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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E05B
審判 全部無効 2項進歩性  E05B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E05B
管理番号 1279071
審判番号 無効2010-800013  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-01-20 
確定日 2013-10-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第4008302号「ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵」の特許無効審判事件についてされた平成23年8月30日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10322号平成24年3月7日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成14年 8月 5日 本件出願(特願2002-226833号)
(優先権主張番号:特願2001-31688
5号,優先日:平成13年10月15日)
平成19年 9月 7日 本件特許の設定登録
(特許第4008302号)
平成22年 1月20日 本件無効審判請求
(無効2010-800013号)
平成22年 4月19日 答弁書提出(被請求人)
平成22年 6月11日 審理事項通知書
平成22年 8月 5日 口頭審理
平成22年11月 8日 無効審決(請求項1?3を無効とする。)
平成22年12月16日 被請求人による知的財産高等裁判所出訴
(平成22年(行ケ)第10391号)
平成23年 1月18日 訂正審判請求
平成23年 2月 7日 差戻し決定(平成22年11月8日付け無効審決取消)
(平成22年(行ケ)第10391号)
平成23年 2月14日 訂正請求のための期間指定通知
平成23年 3月 4日 被請求人による訂正請求書提出
平成23年 4月12日 請求人による弁駁書提出
平成23年 4月28日 訂正拒絶理由通知,職権審理結果通知
平成23年 6月 6日 被請求人による補正書,意見書提出
平成23年 8月30日 無効審決(請求項1?3を無効とする。
訂正請求は全てにおいて認められない。)
平成23年10月 6日 被請求人による知的財産高等裁判所出訴
(平成23年(行ケ)第10322号)
平成23年10月27日 訂正審判請求
(訂正2011-390118号)
平成23年12月20日 訂正審判審決(訂正することを認める。)
(訂正2011-390118号)
平成24年 3月 7日 判決(平成23年8月30日付け無効審決取消)
(平成23年(行ケ)第10322号)
平成24年 4月 2日 訂正を認める審決の確定の通知書
平成24年 5月 7日 請求人による意見書提出
平成24年 5月30日 被請求人による意見書提出
平成24年 7月11日 審尋,書面審理通知
平成24年 7月17日 被請求人よる回答書提出
平成24年 7月26日 請求人よる回答書提出


第2 請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は,請求書,口頭審理陳述要領書,弁駁書及び意見書において,「特許第4008302号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし,甲第1?25号証を提出して,次の無効理由を主張する。

【1】無効理由の概要
〔1〕第1の無効理由(進歩性の欠如)
[特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号)]
本件特許の請求項1乃至3に係る発明(以下,当審では「本件特許発明1」?「本件特許発明3」という。)は,甲第1号証記載の発明及び周知技術に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

<具体的主張>
1.本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点は,次の2つである。
(相違点1)本件特許発明1は,剛性を高めるために環状に成形したロータリーディスクタンブラーを用いているのに対して,甲第1号証記載の発明は,C字状のレバータンブラーを用いている点。
(相違点2)タンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させることについて,本件特許発明1は,ロータリーディスクタンブラーの係合突起と合鍵のブレードの窪みとの係合により行っているのに対して,甲第1号証記載の発明は,係合突起と窪みとの係合により行っていない点。

2.相違点1について,環状に成形したロータリーディスクタンブラーは,甲第9乃至第13号証に記載されているように周知技術であり,剛性が向上するという効果は,タンブラーのタイプが異なっても変わるものではなく,甲第9乃至第13号証の環状のタンブラーを甲第1号証記載の発明のタンブラーとして採用することは,当業者にとって容易である。また,甲第11号証には,一点を中心に揺動するタンブラーが環状である点が開示されている。

3.相違点2について,摺り鉢型の窪みを有するいわゆるディンプルキーは,甲第2乃至第8号証に記載されているように周知技術であり,相違点2に係る合鍵とディスクタンブラーとの係合構成は周知であり,該周知技術を甲第1号証記載の発明に採用することは,容易である。

4.本件特許発明2の具体的な無効理由は,本件特許発明1と同様である。

5.本件特許発明3と甲第1号証記載の発明との相違点は,相違点1及び2に加えて,
(相違点3)本件特許発明3は捩りコイルばねであるのに対して,甲第1号証記載の発明は板ばねである点。
において相違しているが,捩りコイルばねは甲第15乃至第21号証にも記載されているように,汎用的なばねであり,これを甲第1号証記載の発明に適用することは,単なる設計変更にすぎない。


〔2〕第2の無効理由(進歩性の欠如)
[特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号)]
本件特許発明2は,結局のところディンプルキーであるから,甲第2乃至第8号証に記載の発明と同一であり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。


〔3〕第3の無効理由(明細書の記載不備)
[特許法第36条第4項,同条第6項第2号(特許法第123条第1項第4号)]
本件特許発明2は,明細書に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないか,もしくは特許を受けようとする発明が明確ではなく,特許法第36条第4項または同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,その特許は,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。


なお,平成24年7月11日付けの審尋に対する同年7月26日付けの回答書において,平成24年5月7日付けの意見書の主張は請求の理由の要旨を変更する補正ではなく,意見書の「第3」は第1回口頭審理調書の「3」に示された無効理由の(1)に関する意見であると回答しているので,当該意見書の主張は「〔1〕第1の無効理由」に関する意見であると認める。


【2】証拠方法
<審判請求書に添付>
甲第 1号証:特開平9-144398号公報
甲第 2号証:実公平6-28616号公報
甲第 3号証:実公昭55-32998号公報
甲第 4号証:意匠登録第965697号公報
甲第 5号証:意匠登録第1110356号公報
甲第 6号証:実願昭57-149628号(実開昭59-51958
号)のマイクロフィルム
甲第 7号証:実願平4-89007号(実開平6-51443号)の
CD-ROM(但し,請求人は「実開平6-51443
号公報」と表示。)
甲第 8号証:実公昭51-15730号公報
甲第 9号証:特開2000-96889号公報
甲第10号証:特開昭62-194374号公報
甲第11号証:実願平5-42779号(実開平7-14041号)の
CD-ROM(但し,請求人は「実開平7-14041
号公報」と表示。)
甲第12号証:特開昭62-189269号公報
甲第13号証:特開平6-346639号公報
甲第14号証:特開平9-41742号公報

<口頭審理陳述要領書に添付>
甲第15号証:「工業大事典 15 ハケ-フタ」,下中邦彦編集,19
61年12月23日,平凡社発行,85頁,
「〔コイルばね〕helical spring」の項
甲第16号証:「商品大辞典」,石井頼三外5名編,昭和58年5月2
0日,東洋経済新報社,第6刷発行,172頁,
「コイルばね(coiled spring)」の項
甲第17号証:「図解 機械用語辞典 第3版」,工業教育研究会編,
1993年11月30日,日刊工業新聞社,第3版1刷
,186-187頁,
「コイルばね coiled spring,helical spring」の項
甲第18号証:「広辞苑」,新村出編,昭和50年9月25日,株式会
社岩波書店,第2版第9刷発行,725頁,
「コイルばね【コイル発条】(coiled spring)」の項
甲第19号証:実願平3-104745号(実開平6-65631号)
のCD-ROM(但し,請求人は「実開平6-6563
1号公報」と表示。)
甲第20号証:特開平6-248843号公報
甲第21号証:特開2000-87610号公報
甲第22号証:実公昭59-19099号公報
甲第23号証:「MIWA 総合カタログ 2008年版」,63-6
5頁,「シリンダーの種類」の項

<弁駁書に添付>
甲第24号証:実公昭59-19099号公報(甲第22号証と同じ)

<平成24年5月7日付け意見書に添付>
甲第25号証:平成22年(ワ)第24818号特許差止等請求事件判決


第3 被請求人の答弁
被請求人は,訂正請求書,答弁書,口頭審理陳述要領書及び平成23年6月6日付け意見書等において,「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」ことを答弁の趣旨として,次のように反論する。

