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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1278200
審判番号 不服2012-15115  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-06 
確定日 2013-08-16 
事件の表示 特願2010-275243「ディジタル情報記録再生装置、ディジタル情報記録再生方法、ディジタル情報送信方法、および、ディジタル情報送受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月12日出願公開、特開2011- 96362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

[1]手続の経緯
本願は、平成13年1月10日(優先権主張平成12年12月13日、平成12年12月21日)に出願した特願2001-02053号の一部を、新たに特願2007-165765号として出願し、さらに、その一部を、
新たに特願2007-324173号として出願し、さらに、その一部を、
新たに特願2008-275044号として出願し、さらに、その一部を、
新たに特願2010-099380号として出願し、さらに、その一部を、
新たな特許出願としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

上申書 :平成22年12月10日
手続補正 :平成22年12月10日
手続補正 :平成23年 1月 5日
手続補正 :平成23年11月21日
拒絶理由通知 :平成23年11月28日(起案日)
意見書 :平成24年 1月23日
手続補正 :平成24年 1月23日
拒絶査定 :平成24年 5月30日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成24年 8月 6日

[2]査定
原審での査定の理由は、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の請求項1?4に係る発明は、下記の刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

記(刊行物)
刊行物1:特開平07-230667号公報
刊行物2:特開2000-298926号公報

【第2】本願発明

本願の請求項1?4までに係る発明は、本願特許請求の範囲及び明細書(平成22年12月10日,平成23年1月5日、平成23年11月21日及び平成24年1月23日付けの手続補正書により補正されたもの)及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。

記(本願発明)
ディジタル情報を記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するディジタル情報記録再生装置において、
前記ディジタル情報と、前記ディジタル情報の制御情報とを受信する受信手段と、
受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生する記録再生手段と、
前記記録再生手段の記録再生動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御情報は、前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報と、前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報とを含み、
前記制御手段は、
前記記録再生手段において、受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するように制御し、
前記記録媒体に記録したディジタル情報を再生する際には、前記第1の制御情報と前記第2の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間と再生開始後の有効期間とが指定されている場合に、
前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であり、かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であるときに、記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態と、
一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているときに、記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態とを有することを特徴とするディジタル情報記録再生装置。

【第3】当審の判断

[1]引用刊行物の記載

(1)刊行物1:特開平07-230667号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平07-230667号公報(上記刊行物1)には、以下の記載(下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。)が認められる。

(K1)〈特許請求の範囲〉
「【請求項1】略
【請求項2】伝送路を介して供給される主情報信号である第1の情報信号とこの第1の情報信号に付随した第1の情報信号の再生有効期限を示す第2の情報信号とを記録する記録手段と、
上記第1の情報信号と第2の情報信号を再生する再生手段と、
再生時に上記伝送路を介して供給される年月日および時刻等の時間軸情報である第3の情報信号を検出する検出手段と、
上記再生手段により再生された上記第2の情報信号と上記検出手段により検出された第3の情報信号とを比較する比較手段と、
上記比較手段の比較信号に従い上記再生された第1の情報信号の出力を遮断するようにした信号遮断手段と、
を備え、上記第3の情報信号である時間軸情報が上記第2の情報信号である再生有効期限を超えている場合には、上記信号遮断手段において、上記第1の情報信号の出力を遮断するようにしたことを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項3】伝送路を介して供給される主情報信号である第1の情報信号とこの第1の情報信号に付随した第1の情報信号の再生有効期間を示す第2の情報信号と年月日および時刻等の時間軸情報である第3の情報信号を記録する記録手段と、
上記第1の情報信号と第2の情報信号と第3の情報信号をを再生する再生手段と、
再生時に上記伝送路を介して供給される年月日および時刻等の時間軸情報である第4の情報信号を検出する検出手段と、
上記再生手段により再生された上記第2の情報信号と第3の情報信号から再生有効期限を算出する演算手段と、
上記演算手段により算出された再生有効期限情報と上記検出手段により検出された第4の情報信号とを比較する比較手段と、
上記比較手段の比較信号に従い上記再生された第1の情報信号の出力を遮断するようにした信号遮断手段と、
を備え、上記第4の情報信号である時間軸情報が上記演算手段により算出された再生有効期限を超えている場合には、上記信号遮断手段において、上記第1の情報信号の出力を遮断するようにしたことを特徴とする情報記録再生装置。」

(K2)〈技術分野〉
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、伝送路を介して供給されるディジタル情報信号を記録再生する情報記録再生装置に関し、特に伝送・記録されるディジタル情報の著作権を保護する機構を有した情報記録再生装置に関する。」

(K3)〈解決しようとする課題、目的〉
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ようなディジタル情報網による情報の伝送とディジタルVTRによる記録再生では、伝送および記録再生過程での品質劣化が少なく、そのままでは供給ソフト情報の著作権の保護が図られない。これは伝送されたビデオソフト等の情報を使用者(視聴者)が記録し、半永久的に使用者の所有物にする場合にはソフト情報の販売になり、今までのようなレンタルビデオ的な低価格での供給は難しくなる。逆に言えば、現行のレンタルビデオ的な低価格でのソフト情報の配給を可能にするためには、今までとは異なるソフト情報の著作権保護の手段が必要である。
【0008】そこで、従来の著作権保護がダビング防止(アンチコピー)が中心であったのに対し、本発明では、ソフト情報の入手および記録段階では著作権情報を使用したことにならず、これを再生することを著作権情報の使用と考えた。そこで本発明の目的は、伝送路を経由して供給される情報を記録再生する情報記録再生装置において、著作権保護を目的に記録された情報の再生を制限することが可能な情報記録再生装置を提供するものである。」

