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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1278093 |
審判番号 | 不服2012-7526 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-04-24 |
確定日 | 2013-08-14 |
事件の表示 | 特願2009-515331「ディーゼル触媒システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月21日国際公開、WO2007/145548、平成21年11月19日国内公表、特表2009-540212〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2006年6月13日を国際出願日とする出願であって、平成20年12月8日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面とともに、同法第184条の4第1項に規定する翻訳文、及び同法第184条の8第1項に規定する条約第34条に基づく補正書の翻訳文が提出された後、平成23年2月28日付けで拒絶理由が通知され、平成23年9月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年12月28日付けで拒絶査定がなされ、平成24年4月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成24年7月26日付けで書面による審尋がなされ、平成24年11月28日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成24年4月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年4月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成24年4月24日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年9月6日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)を、下記(イ)へと補正するものである。 (ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 選択的触媒還元コーティングを具備する第1触媒(200)の上流に位置する第1還元剤インジェクタ(210)を含む、圧縮点火エンジン(110)からの酸化窒素排出レベルを低減するための選択的触媒還元システム(100)であって、 第1触媒(200)の下流に位置する第2還元剤インジェクタ(310)、及び、 第2還元剤インジェクタ(310)の下流に配置されるとともに、選択的触媒還元コーティングを具備する第2触媒(300)を含み、 前記第1触媒(200)は、酸化触媒コーティングがコーティングされ圧縮点火(CI)燃焼によって形成された微粒子を捕捉するフィルタ機能部を具備することを特徴とする、選択的触媒還元システム。」 (イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 選択的触媒還元コーティングを具備する第1触媒(200)の上流に位置する第1還元剤インジェクタ(210)を含む、圧縮点火エンジン(110)からの酸化窒素排出レベルを低減するための選択的触媒還元システム(100)であって、 第1触媒(200)の下流に位置する第2還元剤インジェクタ(310)、及び、 第2還元剤インジェクタ(310)の下流に配置されるとともに、選択的触媒還元コーティングを具備する第2触媒(300)を含み、 前記第1触媒(200)は、圧縮点火(CI)燃焼によって形成された微粒子を捕捉するフィルタ機能部を具備し、前記フィルタ機能部の一方の壁面に前記選択的触媒還元コーティングがコーティングされ、且つ前記フィルタ機能部の前記一方の壁面と対を成す他方の壁面に酸化触媒コーティングがコーティングされていることを特徴とする、選択的触媒還元システム。」(なお、下線は、審判請求人が補正箇所を明示するために付したものである。) (2)本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「フィルタ機能部」について、「一方の壁面に前記選択的触媒還元コーティングがコーティングされ」、「前記一方の壁面と対を成す他方の壁面に酸化触媒コーティングがコーティングされている」旨を限定するものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.-1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2006-507445号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1つの還元剤供給装置(3)と、触媒コンバータ(4)と、フィルタ要素(5)と、排気ガス管(6)とを備え、自動車用内燃機関(2)の排気ガスの有害物質を転換するための排気ガス浄化装置(1)において、還元剤供給装置(3)がフィルタ要素(5)の前で排気ガス管(6)に接続され、触媒コンバータ(4)が排気ガスの流れ方向(7)においてフィルタ要素(5)の後に接続されていることを特徴とする排気ガス浄化装置(1)。 【請求項2】 還元剤供給装置(3)が固形尿素を排気ガス管(6)に入れるための搬送装置であることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化装置(1)。 【請求項3】 フィルタ要素(5)が複数の円板状の金属ハニカム体(8)を含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置(1)。 