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審決分類 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1278002
審判番号 無効2012-800146  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-09-07 
確定日 2013-07-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2532332号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許の経緯概要は以下のとおりである。
昭和61年 4月24日 特願昭61-95944号出願(原出願)
平成 5年 4月26日 本件特許出願(特願平5-99866号)
平成 8年 6月27日 設定登録(特許第2532332号)
平成 9年 3月11日 異議申立(平成9年異議第71070号)
平成 9年 9月19日 訂正請求
平成11年 3月 4日 異議決定
平成24年 9月 7日 無効審判請求
平成24年11月30日 答弁書・訂正請求(被請求人)
平成25年 1月11日 弁駁書(請求人)
平成25年 3月26日 審理事項通知書
平成25年 5月 1日 口頭審理陳述要領書(請求人,被請求人)
平成25年 5月15日 口頭審理
平成25年 5月16日 審理終結通知

第2 本件審判事件にかかる両当事者の主張
請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。なお,以下において,訂正前の請求項とは平成11年3月4日の異議決定時の請求項を,訂正後の請求項とは平成24年11月30日付けの訂正請求に基づく請求項を,それぞれ指す。

1.請求人の主張
請求人は,平成24年9月7日付けの審判請求書において,「特許第2532332号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め(請求の趣旨),以下の理由により,本件特許の請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)は特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項の規定により無効にされるべきである旨主張し,証拠方法として甲第1?11号証を提出した。

【無効理由1】
本件特許発明は,甲第1?11号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであり,よって,特許法第123条第1項第2号に該当し,その特許は無効とすべきである。

【無効理由2】
本件特許発明は,発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでないから,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず,よって,特許法第123条第1項第4号に該当し,その特許は無効とすべきである。

【無効理由3】
本件特許発明に係る分割出願の出願日の遡及は認められず,本件特許発明は,原出願の公報である特開昭62-253092号公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであり,よって,特許法第123条第1項第2号に該当し,その特許は無効とすべきである。

(証拠方法)
甲第1号証:特表昭60-501889号公報
甲第2号証:特開昭57-3664号公報
甲第3号証:特開昭57-1369号公報
甲第4号証:特開昭59-168869号公報
甲第5号証:特開昭60-232189号公報
甲第6号証:特開昭59-186580号公報
甲第7号証:特開昭58-41588号公報
甲第8号証:特開昭61-11078号公報
甲第9号証:特開昭61-11079号公報
甲第10号証:特開昭61-31184号公報
甲第11号証:株式会社オリンピアホームページ「遊技機産業の歴史」,[平成24年8月30日検索],インターネット<URL:http://www.olympia.co.jp/official/_campany/history.html>

また,被請求人による平成24年11月30日付け訂正請求を受けて,平成25年1月11日付け弁駁書において,
(1)弁駁書2?54頁において,審判請求書の「7 請求理由」及び「8 証拠方法」の誤記を訂正する等の訂正をするとともに,
(2)請求項1に係る訂正請求の訂正事項3?4は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものでなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張するものであり,訂正要件違反であって認められない旨主張し,甲第14号証を提出し,
(3)訂正後の請求項1に係る発明について,無効理由1は解消していない旨主張し,周知技術として甲第12?13号証を提出し,
(4)訂正後の請求項1に係る発明について,無効理由2は解消していない旨主張している。

なお,請求人は,弁駁書2?54頁において,審判請求書の「7 請求理由」及び「8 証拠方法」の欄の誤記を訂正する等の、審判請求書の記載の訂正をしているところ,その訂正は誤記の訂正等にとどまり,審判請求書の要旨を変更するものではないと認める。

(証拠方法)
甲第12号証:特開昭60-68884号公報
甲第13号証:特開昭58-43093号公報
甲第14号証:新村出編,「広辞苑」,第六版,株式会社岩波書店,2008年1月11日,1418頁

そして,平成25年3月26日付け審理事項通知書を受けて,平成25年5月1日付け口頭審理陳述要領書において,
訂正後の請求項1に係る発明について,無効理由1は解消していない旨主張し,周知例として甲第15?22号証を提出している。

(証拠方法)
甲第15号証:特開昭51-17834号公報
甲第16号証:特開昭54-159038号公報
甲第17号証:特開昭57-131471号公報
甲第18号証:特開昭59-55272号公報
甲第19号証:特開昭59-32477号公報
甲第20号証:特開昭57-142279号公報
甲第21号証:特開昭54-120048号公報
甲第22号証:特開昭55-88786号公報

2.被請求人の主張
被請求人は,平成24年11月30日付けで答弁書を提出し,「本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め」(答弁の趣旨),同日付けの訂正請求に基づく訂正後の請求項1について,無効理由1?3は理由がない旨,主張している。

また,平成25年5月1日付け口頭審理陳述要領書において,平成24年11月30日付けの訂正請求は認められるべきとした上で,請求人の主張している無効理由は理由がない旨主張している。

第3 訂正請求
1.訂正請求の内容
平成24年11月30日付けの訂正請求(以下,「本件訂正」という。)は,平成11年3月4日の異議決定時の特許第2532332号の特許請求の範囲(以下,「本件特許請求の範囲」という。)を含む明細書(以下,「本件特許明細書」という。)を,本件訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおり訂正しようとするものであって,次の事項を訂正内容とするものである。

・訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1における「前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と,
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と,」という記載を,
「前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と,
前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と,
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と,」と訂正する(下線部は訂正箇所を意味する。以下,同様。)。

・訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項1における「前記賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と,」という記載を,
「前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と,」と訂正する。

・訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項1における「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,」という記載を,
「前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,」と訂正する。

・訂正事項4
本件特許請求の範囲の請求項1における「前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする,遊技機。」という記載を,
「前記入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し,
前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする,遊技機。」と訂正する。

・訂正事項5
本件特許明細書の段落【0005】における「本発明は,表示状態が変化可能な可変表示装置を有し,該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって,遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段と,前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と,前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と,前記賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と,前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み,前記賭数入力手段は,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする。」という記載を,
「本発明は,表示状態が変化可能な可変表示装置を有し,該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって,遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段と,前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と,前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と,前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と,前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と,前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み,前記賭数入力手段は,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み,前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,前記入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し,前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする。」と訂正する。

・訂正事項6
本件特許明細書の段落【0006】における「本発明によれば,遊技者所有の有価価値が価値記憶手段に記憶可能であり,遊技者が賭数入力手段により1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を入力することができ,賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に可変表示装置が制御され,その可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として結果導出操作手段が操作された場合にその可変表示装置の表示結果が導出表示される。そして,その可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値が前記価値記憶手段に加算記憶可能となる。また,賭数入力手段は,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力することばかりでなく,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することができる。しかも,前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了する。」という記載を,
「本発明によれば,遊技者所有の有価価値が価値記憶手段に記憶可能であり,遊技者が賭数入力手段により1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を入力することができ,賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に可変表示装置が制御され,その可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として結果導出操作手段が操作された場合にその可変表示装置の表示結果が導出表示される。そして,その可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値が前記価値記憶手段に加算記憶可能となる。また,賭数入力手段は,価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力することばかりでなく,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することができる。しかも,入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し,前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了する。」と訂正する。

・訂正事項7
本件特許明細書の段落【0037】における「CPU58は図4EのステップS57?ステップS69の制御動作を実行する。」という記載を,
「CPU58は図8のステップS57?ステップS69の制御動作を実行する。」と訂正する。

・訂正事項8
本件特許明細書の段落【0045】における「賭数を入力するに際し,遊技者所有の価値物体の投入と,価値記憶手段に記憶されている有価価値を使用しての賭数の入力操作との両方で,賭数の入力が可能であり,」という記載を,
「賭数を入力するに際し,価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,遊技者所有の価値物体の投入と,価値記憶手段に記憶されている有価価値を使用しての賭数の入力操作との両方で,賭数の入力が可能であり,」と訂正する。

2.本件訂正に関する請求人の主張
(1)訂正事項3について
請求人は,弁駁書54頁22行?56頁12行において,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1記載の発明では,「価値記憶手段」は「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」と規定しており,広辞苑第六版によれば,「所有」とは「自分のものとして持っていること」を意味するとされているから,「価値記憶手段」は,「遊技者が自分のものとして持っている有価価値を記憶することができる」もの(記憶手段)を意味するものであり,
「価値記憶手段」は,本件特許明細書におけるRAM62のフラグ1?3,レジスタ1,及びレジスタ2の全てが該当し,含まれるものと解釈するのが相当であるが,
「価値記憶手段」が「フラグ1」の場合に相当する「第1のコイン投入によりフラグ1に価値物体が記憶されている状態でも,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり」という動作は,本件特許明細書の記載からは不可能であり(本件特許明細書の段落【0023】?【0038】,図4?9には,コイン投入で賭数が1となっている状態で,入力操作検出手段により賭数を2枚,3枚と増やすことが可能な点は記載されていない。),「価値記憶手段」が「フラグ1」の場合,いずれの方法でも入力可能という状態を含むような広い構成となり,この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから,
訂正事項3は,願書に添付した明細書及び図面(以下,「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張する訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する平成6年改正前第126条第2項の規定により認められない旨主張している(弁駁書56頁11?12行の「特許法第126条第5項及び第6項」は「平成6年改正前第126条第2項」の誤記と認める。)。

(2)訂正事項4について
請求人は,弁駁書56頁13行?57頁21行において,本件特許明細書の段落【0023】?【0038】,図4?9によれば,価値物体(第1のコイン)による賭数入力の場合には第1のコイン投入によってのみ賭数が入力され,入力操作検出手段による賭数入力(ゲーム開始ボタン27押下による賭数入力)の場合にはゲーム開始ボタン27の押下のみによって賭数入力されることになり,価値記憶手段(レジスタ2)に記憶された価値が「1」であったとき,ゲーム開始ボタン27押下によってレジスタ2から減算して賭け入力した場合,それ以上の賭数「2」及び「3」を第1のコイン投入によって入力することはできないが,
訂正事項4は,「開始操作手段の操作が検出」されるまでは,「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力」および「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力」のいずれによってもさらに賭数が入力できることという新たな態様を含む構成,つまり,ゲーム開始ボタン27押下によってレジスタ2から減算して賭け入力した場合,それ以上の賭数「2」及び「3」を第1のコイン投入によって入力することが可能な動作をも含む内容のものとなっているから,
訂正事項4は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張する訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する平成6年改正前第126条第2項の規定により認められない旨主張している(弁駁書57頁20?21行の「特許法第126条第5項及び第6項」は「平成6年改正前第126条第2項」の誤記と認める。)。

3.本件訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は,「前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と,」という記載を追加することにより,遊技機が備える手段を特定する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして,本件特許明細書の段落【0009】には,「スロットマシン10が能動化された後,回転スタートボタン16が押されることにより,3つの回転ドラム18a ,18b ,18c が回転を開始して可変表示装置18が可変開始する。」と記載されているから,
本件特許明細書等には,遊技機が「可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段」を含む点が記載されているといえる。
そうすると,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもので,しかも,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は,「前記賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,」という記載を,「前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,」と訂正することにより,「必要条件として」文言は削除されたものの,訂正前の「ゲーム開始条件」を実質的に限定する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして,本件特許明細書の段落【0028】には,「第1のコイン投入後,回転スタートボタン16がオンされ,その信号がCPU58へ与えられると,CPU58はパルスモータ42a ,42b ,42c を回転させ(ステップS16),回転からたとえば1秒以上経過するのを待つ(ステップS17)。」と,段落【0037】には,「また,賭数が入力された状態で回転スタートボタン16が操作されたことにより実行される前記S16?S26により,賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを条件条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段が構成されている。」と記載されているから,
本件特許明細書等には,「賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ」る点が記載されているといえる。
そうすると,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもので,しかも,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は,「前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,」という記載を,「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,」という記載の前に追加することにより,「価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能」な状態がどのような状態か具体的に限定する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして,本件特許明細書の段落【0023】には,「第1のコイン投入口12(図1参照)からコインが投入されると,コインセレクタ34(図2参照)によってコインの種別が検出され,ゲームのために使用が許可された第1のコインであれば入出力インターフェイス56を介してCPU58へ検出信号が与えられる(ステップS1)。」と,段落【0025】には,「CPU58が第1のコイン投入有の信号を受取ると,CPU58はRAM62のフラグ1をオンし(ステップS2),ライン表示ランプ55のランプ1(図1に示す表示窓20a の左側に設けられた括弧書きで示された表示「1」内側に設けられたランプ)をオンする(ステップS3)。」と,段落【0026】には,「さらに第1のコインが投入された場合は,当該第1のコインが2枚目かを判別し,2枚目であればRAM62のフラグ1に代えてフラグ2をオンし(ステップS6),ライン表示ランプ55の表示「1」に対応するランプ1に加えて表示「2」に対応するランプ2も点灯する(ステップS7)。また,第1のコインが続けて3枚投入された場合には(ステップS8),RAM62のフラグ3をオンし(ステップS9),ライン表示ランプ55の表示「1」および「2」に対応するランプ1および2に加えて,さらに表示「3」に対応するランプ3をオンする(ステップS10)。・・・」と,段落【0031】には,「次のゲームをしようと遊技者がコイン投入口12から第1のコインを投入し,第1のコインが投入されたことをCPU58が判別すると(ステップS37),CPU58はRAM62のレジスタ1の値をレジスタ2にストアされている値に加算し,レジスタ1をクリアする(ステップS38)。・・・つまり,第1ゲームで獲得された得点が,第2ゲームの開始に先立って,それまでのトータル得点をストアするレジスタ2にストアされる訳である。そしてレジスタ2にストアされたトータル得点は,トータル得点表示器26で表示される。」と,段落【0032】には,「第2ゲーム以降は,第1のコイン投入口12へコインを投入してゲームを開始することに代え,次に述べるように,ゲーム開始ボタン27(図1参照)を押すことによってもゲームを行なうことができる。」と,段落【0033】には,「すなわち,ステップS40において,CPU58がゲーム開始ボタン27が操作されてゲーム開始スイッチ27’がオンされ,その信号が入力されたことを判別すると,CPU58はレジスタ1の得点をレジスタ2の得点に加算し,レジスタ1をクリアして(ステップS41)後,レジスタ2にストアされている得点が「1」以上か否かを判別する(ステップS42)。」と,段落【0034】には,「レジスタ2にストアされたトータル得点が「1」以上であれば,CPU58はレジスタ2にストアされた得点を「-1」し(ステップS43),フラグ1およびライン表示ランプ55のランプ1をオンする(ステップS44,S45)。さらに,第1のコインを2枚または3枚投入してゲームをするのに対応させ,ゲーム開始ボタン27が2回押されたときまたは3回押されたときには,それぞれ,レジスタ2にストアされている得点をさらに「-1」または「-2」し,フラグ1に代えてフラグ2またはフラグ3をオンし,ランプ2またはランプ2および3を追加してオンする(ステップS48?S55)。」と,段落【0037】には,「前記レジスタ2により,遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段が構成されている。前記コインセレクタ34およびゲーム開始スイッチ27′により,前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段が構成されている。」と,記載されているから,
本件特許明細書等には,「価値記憶手段」に相当する「レジスタ2」に「有価価値」に相当する「得点」が記憶されている状態で,「価値物体検出手段」に相当する「コインセレクタ34」により検出された「価値物体」に相当する「コイン」の有価価値を賭数として入力すること,または,「入力操作検出手段」に相当する「ゲーム開始スイッチ27’」により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能である点が記載されているといえる。
そうすると,訂正事項3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもので,しかも,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

なお,請求人は,「価値記憶手段」は,本件特許明細書等におけるRAM62全体のフラグ1?3,レジスタ1,及びレジスタ2の全てが該当し,含まれるものと解釈するのが相当であり,「価値記憶手段」が「フラグ1」の場合,「価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり」とすることは,本件特許明細書等の記載から不可能であるから,訂正事項3は認められない旨主張している。

しかしながら,本件特許明細書の段落【0037】には,「前記レジスタ2により,遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段が構成されている。」と記載されている。
また,本件特許明細書の特許請求の範囲には「前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み,」と記載されているように,「価値記憶手段」は「表示結果に応じた有価価値を」「加算記憶可能」であるが,
本件特許明細書の段落【0020】には,「フラグ1?3は1ゲームにつき何枚のコインが投入されたかを記憶するものである。また,レジスタ1はゲーム毎の得点を記憶するためのレジスタであり,レジスタ2はトータル得点を記憶するためのレジスタである。」と,段落【0030】には,「CPU58は,次にステップS35で,RAM62のフラグ1,2および3をオフし,ライン表示ランプ55の全ランプを消灯する。これにより,一応1ゲームは終了する。」と,段落【0031】には,「次のゲームをしようと遊技者がコイン投入口12から第1のコインを投入し,第1のコインが投入されたことをCPU58が判別すると(ステップS37),CPU58はRAM62のレジスタ1の値をレジスタ2にストアされている値に加算し,レジスタ1をクリアする(ステップS38)。」と記載されているから,
「フラグ1?3,レジスタ1」は,「表示結果に応じた有価価値を」「加算記憶可能」な「価値記憶手段」ではなく,トータル得点を記憶するための「レジスタ2」のみが,「表示結果に応じた有価価値を」「加算記憶」する「価値記憶手段」に該当するといえる。

