片16に当て付け、ねじ46で着脱可能に取り付ける。」(段落【0014】)
(記載事項10-6)
「下枠31は同様にして、室外側当接片37を下取り付けフレーム10の室外側立ち上がり片24に当て付けてねじ49で着脱可能に取り付け、室内側当接片338は、水平片26の先端に当接し、この部分に補助的な取り付け部材50を固定してから、これを利用して上方から下方へねじ51をねじ込んで取り付ける。」(段落【0015】)
(記載事項10-7)
図3及び図4には、室内側立ち上がり片25の上端と下枠31の上端がほぼ同じ高さに図示されている。

甲第11号証(特開平9-177437号公報)には以下の記載がある。
(記載事項11-1)
「本発明は、古くなった窓を新窓に改装するための改装用窓ユニットおよび室内がわからの作業のみにより新設窓に改装するための改装方法に関する。」(段落【0001】)
(記載事項11-2)
「前記窓ユニット1の窓枠10の内、上枠10A、側枠10C、10Dの外周面に対しては、改装後状態で躯体開口面(モルタルMによる見込み面)に接触する舌片状タイト部材17、12…(以下、レインバリヤという。)が設けられ、外側からのシール施工なしに気密性、水密性が保たれるようになっている。」(段落【0020】)

甲第12号証(特開平8-93325号公報)には以下の記載がある。
(記載事項12-1)
「本発明は、集合住宅の台所や浴室あるいは便所等の小窓に好適に実施することができる改装窓枠構造に関する。」(段落【0001】)
(記載事項12-2)
「前記下地材26は、鋼鉄製であって、前記既設窓枠24の上枠部材24a、下枠部材24b、および各縦枠部材24c,24dにそれぞれ対応して溶接によって固定される上枠部材26a、下枠部材26b、および一対の縦枠部材26c,26dによって構成される。これらの上枠部材26a、下枠部材26bおよび各縦枠部材26c,26dは、室内22側から既設窓枠24に個別的に固定される。」(段落【0010】)
(記載事項12-3)
「前記下地枠30は、アルミニウム合金から成る押出し形材であって、前記下地材26の上枠部材26a、下枠部材26bおよび各縦枠部材26c,26dにそれぞれ対応して設けられる上枠部材30a、下枠部材30bおよび各縦枠部材30c,30dによって構成される。これらの上枠部材30a、下枠部材30bおよび各縦枠部材30c,30dは、予め枠組みされた状態で、ライナ37a?37dを介してビス38a?38dによって下地材26にそれぞれ固定される。このような下地枠30を下地材26に取付けるにあたっては、枠組みされた下地枠30を室内22側から室外28側に一旦持ち出した後、室内22側に引き寄せて前記ライナ37a?37dとともに前記下地材26に固定する。これによって下地枠30を現場で組み立てる必要がなくなり、工期を短縮することができる。」(段落【0011】)
(記載事項12-4)
「このような下地枠30には、前記新設窓枠33が固定される。この新設窓枠33は、下地枠30の上枠部材30a、下枠部材30bおよび各縦枠部材30c,30dに対応してそれぞれ設けられる上枠部材33a、下枠部材33bおよび各縦枠部材33c,33dによって構成され、これらの上枠部材33a、下枠部材33bおよび各縦枠部材33c,33dはアルミニウム合金から成る押出し形材である。また上枠部材33a、下枠部材33bおよび各縦枠部材33c,33dには、その長手方向に延びる蟻溝39a?39dがそれぞれ形成され、これらの蟻溝39a?39dにはガスケット40a?40dが嵌着される。これらのガスケット40a?40dは、前記蟻溝39a?39dにそれぞれ嵌まり込む嵌合部41a?41dと、各嵌合部41a?41dに連なる略C字状の当接部42a?42dとを有する。各嵌合部41a?41dは硬質合成樹脂から成り、また各当接部42a?42dは弾発性を有する軟質の発泡合成樹脂から成る。このようなガスケット40a?40dによって水密性が達成される。」(段落【0012】)

