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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1278075
審判番号 不服2010-23329  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-15 
確定日 2013-08-14 
事件の表示 特願2007-519374「コール機能を備えたデバイスに関する広告等の地域広告の生成及び/又は提供」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日国際公開、WO2006/004800、平成20年 2月21日国内公表、特表2008-505401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年6月29日(優先権主張 平成16年6月30日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成21年8月13日付けの拒絶理由通知に対して,平成22年2月25日に手続補正がなされ,平成22年3月16日に意見書が提出され,平成22年6月4日付けの拒絶査定に対して平成22年10月15日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成23年9月28日付けで当審の審尋がなされ,平成24年4月4日に回答書が提出され,平成24年5月24日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成24年11月29日に意見書の提出があったものである。


第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成22年10月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「コンピュータによって実行される方法であって,
a)ネットワーク上の少なくとも1つのコンピュータを含む広告提供システムによって,企業ディレクトリから店舗・施設に関する情報の組を入手することであって,店舗・施設に関する情報の各組は住所情報及び電話番号のうちの少なくとも1つを含み,前記企業ディレクトリから店舗・施設に関する情報の組を入手することは,(1)前記企業ディレクトリの掲載事項についての情報を含むデータフィードを受信して該データフィードを処理し,前記広告に関する情報を自動的に抽出することと,(2)前記企業ディレクトリの掲載事項を走査して走査結果を生成し,該走査結果を処理して前記広告に関する情報を自動的に抽出すること,の少なくとも一方を含むことと,
b)前記広告提供システムによって,前記入手した情報の組を記憶することと,
c)店舗・施設に関する情報の各組に関して,前記広告提供システムによって,(1)店舗・施設に関する情報の前記組の前記住所情報の郵便番号,(2)店舗・施設に関する情報の前記組の前記住所情報に含まれる町,(3)店舗・施設に関する情報の前記組の前記住所情報に含まれる州,(4)店舗・施設に関する情報の前記組の前記電話番号の市外局番,の少なくとも1つを使用して所在位置を特定することと,
d)店舗・施設に関する情報の各組に関して,前記広告提供システムによって,前記店舗・施設についての前記入手されて記憶された情報に含まれる,(1)前記特定された所在位置に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報と,(2)企業名,企業アドレス,企業所在位置,企業電話番号を含む広告クリエティブ情報とを含む広告を生成することと,
を具備する方法。」


第3 当審における拒絶の理由について
当審における平成24年5月24日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
・引用例1:特開2001-297256号公報
・引用例2:後藤真太郎 ほか3名,”MANDARAとEXCELによる市民のためのGIS講座 初版 パソコンで地図をつくろう”,古今書院,2004年4月5月,p.62
・引用例3?・引用例7(略)
(1)引用例1?7について
ア 引用例1について。
(途中略)
イ 引用例1発明について。
(途中略)
ウ 引用例2について。
(途中略)
エ 引用例2開示事項について。
(途中略)
オ?セ(略)
(2)請求項1に係る発明について。
・請求項1
・引用例1,2
・備考
(2-1)引用例1発明と請求項1に係る発明との一致点と相違点について
(途中略)
(2-2)判断
(途中略)
(2-3)結論
したがって,本願発明は,引用例1発明,及び引用例2開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。』