〈実施例〉
《図2の説明》
(K4)「【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。まず、本発明の情報記録再生装置の詳細な説明の前に、本装置の使用環境について図2により簡単に説明しておく。図2は本情報の記録再生装置の使用環境を示したものである。図2において、破線部36がディジタル情報信号を供給する送信局系を示し、37がディジタル情報信号の伝送路、そして破線部38が本情報記録再生装置を有する視聴者(ユ-ザ-)装置系を示している。送信局36は、例えば、ディジタルVTR39やディスク装置40、あるいは大容量メモリを用いた半導体記録再生装置41等を用いて、ディジタル情報信号(主たるディジタル情報信号)のMPEG方式等による情報圧縮と時間軸圧縮を行い、所定の伝送レ-トにてPCMエンコーダ42に供給する。PCMエンコーダ42では、上記ディジタル情報信号の伝送過程における符号誤り(エラ-)発生による悪影響を防ぐためエラ-検出訂正符号や同期信号が発生・付加されると共に、カレンダータイマ回路43から供給される年月日および時刻等の時間軸情報(以下、日付時刻情報と記す。)と、有効期限情報発生回路45から供給される伝送情報の有効期限を定める有効期限情報をインデックス信号として伝送情報に付加する。上記有効期限情報は、一意的に決められるものではなく情報受信者(ユーザー)の要求により、例えば図2に示すように、電話回線50等を用いて供給されるユーザーの希望情報をコントローラ44で検出・デコードし、有効期限を決定するようにしている。(以下略)」
《図1の説明》
(K5)「【0014】本発明の情報記録再生装置の詳細な説明を図1を用いて行う。図1は本発明を適用した情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。図1において、1は磁気テ-プ、2はドラム(ドラムモ-タ-を含む)、3a,3bは磁気ヘッド、4はキャプスタン、5はキャプスタンモ-タ、6はCTLヘッド、7?11は信号の入力あるいは出力端子、12はチャンネルセレクタ(チュ-ナ-)、13は復調回路、14はPCMデコ-ダ、15,26はインデックス信号検出回路、16はディジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPと記す。)、17は変調回路、18は記録アンプ、19はシステムコントロ-ラ、20はドラムサ-ボ回路、21はCTL信号発生・検出回路、22はキャプスタンサ-ボ回路、23は再生アンプ、24は復調回路、25はDSP、27は有効期限情報検出回路、28は日付時刻情報検出回路、29は比較回路、30は信号遮断回路、31はメモリ回路、32はMPEGデコ-ダ(情報伸長回路)、33はDAコンバ-タ、34はキャラクタジェネレータ、そして35は加算回路ある。まず記録時の動作を信号の流れに沿って説明する。
【0015】図1において、入力端子7を介して供給された入力情報信号は、チャンネルセレクタ12に供給される。チャンネルセレクタ12は、システムコントロ-ラ19から供給されるチャンネル指定信号CHに従い所望のチャンネルの情報信号を選択し、復調回路13に供給する。なお、チャンネル指定信号CHは、入出力端子8を介して供給されるユ-ザ-命令信号にて設定される。復調回路13は、先の伝送路37に適した信号形態に変調されている入力情報信号を復調し、元のディジタル信号に変換しPCMデコ-ダ14に供給する。PCMデコ-ダ14は、入力されたディジタル情報信号のエラ-検出および訂正を行い、次段のDSP16にディジタル情報信号を供給すると共に、多重されているインデックス信号TIDをインデックス信号検出回路15に供給する。さらに、入力ディジタル信号のデータブロック構成を検出するための同期信号SYCを分離しドラムサ-ボ回路20に供給する。インデックス信号TDIを供給されたインデックス信号検出回路15は、インデックス信号の中から時間軸圧縮率の情報や記録情報信号の種類を示す情報等の再生時に必要となるデ-タと、伝送されてきた情報信号の再生有効期限を示す有効期限情報のデータおよび伝送された日付時刻情報のデータを記録信号RIDとして、DSP16に供給する。また、入力インデックス信号情報は、システムコントローラ19に供給され、ここから入出力端子8を介して図示していないが表示系に供給し、ユ-ザ-にインデックス信号の情報を表示する。DSP16は、PCMデコ-ダ15から供給されるディジタル情報信号とインデックス信号検出回路15から供給される再生時に必要なインデックス信号とを磁気記録再生に適した信号形態に変換する。すなわち、磁気記録再生における符号誤りに対応するために、デ-タのブロック化とアドレスデ-タの付加、インタ-リ-ブおよびリ-ドソロモン符号等のエラ-検出訂正符号が付加される。」
《図3、図4の説明》
(K6)「【0016】図3に記録情報信号のブロック構造の一例を示す。DSP16に入力されたディジタル情報およびインデックス信号は、例えば1トラック(磁気ヘッドが一回の走査で形成するトラック)に記録される情報を単位として図3の下部に示すように配置される。そして縦の方向で外検査符号が付加された後に、横の方向で内検査符号が付加される。なお、この内検査符号の発生では、図3の上部に示すようにデータAとアドレス情報に対しての発生とデータBに対して発生している。以上のようにエラー検出訂正符号を付加された記録情報信号は、アドレス情報の手前にブロックの先頭を示すブロック同期信号(以下、SYNCと記す。)を付加され変調回路17に供給される。また、図4に記録インデックス信号のデータ構成例を示す。図4において、インデックス信号はバイト単位で構成され、ID0はインデックス信号のモードを決定するものである。ID1?ID7が記録時の日付時刻情報データであり、ID8が有効期限のモードを決定するものであり、ID9?IDFが有効期限データである。なお、ID1からIDFはID0のデータにより、先に述べた時間軸圧縮率情報や記録情報信号の種類情報あるいはMPEG方式等の圧縮方法の種類情報等のデータや、ユーザーズデータ等に用いられる。このインデックス信号は例えばトラック毎に、異なるインデックス信号モードで記録することにより各種のインデックス情報が記録できる。」
《再生時の動作》
(K7)「【0023】では次に本発明において重要な再生時の動作について説明する。図1において、・・・再生信号は、・・・復調回路24に供給される。復調回路24は、・・・復調処理を行いDSP25に復調された再生ディジタル信号を供給する。DSP25は・・・インデック信号PIDをインデックス信号検出回路26に供給し、再生ディジタル情報を信号遮断回路30に供給する。
【0024】上記のインデックス信号検出回路26と有効期限情報検出回路27と日付時刻情報検出回路28と比較回路29および信号遮断回路30は、本発明の目的である供給情報の著作権保護を図るのに重要な働きをする。インデックス信号検出回路26は、図4に示したID0のモードデコードを行い、各種インデックス信号を有効期限情報検出回路27およびシステムコントローラ19に供給する。有効期限情報検出回路27は、入力された、再生インデックス信号から、記録されているディジタル情報信号の再生有効期限情報に関するインデックス信号(図4のID9?IDF)を抽出し、このインデックス信号PDTを比較回路29に供給する。また、上記のインデックス信号が入力されているシステムコントローラ19は、再生インデックス信号により再生のモードを決定すると共に、ユーザーに知らせるた方が良い情報、例えば記録された日時や記録情報の種類等に関する情報は、入出力端子8を介して図示していないが表示系に供給される。上記再生有効期限情報に関するインデックス信号が入力されている比較回路29は、再生時点の日付時刻が再生信号の有効期限を過ぎているかどうかを判断する回路であり、そのために再生時点の絶対的な日付時刻情報が必要である。上記再生時点の絶対的な日付時刻情報は、日付時刻情報検出回路28から供給される。日付時刻情報検出回路28は、記録時と同様に伝送路37から入力端子7,チャンネルセレクタ12,復調回路13,PCMデコーダ14そしてインデックス信号検出回路15を介して供給されている日付時刻情報を比較回路29に供給する。比較回路29は上記の再生有効期限情報と再生時点の絶対的な日付時刻情報とを比較し、制御信号を信号遮断回路30およびキャラクタジェネレータ34に供給する。
【0025】なお、上記の場合は再生時に用いる日付時刻情報を伝送される主たるディジタル情報信号の冗長データとして伝送される場合について述べているが、この絶対的な日付時刻情報はを伝送路37における別のチャンネルを用いて、主たるディジタル情報信号と独立して伝送および受信・検出するようにしても良い。」
《信号遮断回路30の動作》
(K8)「【0026】上記DSP25から供給された再生ディジタル信号が入力されている信号遮断回路30は、上記の比較回路29から供給される制御信号に従い、入力された再生ディジタル信号を、次段のメモリ回路39に供給するか遮断するかを切り換える。この切り換えは、上記までの主旨から明らかなように、再生時点の日付時刻が再生有効期限を過ぎている場合には再生ディジタル信号を遮断し、再生時点の日付時刻が再生有効期限の範囲内である場合には再生ディジタル信号をメモリ回路31に供給する。・・・上記キャラクタジェネレータ34は、比較回路29から供給される制御信号に従い信号遮断回路30で再生信号が遮断される場合には、ユーザーに有効期限が切れていることを伝えるために有効期限切れの表示をモニター48上に表示すべくキャラクタ信号を発生する。」