(3)甲第1号証を中心とした主張についての検討
(3-1)本件特許発明1について
(3-1-1)甲1発明について
甲第1号証の記載事項1-1?記載事項1-9を参酌すれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「古くなったアルミサッシを性能の優れたアルミサッシに取り替えるに際し、
建物の開口部に設けられている旧サッシ上枠材(1)、室内側レールと室外側レールを備えた旧サッシ下枠材(2)、旧サッシ左竪枠材(3)及び旧サッシ右竪枠材を連結して成る旧サッシ枠(A)を取外すことなくそのままの状態とし、
旧サッシ下枠材(2)と改装用サッシ下枠材(5)の間に介在させる支持部材(C)を、旧サッシ下枠材(2)の室内外方向中央部に設け、旧サッシ下枠材(2)の室外側レールにネジ止めし、
改装用サッシ上枠材(4)、室外側から室内側に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改装用サッシ下枠材(5)、改装用サッシ左竪枠材(6)及び改装用サッシ右竪枠材を枠組み連結した改装用サッシ枠(B)を、旧サッシ枠(A)に室外側から室内側へ向かって嵌め込み、その改装用サッシ下枠材(5)の室内外方向中央部を支持部材(C)で支持し、
改装用サッシ下枠材(5)の当接用支片(8)の下端を旧サッシ下枠材(2)と重合状態で建物躯体を成す窓台(10)に釘打ち固定する、アルミサッシの改装方法。」

(3-1-2)対比
甲1発明と本件特許発明1を対比する。なお、甲1発明の「旧サッシ枠(A)」及び「改装用サッシ枠(B)」はレールを備えていることから、「旧サッシ枠(A)」及び「改装用サッシ枠(B)」が「引戸枠」であることは明らかであり、甲1発明の改装対象のアルミサッシが「引戸装置」ということができる。
甲1発明の「旧サッシ上枠材(1)」は本件特許発明1の「既設上枠」に相当し、以下同様に、
「旧サッシ下枠材(2)」は「既設下枠」に、
「旧サッシ左竪枠材(3)」及び「旧サッシ右竪枠材」は「既設竪枠」に、
「旧サッシ枠(A)」は「既設引戸枠」に、
「取外すことなくそのままの状態とし」は「残存し」
「室内側レール」は「室内側案内レール」に、
「室外側レール」は「室外側案内レール」に、
「支持部材(C)」は「取付け補助部材」に、
「改装用サッシ上枠材(4)」は「改修用上枠」に、
「改装用サッシ下枠材(5)」は「改修用下枠」に、
「改装用サッシ左竪枠材(6)」及び「改装用サッシ右竪枠材」は「改修用竪枠」に、
「改装用サッシ枠(B)」は「改修用引戸枠」に、
「室外側から室内側へ向かって嵌め込み」は「室外側から挿入し」に、
「改装用サッシ下枠材(5)の当接用支片(8)」は「改修用下枠の前壁」に、
「アルミサッシの改装方法」は「引戸装置の改修方法」に
それぞれ相当する。
そして、甲1発明は「古くなったアルミサッシを性能の優れたアルミサッシに取り替える」ものであり、アルミサッシをアルミニウム合金の押出し形材から形成することは常套手段であるから、甲1発明の「旧サッシ枠(A)」を構成する「旧サッシ上枠材(1),旧サッシ下枠材(2),旧サッシ左竪枠材(3)及び旧サッシ右竪枠材」及び「改装用サッシ枠(B)」を構成する「改装用サッシ上枠材(4),改装用サッシ下枠材(5),改装用サッシ左竪枠材(6)及び改装用サッシ右竪枠材」はアルミニウム合金の押出し形材から形成されたものと認められる。
また、甲1発明は、改装用サッシ枠(B)を旧サッシ枠(A)に嵌め込みその改装用サッシ下枠材(5)の室内外方向中央部を支持部材(C)で支持する際には改装用サッシ枠(B)は支持部材(C)によって少なくとも上下方向の位置が規定されることは明らかであるから、改装用サッシ枠(B)を支持部材(C)を基準として取付けるものということができる。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは
「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠に取付け補助部材を設け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、前記改修用下枠を前記取付け補助部材で支持し、
前記改修用下枠の前壁を、既設下枠の前壁に固定し、
改修用引戸枠を取付部材を基準として取り付ける引戸装置の改修方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
既設下枠の室外側案内レールを、本件特許発明1では、付け根付近から切断して撤去するのに対し、甲1発明では、切断しない点。
[相違点2]
取付け補助部材を、本件特許発明1では、既設下枠の室内寄りに設け、既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けるのに対し、甲1発明では既設下枠の室内外方向の中央部に設け、既設下枠の室外側レールにネジ止めする点。
[相違点3]
改修用下枠について、本件特許発明1では、その室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、室内寄りを取付け補助部材で支持するのに対し、甲1発明では、その室外寄りを既設下枠に支持せず、室内外方向中央部を取付け補助部材で支持する点。
[相違点4]
本件特許発明1では、背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し、甲1発明ではそのような構成となっていない点。
[相違点5]
本件特許発明1では、改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定するのに対し、甲1発明では、改修用下枠の前壁と既設下枠とを重合状態で建物躯体に釘打ち固定する点。