【1】第1,2の無効理由に対して
本件特許発明1乃至3は,甲第1号証記載の発明及び周知技術に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<具体的主張>
1.請求人の主張する相違点1及び2は認める。

2.相違点1について,甲第9乃至第13号証に記載された環状のディスクタンブラーが周知技術であることは認めるが,本件特許発明1の1ヵ所が軸支され,他端に解錠切欠が形成されたロータリーディスクタンブラーとは異なるものである。たとえ,環状のディスクタンブラーが周知であったとしても,甲第9乃至第13号証に記載された環状のディスクタンブラーを甲第1号証記載の発明のタンブラーとして採用する考えが公知ではないから,甲第1号証記載の発明に周知技術を適用することは,当業者にとって容易ではない。

3.相違点2について,本件特許発明1の(摺り鉢型の)窪みを有するいわゆるディンプルキーが,甲第2乃至第8号証に記載されているように周知技術であることは認めるが,甲第2乃至第8号証のディンプルキーを甲第1号証記載の発明の鍵として採用する考えが公知ではないから,甲第1号証記載の発明に周知技術を適用することは,当業者にとって容易ではない。

4.本件特許発明1が特許性を有するのであるから,当然,本件特許発明2及び3も特許性を有するものである。また,相違点3について,捩りコイルばねが周知技術であることは,周知例を挙げるまでもないが,これを甲第1号証記載の発明に採用する考えが公知ではないから,甲第1号証記載の発明に周知技術を適用することは,当業者にとって容易ではない。


【2】第3の無効理由(明細書の記載不備)に対して
本件特許発明2は,本件特許明細書に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており,また,特許を受けようとする発明が不明りょうではない。


第4 本件特許発明
本件特許(特許第4008302号)に対して,平成23年10月27日に請求された訂正審判(訂正2011-390118号)は,平成23年12月20日の審決で訂正することが認められ,確定登録されたので,本件特許発明1乃至3は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔4を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の突出量が一定である前記係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠。

【請求項2】
内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,
この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。

【請求項3】
上記ロータリーディスクタンブラーを捩りコイルばねによって付勢するようにしたことを特徴とする請求項1記載のロータリーディスクタンブラー錠。」
なお,当審にて見やすいように改行を行った。


第4 無効理由に対する判断

【1】第1,2の無効理由(進歩性の欠如)について
[1] 文献記載事項
本件特許(特許第4008302号)に関して,上記「【2】証拠方法」で示された文献である甲第1号証乃至24号証からみて,特許法第29条の要件を満たしているか検討する。ここで,甲第25号証は特許差止等請求事件の判決であって,本件特許の優先日より後の文献であるため特許法第29条の刊行物に相当する証拠ではない。
甲第1号証乃至24号証の記載事項は,以下のとおりである。

1.甲第1号証(特開平9-144398号公報)
甲第1号証には,「リバーシブルキー及びその製作方法」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,レバータンブラー錠用のリバーシブルキー及びその製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のレバータンブラー錠用のリバーシブルキー,すなわち,任意数のC字状のレバータンブラーに当接して各レバータンブラーを解錠位置に整合変位させるための選択された深さの刻みを,平板状のキー本体の両側辺に設けたリバーシブルキーとしては,図12に示されるようなものが知られている。
【0003】リバーシブルキーは,そのキー本体の平板面14,14の表裏を逆にしても鍵孔に挿入することができ,かつ錠を施解錠することができる利便さがある。
【0004】しかしながら,図12に示す従来のリバーシブルキーにおいては,両側辺で対をなす刻み20,20の谷の底部30,30が,キー本体の平板面14,14と直角をなしかつキー本体の中心軸線lを含む平面Pに関し互に平行をなすように形成され,また,キー本体の横断端面が前記平面Pに関し面対称をなすように形成してある。
【0005】その為,一つには,ならい鍵切り機等により複製が不正に行われ易いこと,他の一つには,レバータンブラー錠でC字状のレバータンブラーを表裏逆に入れても(レバータンブラーは,鍵違いを増やす為,それを表裏逆にしてC字状又は逆C字状として装着できるようにしてある),同じリバーシブルキーによって施解錠可能であるから鍵違い数の減少が余儀なくされることなど,未解決の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明はレバータンブラー錠用として提供されるリバーシブルキーは,前記の問題を悉く解決しようとするものである。すなわち,キー本体の刻みの形状を新規なものに変えることによって複製をしにくくし,かつ鍵違い数の減少を排除することを目的とする。」
(1b)「【0011】
【発明の実施の形態】以下,図面に示す実施例に基いてこの発明について説明する。図1?図3において,符号1はつまみ11及び平板状のキー本体12から成るリバーシブルキー,13はキー本体12の長さ方向に沿ってその平板面14,14に設けた横断面を任意形状としたウォードである。…
【0012】この発明のリバーシブルキー1が差し込まれて用いられるレバータンブラー錠2は,図3?図6に示すように,内周面の母線に沿ってカム溝21を形成した外筒22と,その外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を隔てて列設された複数の仕切板23を備えると共に,前後方向に鍵孔24を貫通させた内筒部25と,その内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の半径方向に移動可能に装着されると共に,押しばね26により外方に向け付勢されたロッキングバー27とを有する。
【0013】そして,前記の仕切板23が形成する複数のスロット内に,それぞれの先端部分にロッキングバー27を選択的に受け入れる解錠切欠き28を形成したC字状のレバータンブラー29を支軸31で枢着し,各レバータンブラー29は,鍵孔24に差し込まれるキーの側辺部と干渉する方向にタンブラーばね32で付勢される。
【0014】レバータンブラー錠は,合鍵が鍵孔24に挿入されたとき,これらのタンブラー群29のそれぞれが鍵孔24に挿通された合鍵の対応する刻みと係合し,各タンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしてある。
【0015】そしてその状態で合鍵を回すと,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27が内筒半径方向に移動するので,バックアップピン33を含み,前方のキーガイド34,仕切板23,周囲を囲むリテーナ35及び後方の尾栓36等から成る内筒部25は全体として解錠方向又は施錠方向に回動できる。
【0016】なお,前記のC字状のタンブラー29はその開口部を任意に逆方向に向けて,換言すれば逆C字状をなすようにして装着され得ることは言うまでもない。
【0017】このようなレバータンブラー錠は実公昭59-19099号公報又は特公昭60-6432号公報等にも示され周知であるから,構造や作動についての更に詳しい説明は省略する。」
(1c)「【0018】この発明に係るリバーシブルキーに戻って説明を加えると,そのキーの特徴はキー本体12の両側辺に共に設けた刻みにある。
【0019】キー本体12の両側辺において中心軸線lと直角をなす平面上で対をなすようにして設けた刻みの谷の底部3,3aは,図2に明示するように,キー本体12の厚さ方向でともに傾斜させてあり,一対の谷の底部3,3aの傾斜は,図2に示す平面P,すなわち,キー本体12の平面板14,14と直角をなしかつキー本体12の中心軸線lを含む平面,に関し互に逆向きにしてある。
【0020】言い換えると,前記の対をなす谷の底部3,3aにおける傾斜は,キー本体12の平板面14,14と直角をなしかつキー本体12の中心軸線lを含む平面Pに関し面対称ではなく,キー本体12の横断端面において点対称をなすように形成されている。
【0021】更にまた,傾斜させた各谷の底部3(3a)は図示例では内に凸の曲面に形成してある。底部3(3a)の傾斜面をこのように曲面にすると,キーの不正な複製を一層難しくするが,その傾斜面は平面としてもよい。
【0022】キー本体12の各刻みにおける底部3(3a)の傾斜面は,それが対応するタンブラー29の正面形の違いに応じて形成されるが,例えば,図2に示すように,切削前のキー本体(図7に示す鍵材10の本体のこと)に対しある定点Aを通る直線がその定点Aを中心として角度を変えた時,キー本体(12)の一側辺の稜線とぶつかる直線AOを基準として,角度を変える直線がキー本体(12)をよぎる角度的深さd1,d2,・・・dnを対応するタンブラー29の種類に応じて選択し,その深さdnの刻みを切削する。図2で示す谷の底部3,3aの深さはd2である。
【0023】前記のような構成のこの発明のリバーシブルキーは,両側辺で対をなす1組の刻みにおいても鍵違いを生ずる。その鍵違いについて図5及び図6で説明する。
【0024】図5に示すレバータンブラー29はC字状をなすように装着されており,また,図6に示すレバータンブラー29は同じ列で正面形が同じものを表裏を逆にして逆C字状をなすようにして装着してある。
【0025】図5のC字状のタンブラー29は,本発明のキーにおける長さ方向の所定位置の刻みで押されて解錠切欠き28が解錠位置に至っているが,図6の逆C字状のタンブラー29は同じキーを用いても傾斜している刻みの底部3aの浅い部分が衝接することになる。
【0026】その為,図12の従来のリバーシブルキーとは異なり,解錠切欠き28は解錠位置を占めることにはならず,内筒部25は外筒22に対し回動不能である。このことは本発明のキーがリバーシブルであるに関わらず,鍵違い数の減少を排除していることを示している。」
(1d)「【0029】前記の鍵材10は,図8に示すように,特定の固定した軸線mの回りに揺動可能に設けたワーク台4に対して着脱可能に固定する。ワーク台4上の鍵材10はその平板面14,14がワーク台4の軸線mに対し平行をなすようにして取り付ける。
【0030】そして,ワーク台4上の鍵材10におけるキー本体の一側辺を,ワーク台4の軸線mと平行をなす特定の固定した別の軸線rの回りに回転する円板状の回転刃5に押し付ける。回転刃5の刃先にはキーの刻みにおける誘導斜面6,6aを形成するためのテーパ部51を備えている。
【0031】そこで,図9に示すように,キー本体12に対して設けるべき所要の刻みについて谷の底部3を内に凸の曲面として直線AOを基準とする選択された深さdn(図9でd3)の斜面に切削形成する。
【0032】この際,誘導斜面6が同時に形成される。但し,この誘導斜面6はキー本体12の幅方向並びに軸線方向の両方向に対し傾斜して形成される。勿論,キー本体12の一側辺の他の刻みについても同様にして切削形成する。」
(1e)「【0037】
【発明の効果】以上に説明したこの発明のリバーシブルキーによれば,両側辺の刻みにおける対をなす谷の底部を互に逆向き傾斜面に形成してあるから,不正な複製を困難にするほか,リバーシブルキーにしたことによる鍵違い数の減少を排除できる効果を奏する。
【0038】また,前記底部の斜面を曲面としたものは,不正な複製を更に難しいものとする。
【0039】更に,この発明では,傾斜させた谷の底部を内に凸の曲面とした特殊なリバーシブルキーを正確にして効率よく製作する方法を提案している。」
(1f)
「図1」

