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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部無効 2項進歩性  A61F
審判 全部無効 1項1号公知  A61F
管理番号 1279767
審判番号 無効2013-800032  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-22 
確定日 2013-10-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第3277180号発明「二重瞼形成用テープまたは糸及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯等

1 本件特許第3277180号(以下、単に「本件特許」という。)についての特許出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴い平成13年5月29日になされ(優先日、平成12年10月3日)、平成14年2月8日に請求項1ないし11に係る発明についての特許が設定登録された。

2 これに対し、平成23年7月26日に、松浦 賢より、特許法第38条違反を理由として本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求める無効審判(無効2011-800133号)の請求がなされ、平成25年3月29日に請求不成立の審決が確定した。

3 さらに、平成23年9月14日に、請求人 株式会社ブルーアンドピンクより、特許法第36条第4項及び同法第29条第2項違反を理由として、本件の請求項1ないし11に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求める無効審判(無効2011-800174号)の請求がなされ(以下、「第2事件」という。)、平成24年3月14日に請求不成立の審決がなされた。これを不服とする請求人により知的財産高等裁判所へ出訴されたところ(平成24年(行ケ)第10133号)、平成24年12月20日に請求棄却の判決がなされ(以下、「第2事件判決」という。)、平成25年1月8日に請求不成立の審決が確定した。

4 その後、平成25年2月22日に、第2事件と同じ請求人 株式会社ブルーアンドピンクより、本件特許の請求項1ないし11に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求める無効審判(以下、「本件審判」という。)の請求がなされた。

5 平成25年5月20日に、被請求人 野尻英行より審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)が提出された。

6 平成25年6月18日付けで、審判長から審理事項通知がなされた。

7 平成25年7月23日付けで、両当事者から口頭審理陳述要領書が提出された。

8 そして、平成25年8月6日に口頭審理が行われたものである。

なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。また、特許法の条文を指摘する際に「特許法」という表記を省略することがある。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし請求項11に係る発明は、次のとおりである。(以下、「本件発明1」等ということがある。また、これらをまとめて単に「本件発明」ということがある。)
「【請求項1】延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。
【請求項2】上記粘着剤は上記テープ状部材の両面または片面に塗着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の二重瞼形成用テープ。
【請求項3】両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けた、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二重瞼形成用テープ。
【請求項4】上記テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼付した、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二重瞼形成用テープ。
【請求項5】上記破断部は、上記シートの長手方向略中央に設けられた切欠溝によって形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の二重瞼形成用テープ。
【請求項6】上記シートはシリコンペーパーまたはシリコン加工を施したフィルムである、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の二重瞼形成用テープ。
【請求項7】延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した任意長のシート状部材の両面または片面に粘着剤を塗着すると共に、その幅方向両端に粘着性のない把持部を形成し、
これを幅方向に細片状に切断する、
ことを特徴とする二重瞼形成用テープの製造方法。
【請求項8】延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した任意長のシート状部材の両面または片面に粘着剤を塗着し、
該粘着剤が塗着されたシート状部材の両面または片面に、長手方向略中央に切欠溝を形成した剥離シートを貼付し、
これを幅方向に細片状に切断する、
ことを特徴とする二重瞼形成用テープの製造方法。
【請求項9】延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した糸状部材に粘着剤を塗着することにより構成した、
ことを特徴とする二重瞼形成用糸。
【請求項10】両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けた、
ことを特徴とする請求項9に記載の二重瞼形成用糸。
【請求項11】上記糸状部材を、引張りによって破断する破断部を略中央に有する剥離カバーで覆った、
ことを特徴とする請求項9に記載の二重瞼形成用糸。」

第3 請求人の主張
1 要点
請求人は、本件の請求項1ないし請求項11に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求めている。
その理由の要点は以下のとおりである(審判請求書第23ページ第13行?第26ページ下から6行)。

(1)無効理由1
ア 本件発明1及び9は、実用新案登録第3043151号公報(甲第1号証)、実公昭51-1987号公報(甲第2号証)または実願昭61-24573号(実開昭62-136545号)のマイクロフィルム(甲第3号証)に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。(なお、特公平6-62384号公報(甲第4号証)に記載された発明と同一であるとの主張は、取り下げられた。(請求人口頭審理陳述要領書第39ページ「その他」欄))