(3-1-3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
(イ)既設サッシの窓中心側に新設サッシを取り付ける際に、広い開口面積を確保するため、既設サッシの下枠における案内レールを撤去することは、請求人の主張するとおり、甲第2号証(記載事項2-2、記載事項2-3参照)、甲第3号証(記載事項3-5参照)に示されるように、従来周知技術と認められる。
(ロ)しかしながら、甲1発明において支持部材(C)は「改装用サッシ枠材(4)(5)(6)の取付け時の安定性をよくするために用いられ」(記載事項1-5参照)たものであって、「改装用サッシ枠は支持部材を介して旧サッシ枠に重合するものであるから、安定よく窓開口部に納めることができる」(記載事項1-7参照)という効果を奏するものである。したがって、たとえ既設サッシの下枠における案内レールを撤去することが周知技術であったとしても、甲1発明の室外側案内レールは、改装用サッシ枠材(4)(5)(6)の取付け時の安定性をよくするための支持部材(C)の支持並びに固定のための構造となっており、それを欠くと改修用下枠の支持と取り付けの安定性を失うことになるものであるから、室外側案内レールを撤去することを当業者であれば想到するはずもなく、この相違点1を当業者が容易になしえたものとすることはできない。
(ハ)仮にそうでないとしても、甲1発明においては、室外側案内レールを撤去しただけでは支持部材(3)は残存し、改装用サッシ下枠材(5)の上下位置を下げることはできず広い開口面積を確保することはできないから、広い開口面積を確保するため案内レールを撤去するという周知技術を甲1発明に適用する動機付けは存在しない。したがって、相違点1を容易に想到し得たものとすることはできない。

[相違点2]について
本請求項1に「取付け補助部材をビスで取付け、この後に、・・・改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、」とあるように、本件特許発明1の「既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ることは、改修用引戸枠を既設引戸枠内に挿入する前の段階において行われることである。
請求人が「取付け補助部材を既設下枠の室内寄りに設ける」点が記載されていると主張する(審判請求書33頁2?3行)甲第6号証において、「取付け補助部材」に相当するとされる「アンカー6」は、考案の詳細な説明に「アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠を現地に運搬し・・・一方アンカーのフランジ6bを上方より複数本のビス8にて旧窓枠にビス止めする。」(記載事項6-3参照)と記載されているように、新窓枠を旧窓枠に取付ける前の段階において、新窓枠に挿入されているものであって、「既設下枠の室内寄りに設け」たものでない。更に、アンカー6は、そのフランジ6bが旧窓枠1の室内側立上り壁より延出した上表面1aにビス止めされるものであるから、「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」たものでもない。
また、取付け補助部材を既設下枠の背後壁立面部に固着することが周知ないし公知であるとの主張(審判請求書34頁1?4行)の根拠としている甲第2号証の第4図においては、サッシ取付け部材(13)は既設下枠の背後壁立面部に固着したものといえるが、当該サッシ取付け部材(13)は既設サッシの水切り部(2e)を除く室内外方向全体に設けたものであって「既設下枠の室内寄りに設け」たものではない。そして、サッシ取付け部材(13)は、縁部(13b)にて新設サッシ(10)の脚部(11b)を固定支持するものであるから、「既設下枠の室内寄り」にすることもできない。
同じく取付け補助部材を既設下枠の背後壁立面部に固着することが周知ないし公知であるとの主張(審判請求書34頁1?4行)の根拠としている甲第4号証について検討する。アルミ枠基本図のSUS1.5部材について「旧アルミサッシ四方枠に専用金具取付け:枠周りを清掃後、旧アルミサッシ四方枠体に400?500mm間隔でステンレス鋼でできた専用金具をビスで取り付ける(写真2参照)。」及び「新アルミサッシ枠体に専用金具取付け:枠体の四方にステンレス鋼でできた専用金具を取り付ける(上、縦枠金具は枠体面を可動できる)。」(記載事項4-2)と記載されているが、新アルミサッシ四方枠を旧アルミサッシ四方枠に取付ける前の段階において、SUS1.5部材が旧アルミサッシ四方枠の下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着されているか不明である。また、アルミ枠基本図のSUS1.5部材について「新アルミサッシ枠体の取付け:旧枠体内部にはめ込み、上からつり込みの形にして縦、下と順次仮取付けをする」(記載事項4-2参照)、「微調整、取付け:専用金具を前後、左右、上下に微調整を行ない、本取付けする。」(記載事項4-2)との記載はあるが、特に「上からつり込みの形にして縦、下と順次仮取付けをする」との記載からSUS1.5部材は室内外方向の位置を調整するのみの機能である可能性があり、新アルミサッシ枠体を支持するものか不明である。そうすると、SUS1.5部材が、改修引戸枠を既設引戸枠に挿入する前の段階で既設下枠に固着されたものであって、改修用下枠を支持する機能を有する「取付け補助部材」に相当するものか不明である。
したがって、相違点2が周知又は公知であるとすることができず、相違点2を容易に想到し得たものとすることはできない。