第4 当審の判断
1.各引用例にいて

ア 引用例1について。
当審の拒絶理由通知で引用した引用例1には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「【要約】
【課題】ネットワークを用いて,地域ごとのバナー広告や商品提示等の処理を効果的に行いうるシステムを提案すること。
【解決手段】ネットワークNETを介してターゲットクライエント装置3と接続されたサーバーコンピュータ1は,ターゲットクライエント装置3の地域情報を識別し,多数のターゲットクライエント装置3を地域別に管理し,営業者クライエント装置2が希望する特定の地域に属するターゲットクライエント装置3に対してバナー広告やアンケート集計やダイレクトメールの配信を行う。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,インターネット等のネットワークを介して商品販売や商品広告等の処理を行うように制御されるサーバーコンピュータの制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より,インターネット等のネットワークを介して商品広告や商品販売等の処理を行うシステムとしては,検索サイトに表示されるバナー広告を利用するシステムや,インターネット上の商品販売サイト等のシステムがある。これらの従来のシステムは,アクセスしてきたどのクライエント装置にもほぼ同様の情報を伝達(画像情報やファイル伝送や音声情報の伝達を含む。)するように制御されている。一部には,クライエント装置が検索サイトに対して入力した検索キーワードに応じたバナー広告を選択的に伝達するものもある。しかし,いずれにしても,クライエント装置の地域情報に応じた処理を行うものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したように,従来のシステムは,クライエント装置の地域に全く無関係にバナー広告や商品提示等の処理を行うように構成されているので,効果的なバナー広告や商品提示や店舗紹介等ができないという問題があった。特に,インターネットを利用して,特定の地域に居住する人々に対して各種のアンケートやダイレクトメール配信等を行うことを希望する場合には,効果的なシステムは存在していなかった。
【0004】そこで,本発明は,地域ごとのバナー広告や商品提示等の処理を効果的に行いうるシステムを提案することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるサーバーコンピュータの制御方法の請求項1では,ネットワークを介してクライエント装置と接続されたサーバーコンピュータの制御方法において,前記サーバーコンピュータは,クライエント装置から出力される地域情報を受信し,前記地域情報に応じて,その地域ごとに予め設定された処理が行われるように制御されるような手段が講じられている。
【0006】そして,請求項2では,地域ごとに予め設定された処理は,ターゲットクライエント装置から受信された地域情報に応じて,その地域ごとに予め設定されたバナー広告情報を前記ターゲットクライエント装置に伝達しうるように制御されるような手段が講じられている。」
(ウ)「【0014】
【発明の実施の形態】以下に,本発明にかかるサーバーコンピュータの制御方法を,その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】本発明のサーバーコンピュータの制御方法は,図1にようにインターネットに接続されたサーバーコンピュータで実施されるものである。
【0016】図1において,1はサーバーコンピュータ,2はインターネットNETを介して前記サーバーコンピュータ1に接続しうる営業者クライエント装置,3は前記インターネットNETを介して前記サーバーコンピュータ1に接続しうるターゲットクライエント装置である。サーバーコンピュータ1は,サーバー運用者によって管理・運用されるサーバーコンピュータであり,このサーバーコンピュータ1には,多数の営業者クライエント装置2と,多数のターゲットクライエント装置3が登録されている。そして,各営業者クライエント装置ごとのウェブサイトを運用するシステムや,各ターゲットクライエント装置ごとのポイント情報を加算・蓄積する機能を有している。」
(エ)「【0017】営業者クライエント装置2は,前記サーバーコンピュータ1が提供するウェブサイト上に商品販売店舗を登録したり,前記ウェブサイトを利用して各種の市場調査等を行う営業者のクライエント装置である。各営業者クライエント装置2は,その営業者の希望に応じて地域情報を前記サーバーコンピュータ1に対して伝達しうる機能を備えている。
【0018】ターゲットクライエント装置3は,前記サーバーコンピュータ1が提供するウェブサイト上の商品販売店舗を利用して商品を購入したり,前記サーバーコンピュータ1を介して伝達されるアンケートに答えたり,ダイレクトメールを受け取る機能を備えた一般利用者のコンピュータである。または,ターゲットクライエント装置としては,コンピュータに限らず最近の高機能な携帯電話機等も利用可能である。なお,これらのターゲットクライエント装置3は,当該ターゲットクライエント装置の地域情報を前記サーバーコンピュータ1に伝達しうる機能を備えている。
【0019】前記地域情報は,例えば,日本全国を都道府県別や20程度の都市別に分割して識別するための情報である。」
(オ)「【0021】前記バナー広告システムは,予め地域ごとにバナー広告の内容が設定されている。そして,インターネットを介してアクセスしてきたターゲットクライエント装置から伝達された地域情報を識別し,その地域情報に応じて,その地域ごとに予め設定されたバナー広告情報を前記ターゲットクライエント装置に伝達する。ターゲットクライエント装置では,伝達されたバナー広告情報を所定の表示方式でターゲットクライエント装置のコンピュータのディスプレイ装置に表示する。なお,バナー広告情報が表示情報でなく音声情報であればスピーカから出力し,ファイル情報であればハードディスクに保存する。このような,地域ごとのバナー広告により,特定の地域のターゲットクライエント装置に効果的な宣伝を行うことができる。」