「図2」

「図3」

「図4」

「図5」

「図6」


(1g)そして,特に,上記(1b)の記載を参照して,上掲の図1?6をみると,
カム溝21が略V字形の横断面形状であること,複数の仕切板23が錠の中心軸線方向に間隙を介して積層されて内筒部25に設けられていること,鍵孔24が錠の中心軸線に沿って貫通されて内筒部25に設けられていることは,何れも明らかであり,
また,ロッキングバー27が,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されて装着されるものであって,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるように,内筒部25の中心軸方向に移動するものであることは,明らかであり,
さらに,レバータンブラー29が,その中央部に鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠が形成されて,この鍵挿通切欠の開口端縁に鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部が設けられ,この係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢されると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止するものであって,その実体部の1ヵ所としての一端部が内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支されると共に,その実体部としての先端部分が鍵挿通切欠を挟んで支軸31と対峙する円弧の一部をなす自由端部となっており,その外側端縁に解錠切欠き28が形成されるものであることは,明らかである。
そして,係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合することも明らかである。
また,(1c)の【0021】,【0022】の記載,及び(1f)の図5からみて,係合縁部は凸状であって,開口端縁に一体的に突設されていると認められる。

上記(1a)?(1g)の記載及び当業者の技術常識によれば,甲第1号証には,次のような,レバータンブラー錠の発明(以下,「甲1発明1」という。),及び,レバータンブラー錠用の鍵の発明(以下,「甲1発明2」という。),が記載されているものと認められる。
なお,甲1発明2は鍵の発明であるが,本件特許発明2との比較のために便宜的に鍵に影響しない錠の構成も記載する。

<甲1発明1>
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と,
この外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と,
この内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し,
上記仕切板23の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し,
一方,鍵挿通切欠の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部を一体的に突設し,
各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,
他方,これらのレバータンブラー29群の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるようにした
レバータンブラー錠。」

<甲1発明2>
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と,
この外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と,
この内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し,
上記仕切板23の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し,
一方,鍵挿通切欠の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部を設け,
各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,
他方,これらのレバータンブラー29群の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしたレバータンブラー錠用の合鍵であって,
鍵孔24に挿入されたときレバータンブラー29の係合縁部と整合するキー本体12の部位に,谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みを形成し,この刻みが係合縁部と係合したとき,各レバータンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるようにした
レバータンブラー錠用の鍵。」

2.甲第2号証(実公平6-28616号公報)
甲第2号証には,「ディスクタンブラ型シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(2a)「(作用)
このシリンダ錠装置では,内筒5の鍵孔7に鍵板9を挿入すると,鍵板9の操作凹部13又は操作凹部14(当審注:「操作凹部12又は操作凹部13」の誤り。以下同様。)或いは該操作凹部間の鍵板側面に各受動突起14が押されて,各ディスクタンブラ2が内筒5の受溝6に沿って上下摺動し,鍵板9が所定長さだけ充分に挿入された段階では,特定のディスクタンブラ2の受動突起14が特定の操作凹部13,14に係合する。
これによって各ディスクタンブラ2の錠止端部が錠本体1の溝部3,4から脱出するため,錠本体1に対する内筒5の錠止が解除され,内筒5は錠本体1内で回転可能となる。そこで,鍵板9を所定方向に回すと,止め金板20が解錠位置に回動し,固定枠体に対する取付パネル23の施錠が解除される。」(4欄18?31行)
(2b)「前記鍵孔7も該横方向中心線l1に関して上下対称で該縦方向中心線l2に関して左右対称に形成されている。」(5欄3?4行)
(2c)「(考案の効果)
以上のように本考案のディスクタンブラ型シリンダ錠装置では,内筒5の受溝6を上下対称及び左右対称に形成し,該受溝6の中央部に鍵孔7を貫通させ,バネ受孔8を該鍵孔7の上下両側部分の中央部に縦長に設け,ディスクタンブラ2の外周形状を左右対称に形成し,該ディスクタンブラ2の中央部に鍵板9の挿入用透孔10を設け,バネ受切欠11を該透孔10の錠止端部2a側の孔縁部中央に縦長に設け,錠止端部2aとは反対側の透孔10の孔縁部に受動突起14を左右一側にずらせて突設してあるため,受溝6に対するディスクタンブラ2の組込み方向が一方向に限定されず,複数枚のディスクタンブラ2の一部又は全部を上下半転して挿入したり,表裏半転して挿入したり,上下半転と表裏半転を共にして挿入することができ,これによって複数の受動突起14で形成されるキーウェイを様々に変更することができ,鍵違いを飛躍的に多くすることができる。」(6欄1?17行)
(2d)そして,第3,4,6?9図等をみると,ディスクタンブラ2の挿入用透孔10の孔縁部に受動突起14が一体に突設されていること,また,鍵板9の操作凹部12,13が有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成されていることは,明らかである。