以上のとおり、[相違点1]及び[相違点2]について想到容易とすることができないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(3-2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、
本件特許発明1の「室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、」との構成を
「室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し、前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し、前記改修用下枠の室外寄りを、」と限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明1が(3-1)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明2は、甲1発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(3-3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、
本件特許発明1の「前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、」との構成を
「前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すると共に、室内側案内レールを切断して撤去し、」と限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明1が(3-1)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明3は、甲1発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(3-4)本件特許発明4について
(3-4-1)甲1’発明について
甲第1号証の記載事項1-1?記載事項1-9を参酌すれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1’発明」という。)が記載されていると認められる。
「古くなったアルミサッシを性能の優れたアルミサッシに取り替えた改装サッシであって、
建物の開口部に取外すことなくそのままの状態とした旧サッシ枠(A)は、旧サッシ上枠材(1)、室内側レールと室外側レールを備えた旧サッシ下枠材(2)、旧サッシ左竪枠材(3)及び旧サッシ右竪枠材を有し、旧サッシ下枠材(2)と改装用サッシ下枠材(5)の間に介在させる支持部材(C)を旧サッシ下枠材(2)の室内外方向中央部に設け、その支持部材(C)が旧サッシ下枠材(2)の室外側レールにネジ止めして取付けてあり、
この旧サッシ枠(A)内に、改装用サッシ上枠材(4),室外側から室内側に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改装用サッシ下枠材(5)、改装用サッシ左竪枠材(6)及び改装用サッシ右竪枠材を枠組み連結した改装用サッシ枠(B)が嵌め込まれ、
この改装用サッシ枠(B)の改装用サッシ下枠材(5)の室内外方向中央部が支持部材(C)で支持され、
改装用サッシ下枠材(5)の当接用支片(8)の下端が旧サッシ下枠材(2)と重合状態で建物躯体を成す窓台(10)に釘打ち固定されている、改装サッシ。」

(3-4-2)対比
甲1’発明と本件特許発明4を対比する。なお、甲1’発明の「旧サッシ枠(A)」及び「改装用サッシ枠(B)」はレールを備えていることから、「旧サッシ枠(A)」及び「改装用サッシ枠(B)」が「引戸枠」であることは明らかであり、甲1’発明の改装対象のアルミサッシが「引戸装置」ということができる。
甲1’発明の「旧サッシ上枠材(1)」は本件特許発明4の「既設上枠」に相当し、以下同様に、
「旧サッシ下枠材(2)」は「既設下枠」に、
「旧サッシ左竪枠材(3)」及び「旧サッシ右竪枠材」は「既設竪枠」に、
「旧サッシ枠(A)」は「既設引戸枠」に、
「取外すことなくそのままの状態とした」は「残存した」
「室内側レール」は「室内側案内レール」に、
「室外側レール」は「室外側案内レール」に、
「支持部材(C)」は「取付け補助部材」に、
「改装用サッシ上枠材(4)」は「改修用上枠」に、
「改装用サッシ下枠材(5)」は「改修用下枠」に、
「改装用サッシ左竪枠材(6)」及び「改装用サッシ右竪枠材」は「改修用竪枠」に、
「改装用サッシ枠(B)」は「改修用引戸枠」に、
「嵌め込まれ」は「挿入され」に、
「改装用サッシ下枠材(5)の当接用支片(8)」は「改修用下枠の前壁」に、
それぞれ相当する。
そして、甲1’発明は「古くなったアルミサッシを性能の優れたアルミサッシに取り替え」るものであり、アルミサッシをアルミニウム合金の押出し形材から形成することは常套手段であるから、甲1発明の「旧サッシ枠(A)」を構成する「旧サッシ上枠材(1),旧サッシ下枠材(2),旧サッシ左竪枠材(3)及び旧サッシ右竪枠材」及び「改装用サッシ枠(B)」を構成する「改装用サッシ上枠材(4),改装用サッシ下枠材(5),改装用サッシ左竪枠材(6)及び改装用サッシ右竪枠材」はアルミニウム合金の押出し形材から形成されたものと認められる。