イ 本件発明2ないし5及び本件発明10ないし11は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

(2)無効理由2
本件特許の対応の米国審査内容のとおり、本件発明1及び2は米国特許第4653483号明細書(Clavin特許/甲第15号証)に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

(3)無効理由3
ア 本件発明1及び9に対して
(ア)本件発明1及び9は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び特公平6-62384号公報(甲第4号証)の少なくとも1つと、特開2000-253930号公報(甲第23号証)とから当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。(以下「無効理由3-1」という。)

(イ)本件発明1及び9は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証の少なくとも1つと、甲第23号証と、米国特許第3645835号明細書(甲第24号証)とから当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。(以下「無効理由3-2」という。)

(ウ)本件発明1及び9は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証の少なくとも1つと、甲第23号証と周知・慣用技術とから、または、甲第1号証ないし甲第4号証の少なくとも1つと甲第23号証と甲第24号証と周知・慣用技術とから当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。(以下「無効理由3-3」という。)

イ 本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11に対して
本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11は、上記アの本件発明1及び9における上記証拠に加え、甲第1号証、甲第2号証及び/または甲第3号証から、当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。(以下「無効理由3-4」という。)

(4)無効理由4
ア 本件発明1及び9に対して
(ア)本件発明1及び9は、甲第2号証と周知・慣用技術とから当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

(イ)本件発明1及び9は、甲第2号証と甲第24号証と周知・慣用技術とから当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

イ 本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11に対して
本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11は、上記アの本件発明1及び9における証拠に加え、甲第1号証及び/または甲第3号証から、当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

(5)無効理由5
本件発明7及び8は、甲第1号証及び実願昭51-102594号(実開昭53-20684号)のマイクロフィルム(甲第30号証)に記載された発明と周知・慣用技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

(6)無効理由6
ア 本件特許の対応の米国審査内容のとおり、本件発明3ないし11は、甲第15号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

イ 本件特許の対応の米国審査内容のとおり、本件発明1ないし6及び9ないし11は、米国特許第3880175明細書(甲第17号証)に記載された発明から当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである。

(7)無効理由7
本件特許の請求項の範囲(請求項1ないし11)及び発明の詳細な説明の記載には不備があるので、本件特許は、特許法第36条第4項並びに特許法第36条第6項第1号及び第2号に違背し、特許法第123条第1項第4号の規定により無効にされるべきである。