〈第2の実施例(図7)〉
(K9)「【0035】では次に第2の実施例について説明する。本第2の実施例が先の実施例と大きく異なる点は、再生ディジタル情報の有効期限の設定の仕方である。先の第1の実施例では、再生有効期限を情報が伝送され記録された日時に関係なく絶対的な年月日および時刻により設定していたのに対し、本実施例では情報が伝送され記録された日時に対する相対的再生有効期間により再生期間を制限しようとしたものである。以下、図7を用いて詳細に説明する。図7は本発明を適用した情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。図7において、先の図1に示したブロックと同一符号を付けたブロックは、図1のブロックと同一あるいは同様の働きをするものである。なお、図7における83は、図1におけるドラムサーボ回路20とCTL発生・検出回路21およびキャプスタンサーボ回路22を統合してサーボ回路として表しているだけでその動作は、上記3つのブロックと同様の働きをするものである。図7の装置が図1の装置と異なる点は、再生情報の有効期限判断を行う部分であり、図1における有効期限情報検出回路27が削除されている反面、新たに有効期間情報検出回路84と記録日時情報検出回路85および演算回路86が設けられている点である。以下、この再生情報の有効期限判断部分の動作を中心に説明する。
【0036】まず本実施例では、伝送された情報の再生有効期限を設定するに当たり、伝送および記録した時点の日付時刻情報と、この伝送および記録した時点の日付時刻に対する相対的な再生有効期間を設定するようにしている。これは、まず情報供給側の図2に示した有効期限情報発生回路45において、有効期限情報を発生する場合に絶対的な有効期限を設定するのに対し、カレンダタイマー回路43で発生される日付時刻情報を参照することにより相対的な有効期間を発生し主たるディジタル情報信号と共に伝送路へ供給する。次に7図に示した情報記録再生装置の記録系において、図4に示したインデックス信号の内のID8?IDFの情報を伝送路を介して供給される相対的な有効期限情報、すなわち有効期間情報に置き換える。そして、再生系では再生時に、図7に示したインデックス信号検出回路26から供給される再生インデックス信号PIDから、有効期間情報検出回路84で再生情報の有効期間情報を検出し、記録日時情報検出回路85で情報の記録された日付時刻情報を検出する。上記有効期間情報と記録された日付時刻情報は、演算回路86に供給され、記録された日付時刻に再生有効期間が加算され絶対的な有効期限情報PDTとされる。この絶対的な有効期限情報PDTは、比較回路29に供給される。比較回路29は、図1に示した先の第1の実施例と同様に日付時刻情報検出回路28から供給される再生時点における日付時刻情報RDTと演算回路86から供給される有効期限情報PDTを比較し、制御信号を信号遮断回路30およびキャラクタジェネレータ34に供給する。信号遮断回路30以降とキャラクタジェネレータ34の動作は、先の第1の実施例と同様である。」
(K10)「【0037】以上説明したように本第2の実施例に依れば、伝送路を経由して供給される再生期間を限定した情報信号を記録再生する場合に、供給されるディジタル情報の記録時における日付時刻情報とその相対的な再生有効期間情報を主たる情報と共に記録しておき、再生時に上記記録時の日付時刻情報とその相対的な再生有効期間情報を再生し、この2つの情報から絶対的な再生有効期限を算出し、再生時点の日付および時刻が上記再生有効期限を過ぎている場合には再生ディジタル情報の出力を遮断することができる。これにより、期間の限定範囲を超えた情報の再生を防止することができ伝送情報(記録再生情報)の著作権を保護することができる。また、上記有効期限の判断の基準となる再生時点の日付および時刻情報を上記伝送路から供給するようにしており、ユーザーが、かってに再生時点の日付および時刻を変更できなくしているので、正しく有効期限の判断が行える。
【0038】なお、上記第2の実施例では、再生有効期間情報を記録するのに図4に示したID8?IDFの8バイトのインデックス信号を割り付けて年,月,日,時刻の情報として記録再生するようにしているが、多くの場合有効期間は時間単位あるいは日数単位でも良いと思われる。そこで、その場合は実際の時間あるいはおよび日数の情報をインデックス信号に記録するのではなく、例えば、図4に示したID8の1バイトを有効期間情報に割り当てて、ID8が「00」の場合は、以下のID9?IDFで任意の年,月,日,時刻の有効期間を表現し、ID8が「00」以外の場合は、「01」が1時間、「02」が3時間、「03」が6時間、「04」が半日、「05」が1日、「06」が2日、……というふうに、複数の特定の有効期間を1バイトのインデックス信号で表すことも可能であり、その場合はインデックス信号の削減あるいは他用途利用ができる。

〈第3実施例〉
(K11)「【0041】では次に第3の実施例について説明する。本第3の実施例が先の第1あるいは第2の実施例と大きく異なる点は、有効期限情報と比較する再生時点における日付および時刻情報の発生手段である。先の実施例では、再生時点における日付時刻情報を、常に伝送路37を経由して情報の送信局側36から供給されるようにしていたのに対し、本第3の実施例では、本情報記録再生装置47の内部に絶対的な日付および時刻情報を発生する手段を設けるようしたものである。以下、図8を用いて詳細に説明する。図8は本発明を適用した情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。図8において、先の図1あるいは図7に示したブロックと同一符号を付けたブロックは、図1のブロックと同一あるいは同様の働きをするものである。図8の装置が図1の装置と異なる点は、比較回路29に供給される再生時点の絶対的な日付時刻情報の発生手段であり、新たに水晶等の発振子88を備えた日付時刻情報発生回路87が設けられている点である。(以下略)」
「【0044】以上説明したように本第3の実施例に依れば、伝送路を経由して供給される再生期間を限定した情報信号を記録再生する場合に、再生時において有効期限情報と比較する再生時点における日付および時刻情報を装置内部で発生できるので、再生時に伝送路からの日付時刻情報を常に供給しておく必要が無くなり、本装置をポータブルユース等としても利用可能にでき使用範囲が広がる。そして、有効期限の設定された情報を再生する場合は、再生時点の日付時刻情報の発生を海賊行為が防止できるように常に絶対的な正しい日付時刻情報とすることができるので、伝送情報(記録再生情報)の著作権を保護することができる。」

(2)刊行物2:特開2000-298926号公報
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-298926号公報(上記刊行物2)には、以下の記載(下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。)が認められる。

〈請求項1〉
(L1)「【請求項1】 記録媒体からデジタルデータを再生して出力するデータ再生装置において、
前記記録媒体から再生履歴情報を読み出す管理情報読出手段と、
前記再生データを劣化させる劣化手段と、
前記読み出された再生履歴情報より前記再生データを劣化させるか否かを判定する判定手段と、
この判定手段が前記再生データを劣化させると判定すると、前記再生データを前記劣化手段により劣化させて出力する劣化手段と、
前記記録媒体を再生した場合、前記再生履歴情報を更新し、この更新された再生履歴情報を前記記録媒体に書き戻す更新手段と、
を具備することを特徴とするデータ再生装置。」

(L2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスク記録媒体(記録メディア)などに記録されている映像や音声データの再生に制限を課すことができるデータ再生装置に関する。」