3.甲第3号証(実公昭55-32998号公報)
甲第3号証には,「解錠装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(3a)「鍵1の側面に任意位置と任意深さに解錠穴2a,2b,2c……を設け,錠前3のシリンダー4に鍵孔5を穿設し,該鍵孔5に直交する方向を有する数個のタンブラー嵌入孔9を穿設し,該タンブラー嵌入孔9にタンブラー6を発条7を介して埋設し,該タンブラー6に前記鍵1の解錠穴に適合すべき位置と突出度を夫々有し,該解錠穴に挿入可能に先端を先細状に成形した解錠穴と同数の解錠突起8を錠前3の鍵孔5方向に突出するよう斜状に突設したことを特徴とする解錠装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(3b)「本案は鍵に解錠穴と又之に適合すべき斜状の突起を錠前のタンブラーに設け,両者の複雑な適合によつてのみ解錠出来る様にした解錠装置に係るもので,使用者以外の者の解錠の困難な解錠装置を提供せんとするものである。」(1欄27?31行)
(3c)「…タンブラー6の中央部には下方より鍵貫通孔15を穿設する。該鍵貫通孔15に解錠突起8を,該孔15を一部遮る如く突設する…」(2欄33?35行)
(3d)そして,第2?4図をみると,タンブラー6の鍵貫通孔15の開口端縁に先端を先細状に成形した解錠突起8が一体に突設されていること,また,鍵1の解錠穴2a,2b,2cが有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成されていることは,明らかである。

4.甲第4号証(意匠登録第965697号公報)
甲第4号証には,正面図,背面図,B-B線断面図等をみると,ブレードに有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成した「電気機器用錠の鍵」が記載されている。

5.甲第5号証(意匠登録第1110356号公報)
甲第5号証には,【山切り加工状態を示す参考正面図】をみると,ブレードに有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成した「鍵材」が記載されている。

6.甲第6号証(実願昭57-149628号(実開昭59-51958号)のマイクロフィルム)
甲第6号証には,「シリンダ錠の鍵」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「鍵(A)は断面大略矩形状の帯板状で,その鍵片部における側面(A1)に鍵部(10)を,ピンタンブラ(6)をレベル合致状態に作動し得るよう所定の深さ関係に凹設する,一方板面(A2)にはその両面に鍵部(11)(11)を,ピンタンブラ(7)(7)をレベル合致状態に作動し得るよう所定の深さ関係に凹設する。
各鍵部(10)(11)(11)は夫々大略倒円錐台形状に凹設形成する。」(明細書4頁3?10行)

7.甲第7号証(実願平4-89007号(実開平6-51443号)のCD-ROM)
甲第7号証には,「シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【0012】

鍵孔11に挿入されるキーKは,先端に傾斜面14が形成され,挿入されたときに各タンブラピン13と相対するディンプル15a?15eが設けられる(図2及び図4参照)。
【0013】
ディンプル15a?15eは,小判形状のアウトラインをもった凹状に形成され,底面には楔状の斜面を有する楔状凹部16が設けられる(図5参照)。
楔状凹部16の向きは,それぞれキーの幅方向に対して設定した角度を有し,本実施例では,ディンプル15aの楔状凹部16は反時計方向に15度,ディンプル15bの楔状凹部16は時計方向に15度,ディンプル15cの楔状凹部16は反時計方向に30度,ディンプル15dの楔状凹部16は0度,ディンプル15eの楔状凹部16は時計方向に15度の角度を有する(図4参照)。」

8.甲第8号証(実公昭51-15730号公報)
甲第8号証には,「シリンダー錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(8a)「第1図,第2図及び第3図を説明すると,キー1の平面にタンブラーピン4,17に合致し,鍵違いを構成する挿入穴11とタンブラーピン4,17を挿入させない部分10とタンブラーピン4,17を途中までしか挿入させない様に穴11を皿もみして面取りした穴12と穴13がある。」(1欄28?33行)
(8b)「…又,キーの穴は図面に示すものは貫通穴になつているが凹穴にしてしもよく,又皿穴の様に面取りだけで円錐状になつていてもよい。」(4欄27?30行)

9.甲第9号証(特開2000-96889号公報)
甲第9号証には,「シリンダ錠と鍵との組合せ」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(9a)「【0021】図において,1は,錠の鍵2によって回動可能な錠シリンダ3を収容する錠本体を示す。特に,本発明の両方向に操作可能な実施例を示す図1を参照して,錠シリンダ3は,錠の開放組合せを決め且つ錠シリンダ3に回動不能に支持された中間円板5によって互いから分離された,一組のコードロック円板4を囲う。さらに,円板4,5を含む円板の組の各端に,錠の中で鍵が回動されるとき,鍵と共に連続的に回動する,所謂リフトゼロのロック円板6がある。ロック作用の観点からは,特に最前部ゼロロック円板が該円板の組の鍵挿入端で最初の円板である必要がないが,実際にはしばしばこれがあり得る。ロック円板4及び6は,鍵用の対抗面を含む,それぞれ,鍵開口4a及び6a並びに両回動方向に,それぞれ,周辺切欠き4b及び6bを有する。」
(9b)「【0026】図1の錠機構の基本作用によれば,該機構を開け又は解放すべきときは,錠の鍵2によってロック円板4及び6が回動される。特に,各ロック円板が問題のロック円板のために該鍵に作った組合せ面によって決る通りに回動し,周辺切欠き4b又は6bがそれぞれ錠シリンダ3のスロット8及びロックバー7の位置にあるようにする。それで,周辺切欠き4b及び6bで一様なチャンネルができ,その中へロックバー7が動け,それによって錠シリンダ3を錠本体1に対して回動できるように解放する。」
(9c)そして,図5a?g,図7,図8a?c,図9a,bをみると,コードロック円板4が,その中央部に鍵用の対抗面を含む鍵開口4aを有するとともに,その周囲にロックバー7が入る周辺切欠き4bを有するものであって,環状に成形されたものであることは,明らかである。

上記(9a)?(9c)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第9号証には,次の発明(以下,「甲9発明」という。)が記載されているものと認められる。
「錠シリンダ3に回動不能に支持された中間円板5の間に,中央部に鍵開口4aが形成されるとともに周囲にロックバー7が入る周辺切欠き4bが形成された環状のコードロック円板4を,回動自在に挿設した,シリンダ錠。」

10.甲第10号証(特開昭62-194374号公報)
甲第10号証には,「錠装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(10a)「…外筒と内筒との間にサイドバー,内筒中に前記サイドバーの動作を規制する複数のディスクを配備した錠装置において,前記各ディスクは,サイドバーと直交して往復動自在に配備され,それぞれ面内にはスリット状鍵孔および鍵孔の対角線上に位置したコーナ部に鍵の傾斜刻みに適合する高さおよび傾斜角の突部を形成すると共に,一側辺にはサイドバーの係合する凹部,他の側辺には,該凹部をサイドバー位置からずらせるバネを連繋して成るを特徴とする錠装置。
…ディスクは,金属板の打抜き成形体である特許請求の範囲第1項記載の錠装置。
…ディスクの凹部はサイドバーの端部断面形状に適合する形状に形成されている特許請求の範囲第1項記載の錠装置。」(特許請求の範囲)
(10b)「…ディスク4は,内筒1の装填部21に適合する幅および内筒直径より摺動分だけ短い長さの金属製平板に形成し,装填部21中ヘサイドバー3に直交してそれぞれ往復可能に配備され,面内には,鍵軸断面と一致するスリット状の鍵孔41および鍵孔41の対角線上に位置したコーナ部に,鍵を挿入したとき,対応する鍵の傾斜刻みに適合する高さおよび傾斜角の突部42を形成している。また各ディスク4のサイドバー3と対応する側辺には,突部42の高さに応じて鍵孔方向に位置をずらせてサイドバー3の適合する凹部43,該凹部の側方には多数のV状凹凸部45を形成している。更に,他の側辺には凹部44を形成して内筒2のバネ装填部23に係合したU状復帰バネ7の両バネ片71を係合し,各凹部43をサイドバー3の位置からずらせている。」(3頁左上欄14行?右上欄10行)
(10c)そして,第1,3,4図等をみると,鍵孔16は内筒2の中心軸線に関して点対称である。