イ 引用例1発明について。
引用例1摘記事項によれば,引用例1には,以下の発明が開示されている。
(以下「引用例1発明」という。)
「従来,検索サイトに表示されるバナー広告は,アクセスしてきたどのクライエント装置にも同様の情報を伝達するものであり,検索キーワードに応じたバナー広告を選択的に伝達するものの,クライエント装置の地域情報に応じた処理を行うものではなかったことから,これを,地域ごとのバナー広告を効果的に行うようにするためのシステムであって,
インターネットに接続されたサーバーコンピュータで実施されるものであり,
サーバーコンピュータ1,インターネットを介してサーバーコンピュータ1に接続しうる営業者クライエント装置2,インターネットを介してサーバーコンピュータ1に接続しうるターゲットクライエント装置3からなり,
サーバーコンピュータ1には,多数の営業者クライエント装置2と,多数のターゲットクライエント装置3が登録され,
各営業者クライエント装置2は,その営業者の希望に応じて地域情報をサーバーコンピュータ1に対して伝達しうる機能を備え,
ターゲットクライエント装置3は,当該ターゲットクライエント装置の地域情報をサーバーコンピュータ1に伝達しうる機能を備え,
地域情報は,日本全国を都道府県別や20程度の都市別に分割して識別するための情報であり,
インターネットを介してアクセスしてきたターゲットクライエント装置から伝達された地域情報を識別し,その地域情報に応じて,その地域ごとに予め設定されたバナー広告情報をターゲットクライエント装置に伝達することにより,
地域ごとのバナー広告により,特定の地域のターゲットクライエント装置に効果的な宣伝を行うことができるシステム。」

ウ 引用例2について。
引用例2には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「インターネットタウンページ
インターネット上での住所の取得には,NTT番号情報株式会社の「インターネットタウンページ」が便利です.タウンページというと,電話帳のイメージが強いですが,住所も含まれていますので,ここで取得した住所を利用して,アドレスマッチングを行うことができます.
(図:略)
このページの最大の特徴は,地域,業種等を絞り込んで必要な住所だけを効率的に取得できることです.そのため,コンビニエンスストアマップ,レストランマップなど,さまざまな職種別の主題図を作成することができます.ただし,著作権などの利用規定には十分配慮して下さい.」

エ 引用例2開示事項について。
引用例2摘記事項によれば,引用例2には,以下の事項が開示されている。
(以下「引用例2開示事項」という。)
「NTT番号情報株式会社の「インターネットタウンページ」から住所を含む情報を取得し,取得した住所を利用して,アドレスマッチングを行い,地域,業種等を絞り込んで必要な住所だけを効率的に取得してコンビニエンスストアマップ,レストランマップなど職種別の主題図を作成すること。」