(L3)「【0002】
【従来の技術】従来より、映画や音楽などの映像や音声データをユーザーに供給する場合、CD,DVDなどの記録媒体をレコード店などを介してユーザーに供給している。
【0003】しかし、最近、パーソナルコンピュータ等を用いたインターネット通信などの普及により、映画や音楽などの映像や音声データを通信ネットワーク等を介してユーザー個人に配信し、ユーザー自らCDR等の記録媒体に所望の映画や音楽などの映像や音声データを記録して、映画や音楽などを楽しむ等の販売方法も提案されている。
【0004】ところで、上記のようにして供給された映像や音声データが有料である場合、記録媒体に記録されたデータからの映像や音声の再生を制限するという考え方がある。即ち、再生する回数や時間を計数することにより、再生回数や再生時間を制限するというものである。引き続き視聴を続けたければユーザーは追加してコンテンツ料金を支払う。これにより、視聴した回数や時間に応じて合理的な課金を行うことができる。
【0005】このような考え方には、上記のようにして供給されたCD、DVD等は映像や音声データをデジタルデータとして記録しているため、何度コピーしてもオリジナルと同等の品質の複製品が得られるため、上記のように再生回数を制限して、コピー回数を制限するという狙いもある。」

(L4)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の再生制限方法では、制限された回数を超えて再生しようとした場合、直ちに再生映像や音声が全く得られないようにするため、ユーザーとその映像、音声データとの接点が全く失われてしまい、逆にその映像、音声データに対する需要が途絶える切っ掛けとなる恐れがあり、商業的には不利となるという問題があった。
【0009】本発明は、上述の如き従来の課題を解決するためになされたもので、その目的は、商業的に不利になることなく、記録媒体からのデータ再生に制限を課すことができるデータ再生装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の特徴は、記録媒体からデジタルデータを再生して出力するデータ再生装置において、前記記録媒体から再生履歴情報を読み出す管理情報読出手段と、前記再生データを劣化させる劣化手段と、前記読み出された再生履歴情報より前記再生データを劣化させるか否かを判定する判定手段と、この判定手段が前記再生データを劣化させると判定すると、前記再生データを前記劣化手段により劣化させて出力する劣化手段と、前記記録媒体を再生した場合、前記再生履歴情報を更新し、この更新された再生履歴情報を前記記録媒体に書き戻す更新手段とを具備することにある。」

(L5)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のデータ再生装置の第1の実施の形態を示したブロック図である。データ再生装置は、光ディスク(DVD等)や半導体メモリ等の記録媒体(記録メディア)100からデータを再生する再生部1、記録媒体100に対する再生履歴処理を行う再生履歴処理部2、ICカード60から課金情報を読み取るカード読取部3から成っている。
【0012】次に本実施の形態の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。記録媒体100をセットしてユーザが記録媒体の再生を指示すると、再生履歴処理部2がステップ201にて、記録媒体100から課金情報を読み出し、ステップ202にて、課金済みかどうかを判定し、課金済みの場合はステップ207に進み、ここで、再生部1に再生コマンドを送出し、ステップ206に進む。
【0013】一方、課金済みでない(未課金)と判定された場合は、ステップ203に進み、記録媒体100から再生履歴情報を読み出し、ステップ204にて、通常再生の範囲内であるかどうかを判定し、そうである場合はステップ207に進んで、再生部1に再生コマンドを送出する。通常再生範囲の限度を超えている場合は、ステップ205に進んで、再生部1に劣化再生コマンドを送出して、ステップ206に進む。
【0014】ステップ206にて、再生履歴処理部2はこれから実行する再生を再生履歴に追加して新しい再生履歴とし、これを記録媒体100に書き込んで、再生履歴を更新する。
【0015】一方、再生部1は再生履歴処理部2から再生コマンドが入力された場合、前記コマンドに従って、記録媒体100に記録されているコンテンツ、即ち、符号化された映像、音声データを読み出して復号、再生し、映像、音声信号を図示されないテレビジョン受像機に出力する。
【0016】又、再生部1は再生履歴処理部2から「劣化・再生」コマンドを受け取ると、「再生」コマンドと同様にして映像、音声データを再生すると共に、再生部1内の劣化処理部11が映像、音声データを劣化させ、劣化した映像、音声データを生成して、これを出力する。
【0017】ここで、課金していない場合、この情報を図示されない表示部などで表示し、例えば、コンテンツ料金の支払いがない場合には、映像、音声データが劣化する旨の警告を発する。これを見たユーザはICカード60により別途コンテンツ料金を支払い、このICカード60をカード読取部3にセットする。
【0018】これにより、カード読取部3はICカード60から課金情報を読み出して保持した後、課金情報に変更があれば、これを記録媒体100に書き込む。この場合、ICカード60の代わりにプリペイドカードを用いれば、カード読取部3がプリペイドカードからコンテンツ料金を徴収して課金することもできる。」

(L6)「【0019】また、再生履歴の通常再生の範囲の基準は、累積再生回数、累積再生時間、初回再生時刻からの経過時間、通常再生許可期限などを用いる。例えば、予めこの記録媒体100に対して、その通常再生の範囲を「N(Nは正の整数)回の通常再生を許可する」と決めた場合、初回再生時からN回目の再生までは通常再生され、N+1回目以降は劣化した映像、音声データが再生される。
【0020】本実施の形態によれば、ユーザが記録媒体100を通常再生範囲を超えて再生しようとした場合、直ちに再生不能にするのではなく、再生品質を落として再生するので、ユーザーと記録媒体100の記録内容との絆が切れないため、その後、ユーザは前記記録媒体100の映像、音声データにコンテンツ料金を支払うことによって、品質を元に戻し、再び当該映像、音声などの完全な情報を得やすくすることができ、商業的には、映像、音声データの売り上げ向上に結びつく効果がある。」

[2]刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)

ア 刊行物1概要、引用発明認定の対象
刊行物1には、
「伝送路を経由して供給される情報を記録再生する情報記録再生装置において、著作権保護を目的に記録された情報の再生を制限することが可能な情報記録再生装置を提供する」ことを目的とし{前掲(K3)}、
(→引用発明のp)
概要構成を、請求項2、請求項3{前掲(K1)}とする発明が、
・請求項2に対応する「実施例」{以下、次の「第2の実施例」と区別するために、特に「第1の実施例」ということとする。段落【0013】?【0034】,(K4)?(K8)}、及び、
・請求項3に対応する「第2の実施例」{段落【0035】?【0040】,(K9)(K10)}と共に記載されており、
引用発明の認定は、主に、請求項3及びこれに対応する「第2の実施例」の「情報記録再生装置」に基づいて行うこととする。
第2の実施例が第1の実施例と異なるのは、「第2の実施例が先の実施例と大きく異なる点は、再生ディジタル情報の有効期限の設定の仕方である。第1の実施例では、再生有効期限を情報が伝送され記録された日時に関係なく絶対的な年月日および時刻により設定していたのに対し、本実施例では情報が伝送され記録された日時に対する相対的再生有効期間により再生期間を制限しようとしたもの」(段落【0035】)であるから、この点以外は、基本的に第1実施例と同様と理解され、第1の実施例も参照しつつ、請求項3及びこれに対応する「第2の実施例」の「情報記録再生装置」に基づいて引用発明を認定する。