11.甲第11号証(実願平5-42779号(実開平7-14041号)のCD-ROM)
甲第11号証には,「シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(11a)「【0009】
ケース1に回動可能に嵌挿されるロータ5は,前端部に鍔部6が周設され後部に角軸部7が延設され,角軸部の角に雄ねじ8が螺設される(図1参照)。
鍔部6の外周面に,鍵孔9を有するキャップ10が嵌着され,ロータ5の前端部の開口11にピン12の両端部が固着され,ピン12に枢着されるシャッタ13が,ピン12に巻回されるスプリング14により,鍵孔9を閉鎖する方向に付勢される(図6参照)。
【0010】
ロータ5の内部に形成される収容室15は,前部の開口11に連通し,収容室15に設けられる隔壁16により4つの区画に区分される(図1参照)。
ロータ5の外周面に設けられるバー挿入孔18は,ロータ5の長手方向に平行な長溝18aと,長溝18aより収容室15に貫通する細長孔18bとにより構成される(図2参照)。
収容室15の内壁面には,バー挿入孔18の反対側に穿設された孔により,後述するディスクタンブラ23の突起26が係合する突起係合部19が形成される。

【0013】
収容室15の各区画にそれぞれ挿入されるディスクタンブラ23は,ほぼ中央部にキー挿入孔24が設けられ,外周面の一側(図2において右側)に,サイドバー20の後端部20bが係脱する係合溝25が設けられ,他側に突起26が形成される。
突起26は,収容室15の突起係合部19に係入するが,突起係合部19に対して滑り接触が可能である。
【0014】
ディスクタンブラ23の右側上面と収容室15の上壁面との間にスプリング27が挿入され,ディスクタンブラ23は,突起26を支点として時計方向に付勢され(図2参照),キー挿入孔24がキーに押されたときに,ディスクタンブラ23が反時計方向に回動して,係合溝25とバー挿入孔18が一致し,サイドバー20が係合溝25に係入するようになっている。
【0015】
キー挿入孔24は,突起26と係合溝25のほぼ中央に位置するので,突起26を支点としてディスクタンブラ23が回動するとき,係合溝25の移動量はキー挿入孔24の移動量の約2倍になる。
…」
(11b)「【0019】
正規のキーを鍵孔9に挿通すると,キーが各ディスクタンブラ23のキー挿入孔24の内面を押動し,各ディスクタンブラ23は突起26を支点として反時計方向に回動し,係合溝25がバー挿入用孔18に一致する(図3参照)。
次に,キーに解錠方向の回動力を加えると,ロータ5と共に回動しようとするサイドバー20の先端部20aがケース1のバー挿入溝22から押し出され,後端部20bが係合溝25に挿入されるので,ロータ5が回動可能になり(図4参照),キーにより解錠操作することができる。」
(11c)図6及び【0009】より,鍵孔9は内筒に相当するロータ5の中心軸線に関して点対称であると認められる。

ディスクタンブラ23は,【0013】のほぼ中央部にキー挿入孔24が設けられているとの記載,および図2?5からみて環状である。そうすると,上記(11a),(11b)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第11号証には,次の発明(以下,「甲11発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ロータ5の内部に形成される収容室15が隔壁16により4つの区画に区分され,当該区分された区画内に,中央部にキー挿入孔24が形成されるとともに外周面の一側にサイドバー20の後端部20bが係脱する係合溝25が形成された環状のディスクタンブラ23を,収容室15の内壁面に形成された突起係合部19とディスクタンブラ23の外周面の他側に形成された突起26との係合部分を支点として回動自在に挿設した,環状ディスクタンブラ型のシリンダ錠。」

12.甲第12号証(特開昭62-189269号公報)
甲第12号証には,「回転ディスク型シリンダー錠装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(12a)「扉に固定される外筒1と,該外筒1に回転可能に収容される内筒2と,該内筒2に設けた溝状孔部3に収容され,外筒1の内壁面の溝部4に一部を没入することにより内筒2を錠止するロックバー5と,内筒2に収容され,鍵6の挿入時にその外周面の錠止受溝7がロックバー5の内側突部が没入可能な位置,すなわち,ロックバー5が外筒の前記溝部4から脱出可能な位置に来るまで回転する複数枚のディスクタンブラー8と,内筒2の前面の内筒カバー9と内筒2の後部の2箇所で固定され,該ディスクタンブラー8の中心部を貫く案内軸棒10とから成る回転ディスク型シリンダー錠装置。」(特許請求の範囲)
(12b)「(作用)
施錠状態においてディスクタンブラー8は,各ディスクタンブラー8のバネ入れ凹部11に収容されて一端が該凹部11の壁面12に当接し,他端がスペーサー13のバネ受突起14に当接したコイルバネ15の弾発作用を受けている。ディスクタンブラー8の該バネ15による回転は,ディスクタンブラー8の停止用突起16が内筒2に設けた回転切欠17の端面に衝接することによって規制され,内筒2はロックバー5の介在によって外筒lに対して回転不能に錠止されている。
装置正面の鍵挿入口24より鍵6を挿入すると
ディスクタンブラー8の鍵孔18の一端面が鍵6の先端部に形成されている斜面によって押されるので,各ディスクタンブラー8は前記バネ15の弾発作用に抗して回転する。鍵山形状に対応した角度だけ各ディスクタンブラー8がそれぞれ回転したとき,各ディスクタンブラー8の錠止受溝7はロックバー5の内側凸部19が没入可能なように一直線上に整列している。
ロックバー5は上記凸部19と内筒の溝状孔部3との間に挿入されたコイルバネ20の弾発作用によって,その一部を外筒lの溝部4に没入させている。ここで,鍵6を操作して内筒2を外筒lに対して回転させる力を加えると,ロックバー5が上記溝部4の斜面に押されて該溝部4から脱出して,内側凸部19が錠止受溝に没入する。これによって内筒2とディスクタンブラー8は一体回転可能となり,案内軸棒10を中心に回転する。」(2頁左上欄19行?左下欄7行)

ディスクタンブラー8は第3?5図,第13図からみて環状である。そうすると,上記(12a),(12b)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第12号証には,次の発明(以下,「甲12発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内筒2のスペーサー13の間に,中央部に中心から偏らせて鍵孔18が形成されるとともに外周面にロックバー5の内側突部が没入する錠止受溝7が形成された環状のディスクタンブラー8を,案内軸棒10を中心として回動自在に挿設した,回転ディスク型シリンダー錠。」

