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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1279361
審判番号 不服2012-17183  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-04 
確定日 2013-09-19 
事件の表示 特願2005-364127「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月28日出願公開、特開2007-165811〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年12月16日の出願であって、平成23年2月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月21日に手続補正がなされ、さらに、同年9月26日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、同年12月1日に意見書の提出がなされたが、平成24年5月28日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月4日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において、平成25年4月22日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月22日に手続補正がなされたものである。

第2 平成25年6月22日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年6月22日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理 由]
1 補正内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするものであり、その特許請求の範囲については、
本件補正前(平成23年4月21日付け手続補正後のもの)に、
「【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の側面方向に離間して配置され、前記発光素子と電気的に接続された一対の導電体と、
前記発光素子と前記一対の導電体とを支持する透明基板と、
前記透明基板上にて前記発光素子と前記一対の導電体とを封止する透光性部材と
前記発光素子を前記透明基板上に固定するための透光性のダイボンド部材と、
を有し、
前記発光素子からの光は、前記透光性部材及び透明基板を通じて上面及び下面に放出可能に構成しており、
前記一対の導電体上に、一対の金属プレートが固着されており、
前記一対の金属プレートは、それぞれ前記透光性部材から異なる方向へ突出しており、
前記透明基板と前記導電体との接触面積は、前記導電体と前記金属プレートとの接触面積より大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記一対の金属プレートは、前記一対の導電体と固着されている側の端部の角部が丸みを帯びていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置であって、
前記透明基板の下面は、非平滑面であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記金属プレートの突出部は、金属プレートの突出部は、前記一対の導電体と固着されている側の端部よりも幅広に形成されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記透光性部材および前記透明基板の周囲を被覆する第二の透光性部材を有し、前記第二の透光性部材は球形であることを特徴とする発光装置。」とあったものを、

「【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の側面方向に離間して配置され、前記発光素子と電気的に接続された一対の導電体と、
前記発光素子と前記一対の導電体とを支持する透明基板と、
前記透明基板上にて前記発光素子と前記一対の導電体とを封止する透光性部材と
前記発光素子を前記透明基板上に固定するための透光性のダイボンド部材と、
を有し、
前記発光素子からの光は、前記透光性部材及び透明基板を通じて上面及び下面に放出可能に構成しており、
前記一対の導電体上に、前記発光素子と電気的に接続された一対の金属プレートが固着されており、
前記導電体は前記発光素子と前記透明基板との内部接続用端子部として、前記金属プレートは前記発光素子と外部との外部接続用端子部として、それぞれ機能し、
前記一対の金属プレートは、それぞれ前記透光性部材から異なる方向へ突出しており、
前記透明基板と前記導電体との接触面積は、前記導電体と前記金属プレートとの接触面積より大きく、
前記透光性部材および前記透明基板の周囲を中実に被覆すると共に、前記発光素子の発光を吸収して波長変換し、異なる光を発光する波長変換部材を含有させた第二の透光性部材を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記一対の金属プレートは、前記一対の導電体と固着されている側の端部の角部が丸み
を帯びていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置であって、
前記透明基板の下面は、非平滑面であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記金属プレートの突出部は、前記一対の導電体と固着されている側の端部よりも幅広に形成されてなることを特徴とする発光装置。」と補正する内容を含むものである(なお、下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。

2 補正目的
(1)請求項1についての上記補正は、本件補正前の請求項1を削除し、本件補正前の請求項1を引用する請求項5を独立形式に書き直すとともに、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な「第二の透光性部材」が、透光性部材および透明基板の周囲を中実に被覆するものであって、かつ異なる光を発光する波長変換部材を含有させたものに特定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。

(2)次に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)刊行物に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-277808号公報 (以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップが透光性支持部材上に配置され、前記発光素子チップおよび前記透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成されたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】 前記半導体発光層は、ホウ素、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムの少なくとも1つを含む窒化物系半導体からなることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】 前記発光素子チップは、前記半導体発光層上に電極を有し、前記透光性支持部材は、透光性絶縁基板と前記透光性絶縁基板上に形成された配線パターンとを備え、前記発光素子チップの前記電極が前記透光性絶縁基板上の前記配線パターンに電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2記載の光源装置。
【請求項4】 前記透光性モールド体から出射される光の配光特性が前記発光素子チップの表面側、裏面側および両側面側でほぼ均一になるように前記透光性モールド体の表面の形状が設定されたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】 前記透光性材料中に拡散材が添加されたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項6】 透光性支持部材上に複数の発光素子チップが配置され、前記複数の発光素子チップおよび前記透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成されたことを特徴とする光源装置。
【請求項7】 前記複数の発光素子チップの少なくとも1つは、透光性基板上に半導体発光層を備えてなることを特徴とする請求項6記載の光源装置。
【請求項8】 透光性支持部材上に、透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップを実装する工程と、前記発光素子チップの周囲を第1の透光性材料で被覆する工程と、前記第1の透光性材料の上から前記透光性支持部材および前記発光素子チップの第2の透光性材料で一体的にモールドして透光性モールド体を形成する工程とを備える光源装置の製造方法。」