よって,訂正事項3に関する請求人の主張は採用することができない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は,「前記入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し,」という記載を追加する訂正を行うことにより,「ゲーム開始条件」を実質的に限定する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして,本件特許明細書の段落【0023】,【0025】,【0026】,【0034】には,前記「(3)訂正事項3について」において摘記した内容が記載されていると共に,本件特許明細書の段落【0027】には,「第1のコイン投入後,回転スタートボタン16(図1参照)が押される前に,返却ボタン(図示せず)が押された場合は,その信号に基づいて,CPU58はRAM62のフラグ1,2,3をオフし,ライン表示ランプ55のすべてのランプ1,2,3をオフして(ステップS14),投入されたすべてのコインをコイン返却口14から返却する(ステップS15)。」と,段落【0028】には,「第1のコイン投入後,回転スタートボタン16がオンされ,その信号がCPU58へ与えられると,CPU58はパルスモータ42a ,42b ,42c を回転させ(ステップS16),回転からたとえば1秒以上経過するのを待つ(ステップS17)。これは,パルスモータ42a ,42b ,42c によって回転ドラム18a ,18b ,18c がそれぞれ回転開始されて直後にまたは回転ドラム18a ,18b ,18c がほとんど回転しないまま停止ボタンにより回転ドラムの回転が停止されるのを防止するためである。」と,段落【0037】には,「ところで,トータル得点表示器26に得点が「1」以上表示されている場合であって,遊技者がゲーム開始ボタン27を押した後に,継続してゲームを望まなくなり,精算ボタン28を押した場合には,遊技者の不利にならないように,CPU58は図4EのステップS57?ステップS69の制御動作を実行する。そのステップS57?S69の制御動作は,ゲーム開始ボタン27が押されたことにより減算されたレジスタ2の得点を,減算前の得点に戻す動作である。図8に示されているステップS57?S69の動作により,遊技者は不利になることなく,それまでのゲームにより獲得したトータル得点に対応する枚数の第2のコインの払出しを受ける。前記レジスタ2により,遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段が構成されている。・・・また,賭数が入力された状態で回転スタートボタン16が操作されたことにより実行される前記S16?S26により,賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段が構成されている。」と記載されているから,
本件特許明細書等には,「入力操作検出手段」に相当する「ゲーム開始スイッチ27’」による検出に基づいた賭数の入力の場合,および「価値物体検出手段」に相当する「コインセレクタ34」による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で「開始操作手段」に相当する「回転スタートボタン16」の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が1ゲームの賭数とされてゲーム開始条件が成立する点が記載されているといえる。
そうすると,訂正事項4は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

なお,請求人は,本件特許明細書等によれば,価値記憶手段(レジスタ2)に記憶された価値が「1」であったとき,ゲーム開始ボタン27押下によってレジスタ2から減算して賭数入力した場合,それ以上の賭数「2」及び「3」を第1のコイン投入によって入力することはできないが,
訂正事項4は,ゲーム開始ボタン27押下によってレジスタ2から減算して賭数入力した場合,それ以上の賭数「2」及び「3」を第1のコイン投入によって入力することが可能な動作をも含む内容のものとなっているから,訂正事項4は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではなく,また,実質的に特許請求の範囲を拡張するものであり,認められない旨主張している。

しかしながら,訂正事項4は,「賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されることでゲーム開始条件が成立すること」を限定するものであって,「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,」の後に「賭数が入力された状態で・・・」と続いているから,「賭数が入力された状態」が,『「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力」により賭数が入力された状態,および「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力」により賭数が入力された状態のいずれであっても』という意味であることは明らかであり,
訂正事項4の読み方として,「当該入力された全賭数」における「当該入力」は,各場合での賭数の入力を意味することは明らかであるから,
訂正事項4は,全賭数の入力が「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合」と「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合」を組み合わせた賭数入力を含むものであるとはいえない。

よって,訂正事項4に関する請求人の主張は採用することができない。

(5)訂正事項5?6,8について
訂正事項5?6,8は,上記「(1)訂正事項1について」?「(4)訂正事項4について」の訂正により,特許請求の範囲の請求項1における特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行った結果,記載表現が一致しなくなった本件特許明細書の記載を,訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるための訂正であり,明瞭でない記載の釈明に該当する。
そうすると,訂正事項5?6,8は,明瞭でない記載の釈明を目的とするもので,しかも,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(6)訂正事項7について
訂正事項7は,「CPU58は図4EのステップS57?ステップS69の制御動作を実行する。」という記載を,「CPU58は図8のステップS57?ステップS69の制御動作を実行する。」と訂正することにより,「ステップS57?ステップS69」が記載されている図面が,「図4E」であると記載されていた誤記を,「図8」であると訂正する訂正であるから,誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。
本件の願書に最初に添付した図面には図4Eは存在せず,本件の願書に最初に添付した図8には,「ステップS57?ステップS69」のフローチャートが記載されている。
そうすると,訂正事項7は,誤記の訂正を目的とするもので,願書に最初に添付した明細書及び図面(以下,「本件当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

4.小括り
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,及び明瞭でない記載の釈明を目的とし,しかも,訂正事項1?6,8については,本件特許明細書等に記載されている事項の範囲内のものであり,訂正事項7については,本件当初明細書等に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

したがって,本件訂正は,平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書第1号ないし3号に適合し,特許法134条の2第9項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

第4.本件訂正発明
上記のとおり本件訂正を認めるので,本件特許発明は,本件訂正により訂正された明細書(以下,「訂正明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下,訂正前の本件特許発明の構成と区別するために,「本件訂正発明」という。)と認める。

「【請求項1】
表示状態が変化可能な可変表示装置を有し,該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって,
遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段と,
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と,
前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と,
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と,
前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み,
前記賭数入力手段は,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み,
前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,
前記入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し,
前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする,遊技機。」

第5 甲各号証の記載事項
請求人の提出した甲各号証には,以下の記載事項と発明が認められる。なお,下線は当審で付した。

1.甲第1号証(特表昭60-501889号公報)
甲第1号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 この発明は,フルーツマシンとして一般に知られている種類のゲームマシンに関するもので,このようなゲームマシンは,遊技者がスタート手段により開始した一回のゲームが終了すると,少なくとも二つの異なったシンボルのグループからなるシンボルの不規則な組合わせが表示され,このようなシンボルの表示された組合わせが所定の勝の組合わせの内のいずれかに該当するときに,遊技者に賞金が与えられるもので,前記のスタート手段は,少なくとも適正な通貨のコインの投入により作動するようになっている。」(2頁左下欄4?13行)

「 勝の組合わせが得られると,すぐにマシンは,賞金を支払うか,賞金をクレジットとして計算してもよい。。・・・。勝となったプレイの度毎に賞金を支払うのではなく,ゲームが最終的に終了した時点でクレジットされた賞金のすべてが支払われるようにされているものもある。
・・・
この発明によるゲームマシンは,船または航空機による国際旅行者による使用を特に意図している。 このような旅行者は,自国に帰国する際に所有している外国通貨の処理に不便を感じている。 例えば,紙幣は,銀行で簡単に両替えできるが,硬貨(コイン)の両替えは,きわめて難しい。
この発明は,新規または改良されたゲームマシンを提供することを目的とする。
この発明の一つの特徴によれば,第1の通貨のコインを受け入れてスタート手段を動作可能とするコイン受け入れ手段と,投入されたコインの通貨とは異なる第2の通貨のコインにより賞金の支払いを行なう手段とを備えている。
かくして,旅行者は,欲しくない外国コインを使用してゲームマシンを楽しみ,得られる賞金を自国の通貨とすることが可能となる。」(2頁左下欄19行?右下欄22行)

「 まず,第1図を参照すると,ゲームマシン10は,3個のリール11,12,13を有しており,これらリールの周側面には,シリーズになっているシンボルが表示されていて,本例においては,該シンボルは,いちご,オレンジなどのフルーツを描いたものになっているが,それ以外どのようなシンボルでもよい。
後述する機構の開始操作においては,リール11,12,13は,それらの周側面の部分がそれぞれ異なるように回転され,異なったシンボルが窓15,16,17を通して見えるようにされ,停止機構によりこれらリールをランダムに停止させ,各リールのシンボルがそれぞれの窓に表示されるようになっている。 必要に応じ,窓を一つとし,この窓から3個のリールすべての周側面が見えるようにしてもよい。
前記リールが停止し,所定の組合わせのシンボル(以下“勝の組合わせ”という)が表示されると,マシン10は,得られた勝の組合わせによる額の賞金(以下,“フルーツウイニング”という)を遊技者に,支払うか,または,クレジットするようになる。 このようなゲームマシンは,フルーツマシンとして一般に知られているものであり,図面は,このようなマシンの代表的レイアウトを略図的に説明したもので,レイアウトの種々の変更は,当業者には,自明のことである。
さらに,回転リール11,12,13について説明しているが,シンボルの異なった組合わせを見せる手段として,その他の手段が採用できる。 例えば,機械機構よりも電子機構によりシンボルをスクリーンに投影させることも可能である。 さらに,リールを3個以上にしたり,シンボルをグループ化したり,場合により,リールを2個にしてもよい。
説明のマシンには,あらゆる勝の組合わせのシンボルの表示(図面では,一つの勝の組合わせのみ表示)と特定の勝の組合わせのフルーツウイニングの額を表示したパネル20が設けられている。」(3頁左下欄13行?右下欄22行。3頁右下欄12行の「さらに,回転リール1,12,13について」は,「さらに,回転リール11,12,13について」の誤記と認めた。)

「 ゲームマシンにコインが役人され,すなわち,適正な価額のコインが1枚または複数枚投入されると,スタートボタン21によりスタート機構が操作可能となる。そして,コインが投入されたゲームマシンの遊技できる回数,すなわち購入した遊技回数がクレジットされ,ディスプレイ22に表示される。一回の遊技終了ごとに可能な遊技回数が減り,ディスプレイ22に表示される遊技回数が一つずつ減る。勿論,投入されたコインの金高が表示され,一回の遊技ごとに減るようにすることもできる。
また,ゲームマシンをコインのみで操作可能,すなわち,遊技するに適正な,または,十分な金高のコインが投入されれば,スタート機構が自動的に作動するような機構とすることもできる。 このような場合には,ディスプレィ22などの表示は,不要であり,このような当業者によく知られているものであるから,詳細な説明は必要ではない。」(3頁右下欄23行?4頁左上欄14行)

「 前記した特徴に加え,第1図と第2図のゲームマシン10は,4個の投入口19a,19b,19c,19dを有するコイン受入れ機構18を備え,投入口19aは,1ポンドコイン,投入口19bは,50ペンスコイン,投入口19cは,20ペンスコイン,投入口19dは,10ペンスコインがそれぞれ投入できるようになっている。 このように,マシン10は,10ペンスコインの倍数により作動する。 一回の遊技のコストを10ペンスとすると,50ペンスコインが投入されれば,ディスプレイ22に表示されるゲームの遊技可能回数は,5となる。」(4頁左上欄15?24行)

「 本例においては,遊技者が得たフルーツウイニングは,別のディスプレイ25に表示されるが,ディスプレイ22に表示される残りの遊技回数がゼロになるまで,賞金の支払いは,一切なされない。」(4頁右上欄6?9行)

「 遊技者が一国の通貨,すなわち,英国通過のコインを投入しても,賞金は,パネル24に表示された特定交換率によるフランス通貨によって支払われる。
第2図に示すように,コイン許容装置18は,それぞれの投入口19a?19dに投入されたコインがゲームマシンに受け入れられる適正な金高のコイン,すなわち,1ポンド,50,20,10ペンスコインであるか否かを検査する手段を備えている。 この装置18は,例えば,投入されたコインの重量とサイズをテストするようになっており,投入されたコインがテストに不合格であると,このようなコインは,装置18によりリジェクトされ,矢印25に示すように支払いシュウト23へ送られる。 コインがテストに合格すれば,このようなコインは,貯溜部26へ送られる。 図示の例では,投入口19a?19dのいずれかから投入され,しかもリジェクトされなかったコインは,共通の貯溜部26へ送られるようになっているが,必要に応じ,各投入口から投入されたコインがそれぞれの貯溜部へ送られるようにして,コインを仕分けしなくてもすむようにすることもできる。 このような機構は,当業者の熟知するところであるから,これ以上の説明は不要である。
コインが受け入れられると,信号がライン27を介してクレジット記憶部Cへ送られ,このクレジット記憶部は,ディスプレイ22へ接続している。 かくして,ゲームマシンに投入されたコインの金高に応じた遊技可能回数がディスプレイ22に表示される。さらに,クレジット記憶部Cからライン29にそってスタート機構部28へ信号が送られ,スタート機構28が作動し出す。
スタートボタン21は,明るく光り,ゲームマシンが遊技できることを示すようになっているが,このような表示手段には,他の手段を用いることができる。
スタートボタン21が押されると,スタート機構28から信号がライン30を介してクレジット記憶部Cへ送られ,ディスプレイ22に表示される遊技回数を一つずつ減らし,同時に信号がライン31を介してリール・ユニット32へ達し,リール11,12,13が前記のように回転する。」(4頁右上欄10行?左下欄23行)

「 停止機構32がリール・ユニット32に組み込んであり,リール11?13をバラバラの位置で停止させるようにランダムに作動する。 勝の組合わせが表示されれば,遊技者の勝であり,勝の組合わせが表示されないと,遊技者の負けであって,いずれかの表示がなされる。 遊技者が負けの場合は,さらにコインを追加投入して遊技を続けるか,あるいは,スタートボタン21を押してディスプレイ22に表示されている遊技回数の残りの分を楽しむ。」(4頁左下欄24行?右下欄7行)

「 遊技者が勝の場合には,信号がリール・ユニット32から賞金計算装置33へ送られ,直ちに英国通貨による賞金の金額が示され,これがディスプレイ25に表示される。同時に,装置33から信号がライン34を経由してクレジット記億部Cへ送られる。 このクレジット記憶部において,引き続き遊技可能であることを示すと,賞金計算装置33へ信号が送られず,この場合には,賞金の支払いはなされない。 しかしながら,ディスプレイ22に残りゲームがゼロと表示されると,賞金計算装置33から信号がライン37を介して換算装置36へ送られる。 換算装置36は,計算手段を備えており,ディスプレイ25に表示された賞金総額の掛算を行ない,ゲームマシン10に投入したコインと同じ通貨,すなわち,英国通貨のコインと同じ通貨による賞金が他の国の通貨,本例では,フランスフランの通貨単位で換算される。」(4頁右下欄8?23行)

「 固定交換率がマシン10のディスプレイパネル24に表示されており,英国通貨による賞金額は,これに相当するフランスフランの金額に換算される。 換算装置36から信号がライン38を経て支払い装置39へ送られ,さらにここから信号がライン40を経由してフランスフランのコインが貯溜されている貯溜部41へフランスフランの賞金額によるコインが矢印42の経路を通り支払いシュウト23から支払われ,遊技者は,これを受け取る。」(4頁右下欄24行?5頁左上欄7行)

「 場合によっては,四種類の異なる英国通貨コインに適合する4個の投入口が要求される前述したコイン受け入れ機構18の代りに,異なった通貨単位のコインそれぞれを投入できる1個の投入口のみの機構としてもよく,この場合には,投入されたコインが有効なものであるか否か,どの通貨であるかを判別する複雑な機構が必要となる。
図示のスタートボタン21の代りに,ハンドルなどの作動手段を設けてもよく,または,前記したように,コイン投入によって作動するようにしてもよい。
つぎに,第3図を参照しながら,この発明による第2実施例としてのゲームマシン10’を説明する。
マシン10’は,第1図と第2図のマシン10と類似のもので,同一部分には,同じ符号にダッシュを付して説明してある。 マシン10’において異なる第1の点は,第1図に示したような4個の投入口19a?19dを有するコイン許容装置18に対し,コイン許容装置18’においては,1個の投入口19しか設けられていない点と,投入口19に投入されたコインがゲームマシンに適用する有効な通貨であるか否か判別する手段手段をコイン許容装置18’が備えている点である。」(5頁左上欄25行?右上欄21行)

「 第4図で示すように,コインがコイン許容装置18’により認められると,第1図と第2図のマシンにおいて説明したようなクレジット記憶部C’に信号が直接送られる代りに,コイン許容装置18’からライン46を経て信号が換算装置45へ送られ,そこで投入された英国通貨のコインの金額がそれと等価のフランスフランに直ちに換算される。 交換レートはあらかじめ定められておくか(このレートは,遊技者に表示する必要はなく,賞金額をフランスフランでパネル20’に表示する),または,点線43’で示したようなキーボードからの入力により,マシン用の交換レートを当日の公定交換レートに接近させたレートにさせておくこともできる。 勿論,ゲームマシンは,英国通貨10ペンスの倍数のものと,これらに対応するフランスフランの倍数のものとにおいて,作動するようになっているので,設定される交換レートは,換算に端数が生じないようなものにされなければならない。
換算終了後,信号がライン27’を経てクレジット記憶部へ送られ,遊技の残り回数がディスプレイ22’に表示される。 この場合,遊技の残り回数を表示する代りに,換算されたフランスフランの金額をディスプレイ22’に表示して,その金額で遊べるゲーム回数を遊技者に示すようにしてもよい。」(5頁左下欄3?25行)

「 このマシンの作用は,第1図と第2図のマシン10に似たものである。 しかしながら,ディスプレイ25’に表示される支払い賞金額は,英国通貨ではなく,フランスフランにより表示される。 さらに,賞金計算装置33’から換算装置へ信号が送られる代りに,すでに投入されたコインの金額は,第2の通貨の金額に換算されているので,賞金計算装置33’から信号が支払い装置39’へ直接送られ,貯溜部41’からフランスフランのコインが支払いシュウト23’へ供給される。
第3図と第4図に示したようなマシン10’の変形においては,換算装置45は,投入されたコインの金額を第2の通貨に換算しないで,遊べる遊技回数(マシンの負債)に換算するようになっている。 遊べるゲームの回数が,再びディスプレイ22’に表示される。 しかしながら,賞金額は,ゲーム回数の掛算で計算され,遊べるゲーム回数は,ディスプレイ25’に,例えば点数で表示される。」(5頁右下欄1?18行)

「 第2図の換算装置36のような第2の換算装置が第4図に点線で示されているが,これは,勝のポイントの数を支払うフランスフランに換算するため,賞金計算装置33’と支払い装置39’との間に設置される必要がある。」(5頁右下欄19?23行)