〈情報記録再生装置〉
イ 伝送路を介して入力される信号、記録
〈入力信号〉
情報記録再生装置は、「伝送路を介して供給される主情報信号である第1の情報信号とこの第1の情報信号に付随した第1の情報信号の再生有効期間を示す第2の情報信号と年月日および時刻等の時間軸情報である第3の情報信号を記録する」((K1),請求項3)ところ、
前掲(K4)・(K5)(第1の実施例),(K9)(第2の実施例)によれば、これら下線部の信号である、
・「主情報信号である第1の情報信号」は、第1・第2実施例の「主たるディジタル情報信号」に対応し、
・「第2の情報信号」と「第3の情報信号」は、第1・第2実施例の「インデックス信号」に対応する。
〈記録〉
前掲(K5) (K6)によれば、これら「主たるディジタル情報信号」,「インデックス信号」は、「入力端子7」から供給され、「チャンネルセレクタ12」、「復調回路13」を経て元のディジタル信号に変換され、さらに、記録情報信号に変換され(段落【0015】)、
例えば、「磁気テープ」の、「1トラック(磁気ヘッドが一回の走査で形成するトラック)に記録される情報を単位として図3の下部に示すように配置される」(段落【0016】)ように記録される。

以上によれば、情報記録再生装置は、
伝送路を介して、「主たるディジタル情報信号」(第1の情報信号)と「主たるディジタル情報信号に付随するインデックス信号(第2、3の情報信号)」が、入力端子7から供給され、チャンネルセレクタ、復調回路13を経て元のディジタル信号に変換し、
さらに、記録情報信号に変換して、磁気テープの、1トラック(磁気ヘッドが一回の走査で形成するトラック)に記録される情報を単位として図3の下部に示すように配置されるように記録する。 (→引用発明のq)

〈インデックス信号の内容〉(第2の実施例、(K9))
前掲(K9)(【0036】)によれば、第2の実施例では(第1の実施例と異なり)、「主たるディジタル情報信号」(第1の情報信号)に付随する「インデックス信号」(第2、第3の情報信号)は、以下の2つの信号である。
(i)「第1の情報信号の再生有効期間を示す第2の情報信号」であって「伝送および記録した時点の日付時刻に対する相対的な再生有効期間」(以下、『有効期間TP』と略す)を示す信号、及び、
(ii)「年月日および時刻等の時間軸情報である第3の情報」であって「伝送および記録した時点の日付時刻情報」(以下、『記録時刻Trec』)と略す) (→引用発明のr)

ウ 再生
請求項3の
「上記第1の情報信号と第2の情報信号と第3の情報信号をを再生する再生手段と、
再生時に・・・第4の情報信号を検出する検出手段と、
上記再生手段により・・・演算手段と、
上記演算手段により算出された・・比較手段と、
上記比較手段の比較信号に従い・・・信号遮断手段と、
を備え、上記第4の情報信号である時間軸情報が上記演算手段により算出された再生有効期限を超えている場合には、上記信号遮断手段において、上記第1の情報信号の出力を遮断するようにした」
に対応する第2の実施例の動作は、
前掲(K9)(K10){特に、【0035】,【0036】,【0037】の下線部
(「【0035】・・・本実施例では情報が伝送され記録された日時に対する相対的再生有効期間により再生期間を制限しようとしたものである。」、
「【0036】まず本実施例では、伝送された情報の再生有効期限を設定するに当たり、伝送および記録した時点の日付時刻情報と、この伝送および記録した時点の日付時刻に対する相対的な再生有効期間を設定するようにしている。これは、まず情報供給側の図2に示した有効期限情報発生回路45において、有効期限情報を発生する場合に絶対的な有効期限を設定するのに対し、カレンダタイマー回路43で発生される日付時刻情報を参照することにより相対的な有効期間を発生し主たるディジタル情報信号と共に伝送路へ供給する。・・・
再生系では再生時に、図7に示したインデックス信号検出回路26から供給される再生インデックス信号PIDから、有効期間情報検出回路84で再生情報の有効期間情報を検出し、記録日時情報検出回路85で情報の記録された日付時刻情報を検出する。上記有効期間情報と記録された日付時刻情報は、演算回路86に供給され、記録された日付時刻に再生有効期間が加算され絶対的な有効期限情報PDTとされる。この絶対的な有効期限情報PDTは、比較回路29に供給される。比較回路29は、図1に示した先の第1の実施例と同様に日付時刻情報検出回路28から供給される再生時点における日付時刻情報RDTと演算回路86から供給される有効期限情報PDTを比較し、制御信号を信号遮断回路30およびキャラクタジェネレータ34に供給する。」、
「【0037】・・・供給されるディジタル情報の記録時における日付時刻情報とその相対的な再生有効期間情報を主たる情報と共に記録しておき、再生時に上記記録時の日付時刻情報とその相対的な再生有効期間情報を再生し、この2つの情報から絶対的な再生有効期限を算出し、再生時点の日付および時刻が上記再生有効期限を過ぎている場合には再生ディジタル情報の出力を遮断することができる。」)}
によれば、
再生時、再生されたインデックス信号から、上記『有効期間TP』と上記『記録時刻Trec』を検出し、それらを加算した「有効期限情報PDT」と、「日付時刻情報検出回路28から供給される再生時点における日付時刻情報RDT」(以下、『再生時点時刻T』と略す)を比較し、「再生時点の日付および時刻が上記再生有効期限を過ぎている場合には再生ディジタル情報の出力を遮断」する動作である。
このとき、そうではなく、再生時点の日付および時刻が上記再生有効期限を過ぎていない場合は、当該出力を遮断せず再生することは明らかであり、また、上記「再生ディジタル情報」とは、請求項3の「第1の情報信号」、つまり前記「主たるディジタル情報信号」をいうことは明らかである。
すなわち、
再生時、再生されたインデックス信号から、上記『有効期間TP』と上記『記録時刻Trec』を検出し、
「再生時点における日付時刻情報」(以下、『再生時点時刻T』ともいう)が、再生有効期限である(『記録時刻Trec』+『有効期間TP』)を過ぎている場合は、前記「主たるディジタル情報信号」の再生出力を遮断し、そうではなく、再生時点の日付および時刻が上記再生有効期限を過ぎていない場合は、当該出力を遮断せず再生する。 (→引用発明のs)

なお、上記『再生時点時刻T』(再生時点における日付時刻情報)は、「先の第1の実施例と同様に日付時刻情報検出回路28から供給される再生時点における日付時刻情報RDT」(段落【0036】)とされ、具体的には、第1に実施例の「・・・そのために再生時点の絶対的な日付時刻情報が必要である。上記再生時点の絶対的な日付時刻情報は、日付時刻情報検出回路28から供給される。日付時刻情報検出回路28は、記録時と同様に伝送路37から入力端子7,チャンネルセレクタ12,復調回路13,PCMデコーダ14そしてインデックス信号検出回路15を介して供給されている日付時刻情報」((K7),段落【0024】)とし、「再生時点における日付時刻情報を、常に伝送路37を経由して情報の送信局側36から供給されるようにし」((K11)段落【0041】)ているが、これに限らず、「本情報記録再生装置47の内部に絶対的な日付および時刻情報を発生する手段を設け」((K11)段落【0041】)たものでもよいと理解し得ることから、特に『再生時点時刻T』の取得手段の具体を問わない発明を認定することができる。