イ 「【0009】本発明の目的は、簡単な構成で全方位から視認できる光源装置およびその製造方法を提供することである。」

ウ 「【0020】本発明に係る光源装置においては、透光性モールド体によって透光性支持部材と複数の発光素子チップが一体的にモールドされているので、簡単な構成で、かつ複数の発光素子チップの全方位にわたって光が透過でき、複数の素子チップが同一色の場合には輝度の高い全方位出力特性を、複数の発光素子チップが異なる色で発光する場合にはそれぞれの発光色について全方位光出力特性を持つ光源装置が得られる。」

エ 「【0027】図1および図2の光源装置1において、透光性のガラス基板2の表面上にGaN系青色LED素子3とGaN系緑色LED素子4とGaAs系赤色LED素子5aとが並べて配置されている。GaN系LED素子3,4はガラス基板2の表面だけに設けられているが、GaAs系赤色LED素子5a,5bはガラス基板2の表裏に設けられている。
【0028】ガラス基板2上には、電気回路を形成するための配線パターン6が設けられている。配線パターン6は、ガラス基板2の裏面に配置されたGaAs系赤色LED素子5bのためにガラス基板2の裏面にも設けられている。LED素子3,4の電極と配線パターン6とは金ワイヤー7で電気的に接続されている。」

オ 「【0032】次に、図3?図6を用いて図1に示す光源装置1の製造方法について説明する。まず、ガラス基板2の表面および裏面上に配線パターン6を形成する。図3に示すように、GaN系LED素子3,4をガラス基板2の表面のうち配線パターン6が形成されていない領域に透光性のエポキシ樹脂系接着剤15で固定する。一方、GaAs系LED素子5a,5bを配線パターン6上に、銀フィラー等を混ぜ合わせた導電性のエポキシ樹脂系接着剤16で固定する。
【0033】その後、図4に示すように、ワイヤーボンダ装置を用いて金ワイヤー7により配線パターン6およびLED素子3,4,5a,5bの電極にボンディングする。
【0034】そして、図5および図6に示すように、LED素子3,4,5a,5bと金ワイヤー7が配置されている領域全体に拡散材入りの透光性樹脂11を滴下して硬化する。その後、ハイブリッドIC用のリードフレーム8を、ガラス基板2に形成された引き出し配線パターン6に半田材9で取り付ける。このとき、LED素子3,4,5a,5bおよび金ワイヤー7は透光性樹脂11によって保護される。透光性樹脂11の上からLED素子3,4,5a,5bは、例えばキャスティングモールド法を用いて、リードフレーム8が取り付けられたガラス基板2とともに透光性樹脂10で一体的にモールドされる。」

カ 「【0036】本実施例の光源装置1においては、上記のような配光特性を持つLED素子3,4を透光性のガラス基板2で支持し透光性モールド体で覆っているので、全方位に対して光を出射することができる。すなわち、LED素子3,4から出た光はガラス基板2の表面側および両側面側では、拡散材入りの透光性樹脂11を透過し、さらに透光性樹脂10を透過して光源装置1から出射される。
【0037】一方、ガラス基板2の裏面側では、LED素子3,4から出た光は、透光性のエポキシ樹脂系接着剤15を透過し、ガラス基板2を透過し、さらに透光性樹脂10,11を透過して光源装置1から出射される。その結果、例えばガラス基板2の表面に配置した1個のLED素子3によって全方位光出射特性を得ることができ、光源装置1の構成が簡素化されている。」

キ 「【0042】なお、本実施例の説明では、光の3原色である赤色、青色および緑色を同一のガラス基板2に搭載した多色表示可能なタイプについて説明したが、単色の場合、例えば青色一色の場合であっても光源装置の構成は簡素化される。」

ク 図1は、以下のものである。


ケ 図2は、以下のものである。


コ 図6は、以下のものである。


(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載によれば、
引用文献には、
「透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップが透光性支持部材上に配置され、発光素子チップおよび透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成された光源装置であって、
発光素子チップは、半導体発光層上に電極を有し、
透光性支持部材は、透光性絶縁基板と透光性絶縁基板上に形成された配線パターンとを備え、発光素子チップの電極が透光性絶縁基板上の前記配線パターンに電気的に接続され、
透光性モールド体は、発光素子チップの周囲を被覆する第1の透光性材料と、第1の透光性材料の上から透光性支持部材および発光素子チップを一体的にモールドする第2の透光性材料とからなる、
光源装置。」
が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イの記載によれば、
上記アの「光源装置」は、
全方位から視認できる光源装置であることが理解できる。