13.甲第13号証(特開平6-346639号公報)
甲第13号証には,「シリンダ錠とキーの組合わせ」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(13a)「【0015】
【実施例】図中,1は,回転可能な内部シリンダ2をその内部に有するシリンダハウジングを示す。内部シリンダ2は,円板の堆積を包囲する。この堆積は,ロック機構の開口部の組合わせを決定する周辺ノッチ20とキー開口部7とを有し錠のキー12で回転可能な幾つかの標準的なロック用円板4と,キー開口部6を有する少くとも1つの持上げO-ロック用円板3とを含む。ロック用円板は,キー開口部8を有する中間円板5によって相互に分離される。また,ロック機構は,その施錠位置でシリンダハウジング1に対する内シリンダ2の回転を阻止する様にシリンダハウジング1の溝30に部分的に配置されて,内部シリンダのスロット9に部分的に配置されるロック用バー10を有している。ロック用円板は,所定の位置へ錠のキー12によって回転されてもよく,その位置では,周辺ノッチ20は,均等なチャンネルを錠の軸線方向において内部シリンダ2のスロット9の位置に形成する。ロック用バー10は,シリンダハウジング1の溝30からこのチャンネルへ進入し,これにより,シリンダハウジング1に対してキーと一緒に回転する様に内部シリンダ2を解放する。…」
(13b)「【0019】図2は,錠に含まれる標準的なロック用円板4を示す。ロック用円板4のキー開口部7は,2つの対称的に配置された段21を有し,段21は,キーにおいて切削されるべき組合わせ面27(図5参照)と協働する組合わせ面22と,戻し面23とを有し,戻し面23は,キーがロック機構のロックを解いた後に最初の位置に戻されるとき,案内要素14の作用の下で,上述の様にロック機構の施錠位置に対応するロック用円板4の最初の位置に戻る円板4の回転を生じさせる。また,キー開口部7は,周辺ノッチ20とキー開口部7との間の距離Aが製造技術および強さの点で充分である様に,即ち,距離Aが好ましくは少くとも1mmである様に,形成された彎曲面24を有している。」

ロック用円板4は図2および中央部に開口部7が形成されるとの記載からみて環状である。そうすると,上記(13a),(13b)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第13号証には,次の発明(以下,「甲13発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内部シリンダ2に設けた中間円板5の間に,中央部にキー開口部7が形成されるとともに周囲にロック用バー10が入る周辺ノッチ20が形成された環状のロック用円板4を,回動自在に挿設した,シリンダ錠。」

14.甲第14号証(特開平9-41742号公報)
甲第14号証には,「シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(14a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,ピンタンブラー錠,ディスクタンブラー錠及びレバータンブラー錠(ロータリーディスクタンブラー錠)を含むシリンダー錠に係り,特にピッキングによる不正解錠を不可能にした新規なシリンダ錠に関する。」
(14b)「【0030】…レバータンブラー錠は,合鍵の鍵溝によりタンブラー3を動かして,その自由外端縁に形成された解錠切欠19を,内筒2の母線に沿って延在するロッキングバー21の内端縁に整合させ,内筒の回動時,外筒1の内周面の母線に沿って形成された断面V字形の溝に係合するロッキングバー21を楔作用により内筒の半径方向に変位させて,内筒を回動可能にするものであり,…」
(14c)そして,図6をみると,従来のタンブラー3が,ほぼ中央に鍵挿通孔を形成した環状のものであることは,明らかである。

15.甲第15号証(「工業大事典 15 ハケ-フタ」)
甲第15号証には,「〔コイルばね〕helical spring」の項に,「コイルばねは細長い材料を円筒の表面にらせん状に巻いた形状をしており,最も用途の広い代表的なばねである。コイルばねは負荷の面から圧縮コイルばね,引張りコイルばねおよびねじりコイルばねの3種類に分類され,…」(85頁右欄)と記載されている。

16.甲第16号証(「商品大辞典」)
甲第16号証には,「コイルばね(coiled spring)」の項に,「広く機械部品として使用されているもので,形状は図8のように材料をつるまき状に巻いたもので,使用時の荷重作用によって圧縮,引張り,ねじりを冠して呼ばれる.…」(172頁左欄)と記載されている。

17.甲第17号証(「図解 機械用語辞典 第3版」)
甲第17号証には,「コイルばね coiled spring,helical spring」の項に,「鋼線をコイル形に巻いて作ったばね.丸棒または角棒を円筒形に巻いた機械部品として最も多く用いられているばね,圧縮ばね,引張ばね,ねじりばねがあり,…」(186頁)と記載されている。

18.甲第18号証(「広辞苑」第二版)
甲第18号証には,「コイルばね【コイル発条】(coiled spring)」の項に,「丸棒・角棒を円筒状に巻いて作ったばね。機械部品として最も多く使用。」(725頁上段)と記載されている。

19.甲第19号証(実願平3-104745号(実開平6-65631号)のCD-ROM)
甲第19号証には,「一方向クラッチ装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【請求項1】…一方向クラッチ装置において,前記押圧手段は,回転体の外周近傍にねじりコイルばね或いは板ばねを支持し,…」(実用新案登録請求の範囲)

20.甲第20号証(特開平6-248843号公報)
甲第20号証には,「蓋体の開閉機構」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【請求項4】前記位置保持手段(4)は,トーションバー,ねじりコイルばね,板ばねのうちのいずれか一つのばねである…蓋体の開閉機構。」(特許請求の範囲)

21.甲第21号証(特開2000-87610号公報)
甲第21号証には,「カップ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【0031】そして,図11に示すように,2つで対をなすようにして装着した1組のタンブラー12,12間に,共通のタンブラーばね18としての開脚ばねが掛け渡してある(図11及び図12参照)。
【0032】このタンブラーばね18は,中間にコイル部を形成し,両端に上記ばね掛け突起17に巻装されるループを形成したばね部材で,左右で互いに逆向きに装着した各タンブラー12の一端12aが外筒2の胴部に向かうように付勢させてある。」

22.甲第22,24号証(実公昭59-19099号公報)
甲第22,24号証には,「レバ-タンブラーシリンダー錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「…全体の形状が鍵穴hを半ば包囲する略C字形で一端を回動自在に軸支され,かつ鍵穴hに近接する方向に付勢されたレバータンブラー1の複数を内筒部の軸線方向に沿つて列設するとともに,上記レバータンブラー1の自由端外縁に,正しい鍵が鍵穴hに挿入された時,内筒部の円周方向において相互に整合するロッキングバー係合溝14を形成し,…」(実用新案登録請求の範囲)

23.甲第23号証(「MIWA 総合カタログ 2008年版」)
甲第23号証には,「シリンダーの種類」の項に,「U9シリンダー(ロータリーシリンダー)」(当審注:図からC字状のタンブラーを用いたシリンダー錠であることが解る。)の「原理」の説明(63頁右欄)と,「PRシリンダー(集合住宅用)(2WAYロータリーシリンダー・リバーシブルキータイプ)」(当審注:図から環状のタンブラーを用いたシリンダー錠であることが解る。)の「原理」の説明(65頁上段)とが,記載されている。

[2]本件特許発明1について
1.本件特許発明1と甲1発明1との対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「内筒部25」が本件特許発明1の「内筒」に相当し,以下同様に,「解錠切欠き28」が「解錠切欠」に相当し,「キー本体12」が「ブレード」に相当する。
また,甲1発明1の「鍵挿通切欠」と本件特許発明1の「鍵挿通孔」とが「鍵挿通部」で共通し,甲1発明1の「C字状のレバータンブラー(29)」は回転するディスクタンブラーであるから,本件特許発明1の「環状ロータリーディスクタンブラー」と「ロータリーディスクタンブラー」で共通する。
さらに,甲1発明1の「キー本体12の端縁部と干渉」し,「キー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わ」る「係合縁部」と,本件特許発明1の「ブレードの平面部と干渉」し,「ブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わる」「係合突起」とは,
「ブレードと干渉」し,「ブレードに形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する窪みと係合したとき,タンブラー群が前記窪みの深さや位置に対応して揺動角度が変わる」「係合部」で共通する。

そうすると,両者は,
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通部の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,タンブラー群が前記窪みの深さや位置に対応して揺動角度が変わって解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにした
ロータリーディスクタンブラー錠。」
の点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
点対称に形成された鍵孔について
本件特許発明1では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されているのに対し,甲1発明1では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されているか不明である点。

<相違点2>
鍵挿通部及びロータリーディスクタンブラーの構成について
本件特許発明1では,鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって,この「鍵挿通孔」を中央部に形成したロータリーディスクタンブラーが「環状ロータリーディスクタンブラー」であるのに対して,
甲1発明1では,鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって,この「鍵挿通切欠」を中央部に形成したディスクタンブラーが「C字状のレバータンブラー」である点。

