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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1279710
審判番号 不服2012-10412  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-05 
確定日 2013-09-26 
事件の表示 特願2007- 49808「エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-214387〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成19年2月28日を出願日とする出願であって、平成23年10月19日付けで拒絶理由が通知され、同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.本願発明

本願の請求項1?4に係る発明は、平成23年12月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「半導体チップの電極と配線基板の電極とをフリップチップ接続する場合に半導体チップと配線基板との間に介在するエポキシ樹脂組成物に於いて、
膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤と、
膜厚が厚以上の第2のマイクロカプセル型硬化剤とを含むこと
を特徴とするエポキシ樹脂組成物。」

第3.原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由とされた平成23年10月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由4の概要は、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。

第4.原査定の拒絶の理由の妥当性について

1.本願発明に適用される明確性要件について
特許法第36条第6項第2号には、特許請求の範囲の記載は、「特許を受けようとする発明が明確であること」でなければならない旨が規定されており、その趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにあると解される。
そして、同法第36条第6項第2号の解釈、すなわち、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

2.本願発明に係る明確性要件の充足の有無について
本願発明は、「膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤と、膜厚が厚以上の第2のマイクロカプセル型硬化剤とを含むこと」を発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)として備えるものである。
そして、本願明細書等の発明の詳細な説明には、発明特定事項である「膜厚が薄」、「膜厚が厚」について、以下のように記載されている。
「【実施例1】
○ エポキシ樹脂組成物について
表1は本発明を実施したエポキシ樹脂組成物を一覧表にしたものであり、・・・硬化剤としてイミダゾールをコアとしたマイクロカプセル型硬化剤( マイクロカプセルの膜厚:極厚、厚、中、薄)、・・・をそれぞれ含んでいる。
【表1】


」(段落【0014】?【0015】)

「表2はカプセル膜厚を異にするマイクロカプセル型硬化剤を組み合わせて用いた場合の接合性をサンプル1?サンプル5について調査した結果を表したものである。
【表2】


カプセル膜厚の組合せが薄/極厚、薄/厚であるサンプル1及び2は、初期接合性、及び、チップ回路面へのダメージはなく、熱サイクル試験で良好な結果が得られることがわかった。」(段落【0025】?【0026】)
しかしながら、発明特定事項のうち、「膜厚が薄」、「膜厚が厚」とは、どのような数値範囲であれば、膜厚が薄、あるいは厚であるとするのかについて、本願明細書等において、何ら定義はなされていない。
また、本願明細書等の発明の詳細な説明には、膜厚が極厚、厚、中厚、薄の4種類のマイクロカプセル型硬化剤のうち、膜厚が異なる2種のマイクロカプセル型硬化剤を用いたエポキシ樹脂(サンプル1?5)が具体的に記載されている。そして、マイクロカプセル型硬化剤には、膜厚が「薄」であるものと「厚」であるものとの中間の厚さとして「中厚」のものが存在し、膜厚が「薄」と「中厚」の2種を用いた場合(サンプル3)、又は膜厚が「中厚」と「厚」の2種を用いた場合(サンプル5)について、初期導通、チップ回路面ダメージ、又は熱サイクル試験で良好な結果が得られないことが示されている。
すると、本願発明の発明特定事項である「膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤」と「膜厚が厚以上の第2のマイクロカプセル型硬化剤」の両者は、単に膜厚を異にする2種のマイクロカプセル型硬化剤ではなく、膜厚が「中厚」のものより薄い「第1のマイクロカプセル型硬化剤」と「中厚」のものより厚い「第2のマイクロカプセル型硬化剤」であるといえる。しかしながら、「中厚」の厚さは本願明細書等において具体的な定義はなく不明であることから、「第1のマイクロカプセル型硬化剤」における「膜厚が薄である」範囲が不明確であり、同様に「第2のマイクロカプセル型硬化剤」における「膜厚が厚以上である」範囲が不明確である。
してみれば、「膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤」、及び「膜厚が厚以上である第2のマイクロカプセル型硬化剤」とはそれぞれどの程度の厚さの膜厚を有するものが該当するのか不明であり、出願時の技術常識を参酌しても当業者が理解することができないものであるから、本願請求項1の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえる。
したがって、「膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤と、膜厚が厚以上の第2のマイクロカプセル型硬化剤とを含む」とする発明特定事項は本願発明の範囲を不明確とするものである。