よって、本件特許発明4と甲1’発明とは
「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、その既設下枠に取付け補助部材を設け、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
前記改修用下枠が前記取付け補助部材で支持され、
前記改修用下枠の前壁を、既設下枠の前壁に固定し、
改修用引戸枠を取付部材を基準として取り付ける引戸装置の改修方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点6]
既設引戸枠の室外側案内レールは、本件特許発明4では、付け根付近から切断して撤去されるのに対し、甲1’発明では、切断しない点。
[相違点7]
取付け補助部材を、本件特許発明4では、既設下枠の室内寄りに設け、既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けるのに対し、甲1’発明では既設下枠の室内外方向の中央部に設け、既設下枠の室外側レールにネジ止めする点。
[相違点8]
改修用引戸枠の改修用下枠について、本件特許発明4では、その室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、室内寄りが取付け補助部材で支持されるのに対し、甲1’発明では、その室外寄りが既設下枠に支持されず、その室内外方向中央部が取付け補助部材で支持される点。
[相違点9]
本件特許発明4では、背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し、甲1’発明ではそのような構成となっていない点。
[相違点10]
本件特許発明4では、改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されているのに対し、甲1’発明では、改修用下枠の前壁と既設下枠が重合状態で建物躯体に釘打ち固定されている点。

(3-4-3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点6]について
(イ)既設サッシの窓中心側に新設サッシを取り付ける際に、広い開口面積を確保するため、既設サッシの下枠における案内レールを撤去することは、請求人の主張するとおり、甲第2号証(記載事項2-2、記載事項2-3参照)、甲第3号証(記載事項3-5参照)に示されるように、従来周知技術と認められる。
(ロ)しかしながら、甲1’発明において支持部材(C)は「改装用サッシ枠材(4)(5)(6)の取付け時の安定性をよくするために用いられ」(記載事項1-5参照)たものであって、「改装用サッシ枠は支持部材を介して旧サッシ枠に重合するものであるから、安定よく窓開口部に納めることができる」(記載事項1-7参照)という効果を奏するものである。したがって、たとえ既設サッシの下枠における案内レールを撤去することが周知技術であったとしても、甲1’発明の室外側案内レールは、改装用サッシ枠材(4)(5)(6)の取付け時の安定性をよくするための支持部材(C)の支持並びに固定のための構造となっており、それを欠くと改修用下枠の支持と取り付けの安定性を失うことになるものであるから、室外側案内レールを撤去することを当業者であれば想到するはずもなく、この相違点6を当業者が容易になしえたものとすることはできない。
(ハ)仮にそうでないとしても、甲1’発明においては、室外側案内レールを撤去しただけでは支持部材(3)は残存し、改装用サッシ下枠材(5)の上下位置を下げることはできず広い開口面積を確保することはできないから、広い開口面積を確保するため案内レールを撤去するという周知技術を甲1’発明に適用する動機付けは存在しない。したがって、相違点6を容易に想到し得たものとすることはできない。

[相違点7]について
請求項1に「既設引戸枠は、・・・その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、この既設引戸枠内に、・・・改修用引戸枠が挿入され、」とあるように、本件特許発明4の「取付け補助部材」は「既設下枠」すなわち「既設引戸枠」に取り付けたものであり、本件特許発明では「取付け補助部材」が取り付けられた「既設引戸枠」内に「改修用引戸枠」が挿入されるものである。
請求人が「取付け補助部材を既設下枠の室内寄りに設ける」点が記載されていると主張する(審判請求書33頁2?3行)甲第6号証において、「取付け補助部材」に相当するとされる「アンカー6」は、考案の詳細な説明に「アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠を現地に運搬し・・・一方アンカーのフランジ6bを上方より複数本のビス8にて旧窓枠にビス止めする。」(記載事項6-3参照)と記載されているように、新窓枠(「改修用引戸枠」に相当)に取り付けられたものであって、「既設下枠の室内寄りに設け」たものでない。更に、アンカー6は、そのフランジ6bが旧窓枠1の室内側立上り壁より延出した上表面1aにビス止めされるものであるから、「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」たものでもない。
また、甲第2号証及び甲第4号証については、「(3-1-3)判断」「[相違点2]について」における甲第2号証及び甲第4号証の検討結果を援用する。
したがって、相違点7が周知又は公知であるとすることができず、相違点7を容易に想到し得たものとすることはできない。