「 第5図と第6図には,この発明の他の実施例が示されている。
第5図において,前記した図面に示されたゲームマシン10,10’に類似のゲームマシン110が示されていて,このゲームマシンは,前記シンボルを表示したリール111,112,113のリール3個を有し,ゲーム回数ディスプレイ122と賞金額ディスプレイ125とを備えている。」(5頁右下欄24行?6頁左上欄6行)

「 しかしながら,前記した実施例におけるような一国の通貨のコインのみを受けるシングルのコイン受け入れ装置に代え,二つのコイン受け入れ装置118a,118bが設けてあり,一方の装置118aは,一つの通貨,すなわち,英国通貨のコインを,他方の装置118bは,第2の通貨,すなわち,フランスフランのコインをそれぞれ受け入れるようになっている。」(6頁左上欄13?19行)

「 第6図を参照すると,例えば,コインの受け入れ装置118aの投入口119にコインが投入されると,前記実施例同様に,該コインは,テストされる。 不合格であると,このコインは,矢印125aに示すように,支払いシュウト123に戻される。
コインがテストをパスすると,このコインは,貯留部126へ送られる。 これと同時に,信号がライン127aを経てクレジット記憶部Caへ送られ,これと接続するディスプレイ122に投入されたコインの金額に相当するゲーム回数が表示される。 クレジット記憶部Caから信号がライン129を経てスタート機構128へ送られ,これを作動する。 この例でも,スタート機構128が動作OKのとき,スタートボタン121は,点灯するようになっている。
スタートボタン121が押されると,信号がライン131を経てリール・ユニット132へ送られ,リール111,112,113が回転する。」(6頁右上欄4?20行)

「賞金計算装置133からライン134を経て信号がクレジット記憶部Caに送られ,ゲーム回数が無しとディスプレイ122に表示されたときは,信号がクレジット記憶部Caからライン135を経て賞金計算装置133へ戻される。かくして信号は,賞金計算装置133からライン137を経て換算装置136へ至る。」(6頁左下欄12?17行)

「 かくして,英国通貨のコインが投入されると,英国通貨の賞金金高は,フランスフランに換算され,フランスフランのコインが投入されると,フランスフランの賞金金高は,英国通貨に換算される。 いずれの場合においても,ライン138を介して信号が支払い装置139へ送られ,貯溜部126または貯溜部141に対し,賞金金額に見合う換算通貨でのコインの支払いを指示する。 かくして,英国通貨のコインが投入されていれば,賞金は,フランスフランのコインで支払われ,また,その逆も行なわれる。
第5図と第6図のマシンには,種々の変形が可能である。 例えば,ゲームマシンを二か国以上の通貨に適合させることもできる。 この場合には,遊技者が信号を換算装置136へインプットし,投入したコインにより得られる賞金金高を遊技者の選択する他の通貨に換算装置により換算し,選択した通貨による支払いを受ける。」(6頁左下欄23行?右下欄14行)

「 得られる賞金金高を他の国の通貨に換算する代りに,コイン受け入れ装置118a,118bのいずれかに投入したコインの金高を適当な換算装置によりゲーム可能回数に換算し,賞金金額をゲームの可能回数とすることができる。 この場合,別の換算装置を設けて,得られたゲーム可能回数を投入したコインの通貨とは別の通貨に換算したり,得られた賞金の金高に見合うコインに似たメダルまたはチケットを発行する。」(6頁右下欄15?22行)

これら記載事項を含め,甲第1号証の全記載を総合すると,甲第1号証には次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ゲームマシン10’は,3個のリール11’,12’,13’を有しており,これらリールの周側面には,いちご,オレンジなどのフルーツを描いたシンボルが表示されており,
コイン許容装置18’は,投入口19に投入されたコインがゲームマシンに受け入れられる適正な金高の,1ポンド,50,20,10ペンスコインであるか否かを検査する手段を備え,
投入されたコインがテストに不合格であると,このようなコインは,装置18’によりリジェクトされ,支払いシュウト23’へ送られ,
コインがテストに合格すれば,このようなコインは,貯溜部26’へ送られ,コインが受け入れられると,コイン許容装置18’からライン46を経て信号が換算装置45へ送られ,換算終了後,信号ライン27’を経てクレジット記憶部C’へ送られ,投入されたコインの金高に応じた遊技可能回数がディスプレイ22’に表示され,
一回の遊技のコストを10ペンスとすると,50ペンスコインが投入されれば,ディスプレイ22’に表示されるゲームの遊技可能回数は,5となるものであり,
スタートボタン21’が押されると,スタート機構28’から信号がライン30’を介してクレジット記憶部C’へ送られ,ディスプレイ22’に表示される遊技回数を一つずつ減らし,リール11’,12’,13’が回転し,
リール・ユニット32’に組み込んである停止機構が,リール11’,12’,13’をバラバラの位置で停止させるようにランダムに作動し,
勝の組合わせが表示されれば,遊技者の勝であり,勝の組合わせが表示されないと,遊技者の負けであって,
一回のゲームが終了するといずれかの表示がなされ,勝の組合わせの内のいずれかに該当するときに,遊技者に賞金が与えられるものであり,
遊技者が負けの場合は,さらにコインを追加投入して遊技を続けるか,あるいは,スタートボタン21’を押してディスプレイ22’に表示されている遊技回数の残りの分を楽しむことになり,
遊技者が勝の場合には,信号がリール・ユニット32’から賞金計算装置33’へ送られ,直ちに賞金の金額が示されるものであり,賞金額は,ゲーム回数の掛算で計算され,遊べるゲーム回数は,ディスプレイ25’に,点数で表示され,
同時に装置33’から信号がライン34’を経由してクレジット記億部C’へ送られ,このクレジット記憶部において,引き続き遊技可能であることを示すと,賞金計算装置33’へ信号が送られず,この場合には,賞金の支払いはなされなず,
ディスプレイ22’に残りゲームがゼロと表示されると,賞金のすべてが支払われるように,賞金計算装置33’から信号が勝のポイントの数を支払うフランスフランに換算するため換算装置36に送られ,換算装置36から信号が支払い装置39’へ送られ,貯溜部41’からフランスフランのコインが支払いシュウト23’へ供給される,ゲームマシン10’」

2.甲第2号証(特開昭57-3664号公報)
甲第2号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 本発明は,コインの投入口,投入コイン数の表示機構及びゲーム終了用操作部分を備え,遊技者のコインを投入口に供給することによつて表示機構に可視表示させ,ゲーム終了に際して操作部分を操作したとき,表示機構の表示数だけのコインを排出させるようにしたコイン式ゲーム装置に関する。」(1頁右下欄8?14行)

「 本発明のゲーム装置は,コイン投入口と,精算スイツチとコイン排出装置とコイン投入阻止装置と,前記投入口から投入されたコイン数を特定の番地に記憶する記憶演算機構と,前記特定番地の記憶内容を可視表示する表示機構とを備えており,前記記憶演算機構は,投入されたコイン数,ゲーム結果による得点コイン数及び賭けコイン数により特定番地のデータを加算・減算演算し再記憶し,かつ前記特定番地内のデータが一定値以下の場合には,前記精算スイツチの精算操作に応じて前記コイン排出装置からコインを排出し,記憶データが零となつたとき,及び一定値に達したときには加えて前記コイン投入阻止装置を作動させ,遊技を停止させるものであることを特徴とする。」(2頁左上欄第16行?右上欄10行)

「投入されたコイン枚数に応じてコイン検出器14は対応する出力信号を後述する制御装置2の記憶演算機構3の特定番地に供給する。このデータは,又,ゲーム盤20上の総合コイン枚数表示機構21により表示される。
次に,遊技者はゲームの賭け枚数(図示した装置の場合1?3枚)を決めるために操作パネル21上の賭けコイン数選択スイッチ22,23,24のいずれかを押す。押されたコイン数はゲーム盤20上に設けられた賭けコイン枚数表示機構25に表示される。またこれらスイツチ22,23,24の出力信号は,前記記憶演算機構3に入力されており,前記特定番地に入力されているコイン枚数から,相応する枚数が減算され,再び特定番地に再記憶され,このデータは表示機構21に表示される。これと同時にゲーム盤20のランプがゲーム表示部A,B,Cそれぞれ回転点灯移動をしてゲームが開始される。」(2頁左下欄10行?右下欄8行)

「 更に,遊技者が次のゲームを行なおうとして賭けコイン数選択スイツチ22,23,24又はゲーム宛精算スイツチ31を押すと,上記表示機構29に表示された枚数は記憶演算機構3の特定番地に入力されているコイン枚数に加算され,合計された枚数が再び記憶され,総合コイン枚数表示機構21に表示されると共に,一ゲーム宛コイン枚数表示機構29は零となる。」(2頁右下欄17行?3頁左上欄4行)

「 投入コイン検出器14の出力信号は記憶演算機構3の特定番地4に入力されており,ゲームの最初に役人されたコイン枚数は,まずこの特定番地4に入力され,同時にその枚数が総合コイン枚数表示機構21により表示される。次に賭けコイン数選択スイッチ22,23,24のいずれかにより選択された枚数は,賭けコイン枚数表示機構25により表示されると共に,その枚数の出力信号は特定番地4に入力され,前記した表示機構21の表示データは,該当枚数が減算され,特定番地4内のデータはアツプ・デートされ,再びこのデータが表示機構21により表示される。次に,ストツプ・スイツチ26,27,28が任意の順序で押されると,ゲーム盤20上のランプの停止位置に応じた出力信号により得点判定器49があらかじめ設定された枚数の出力信号を発生し,得点カウンター50でカウントされた後,一ゲーム宛コイン枚数表示機構29により表示されると共に,特定番地4に入力され,すでに入力されており表示されているデータと加算され,特定番地4内のデータはアツプ・デートされ,再びこのデータが表示機構21により表示される。」(3頁右上欄8行?左下欄10行)

「 (a) ゲーム宛精算スイツチ31が押されると,得点カウンター50にカウントされ特定番地4に入力されている信号,即ち一ゲーム宛コイン枚数表示機構29に表示されているコイン枚数が特定番地4にすでに記憶されているデータ,即ち,現在総合コイン枚数表示機構21により表示されている枚数に加算され,新たにアツプ・デートされたデータが特定番地4に再記憶されると共に,表示機構21により表示され,得点カウンター50がリセツトされ,表示機構29の表示が零となる。そして,スイツチ22,23,24,26,27,28,表示機構25,ゲーム盤20がリセツトされ,再びゲームを行なうための準備が完了する。
したがつて,賭けコイン枚数選択スイツチ22,23,24のいずれかを押せば,第1図の説明のところで述べたと同様にして続いてゲームを行なうことができる。」(3頁右下欄14行?4頁左上欄11行)

3.甲第3号証(特開昭57-1369号公報)
甲第3号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 本発明は,コインをゲーム媒体としてコイン数の増減を競うコインゲーム機に係り,特に複数の回転体の停止位置の組合せ態様に応じ賞コインを排出するようにしたゲーム機に関する。」(1頁右下欄17?20行)

「 また上記操作パネル5は,第5図に示すように前面枠3裏面下部に横方向に渡架した裏板12上に設けられており,その前面には組合せ回転体の駆動モータに動作信号を与えるスタートハンドル13,および組合せ回転体の停止装置に駆動信号を与えるストツプスイツチ14がそれぞれ取り付けられている。15は裏板12に穿設した配線用の孔である。」(2頁右上欄16行?左下欄3行)

「 いま説明を簡単にするため組合せ回転体38上に表示される記号Sの教が第8図のように8個(45°間隔)であると仮定すると,上記ストツパプレート42の外周に形成される爪47も等角度間隔に8個であり,この爪47に対し係止レバ装置43のレバ48がソレノイド49の励磁消磁により係脱される。ソレノイド49は例えばコイン投入検出器20のコイン検出信号により励磁されてレバ48と爪47との係合を解き,回転体38の回転を可能とする。そしてストツプスイツチ14の操作により消磁されるとレバ48を爪47のいずれかに係合させて回転体38を停止させるのである。なお回転体38の停止時に,その表面の記号Sが組合せ表示部11の窓11aに合致することは勿論である。」(3頁左上欄5?19行)

「この制御装置によつて,さらに他のゲーム機能を得ることができる。例えはゲーム開始時に投入するコインの枚数に応じて賞コインの数を変更したり,特定組合せのときには他のゲームを行なわせてもよい。前者の場合には前面枠3の表面に投入枚数表示装置56を設け,賞コイン数を投入枚数の組合せ記号(数字)倍に制御する。勿論賞コイン倍数は投入コイン枚数毎に別個に設定してこれを表示してもよい。」(3頁右下欄19行?4頁左上欄7行)

「 さらに組合せ回転体38の停止位置が特定組合せとなつたときには,コインを排出することなく再ゲームの権利を与え,あるいは組合せ態様と賞コイン数との関係を変更可能としてこれを表示するようにしてもよい。
またコインの投入排出に関しては,投入コイン枚数を機枠の表面に設けた表示器にデジタル表示させ,ゲーム開始操作毎にこれから減算して表示し,賞コインの排出があつたときはこれに加算表示して精算時に表示数のコインを受皿に排出するようにすることができる。」(4頁左上欄13行?右上欄3行)

4.甲第4号証(特開昭59-168869号公報)
甲第4号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 本発明は,例えばスロツトマシンの如く,周面に複数種の絵柄が施こされた複数個のドラムをハンドル操作により一斉回転させた後,ストツプボタンの押操作等で各ドラムを停止させたとき,停止ライン上に位置する各ドラムの絵柄が決められた配列をとるか否かによりゲームの勝負を決し,所定配当のメダルを放出する電子遊戯機に関連し,殊に本発明は,停止ライン上に特定の絵柄配列が形成されたとき,通常のゲームとは別個に一層高配当のゲーム(以下,ボーナスゲームという)を提供する電子遊戯機に関する。」(1頁左下欄17行?右下欄8行)

「 第1図は3個のドラム1a,1b,1cを有するスロツトマシンを示し,器体2の前面中央部に絵柄表示部3,放出メダル数をデジタル表示する数字表示器4,メダル投入口5,操作ハンドル6および,各ドラムに対応するストツプボタン7が夫々配備され,器体2の下方位置にはメダル放出口8及び受皿9が設けてある。」(2頁左上欄8?14行)

「投入メダルが1枚のときは中央の停止ラインL_(1)上に,2枚のときは上,下,中央の各停止ラインL_(1),L_(2),L_(3)上に,3枚のときは上,下,中央,斜めの各停止ラインL_(1),L_(2),L_(3),L_(4),L_(5)上に,所定の絵柄が配列することにより,所定配当のメダルが放出され,更に投入メダル数に対応する停止ライン上に特定の絵柄配列が出現した場合はボーナスゲームの機会が与えられる。このボーナスゲームは,投入コイン1枚につき1個のドラムを停止でき,停止ラインL_(1)上に特定の絵柄が位置したとき高配当のメダルを放出するもので,1回のハンドル繰作と,3枚の投入メダルとで3回のボーナスゲームが実施でき,更にこれを4回連続,合計12回のボーナスゲームが実施できる。従つて器体2前面にはボーナス配列の出現により点滅動作する点滅表示器10と,ストツプボタン7により停止操作できるドラムを指示するボタン指示ランプ11と,ボーナスゲームの残り回数を指示する回数指示ランプ12とが配備してある。
前記第1?第3ドラム1a,1b,1cは,第2図および第3図に示す如く,夫々独立する回転軸13上に回転自由に配備されており,各ドラムの側面へ固定された金属プレート14を始動レバ(図示せず)で蹴つてドラムを始動させると共に,モータ駆動により回転軸13を回転させて,ドラムの回転を維持させる。前記金属プレート14の周縁には絵柄数と一致する複数の凹溝15が設けてあり,何れかの凹溝15へ係入してドラムの回転を停止させる係合片16と,金属プレート14に対し係合片16を係脱動作させるソレノイド17とをもつて停止機構18を構成する。各ドラムの停止機構18は,利用客がストツプボタン7を押操作したとき,所定時間経過後に作動して,ドラム1a,1b,1cの回転を停止させる。
尚前記金属プレート14には絵柄数に一致する複数個の円形孔19が等間隔に開設されており,この孔列に対応位置させた光学的読取手段20の出力パルスをカウンタ(図示せず)で計数することにより絵柄表示部に位置する各ドラムの絵柄を検出する。」(2頁左上欄18行?左下欄19行)

「センサ21はメダルの投入の有無等を検出し,・・・,ストツプボタン7は第1?3ドラム1a,1b,1cの回転を停止させる。」(2頁右下欄1?5行)

「また図示例の数字表示器4はメダルの払出し枚数をデジタル表示し,」(2頁右下欄7?8行)

「メダル計数部28は投入メダルや払出しメダルの枚数を計数し,」(2頁右下欄12?13行)

「今利用客がメダル投入口5へ1?3枚のメダルを投入して,操作ハンドル6を操作すると,ステツプ52およびステツプ53の判定が共に“YES”となり,ステツプ54へ進む。」(3項左下欄1?4行)

「利用客が3個のストツプボタン7を順次押操作すると,ステツプ57の判定が“YES”となり,つぎのステツプ58で各ドラムは回転を停止し,各停止ラインL_(1)?L_(5)上に各ドラムの絵柄が配列する。」(3頁左下欄19行?右下欄3行)

5.甲第5号証(特開昭60-232189号公報)
甲第5号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 本発明は,室内遊戯場等に設置して,一般大衆の娯楽に供されるスロツトマシンに関する。」(1頁右下欄4?5行)

「放出メダル数をデジタル表示する枚数表示器4,メダル投入口5,」(2頁右上欄19?20行)

