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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04M
管理番号 1278865
判定請求番号 判定2013-600022  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-10-25 
種別 判定 
判定請求日 2013-06-14 
確定日 2013-09-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3024093号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「多機能電話機」は、特許第3024093号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号物件の取扱説明書ならびにその写真に示す「携帯電話機 K011」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3024093号の請求項1の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その構成を符号を付して分説して記載すると次のとおりである。

「A.それぞれ電話機の機能に対応した複数のアイコンを所定の数だけ行列状に並べて表示する第1の表示部と、
B.前記第1の表示部に表示された行列状のアイコンの配列に対応して配列され前記行列状のアイコンと同数の第1の選択キーと、
C.相隣る前記行列状のアイコンを横方向または縦方向に順番に選択するよう操作する第2の選択キーと、
D.前記第1の選択キーまたは前記第2の選択キーで選択されたアイコンの機能を文字表示する第2の表示部と、
E.前記アイコンの表示及び機能文字表示を制御すると共に、選択されたアイコンを確定し、このアイコンに対応する機能を実行する制御部とを有する
F.ことを特徴とする多機能電話機。」

第3 イ号物件
(1)イ号物件の取扱説明書(甲第3号証)の62頁?63頁の記載によれば、イ号物件が、ディスプレイ、センターキー、ダイヤルキー(0?9、*、#)、セルフメニューキー、カーソルキーを具備する携帯電話機(「K011」)であることは明らかである。

(2)甲第3号証の78頁には、「お好みの機能やデータを登録することができます。」とされるセルフメニューをイ号物件のディスプレイに表示することについて記載されており、同頁の左欄の中央右には、複数のアイコンが行列状に並べられたセルフメニューが示されている。

(3)甲第3号証の62頁?63頁の記載によれば、イ号物件は、0?9、*、#のダイヤルキーを有しており、そのうち、1?9のダイヤルキーは横3個×縦3個に行列状に配列されていることが明らかである。

(4)甲第3号証の84頁には、イ号物件の基本的なキー操作について記載されており、同頁の「項目を選択するには」の項には、表示された項目を選択するには、カーソルキーの上下左右方向の操作で項目を選択してセンターキーを押す、と記載されている。そして、甲第3号証の80頁の「セルフメニューから機能やデータを呼び出す」の項には、センターキーにより項目を選択すると、選択した機能が起動する、と記載されている。すなわち、行列状の複数のアイコンを、上下左右の項目を選択するように操作するカーソルキーにより選択して、その機能を起動することが記載されているといえる。
ここで、カーソルキーを上(下)方向に操作すれば、上(下)方向、すなわち縦方向に相隣るアイコンを順番に選択でき、カーソルキーを左(右)方向に操作すれば、左(右)方向、すなわち横方向に相隣るアイコンを順番に選択できることは明らかである。

(5)甲第5号証の写真6には、イ号物件のセルフメニューにおけるアイコンの一つである「Cメール」をそのアイコンの右下に表示される「8」に対応する「ダイヤルキー 8」で選択することで起動された遷移画面が示されており、また、同アイコン「Cメール」をカーソルキーおよびセンターキーで選択しても同じ遷移画面が起動されることも記載されている。
ここで、ディスプレイの前記遷移画面の上部には、選択されたアイコン「Cメール」に関連する「Cメールメニュー」という文字が表示されていることが見てとれる。

(6)甲第5号証の写真5には、イ号物件のセルフメニューの表示画面が示されている。また、前記セルフメニューのアイコンをダイヤルキーで選択またはカーソルキーとセンターキーで選択することで、甲第5号証の写真6に示される遷移画面が起動されており、前記遷移画面には、選択されたアイコンに関連する文字(「Cメールメニュー」)が表示されている。
このようなイ号物件のディスプレイにおけるセルフメニューの表示や遷移画面におけるアイコンに関連する文字表示は、イ号物件である携帯電話が当然にして有する制御部(例えばCPU)の表示制御によるものであることは自明である。また、アイコンを選択することで遷移画面が起動しているが、これが前記制御部の制御により行われることは自明である。