<相違点3>
ディスクタンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための「係合部」と「窪み」について
本件特許発明1では,先端の移動軌跡が合鍵のブレードの「平面部」と干渉する「係合突起」を有し,「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」と,合鍵のブレードの「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪み」との係合により,「タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」上記整合を行うものであるのに対して,
甲1発明1では,「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合縁部」と,合鍵のブレードの端縁部と干渉して,当該端縁部に形成された対応する「本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」との係合により,「当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって」上記整合を行うものである点。

2.相違点の検討
<相違点1について>
鍵孔を「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成することは,甲第2号証の(2b)及び第13図,甲第10号証の(10c),甲第11号証の(11c)等からみても明らかなように当業者に周知な技術事項であって,甲1発明1において鍵孔を内筒の中心軸線に関して鍵孔を点対称に形成することは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>
相違点2について検討すると,甲第9,11?13号証に示されるように,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成してなる環状のロータリーディスクタンブラーを回動自在に挿設したロータリー型のディスクタンブラー錠は,当業者に周知な技術事項にすぎない。
そして,甲1発明1のディスクタンブラー錠においても,ディスクタンブラーとして,高い剛性が必要であることは明らかであるから,上記甲第9,11?13号証に開示された周知の環状に成形してなるロータリーディスクタンブラーを採用して,上記相違点1に係る本件特許発明1の構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。

<相違点3について>
甲第2号証?甲第24号証には,本件特許発明1の相違点3に係る構成が記載されていない。
そして,本件特許発明1における相違点3に係る構成により,錠の係合突起の先端と合鍵のブレード平面部に形成された対応する窪みとの関係は以下の図から理解されるように,係合突起の先端が深い窪みに入るほどブレードの平面幅方向中心にずれるものである。


<図:本願の図10>
解錠切欠9とその右側に点線で表された3つの切欠は,解錠切欠9の形成角度が異なる4種類のロータリーディスクタンブラーが用いられることを表している。係合突起29の突出量は一定であり,換言すれば,支軸23の中心と係合突起29の先端との距離は一定であって,係合突起29が合鍵のブレードの窪み25に係入してその底面に当接したとき,窪み25の深さに応じてロータリーディスクタンブラー27の揺動角度を変化させ,解錠切欠9をロッキングバー6の内側縁に整合させるようにしている。
そうすると解錠状態では,一番左に解錠切欠9があるロータリーディスクタンブラーでは係合突起29は図のように右下に下がり,解錠切欠を右側に設けたロータリーディスクタンブラーほど左へ回転した位置となって係合突起29は左上に上がるから,係合突起と係合する鍵の窪みの位置と深さは,鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなり,支軸23を中心とする円弧に沿っている。
すなわち,鍵の窪みの深さに応じてその中心位置がブレードの幅方向において微妙に変化することとなる。本件特許発明1の錠は,ロータリーディスクタンブラーが回転によってわずかに上下に動くことを利用して,その係合突起を鍵のブレード平面部に設けた窪みに円弧に沿って当接させるものであって,そのような構成とすることは甲第1号証や他の甲号証,技術常識から見て,当業者が容易に想到し得ないものである。
さらに,本件特許発明1の鍵の平面部と当接する構成は鍵の側端部と当接するよりも当接部(係合突起)の回転半径が小さくなる。解錠切欠の動きは,当該解錠切欠の回転半径と当接部の回転半径の比により決まるものであるから,本件特許発明1の錠の場合は甲第1号証の場合よりも解錠切欠の動きが大きくなり,わずかな窪み位置や深さの違いで解錠できなくなって,合鍵を製造しにくい効果を奏すると認められる。

よって,本件特許発明1の相違点3に係る構成は,甲1発明1及び甲第2号証?甲第24号証に記載された発明から容易に想到できず,その作用効果も,これらの発明から当業者が予測しうるものではない。

したがって,本件特許発明1は甲第1号証?甲第24号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない。

[3]本件特許発明2について
1.本件特許発明2と甲1発明2との対比
本件特許発明2と甲1発明2とを対比する。
本件特許発明2と甲1発明2との相当ないし共通関係は,本件特許発明1及び甲1発明1が「錠」に係るものであり,本件特許発明2及び甲1発明2が「錠用の鍵」に係るものであるものの,上記[2]1.で説示した本件特許発明1と甲1発明1との相当ないし共通関係がほぼそのまま成り立つ。

そうすると,両者は,
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通部の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合部と整合するブレードに対応する窪みを形成し,この窪みが対応する係合部と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにした
ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
の点で一致し,次の点で相違,又は一応相違する。

<相違点4>
本件特許発明2では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されている鍵孔を有する錠用の鍵であるのに対し,甲1発明2ではそのような鍵孔を有しない錠用の鍵である点。

<相違点5>
本件特許発明2では,鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって,この「鍵挿通孔」を中央部に形成したロータリーディスクタンブラーが「環状ロータリーディスクタンブラー」である錠用の鍵であるのに対して,
甲1発明2では,鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって,この「鍵挿通切欠」を中央部に形成したディスクタンブラーが「C字状のレバータンブラー」である錠用の鍵である点。

<相違点6>
ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための構成について
本件特許発明2では,「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の,その先端と,合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」との係合により,「タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」上記整合を行うものであるのに対して,
甲1発明2では,「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合縁部」と,合鍵のブレードの端縁部と干渉して,当該端縁部に形成された対応する「キー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」との係合により,「当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって」上記整合を行うものである点。

2.相違点の検討
<相違点4,5について>
相違点4,5については,本件特許発明2は「鍵」であり,錠の構成である鍵孔の位置やディスクタンブラーが環状かC字状かによって鍵の構成に差異が生じるものではなく,実質的に相違点ではない。
<相違点6について>
当該相違点の本件特許発明2に係る構成は,鍵としては以下の(1),(2)とおりと解され,これらの構成は甲1発明2にはない点で相違している。
(1)「合鍵」の「ブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」が形成されている。
(2)さらに,「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の,その先端と係合する,合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」を有するから,上記「[2]2.<相違点3について>」における検討から理解されるように,「鍵の窪みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧に沿ったものである」との構成を有する。

そうすると,甲1発明2の合鍵のブレードにおける干渉する場所は「端縁部」であるから,本件特許発明2の「平面部」である点と相違しており,甲1発明2における干渉する場所の形状である「キー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」も,甲第1号証における記載(1d)の【0029】?【0032】,図8,9のように作成されることからみて「摺り鉢形」とはなり得ず,本件特許発明2の「摺り鉢形の窪み」に相当するとはいえない。
そして,甲第2号証等に示されるブレードの「平面部」に「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」を有した鍵が周知であったとしても,それは直線的に動作するタンブラー錠用の鍵であって,鍵の「端縁部」における「刻み」で係合する回転するタンブラー錠用の鍵である甲1発明2の鍵を,甲第2号証等の鍵のブレード平面部に設けた窪みを設けたものとすることを当業者が容易になし得たということもいえない。本件特許発明2の鍵は,ロータリーディスクタンブラーが回転によってわずかに上下に動くことを利用して,係合突起を鍵のブレード平面部に設けた窪みに円弧に沿って当接させる錠用の鍵であり,そのために本件特許発明2の鍵は「平面部」に「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」が形成されており,そのような構成とすることは甲第1号証や甲第2号証等の他の甲号証,技術常識から見て,当業者が容易に想到し得ないものである。
さらに,本件特許発明2の鍵の平面部と当接する構成は,鍵の側端部と当接するよりも当接部(係合突起)の回転半径が小さくなるものである。解錠切欠の動きは,当該解錠切欠の回転半径と当接部の回転半径の比により決まるものであるから,本件特許発明2の鍵を用いる錠の場合は甲第1号証の場合よりも解錠切欠の動きが大きくなり,わずかな窪み位置や深さの違いで解錠できなくなって,合鍵を製造しにくい効果を奏すると認められる。