2.対比
ア 引用例1発明と本願発明とを対比する。
(ア)引用例1発明の,(1)「サーバーコンピュータ1」,(2)インターネットを介してサーバーコンピュータ1に接続しうる「営業者クライエント装置2」,(3)インターネットを介してサーバーコンピュータ1に接続しうる「ターゲットクライエント装置3」は,後記する点で相違するものの,それぞれ,本願発明の,(A)「広告提供システム」の「ネットワーク」上の「コンピュータ」,(B)ネットワークで「コンピュータ」に接続される,「企業」である広告主110の広告サーバー210(本願の図1,図2による。),(C)ネットワークで「広告提供システム」に「問い合わせ」をするクライアントのユーザーデバイス(本願の図2による。)」に,相当する。
(ここで(カッコ)内の数字と記号とは,整理のために当審で付したものである。)

(イ)引用例1発明は,サーバーコンピュータに,多数の営業者クライエント装置が登録され,各営業者クライエント装置は,営業者の希望に応じて「地域情報」をサーバーコンピュータに対して伝達するものである。
(ウ)ここで,この「地域情報」は,「広告が配信される都道府県等の地理情報」である。
(エ)つまり,引用例1発明のサーバーコンピュータは,「営業者の情報」と「広告が配信される都道府県等の地理情報」(以下,これら両情報を示す場合には「地理情報などの情報」という。)を,営業者クライエント装置から受信して登録する。
(オ)ここで,本願発明の,「店舗・施設に関する情報」は,(広告を配信する州等を特定する)所在位置の地理情報と(広告を生成するための店舗の)その他の情報とが含まれる。
(カ)してみると,引用例1発明の「地理情報などの情報」は,後記する点で相違するものの,上記(オ)の点で,本願発明の,「店舗・施設に関する情報」に相当する。
(キ)そして,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「ネットワーク上の少なくとも1つのコンピュータを含む広告提供システム」によって,「店舗・施設に関する情報の組を入手」し,「広告提供システムによって,入手した情報の組を記憶」する点で共通する。

(ク)引用例1発明は,ターゲットクライエント装置が,地域情報をサーバーコンピュータに伝達しうる機能を備え,この地域情報は,都道府県等の地理情報であり,サーバーコンピュータは,ターゲットクライエント装置から伝達された地理情報を識別し,その地理情報の地域に,その地域ごとに予め設定されたバナー広告情報を,ターゲットクライエント装置に伝達するものである。
(ケ)ここで,サーバーコンピュータは,都道府県等の地域ごとに予め設定された営業者の広告の情報を有しているから,サーバーコンピュータは,予め営業者ごとに都道府県等の地理情報を特定しており,この地理情報は,「地理情報などの情報」に関する情報,つまり「店舗・施設に関する情報」に関する情報である。
(コ)してみると,引用例1発明と本願発明とは,「店舗・施設に関する情報の各組」に関して,「広告提供システム」によって,「地理情報」を「特定」する点で共通し,この情報は,「店舗・施設についての入手されて記憶された情報に含まれる」点で共通する。
(サ)引用例1発明の,サーバーコンピュータは,ターゲットクライエント装置から伝達された地理情報を識別する。
この識別された地理情報も都道府県等の地理情報であるから,ターゲットクライエント装置からの「問い合わせ」は,予め「特定」された営業者の都道府県等の「地理情報」に「関連」する。
(シ)営業者の都道府県等の地理情報は,ターゲットクライエント装置からの問い合わせに対して,互いに共通する都道府県等の地理情報で営業者を特定し,その営業者の広告を配信するためのものであって,各営業者ごとに特定されるものであるから,本願発明の,「問い合わせに広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報」に相当する。
(ス)そして,サーバーコンピュータがターゲットクライエント装置に伝達するバナー広告は,リンク先のアドレスなど企業の情報を含むから,本願発明の「広告クリエイティブ」とは,企業の情報を含む「広告情報」である点で共通する。
(セ)してみると,引用例1発明と本願発明とは,サーバーコンピュータが,「ターゲット特定情報」と「広告情報」とを含む「広告」を生成する点で共通する。
(ソ)以上(ク)?(セ)のことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,広告提供システムが記憶した,「店舗・施設に関する情報の各組」に関して,「広告提供システム」が,「地理情報を特定」し,「店舗・施設に関する情報の各組」に関して,「広告提供システム」によって,「店舗・施設についての入手されて記憶された情報に含まれる」,「特定」された「地理情報」に「関連」する「問い合わせ」に「広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報」と,「広告情報」とを含む「広告」を生成する点で共通する。