以上のとおり、[相違点6]及び[相違点7]について想到容易とすることができないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(3-5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、
本件特許発明4の構成に
「前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し、
前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し、」との構成を付加して限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明4が(3-4)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明5は、甲1’発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(3-6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、
本件特許発明4の「前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、」との構成を
「前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に、室内側案内レールは切断して撤去され、」と限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明4が(3-4)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明6は、甲1’発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(4)甲第3号証を中心とした主張についての検討
(4-1)本件特許発明1について
(4-1-1)甲3発明について
甲第3号証の記載事項3-1?記載事項3-10を参酌すれば、甲第3号証には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「建物躯体1の開口部2に取付けてあるアルミ押出形材からなる上枠4、下枠5、左右の縦枠6とアルミ押出形材からなる複数の内向突片8を有する既存の金属枠体3を残存し、
既存の金属枠体3における下枠5の各内向突片8を付け根付近から切断して除去し、既存の金属枠体3における下枠5に下地材12を設け、この下地材12を既存の金属枠体3における下枠5のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部にビス16で取付け、
この後に、アルミ押出形材の室内側部材24とアルミ押出形材の室外側部材25を断熱材26で連結した断熱形材である上枠21、左右の縦枠23、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた下枠22を有する新設の断熱枠体20を、その室内側部材24を下地材12の室内側部材13にビス止めし、その室外側部材25を下地材12の室外側部材14に当接させて、新設の断熱枠体20を既存の金属枠体3の上に下地材12を介してかぶせるようにして取付ける、既存の引き違い窓を新設の断熱引き違い窓に改修する改修方法。」

(4-1-2)対比
甲3発明と本件特許発明1を対比する。なお、甲3発明は「既存の引き違い窓を新設の断熱引き違い窓に改修する」ものであるから、「既存の金属枠体3」及び「新設の断熱枠体20」が「引戸枠」であることは明らかであり、甲3発明の改装対象は「引戸装置」ということができる。また、下枠5から上方へ延びた「内向突片8」がレールの機能を有することは明らかである。
甲3発明の「建物躯体1」は本件特許発明1の「建物」に相当し、以下同様に、
「上枠4」は「既設上枠」に、
「下枠5」は「既設下枠」に、
「左右の縦枠6」は「既設竪枠」に、
「既存の金属枠体3」は「既設引戸枠」に、
「内向突片8」は「室内側案内レール」及び「室外側案内レール」に、
「下地材12」は「取付け補助部材」に、
「上枠21」は「改修用上枠」に、
「下枠22」は「改修用下枠」に、
「左右の縦枠23」は「改修用竪枠」に、
「新設の断熱枠体20」は「改修用引戸枠」に、
「既存の引き違い窓を新設の断熱引き違い窓に改修する改修方法」は「引戸装置の改修方法」に、
それぞれ相当する。
そして、甲3発明の「既存の金属枠体3における下枠5のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部」のうち垂直部分は、本件特許発明1の「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面」に相当する。
アルミ押出形材をアルミニウム合金で形成することは常套手段であり、甲3発明と本件特許発明は、改修用引戸枠を構成する改修用上枠、改修用竪枠及び改修用下枠に、全部か一部かは別にして、アルミニウム合金の押出し形材を用いている点で共通している。
また、甲3発明は、新設の断熱枠材23を既存の金属枠体3に取り付ける時に室内側部材24を下地材12の室内側部材13にビス止めする際には新設の断熱枠材23は室内側部材13によって位置は規定されることは自明であるから、新設の断熱枠材23は下地材12を基準として取付けるものということができる。

よって、本件特許発明1と甲3発明とは
「建物の開口部に取り付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、前記既設下枠に取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材を用いた改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材を用いた改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材を用いた室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を既設引戸枠内へ挿入し、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、
改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点11]
取付け補助部材を、本件特許発明1では、既設下枠の室内寄りに設けたのに対し、甲3発明では既設下枠の室内外方向全体に設けた点。
[相違点12]
改修用引戸枠を構成する改修用上枠、改修用竪枠及び改修用下枠が、本件特許発明1ではアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し、甲3発明ではアルミニウム合金の押出し形材の室内側部材24、断熱材26及びアルミニウム合金の押出し形材の室外側部材25を連結したものから成る点。
[相違点13]
本件特許発明1では、改修用引戸枠を既設引戸枠内に室外側から挿入するのに対し、甲3発明はどのように挿入するか不明である点。
[相違点14]
本件特許発明1では、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持するのに対し、甲3発明ではそのような構成を有していない点。
[相違点15]
本件特許発明1では、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し、甲3発明ではそのような構成を有していない点。
[相違点16]
本件特許発明1では、改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定するのに対し、甲3発明ではそのような構成を有していない点。