甲第3号証ないし甲第5号証の記載事項、及び、判定請求書の請求人によるイ号物件の説明を総合すると、イ号物件は、本件特許発明の分説と対応するように分説すると、次のとおりである。

「a.複数のアイコンを所定の数だけ行列状に並べたセルフメニューを表示するディスプレイと、
b.横3個×縦3個の行列状に配列された1?9のダイヤルキーと、
c.相隣る前記行列状のアイコンを横方向又は縦方向に順番に選択するよう操作するカーソルキーと、
d.前記1?9のダイヤルキーで選択または前記カーソルキーとセンターキーでアイコンを選択することで起動される遷移画面の上部に選択されたアイコンに関連する文字を表示するディスプレイと、
e.前記セルフメニュー画面の表示および前記遷移画面の表示を制御すると共に、ダイヤルキーまたはカーソルキーとセンターキーでアイコンを選択することで前記遷移画面を起動させる制御部とを有する
f.携帯電話機。」

第4 対比・判断
イ号物件が本件特許発明に係る前記分説した各構成要件A.?F.を充足するか否かについて、以下に対比・判断する。

(1)構成要件A.の充足性について
イ号物件のセルフメニューにおいて表示される「アイコン」は、甲第3号証の78頁に示された、「カレンダー/スケジュール」、「アラーム」、「Cメール」等であり、それぞれのアイコンが、イ号物件の携帯電話機の「機能」に対応したものであることは明らかである。
ここで、イ号物件の「携帯電話機」、「ディスプレイ」は、本件特許発明の「電話機」、「第1の表示部」に相当するから、イ号物件の「複数のアイコンを所定の数だけ行列状に並べたセルフメニューを表示するディスプレイ」は、本件特許発明の「それぞれ電話機の機能に対応した複数のアイコンを所定の数だけ行列状に並べて表示する第1の表示部」に相当する。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件A.を充足する。

(2)構成要件B.の充足性について
甲第3号証の78頁左欄には、セルフメニューにおいて行列状に表示される複数のアイコンとして、横3個×縦4個のアイコンが示されているが、これは、甲第3号証の80頁?81頁に「セルフメニューはお好みの機能やデータを、いつでも呼び出して利用できるメニューです。」、「セルフメニューには、最大180件までの機能やデータを登録できます。」と記載されていることから、お好みに設定できるセルフメニューのアイコン表示の一例にすぎないことは明らかである。
そして、甲第3号証の80頁に記載のように、セルフメニューのサブメニューを利用すれば、イ号物件のディスプレイに行列状に表示されるアイコンやアイコンの数を「お好み」により所定の機能や数に設定することができることは明らかである。そのようにすれば、イ号物件において、セルフメニューを甲第5号証の写真5に示されるように、例えばアイコンの所定の数を9個として、ディスプレイに横3個×縦3個の行列状に表示することができるものである。この場合のアイコンのそれぞれの右下には1?9の番号のいずれかが表示されている。
一方、1?9のダイヤルキーは横3個×縦3個に行列状に配列され、それぞれのダイヤルキーの番号は左上から右下に昇順に付されている。これに対し、上述したように、イ号物件のディスプレイに表示されるセルフメニューのそれぞれのアイコンも、横3個×縦3個に行列状に配列され、それぞれのアイコンの右下に表示される番号も左上から右下に昇順に付されているので、1?9のダイヤルキーはアイコンの配列に対応して配列されているといえる。そして、ダイヤルキーの数とアイコンの数は同数である。
ここで、イ号物件の「ダイヤルキー」は、その1?9の各数字に対応したアイコンを選択することができるものであり、「選択キー」といえる。
以上のことから、イ号物件の「横3個×縦3個の行列状に配列された1?9のダイヤルキー」は、本件特許発明の「前記第1の表示部に表示された行列状のアイコンの配列に対応して配列され前記行列状のアイコンと同数の第1の選択キー」に相当する。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件B.を充足する。