(タ)以上のことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「コンピュータによって実行される方法であって,ネットワーク上の少なくとも1つのコンピュータを含む広告提供システムによって,広告を生成する方法。」の発明である点で共通する。

イ 上記「ア」のことから,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で一致する。
[一致点]
「コンピュータによって実行される方法であって,
ネットワーク上の少なくとも1つのコンピュータを含む広告提供システムによって,店舗・施設に関する情報の組を入手することと,
広告提供システムによって,入手した情報の組を記憶することと,
店舗・施設に関する情報の各組に関して,広告提供システムによって,地理情報を特定することと,
店舗・施設に関する情報の各組に関して,広告提供システムによって,店舗・施設についての入手されて記憶された情報に含まれる,特定された地理情報に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報と,広告情報とを含む広告を生成することと,
を具備する方法。」

ウ そして引用例1発明と本願発明とは,以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は,広告が配信される州等の地理情報などの情報が,つまり,電話帳などから得られるのに対して,引用例1発明は,広告が配信される都道府県等の地理情報などの情報が,営業者クライエント装置から得られるものであり,このことから,
本願発明が,
広告提供システムが,「企業ディレクトリ」から店舗・施設に関する情報の組を入手するものであって,店舗・施設に関する情報の各組は「住所情報及び電話番号のうちの少なくとも1つを含む」ものであり,「企業ディレクトリ」から店舗・施設に関する情報の組を入手することが,「(1)企業ディレクトリの掲載事項についての情報を含むデータフィードを受信して該データフィードを処理し,広告に関する情報を自動的に抽出する」ことと,「(2)企業ディレクトリの掲載事項を走査して走査結果を生成し,該走査結果を処理して広告に関する情報を自動的に抽出する」ことの「少なくとも一方を含む」ものであり,
「企業ディレクトリ」から入手された,店舗・施設に関する情報の組に関して,広告提供システムによって,「(1)店舗・施設に関する情報の組の住所情報の郵便番号」,「(2)店舗・施設に関する情報の組の住所情報に含まれる町」,「(3)店舗・施設に関する情報の組の住所情報に含まれる州」,「(4)店舗・施設に関する情報の組の電話番号の市外局番」,の(1)?(4)の少なくとも1つを使用して所在位置を特定し,特定された所在位置に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するのに対して,
引用例1発明は,広告が配信される都道府県等の地理情報などが,営業者クライエント装置から得られ,特定された地理情報に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するものである点。
[相違点2]
本願発明が生成する広告が,「企業ディレクトリ」から入手された,店舗・施設に関する情報の組に関して,「(1)特定された所在位置に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報と,(2)企業名,企業アドレス,企業所在位置,企業電話番号を含む広告クリエティブ情報とを含む広告」であるのに対して,引用例1発明が生成する広告は,特定された地理情報に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報と,広告情報とを含む広告である点で共通するにとどまるものであり,広告の広告情報が,さらに,企業名,企業アドレス,企業所在位置,企業電話番号を含む広告クリエティブ情報であるとは言えない点。