ウ 上記(1)オの記載を踏まえて、図1を見ると、
上記アの「発光素子チップ」は、
透光性絶縁基板の表面のうち配線パターンが形成されていない領域に透光性のエポキシ樹脂系接着剤で固定されるとともに、2つの金ワイヤーにより配線パターンにボンディングされたものであってもよいものと認められる。

エ 上記(1)オの記載を踏まえて、図1を見ると、
上記アの「配線パターン」は、
発光素子チップの両側から透光性絶縁基板の端部にかけて形成され、それぞれの端部の位置においてリードフレームが半田材で取り付けられていることが把握できる。

オ また、上記(1)オの記載を踏まえて、図1を見ると、
リードフレームが配線パターン上に取り付けられる面積よりも、配線パターンが透光性絶縁基板上に形成される面積の方が大きいことが把握できる。

カ 上記(1)ウ及びキの記載に照らせば、
上記アの「光源装置」は、多色でも単色であってもよいものと認められる。

キ 上記アないしカから、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「透光性基板上に半導体発光層を備えてなる発光素子チップが透光性支持部材上に配置され、発光素子チップおよび透光性支持部材が透光性材料で一体的にモールドされて透光性モールド体が形成された全方位から視認できる単色の光源装置であって、
発光素子チップは、半導体発光層上に電極を有し、
透光性支持部材は、透光性絶縁基板と透光性絶縁基板上に形成された配線パターンとを備え、発光素子チップの電極が透光性絶縁基板上の前記配線パターンに電気的に接続され、
透光性モールド体は、発光素子チップの周囲を被覆する第1の透光性材料と、第1の透光性材料の上から透光性支持部材および発光素子チップを一体的にモールドする第2の透光性材料とからなり、
発光素子チップは、
透光性絶縁基板の表面のうち配線パターンが形成されていない領域に透光性のエポキシ樹脂系接着剤で固定されるとともに、2つの金ワイヤーにより配線パターンにボンディングされ、
配線パターンは、
発光素子チップの両側から透光性絶縁基板の端部にかけて形成され、それぞれの端部の位置においてリードフレームが半田材で取り付けられ、
リードフレームが配線パターン上に取り付けられる面積よりも、配線パターンが透光性絶縁基板上に形成される面積の方が大きい、
全方位から視認できる単色の光源装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「発光素子チップ」は本願補正発明の「発光素子」に相当し、同様に、
「配線パターン」は「導電体」に、
「第1の透光性材料」は「透光性部材」に、
「第2の透光性材料」は「第二の透光性部材」に、
「透光性のエポキシ樹脂系接着剤」は「透光性のダイボンド部材」に、
「リードフレーム」は「金属プレート」に、
「光源装置」は「発光装置」に、それぞれ、相当する。

イ 引用発明の「配線パターン」は、発光素子チップの両側から透光性絶縁基板の端部にかけて形成されたものであることに照らせば、
引用発明と本願補正発明とは「発光素子と、
前記発光素子の側面方向に離間して配置され、前記発光素子と電気的に接続された一対の導電体と、
前記発光素子と前記一対の導電体とを支持する透明基板と、」を有する点で一致する。

ウ 引用発明の「発光素子チップ」は、透光性絶縁基板の表面のうち配線パターンが形成されていない領域に透光性のエポキシ樹脂系接着剤で固定されるものであって、「第1の透光性材料」は、発光素子チップの周囲を被覆するものであることに照らせば、
引用発明と本願補正発明とは「前記透明基板上にて前記発光素子を封止する透光性部材と
前記発光素子を前記透明基板上に固定するための透光性のダイボンド部材と、
を有し、
前記発光素子からの光は、前記透光性部材及び透明基板を通じて上面及び下面に放出可能に構成して」いる点で共通する。

エ 引用発明の「配線パターン」は、発光素子チップの両側から透光性絶縁基板の端部にかけて形成され、それぞれの端部の位置においてリードフレームが半田材で取り付けられていることに照らせば、
引用発明と本願補正発明とは「前記一対の導電体上に、前記発光素子と電気的に接続された一対の金属プレートが固着されており、
前記導電体は前記発光素子と前記透明基板との内部接続用端子部として、前記金属プレートは前記発光素子と外部との外部接続用端子部として、それぞれ機能し、
前記一対の金属プレートは、それぞれ前記透光性部材から突出して」いる点で共通する。

オ 引用発明は、「リードフレームが配線パターン上に取り付けられる面積よりも、配線パターンが透光性絶縁基板上に形成される面積の方が大きい」ものであることに照らせば、
引用発明と本願補正発明とは「前記透明基板と前記導電体との接触面積は、前記導電体と前記金属プレートとの接触面積より大き」い点で共通する。

