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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て不成立) A47D
管理番号 1277745
判定請求番号 判定2013-600008  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-09-27 
種別 判定 
判定請求日 2013-03-27 
確定日 2013-07-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第5137989号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「通行規制柵」は、特許第5137989号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「通行規制柵」(以下「イ号物件」という。)は、特許第5137989号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。


第2 本件特許発明
本件判定請求の判定請求書には、特許第5137989号発明として、特許請求の範囲の請求項1に係る発明のみが記載されていることから、本件判定請求は、イ号物件が特許第5137989号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものと認められる。
そして、本件特許第5137989号の請求項1?7に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲、特許明細書及び図面(以下「特許明細書等」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)を分説すると、次のとおりである。
なお、便宜上判定請求書における分説に従った。 以下、次のA?Fに係る事項を、それぞれ構成要件A?Fという。
「【請求項1】
A 通行路を挟んで対向する部材間に設置されて、幼児または愛玩動物の通行を規制する通行規制柵であって、
B 高さ調整可能な一対の縦辺部材と、該縦辺部材の上部に連結されると共に幅方向の長さを無段階で調整可能な上辺部材と、前記縦辺部材の下部に連結されて幅方向の長さが無段階で調整可能な下辺部材と、左右両辺部が前記一対の縦辺部材に取り付けられ、上下両辺部が上辺部材及び下辺部材に取り付けられるシート状部材とを有し、
C 該シート状部材の上辺部又は下辺部のいずれか一方に高さ方向調整機能を有する袖部を形成し、
D 前記高さ方向調整機能は、前記袖部の袖口幅を該袖部に挿通される前記上辺部材又は下辺部材の外径よりも広く設定すると共に、前記袖部に前記上辺部材又は前記下辺部材を挿入した状態で前記袖部の袖口幅を調整する袖口幅調整部材を備えてなり、
E 該袖口幅調整部材は、前記袖部の上縁に設けた係止手段と、前記袖部の下縁に設けた係止手段である
F ことを特徴とすることを特徴とする通行規制柵。」


第3 イ号物件
イ号物件は、請求人が判定請求書において「イ号物件は、本件特許発明に即して記載すると、次のとおりのものである。」と主張し、また、被請求人が答弁書において「イ号物件の特定に関し、・・・構成a?fの通りであると認められる。」と主張するように、判定請求書に添付された「イ号図面」及び「イ号説明書」の記載からみて、次の構成a?構成fを具備するものである。
「構成a 通行路を挟んで対向する部材間に設置されて、幼児の通行を規制する通行規制柵であって、
構成b 高さ調整可能な一対の縦辺部材と、該縦辺部材の上部に連結されると共に幅方向の長さを無段階で調整可能な上辺部材と、前記縦辺部材の下部に連結されて幅方向の長さが無段階で調整可能な下辺部材と、左右両辺部が前記一対の縦辺部材に取り付けられ、上下両辺部が上辺部材及び下辺部材に取り付けられるシート状部材とを有し、
構成c 該シート状部材は下辺部に袖部を有し、
構成d 前記袖部の袖口幅は該袖部に挿通される前記下辺部材の外径よりも広く、前記シート状部材は、前記袖部に前記下辺部材を挿入した状態で前記袖部の袖口幅を調整可能な袖口幅調整部材を有し、
構成e 該袖口幅調整部材は、前記袖部の上縁付近に設けられた帯状部材に取り付けられた帯状の面ファスナと、前記袖部の下縁よりも上方で、かつ、前記帯状部材とは反対側の面に取り付けられた帯状の面ファスナである
構成f 通行規制柵。」


第4 対比・判断
イ号物件が本件特許発明の構成要件A?Fを充足するものであるか否かについて、以下に検討する。
1.構成要件A、B、Fについて
イ号物件の「通行路を挟んで対向する部材間」、「通行規制柵」、「高さ調整可能な一対の縦辺部材」、「縦辺部材の上部に連結されると共に幅方向の長さを無段階で調整可能な上辺部材」、「縦辺部材の下部に連結されて幅方向の長さが無段階で調整可能な下辺部材」「左右両辺部が前記一対の縦辺部材に取り付けられ、上下両辺部が上辺部材及び下辺部材に取り付けられるシート状部材」、は、各部材の形状や機能からみて、それぞれ本件特許発明の「通行路を挟んで対向する部材間」、「通行規制柵」、「高さ調整可能な一対の縦辺部材」、「縦辺部材の上部に連結されると共に幅方向の長さを無段階で調整可能な上辺部材」、「縦辺部材の下部に連結されて幅方向の長さが無段階で調整可能な下辺部材」「左右両辺部が前記一対の縦辺部材に取り付けられ、上下両辺部が上辺部材及び下辺部材に取り付けられるシート状部材」に相当する。
また、イ号物件の「幼児」は、本件特許発明の「幼児または愛玩動物」なる選択肢の一方に相当する。
してみると、イ号物件の構成a、b、fが、それぞれ本件特許発明の構成要件A、B、Fを充足していることは明らかである。