3.判断
以上の相違点について,以下に判断する。
ア [相違点1]について。
(ア)引用例2開示事項によれば,引用例2には,「NTT番号情報株式会社の『インターネットタウンページ』から住所を含む情報を取得し,取得した住所を利用して,アドレスマッチングを行い,地域,業種等を絞り込んで必要な住所だけを効率的に取得してコンビニエンスストアマップ,レストランマップなど職種別の主題図を作成すること。」との事項が開示される。
引用例2開示事項によれば,引用例2には,地理情報などの情報を,つまり,電話帳などから得ることが記載されているので,以下詳細に検討する。
(イ)引用例2開示事項の,NTT番号情報株式会社の「インターネットタウンページ」は,「住所を含む情報」であり,コンビニエンスストアやレストランなどの業種や電話番号や住所などの掲載事項の情報であるから,本願発明の「企業ディレクトリ」に対応する。
(ウ)引用例2開示事項の,「インターネットタウンページ」の「住所を含む情報」は,本願発明の,「住所情報及び電話番号のうちの少なくとも1つを含む」情報に対応する。
そしてこの「住所を含む情報」を取得することは,業種・電話番号・住所などを取得することであるから,本願発明の,「企業ディレクトリ」から「店舗・施設に関する情報の組」を入手することに対応する。
(エ)引用例2開示事項によれば,引用例2は,「インターネットタウンページ」から「取得した住所」を利用して,「地域,業種等を絞り込んで必要な住所だけ取得」するものである。
この処理では,少なくとも,タウンページに掲載されている,業種・電話番号・住所の掲載事項の情報を取得し,この情報から業種の情報と住所の情報を取得している。
(オ)ここで,本願発明の,「企業ディレクトリ」から「自動的に抽出」される「広告に関する情報」との事項は,どのような事項を特定するのか,必ずしも明確ではないが,発明の詳細な説明の記載を参酌すれば,「広告に関する情報」は,「企業ディレクトリ」である電話帳の記載事項から得られる情報から抽出されるものであり,電話帳の記載事項は,住所と業種の情報であるから,この情報を処理して得られる「広告に関する情報」は,住所と業種の情報に関する情報である。
そして,引用例2開示事項も,業種・電話番号・住所の掲載事項の情報を取得し,この情報から業種情報と住所情報を取得して処理をするものであるから,引用例2開示事項も,少なくとも住所と業種の情報に関する情報を抽出する。
(カ)してみると,引用例2の,「インターネットタウンページ」から「取得した住所」を利用して,「地域,業種等を絞り込んで必要な住所だけ取得」することは,本願発明の,「企業ディレクトリ」の「掲載事項についての情報」を含む「データフィード」を「受信」し,「データフィード」を「処理」し,「広告に関する情報を自動的に抽出」することに対応する。

(キ)引用例2開示事項の処理は,「インターネットタウンページ」の業種や電話番号や住所などの掲載事項の情報を利用するものであって,情報処理が可能なデジタルデータをインターネットで受信して利用できることを前提とする処理である。
(ク)しかし,情報処理が可能なデジタルデータが利用できない場合には,掲載事項を走査して走査結果を生成し,走査結果を処理して利用するという処理をすることは,設計上の必要性に応じて当業者が適宜なしうることである。
(ケ)してみると,「企業ディレクトリの掲載事項についての情報を含むデータフィードを受信し,データフィードを処理し,広告に関する情報を自動的に抽出する」との構成にかえて,「企業ディレクトリの掲載事項を走査して走査結果を生成し,該走査結果を処理して広告に関する情報を自動的に抽出する」との構成とし,またはこれらのうちの「一方」の構成とすることもまた当業者が適宜なしうることである。

(コ)以上(ア),(イ)?(カ),(キ)?(ケ)のことから,引用例1発明に引用例2開示事項を適用することにより,引用例1発明の,都道府県等の地理情報などの情報を営業者クライエント装置から得ることにかえて,「広告提供システム」が,「企業ディレクトリ」から「店舗・施設に関する情報の組を入手」するよう構成し,「店舗・施設に関する情報」の各組を「住所情報及び電話番号のうちの少なくとも1つを含む」よう構成し,さらに,「企業ディレクトリから店舗・施設に関する情報の組を入手する」ことを,「(1)企業ディレクトリの掲載事項についての情報を含むデータフィードを受信して該データフィードを処理し,広告に関する情報を自動的に抽出する」ことと,「(2)企業ディレクトリの掲載事項を走査して走査結果を生成し,該走査結果を処理して広告に関する情報を自動的に抽出する」ことの「少なくとも一方を含む」よう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