カ 引用発明の「第2の透光性材料」は、第1の透光性材料の上から透光性支持部材および発光素子チップを一体的にモールドするものであることに照らせば、
引用発明と本願補正発明とは「前記透光性部材および前記透明基板の周囲を中実に被覆する第二の透光性部材を有する」点で共通する。

キ してみると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「発光素子と、
前記発光素子の側面方向に離間して配置され、前記発光素子と電気的に接続された一対の導電体と、
前記発光素子と前記一対の導電体とを支持する透明基板と、
前記透明基板上にて前記発光素子を封止する透光性部材と
前記発光素子を前記透明基板上に固定するための透光性のダイボンド部材と、
を有し、
前記発光素子からの光は、前記透光性部材及び透明基板を通じて上面及び下面に放出可能に構成しており、
前記一対の導電体上に、前記発光素子と電気的に接続された一対の金属プレートが固着されており、
前記導電体は前記発光素子と前記透明基板との内部接続用端子部として、前記金属プレートは前記発光素子と外部との外部接続用端子部として、それぞれ機能し、
前記一対の金属プレートは、それぞれ前記透光性部材から突出しており、
前記透明基板と前記導電体との接触面積は、前記導電体と前記金属プレートとの接触面積より大きく、
前記透光性部材および前記透明基板の周囲を中実に被覆する第二の透光性部材を有する、発光装置。」

ク 一方で、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
透光性部材に関し、
本願補正発明は、「前記発光素子と前記一対の導電体とを封止する」のに対して、
引用発明は、一対の導電体を封止しているか否か不明である点。

<相違点2>
一対の金属プレートの突出する方向に関し、
本願補正発明は、「異なる方向」であるのに対して、
引用発明は、「異なる方向」へ突出するか否か不明である点。

<相違点3>
第二の透光性部材に関し、
本願補正発明は、「発光素子の発光を吸収して波長変換し、異なる光を発光する波長変換部材を含有させた」ものであるのに対して、
引用発明は、波長変換部材を含有していない点。

(4)判断
ア 上記<相違点1>について検討する。
(ア)引用発明の「発光素子チップの周囲を被覆する第1の透光性材料」により、どの範囲まで被覆するかは、当業者が引用発明を実施する際に適宜決めるべき事項であるところ、発光素子と配線パターンとを封止するように被覆することに格別困難性は認められない。

(イ)以上の検討からして、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 上記<相違点2>について検討する。
(ア)引用発明の「リードフレーム」は、透光性絶縁基板の端部において、配線パターンを介して発光素子チップに電気を供給するものであるところ、
電気を供給するリードフレームを基板の両端に取り付けた構造の発光装置は、例えば、特開2005-191097号公報(図10を参照。)、特開2002-270904号公報(図3を参照。)、 特開2002-232020号公報(図2を参照。)及び 特開昭60-110180号公報(第1図を参照。)等に記載されているように、本願の出願時点で周知である(以下「周知技術1」という。)。

(イ)してみれば、引用発明の「リードフレーム」を透光性絶縁基板の両端に取り付ける構造とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)以上の検討からして、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。

ウ 上記<相違点3>について検討する。
(ア)引用発明の「単色の光源装置」において、どのような発光色を放射させるかは、当業者が引用発明を実施する際に適宜定めるべき事項であることろ、発光素子チップと発光素子チップから遠い位置に波長変換部材を含有させたモールド樹脂とを組合わせることで、所望の発光色を放射させるようにした光源装置が、例えば、特開平10-190065号公報(【0015】、【0021】ないし【0023】及び図2を参照。第1のコーティング部の上に蛍光物質を含有させた第2コーティング部を形成すること、LEDチップに向かって分布濃度が高いと水分等の影響をより受けにくいこと、モールド部材表面側に向かって分布濃度が高いとLEDチップからの発熱等の影響がより少なくできることが記載されている。)及び特表平11-500584号公報(第13頁下から2行ないし第14頁第9行及び図2を参照。透明の被覆15上に発光物質を粒子6を添加した透明なエポキシ樹脂からなる層4を被着することが記載されている。)等に記載されているように、本願の出願時点で周知である(以下「周知技術2」という。)ことに照らせば、
引用発明において、発光素子チップから遠い位置にある「第2の透光性材料」に波長変換部材を含有させることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)以上の検討から、引用発明において、上記<相違点3>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。

エ また、本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明、周知技術1及び2から予測し得る範囲内のものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本願補正発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定のむすび
上記「3」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献
当審拒絶理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、前記「第2 2(1)及び(2)」に記載したとおり、本願発明を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3(4)」で検討したとおり、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-22 
結審通知日 2013-07-23 
審決日 2013-08-05 
出願番号 特願2005-364127(P2005-364127)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 畑井 順一
星野 浩一
発明の名称 発光装置  
代理人 豊栖 康司  
代理人 豊栖 康弘  

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