2 証拠方法等
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第 1号証 登録実用新案第3043151号公報
甲第 2号証 実公昭51-1987号公報
甲第 3号証 実願昭61-24573号(実開昭62-136545)
のマイクロフィルム
甲第 4号証 特公平6-62384号公報
甲第 5号証 これでわかるプラスチック技術(“表紙”、
“はしがき”、第51ページ・第52ページ
及び最終ページの抜粋)
((株)工業調査会、2008年3月15日
初版第7刷発行)写し
甲第 6号証 図解プラスチックのはなし(第16ページ・第17ページ
及び最終ページの抜粋)((株)日本実業出版社、
1997年7月20日発行)写し
甲第 7号証 初歩のプラスチック 新版(“表紙”、“序”、
第38ページ、第109ページ及び最終ページの抜粋)
(株式会社三光出版社、平成24年2月10日新版発行
(昭和32年8月1日初版発行))写し
甲第 8号証 ブラッシュウエルマン ジャパン Technical Tidbits
2000年6月(2011年8月1日検索のウエブサイト
:http://www.materion.jp/alloy/tech_lit/june00.pdf)
甲第 9号証 9章 ストレッチ・シュリンク包装(日本梱包工業組合
連合会、平成17年9月30日発行)写し
甲第10号証 実願平4-52551号(実開平6-13821号)のC
D-ROM
甲第11号証 特開平5-111507号公報
甲第12号証 特許庁 特許・実用新案 審査基準(内表紙、第II部
第2章 新規性進歩性 第5ページ、最終ページ)
甲第13号証 本件の対応米国出願の公開公報(第2002/
0041956号公報)
甲第14号証 本案件の対応米国特許の公報(米国特許第6733856
号明細書)及びその和訳文(請求人作成)
甲第15号証 米国特許第4653483号明細書(Clavin特許)
及びその和訳文(請求人作成)
甲第16号証 オフィス・アクション(米国特許商標庁審査官、2002
年12月18日発行)及びその和訳文(請求人作成)
甲第17号証 米国特許第3880175号明細書(Hosokawa特許)
及びその和訳文(請求人作成)
甲第18号証 本件審判請求人よる意見書・補正書(2003年5月16
日)及びその和訳文(請求人作成)
甲第19号証 オフィス・アクション(米国特許商標庁審査官、2003
年6月25日発行)及びその和訳文(請求人作成)
甲第20号証 本件審判請求人による意見書・補正書(2003年9月2
5日)及びその和訳文(請求人作成)
甲第21号証 オフィス・アクション(米国特許商標庁審査官、2003
年11月3日発行)及びその和訳文(請求人作成)
甲第22号証 本件審判請求人による意見書・補正書(2003年12月
24日)及びその和訳文(請求人作成)
甲第23号証 特開2000-253930号公報
甲第24号証 米国特許第3645835号明細書及びその和訳文
(請求人作成)
甲第25号証 IPC 特許・実用新案 国際特許分類表第7版(内表紙、
第94ページ及び最終ページの抜粋)
(社団法人発明協会)写し
甲第26号証 特表平6-504077号公報
甲第27号証 特表平8-505593号公報
甲第28号証 特表平11-510201号公報
甲第29号証 広辞苑-第六版(表紙、「緊張」の掲載ページ
及び最終ページの抜粋)(株式会社岩波書店)写し
甲第30号証 実願昭51-102594号(実開昭53-20684号 )のマイクロフィルム
甲第31号証 特開2000-166965号公報
甲第32号証 特開平8-280734号公報
甲第33号証 実用新案登録第2587491号公報
甲第34号証 実公昭59-25367公報
甲第35号証 『“アイプチ”を手放せない女たち』(佐女短研究紀要
第40集,2006年、第39ページ?第47ページ)
写し
甲第36号証 本件特許の出願経過書類として提出された意見書
(平成13年12月18日)
甲第37号証 高分子加工 One Point-2 フィルムをつくる
(第19ページ及び最終ページ抜粋)
(共立出版株式会社、1995年10月25日
初版2刷発行)写し
甲第38号証 プラスチック加工技術ハンドブック
(第1183ページ及び最終ページ抜粋)
(日刊工業新聞社、1995年6月12日
初版1刷発行)写し
甲第39号証 プラスチックフィルム-加工と応用-
(第154ページ表4.2及び最終ページ抜粋
(技報堂出版株式会社、昭和53年2月1日
1版4刷発行)写し
甲第40号証 高分子加工 One Point-2 フィルムをつくる
(共立出版株式会社、第4ページ・第5ページ
及び最終ページ抜粋)(1995年10月25日
初版2刷発行)写し
甲第41号証 高分子加工 One Point-2 フィルムをつくる
(共立出版株式会社、第21ページ及び最終ページ抜粋)
(1995年10月25日初版2刷発行)写し
甲第42号証 Webster's Encyclopedic Unabridged Dictionary
of the English Language
(内表紙、第866ページ及び最終ページ抜粋)
(GRAMERCY BOOKS 1994年版)写し
甲第43号証 日本語大辞典(内表紙、第1940ページ
及び最終ページ抜粋)(株式会社講談社
2000年8月4日第2版第6刷発行)写し
甲第44号証 特許庁 特許・実用新案の審査基準(第II部 第2章
新規性進歩性の第13?14ページ抜粋、
2013年7月23日検索の特許庁ウェブサイト)

以上の証拠方法のうち、甲第1号証ないし甲第36号証は、審判請求書(以下、単に「請求書」ということがある。)に添付され、それ以外は、その後提出されたものである。また、これらの証拠方法の成立について、当事者間に争いはない(口頭審理調書の「被請求人」欄2)。

さらに、請求人口頭審理陳述要領書添付にて、以下の参考文献が提出されている。
参考資料1 平成24年(行ケ)第10091号判決の抜粋
参考資料2 平成17年(行ケ)第10042号判決の抜粋
参考資料3 最先端プラスチック成形加工シリーズ 第4巻
先端成形加工技術I(第185ページ及び最終ページ抜粋)
(株式会社会社プラスチックスエージ、
2012年6月10日初版発行)写し

3 主張の概要
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)主に無効理由1について
ア “延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性”を有するといった性質は、甲第5号証及び甲第7号証等に示す通り「合成樹脂により形成した細いテープ状部材」が有する固有の性質であり発明を特定する構成ではない。(請求書第30ページ下から4行?末行)