「 絵柄表示部3には,ドラム停止時,各ドラム1a,1b,1cの周面に施こされた複数種の絵柄の内,夫々3駒分の絵柄が現われるよう構成されており,投入メダルが1枚のときは中央の停止ラインL_(1)上に,2枚のときは上,下,中央の各停止ラインL_(1),L_(2),L_(3)上に,3枚のときは上,下,中央,斜めの各停止ラインL_(1),L_(2),L_(3),L_(4),L_(5)上に,所定の絵柄が配列することにより,所定配当のメダルが放出される。更に投入メダル数に対応する停止ライン上に特定の絵柄配列が出現した場合,前記3個の数字表示部8A,8B,8Cが作動を開始する。図示例の各数字表示部は,発光ダイオードより成る数字の各セグメント(通常7セグメント)を点滅制御して,0?9の数字を表示するものであり,表示内容を設定時間だけランダム変化させた後,任意の数字を特定化してデジタル表示する。そして各数字表示部8A,8B,8Cに表示された数字が一致したとき,ボーナスゲームの機会が与えられ,そしてこの場合,ボーナス回数表示部9によつてボーナスゲームの回数が設定される仕組みになつている。」(2頁左下欄6行?右下欄6行)

「 第4図は上記スロツトマシンの回路構成例を示すもので,図中,センサ20はメダルの投入の有無等を検出し,」(3頁左上欄13?15行)

「停止ボタン7は第1?3ドラム1a,1b,1cの回転を停止させる。」(3頁左上欄16?18行)

「メダル計数部22は投入メダルや払出しメダルの枚数を計数する。」(3頁左上欄20行?右上欄1行)

「今利用客がメダル投入口5ヘメダルを投入すると,第5図のステツプ31が“YES”となり,操作ハンドル6がロツク解除される(ステツプ32)。ついでハンドル操作されると,ステツプ33が“YES”となり,3個の回転ドラム1a,1b,1cが一斉回転する(ステツプ34)。つぎに利用客が3個の停止ボタン7を順次押すと,各ドラム1a,1b,1cの回転が停止し,絵柄表示部3に各ドラムの絵柄が整列状態で表示される(ステツプ36)。」(3頁右上欄13行?左下欄2行)

6.甲第6号証(特開昭59-186580号公報)
甲第6号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 第1図は本発明を適用したスロツトマシンの一例を示す外観正面図である。」(2頁右下欄17?18行)

「23はゲーム開始に先立ち,遊技者がメダルを投入するメダル投入口,」(3頁左上欄9?11行)

「このスロツトマシンでは,ゲーム開始に先立つ投入メダル枚数に応じて,入賞ライン数を選択できるようになつている。すなわち第2図において各窓21A?21Cからは各リールのシンボルマークSがそれぞれ3個づつ見えるが,メダルを1枚投入した場合にはライン1のみが入賞判定にあたり有効化され,2枚の場合にはライン1,ライン2A,2Bの合計3ライン,3枚投入の場合にはさらにライン3A,3Bの合計5ラインが有効化されることになる。なお,Lはランプで,投入メダル枚数に応じて有効化されるラインを点灯により表示する。入賞ライン数の選択は,スタートレバー操作前に何枚のメダルを投入するかによつて決定されるが,これはメダルの投入をマイクロスイツチあるいはフォトセンサなどで電気信号として検出し,またスタートレバーが操作されたか否かの判断に基づいて例えば第3図のようなフローチャートに従つてなされる。なお,第3図において”ライン有効”の処理は表示ランプLを点灯させると同時に,入賞判定を行なうにあたつて考慮されるべく,後述のマイクロコンピユータヘの入力信号をも発生させる。」(3頁左上欄20行?左下欄1行)

「すなわち,スタートレバー操作により,3つのリールが回転され,所定時間の経過後,後述するヒツトリクエストの設定(入賞の有無を照合)を行なつてリールストツプのためのストツプボタンの操作の有効化およびその表示のためのストツプランプ(第1図中27に対応)を点灯させる。第4図における判断プロセスP_(1),P_(2),P_(3)はそれぞれ,回転中の3個のリールについて,ストツプボタン操作がされたか否かによつて判断処理される。そしてストツプボタンに対応したりールが回転中,かつストツプボタンが操作された場合に,そのリールをストツプさせることになる。従つて,例えば3個のリールのいずれからストツプ操作されてもよいことになり,P_(4)の判断プロセスであるすべてのリールが停止した判断が得られるとゲーム終了となり,例えば第5図のフローチヤートに従つて入賞判定処理,入質の場合メダル払い出し処理がなされる。」(3頁左下欄4行?右下欄1行)

「また70,71はそれぞれ入賞メダル支払い用ホツパー,ホツパーモータ駆動部,72はゲーム開始に先立つメダル投入を検出するメダル検出部で,ホツパー70からの支払いメダル数信号と共にメダル検出部72からの投入メダル数信号はSw入力部75,メインCPU50を介してカウンタ駆動部76,カウンタあるいはランプ77へと伝達され,投入メダル,支払いメダルの枚数を検出し,あるいは投入メダル数に応じた入賞有効ラインの表示ランプを点灯させる。なお投入メダル数が3枚に達すると,メダル投入をロツクするロツクソレノイドが駆動される。なお78は他のスイツチ操作部,例えばメダルの投入後,ゲームを中止したい場合に操作される中止スイツチなどである。」(4頁左下欄1?15行)

「第22図からわかるように,第3リール停止後の入賞判定処理によれは,入賞の場合支払いメダル枚数がペイアウトエリア(第14図中のRAM4)にストアされることになる。そしてホツパーによリメダルが1枚支払われる毎にペイアウトエリア内の数が-1づつ減算され,0になるとホッパーモータOFFとなりゲームが終了することになるものである。」(9頁左下欄18行?右下欄6行)

7.甲第7号証(特開昭58-41588号公報)
甲第7号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「さらに内蔵したマイクロコンピユータは,リールが定速回転に達してから,これを停止させることができるようにプログラムされている。これは,パルスモータの低速中に絵柄を見ながらストツプボタンを押すと,熟練者は殆どの場合に「当り」を得ることが可能になつてしまうからである。したがつてストツプボタンを早く押した場合には,マイクロコンピユータはこのストツプ命令を受け付けないから,ストツプボタンの操作時とリールの停止時との間に時間的ズレが生じ,不自然な印象を与えることになる。」(1頁右下欄7?18行)

「 第1図において,スロツトマシン1は,その側部に操作ハンドル2が設けられており,これを手前に引くことによつてリール3?5が同時に回転する。」(2頁左上欄5?8行)

「 前記リール3?5は,ストツプスイツチ(タツチセンサースイツチ)9?11に指を触れるだけで停止させることができる。投入口12にメダルを投入すると,操作ハンドル2のロツクがマグネツト等によつて解除され,ゲームを開始することができる。メダルは,横一列又は斜め一列に所定の絵柄が並んだときに,受皿13に排出される。このメダルは,投入したメダルの枚数に応じて排出され,例えば投入したメダルが1枚のときには2枚,2枚のときには4枚,3枚のときには6枚となる。なお,通常は投入枚数毎に配当表が設けられており,投入したメダル数を積算して対応する配当表がランプ等によつて照明される。」(2頁左上欄12行?右上欄4行)

「前記操作ハンドル2を手前に引くとスイッチ31がONする。またコイン32を投入口12に投入すると,スイツチ33がONする。
マイクロコンピユータ34は,スイツチ33がONしたときに,操作ハンドル2のロツクを解除する。そしてスイツチ31がONすると,ゲーム用プログラムが実行され,モータ制御回路35?37を制御する。これらのモータ制御回路35?37は,周期が徐々に短くなるパルスをパルスモータ38?40に送つてこれを駆動する。これにより,パルスモータ38?40は,第4図に示すように時間T1から回転を開始し,徐々に増速して時間T2で一定速度に達する。なお,パルスモータ38?40は,脱調して停止することがある。この場合には,モータ制御回路35?37をリセツトして,再び徐々に増速する。この再スタートはマイクロコンピユータ34に予めプログラムされており,パルスモータ38?40の脱調を検知して自動的に行なわれる。
前記パルスモータ38?40が定速回転に入つてから,時間T3になると,発光ダイオード16,41,42が点灯する。この発光ダイオード41はストツプスイツチ10に,また発光ダイオード42はストツプスイツチ11にそれぞれ設けられている。
発光ダイオード16,41,42が点灯してから,ストツプスイツチ9?11を順次押すと,パルスモータ38?40へのパルスの供給が阻止され,リール3?5が停止する。この停止したりール3?5に描れている絵柄は,窓6?8を通して確認することができる。」(2頁左下欄12行?3頁左上欄3行)

8.甲第8号証(特開昭61-11078号公報)
甲第8号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 第2図は3個の回転ドラム1a,1b,1cを持つスロツトマシンを示し,器体2の前面に案内表示部3,絵柄表示部4,メダル投入口5およびメダル放出口6が夫々配設され,器体2の側面には操作ハンドル7が前側へ傾動操作可能に取り付けてある。
案内表示部3は数字表示部8と点滅表示部9とを含み,数字表示部8にはメダルの払出し枚数がデジタル表示され,一方点滅表示部9にはメダルの投入枚数や払出倍率等,ゲーム内容に関連する各種情報がランプの点滅により表示される。
絵柄表示部4は,各回転ドラム1a,1b,1cの絵柄を1乃至複数本の停止ラインl(図示例では1本)に沿い整列して表示する部分であり,器体2内に並列配備された3個の回転ドラム1a,1b,1cが回転を停止したとき,各ドラム周面の3駒分の絵柄のみが器外より透視できるようになつている。
前記第1?第3ドラム1a,1b,1cは,第3図に示す如く,夫々独立する回転軸10上に回転自由に配備されており,各ドラムの側面へ固定された金属製の検出プレート11を始動レバ(図示せず)で蹴つて回転ドラムを始動させると共に,モータ駆動により回転軸10を回転させて,回転軸10と回転ドラムとの間の動摩擦によりドラムの回転を維持させる。前記検出プレート11の周縁には第1図に示す如く,絵柄の駒数(本実施例では合計21駒)と一致する複数の凹溝12が設けてあり,何れかの凹溝12へ係入してドラムの回転を停止させる係合片13と,検出プレート11に対し係合片13を係脱動作させるソレノイド14とをもつて停止機構15を構成する。本実施例の停止機構15は,ハンドル操作後一定時間経過すると自動的に作動して,回転ドラムを停止させる方式であるが,これに限らず,利用客による停止押釦スイツチの押操作があると作動して各回転ドラムを停止させる方式を採用しても可い。」(2頁左下欄15行?3頁左上欄13行)

9.甲第9号証(特開昭61-11079号公報)
甲第9号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 第2図は3個の回転ドラム1a,1b,1cを持つスロツトマシンを示し,器体2の前面に案内表示部3,絵柄表示部4,メダル投入口5およびメダル放出口6が夫々配設され,器体2の側面には操作ハンドル7が前側へ傾動操作可能に取り付けてある。
案内表示部3は数字表示部8と点滅表示部9とを含み,数字表示部8にはメダルの払出し枚数がデジタル表示され,一方点滅表示部9にはメダルの投入枚数や払出倍率等,ゲーム内容に関連する各種情報がランプの点滅により表示される。
絵柄表示部4は,各回転ドラム1a,1b,1cの絵柄を1乃至複数本の停止ラインl(図示例では1本)に沿い整列して表示する部分であり,器体2内に並列配備された3個の回転ドラム1a,1b,1cが回転を停止したとき,各ドラム周面の3駒分の絵柄のみが器外より透視できるようになつている。
前記第1?第3ドラム1a,1b,1cは,第3図に示す如く,夫々独立する回転軸10上に回転自由に配備されており,各ドラムの側面へ固定された金属製の検出プレート11を始動レバ(図示せず)で蹴つて回転ドラムを始動させると共に,モータ駆動により回転軸10を回転させて,回転軸10と回転ドラムとの間の動摩擦によりドラムの回転を維持させる。前記検出プレート11の周縁には第1図に示す如く,絵柄の駒数(本実施例では合計21駒)と一致する複数の凹溝12が設けてあり,何れかの凹溝12へ係入してドラムの回転を停止させる係合片13と,検出プレート11に対し係合片13を係脱動作させるソレノイド14とをもつて停止機構15を構成する。本実施例の停止機構15は,ハンドル操作後一定時間経過すると自動的に作動して,回転ドラムを停止させる方式であるが,これに限らず,利用客による停止押釦スイツチの押操作があると作動して各回転ドラムを停止させる方式を採用しても可い。」(2頁右上欄16行?右下欄14行)

10.甲第10号証(特開昭61-31184号公報)
甲第10号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 第2図は3個の回転ドラム1a,1b,1cを持つスロツトマシンを示し,器体2の前面に案内表示部3,絵柄表示部4,メダル投入口5およびメダル放出口6が夫々配設され,器体2の側面には操作ハンドル7が前側へ傾動操作可能に取り付けてある。
案内表示部3は数字表示部8と点滅表示部9とを含み,数字表示部8にはメダルの払出し枚数がデジタル表示され,一方点滅表示部9にはメダルの投入枚数や払出倍率等,ゲーム内容に関連する各種情報がランプの点滅により表示される。
絵柄表示部4は,各回転ドラム1a,1b,1cの絵柄を1乃至複数本の停止ラインl(図示例では1本)に沿い整列して表示する部分であり,器体2内に並列配備された3個の回転ドラム1a,1b,1cが回転を停止したとき,各ドラム周面の3駒分の絵柄のみが器外より透視できるようになつている。
前記第1?第3ドラム1a,1b,1cは,第3図に示す如く,夫々独立する回転軸10上に回転自由に配備されており,各ドラムの側面へ固定された金属製の検出プレート11を始動レバ(図示せず)で蹴つて回転ドラムを始動させると共に,モータ駆動により回転軸10を回転させて,回転軸10と回転ドラムとの間の動摩擦によりドラムの回転を維持させる。前記検出プレート11の周縁には第1図に示す如く,絵柄の駒数(本実施例では合計21駒)と一致する複数の凹溝12が設けてあり,何れかの凹溝12へ係入してドラムの回転を停止させる係合片13と,検出プレート11に対し係合片13を係脱動作させるソレノイド14とをもつて停止機構15を構成する。本実施例の停止機構15は,ハンドル操作後一定時間経過すると自動的に作動して,回転ドラムを停止させる方式であるが,これに限らず,利用客による停止押釦スイツチの押操作があると作動して各回転ドラムを停止させる方式を採用しても可い。」(2頁左下欄9行?3頁左上欄8行)

11.甲第11号証(株式会社オリンピアホームページ「遊技機産業の歴史」)
甲第11号証には,以下の事項が記載されている。
「遊技機産業の歴史 ?パチスロ産業の歴史?
・・・
昭和60年 ・・・
・・・
・回胴式遊技機としてパチスロが登場」(1頁上段)

12.甲第12号証(特開昭60-68884号公報)
甲第12号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 17はCRTモニターであり,競馬の状況を絵にして表示するとともにメダル投入口12から投入したメダルの枚数(クレジツト枚数),各出走馬の賭け率(配当枚数),前記ベツトボタン10により入力した賭け高(ベット枚数),前記セレクトボタン9により選択した投票馬の番号等を表示する。」(2頁右下欄18行?3頁左上欄3行)

「 クレジツト枚数は賭け高(ベツト枚数)を入力した時点において賭け高の数だけ入力前のクレジツト枚数から減算される。
入賞した際に受ける利益は賭け高(ベツト枚数)に賭け率(配当枚数)を掛けた枚数であり,メダルがメダルホツパーユニツト15からメダル取出口16へ払出されるかまたはクレジツト枚数に加算される。」(3頁左上欄10?17行)

「ここで投票馬および賭け高を変更してゲームを再開したいときはセレクトボタン9およびベツトボタン10により投票馬および賭け高を変更してからスタートボタン8を押せばよい。」(4頁左上欄8?11行)

13.甲第13号証(特開昭58-43093号公報)
甲第13号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 まずメダルを投入することによりメダルが貯蔵されると同時にトータルメダル数デジタル表示部に貯蔵メダル数が表示される。その貯蔵メダル数の範囲内で,たとえば連勝複式のばあいは1着2着でゴールインする馬の組合せを予想登録でき,登録に費やされた数が前記デジタル表示部から減算される。したがつて1度に10?20回の予想登録を行なおうとするとき,10?20枚以上のメダルを投入しなければならず,その投入にかなりの時間を要する。ついでスタートスイッチを押圧してゲームを開始し,各馬がゴールインすることによつてゲームが終了し,予想登録とゲームの結果が一致したとき配当率に応じた配当数が表示され,その配当数がトータルメダル数デジタル表示部の表示数に加算されて,ゲーム後のメダル残存数(貯蔵数)が表示される。」(2頁右上欄8行?左下欄4行)

14.甲第14号証(新村出編,「広辞苑」,第六版,株式会社岩波書店,2008年1月11日,1418頁)
甲第14号証には,以下の事項が記載されている。
「しょ・ゆう[所有]自分のものとして持っていること。また,そのもの。」(1418頁下段)

15.甲第15号証(特開昭51-17834号公報)
甲第15号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「最初の代用硬貨が溝34に投入されると,列H_(3)が「掛け済み」の線となり,借号線44(第1図)が照明されて掛け済み線を表示する。信号線42,43,45,46はその他の掛済み線が動作中であることを表示するようになつている。即ち,第2の代用硬貨が溝34へ投入されるならば,列H_(2)も亦掛済み線となる。第3の代用硬貨が溝34へ投入されれば,列H_(4)が,第3の掛済み線となる。同様に,溝34へ投入された第4及び第5の代用硬貨は,夫々列H_(1)及び列H_(5)を,更に掛済み線として利用し得るようになる。」(4頁右上欄12行?左下欄7行)

16.甲第16号証(特開昭54-159038号公報)
甲第16号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「なおゲーム方法が簡易化されプレーヤは一回のプレーにかける数字を単数ないし複数個選ぶ事が出来その数によりそのプレーの倍率が決まり,又一回のプレーのかけ点を(チップ数に相当する)プレーヤが自由に選ぶ事が出来る様にしたものである。」(1頁右下欄11?17行)