エ 引用発明
以上を総合すれば、引用発明として、下記の発明を認めることができる(便宜上、p?sに分説しておく)。

記(引用発明)
p:伝送路を経由して供給される情報を記録再生する情報記録再生装置において、著作権保護を目的に記録された情報の再生を制限することが可能な情報記録再生装置であって、
q:伝送路を介して、主たるディジタル情報信号(第1の情報信号)と主たるディジタル情報信号に付随するインデックス信号(第2、3の情報信号)が、入力端子7から供給され、チャンネルセレクタ、復調回路を経て元のディジタル信号に変換し、
さらに、記録情報信号に変換して、磁気テープの、1トラック(磁気ヘッドが一回の走査で形成するトラック)に記録される情報を単位として図3の下部に示すように配置されるように記録するものであって、
r:該インデックス信号は、
(i)「第1の情報信号の再生有効期間を示す第2の情報信号」であって「伝送および記録した時点の日付時刻に対する相対的な再生有効期間」(以下、『有効期間TP』と略す)を示す信号、及び、
(ii)「年月日および時刻等の時間軸情報である第3の情報」であって「伝送および記録した時点の日付時刻情報」(以下、『記録時刻Trec』)と略す)
であり、
s:再生時、再生されたインデックス信号から、上記『有効期間TP』と上記『記録時刻Trec』を検出し、
「再生時点における日付時刻情報」(以下、『再生時点時刻T』ともいう)が、再生有効期限である(『記録時刻Trec』+『有効期間TP』)を過ぎている場合は、前記主たるディジタル情報信号の再生出力を遮断し、そうではなく、『再生時点時刻T』が上記再生有効期限を過ぎていない場合は、当該出力を遮断せず再生する、
p:情報記録再生装置。

[3]本願発明と引用発明との対比(対応関係)

(1)本願発明(構成要件の分説)
検討の便宜上、本願発明の要件を、以下のように要件A?Eに分説しておく。
本願発明(分説)
A :ディジタル情報を記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するディジタル情報記録再生装置において、
B :前記ディジタル情報と、前記ディジタル情報の制御情報とを受信する受信手段と、
C :受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生する記録再生手段と、
D :前記記録再生手段の記録再生動作を制御する制御手段とを備え、
E :前記制御情報は、前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報と、前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報とを含み、
D1:前記制御手段は、
前記記録再生手段において、受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するように制御し、
D2:前記記録媒体に記録したディジタル情報を再生する際には、前記第1の制御情報と前記第2の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間と再生開始後の有効期間とが指定されている場合に、
前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であり、かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であるときに、記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態と、
一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているときに、記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態とを有する
A :ことを特徴とするディジタル情報記録再生装置。

(2)本願発明と引用発明との対比(対応関係)
本願発明の各構成要件について、引用発明と対比する。

ア 「ディジタル情報」,「ディジタル情報の制御情報」
・引用発明の「主たるディジタル情報信号(第1の情報信号)」は当然に「ディジタル情報」であって、本願発明でいう「ディジタル情報」といえることは明らかである。
・引用発明の「主たるディジタル情報信号に付随するインデックス信号(第2、3の情報信号)」は、『有効期間TP』及び『記録時刻Trec』であるところ、
引用発明のsにおいて、これら『有効期間TP』及び『記録時刻Trec』に基づいて、「主たるディジタル情報信号」の再生出力の遮断が制御されているから、「制御情報」といえ、
これら「主たるディジタル情報信号に付随するインデックス信号(第2、3の情報信号)」,『有効期間TP』,『記録時刻Trec』は、本願発明でいう「前記ディジタル情報の制御情報」といいえるものである。

イ 要件B,Cについて
B「前記ディジタル情報と、前記ディジタル情報の制御情報とを受信する受信手段と、」
C「受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生する記録再生手段と、」
引用発明の「情報記録再生装置」は、qのとおり記録し、sのとおり再生する。
すなわち、q「伝送路を介して、主たるディジタル情報信号(第1の情報信号)と主たるディジタル情報信号に付随するインデックス信号(第2、3の情報信号)が、入力端子7から供給され、チャンネルセレクタ、復調回路を経て元のディジタル信号に変換し、
さらに、記録情報信号に変換して、磁気テープの、1トラック(磁気ヘッドが一回の走査で形成するトラック)に記録される情報を単位として図3の下部に示すように配置されるように記録する」ものであるから、
「主たるディジタル情報信号(第1の情報信号)」(これが「前記ディジタル情報」といい得ることは前記のとおりである。)と「主たるディジタル情報信号に付随するインデックス信号(第2、3の情報信号)」(これが「前記ディジタル情報の制御情報」といい得ることも前記のとおりである。)とを受信しているということができ、したがって、かかる「信号を受信する受信手段」の存在は明らかである。
また、受信したこれら信号を「記録媒体」といい得る「磁気テープ」に記録するものである。
また、引用発明は、sで「主たるディジタル情報信号」を再生するものであり、「磁気テープ」(記録媒体)から再生するものであることも明らかであるから、「受信した」「主たるディジタル情報信号」を「前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生する記録再生手段」の存在も明らかである。
以上によれば、引用発明も、要件Bの「受信手段」及び要件Cの「記録再生手段」を備えているといえ、要件B及び要件Cにおいて、本願発明と引用発明は相違しない。

ウ 要件Aについて
A「ディジタル情報を記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するディジタル情報記録再生装置において、」「ことを特徴とするディジタル情報記録再生装置。」
上記ア、イでの検討結果によれば、引用発明のp「情報記録再生装置」も、「ディジタル情報を記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するディジタル情報記録再生装置において、」「ことを特徴とするディジタル情報記録再生装置。」ということができることは明らかであり、したがって、要件Aにおいて、本願発明と引用発明は相違しない。

エ 要件D、D1について
D「前記記録再生手段の記録再生動作を制御する制御手段とを備え、」
D1「前記制御手段は、
前記記録再生手段において、受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するように制御し、」
引用発明のp「情報記録再生装置」は、要件Cの「記録再生手段」(「受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生する記録再生手段」)を備えているといい得ることは上記イのとおりであって、qのとおり記録動作し,sのとおり再生動作するところ、
そのような記録動作・再生動作をするための、(要件Cの)「記録再生手段」「の記録再生動作を制御する制御手段」の存在も明らかであり、
それは、要件Cの「記録再生手段」において、「受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するように制御」する「制御手段」ともいい得るものである。
したがって、引用発明も、
D「前記記録再生手段の記録再生動作を制御する制御手段とを備え、」
D1「前記制御手段は、
前記記録再生手段において、受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するように制御し、」といえ、本願発明と相違しない。

オ 要件Eについて
E「前記制御情報は、前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報と、前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報とを含み、」

オ-1 前段の「第1の制御情報」を含んでいる点について
前段の「前記制御情報は、前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報」とは、
要件D2で「前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内」であれば「再生を可能」とし、その「有効期間を終了しているとき」は「再生できない」ようにしていること、と
明細書に「【0030】このため本発明ではまず、一時的に記録することを許された情報の記録媒体内での有効期間を規定できるようにする。装置側では記録後、規定の時間を経過した後は再生し視聴することができなくする手段を有することで、媒体に一時記録されたものが後日目的外の使用をされることを防止することができる。ここでは上記した記録媒体内での有効期間を「保持期間」と呼ぶものとする。」と記載していること、に照らせば、
「記録後、規定の時間を経過した後は再生し視聴することができなくする」ためのその「規定の時間」のこと、
すなわち、『「ディジタル情報」の記録時点から再生可能とする有効期間』をいうものと理解されるところ、
引用発明の、rのインデックス信号の(i)「第1の情報信号の再生有効期間を示す第2の情報信号」であって「伝送および記録した時点の日付時刻に対する相対的な再生有効期間」(以下、『有効期間TP』と略す)も、
『有効期間TP』に基づいて、sのように再生し/または再生できなくするのであるから、「主たるディジタル情報信号」の記録時点から有効期間TPを過ぎている場合は再生できなくし、記録時点から有効期間TP内であれば再生を可能とするものである。
すなわち、引用発明の『有効期間TP』も、上記と同じく『「ディジタル情報」の記録時点から再生可能とする有効期間』と解されるものである。
したがって、引用発明の制御情報も、要件Eの前段の「前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報」を含んでいるといえ、この点、引用発明と相違しない。