(サ)さらに引用例2開示事項によれば,引用例2は,地理情報などの情報を電話帳から得るものであって,電話帳から取得した住所を利用するものである。
(シ)地理情報を特定するため,電話帳の住所の情報の,「郵便番号」,「町名」,「州名」,「市外局番」のいずれの情報を用いるかは,地理情報が特定する地域をどの程度の範囲とするかにより決まるものであるから,当業者が適宜決めうる設計的な事項である。
(ス)してみると,引用例1発明に,引用例2記載事項を適用することにより,「都道府県等の地理情報を営業者クライエント装置から得て各営業者ごとに特定し,特定した地理情報に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定する」ことにかえて,「広告提供システム」により,「(1)店舗・施設に関する情報の組の住所情報の郵便番号,(2)店舗・施設に関する情報の組の住所情報に含まれる町,(3)店舗・施設に関する情報の組の住所情報に含まれる州,(4)店舗・施設に関する情報の組の電話番号の市外局番,の(1)?(4)の少なくとも1つを使用して所在位置を特定し,特定した(州などの)所在位置に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定する」よう構成することにも何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

イ [相違点2]について。
(ア)まず,地理情報を,電話帳から取得される州などの所在位置とすることは,前記[相違点1]についてで検討したとおりであるから,そのように構成することには,何ら困難性がない。
(イ)次に,広告を,企業名,企業アドレス,企業所在位置,企業電話番号を含む広告クリエティブ情報を含むよう構成することは,これら企業名・企業アドレス・企業所在位置・企業電話番号の情報が,いずれも広告情報として普通に用いられる情報であることから,得られる情報の範囲で,これらの情報を選択し,もって本願発明の広告クリエティブ情報の構成とすることにも,何ら困難性がない。
(ウ)してみると,引用例1発明の,地理情報を,電話帳から取得される州などの所在情報とし,広告を,さらに「企業名,企業アドレス,企業所在位置,企業電話番号を含む広告クリエティブ情報」を含むよう構成し,もって,本願発明の,「(1)特定された所在位置に関連する問い合わせに広告提供ターゲットを特定するターゲット特定情報と,(2)企業名,企業アドレス,企業所在位置,企業電話番号を含む広告クリエティブ情報とを含む広告」を生成するよう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1],[相違点2]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,上記各相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。
また,本願発明の作用効果も,引用例1発明,及び引用例2開示事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用例1発明,及び引用例2開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができない。