「まずコイン投入口丸2(2の丸囲み数字は,「丸2」という。以下同様。)よりコインを投入する事により総得点表示丸3に一定の点数が入りそれがプレーヤの持点となる。一回のプレーはまずプレーヤがかけたい点数だけかけ点スイッチ丸8を押す事によりかけ点表示丸5に表示される。次にかけたい数字(当りとなって欲しい数字)を単数あるいは複数個レイアウトスイッチ丸7を押す事により選定しその個数により当った場合の倍率が決まり倍率表示丸4に表示される。」(2頁左上欄14行?右上欄2行)

「ランプの光が止まりプレーボードの数字が当っているかいないかは丸15の信号で判り当っていれば倍率×かけ点の点数が総得点表示丸3に自動的に加わり(それは丸16の信号による)又信号丸17によりカウンタ等がリセットされ一回のプレーが終わる。総得点表示丸3に点数があれば再ゲーム出来(信号丸18による)点数がなければゲーム終了となる。」(2頁右上欄18行?左下欄5行)

17.甲第17号証(特開昭57-131471号公報)
甲第17号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 特定の領域に賭をするために,遊ぎ者は単一のオプチカルフアイバケーブル22を介してコンソール10に接続されたライトペン20を所望の領域に置く。ペン20を所望の領域に瞬間的に置くことによつて単一のチツプがその領域にかけられる。これに反し,遊ぎ者がその領域に延長された時間の間ペンを置いている場合,あるいは遊ぎ者がその領域にペンを繰り返し置く場合には,チツプの値は毎秒当りほぼ2増分の割合で(あるいは後者の場合にはスクリーンにペンを当てるごとにほぼ2増分の割合で),あるいは他の所望の割合で増大する。」(7頁左上欄8?19行)

18.甲第18号証(特開昭59-55272号公報)
甲第18号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「チツプキー14は掛けるべきチツプ数を指定するものであり,1回押す毎にチツプの数字が「1→2→3・・・」あるいは「1→5→10」のように変化する。」(2頁左下欄2?5行)

「符号16はコイン(メダルも含む)投入口であり,」(2頁左下欄10?11行)

「コインを投入すると,ゲーム処理が実行される。移動キー9?12を押してカーソルを掛け表上で移動し,掛けたいものを選択する。この選択後にチツプキー14を押してチツプ数を指定する。このようにして掛け処理を行つてから,スタートキー15を押せば,前述したようにルーレツト盤5が回転し,発光ダイオード(LED)6a?6nが点滅して回転状態となる。」(3頁左上欄18行?右上欄5行)

「 ゲーム部4の動作後に,当り判定と当り処理を行なう。そして当つている場合には,配当表に示された配当チツプを持ち点に加算して表示する。なお,コインの投入により,一定数の持ち点を表示し,この持ち点から掛けたチツプ数を減算し,この持ち点が零になるまでゲームを行なうことができるものである。」(3頁右上欄18行?左下欄4行)

19.甲第19号証(特開昭59-32477号公報)
甲第19号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 従来のスロツトマシンでは,一斉回転する複数個のドラムを停止押釦スイツチの押操作により個別に停止させるか,或いは設定時間経過後に各ドラムの回転を自動的に停止させるかの何れかの方式をとつている。」(1頁右下欄16?20行)

20.甲第20号証(特開昭57-142279号公報)
甲第20号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 コイン投入口(L)〔第2図〕から硬貨もしくはメダルを投入すると,コイン計数回路(2)がその枚数をカウントし,投入枚数に応じてゲーム計数表示LED(3)が作動し,ゲーム数表示部(J)〔第4図〕にゲーム数が表示される。例えば,メダル7枚で1ゲームできるように設定しておいた場合,コイン投入口(1)からメダル7枚が投入されると,ゲーム数表示部(J)には”1”と表示される。」(2頁右下欄8?16行)

「 一方,遊戯者がスタートスイッチ(G)を押すとアンド回路(X)の入力が共に”1”となり,パルス発生回路(8)からパルスが発生し,リングカウンター(9)及びエンコーダードライバー(11)を介して数字走査表示ランプ(12)を順次点灯させる。
従って,テーブル面のルーレットゲーム用のランプ表示部(D)において回転するごとく表示箇所がくるくると変わる。
なお,このときゲーム回数の表示は1回マイナスとなる。」(3頁左上欄1?10行)

「 次に,1回目のゲームに続いて2回目のゲームを行う場合を説明する。
コイン計数回路(2)の出力が1となり,遊戯者がスタートスイッチ(G)を再び押すと,次のゲームが始まる。
そして,前回と同様ルーレットゲーム用の数字走査ランプ(12)における数字がビンゴ表示ランプ(14)により表示部(E)に順次表示され,比較判定回路(15),入賞回路(16)で判定され,ポイント表示LED(18)により点数が表示され,その得点はトータル演算回路(19)により前回のゲームにおける得点に加算され,その合計得点がエンコーダードライバー(20)を経てトータル表示LED(21)によってトータル表示部(I)に表示される。
そして,景品払出しスイッチ(K)を押すと回路中の景品払出しスイッチ(22)が作動し,合計得点に応じて景品又はメダルが払出口(N)から払い出される。
なお,さらにゲームを続ける場合においては合計得点を得点→ゲーム回数変換回路(23)で変換し,次回のゲームに充当させることもできる。
この操作を繰り返すことにより,好きなだけゲームを楽しむことができる。」(3頁右下欄2行?4頁左上欄5行)

21.甲第21号証(特開昭54-120048号公報)
甲第21号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「 この様に遊技者が投入部9に供給したコインが適正であれば,該コインはプール部分19又はオーバーフロープール部20に供給されて賞としての排出用に供されるのであるが,1個宛が信号発生器18で検知されて遊技盤2の一隅に設けた表示器35に供給数を表示する。」(3頁右上欄7?12行)

「 第3図は本発明のブロツクダイアグラムを示すもので,信号発生器18からの信号がゲート回路36を介してカウンタ回路37に加算信号として入り,ドライバ回路38を介して表示器35を加算表示する。
この状態で遊技者がゲームの開始操作部13を操作すると,ゲート回路39は1の減算信号を発信してカウンタ回路37の入力とし,表示器35の表示数を1だけ減算させる。」(3頁右上欄16行?左下欄4行)

「 この遊技において遊技球が入賞具5に入つたり,或いは遊技球が個々の受枠6に入つて対応する表示部7のランプが点灯し縦,横,斜などに揃つて入賞態様を構成したとき,マトリツクス判別回路45は入賞態様に相当する信号を発信してゲート回路36によりカウンタ回路37に加算信号を供給し,表示器35に相当する加算表示を行う。」(3頁左下欄12?19行)

「 この様にして遊技者が1枚のコイン,即ち表示器35の1の数値により一定数の遊技球を発射すると1ゲームを終了するのであつて,遊技球が入賞具5に入らないし表示部7…が入賞態様にならなければ表示器35は1だけ減算表示され,入賞具5に入つたり入賞態様になると相当する数値だけ加算表示される。
遊技者が次にゲームを行うとき,開始操作部13を操作して前記の作動を繰り返させるのである。」(3頁右下欄2?11行)

「 以上で明らかな様に本発明によれば遊技者が供給したコインの数を表示器に可視表示し,表示数の1に対して一定数の遊技球で1ゲームを行をせ,1ゲーム内で特定の入賞態様が発生したとき表示数値を加算させるとともに,1ゲームごとに表示数値を減算させ,帰零したとき遊技を停止させる様にしたものである。したがつて遊技者は多くのゲームを連続的に行うことができ,ゲームの都度コインを供給する手間がないので遊技のタイミングを狂わせることがない。また遊技者は表示器に表示される数値によりゲーム数を確認できるので安心感が有り,遊技の興趣を高めることができる。」(4頁右上欄17行?左下欄9行)

22.甲第22号証(特開昭55-88786号公報)
甲第22号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
「特定入賞具6はこれに遊技球1が入つたとき遊技者に対して「3点」の得点を与えることにより賭けゲームを行う資格を直ちに与える。これに対してターゲツト8は後述するゲーム表示具9のうちマトリクス状ターゲツトランプ10を点灯させることにより,点灯したランプが縦及び横1列に並んだとき「1点」の得点を与え,また斜め1列に並んだとき「3点」の得点を与え,これと同時に遊技者に対して賭けゲームを行う資格を与える。」(2頁右上欄19行?左下欄8行)

「1回のゲームは発射樋2に導入された16個の遊技球が弾発し尽されるまで続けられ,かくして1ゲームが終了するまでターゲツトランプ10の並び方に応じて遊技者に与えられた得点が得点表示器11に累積表示される。」(2頁左下欄13?17行)

「コインの投入は複数枚を連続に行つても良く,このときCPU46は積算記憶する。このときCPU46は記憶データをこれに対応する得点に換算して総合得点表示器54にドライバ47を介して表示させる。」(4頁右上欄5?9行)

「 ここで総合得点表示器54に表示される「1点」の得点は1回のゲーム(すなわち16個の遊技球を弾発できる)を行う資格を遊技者が取得していることを意味し,また精算時には対応する枚数のコインを受ける資格を遊技者がもつていることを意味する。
遊技の開始は遊技者が遊技盤40の表面に設けられたゲームスタートスイツチ31を操作することによりなされる。このときCPU46はスタート指令信号を受けてデータメモリ44に記憶していた総合得点から「-1」を減算して総合得点表示器54に表示させると共に,ドライバ47を介して遊技球排出装置59を動作させる。」(4頁右上欄12行?左下欄4行)

「 リプレイ数表示器70は遊技者が1回のゲームで獲得した得点が「6点」以上の場合,「5点」を超過した分を無効にしないで遊技者がこのゲーム装置で遊技を続ける限りこの超過分をも引き続きゲームさせようとするもので,上述の上限制限に対する救済手段として設けられている。リプレイ数表示器70が「0」でない場合,遊技者が先ずリプレイ数表示器70の得点を使つてゲーム(1ゲームにつき16個の遊技球を弾発できる)を行うことができ(ゲームスタートスイツチ31が操作されるごとに「-1」を減算される),このリプレイ数表示器70が「0」になつた後総合得点表示器54の得点を使つてゲームを行うことができる。かくしてリプレイ数表示器70及び総合得点表示器54の内容が共に「0」になると当該遊技者はゲームを行う資格を失うことになる。」(5頁右下欄18行?6頁左上欄13行)

「 一方ターゲット表示具10において「役」ができた(すなわち列が形成された)が賭けゲームをしない場合には,遊技者は次のゲームに入るか,精算をすることができる。次のゲームに入る場合はゲームスタートスイツチ31を操作すれば良く,このときCPU46は得点表示器11の得点×(1ゲームの間に獲得した得点)を総合得点表示器54にシフト加算表示させる。このときCPU46は得点×が「6点」以上であれば「5点」を総合得点54へシフト加算表示させると共に残数をリプレイ数表示器70にシフト加算表示させ,その後リプレイ数表示器70から「-1」を減算する(リプレイ数表示器70の表示が「0」のときは総合得点表示器54から「-1」を減算する)と共に,発射樋2に次のゲームのための16個の遊技球をセツトする。
これに対して精算する場合にはオール精算スイツチ32を操作する。このときCPU46は得点表示器11の1ゲームの得点「×」が「5点」以下の場合この得点「×」を総合得点表示器54にシフト加算表示させ,「6点」以上の場合「5点」を総合得点表示器54にシフト加算表示させる。その後CPU46はこの総合得点表示器54の内容に想当するコインをコイン排出口34から排出させる。」(8頁左下欄15行?右下欄19行)

第6.当審の判断
1.無効理由1について(29条2項)
本件訂正発明と甲1発明とを比較する。

(1)対比
甲1発明の「3個のリール11’,12’,13’」は本件訂正発明の「可変表示装置」に相当する。以下同様に,
「ゲームマシン10’」は「遊技機」に,
「スタートボタン21’」は「開始操作手段」に,
「停止機構」は「表示制御手段」に,
「勝の組合わせ」が「予め定められた特定の表示態様」に,
「投入口19」が「価値物体投入口」に,
「コイン」は「価値物体」に,それぞれ相当する。

さらに,甲第1号証の記載等からみて,以下のことがいえる。

a.甲1発明のゲームマシン10’は,3個のリール11’,12’,13’を有しており,これらリールの周側面には,いちご,オレンジなどのフルーツを描いたシンボルが表示されており,
スタートボタン21’が押されると,リール11’,12’,13’が回転し,リール・ユニット32’に組み込んである停止機構が,リール11’,12’,13’をバラバラの位置で停止させるようにランダムに作動し,勝の組合わせが表示されれば,遊技者の勝であり,勝の組合わせが表示されないと,遊技者の負けであって,一回のゲームが終了すると,いずれかの表示がなされ,勝の組合わせの内のいずれかに該当するときに,遊技者に賞金が与えられるものであり,
勝でない組合わせが表示されるか,勝の組合わせが表示され遊技者に賞金が与えられると,1ゲームが終了することは,遊技機分野における技術常識であるから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明の「表示状態が変化可能な可変表示装置を有し,該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機」に相当する構成を備えているといえる。

b.甲1発明のゲームマシン10’は,遊技者が勝の場合には,信号がリール・ユニット32’から賞金計算装置33’へ送られ,直ちに賞金の金額が示されるものであり,賞金額は,ゲーム回数の掛算で計算され,遊べるゲーム回数は,ディスプレイ25’に,点数で表示されるものであり,
賞金計算装置33’が送られた賞金の金額に関するデータを記憶しているといえるから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明の「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」に相当する構成を備えているといえる。

c.甲1発明のゲームマシン10’は,スタートボタン21’が押されると,スタート機構28’から信号がライン30’を介してクレジット記憶部C’へ送られ,ディスプレイ22’に表示される遊技回数を一つずつ減らし,同時に信号がライン31’を介してリール・ユニット32’へ達し,リール11’,12’,13’が回転するから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明の「前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段」に相当する構成を備えているといえる。

d.甲1発明のゲームマシン10’は,リール・ユニット32’に組み込んである停止機構が,リール11’,12’,13’をバラバラの位置で停止させるようにランダムに作動し,勝の組合わせか,勝の組合わせでない表示をするものであるから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明と「前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出」「手段」に相当する構成を備えている点で共通しているといえる。

e.甲1発明のゲームマシン10’は,ゲームマシンに投入されたコインの金高に応じた遊技可能回数がディスプレイ22’に表示され,スタートボタン21’が押されると,スタート機構28’から信号がライン30’を介してクレジット記憶部C’へ送られ,ディスプレイ22’に表示される遊技回数を一つずつ減らし,リール11’,12’,13’が回転し,リール・ユニット32’に組み込んである停止機構が,リール11’,12’,13’をバラバラの位置で停止させるようにランダムに作動し,勝の組合わせか,勝の組合わせでない表示をするものであり,
スタートボタン21’が押されると,スタート機構28’から信号が送られることから,スタートボタン21’が押されたことを検出する検出手段を実質的に備えているといえるから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明と「前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ」,「表示結果を導出表示させる表示制御手段」に相当する構成を備えている点で共通しているといえる。

f.甲1発明のゲームマシン10’は,遊技者が勝の場合には,信号がリール・ユニット32’から賞金計算装置33’へ送られ,直ちに賞金の金額が示されるものであり,賞金額は,ゲーム回数の掛算で計算され,遊べるゲーム回数は,ディスプレイ25’に,点数で表示され,
ディスプレイ22’に残りゲームがゼロと表示されると,賞金のすべてが支払われるように,賞金計算装置33’から信号が勝のポイントの数を支払うフランスフランに換算するため換算装置36に送られ,換算装置36から信号が支払い装置39’へ送られるから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明の「前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段」に相当する構成を備えているといえる。

g.甲1発明のコイン許容装置18’は,投入口19に投入されたコインがゲームマシンに受け入れられる適正な金高の,1ポンド,50,20,10ペンスコインであるか否かを検査する手段を備え,投入されたコインがテストに不合格であると,コインは,装置18’によりリジェクトされ,支払いシュウト23’へ送られ,コインがテストに合格すれば,コインは,貯溜部26’へ送られ,コインが受け入れられると,投入されたコインの金高に応じた遊技可能回数がディスプレイ22’に表示されるものであり,
コイン許容装置18’がコイン検出手段を有していないと,投入されたコインの金高に応じた遊技可能回数がディスプレイ22’に表示できないから,コイン検出手段を有することは自明であるので,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明と「遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段」に相当する構成を備えている点で共通しているといえる。

h.甲1発明のゲームマシン10’は,コイン許容装置18’は,投入口19に投入されたコインがゲームマシンに受け入れられる適正な金高の,1ポンド,50,20,10ペンスコインであるか否かを検査する手段を備え,
コインがテストに合格すれば,このようなコインは,貯溜部26’へ送られ,コインが受け入れられると,コイン許容装置18’からライン46を経て信号が換算装置45へ送られ,換算終了後,信号ライン27’を経てクレジット記憶部C’へ送られ,投入されたコインの金高に応じた遊技可能回数がディスプレイ22’に表示され,スタートボタン21’が押されると,スタート機構28’から信号がライン30’を介してクレジット記憶部C’へ送られ,ディスプレイ22’に表示される遊技回数を一つずつ減らし,リール11’,12’,13’が回転し,
遊技者が勝の場合には,信号がリール・ユニット32’から賞金計算装置33’へ送られ,直ちに賞金の金額が示されるものであり,賞金額は,ゲーム回数の掛算で計算され,遊べるゲーム回数は,ディスプレイ25’に,点数で表示されるから,
甲1発明のゲームマシン10’は,本件訂正発明と「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく」した構成を備えている点で共通しているといえる。