(3)構成要件C.の充足性について
イ号物件の「カーソルキー」は、そのカーソルキーの上下左右方向の操作で項目を選択することができ、「選択キー」といえるものであるから、イ号物件の「相隣る前記行列状のアイコンを横方向又は縦方向に順番に選択するよう操作するカーソルキー」は、本件特許発明の「相隣る前記行列状のアイコンを横方向または縦方向に順番に選択するよう操作する第2の選択キー」に相当する。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件C.を充足する。

(4)構成要件D.の充足性について
(4-1) まず、イ号物件における「選択」と、本件特許発明における「選択」について対比する。
本件特許発明における「選択」は、アイコンが選択されていてアイコンに対応する機能が実行されていない状態を指しており、アイコンに対応する機能を「実行」するには「選択」した後にアイコンを「確定」する操作が必要がある。
これに対し、イ号物件における「選択」は2つの意味で用いられている。すなわち、甲第3号証の84頁の「基本的なキー操作を覚えよう」の「項目を選択するには」には、メニューに1?#などが表示されている場合は、そのキーを押しても選択できるとの記載があり、このような1?9のダイヤルキーにおけるアイコンの「選択」を行うと、アイコンに対応する機能が直ちに「実行」されることになるので、このイ号物件の「選択」は、本件特許発明の「選択」及び「確定」に相当する。また、甲第3号証の84頁の「基本的なキー操作を覚えよう」の「項目を選択するには」には、表示された項目を選択するにはカーソルキーで項目を選択して決定キーを押すとの記載があり、同80頁の「セルフメニューから機能やデータを呼び出す」の「2 項目を選択」には、決定キーを操作することで、選択した機能が起動するとされているから、カーソルキーによる「選択」は本件特許発明の「選択」に相当するが、決定キーによる「選択」は本件特許発明の「確定」に相当する。
上記の検討を踏まえれば、イ号物件の「前記1?9のダイヤルキーで選択または前記カーソルキーとセンターキーでアイコンを選択することで起動される遷移画面」は、本件特許発明でいう「選択」により表示されたものではなく、本件特許発明でいう「確定」により「実行」されて表示されたものであるから、その遷移画面の上部に表示される「アイコンに関連する文字」は、本件特許発明の「選択されたアイコンの機能を文字表示」したものに相当しない。

(4-2) さらに、イ号物件においてアイコンを「選択」することにより起動される遷移画面の上部において表示される「アイコンに関連する文字」について検討する。
例えば、「Cメール」のアイコンを選択することで起動される遷移画面には、甲第5号証の写真6に示されるように「Cメールメニュー」という「アイコンに関連する文字」が表示されているが、これは、「Cメール」のアイコンの機能を文字表示したものとは認められない。
すなわち、「Cメールメニュー」の文字表示は、「Cメール」のアイコンを選択することで起動される遷移画面がどのような画面であるのか、すなわち、番号1?5を付して記載される各文字表示(例えば「1 新規作成」)が「Cメール」に係るメニュー項目であることを判別させるための文字表示であって、「Cメール」のアイコンの機能を文字表示したものとは認められない。(「Cメール」のアイコンの機能を文字表示するのであれば、簡潔に「Cメール」との文字表示か、もしくは、Cメールがどのようなものであるのかを判別させるするような文章による文字表示となるものと認められる。)
このように、遷移画面の上部において表示される「アイコンに関連する文字」は、本件特許発明の「選択されたアイコンの機能を文字表示」したものに相当しない。

(4-3) 一方、イ号物件のセルフメニューの表示画面には、甲第3号証の78頁の左欄の中央右や甲第5号証の写真5に示されるように複数のアイコンが表示されており、例えば「Cメール」のアイコンに関してみれば、そのアイコンは封筒を模した絵柄の右下に「C」の文字が付された図形として表現されており、その図形の下部に「Cメール」という文字表示が為されている。さらに他のアイコンを見れば、「カレンダー/スケジュール」のアイコンと「アラーム」のアイコンの両アイコンは、カレンダーと時計を組み合わせた絵柄の図形として同様に表現されており、それぞれのアイコンの下部に「カレンダー/スケジュール」、「アラーム」という文字表示が為されている。
携帯電話機の使用者は、これらのアイコンの図形を見ただけではそのアイコンを選択して起動することによりどのような機能が実行されるのか判別が困難であり、使用者はそれらのアイコンの下部に為された文字表示によりその機能を判別するものと認められる。すなわち、アイコンの下部の文字表示は、本件特許発明における「アイコンの機能を文字表示」したものに相当するといえる。
しかしながら、アイコンの下部の文字表示は、アイコンを選択せずとも表示されているものであるから、本件特許発明の「選択されたアイコンの機能を文字表示」したものに相当しない。