【請求項4】 金属ハニカム体(8)が少なくとも部分的に構造化された薄板(9)を備え、その薄板(9)が少なくとも部分的にミクロ構造(10)を有していることを特徴とする請求項3記載の排気ガス浄化装置(1)。 ‥‥(後略)‥‥」(【特許請求の範囲】) (イ)「【0001】 本発明は、自動車用内燃機関の排気ガスの有害物質を転換するための排気ガス浄化装置に関する。この排気ガス浄化装置は少なくとも1つの還元剤供給装置と少なくとも1つの触媒コンバータと少なくとも1つのフィルタ要素とを備えた少なくとも1つの排気ガス管を有している。そのような排気ガス浄化装置は特に自動車分野におけるディーゼルエンジンからの排気ガスを浄化するために使用される。」(段落【0001】) (ウ)「【0007】 上述の点から出発して本発明の課題は、単純に構成され、窒素酸化物および粒子の放出量が効果的に減少される自動車用内燃機関の排気ガス内の有害物質を転換するための排気ガス浄化装置を提供することにある。」(段落【0007】) (エ)「【0024】 図1には、自動車用内燃機関2の排気ガスの有害物質を転換するための排気ガス浄化装置1が概略的に示されている。図示された実施例は転換のために使用される構成要素の複数の特別な形態を示し、上述した利点は個別に実現できる。排気ガスの流れ方向7において、内燃機関2にまず前置触媒コンバータ17が続き、この前置触媒コンバータ17は好適にエンジンの後に比較的近くで接続されている。前置触媒コンバータ17は特に低温始動過程で有害物質の転換を開始する機能を果たす。これは内燃機関2から放出された排気ガスが比較的高温であるために可能である。 【0025】 前置触媒コンバータ17の後に、触媒担体16と加熱要素14とから成る構造ユニットが接続されている。この構造ユニットは図2を参照して後述する。 【0026】 加熱要素14の下流で、フィルタ要素5の前すなわち上流で、還元剤供給装置3によって、窒素酸化物を還元するための還元剤、特に固形尿素が排気ガス管6に導入される。フィルタ要素5はここでは多数の円板状の特に金属ハニカム体で表されている。図示された実施例において、フィルタ要素5の上流だけでなく、追加的にフィルタ要素5の下流にも、(例えば液状および/またはガス状の)還元剤を導入する還元剤供給装置3が設けられている。還元剤を加えられた排気ガスは続いて混合器11に流入し、この混合器11は排気ガス内に還元剤液滴ないしは還元剤粒子を細かく分配させる。そのように処理された排気ガスは触媒コンバータ4に流入し、この触媒コンバータ4は排気ガス入口側に円錐状ハニカム構造物15を有している。排気ガス内の有害物質は触媒コンバータ4によって転換される。これはSCR法の経路で転換される窒素酸化物に対して特に適用される。」(段落【0024】ないし【0026】) (オ)「【0030】 図4にはフィルタ要素5の詳細が示されている。このフィルタ要素5は、排気ガスが貫流できる通路13を形成する少なくとも部分的に構造化された多数の薄板9を有している。排気ガスは多くの粒子28を含み、この粒子28は排気ガスの流れ方向7に対してほぼ平行な飛行軌道26に沿って飛翔する。ミクロ構造10ないしは案内面27によって、粒子28が中間板29に向けて転向される。中間板29は盲金属板9としても形成できるが、ここでは繊維30から成る中間板29が示されている。この繊維30から成る中間板29は好適に選択触媒反応を促進する被覆を有している。中間板29が低い多孔質率(約50%)を有するとき、案内面27は好適に小さくされ、これによって、一方では排気ガス流からすす(煤)ないしは粒子28が除去され、他方では還元剤-排気ガス混合物がフィルタ要素5をほとんど支障なしに貫流することが保証される。またフィルタ層ないしは繊維を備えた中間板29を大きな透過率にすることができ、即ち特に75?90%の範囲の多孔質率にすることができる。その結果、細かく分散された還元剤微粒子がそのような中間板を通過でき、ないしは、そこに良好に付着でき、従って、被覆された中間板29自体で、あるいは下流に置かれたSCR触媒コンバータにおいてもその触媒作用を発揮する。」(段落【0030】) (2)引用文献1記載の事項 上記(1)(ア)ないし(オ)並びに図1及び図4から、引用文献1には次の事項が記載されていることが分かる。 (カ)上記(1)(ア)ないし(オ)並びに図1及び図4から、引用文献1には、選択触媒反応を促進する被覆を有する中間板29を備えたフィルタ要素5の上流に位置する還元剤供給装置3(以下、便宜上「上流側還元剤供給装置」という。)を含む、選択的触媒反応によりディーゼルエンジンから排出された窒素酸化物を効果的に減少させる排気ガス浄化装置が記載されていることが分かる。 (キ)上記(1)(ウ)、(エ)及び図1から、引用文献1に記載された排気ガス浄化装置は、フィルタ要素5の下流に位置する還元剤供給装置3(以下、便宜上「下流側還元剤供給装置」という。)、及び、下流側還元剤供給装置の下流側に配置されるとともに、SCR法を用いて窒素酸化物を転換する触媒コンバータ4を含むこと分かる。 (ク)上記(1)(ア)、(エ)及び(オ)並びに図1及び図4から、引用文献1に記載された排気ガス浄化装置において、フィルタ要素5は、ディーゼルエンジンから排出された粒子28を除去する中間板29を有し、前記中間板29は選択触媒反応を促進する被覆を有することが分かる。 (3)引用文献1記載の発明 上記(1)(ア)ないし(オ)、(2)(カ)ないし(ク)並びに図1及び図4から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているといえる。 「選択触媒反応を促進する被覆を有する中間板29を備えたフィルタ要素5の上流に位置する上流側還元剤供給装置を含む、選択的触媒反応によりディーゼルエンジンから排出された窒素酸化物を効果的に減少させる排気ガス浄化装置であって、 フィルタ要素5の下流に位置する下流側還元剤供給装置、及び、 下流側還元剤供給装置の下流側に配置されるとともに、SCR法を用いて窒素酸化物を転換する触媒コンバータ4を含み、 フィルタ要素5は、ディーゼルエンジンから排出された粒子28を除去する中間板29を有し、前記中間板29は選択触媒反応を促進する被覆を有する排気ガス浄化装置。」 