イ 合成樹脂と呼ばれるものは、一般に、引っ張ればその引っ張り方向に伸びるように変形し、その後に力を緩めれば程度の差はあれ縮む特性を呈する。即ち、“弾性変形領域”では弾性的に元の形状へと回復し、“塑性変形増加領域”では部分的に弾性回復する特性を有する。(請求書第34ページ第6?9行)

ウ 合成樹脂と呼ばれるものは、引っ張ればその引っ張り方向に伸びるように変形し、その後にその力を緩めれば程度の差はあれ縮む特性を一般に呈するものであるが、“細い合成樹脂テープ”は、伸び易く上記特性が特に発現されやすい。(請求書第35ページ第1?4行)

エ 請求書で説明した「合成樹脂の一般的特性」、「細いテープ状部材」および「本件明細書における合成樹脂の具体的例示」に鑑みると、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」といった構成要件1Aにおける「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」の要件は、甲第12号証の審査基準を踏まえ、引用発明との対比において考慮する必要はない。言い換えると、構成要件1Aは単に「細い合成樹脂テープ」であると解釈され、本件発明1は、「細い合成樹脂テープに、」「粘着剤を塗着することにより構成した」「ことを特徴とする二重瞼形成用テープ」と分説される。(請求書第37ページ下から8行?第38ページ上部の表、等)

オ 甲第1号証の段落【0013】、段落【0007】、段落【0023】及び図1ないし3の記載から明らかなように、甲第1号証には、以下の構成の発明が開示されている。
1A’.合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、
1B. 粘着剤を塗着することにより構成した、
1C. ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。
(請求書第39ページ第7?11行等)

カ 甲第2号証の実用新案登録請求の範囲及び第1図、第2図の記載から明らかなように、甲第2号証には、以下の構成の発明が開示されている。
1A’.合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、
1B. 粘着剤を塗着することにより構成した、
1C. ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。
(請求書第40ページ第1?5行等)

キ 甲第3号証の第3頁第3?10行、第3頁第11行?第4頁第2行、第6頁第3?10行の記載から明らかなように、甲第3号証には、以下の構成の発明が開示されている。
1A’.合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、
1B. 粘着剤を塗着することにより構成した、
1C. ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。
(請求書第40ページ下から2行?第41ページ第3行等)

ク 甲第1号証ないし甲第3号証には、いずれも「細い合成樹脂テープに粘着剤を塗着することにより構成した二重瞼形成用テープ(構成要件1A’、1B及び1C)」が開示されている。よって、本件発明1は甲第1号証ないし甲第3号証に記載された各発明と同一である。(請求書第41ページ下から9行?6行等)

ケ 甲第1号証及び甲第2号証には、甲第1号証の段落【0007】、【0013】及び図2ないし図3、甲第2号証の第1欄第19行?第26行における記載等から分かるように、「テープ状部材の両面または片面に粘着剤が塗着された二重瞼形成用テープ」が開示されている。
従って、本件発明2は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明と同一である。(請求書第46ページ下から8行?4行等)

コ 甲第1号証及び甲第2号証には、甲第1号証の段落【0010】、【0019】?【0022】及び【0025】、甲第2号証の第1欄第27行?第2欄第1行における記載等から分かるように、「両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けた二重瞼形成用テープ」が開示されている。
従って、本件発明3は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明と同一である。(請求書第48ページ第8?13行等)

サ 甲第1号証及び甲第2号証には、甲第1号証の段落【0015】及び【0018】、甲第2号証の第1欄第27行?第2欄第1行及び第1図における記載等から分かるように、「引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼付した二重瞼形成用テープ」が開示されている。
従って、本件発明4は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明と同一である。(請求書第49ページ第15?20行等)

シ 甲第1号証及び甲第2号証には、甲第1号証の段落【0015】、甲第2号証の第1欄第27行?第2欄第1行及び第1図における記載等から分かるように、「破断部は、上記シートの長手方向略中央に設けられた切欠溝によって形成された二重瞼形成用テープ」が開示されている。
従って、本件発明5は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一である。(請求書第50ページ下から12行?7行等)

ス 本件発明1について説明した無効理由1は、本件発明9にそのまま当てはまる。従って、本件発明9は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された各発明と同一である。(請求書第45ページ下から7行?末行)

セ 本件発明10の構成要件は、本件発明3の構成要件と同一である。従って、本件発明10は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明と同一である。(請求書第51ページ第4?15行)

