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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1279448
審判番号 不服2011-25407  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-25 
確定日 2013-09-18 
事件の表示 特願2001-266662「通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-141865〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年9月4日の出願(パリ条約による優先権主張2000年9月6日、アメリカ合衆国)であって、平成20年9月3日付けで手続補正がなされ、平成23年4月6日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月5日付けで手続補正がなされたが、同年7月20日付けで拒絶査定がなされ、同年11月25日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成24年12月25日付けで拒絶理由通知がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成23年7月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の符号化パイロット信号を生成するために複数の符号を用いてパイロット信号を符号化し、ここで前記複数の符号が少なくとも第1及び第2の符号を有し、前記第1及び第2の符号は異なる、及び前記複数の符号化パイロット信号が少なくとも第1及び第2の符号化パイロット信号を有しており、
前記第1及び第2の符号化パイロット信号がデータと時分割多重化し、そして
前記第1及び第2の符号化パイロット信号が前記データと共に異なるアンテナでほぼ同時に送信する通信方法。」

3.当審が平成24年12月25日付けの拒絶理由通知で通知した拒絶の理由
当審が平成24年12月25日付けの拒絶理由通知で通知した拒絶の理由は、以下のとおりである。

「 この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。



本願の発明の詳細な説明の記載では、本願明細書でいう「コヒーレント受信」ないし「コヒーレント検出」の具体的内容と、本願の各請求項に係る通信方法に従って送信されるデータがその受信側において適切に受信できる原理が不明であるため、本願の各請求項に係る発明の技術上の意義(本願の各請求項に係る通信方法がデータの通信のためにどのように利用され得るのか)を理解することができない。
以下、説明する。
本願明細書の段落0005?0009の記載と図1、2の記載を参酌すると、本願発明の通信方法は、「2以上の各アンテナから、相互に異なるデータを、同一キャリアを用いて同一タイミングで、単一の受信器に向けて送信するようなデータの通信」において利用されるものと解され(本願明細書には、本願発明がそのような通信以外の通信においても利用可能であること示す記載はない。)、そのような通信が成立するということは、上記各アンテナから送信される相互に異なるデータが上記単一の受信器において正しく再生できることを意味する。
したがって、本願発明が上記のようなデータの通信に利用できることを理解するためには、本願発明に係る通信方法に従って送信される符号化パイロット信号とデータに基づいて、受信器が元の各データを正しく再生できる原理を理解する必要があり、本願の発明の詳細な説明には、上記原理を当業者が理解するために必要な事項が記載されている必要がある。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、複数のアンテナから同一キャリアを用いて同一タイミングで送信される相互に異なる複数のデータを、受信器がどのようにして正しく再生し得るのかに関する説明は一切なく、当業者といえども、本願の発明の詳細な説明の記載から上記原理を理解できるとは考えられない。
本願の発明の詳細な説明には「コヒーレント受信」、「コヒーレント検出」という記載があり、それらに関する技術常識に基づけば上記原理は当業者に理解可能であるということであれば、本願の発明の詳細な説明は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていると考える余地もあるが、「コヒーレント受信」ないし「コヒーレント検出」に関する技術常識をもって上記原理を当業者が理解可能であると認めるに足りる証拠はない。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1?6に係る発明について、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていない。」

4.当審の判断
当審は、本願の発明の詳細な説明は、少なくとも本願発明(請求項1に係る発明)について、依然として特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないと判断する。理由は以下のとおりである。

(1)特許法第36条第4項には、「発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。」と規定されており、そこでいう経済産業省令には、「特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則第24条の2)と規定されている。

(2)したがって、本願の発明の詳細な説明の記載が、「特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされている」といえるためには、本願の発明の詳細な説明に、「本願発明の技術上の意義を、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」と呼ぶ。)が理解するために必要な事項」が、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている必要がある。

(3)そこで、本願発明の技術上の意義について検討するに、本願発明は、本願明細書の段落0005?0009の記載と図1、2の記載を参酌すると、「2以上の各アンテナから、相互に異なるデータを、同一キャリアを用いて同一タイミングで、単一の受信器に向けて送信するようなデータの通信」(以下、「データ通信A」と呼ぶ。)において利用される方法であると解される。なお、このように解されることは、上記平成24年12月25日付けの拒絶理由通知で審判請求人に伝え、審判請求人も異論を唱えていない事項である。
したがって、本願発明の技術上の意義は、そのようなデータ通信Aを実現した点、あるいはそのようなデータ通信Aにおいて何らかの技術的貢献をもたらした点にあるものと考えられる。
そうすると、「本願発明の技術上の意義を当業者が理解するために必要な事項」は、「本願発明がデータ通信Aを実現し得ること、あるいは、本願発明がデータ通信Aにおいて何らかの技術的貢献をもたらし得ること、を当業者が理解するために必要な事項」であるということができ、それが、「当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている」といえるためには、当然のことながら、「本願発明を利用したデータ通信Aが成立すること」、換言すれば、「本願発明に係る通信方法に従って送信される符号化パイロット信号とデータに基づいて、データ通信Aに係るデータ(送信アンテナ毎に異なるデータ)を、受信器が正しく再生できる原理」(以下、「原理A」と呼ぶ。)を当業者が理解できる必要がある。

(4)しかしながら、上記平成24年12月25日付けの拒絶理由通知でも指摘したとおり、本願の発明の詳細な説明には、複数のアンテナから同一キャリアを用いて同一タイミングで送信される相互に異なる複数のデータを、受信器がどのようにして正しく再生し得るのかに関する説明は一切なく、当業者といえども、本願の発明の詳細な説明の記載から上記原理Aを理解できるとは考えられない。

なお、審判請求人は、平成25年3月26日付けの意見書において、「コヒーレント受信自体は、本願出願時の技術常識です。例えば、本願出願前の刊行物である"Digital Communication Techniques" (Marvin Simon, S. Hinedi and W. Lindsey,1994, Prentice Hall)に、「キャリアの位相の情報を利用する受信器はコヒーレント(受信器)と呼ばれる」旨が定義されています(316ページ、下から5?6行目)。」と主張しているが、そこで主張されている「キャリアの位相の情報を利用する受信器はコヒーレント(受信器)と呼ばれる」という事実は、上記原理Aを何ら明らかにするものではない。
また、審判請求人は、同意見書において、「本願発明は、上述したように同一のパイロット信号(キャリア信号)に対してコヒーレント受信を行うものであり、該パイロット信号と共に送信されているデータの内容の異同は該コヒーレント受信において問題となりません。」とも主張しているが、その主張は意味不明である。データの伝送を目的とする通信一般において、データの内容の異同が問題にならないということはおよそ考えられないことである。
上記意見書のその他の主張も、上記当審の判断を覆すに足りるものではない。
よって、上記意見書における審判請求人の主張は、採用の限りでない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、その他の拒絶の理由を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-09 
結審通知日 2013-04-15 
審決日 2013-05-08 
出願番号 特願2001-266662(P2001-266662)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浦口 幸宏齋藤 哲  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 飯田 清司
江口 能弘
発明の名称 通信方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
代理人 岡部 正夫  
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