(4-1-3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点11]について
甲3発明は、「室外の冷気が残存した既存の金属枠体を通して新設の断熱枠体の室内側部に伝わり難く、新設の断熱枠体の室内側部に結露が生じることがない建具の改修方法を提供すること」(記載事項3-1)を目的とし、「このようにすることで室外側部材25,14に伝わった室外の冷気は下地材12の室内側部材13、既存の金属枠体3の室外側部に伝わり難い」(記載事項3-8)という効果を奏するものである。
そして、下枠5のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部にビス16で取付けられる室内側部材13、新設の断熱枠体20の各室外側部材25が当接する室外側部材14及び断熱材15からなる下地材12は、甲3発明の断熱構造の一端を担うものである。ここで、取付け補助部材に相当する下地材12を「既設下枠の室内寄りに設けた」ものとした場合について検討すると、室内側から室外側に延在する下地材12を室外側の部分を除去する等行うこととなるが、当該室外側の部分(例えば、新設の断熱枠体20の各室外側部材25が当接する部分)は室外の冷気が下地材12と断熱枠体20の間の空間へ流入することを防止していることは自明である。したがって、甲3の下地材12を室内寄りにすることは断熱構造を崩すものである。
そうすると、取付け補助部材を室内寄りに配置することが甲第8号証(取付部材3)に示されるように従来周知であるとしても、甲3発明において下地材12を室内寄りすることは上記断熱構造を崩すことであることは明らかであるから、当業者にとって甲3発明において下地材12を室内寄りにすることは想到し得ないものであって、相違点11を容易に想到し得たものとすることはできない。

[相違点12]について
甲3発明は、断熱を目的とするものであって、断熱材26を介在させることにより、室外側部材25に伝わった室外の冷気が室内側部材24に伝わり難くしたものと認められる。そして、甲3発明において、新設の断熱枠体20の上枠21、下枠22、左右の縦枠23を、断熱材が介在することのないアルミニウム合金の押出し形材とすると、断熱効果が低下することは明らかである。
そうすると、アルミサッシの各枠をアルミニウム合金の押出し形材から形成することが周知慣用技術であったとしても、当業者にとって、断熱を目的とする甲3発明において新設の断熱枠体20の上枠21、下枠22、左右の縦枠23をアルミニウム合金の押出し形材とすることは想到し得ないものであって、相違点12を容易に想到し得たものとすることはできない。

[相違点14]について
甲3発明では、断熱枠体20の各室外側部材25が下地材12の室外側部材14に当接して支持されていて、下地材12を室内寄りにする(この点は相違点11で検討した)前の段階では下地材12が室外側まで延在しているから、室外部材25(「改修用下枠の室外寄り」に相当)を金属枠体3の下枠(「既設下枠」に相当)に接して支持することはできない。したがって、相違点14に係る本件特許発明1の構成は甲3発明において下地材12を室内寄りにした後に採用し得る構成である。
そして、甲3発明において、下地材12を室内寄りにすることは想到し得ないということは、上記「[相違点11]について」で検討したとおりであるから、相違点14に係る本件特許発明1の構成を採用することは不可能であって、相違点14を容易に想到し得たものとすることはできない。
仮に、甲3発明において下地材12を室内寄りとし、下枠22の室外寄りをスペーサを介して下枠5に接して支持した場合、それだけでは断熱効果が低下することは明らかであるから、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持することが甲第6号証図1に記載されているように当業者にとって常識であった(審判請求書43頁11?14行)としても、当業者にとって甲3発明において改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持することは想到し得ないものであって、相違点14を容易に想到し得たものとすることはできない。

以上のとおり、[相違点11]、[相違点12]及び[相違点14]について想到容易とすることができないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明及び甲第6、8号証に記載された技術的事項、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(4-2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、
本件特許発明1の「室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、」との構成を
「室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し、前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し、前記改修用下枠の室外寄りを、」と限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明1が(4-1)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明2は、甲3発明及び甲第6、8、11、12号証に記載された技術的事項、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(4-3)本件特許発明3について
本件特許発明1の「前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、」との構成を
「前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すると共に、室内側案内レールを切断して撤去し、」と限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明1が(4-1)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明3は、甲3発明及び甲第6、8号証に記載された技術的事項、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(4-4)本件特許発明4について
(4-4-1)甲3’発明について
甲第3号証の記載事項3-1?記載事項3-10を参酌すれば、甲第3号証には以下の発明(以下、「甲3’発明」という。)が記載されていると認められる。
「建物躯体1の開口部2残存した既存の金属枠体3は、アルミ押出形材からなる上枠4、下枠5、左右の縦枠6とアルミ押出形材からなる複数の内向突片8を有し、下枠5の各内向突片8を付け根付近から切断して除去し、既存の金属枠体3の下枠5に下地材12を設け、その下地材12が下枠5のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部にビス16で取付けてあり、
この既存の金属枠体3内に、アルミ押出形材の室内側部材24とアルミ押出形材の室外側部材25を断熱材26で連結した断熱形材である上枠21、左右の縦枠23、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた下枠22を有する新設の断熱枠体20が挿入され、
この新設の断熱枠体20の室内側部材24が下地材12の室内側部材13にビス止めされ、
その室外側部材25を下地材12の室外側部材14に当接させて、新設の断熱枠体20を既存の金属枠体3の上に下地材12を介してかぶせるようにして取付けた、
既存の引き違い窓を改修した新設の断熱引き違い窓。」