4.審判請求人の主張について
(1)審判請求人は,平成24年11月29日の意見書において,以下のことを主張している。
「(B-1)引用例1-7は,本願請求項1に記載のa)?d)の組み合わせについて開示も示唆もしていないので本願請求項1に係る発明は新規性,進歩性を有するものと思料します。
(B-2)審判官殿は,(2-1)引用例1発明と請求項1に係る発明との一致点と相違点について,のウにおいて,以下の相違点1-3を挙げておられます。
[相違点1](略)(注:本審決の相違点1に相当。)
[相違点2](略)(注:本審決の相違点1に相当。)
[相違点3](略)(注:本審決の相違点2に相当。)
これらの相違点1,3は重要であります。引用例1が店舗・施設に関する情報を入手することを開示しているか否かにかかわらず,当該情報がどのようにして入手されるのかについて開示していません。従来のシステムの多くにおいてそのような情報は広告主自身によって入力されます。また,引用文献1が特定された位置にターゲット特定された広告について開示しているか否かにかかわらず,そのようなターゲット特定がいかにして入手されるのかについて開示していません。また,当該情報を含む広告を生成することについても開示していません。
審判官殿は,本願発明と引用例1との間の相違点1-3を補償するために引用例2を引用されました。引用例2の詳細は拒絶理由通知に記載されています。引用例2は,MANDARAプログラムに関しています。調べによれば,MANDARAは,例えばマイクロソフトのExcelスプレッドシートなどのようにスプレッドシートに関する統計データをマップ上に表示することを可能にします。すなわち,MANDARAはスプレッドシートから情報を抽出してマップ上に表示することができます。しかしながら,MANDARAはそのようにして抽出された情報を含む広告を生成することはありません。MANDARAが生成するのは,マップでありそれを表示します。
(B-3)審判官殿は,(2-2)判断において,相違点1,2について以下のように述べられています。
(略)
(B-4)しかしながら,いずれの引用例も,本願発明で挙げられた技術的課題について触れておらず,引用例を組み合わせる動機付けは全くないと思料します。すなわち,審判官殿による引用例の組み合わせは,本願明細書を予め熟読した上で後知恵的に生み出されたものとあると推量いたします。より詳細には,本願明細書の段落0006には,以下の記載があります。
「(略)」
引用例1,2を含むいずれの引用例も,このような課題についてまったく触れていません。引用例1が地域(ローカル)広告に関するか否かにかかわらず,本願請求項に記載の方法によって入手された店舗・施設に関する情報からそのような広告を生成することはありません。引用例2はスプレッドシートから引き出された統計情報を表示するマップを生成するものであり,広告について何も開示していません。」

(2)審判請求人の上記主張について検討する。
ア 本願発明は,確かに,a)?d)の組み合わせからなるものの,そのような本願発明が,引用例1発明と引用例2開示事項とから当業者想到容易であったことは,前記したとおりである。
イ 仮に,審判請求人が主張するように,「MANDARAはスプレッドシートから情報を抽出してマップ上に表示する」ものであって,「MANDARAはそのようにして抽出された情報を含む広告を生成することがない」ものであるとしても,引用例2は,専ら「地理情報などの情報を電話帳から得ること」を開示するものとして引用したにすぎない(前記「3.ア(オ)」で判断したとおり,本願発明の記載事項が明確ではないことから,引用例2開示事項から踏み込んだ判断をした部分を除く。)。
ウ 確かに,発明の詳細な説明の【0006】段落には,審判請求人が指摘することが記載されている。
しかし,これに引き続く,【発明が解決しようとする課題】には,「【0008】地域店舗・施設によるオンライン広告が有するこれらの認識された欠点に鑑みて,例えばオンライン広告等の広告が地域店舗・施設及びユーザーのニーズを満たすように改良することが有用になる。」と記載され,【課題を解決するための手段】には,「【0009】本発明と一致する実施形態は,ローカルサーチに適した広告を生成するために使用することができる。」と記載されている。
つまり,本願発明は,「オンライン広告等の広告が地域店舗・施設及びユーザーのニーズを満たすように改良すること。」が課題である。
してみると,この課題は,引用例1発明の,「従来,検索サイトに表示されるバナー広告は,アクセスしてきたどのクライエント装置にも同様の情報を伝達するものであり,検索キーワードに応じたバナー広告を選択的に伝達するものの,クライエント装置の地域情報に応じた処理を行うものではなかったことから,これを,地域ごとのバナー広告を効果的に行うようにする」との課題と共通する。

以上ア?ウのことから,審判請求人の主張を採用することはできない。


5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例2開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-12 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-01 
出願番号 特願2007-519374(P2007-519374)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 正信  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 金子 幸一
須田 勝巳
発明の名称 コール機能を備えたデバイスに関する広告等の地域広告の生成及び/又は提供  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 直樹  
代理人 河野 哲  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 砂川 克  
代理人 勝村 紘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 市原 卓三  
代理人 中村 誠  
代理人 佐藤 立志  
代理人 野河 信久  
代理人 竹内 将訓  
代理人 白根 俊郎  
代理人 山下 元  

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