3.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成23年12月22日付け意見書において、
「さて、本願発明に於いて用いたマイクロカプセルの膜厚、膜厚差に関する数値は以下の如くであります。即ち、
薄:0.05?0.1μm
中厚:0.1?0.9μm
厚:1?2μm
極厚:2μm
であります。」(1頁末行から13?7行)
旨主張している。
また、平成24年6月5日付け審判請求書において、
「本願発明に於けるエポキシ樹脂組成物は、マイクロカプセルの膜厚を異にする複数のマイクロカプセル型硬化剤を含むことが発明の構成要件になっていることは請求項1に見られる通りであります。ここで、本願発明に於ける膜厚を異にするマイクロカプセルは、定性的に見て、膜厚が厚いマイクロカプセル、及び、その膜厚が厚いマイクロカプセルに比較して膜厚が薄いマイクロカプセルを用いれば、発明を実施した際、明細書記載の効果を奏し得ることは、当業者のみならず、一般常識を備えた人々であっても充分に理解できる筈であり、マイクロカプセルの膜厚について定量的、即ち、数値的な記述がないからと云って、本願発明が理解できないとか、実施できないとか、目的とする効果を奏し得ないとかのおそれは皆無であって、本願明細書の記載を不明瞭とする根拠は何も存在しません。本願発明に於けるマイクロカプセルの膜厚は、使用する対象物、或いは、使用する環境など、様々な要因に依って多くの選択や組み合わせが必要であり、そのような場合の膜厚について厳密な値を一々挙げても、技術的には殆ど意味をもちません。」(4頁17行?5頁1行)
旨主張している。
しかしながら、本願明細書等には、膜厚の数値範囲に関して、「薄:0.05?0.1μm、中厚:0.1?0.9μm、厚:1?2μm、極厚:2μm」であることは何ら記載されていない。また、「薄:0.05?0.1μm、中厚:0.1?0.9μm、厚:1?2μm、極厚:2μm」との膜厚の数値範囲が、出願時において当業者の技術常識であったと認めるに足りる証拠もない。
また、「本願発明に於ける膜厚を異にするマイクロカプセルは、定性的に見て、膜厚が厚いマイクロカプセル、及び、その膜厚が厚いマイクロカプセルに比較して膜厚が薄いマイクロカプセルを用いれば、発明を実施した際、明細書記載の効果を奏し得ることは、当業者のみならず、一般常識を備えた人々であっても充分に理解できる筈であり、マイクロカプセルの膜厚について定量的、即ち、数値的な記述がないからと云って、本願発明が理解できないとか、実施できないとか、目的とする効果を奏し得ないとかのおそれは皆無であって、本願明細書の記載を不明瞭とする根拠は何も存在しません。」との主張の点について、上記2.で検討したとおり、本願発明の発明特定事項である「膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤」と「膜厚が厚以上の第2のマイクロカプセル型硬化剤」について、これらは単に膜厚を異にする2種のマイクロカプセル型硬化剤ではなく、膜厚が中厚のものより薄い「膜厚が薄である第1のマイクロカプセル型硬化剤」と、膜厚が中厚のものより厚い「膜厚が厚以上である第2のマイクロカプセル型硬化剤」であって、その「膜厚が薄である」及び「膜厚が厚以上である」範囲が不明確であることから、「定性的に見て、膜厚が厚いマイクロカプセル、及び、その膜厚が厚いマイクロカプセルに比較して膜厚が薄いマイクロカプセル」と解することは妥当ではない。そして、本願明細書等の発明の詳細な説明には、膜厚が「薄」と「中厚」の2種を用いた場合(サンプル3)、又は膜厚が「中厚」と「厚」の2種を用いた場合(サンプル5)について、初期導通、チップ回路面ダメージ、又は熱サイクル試験で良好な結果が得られないことが具体的に示されており、請求人の主張のとおりに「定性的に見て、膜厚が厚いマイクロカプセル、及び、その膜厚が厚いマイクロカプセルに比較して膜厚が薄いマイクロカプセル」と解した場合、本願発明の目的とする効果を奏し得ないものを包含するといえる。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

第5.むすび

以上のとおりであるから、本願請求項1について、特許を受けようとする発明が明確でなく、その記載は特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-10 
結審通知日 2013-07-16 
審決日 2013-08-12 
出願番号 特願2007-49808(P2007-49808)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 道弘  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 塩見 篤史
須藤 康洋
発明の名称 エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置  
代理人 渡邊 弘一  
代理人 林 恒徳  
代理人 土井 健二  
代理人 眞鍋 潔  
代理人 柏谷 昭司  
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