(4-4-2)対比
甲3’発明と本件特許発明4を対比する。なお、甲3’発明は「既存の引き違い窓を改修した新設の断熱引き違い窓」に関するものであるから、「既存の金属枠体3」及び「新設の断熱枠体20」が「引戸枠」であることは明らかであり、甲’3発明の改装対象は「引戸装置」ということができる。また、下枠5から上方へ延びた「内向突片8」がレールの機能を有することは明らかである。
甲3’発明の「建物躯体1」は本件特許発明4の「建物」に相当し、以下同様に、
「既存の金属枠体3」は「既設引戸枠」に、
「上枠4」は「既設上枠」に、
「下枠5」は「既設下枠」に、
「左右の縦枠6」は「既設竪枠」に、
「内向突片8」は「室内側案内レール」及び「室外側案内レール」に、
「下地材12」は「取付け補助部材」に、
「上枠21」は「改修用上枠」に、
「下枠22」は「改修用下枠」に、
「左右の縦枠23」は「改修用竪枠」に、
「新設の断熱枠体20」は「改修用引戸枠」に、
「既存の引き違い窓を改修した新設の断熱引き違い窓」は「改修引戸装置」に、
それぞれ相当する。
そして、甲3’発明の「既存の金属枠体3における下枠5のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部」のうち垂直部分は、本件特許発明4の「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面」に相当する。
アルミ押出形材をアルミニウム合金で形成することは常套手段であるが、甲3’発明と本件特許発明4は、改修用引戸枠を構成する改修用上枠、改修用竪枠及び改修用下枠に、全部か一部かは別にして、アルミニウム合金の押出し形材を用いている点で共通している。

よって、本件特許発明4と甲3’発明とは
「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、前記既設下枠に取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材を用いた改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材を用いた室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材を用いた改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
前記改修用下枠の室内寄りが前記取付け補助部材で支持された、
改修引戸装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点17]
取付け補助部材を、本件特許発明4では、既設下枠の室内寄りに設けたのに対し、甲3’発明では既設下枠の室内外方向全体に設けた点。
[相違点18]
改修用引戸枠を構成する改修用上枠、改修用竪枠及び改修用下枠が、本件特許発明4ではアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し、甲3’発明ではアルミニウム合金の押出し形材の室内側部材24、断熱材26及びアルミニウム合金の押出し形材の室外側部材25を連結したものから成る点。
[相違点19]
本件特許発明4では、改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるのに対し、甲3’発明ではそのような構成を有していない点。
[相違点20]
本件特許発明4では、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し、甲3’発明ではそのような構成を有していない点。
[相違点22]
本件特許発明4では、改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されているのに対し、甲3’発明ではそのような構成を有していない点。

(4-4-3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点17]は[相違点11]と、[相違点18]は[相違点12]と、[相違点19]は[相違点14]と、それぞれ同じものであるから、[相違点17]、[相違点18]及び[相違点19]に対する判断は、「(4-1-3)判断」における[相違点11]、[相違点12]及び[相違点14]に対する判断を援用する。

そうすると、[相違点17]、[相違点18]及び[相違点19]について想到容易とすることができないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲3’発明及び甲第6、8号証に記載された技術的事項、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(4-5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、
本件特許発明4の構成に
「前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し、
前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し、」との構成を付加して限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明4が(4-4)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明5は、甲3’発明及び甲第6、8、11、12号証に記載された技術的事項、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(4-6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、
本件特許発明4の「前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、」との構成を
「前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に、室内側案内レールは切断して撤去され、」と限定したものに相当する。
そうすると、上記限定をする前の本件特許発明4が(4-4)で検討したように当業者が容易に想到できたものとすることはできないから、更に限定をした本件特許発明6は、甲3’発明及び甲第6、8号証に記載された技術的事項、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(5)小括り
以上によれば、本件特許発明1?6は、当業者が容易に想到できたものとすることはできず、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものでない。
したがって、無効理由3は理由がない。

第6.むすび

以上のとおりであるから、本件特許は、無効理由1、2、3に理由がないから、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、全額を請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-10-26 
出願番号 特願2006-74123(P2006-74123)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E06B)
P 1 113・ 536- Y (E06B)
P 1 113・ 561- Y (E06B)
P 1 113・ 537- Y (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子赤木 啓二伊藤 昌哉住田 秀弘  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 瀬津 太朗
吉村 尚
登録日 2011-10-07 
登録番号 特許第4839108号(P4839108)
発明の名称 引戸装置の改修方法及び改修引戸装置  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 あいわ特許業務法人  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 佐藤 嘉明  
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