3.本件特許発明2と甲第2?8号証に記載の発明に関する特許法第29条第2項の判断(第2の無効理由)
請求人は,本件特許発明2は甲第2?8号証に記載の発明である「ディンプルキー」と同一であり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を第2の無効理由としているので判断する。
本件特許発明2は上記「2.<相違点6について>(2)」で示したように,「鍵の窪みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧に沿ったものである」ことを実質的な構成としている。一方,甲第2?8号証に記載の発明は「ディンプルキー」であると認められるが,当該各号証には「ロータリーディスクタンブラー錠用」である旨の記載はないから,「鍵の窪みは,深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧に沿ったものである」構成を有しているとはいえない点で本件特許発明2と相違している。そして,当該相違点に係る本件特許発明2に係る構成を当業者が容易になし得たとする根拠は,各甲号証,技術常識等からみて認められない。さらに,上記「2.<相違点6について>」で示したように,本件の錠は,ロータリーディスクタンブラーが回転によってわずかに上下に動くことを利用して,その係合突起を鍵のブレード平面部に設けた窪みに円弧に沿って当接させるものであり,そのために本件特許発明2の鍵は「平面部」に「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」が形成されており,そのような構成とすることは各甲号証,技術常識から見て,当業者が容易に想到し得ないものである。

よって,本件特許発明2の相違点6に係る構成は,甲1発明2及び甲第2号証?甲第24号証に記載された発明から容易に想到できず,その作用効果も,これらの発明から当業者が予測しうるものではない。

したがって,本件特許発明2は甲第1号証?甲第24号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない。

[4]本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1発明1との対比をすると,本件特許発明3は本件特許発明1を引用するものであり,本件特許発明1に「ロータリーディスクタンブラーを捩りコイルばねによって付勢するようにした」との限定事項を付加したものである。

そうすると,本件特許発明1は甲第1号証?甲第24号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではないから,本件特許発明1の構成を含む本件特許発明3も甲第1号証?甲第24号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない。

[5]請求人の主張について
請求人は,平成24年5月7日付け意見書の4ページ19行?6ページ2行において,「甲第1号証に記載された発明は図2で判るとおり,d1?dnの刻みは何れも合鍵のブレードの側面部から平面部にかけて形成されているものであって,しかも,平面から見た刻みの長さも,側面から見た刻みの長さと遜色ないかそれ以上になっており,平面部に形成されたものではないと見ることには非常に無理がある。」,「d1は鍵幅が傾斜面で削られることなく残っており,本件明細書の図5における一番浅い窪みとほとんど変わりがない」,「d1,d2として,平面部に形成された有底で複数種類の深さを有する窪みが開示されている」旨,主張している。
<甲第1号証 図2>

しかしながら,甲第1号証に記載されたリバーシブルキー1における谷の底部3は図8,9のようにして作成されるものであり,図2,8において鍵はd1,d2だけでなくdnの刻みも有するものであるから,「平面部」に形成されているということはできない。
<甲第1号証 図8>

<甲第1号証 図9>

このことは,図1のリバーシブルキーにおいて平面部に窪みがあると見えないことからも明らかである。また,図5から見ても錠のレバータンブラーが鍵の平面部に当接しているとはいえない。
<甲第1号証 図1>

<甲第1号証 図5>

また,請求人は同意見書の6ページ13行?18行において,「摺り鉢形の窪みとすることは甲第2?8号証に開示されており,甲1号証の発明と組み合わせることは容易である」旨を主張している。
しかしながら,甲第1号証における記載(1d)の【0029】?【0032】,図8,9のような作り方では摺り鉢形の窪みを作成することは不可能であるから,摺り鉢形の摺り鉢形の窪みとすることには阻害要因がある。甲第1号証では,回転刃5の刃先のテーパー部51により誘導斜面6,6aを形成しているが,キーの刻みの形状は「摺り鉢形」にはならない。摺り鉢は摺りこぎを回転させて使用するものであるから,「摺り鉢形」といえるためには,摺りこぎを無理なく回転してゴマなどを摺ることができるような形状であることが必要である。

【2】第3の無効理由(明細書の記載不備)について
本件特許発明2の記載を分節すると以下のとおりである。

A 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
B この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
C この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
D 上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,
E その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,
F 鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
G 一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,
H 各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
I 他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにした
J ロータリーディスクタンブラー錠の
K 合鍵であって,
L 鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,
M この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
N 以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の
O 鍵。

請求項において特許を受けようとする発明についての記載は,種々の表現形式を用いることができるから,錠に関する記載があるからといって,直ちに鍵発明が明確でないとはいえない。そして,錠に関する記載は,請求項に存在する事項であるから,発明の把握に際して,必ず考慮の対象とする必要があり,鍵発明は,「鍵」の発明なので,錠に関する記載は,形状・構造・作用・機能・特性・その他の様々な表現方式を用いて鍵を特定するための事項と解釈される。
まず,錠に関する記載により,形状・構造・作用・機能・特性等の観点から鍵の発明が特定され,その発明が明確に把握できる場合は,当該鍵発明は,錠に関する記載によっては不明確にはならない。また,錠に関する記載により,形状・構造・作用・機能・特性等の観点から鍵の発明が何ら特定されず,装着すべき本体に関する記載の有無が鍵の発明に何の影響も及ぼさないことが明確に把握できる場合も,当該鍵発明は,錠に関する記載によっては不明確にはならない。一方,錠に関する記載により,形状・構造・作用・機能・特性等の観点から鍵の発明が特定されているのか否かを明確に把握できないときや,どのように特定されているのかを明確に把握できないときは,当該鍵発明は,錠に関する記載によって不明確になる。

以上の観点から,本件特許発明2について以下に検討する。
(1)K,Oは鍵であることを特定しているので,明確な記載である。
(2)Dの「中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」,Gの「リバーシブルである合鍵」との記載は,鍵がリバーシブルであることを特定しているので,明確な記載である。
(3)Gの「合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起」,Lの「係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し」,Mの「前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に」との記載は,鍵の平面部に有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みがあるということを特定しているので,明確な記載である。
(4)本件特許発明2におけるロータリーディスクタンブラーである旨の記載,Eの「その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支する」,Gの「鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された・・・合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し」,Lの「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し」,Mの「この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わる」との記載は,支軸を中心として揺動するロータリーディスクタンブラーに突出量が一定である係合突起が設けられて鍵のブレード平面部にある窪みに係合するから,上記「2.<相違点6について>(2)」で示したように,「鍵の窪みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,揺動による円弧に沿ったものである」鍵を特定しており,明確な記載である。
(5)その他の記載は,形状・構造・作用・機能・特性等の観点から,「鍵」の発明が特定されず,記載の有無が「鍵」の発明に影響を及ぼさないことは明らかであるから,不明確であるとはいえない。

以上のとおり,A?Oの記載は何れも不明確であるとはいえず,全体としても不明確であるとはいえない。


したがって,本件特許発明2の記載は,特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしている。

また,本件特許発明2は,上記の通り明確であって,本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面により,実施例に記載された通りに実施することができるから,特許法第36条第4項の規定を満たしている。


第5 むすび
以上のとおりであるから,審判請求人の主張する無効理由によっては,本件特許発明1ないし3の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-31 
結審通知日 2012-08-02 
審決日 2012-08-21 
出願番号 特願2002-226833(P2002-226833)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (E05B)
P 1 113・ 536- Y (E05B)
P 1 113・ 121- Y (E05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多田 春奈住田 秀弘  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 高橋 三成
中川 真一
登録日 2007-09-07 
登録番号 特許第4008302号(P4008302)
発明の名称 ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵  
代理人 三浦 光康  
代理人 熊谷 秀紀  
代理人 飯田 岳雄  
代理人 橘高 郁文  
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