2.構成要件C、Dについて
イ号物件の「袖部」は本件特許発明の「袖部」に相当し、以下同様に、「下辺部材の外径」は「上辺部材又は下辺部材の外径」なる選択肢の一方に、「下辺部材を挿入した状態」は「上辺部材又は下辺部材を挿入した状態」なる選択肢の一方に、「袖口幅調整部材」は「袖口幅調整部材」に、それぞれ相当する。

イ号物件の「シート状部材」は、「下辺部に袖部を有し」ているのであるから、シート状部材の下辺部に袖部を形成しているものである。
また、イ号物件の「シート状部材」は、「袖部に前記下辺部材を挿入した状態で前記袖部の袖口幅を調整可能な袖口幅調整部材を有し」ており、この「下辺部材」は「幅方向」に取り付けられるものであるから、イ号物件の「袖部の袖口幅を調整可能」が、“袖部の袖口幅を高さ方向で調整できる”を意味することは明らかである。
このように、イ号物件の「袖部」は、袖部の袖口幅を高さ方向で調整できるものであるから、高さ方向調整機能を有するものといえる。
そうすると、イ号物件は、“シート状部材の下辺部に高さ方向調整機能を有する袖部を形成し、”なる事項を備えているものといえるので、構成要件Cを充足している。

また、イ号物件において、「袖部」が有する上記の高さ方向調整機能は、「前記袖部の袖口幅は該袖部に挿通される前記下辺部材の外径よりも広く、前記シート状部材は、前記袖部に前記下辺部材を挿入した状態で前記袖部の袖口幅を調整可能な袖口幅調整部材を有し」という構成dに基づいて発揮される機能であるから、イ号物件は、“高さ方向調整機能は、前記袖部の袖口幅を該袖部に挿通される前記下辺部材の外径よりも広く設定すると共に、前記袖部に前記下辺部材を挿入した状態で前記袖部の袖口幅を調整する袖口幅調整部材を備えてなり、”なる事項を備えているものといえる。
よって、イ号物件は、構成要件Dを充足している。

3.構成要件Eについて
(ア)本件特許発明における「係止手段」は、その文言からして、“係わりあって止める手段”と解せられるところ、「係止手段」についてのこの解釈は、本件特許明細書等の「ボタン47とボタンホール49を有する片部51が本発明の高さ調整機能として機能する。つまり、ボタン47をボタンホール49に留めることによって、上袖部13の袖口幅が小さくなることで、シート状部材9の高さを低く設定することができる。 なお、ボタン47をボタンホール49が形成された片部51に留める構造に代えて、雄ホックを雌ホックに留めるような構造のような、他の係止手段を用いた構造であってもよい。」(段落【0022】?【0023】)の記載とも矛盾なく整合するものである。
また、一般に、面ファスナが、一対の部材から成り、両部材が面的に結合する留め具であることは普通に知られている事項であるところ、構成eの「面ファスナ」も同様の留め具であって、「帯状部材に取り付けられた帯状の面ファスナ」と「前記帯状部材とは反対側の面に取り付けられた帯状の面ファスナ」とが互いに、面的に係わりあって止める部材といえる。
してみると、構成eの各「面ファスナ」は、その機能や構造に照らして本件特許発明の「係止手段」に相当するものである。

(イ)構成eにおける一方の「面ファスナ」は、「袖部の上縁付近に設けられた帯状部材に取り付けられ」ているところ、「袖部の上縁付近」は、「袖部の上縁」を含むものといえるので、当該一方の「面ファスナ」は、帯状部材を介して袖部の上縁に取り付けられているものといえる。
よって、イ号物件は、「袖部の上縁に設けた係止手段」を実質的に具備するものである。

(ウ)構成eにおける他方の「面ファスナ」は、「袖部の下縁よりも上方で、かつ、」「帯状部材とは反対側の面に取り付けられ」ているところ、イ号図面の図3を参照すれば、「袖部の下縁よりも上方」なる位置は、実質的に、袖部の下縁を含む袖部の下縁付近の位置といえる。
そうすると、当該他方の「面ファスナ」は、袖部の下縁に取り付けられているものといえるので、イ号物件は、「袖部の下縁に設けた係止手段」を実質的に具備するものである。