以上のことから,両者は,
<一致点>
「表示状態が変化可能な可変表示装置を有し,該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって,
遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段と,
前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と,
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出手段と,
前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,表示結果を導出表示させる表示制御手段と,
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に,該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み,
遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段を含み,
前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることがない,遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

<相違点あ>
本件訂正発明は,「1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段」を含んでいるのに対して,
甲1発明は,1ゲームのゲーム結果に賭ける金額が10ペンスに実質的に固定されており,甲1発明のコイン許容装置18’は,本件訂正発明の「賭数入力手段」に相当するとまではいえないので,
甲1発明は,このような構成を含んでいない点。

<相違点い>
「可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出」「手段」に関して,
本件訂正発明では,遊技者が操作する「結果導出操作手段」であるのに対して,
甲1発明では,停止機構は,遊技者が操作する操作手段ではない点。

<相違点う>
「表示制御手段」に関して,
本件訂正発明は,「賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる」のに対して,
甲1発明は,上記<相違点あ>の本件訂正発明の「賭数入力手段」に相当する構成を含んでいないため,本件訂正発明の「前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたこと」に相当する構成を有しておらず,
勝の組合わせか,勝の組合わせでない表示がされるのが,「該可変開始から所定期間が経過したことを条件として前記結果導出操作手段が操作された場合」でない点。

<相違点え>
本件訂正発明は,「賭数入力手段は,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段」を含むのに対して,
甲1発明のコイン許容装置18’は,本件訂正発明の「遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段」に相当するが,コイン許容装置18’は,上記相違点1の本件訂正発明の「賭数入力手段」に相当する構成でないので,
甲1発明は,本件訂正発明のような「価値物体検出手段」と「入力操作検出手段」を含む「賭数入力手段」を有していない点。

<相違点お>
本件訂正発明は,「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であ」るのに対して,
甲1発明は,このような構成でない点。

<相違点か>
本件訂正発明は,「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても,賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立」するのに対して,
甲1発明は,このような構成でない点。

<相違点き>
本件訂正発明は,「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了する」のに対して,
甲1発明は,本件訂正発明の「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることがない」に相当する構成を有しているに過ぎない点。

(2)判断
<相違点あ>について
遊技機において,「1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段」を設けることは,甲第4号証(2頁左上欄8?14行,2頁左上欄18行?右上欄6行,2頁右下欄1?2行,3頁左下欄1?4行等参照。),甲第5号証(2頁右上欄19?20行,2頁左下欄9?13行,3頁左上欄13?15行等参照。),甲第6号証(3頁左上欄9?11行,3頁右上欄5?17行等参照。),甲第7号証(2頁左上欄14行?右上欄4行,2頁左下欄14?15行等参照。)にも記載されているように周知(以下,「周知技術1」という。)であるから,
甲1発明に上記周知技術1を適用して,上記<相違点あ>に係る本件訂正発明の構成を採用することは,当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

<相違点い>について
遊技機において,遊技者が操作する「可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と」を設けることは,甲第5号証(3頁右上欄19行?左下欄2行等参照。),甲第6号証(3頁左下欄10行?右下欄1行等参照。),甲第7号証(2頁左上欄12?18行等参照。),甲第8号証(3頁左上欄8?13行等参照。)にも記載されているように周知(以下,「周知技術2」という。)であるから,
甲1発明に上記周知技術2を適用して,上記<相違点い>に係る本件訂正発明の構成を採用することは,当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

<相違点う>について
遊技機において,「1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段」を設けることは,前記「<相違点あ>について」でも既に検討しているように周知技術1として周知であり,
しかも,遊技機において,「賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が」「されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ,該可変開始から所定期間が経過したことを条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段」を含む構成とすることは,甲第6号証(3頁左下欄4?10行等参照。),甲第7号証(1頁右下欄7?18行,2頁左下欄16行?3頁左上欄3行等参照。),にも記載されているように周知(以下,「周知技術3」という。)である。
してみると,甲1発明に上記周知技術1,3を適用して,上記<相違点う>に係る本件訂正発明の構成を採用することは,当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

<相違点え>について
遊技機において,「遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段」からなる「賭数入力手段」を設けることは,前記「<相違点あ>について」で周知技術1が記載されているとして例示した,甲第4号証(2頁左上欄8?14行,2頁左上欄18行?右上欄6行,2頁右下欄1?2行,3頁左下欄1?4行等参照。),甲第5号証(2頁右上欄19?20行,2頁左下欄9?13行,3頁左上欄13?15行等参照。),甲第6号証(3頁左上欄9?11行,3頁右上欄5?17行等参照。),甲第7号証(2頁左上欄14行?右上欄4行,2頁左下欄14?15行等参照。)にも記載されているように周知(以下,「周知技術4」という。)であるから,
甲1発明に上記周知技術4を適用して,「遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段」からなる「賭数入力手段」を設けることは,当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

しかしながら,甲1発明は,前記「第5 甲各号証の記載事項」「1.甲第1号証」において,「ディスプレイ22’に残りゲームがゼロと表示されると,賞金のすべてが支払われるように,賞金計算装置33’から信号が勝のポイントの数を支払うフランスフランに換算するため換算装置36に送られ,換算装置36から信号が支払い装置39’へ送られ,貯溜部41’からフランスフランのコインが支払いシュウト23’へ供給される,ゲームマシン10’」と認定しているように,
ディスプレイ22’に表示される投入されたコインに応じた遊技可能回数がゼロと表示されると,ディスプレイ25’に表示される賞金のすべてが支払われる構成であり,
甲1発明の,ディスプレイ25’に表示される「遊べるゲーム回数」は,あくまで賞金として通貨(フラン)による金額の代わりに表示する変形例であって,賭数として入力することを予定しないものである。

甲第20号証(2頁右下欄8?16行,3頁左上欄1?10行,3頁右下欄2行?4頁左上欄5行,第5図等参照。)には,獲得した賞金を賭数として入力する賭数入力手段と,投入されたコインを賭数として入力する賭数入力手段を別々に設けた点が実質的に記載されているといえる。
しかしながら,甲第20号証の1件だけで,遊技機において,獲得した賞金を賭数として入力する賭数入力手段と,投入されたコインを賭数として入力する賭数入力手段を別々に設けることが,周知であるとはいえない。

遊技機において,獲得した賞金を賭数として入力する賭数入力手段と,投入されたコインを賭数として入力する賭数入力手段を別々に設ける技術が周知であるとして,甲1発明の賞金としての「遊べるゲーム回数」を表示するディスプレイ25’に,獲得した賞金を賭数として入力する技術を適用しようとしても,
甲1発明は,投入されたコインに応じた遊技可能回数を表示するディスプレイ22’がゼロになると,ディスプレイ25’に表示される賞金も全て支払われることによりゼロとなり,賞金を賭数として入力できないものであるから,このような不具合がある状態で,ディスプレイ25’に表示される賞金としての「遊べるゲーム回数」を賭数として入力する構成を当業者が採用することはない。
したがって,甲1発明に,獲得した賞金を賭数として入力する技術を適用して,「入力操作検出手段」による「賭数入力手段」を設けることはできない。

また,甲第2号証(2頁左下欄10行?右下欄8行,2頁右下欄17行?3頁左上欄4行等参照。),甲第12号証(2頁右下欄18行?3頁左上欄3行,3頁左上欄10?17行等参照。),甲第16号証(2頁左上欄14行?右上欄2行,2頁右上欄18行?左下欄5行等参照。),甲第18号証(2頁左下欄10?11行,3頁左上欄18行?右上欄5行,3頁右上欄18行?左下欄4行等参照。),甲第21号証(3頁右上欄7?12行,3頁右上欄16行?左下欄4行,3頁左下欄12?19行,3頁右下欄2?11行等参照。),甲第22号証(2頁右上欄19行?左下欄8行,2頁左下欄13?17行,4頁右上欄5?9行,4頁右上欄12行?左下欄4行,8頁左下欄15行?右下欄19行。)には,獲得した賞金を含むメダルのデータを賭数として入力できる点が記載されているが,
甲第2,12,16,18,21?22号証に記載された,獲得した賞金を含むメダルのデータには,投入されたコインのデータも含まれており,獲得した賞金と投入されたコインの両方を含むメダルのデータを賭数として入力する技術を甲1発明に適用すると,
本件訂正発明の「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され,」という構成と相違するものとなり,本件訂正発明の構成から離れてしまうから,
甲第1号証に,甲第2,12,16,18,21?22号証に記載された,獲得した賞金と投入されたコインの両方を含むメダルのデータを賭数として入力する技術を適用できない。

さらに,請求人が提出した甲第2?22号証には,甲1発明に適用して,甲1発明が「入力操作検出手段」による「賭数入力手段」を設ける構成となる技術は開示されておらず,例え技術常識を勘案しても,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

したがって,<相違点え>については,甲1発明に周知技術4を適用して「遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段」からなる「賭数入力手段」を設けることは容易であるといえるが,
甲1発明に「入力操作検出手段」による「賭数入力手段」を設けることは容易であるとはいえず,
<相違点え>全体として容易であるとはいえない。

なお,請求人は,弁駁書68頁4?16行において,甲第1号証6頁右下欄8?14行の記載から,
「最終的に遊技者がどの通貨で賞金を受け取るか決定するということが分かり,その決定のタイミングは遊技者に任されていると解釈できる。遊技者がまだ賞金を受け取らないと決定したときには,クレジット記億部C’に格納されたクレジットは「0」のままである。このとき,賞金計算装置33’からクレジットを減算して再度ゲームを開始すると,当該減算されたクレジットはクレジット記憶部C’に移行されない。そして,賞金計算装置33’からクレジットを減算して実行されたゲームが終了した段階で,遊技者が換算装置136に指示を入力して賞金を受け取ることが可能である。
よって,甲第1号証に記載の発明に他の甲号証の記載の「入力装置検出手段」の構成を導入したとしても,被請求人が主張するような「賞金の払出が不可能な遊技機」になることはない。」と主張している。
しかしながら,甲第1号証の6頁右下欄8?14行の記載は,5頁右下欄24行?6頁右下欄7行,第5?6図の記載に基づいた,英国通貨のコインのコイン受け入れ装置とフランスフランのコインのコイン受け入れ装置を設けたこの発明の他の実施例の変形例の説明であり,
甲第1号証の6頁右下欄8?14行には,英国通貨のコイン,フランスフランのコインだけでなく,二か国以上の通貨に適合させることもでき,遊技者が選択する投入したコインと異なる通貨による支払いを受けることができる旨が記載されているにすぎず,
甲第1号証には,請求人が主張するような,遊技者がどの通貨で賞金を受け取るか決定するタイミングが遊技者に任されている点は記載されておらず,遊技者がまだ賞金を受け取らないと決定できる点も記載されていないから,
甲第1号証には,遊技者がまだ賞金を受け取らないと決定したときには,投入されたコインに応じた遊技可能回数を記憶したクレジット記憶部Ca(第3?4図の実施例の「クレジット記憶部C’」に相当)に格納されたクレジットが「0」になっても,賞金計算装置133(第3?4図の実施例の「賞金計算装置33’」に相当)に記憶された賞金は,賞金として受け取る通貨がまだ決まってないので両替できないから,賞金は払い出されず,賞金計算装置133に記憶されたままである点も記載されていない。
既に検討しているように,甲第1号証に記載されているのは,ディスプレイ25’に表示される賞金としての「遊べるゲーム回数」は賭数として入力できない構成であり,ディスプレイ22に表示される投入されたコインに応じた遊技可能回数である残りゲームがゼロと表示されると,ディスプレイ25’に表示される賞金のすべてが支払われる構成である。

したがって,請求人の「甲第1号証に記載の発明に他の甲号証の記載の『入力装置検出手段』の構成を導入したとしても,被請求人が主張するような『賞金の払出が不可能な遊技機』になることはない。」という主張は,甲第1号証に記載されていない事項に基づいた主張であるから,採用することができない。

<相違点お>について
遊技機において,「遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段」からなる「賭数入力手段」を設けることは,前記「<相違点え>について」で既に検討しているように,周知技術4として周知である。

しかしながら,前記「第5 甲各号証の記載事項」「1.甲第1号証」において,認定しているように,甲1発明は,ディスプレイ22’に表示される投入されたコインに応じた遊技可能回数がゼロと表示されると,ディスプレイ25’に表示される賞金のすべてが支払われる構成である。
甲1発明において,ディスプレイ22’をゼロからゼロ以外の表示にするときは,賞金がすべて払い出されてしまい,賞金としての「遊べるゲーム回数」を表示するディスプレイ25’の表示がゼロになると共に,「価値記憶手段」に相当する「賞金計算装置33’」に価値が記憶されていない状態になるから,
甲1発明に上記周知技術4を適用しても,価値物体検出手段による賭数入力が0のとき,賞金がすべて払い出されてしまうので,「前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力」「可能であ」る構成にはならない。

よって,甲1発明に上記周知技術4を適用しても,「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力」「可能であ」るとはいえない。

それに加えて,前記記「<相違点え>について」で既に検討しているように,甲1発明に「入力操作検出手段」による「賭数入力手段」を設けることは容易であるとはいえないから,
甲1発明を,「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,」「前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力」「可能であ」るようにすることは容易であるとはいえない。

また,請求人が提出した甲第2?22号証には,甲1発明に適用することにより,「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力」「可能であ」るといえる技術,「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,」「前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力」「可能であ」るといえる技術,は開示されておらず,例え技術常識を勘案しても,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

したがって,<相違点お>については,甲1発明を「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力」「可能であ」るとすることは容易であるといえず,「価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,」「前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力」「可能であ」るとすることも容易であるといえないから,
<相違点お>全体として容易であるとはいえない。

なお,請求人の弁駁書68頁4?16行における主張については,前記「<相違点え>について」で既に検討している。

<相違点か>について
遊技機において,「(遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された)価値物体を検出する価値物体検出手段」からなる「賭数入力手段」を設けることは,前記「<相違点え>について」で既に検討しているように,周知技術4として周知であり,
「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合」,「賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が」「されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立」することは,一例として甲第6号証(3頁左上欄9?11行,3頁右上欄5?17行等参照。)にも記載されているように周知(以下,「周知技術5」という。)であるから,
甲1発明に上記周知技術4?5を適用して,「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合」,「賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が1ゲームの賭数とされてゲーム開始条件が成立」するようにすることは,当業者が容易に成し得る程度のことにすぎないといえる。

しかしながら,前記「<相違点え>について」において既に検討しているように,甲1発明に「入力操作検出手段」による「賭数入力手段」を設けることはできないから,
甲1発明を,「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,」「賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立」する構成とすることはできない。

また,請求人が提出した甲第2?22号証には,甲1発明に適用することにより,「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,」「賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立」する構成とする技術は開示されておらず,例え技術常識を勘案しても,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

したがって,<相違点か>については,甲1発明に周知技術4?5を適用して,「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合」,「賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が1ゲームの賭数とされてゲーム開始条件が成立」するようにすることは容易であるといえるが,
甲1発明を「入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合,」「賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立」する構成とすることは容易であるとはいえないから,
<相違点か>全体として容易であるとはいえない。

<相違点き>について
甲1発明には,本件訂正発明の「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることがない」に相当する構成が記載されており,
遊技機において,「価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が」「直接賭数として入力され,入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了する」構成とすることは,甲第1号証(2頁左下欄14?18行),甲第6号証(3頁左上欄9?11行,3頁右上欄5?17行等参照。),甲第7号証(2頁左上欄14行?右上欄4行,2頁左下欄14?20行等参照。)にも記載されているように周知(以下,「周知技術6」という。)であるから,
甲1発明に上記周知技術6を適用して,上記<相違点き>に係る本件訂正発明の構成と得ることは,当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

(3)小括り
本件訂正発明は,上記<相違点え>?<相違点か>について容易になし得たものということができず,請求人の提出した甲第1?22号証及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって,本件訂正発明は,特許法第123条第1項第2号に該当せず,その特許は無効とされるべきものではない。

2.無効理由2について(記載不備)
(1)記載不備1について
請求人は,審判請求書49頁14?24行の内容を訂正した弁駁書49頁24行?50頁9行,及び,弁駁書74頁13行?76頁20行において,本件訂正発明に記載された「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」という記載の意味が不明確であり,
前記「第3」「2.本件訂正に関する請求人の主張」「(1)訂正事項3について」の主張とも重複するが,広辞苑第六版によれば,「所有」とは「自分のものとして持っていること」を意味するとされているから,「価値記憶手段」は,「遊技者が自分のものとして持っている有価価値を記憶することができる」もの(記憶手段)を意味するものであり,
「価値記憶手段」は,本件特許明細書におけるRAM62のフラグ1?3,レジスタ1,及びレジスタ2の全てが該当し,含まれるものと解釈するのが相当であるが,
「価値記憶手段」が「フラグ1」の場合,本件訂正発明の「前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,」という動作は,本件特許明細書等の記載からは不可能であるから,
本件訂正発明は,特許法36条4項に規定する要件を満たしていない旨主張する。

しかしながら,上記「第3」「3.本件訂正の適否についての判断」「(3)訂正事項3について」で既に検討しているように,「表示結果に応じた有価価値を」「加算記憶可能」な「価値記憶手段」は,トータル得点を記憶するためのレジスタである「レジスタ2」のみであるから,「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」も「レジスタ2」のみが相当することは明らかであり,「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」の記載に不明確な点はない。
また,「価値記憶手段」が「レジスタ2」の場合,本件訂正発明の「前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で,前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること,または,前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち,いずれの方法でも入力可能であり,」という動作は,本件特許明細書等の記載から可能である。
したがって,請求人の「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」という記載の意味が不明確であり,本件訂正発明は本件特許明細書等の記載から不可能である旨の主張は,理由がない。