(4-4) 上記(4-1)ないし(4-3)にて検討したとおり、イ号物件では、「選択されたアイコンの機能を文字表示」していないので、そのような「選択されたアイコンの機能を文字表示」するとされる本件特許発明の「第2の表示部」に相当する表示部もしくは表示領域をイ号物件は具備しない。これは、すなわち、イ号物件が、本件特許発明が解決しようとする「選択したアイコンが何の機能を実行するのかを使用者が判別するのが困難である問題」という課題(本件明細書の段落【0004】)をそもそも有していないため、その課題を解決する「選択されたアイコンの機能を文字表示する第2の表示部」という構成を具備する必要がないことに起因している。
以上のことから、イ号物件の構成d.の「前記1?9のダイヤルキーで選択または前記カーソルキーとセンターキーでアイコンを選択することで起動される遷移画面の上部に選択されたアイコンに関連する文字を表示するディスプレイ」を含めイ号物件には、本件特許発明の「前記第1の選択キーまたは前記第2の選択キーで選択されたアイコンの機能を文字表示する第2の表示部」に相当する構成がない。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件D.を充足しない。

(5)構成要件E.の充足性について
イ号物件のセルフメニューの表示画面には、複数のアイコン(例えば「Cメール」)、が表示されている。一方、前記遷移画面の文字(例えば「Cメールメニュー」)は、上記(4)で判断したとおり「機能文字」ではないものの、前記セルフメニューの表示画面の各アイコンの下部に表示される文字(例えば、「Cメール」)は「機能文字」といえるから、イ号物件が当然に有していると認定できる制御部(例えばCPU)は、アイコンの表示と機能文字表示を制御しているといえる。
また、イ号物件では、前記セルフメニューのアイコンをダイヤルキーで選択またはカーソルキーとセンターキーで選択することで遷移画面を起動しているが、上記(4)で判断したとおり、「起動」に係るイ号物件の「選択」は、本件特許発明の「確定」に相当するから、イ号物件が当然に有していると認定できる制御部(例えばCPU)は、ダイヤルキーで「選択」されたアイコンを同時に「確定」し、または、カーソルキーで「選択」されたアイコン(例えば「Cメール」)をセンターキーで「確定」し、このアイコンに対応する遷移画面を起動するという制御、すなわち、「アイコンを確定し、このアイコンに対応する機能を実行する制御」を行っているといえる。
以上のことから、イ号物件の「前記セルフメニュー画面の表示および前記遷移画面の表示を制御すると共に、ダイヤルキーまたはカーソルキーとセンターキーでアイコンを選択することで前記遷移画面を起動させる制御部」は、本件特許発明の「前記アイコンの表示及び機能文字表示を制御すると共に、選択されたアイコンを確定し、このアイコンに対応する機能を実行する制御部」に相当する。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件E.を充足する。

(6)構成要件F.の充足性について
イ号物件の「携帯電話機」は、セルフメニューに表示された複数のアイコンを選択することにより、選択したそれぞれのアイコンに対応する機能を起動できる多機能な携帯電話機であるから、本件特許発明の「多機能電話機」に相当する。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件F.を充足する。

第5 むすび
以上のとおり、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件を充足しないから、イ号物件は本件特許発明の技術範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2013-09-09 
出願番号 特願平10-45236
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 新川 圭二
山中 実
登録日 2000-01-21 
登録番号 特許第3024093号(P3024093)
発明の名称 多機能電話機  
代理人 早田 尚貴  
代理人 古城 春実  
代理人 前田 穂波  

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