オ-2 後段の「第2の制御情報」を含んでいる点について
引用発明は、本願発明でいう「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」を含んでおらず、この点、本願発明と相違する。

カ 要件D2について
引用発明は、上記オ-2でみたとおり、「主たるディジタル情報信号」の記録時点から有効期間TPを過ぎている場合は再生できなくし、記録時点から有効期間TP内であれば再生を可能とするものであり、
『有効期間TP』が指定されている場合にそのような制御がなされることも明らかであるから、
引用発明は、要件D2になぞらえ、かつ引用発明が備えていない要件を[]内に含めて記せば、
前記記録媒体に記録したディジタル情報を再生する際には、前記第1の制御情報[と前記第2の制御情報]により前記記録媒体上に保持できる有効期間[と再生開始後の有効期間と]が指定されている場合に、
前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内である[り、かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である]ときに、記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態と、
[一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、]前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているときに、記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態とを有する
とはいうことができるものの、
下線付きの[]内のようにはしておらず、この点、本願発明と相違する。

[4]一致点、相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであることが認められる。

[一致点]
A ディジタル情報を記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するディジタル情報記録再生装置において、
B 前記ディジタル情報と、前記ディジタル情報の制御情報とを受信する受信手段と、
C 受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生する記録再生手段と、
D 前記記録再生手段の記録再生動作を制御する制御手段とを備え、
E’ 前記制御情報は、前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報を含み、
D1:前記制御手段は、
前記記録再生手段において、受信した前記ディジタル情報を前記記録媒体に記録し、前記記録媒体から再生するように制御し、
D2’前記記録媒体に記録したディジタル情報を再生する際には、前記第1の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間が指定されている場合に、
前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であるときに、記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態と、
前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているときに、記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態とを有する
A :ことを特徴とするディジタル情報記録再生装置。

[相違点]
上記E’について、
本願発明では、
E’の「前記制御情報は、前記記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報を含み、」とする前記制御情報が、「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報とを含み」とするのに対して、
引用発明では、
そのような第2の制御情報を含む、とはしておらず、

上記D2’について
本願発明では、
D2’の「前記記録媒体に記録したディジタル情報を再生する際には、前記第1の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間が指定されている場合に、」とする場合が、
「前記第1の制御情報と前記第2の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間と再生開始後の有効期間とが指定されている場合に、」とし、
D2’の
・「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とする「とき」が、
「前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であり、かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であるとき」とし、
・「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とする「とき」が、
「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているとき」
とするのに対して、
引用発明では、
D2’の「場合」が、そのような「場合」ではなく、
D2’の「第1の制御状態」とする「とき」、「第2の制御状態」とする「とき」が、いずれもそのような「とき」ではない点

〈相違点の要点〉
上記相違点は、要すれば、
(i)本願発明では、引用発明が制御情報とする「記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報」に加えて、「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」も制御情報としていて、
(ii)引用発明でも行う「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とするか、「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とするかの制御を、
本願発明では、
「前記第1の制御情報と前記第2の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間と再生開始後の有効期間とが指定されている場合」、
上記「第1の制御情報」と「第2の制御情報」とに基づいて、
・引用発明が「(再生を可能とする)第1の制御状態」とするように制御するための条件としている「第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であること」(以下、『第1条件』という)に加え、「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」という条件(以下、『第2条件』という)も共に満たすとき、「(再生を可能とする)第1の制御状態」とするように制御する」とし、
・上記『第2条件』を満たしても上記『第1条件』を満たさないときは「(再生をできなくする)第2の制御状態」とするように制御する
とする点、
ということができる。

[5]相違点等の判断(容易想到性の判断)

(1)相違点の克服
引用発明を出発点とし、
引用発明の「制御情報」{q、rの(『有効期間TP』を含む)「インデックス信号」}が、「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」も含むとし、
これに伴い、
引用発明の、かかる「第1の制御情報」(『有効期間TP』)が指定されている場合を、
「第1の制御情報」(『有効期間TP』)と「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」とが指定されている場合に、とし、
「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とする「とき」が、
前記第1の制御情報(『有効期間TP』)により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であり、「かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であるとき」とし、
・「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とする「とき」が、
「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、」前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているとき
とすること(以下、〔相違点の克服〕という)で、
、上記[相違点]は克服され、本願発明に至る。

上記克服過程は、以下のようにいうこともできる。すなわち、
(i)引用発明に、制御情報として「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」を追加し(これにより、要件Eに至ることは明らかである)、
(ii)引用発明が行う「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とするか、「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とするかの制御を、
「前記第1の制御情報と前記第2の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間と再生開始後の有効期間とが指定されている場合」、
「第1の制御情報(『有効期間TP』)」と追加した「第2の制御情報」とに基づいて、
・引用発明が「(再生を可能とする)第1の制御状態」とするように制御するための条件としている「第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であること」(『第1条件』)に加え、「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」という条件(『第2条件』)も共に満たすとき、
「(再生を可能とする)第1の制御状態」とするように制御する」とし、
・上記『第2条件』を満たしても上記『第1条件』を満たさないときは「(再生をできなくする)第2の制御状態」とするように制御する、
と変更する
ことで本願発明に至る。

(なお、上記(ii)のようにもいうことができるのは、
上記(ii)の「第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であること」(『第1条件』)に加え、「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」という条件(『第2条件』)も共に満たすとき」とは、
本願発明の要件D2の
「前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であり、かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であるとき」と同じであり、
また、
上記(ii)の「上記『第2条件』を満たしても上記『第1条件』を満たさないとき」とは、
「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」を満たしても、「第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であること」を満たさない」とき、であり
本願発明の要件D2の
「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているとき」と同じであるからである。)

(2)相違点についての判断(〔相違点の克服〕の容易想到性)

ア 刊行物2から想定される技術事項
前掲(L1)?(L6),図2(特に請求項1,下線部)によれば、
刊行物2には、
「記録媒体に記録されている映像・音声などのデジタルデータの再生に制限を課すことができるデータ再生装置であって、
記録媒体からデジタルデータを再生する際に、記録媒体から再生履歴を読み出し、再生履歴が通常再生範囲内であれば、前記記録媒体から再生データを品質を劣化させずに通常に出力し、再生履歴が通常再生範囲を超えている場合は、品質の劣化した再生データを出力するもので、
再生履歴の通常再生の範囲の基準は、
(a)累積再生回数、
(b)累積再生時間、
(c)初回再生時刻からの経過時間、
(d)通常再生許可期限
などを用いる,再生装置。」
が認められる。

このものは、再生制限の制限態様を、(品質を劣化させずに通常に出力する態様に対する)品質の劣化した再生データを出力する態様としたものではあるが、刊行物2に接した当業者であれば、同時に、同じ制限条件で、再生制限の制限態様が、品質の劣化ではなく、(再生可能とする態様に対する)再生できなくする態様のものもごく普通に想定する。
すなわち、刊行物2に接した当業者は、刊行物2から下記の技術(以下、『引用技術2』という)もごく普通に想定する。