(2)記載不備2について
請求人は,審判請求書49頁25行?50頁13行の内容を訂正した弁駁書50頁10?24行において,本件訂正発明に「賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段」,「前記賭数入力手段は,遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と,前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み,」と記載されているが,
価値物体を検出して検出値から賭数を決定する動作は,遊技者が賭数を入力可能といえるものではないから,「賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段」は,本件特許明細書等に記載されていない旨主張する。

しかしながら,本件特許明細書の段落【0037】には「前記コインセレクタ34およびゲーム開始スイッチ27’により,前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段が構成されている。」と,段落【0015】には「図2において,正面側に設けられた第1のコイン投入口12から投入されたコインは価値物体検出手段を構成する第1のコイン検出手段の一例のコインセレクタ34で判別され,使用可能な第1のコインであるか否かが判別される。」と,段落【0020】には「入力操作検出手段の一例のゲーム開始スイッチ27’」と,段落【0025】には「CPU58が第1のコイン投入有の信号を受取ると,CPU58はRAM62のフラグ1をオンし(ステップS2),ライン表示ランプ55のランプ1(図1に示す表示窓20a の左側に設けられた括弧書きで示された表示「1」内側に設けられたランプ)をオンする(ステップS3)。これにより,遊技者は,表示「1」に対応する横線が有効化され,その表示組合わせに基づいて得点が獲得できることを知る。」と,段落【0026】には「次いで,CPU58はさらに第1のコインが投入有か否かの判別をする(ステップS4)。さらに第1のコインが投入された場合は,当該第1のコインが2枚目かを判別し,2枚目であればRAM62のフラグ1に代えてフラグ2をオンし(ステップS6),ライン表示ランプ55の表示「1」に対応するランプ1に加えて表示「2」に対応するランプ2も点灯する(ステップS7)。また,第1のコインが続けて3枚投入された場合には(ステップS8),RAM62のフラグ3をオンし(ステップS9),ライン表示ランプ55の表示「1」および「2」に対応するランプ1および2に加えて,さらに表示「3」に対応するランプ3をオンする(ステップS10)。」と記載されており,
これらの記載から,本件特許明細書等に,遊技者が投入したコインをコインセレクタ34で検出して適正なコインであれば賭数として入力される点が記載されていることは明らかである。

したがって,請求人の,価値物体を検出して検出値から賭数を決定する動作は,遊技者が賭数を入力可能といえるものではないから,「賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段」は,本件特許明細書等に記載されていないという主張は,理由がない。

(3)記載不備3について
請求人は,審判請求書50頁14?23行の内容を訂正した弁駁書50頁25行?51頁7行において,本件特許発明に「前記賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に」と記載されており,
一般に,「Aならば(→)B」という命題が与えられた場合に,BがAであるための必要条件となり,このことを当てはめると,「ゲーム開始条件成立」→「賭数が入力されたこと」となり,賭数入力以外にもゲーム開始条件が成立する場合があることになるが,
本件特許明細書には,賭数入力の場合以外にゲーム開始条件が成立する場合についての記載がないため,
「必要条件として」の意味が不明確となり,発明の詳細な説明に記載されていない場合を含むものとなる旨主張している。

しかしながら,被請求人は,平成24年11月30日付け訂正請求において,「前記賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に」という記載を,「前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に」と訂正することにより,「賭数が入力されたこと」と「開始操作手段の操作が検出されたこと」(回転スタートボタン16の操作に相当)とによりゲーム開始条件が成立することを明確にしたから,請求人が主張する理由は存在しなくなった。

したがって,請求人の,「必要条件として」の意味が不明確となり,発明の詳細な説明に記載されていない場合を含むものとなる旨主張は,理由がない。

(4)記載不備4について
請求人は,審判請求書50頁24行?51頁7行の内容を訂正した弁駁書51頁8?18行において,本件訂正発明に「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され」と記載されているが,
前記「(1)記載不備1について」でも述べたように,本件訂正発明の「遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段」が,投入コイン枚数を記憶するRAM62のフラグ1?3,ゲーム毎の得点を記憶するためのレジスタ1,トータルの得点を記憶するためのレジスタ2,或いは,RAM62そのもの,の何れを意味するのか不明であり,
投入されたコインの枚数情報は必ずフラグ1?3に価値として格納されるから,価値物体が価値物体検出手段により検出された時,価値記憶手段に相当しうる「フラグ1?3」に加算されることなく直接賭数として入力される点は本件特許明細書等には記載されていない旨主張している。

しかしながら,前記「第3」「3.本件訂正の適否についての判断」「(3)訂正事項3について」,及び,前記「(1)記載不備1について」で既に検討しているように,「価値記憶手段」に相当するのは「レジスタ2」のみであり,
「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段」に相当する「レジスタ2」「に加算されることなく直接賭数として入力され」る点も本件特許明細書等に記載されている。

したがって,請求人の「前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され」とした点が意味不明であり,本件特許明細書等に記載されたものではない旨の主張は,理由がない。

(5)小括り
以上のことから,本件訂正発明を含む本件訂正明細書には,不明確な記載はなく,本件訂正発明に本件訂正明細書に記載されていない記載はないから,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしており,特許法第123条第1項第4号に該当せず,その特許は無効とされるべきものではない。

3.無効理由3について(分割要件違反で原出願の公開公報から容易)
請求人は,審判請求書51頁14行?53頁11行の内容を訂正した弁駁書51頁25行?53頁14行において,本件特許に係る分割出願時に,「必要条件として」という文言を初めて導入した「賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に」という記載がある段落【0037】?【0038】を追加したが,
追加した「必要条件として」の意味が不明確であり,「賭数入力の場合以外にゲーム開始条件が成立する場合」も含めようとするものであり,原出願の願書に添付した明細書及び図面の記載の範囲を超えるものとなっているから,
本件特許に係る分割出願は,原出願の出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲内でなされたものではなく,出願日の遡及は認められず,
原出願の公開公報である特開昭62-253092号公報に記載された発明から当業者が容易に想到できた旨主張している。

しかしながら,前記「第6.当審の判断」「2.無効理由2について(記載不備)」「(3)記載不備3について」において既に検討しているように,被請求人は,平成24年11月30日付け訂正請求において,「前記賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に」という記載を「前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に」と訂正することにより,「必要条件として」の記載が無くなったから,請求人が主張する理由は存在しなくなった。

したがって,請求人の,「必要条件として」の意味が不明確となり,「賭数入力の場合以外にゲーム開始条件が成立する場合」も含めようとするものであり,原出願の願書に添付した明細書及び図面の記載の範囲を超えるものとなっているから,本件特許に係る分割出願は,原出願の出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲内でなされたものではなく,出願日の遡及は認められず,
原出願の公開公報である特開昭62-253092号公報に記載された発明から当業者が容易に想到できた旨の主張は理由がない。

以上のことから,本件訂正発明に係る分割出願の出願日の遡及は認められ,本件訂正発明は,原出願の公報である特開昭62-253092号公報に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから,特許法第123条第1項第2号に該当せず,その特許は無効とされるべきものではない。