(エ)以上の(ア)?(ウ)によれば、イ号物件の構成eは、本件特許発明の構成要件Eを充足する。

この構成要件Eに関し、請求人は、概略以下のような主張をしている。
(主張1)
特許明細書等段落【0023】によれば、係止手段とジッパーは並列の関係にあり、係止手段にはジッパーが含まれないことは明らかである。
そうすると、本件特許発明における「係止手段」とは、ボタンやホックのように引っ掛ける手段をいい、ジッパーのような線状に結合するようなものは、「係止手段」に含まれず、当然、面状に結合するような面ファスナも「係止手段」に含まれないと解するのが相当である。
(主張2)
審査過程において、拒絶理由書が「袖口幅調整部材」として面ファスナを用いたもの(引用文献1)や、ベルトで縛るもの(引用文献2)を指摘している状況下において、被請求人が「袖口幅調整部材」を「係止手段」に限定する補正を行ったことは事実である。よって、本件特許発明の「係止手段」には、「面ファスナ」や「ベルトで縛るもの」が含まれないと解釈すべきである。
被請求人が作成した意見書には、「面ファスナ」が「係止手段」から除外されるという明示こそないものの、上述の経緯に鑑みれば、少なくとも審査段階において、被請求人は、「係止手段」から「面ファスナ」を意識的に除外していると解すべきである。

続いて、上記各主張について検討する。
(主張1について)
特許明細書等には、次の記載がある。
「段落【0023】
なお、ボタン47をボタンホール49が形成された片部51に留める構造に代えて、雄ホックを雌ホックに留めるような構造のような、他の係止手段を用いた構造であってもよい。
また、ボタン47とボタンホール49によって留める構造に代えて、ジッパーによって留める構造にしてもよい。」
上記の「雄ホックを雌ホックに留めるような構造」、「ボタン47とボタンホール49によって留める構造」、「ジッパーによって留める構造」の各記載から、「雄ホック」と「雌ホック」、「ボタン47とボタンホール49」、「ジッパー」は、いずれも「留める構造」の例であるといえ、さらに、「留めるような構造のような、他の係止手段を用いた構造」の記載を併せみれば、「係止手段を用いた構造」は、個々の「留める構造」の総称であると解される。
そうすると、段落【0023】の記載からみて、「ジッパー」が「係止手段」に含まれることは、明らかである。
請求人の上記主張1は、「ジッパーのような線状に結合するようなものは、『係止手段』に含まれ」ないことを前提として、「当然、面状に結合するような面ファスナも『係止手段』に含まれないと解するのが相当」と主張するものであるが、「ジッパー」が「係止手段」に含まれることは、上記のとおりであるから、請求人の該主張は、その前提において失当である。
また、段落【0023】の記載以外に、特許明細書等の全記載を検討しても、「留める構造」である「係止手段を用いた構造」が、線状に結合するようなものや面状に結合するようなものを排除していると解すべき根拠はなく、むしろ、面ファスナがその機能や構造に照らし、面的に係わりあって止める部材、即ち一種の係止手段といい得るものであることは、前述のとおりである。
よって、請求人の上記主張1は採用できない。

(主張2について)
平成24年10月3日付け手続補正により、補正前の請求項1の「袖口幅調整部材」について、「該袖口調整部材は、前記袖部の上縁に設けた係止手段と、前記袖部の下縁に設けた係止手段である」と限定する補正がなされた。
平成24年8月6日付け拒絶理由通知書により提示された引用文献1には、面ファスナに関する記載はあるものの、「袖口幅調整部材」として面ファスナを用いることについての記載はないのであるから、上記手続補正において、補正前の「袖口幅調整部材」を限定することにより、発明を特定するための事項から面ファスナを除外する必要のないことは明らかである。
そうすると、補正前の「袖口幅調整部材」を「前記袖部の上縁に設けた係止手段と、前記袖部の下縁に設けた係止手段である」と限定しようとする補正には、上記通知書で提示された引用文献2に記載の「ベルトで縛るもの」を除外する意図があったとしても、「係止手段」として面ファスナを除外することまでもが意図されていたとはいえない。
また、平成24年10月3日付け意見書及び平成24年10月24日付け意見書をみても、被請求人が本件特許発明の「係止手段」から「面ファスナ」を意識的に除外していたと解すべき根拠は見当たらない。
よって、請求人の上記主張2も採用できない。

4.まとめ
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件A?Fのすべてを充足するものである。


第5 むすび
以上のとおりであるから、イ号物件である「通行規制柵」は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2013-07-19 
出願番号 特願2010-56864(P2010-56864)
審決分類 P 1 2・ 1- YB (A47D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西 秀隆  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 蓮井 雅之
関谷 一夫
登録日 2012-11-22 
登録番号 特許第5137989号(P5137989)
発明の名称 通行規制柵  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
代理人 石川 壽彦  

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