2.-2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-329829号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタに関する。」(段落【0001】) (イ)「【0005】本発明の目的は、安価に、ディーゼルエンジンの排気ガス中のパティキュレート、HC、CO、NOxの浄化処理が行えるディーゼルパティキュレートフィルタの提供にある。」(段落【0005】) (ウ)「【0056】つぎに、本発明の第7実施例(請求項7に対応)を、図2、図8に基づいて説明する。本実施例のディーゼルパティキュレートフィルタGは、図8に示す様に、排ガス流出路13側のセル壁表面115に酸化触媒層6(第1の酸化触媒層)を設け、排ガス流入路12側のセル壁表面113に、NOxを選択して還元するNOx選択還元触媒層4を設けている。」(段落【0056】) (2)引用文献2記載の技術 上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図2及び図8から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「ディーゼルエンジンの排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタGにおいて、排ガス流出路13側のセル壁表面115に酸化触媒層6を設け、排ガス流入路12側のセル壁表面113に、NOxを選択して還元するNOx選択還元触媒層4を設けることにより、排気ガス中のパティキュレート及びNOx等の浄化処理を行う技術。」 2.-3 対比 本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「選択触媒反応を促進する被覆」は、その構成、材料及び機能からみて、本願補正発明における「選択的触媒還元コーティング」に相当し、同様に「上流側還元剤供給装置」は「第1還元剤インジェクタ」に、「下流側還元剤供給装置」は「第2還元剤インジェクタ」に、「SCR法を用いて窒素酸化物を転換する触媒コンバータ4」は「選択的触媒還元コーティングを具備する第2触媒」に、それぞれ相当する。 そして、引用文献1記載の発明における「フィルタ要素5」は、選択触媒反応を促進する被覆を有する「中間板29」を有することによって、選択的触媒機能とフィルタ機能の両方の機能を備えたものであるから、その機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「選択的触媒コーティングを具備する第1触媒」に相当する。 一方、本願補正発明における「圧縮点火エンジン」とは、本願の発明の名称が「ディーゼル触媒システム」であることからみて、「ディーゼルエンジン」であると認められるから、引用文献1記載の発明における「選択的触媒反応によりディーゼルエンジンから排出された窒素酸化物を効果的に減少させる排気ガス浄化装置」は、その機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「圧縮点火エンジンからの酸化窒素排出レベルを低減するための選択的触媒還元システム」に相当する。 さらに、引用文献1記載の発明における「ディーゼルエンジンから排出された粒子28」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「圧縮点火(CI)燃焼によって形成された微粒子」に相当し、同様に「粒子28を除去する」ことは「微粒子を捕捉する」ことに相当するから、引用文献1記載の発明における「中間板29」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「フィルタ機能部」に相当する。 また、引用文献1記載の発明における「選択触媒反応を促進する被覆」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「選択的触媒還元コーティング」に相当するから、「第1触媒は、フィルタ機能部の壁面に選択的触媒還元コーティングがコーティングされている」という限りにおいて、引用文献1記載の発明において「フィルタ要素5が選択触媒反応を促進する被覆を有する中間板29を備える」ことは、本願補正発明において「フィルタ要素5は、ディーゼルエンジンから排出された粒子28を除去する中間板29を有し、前記中間板29は選択触媒反応を促進する被覆を有する」ことに相当する。 したがって、本願補正発明と引用文献1記載の発明は、 「選択的触媒還元コーティングを具備する第1触媒の上流に位置する第1還元剤インジェクタを含む、圧縮点火エンジンからの酸化窒素排出レベルを低減するための選択的触媒還元システムであって、 第1触媒の下流に位置する第2還元剤インジェクタ、及び、 第2還元剤インジェクタの下流に配置されるとともに、選択的触媒還元コーティングを具備する第2触媒を含み、 前記第1触媒は、圧縮点火(CI)燃焼によって形成された微粒子を捕捉するフィルタ機能部を具備し、前記フィルタ機能部の壁面に選択的触媒還元コーティングがコーティングされている選択的触媒還元システム。」 である点で一致し、次の点において相違する。 〈相違点〉「第1触媒は、フィルタ機能部の壁面に選択的触媒還元コーティングがコーティングされている」点に関し、本願補正発明において「第1触媒は前記フィルタ機能部の一方の壁面に前記選択的触媒還元コーティングがコーティングされ、且つ前記フィルタ機能部の前記一方の壁面と対を成す他方の壁面に酸化触媒コーティングがコーティングされている」のに対し、引用文献1記載の発明において「フィルタ要素5は、ディーゼルエンジンから排出された粒子28を除去する中間板29を有し、前記中間板29は選択触媒反応を促進する被覆を有する」点(以下、「相違点」という。)