第7.むすび
以上のとおり,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件訂正発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用について,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって、
遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段と、
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と、
前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と、
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と、
前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ、該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に、該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み、
前記賭数入力手段は、遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と、前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み、
前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること、または、前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち、いずれの方法でも入力可能であり、
前記入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合、および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても、賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し、
前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され、入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする、遊技機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スロットマシンやリールの代わりに回転円板を用いるロータリゲーム機等で代表される遊技機に関し、詳しくは、表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示されたのちに1ゲームが終了する遊技機に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、コイン等の遊技者所有の価値物体を遊技者が遊技機に投入し、その投入個数等によって1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を予め入力し、賭数が入力設定された状態でスタート操作等が行なわれて1ゲームを開始する開始条件が成立した場合に、可変表示装置が制御されて表示結果が導出表示され、その表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に、予め入力された賭数に応じた有価価値が遊技者に付与されるように構成されたものがあった。
【0003】
また、この従来の遊技機においては、前記可変表示装置が可変開始された後、その可変表示装置を停止操作するための停止ボタン等からなる結果導出操作手段が設けられており、この結果導出操作手段を遊技者が操作することにより前記可変表示装置の表示結果が導出表示されるように構成されていた。
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この種の従来の遊技機においては、1ゲームが行なわれる毎に逐一遊技者が価値物体を投入して賭数を入力しなければならず、賭数の入力方法として価値物体の投入しか存在しなかったために、遊技者の利便性に欠けるという欠点があった。
また、この従来の遊技機においては、前述した結果導出操作手段が操作されたことにより可変表示装置の表示結果が導出表示されるのであるが、たとえば、可変表示装置の可変開始とほぼ同時にこの結果導出操作手段を操作して即座に可変表示装置の表示結果を導出表示させた場合には、極端な場合には、可変開始する前の可変表示装置の表示結果のすぐ次に表示される表示結果が次回の表示結果として導出表示される等のように、既に表示されている表示結果の近辺の表示を表示結果として導出表示されることとなり、熟練の遊技者が特定の表示結果を予測してそれが導出表示されるように誘導しやすくなるという不都合が生ずるのである。
【0004】
本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、賭数の入力に関する遊技者の利便性を向上させるとともに、結果導出操作手段の操作状態によっては可変表示装置により特定の表示結果が導出表示されるように誘導されやすくなる不都合を極力防止し得る遊技機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置が表示制御されて表示結果が導出表示された後に1ゲームが終了する遊技機であって、
遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段と、
前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段と、
前記可変表示装置を可変開始させるための開始操作手段と、
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段と、
前記賭数入力手段により賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ、該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に、該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段とを含み、
前記賭数入力手段は、遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と、前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み、
前記価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること、または、前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち、いずれの方法でも入力可能であり、
前記入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合、および前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても、賭数が入力された状態で前記開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が前記1ゲームの賭数とされて前記ゲーム開始条件が成立し、
前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され、入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了することを特徴とする。
【0006】
【作用】
本発明によれば、遊技者所有の有価価値が価値記憶手段に記憶可能であり、遊技者が賭数入力手段により1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を入力することができ、賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されたことによるゲーム開始条件が成立した場合に可変表示装置が制御され、その可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として結果導出操作手段が操作された場合にその可変表示装置の表示結果が導出表示される。そして、その可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に、該表示結果に応じた有価価値が前記価値記憶手段に加算記憶可能となる。また、賭数入力手段は、価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で、遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力することばかりでなく、前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することができる。しかも、入力操作検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合、および価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合のいずれであっても、賭数が入力された状態で開始操作手段の操作が検出されたことにより当該入力された全賭数が1ゲームの賭数とされてゲーム開始条件が成立し、前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され、入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了する。
【0007】
【実施例】
以下には、図面を参照して、この発明の一実施例について詳細に説明をする。なお、以下の説明では、コイン投入式遊技機の一例として、スロットマシンを例にとって説明をする。しかしながら、この発明は、スロットマシンに限らず、コインを投入し、そのコインの投入に基づいて所定の遊技が可能であり、かつ、精算時には獲得した得点に応じたコインが払出されるようなコイン投入式遊技機全般に適用できることを予め指摘しておく。
【0008】
図1は、コイン投入式遊技機の一例のスロットマシン10の正面図である。図において、12は価値物体投入口の一例の第1のコイン投入口であり、この投入口12から遊技者所有の価値物体の一例の第1のコインが投入され、そのコインが遊技に使用可能な第1のコインである旨判別されると、スロットマシン10は遊技可能な能動状態になる。投入されたコインが不適切なコインであれば、コイン返却口14から返却される。
【0009】
スロットマシン10が能動化された後、回転スタートボタン16が押されることにより、3つの回転ドラム18a,18b,18cが回転を開始して可変表示装置18が可変開始する。回転ドラム18a,18b,18cは、それぞれ、その回転軸が紙面に平行になるように配置された所定の厚みを有する円形ドラムで、その周面には、所定の間隔で、複数の文字または図柄が描かれている。回転ドラム18a,18b,18cの周面の一部は、図示のように、表示窓20a,20b,20cを通して、スロットマシン10の正面側から視認可能である。
【0010】
3つの回転ドラム18a,18b,18cが回転後、遊技者により所望のタイミングで停止ボタン22a,22b,22cが押されることにより、対応する回転ドラム18a,18b,18cが、それぞれ、停止する。各回転ドラム18a,18b,18cが停止したときに、表示窓20a,20b,20cを通して視認できる文字または絵柄等の組合わせが、図1に示す水平な3本の横線または斜めに描かれた2本の斜線のうちの所定の線に沿って予め定める組合わせになったとき、所定の得点が獲得できるようにされている。なお、この実施例では、水平な3本の横線のうち、左側に括弧書きで示された表示「1」に対応する横線に沿う表示の組合わせは、第1のコイン投入口12から投入されたコインが1枚の場合に有効になり、この場合は、他の横線および斜線に沿う表示組合わせは無効である。また、第1のコイン投入口12から第1のコインが2枚投入されて遊技された場合は、回転ドラム18aの左側に括弧で囲った数字のうち表示「1」および表示「2」に対応する3本の横線に沿う表示組合わせが有効になる。さらに、第1のコイン投入口12から3枚のコインが投入されて遊技がされたときは、さらに括弧で囲った数字「3」に対応する2本の斜線に沿う表示組合わせが有効化され、合計5本の線に沿う表示組合せはすべて有効となる。このように、この実施例では、第1のコイン投入口12から投入する第1のコインの枚数に応じて、得点が獲得できる確率が高くなるように工夫されている。
【0011】
遊技により獲得された得点は、ゲーム毎得点表示器24およびトータル得点表示器26で表示される。ここに、ゲーム毎得点表示器24は、第1のコイン投入口12から第1のコインが投入され、回転スタートボタン16により回転ドラム18a,18b,18cが回転を開始し、停止ボタン22a,22b,22cによって回転ドラム18a,18b,18cがそれぞれ停止され、得点が算出されるという1回のゲーム(1ゲーム)によって獲得された得点を表示するための表示器である。他方、トータル得点表示器26は、そのような1回のゲームにより獲得された得点を累積的に加算したトータル得点を表示するための表示器である。
【0012】
また、トータル得点表示器26に得点がある場合に、第1のコインの投入に代えてゲームができるゲーム開始ボタン27が設けられている。
【0013】
遊技者がゲームを終えたい場合には、精算ボタン28を押す。応じて、トータル得点表示器26で表示されている得点に相当する第2のコインが第2のコイン受皿30へ払出される。
【0014】
なお、図1において、32は第1のコイン載置皿であり、ゲームのために遊技者が多数枚の第1のコインを借り出したときに、該第1のコインを紛失等しないように一時載せておくためのものである。
【0015】
図2は、この発明の一実施例に係るスロットマシン10の背面図である。図2において、正面側に設けられた第1のコイン投入口12から投入されたコインは価値物体検出手段を構成する第1のコイン検出手段の一例のコインセレクタ34で判別され、使用可能な第1のコインであるか否かが判別される。第1のコインでない場合は、上述したように、コイン返却口14へ返却される。第1のコインである場合は、コインセレクタ34からコイン貯留タンク36へ落下される。なお、コイン貯留タンク36には満杯検出スイッチ38が設けられており、該タンク36内に第1のコインが満杯になったとき知らされるようになっている。
【0016】
図1で述べた停止ボタン22a,22b,22cにはそれぞれ対応の停止スイッチが設けられている。また、回転ドラム18a,18b,18cには、それぞれ、回転駆動源となるパルスモータ42a,42b,42cが結合されている。
【0017】
さらに図2において、スロットマシン10には第2のコイン払出しホッパ装置44が備えられている。該ホッパ装置44は、第2のコインを貯留するためのホッパ46と、コイン払出し駆動用モータ48と、払出した第2のコインの数を計数するための計数検出スイッチ50と、ホッパ46のコインがなくなったことを検出する欠乏検出スイッチ52とを含んでいる。
【0018】
さらに、図示しないが、上記各電気的に駆動される装置および検出スイッチ等は接続配線でつながれて制御回路と連結されている。
【0019】
図3は、スロットマシン10の電気的な制御回路の構成の一例を示すブロック図である。図3では、いわゆるマイクロコンピュータによって制御する場合のブロック図が示されているが、制御回路はディスクリートな論理回路の結合によって構成することもできる。
【0020】
図3を参照して、第1のコイン検出器34、3つのドラム回転用パルスモータ42a,42b,42c、ドラム組合わせ検出器54、停止スイッチ40a,40b,40c、ゲーム毎得点表示器24、トータル得点表示器26、入力操作検出手段の一例のゲーム開始スイッチ27’、精算スイッチ28’、第2のコイン欠乏検出スイッチ52、第2のコイン計数検出スイッチ50、第1のコイン満タン検出スイッチ38、払出し用駆動モータ48およびライン表示ランプ55は、いずれも、入出力インターフェイス56を介してCPU58と接続されている。ライン表示ランプ55は、図1で説明した回転ドラム18aの左側に括弧で囲った数字の内側に設けられ、該数字を点燈または消燈状態にするものである。CPU58は演算および制御の中枢であって、その動作プログラムが記憶されたROM60および必要なデータの書込および読出が可能なRAM62が接続されている。RAM62には、少なくとも、フラグ1、フラグ2およびフラグ3ならびにレジスタ1およびレジスタ2が含まれている。ここに、フラグ1?3は1ゲームにつき何枚のコインが投入されたかを記憶するものである。また、レジスタ1はゲーム毎の得点を記憶するためのレジスタであり、レジスタ2はトータル得点を記憶するためのレジスタである。当該レジスタ1に記憶された得点はゲーム毎得点表示器24で表示され、レジスタ2に記憶された得点はトータル得点表示器26で表示されるようになっている。
【0021】
なお、図示されていないが、CPU58には、入出力インターフェイス56を介して報知器等を接続し、ゲーム開始のために第1のコイン以外のコインが投入されたことに基づいて当該報知器を動作させるようにしてもよい。また、第2のコイン欠乏検出スイッチ52、第1のコイン満タン検出スイッチ38等からの信号があったとき、当該報知器等を動作させ、遊技場の係員に知らせるようにしてもよい。さらにまた、スロットマシン10における何かの異常をCPU58が判別した場合に、図示しない信号伝送用カプラを介して遊技場の集中管理装置等へ通報できるようにしてもよい。
【0022】
図4ないし図9は、図3のROM60に記憶されている内容、すなわちCPU58の動作プログラムの内容を示すフロー図である。次に、図4ないし図9の流れに従って、この実施例の動作について説明をする。
【0023】
第1のコイン投入口12(図1参照)からコインが投入されると、コインセレクタ34(図2参照)によってコインの種別が検出され、ゲームのために使用が許可された第1のコインであれば入出力インターフェイス56を介してCPU58へ検出信号が与えられる(ステップS1)。投入されたコインが第1のコインでない場合には、投入されたコインはコイン返却口14(図1参照)へ返却される。
【0024】
なお、この場合、コインセレクタ34は、単に投入されたコインの形状や大きさや重量等だけを検出するセンサとし、その情報をCPU58へ与え、CPU58が投入されたコインが第1のコインか否かを判別するようにしてもよい。そして、判別結果に応じては、使用に適さないコインあることを警報装置(図示せず)等を用いて報知するようにしてもよい。
【0025】
CPU58が第1のコイン投入有の信号を受取ると、CPU58はRAM62のフラグ1をオンし(ステップS2)、ライン表示ランプ55のランプ1(図1に示す表示窓20aの左側に設けられた括弧書きで示された表示「1」内側に設けられたランプ)をオンする(ステップS3)。これにより、遊技者は、表示「1」に対応する横線が有効化され、その表示組合わせに基づいて得点が獲得できることを知る。
【0026】
次いで、CPU58はさらに第1のコインが投入有か否かの判別をする(ステップS4)。さらに第1のコインが投入された場合は、当該第1のコインが2枚目かを判別し、2枚目であればRAM62のフラグ1に代えてフラグ2をオンし(ステップS6)、ライン表示ランプ55の表示「1」に対応するランプ1に加えて表示「2」に対応するランプ2も点灯する(ステップS7)。また、第1のコインが続けて3枚投入された場合には(ステップS8)、RAM62のフラグ3をオンし(ステップS9)、ライン表示ランプ55の表示「1」および「2」に対応するランプ1および2に加えて、さらに表示「3」に対応するランプ3をオンする(ステップS10)。遊技者が、もし4枚以上のコインを連続的に投入した場合には、4枚目以降のコインはコイン返却口14から返却する(ステップS11)。
【0027】
第1のコイン投入後、回転スタートボタン16(図1参照)が押される前に、返却ボタン(図示せず)が押された場合は、その信号に基づいて、CPU58はRAM62のフラグ1,2,3をオフし、ライン表示ランプ55のすべてのランプ1,2,3をオフして(ステップS14)、投入されたすべてのコインをコイン返却口14から返却する(ステップS15)。
【0028】
第1のコイン投入後、回転スタートボタン16がオンされ、その信号がCPU58へ与えられると、CPU58はパルスモータ42a,42b,42cを回転させ(ステップS16)、回転からたとえば1秒以上経過するのを待つ(ステップS17)。これは、パルスモータ42a,42b,42cによって回転ドラム18a,18b,18cがそれぞれ回転開始されて直後にまたは回転ドラム18a,18b,18cがほとんど回転しないまま停止ボタンにより回転ドラムの回転が停止されるのを防止するためである。
【0029】
ステップS18?S23において、CPU58は停止ボタン22a,22b,22cのいずれかがオンされてその信号を受けた場合には、対応するパルスモータ42a,42b,42cを停止させて、回転ドラム18a,18b,18cを停止させる。そして、すべてのパルスモータ42a,42b,42cが停止しまたは所定の時間、たとえば10秒経過したことによりすべてのパルスモータ42a,42b,42cを停止させ(ステップS26)、RAM62のいずれのフラグがオンしているかを判別する(ステップS27,S29,S31)。そして、オンしているフラグに基づいて、表示「1」に対応する横線(ライン1)、表示「1」および「2」に対応する横線(ライン1および2)または表示「1」「2」「3」に対応する横線および斜線(ライン1,2,3)に基づいて回転ドラム18a,18b,18cの表示組合わせを検出し、得点を算出する(ステップS28,S30,S32)。このときの回転ドラム18a,18b,18cの表示組合わせは、この実施例では、投光器と受光器とを含むドラム組合わせ検出器54の受光器からの出力に基づいてなされる。なお、ドラム組合わせの検出については、このような投光器と受光器とを含む検出器に代え、たとえばパルスモータに与えたパルス数に基づき検出してもよいし、その他の方法をとることもできる。
【0030】
算出した得点は、RAM62のレジスタ1へストアし(ステップS33)、レジスタ1にストアした得点はゲーム毎得点表示器24によって表示する(ステップS34)。これにより、遊技者は、そのゲームで獲得した得点を確認することができる。CPU58は、次にステップS35で、RAM62のフラグ1,2および3をオフし、ライン表示ランプ55の全ランプを消灯する。これにより、一応1ゲームは終了する。
【0031】
次のゲームをしようと遊技者がコイン投入口12から第1のコインを投入し、第1のコインが投入されたことをCPU58が判別すると(ステップS37)、CPU58はRAM62のレジスタ1の値をレジスタ2にストアされている値に加算し、レジスタ1をクリアする(ステップS38)。第1ゲーム終了時には、レジスタ2は「0」であるから、レジスタ2にはレジスタ1の値が記憶されることになる。つまり、第1ゲームで獲得された得点が、第2ゲームの開始に先立って、それまでのトータル得点をストアするレジスタ2にストアされる訳である。そしてレジスタ2にストアされたトータル得点は、トータル得点表示器26で表示される。また、ゲーム毎得点表示器24の表示値は「0」になり、次のゲームに備えられる(ステップS39)。その後のCPU58の制御動作は、上述したステップS2からの制御動作となる。
【0032】
第2ゲーム以降は、第1のコイン投入口12へコインを投入してゲームを開始することに代え、次に述べるように、ゲーム開始ボタン27(図1参照)を押すことによってもゲームを行なうことができる。
【0033】
すなわち、ステップS40において、CPU58がゲーム開始ボタン27が操作されてゲーム開始スイッチ27’がオンされ、その信号が入力されたことを判別すると、CPU58はレジスタ1の得点をレジスタ2の得点に加算し、レジスタ1をクリアして(ステップS41)後、レジスタ2にストアされている得点が「1」以上か否かを判別する(ステップS42)。この実施例のスロットマシン10は、得点「1」の価値が第1のコイン1枚分の価値に等しくされており、得点「1」によって第1のコイン1枚による1ゲームが可能にされている。したがって、ステップS42において、CPU58がレジスタ2にストアされている得点が「0」と判別した場合は、トータル得点がないのであるから、該トータル得点に基づくゲームはできないと判別して、最初のステップS1からの制御に戻る。
【0034】
レジスタ2にストアされたトータル得点が「1」以上であれば、CPU58はレジスタ2にストアされた得点を「-1」し(ステップS43)、フラグ1およびライン表示ランプ55のランプ1をオンする(ステップS44,S45)。さらに、第1のコインを2枚または3枚投入してゲームをするのに対応させ、ゲーム開始ボタン27が2回押されたときまたは3回押されたときには、それぞれ、レジスタ2にストアされている得点をさらに「-1」または「-2」し、フラグ1に代えてフラグ2またはフラグ3をオンし、ランプ2またはランプ2および3を追加してオンする(ステップS48?S55)。なお、ゲーム開始ボタン27が連続して4回以上押されたときには、4回目以降に押されたゲーム開始ボタンの押圧は何ら影響を及ぼさないようにされている(ステップS56)。
【0035】
ゲーム開始ボタン27がオンされて後、回転スタートボタン16が押されたことをCPU58が判別すると(ステップS47)、その後ゲーム動作を制御するために、CPU58はステップS16以降の制御動作を実行する。
【0036】
ステップS36において、CPU58が精算ボタン28(図1参照)が押されて精算スイッチ28’がONしたことを判別した場合、CPU58は図9に示すステップS70以降の制御動作を実行する。すなわち、RAM62のレジスタ2にストアされている得点にレジスタ1にストアされている得点を加算し、レジスタ1をクリアした後(ステップS70)、レジスタ2にストアされている得点は「1」以上か否かを判別する(ステップS71)。レジスタ2にストアされている得点、すなわちトータル得点が「0」であれば、それで制御は終了する。トータル得点が「1」以上であれば、CPU58は払出し駆動用モータ48(図2参照)をオンし(ステップS72)、ホッパ46から第2のコインを1枚ずつ払出し開始する。払出される第2のコインは、コイン計数検出スイッチ50(図2参照)で検出され、第2のコインが1個払出されるごとに1パルスがCPU58へ与えられる。CPU58はこの入力パルスに応じてレジスタ2の値を「-1」する(ステップS73)。また、レジスタ2の値は、刻々トータル得点表示器26に表示されるので(ステップS74)、遊技者は第2のコインが払出されるのを確認しながら、あと何枚第2のコインが払出されるのかをも確認することができる。CPU58は、レジスタ2の値が「0」になるまで払出し駆動用モータ48を動作させ、レジスタ2の値が「0」になったとき、すなわちトータル得点に対応する数だけ第2のコインが払出されたときに払出し駆動用モータ48を停止させる(ステップS75,S76)。そしてRAM62のフラグ1?3ならびにレジスタ1およびレジスタ2をすべてクリアし、制御動作を終える(ステップS77)。
【0037】
ところで、トータル得点表示器26に得点が「1」以上表示されている場合であって、遊技者がゲーム開始ボタン27を押した後に、継続してゲームを望まなくなり、精算ボタン28を押した場合には、遊技者の不利にならないように、CPU58は図8のステップS57?ステップS69の制御動作を実行する。そのステップS57?S69の制御動作は、ゲーム開始ボタン27が押されたことにより減算されたレジスタ2の得点を、減算前の得点に戻す動作である。図8に示されているステップS57?S69の動作により、遊技者は不利になることなく、それまでのゲームにより獲得したトータル得点に対応する枚数の第2のコインの払出しを受ける。前記レジスタ2により、遊技者所有の有価価値を記憶可能な価値記憶手段が構成されている。前記コインセレクタ34およびゲーム開始スイッチ27′により、前記1ゲームのゲーム結果に賭ける賭数を遊技者が入力可能な賭数入力手段が構成されている。前記停止ボタン22a,22b,22cにより、前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための結果導出操作手段が構成されている。また、賭数が入力された状態で回転スタートボタン16が操作されたことにより実行される前記S16?S26により、賭数入力手段により賭数が入力されたことを必要条件としてゲーム開始条件が成立した場合に前記可変表示装置を可変開始させ、該可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果を導出表示させる表示制御手段が構成されている。S33,S38,S41により、前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に、該表示結果に応じた有価価値を前記価値記憶手段に加算記憶可能な価値加算手段が構成されている。
【0038】
以上説明したように、前記賭数入力手段は、遊技者所有の価値物体を投入する価値物体投入口に投入された価値物体を検出する価値物体検出手段と、前記価値記憶手段に記憶されている有価価値の範囲内で前記1ゲームに使用する有価価値の入力操作が行なわれたことを検出する入力操作検出手段とを含み、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値を賭数として入力すること、または、前記入力操作検出手段により検出された有価価値の入力操作を賭数として入力することのうち、いずれの方法でも入力可能であり、前記価値物体検出手段による検出に基づいた賭数の入力の場合には、前記価値物体検出手段により検出された価値物体の有価価値が前記価値記憶手段に加算されることなく直接賭数として入力され、入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみで入力が完了する。
【0039】
上述の制御動作に加えて、CPU58は、たとえば割込処理により、レジスタ2にストアされている得点、すなわちトータル得点表示器26の得点が予め定めるゲームオーバ得点に達したか否かを判別するようにし、ゲームオーバ得点になった場合は、そこでスロットマシン10を不能動化するようにしてもよい。このように、遊技者の獲得した得点が予め定めるゲームオーバ得点になったときに当該スロットマシンによる遊技を禁止することにより、1台のスロットマシンにより払出し可能な第2のコインの最大枚数を制限でき、遊技場にとって売上げ調整のために計算がしやすいスロットマシンとすることができる。また、それにより、特定の遊技者ではなく、平均的に多くの遊技者に対して良好なサービスを施すことのできるスロットマシンとすることができる。
【0040】
図10は、遊技場における1つの島台ごとに、第1のコインを一括して回収し、島台ごとに設けられたコイン貸機64へ供給するシステムの概略図である。図2に示すように、各スロットマシン10ごとにコイン貯留タンク36を設け、投入された第1のコインを該タンク36へ貯留しておくようにしてもよいが、この場合は満杯検出スイッチ38の出力があると、人手によってコイン貯留タンク36に一杯になった第1のコインを回収する必要がある。このような手間を省くために、図10に示すように、複数のスロットマシン10が設置された島台66内にコイン搬送用ベルトコンベヤ装置68を組込み、島台66上に載置された各スロットマシン10へ投入された第1のコインは、当該ベルトコンベヤ装置68上に落下し、共通のコイン貯留タンク70へ貯留されるようにするのが好ましい。そして、コイン貯留タンク70へ貯留された第1のコインは、必要に応じてリフト装置72で上方へ送られ、コイン貸機64へ供給される。これにより、各スロットマシン10へ投入された第1のコインの回収の手間が省ける。
【0041】
図11は、上述したシステムを採用する遊技場の一例を示す斜視図であり、66は島台、64は島台ごとに設けられた第1のコイン貸出用のコイン貸機、74は景品交換所における第2のコイン計数器を示す。
【0042】
図12は、この発明の第2の実施例にかかる回動式遊技機の一例のロータリゲーム機76の正面図である。図7に示すロータリゲーム機76の特徴は、上述し第1の実施例にかかるスロットマシン10のように、回転ドラムを用いたものではなく、回転円板78a,78b,78cを用いている点である。回転円板78a,78b,78cは、上述した回転ドラム18a,18b,18c(図1参照)と異なり、その回転軸が図7の紙面に直交方向になるように組込まれており、かつ、その主表面の円周に沿って、その内側に複数の文字または記号が等間隔で描かれたものである。そして、その文字または記号等の表示は、所定の表示窓80を通して見えるようにされている。
【0043】
このような形式のロータリゲーム機76においても、ゲームのために投入する第1のコインと、ゲーム精算時に払出される第2のコインとを異なる種類のコインとすることにより、この発明の初期の目的を達成することができる。
【0044】
なお、ロータリゲーム機76のその余の構成は、図1および図2に示すスロットマシン10と同様であり、同一部分には同一番号を付し、ここでの説明は省略する。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、賭数を入力するに際し、価値記憶手段に有価価値が記憶されている状態で、遊技者所有の価値物体の投入と、価値記憶手段に記憶されている有価価値を使用しての賭数の入力操作との両方で、賭数の入力が可能であり、価値物体の投入または価値記憶手段に記憶されている有価価値を使用しての賭数の入力のうち遊技者が希望する方を選択することができ、賭数の入力に関する遊技者の利便性が向上する。しかも、価値物体の投入により賭数を入力する場合には、入力する賭数に必要なだけの価値物体の投入操作のみでその入力が完了するために、賭数の入力に必要となる遊技者の操作が楽となる。また、ゲーム開始条件の成立により可変表示装置が可変開始され、その可変開始から所定期間が経過したことを必要条件として前記結果導出操作手段が操作された場合に表示結果が導出表示されるために、可変表示装置の可変開始とほぼ同時に表示結果を導出表示させることができず、特定の表示結果が導出されるように誘導操作される不都合が極力防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の一実施例に係るスロットマシンの正面図である。
【図2】
この発明の第1の実施例に係るスロットマシンの背面図である。
【図3】
この発明の第1の実施例に係るスロットマシンの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】
図3に示す制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】
図3に示す制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】
図3に示す制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】
図3に示す制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】
図3に示す制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】
図3に示す制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】
各スロットマシンへ投入された第1のコインを、島台ごとに一括して回収し、島台端部に設けられたコイン貸機へ供給するようにしたシステムの概略図である。
【図11】
図10に示すシステムを採用した遊技場の一例を示す斜視図である。
【図12】
この発明の第2の実施例に係るロータリーゲーム機の正面図である。
【符号の説明】
10はスロットマシン、12は第1のコイン投入口、14はコイン返却口、16は回転スタートボタン、18は可変表示装置、18a,18b,18cは回転ドラム、20a,20b,20cは表示窓、22a,22b,22cは停止ボタン、24はゲーム毎得点表示器、26はトータル得点表示器、27は賭数入力手段の一部を構成するゲーム開始ボタン、28は精算ボタン、34は価値物体検出手段の一例としてのコインセレクタ、40a,40b,40cは停止スイッチ、42a,42b,42cはパルスモータ、44は第2のコイン払出ホッパー装置、48はコイン払出駆動用モータ、50は計数検出スイッチ、54はドラム組合わせ検出器、55はライン表示ランプ、58はCPU、60はROM、62はRAM、76はロータリーゲーム機、27’は入力操作検出手段の一例のゲーム開始スイッチを示す。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-05-16 
結審通知日 2013-05-20 
審決日 2013-06-05 
出願番号 特願平5-99866
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 532- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 瀬津 太朗
吉村 尚
登録日 1996-06-27 
登録番号 特許第2532332号(P2532332)
発明の名称 遊技機  
代理人 岩井 將晃  
代理人 深見 久郎  
代理人 関谷 三男  
代理人 白井 宏紀  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 深見 久郎  
代理人 岩井 將晃  
代理人 森田 俊雄  
代理人 中田 雅彦  
代理人 中田 雅彦  
代理人 松丸 秀和  
代理人 森田 俊雄  
代理人 白井 宏紀  
代理人 平木 祐輔  

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