記〈『引用技術2』〉
「記録媒体に記録されている映像・音声などのデジタルデータの再生に制限を課すのに、記録媒体からデジタルデータを再生する際に、
再生履歴が通常再生範囲内であること、具体的には、
(a)累積再生回数が所定回数以内であること、
(b)累積再生時間が所定時間以内であること、
(c)初回再生時刻からの経過時間が所定時間以内であること、
(d)通常再生許可期限が所定期限以内であること、
などを条件に、再生を可能とするように制御し、
同条件を満たさない(再生履歴が通常再生範囲を超えている)ときは、
再生できなくするように
制御する技術。」

〈本願発明との対応〉
上記『引用技術2』の(c)の場合の「初回再生時刻からの経過時間が所定時間以内であること」とは、本願発明でいう「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」ことと同じことと理解され、
(c)の「所定時間」とは、本願発明でいう「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」ということができ、また、「第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間」ともいい得るものである。
また、『引用技術2』の「再生を可能」、「再生できなくする」の状態は、それぞれ、本願発明でいう「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」、「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」と同じであることも明らかである。
したがって、『引用技術2』の(c)は、本願発明の用語を用いていえば、下記の技術ということができる。
記(『引用技術2』の(c))
制御情報として、「記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」を用いて、
「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」という条件(前記『第2条件』)を満たすとき、「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とするように制御し、
満たさないとき、「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とするように制御する技術。

イ 周知事項・周知技術
一般に、再生に際して、特定の再生状況での再生だけを可能とするように再生制限をかけること、
そのような再生制限条件として採り得る具体条件には、時間的に制限する条件や再生回数を制限する条件等の種々の制限条件があることは、
上記刊行物2や下記各周知例等にもみられるように、本願出願時、ごく普通に知られた周知の事項であるところ、
異なる制限条件を組み合わせ、それらの条件を共に満たしたときだけ再生可能とするように制限を強化することも、当業者が普通に採用する周知の技術である。これには、例えば、下記周知例1?3が参照される。

記(周知例)
(1)周知例1:(特開平9-191453号公報)
{段落【0029】?【0035】,【0050】,【0053】?【0056】,【0061】,図16等、特に下記摘示箇所参照。
現在時刻が使用期限日時以前、かつ、使用回数≦使用上限回数のときだけ再生可能としている。
〈摘示〉
【0034】・・・さらに、上述した使用回数の制限と使用期限の制限を組み合わせて、あるプレイアウトセンタ3に対して、いつまでに何回まで使用可能とするという設定も有効である。加えて、番組プログラムの再生毎に再生した使用日時dyをデータ PESパケツトP3(又はS13)記録しておくようにしたことにより、使用日時dyを使用回数mを裏付ける管理情報として用いることができる。
【0054】・・・ここでp≧T、すなわち現在時刻Tが使用期限日時pを越えていない場合はステツプSP28に移つて PESパケツトに記録された使用上限回数nと使用回数mとを比較する。また使用期限日時pを越えている場合は、使用期限超過のメツセージを出力した後、番組プログラムの供給サービスを終了する。
【0056】・・・またステツプSP28でn<mすなわち使用回数mが上限を越えてしまつた場合はステツプSP32に移り、使用回数超過のメツセージを出力した後、番組プログラムの供給サービスを終了する。}

(2)周知例2:(特開平9-93561号公報)
{請求項16,19,段落【0156】【0157】【0166】【0175】【0182】,図11等参照。
再生回数<再生可能回数、かつ、再生時間<最大再生可能時間のときだけ、再生可能としている。}

(3)特開2000-20340号公報{段落【0052】?【0055】,図7等参照。
有効期限の範囲内、かつ、再生回数が有効回数の範囲内であるときだけ、再生するとしている。}

ウ 容易想到性の判断
『引用技術2』の(c)の「記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」も、引用発明の「記録媒体に記録されたディジタル情報の前記記録媒体上に保持できる有効期間を示す第1の制御情報」と同じく、特定の再生状況での再生だけを可能とするように再生制限をかけるための再生制限条件情報であるところ、
どのような具体的制限条件を採用するかは、基本、当業者が適宜に設定し得ることというべきであり、
また、異なる制限条件を組み合わせ、それらの条件を共に満たしたときだけ再生可能とするように制限を強化することも当業者によく知られたことにすぎないこと(上記イ)からすれば、
刊行物2に接した当業者であれば、上記「第1の制御情報」による記録後の有効期間だけで制限する再生制限を、『引用技術2』の(c)が示す再生開始後の有効期間でも制限をかけて、再生制限をより強化しようとする動機付けがあると言うべきである。
そして、そのように、引用発明の再生制限をより強化すべく『引用技術2』の(c)を組み合わせれば、自ずと、前記(1)で示した〔相違点の克服〕がなされることとなる。

すなわち、そのように組み合わせようとすれば、
(i)引用発明に、制御情報として「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」を追加することとなるのは、当然であり、
(ii)引用発明が行う「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とするか、「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とするかの制御を、
「前記第1の制御情報と前記第2の制御情報により前記記録媒体上に保持できる有効期間と再生開始後の有効期間とが指定されている場合」、
「第1の制御情報(『有効期間TP』)」と追加した「第2の制御情報」とに基づいて制御することとなることも当然であり、
・引用発明が「(再生を可能とする)第1の制御状態」とするように制御するための条件としている「第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であること」(『第1条件』)に加え、「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内である」という条件(『第2条件』)も共に満たすとき、
「(再生を可能とする)第1の制御状態」とするように制御する」とし、
・上記『第2条件』を満たしても上記『第1条件』を満たさないときは「(再生をできなくする)第2の制御状態」とするように制御する、
と変更することも、ごく、自然である。
(そのようにしなければ、『引用技術2』の(c)が示す再生開始後の有効期間でも再生制限をかけて再生制限をより強化することにならないことは明らかである。)

そして、その結果、前記〔相違点の克服〕、すなわち、
引用発明の「制御情報」{q、rの(『有効期間TP』を含む)「インデックス信号」}が、「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」も含むとし、
これに伴い、
引用発明の、かかる「第1の制御情報」(『有効期間TP』)が指定されている場合を、
「第1の制御情報」(『有効期間TP』)と「前記記録媒体に記録されたディジタル情報を再生した際の再生開始後の有効期間を示す第2の制御情報」とが指定されている場合に、とし、
「記録したディジタル情報の再生を可能とするように制御する第1の制御状態」とする「とき」が、
前記第1の制御情報(『有効期間TP』)により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間内であり、「かつ、一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であるとき」とし、
・「記録したディジタル情報の再生をできないように制御する第2の制御状態」とする「とき」が、
「一度再生してからの期間が前記第2の制御情報により指定されている再生開始後の有効期間内であっても、」前記第1の制御情報により指定されている前記記録媒体上に保持できる有効期間を終了しているとき
とすることとなって、
本願発明に至る。

エ まとめ(相違点についての判断)
以上、引用発明を出発点として、上記〔相違点の克服〕をすることで、本願発明の構成に至るところ、同克服は、刊行物1,刊行物2及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
効果についてみても、上記〔相違点の克服〕をする構成の採用に伴って予測し得ない格別顕著なものがあるとも認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

【第4】むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明,上記刊行物2に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-05 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-28 
出願番号 特願2010-275243(P2010-275243)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 洋介  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 酒井 伸芳
関谷 隆一
発明の名称 ディジタル情報記録再生装置、ディジタル情報記録再生方法、ディジタル情報送信方法、および、ディジタル情報送受信方法  
代理人 井上 学  

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