。 2.-4 判断 上記相違点について検討する。 本願補正発明と上記引用文献2記載の技術とを対比すると、上記引用文献2記載の技術における「ディーゼルエンジン」は、その機能、構成及び技術的意義から、本願補正発明における「圧縮点火エンジン」に相当し、以下同様に、「パティキュレート」は「微粒子」に、「捕集する」は「捕捉する」に、「ディーゼルパティキュレートフィルタG」は「フィルタ機能部」に、「酸化触媒層6を設ける」ことは「酸化触媒コーティングがコーティングされ」ることに、「NOxを選択して還元するNOx選択還元触媒層4を設けること」は「選択的触媒還元コーティングがコーティングされ」ることに、それぞれ相当する。 また、引用文献2記載の技術において「排ガス流出路13側のセル壁表面115」及び「排ガス流入路12側のセル壁表面113」とは、対をなすものといえるから、それぞれ、本願補正発明における「他方の壁面」及び「一方の壁面」に相当する。 したがって、引用文献2記載の技術を本願補正発明の用語を使って表現すれば、 「圧縮点火エンジンの排気ガス中の微粒子を捕捉するためのフィルタ機能部において、フィルタ機能部の一方の壁面に選択的触媒還元コーティングがコーティングされ、且つ前記フィルタ機能部の前記一方の壁面と対を成す他方の壁面に酸化触媒コーティングがコーティングされることにより、排気ガス中の微粒子及びNOx等の浄化処理を行う技術。」 であるといえる。 そして、窒素酸化物および粒子の放出量を減少させる排気ガス浄化装置に係る引用文献1記載の発明において、排気ガス中の微粒子及びNOx等の浄化処理を行う技術である引用文献2記載の技術を適用することによって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到することができたことである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。 以上により、本願補正発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、平成24年11月28日付けの回答書において、「上記した本発明の特徴構成に拠れば、フィルタ機能部の一対の壁面に、選択的触媒還元コーティングと酸化触媒コーティングとが、各方の壁面にそれぞれ単独のみコーティングされているため、相反する化学作用である酸化・還元作用を互いに減殺してしまうことなく、一方の壁面で還元作用のみに限定し、且つ他方の壁面で酸化作用のみに限定した化学作用を促進する効果を奏します。」と主張している。本件補正後の請求項1には「各方の壁面にそれぞれ単独のみコーティングされている」旨の特定はないから、同主張は本願補正発明の発明特定事項に基づくものであるとはいえない。 しかし、この点が特定されているものとして検討した場合に、「ディーゼルエンジンの排気中に含まれる微粒子とNOxを除去するフィルタにおいて、解放された上流端部を有するセルと、解放された下流端部を有するセルを設けたものにおいて、各方の壁面に酸化触媒とNOx還元触媒を単独のみコーティングすること」は、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開平4-197422号公報の第3ページ左上欄第19行ないし同ページ右上欄第18行、及び特開2002-349238号公報の【請求項1】等参照)であって、これにより、相反する化学作用である酸化・還元作用を互いに減殺してしまうことなく、一方の壁面で還元作用のみに限定し、且つ他方の壁面で酸化作用のみに限定した化学作用を促進する効果を奏することは明らかである。 したがって、たとえ、本願補正発明に「各方の壁面にそれぞれ単独のみコーティングされている」旨の限定を行ったとしても、当該発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3. むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成24年4月24日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成23年9月6日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲、平成20年12月8日付けで提出された明細書及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記(第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】)のとおりのものである。 2.引用文献 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術は、それぞれ前記第2.の[理由]2.-1及び2.-2に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.の[理由]1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-1ないし2.-4に記載したとおり、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-12 |
結審通知日 | 2013-03-19 |
審決日 | 2013-04-01 |
出願番号 | 特願2009-515331(P2009-515331) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩▲崎▼ 則昌 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 柳田 利夫 |
発明の名称 | ディーゼル触媒システム |
代理人 | 秋庭 英樹 |
代理人 | 小椋 正幸 |
代理人 | 清水 英雄 |
代理人 | 高木 祐一 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 重信 和男 |