ソ 本件発明11の構成要件は、本件発明4及び5の構成要件と同一である。従って、本件発明11は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明と同一である。(請求書第51ページ下から6行?第52ページ第6行)

タ 特許の要件を審理する前提としてされる発明の要旨の認定は,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなど,発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁)。
本件発明の特許請求の範囲に記載された「弾性的な伸縮性」は、それ自体で意味が不明であるとか、一見して記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなど,発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される特段の事情はない。
本件特許の特許要件を審理し判断する前提として,発明の要旨を認定する場合において、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」を「延伸可能でその延伸後にも瞼に貼り付けて瞼へのくい込みによってひだが形成されるほどの弾性的な伸縮性を有する」と限定的に解釈すべきではなく、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」は、請求の範囲に記載されたどおりに解釈して本件特許発明を認定すべきである。(請求人口頭審理陳述要領書第5ページ下から12行?第7ページ第1行の下線部及び結論の部分)

(2)主に無効理由2及び6について
ア 甲第15号証の“人工的な二重瞼を形成する発明”における細片材料の透明ポリエチレンフィルムは、引っ張ればその引っ張り方向に伸びるように変形し、その後に力を緩めれば程度の差はあれ縮む特性を呈するものである。つまり、甲第15号証には「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細片状の裏材(細いテープ状部材)から成る二重瞼形成用テープ」が開示されている。よって、本件発明1及び2は、本件特許の対応米国審査で判断された通り、本件特許の出願日前に頒布された甲第15号証に記載の発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
(請求書第53ページ下から7行?第54ページ第5行)

イ 米国審査官は、2003年11月3日に、アドバイザリー・アクションを発して、再度、「Clavinは、出願人が最も好適であるとしたポリエチレンフィルムで作成され、そのフィルムの両側表面に粘着剤が塗着された化粧用テープを教示している」?「延伸特性及び反跳特性などの性質が固有のものである・・・・」(甲第21号証の第2頁「1.」参照)と判断し、また、Hosokawa特許(甲第17号証)に関しては、「ポリエステル、塩化ビニル、アセテートなどの適当なプラスチック・フィルムが引例(Hosokawa特許)に教示されており、」また、「引例(Hosokawa特許)に開示されている種類のプラスチック・フィルムは、『弾性材料』であると確信して」いる、として拒絶判断を維持した(甲第21号証の第2頁「2.」参照)。出願人は、これに応じて、最終的に2003年12月24日にクレーム1をキャンセルした(甲第22号証の第2頁参照)。(請求書第55ページ下から6行?第56ページ第5行)

ウ 甲第17号証には、以下の構成の発明が開示されている。
1A’.合成樹脂により形成した細い部材に、
1B. 粘着剤を塗着することにより構成した、
1C. ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。
(請求書第101ページ下から11行?7行)

エ 甲第17号証の発明の目的・課題として「Another object of the present invention is to provide false eyelashes which may change a single eyelid to double eyelid」(第1欄第24行?第26行)と明確に記載されている。発明の目的・課題は、少なくとも当該発明の根幹に係わる部分であり、発明明細書で開示する技術思想に大きく影響を及ぼす。つまり、記載自体は断片的であっても、甲第17号証が開示する「二重瞼が形成されるつけ睫毛構造」の思想は決して断片的ではない。(請求人口頭審理陳述要領書第38ページ下から12行?7行)

オ Clavin特許及びHosokawa特許のいずれの二重瞼形成用テープも、使用時には最終的に指でもって瞼に取り付けることが可能である。よって、指先で把持するための把持部を設けることぐらいのことは、当業者にとっては何の困難性もなく、容易に想起できた事項にすぎない。使用時を考慮して必然的な最適化を図ったにすぎないからである。(請求書第102ページ第4?8行)

カ また、未使用時にて粘着部を外界から保護するために剥離部で覆い、使用時にて粘着部を露出させる二重瞼形成品の形態自体は、粘着性低化の防止や未使用時の取り扱い易さの点から当業者の通常創作し得る範囲にすぎない。そして、使用時に粘着部を露出させるための施策として、剥離部に破断部を設けること(すなわち、剥離部の取外しを容易にするために予め切断部を設けておくこと)、かかる破断部を溝形態にすること、溝形態の破断部を剥離部の中央に設けることなども、使用時を考慮して必然的な最適化を図ったものにすぎず、当業者にとって格別な困難性があるとはいえない。(請求書第102ページ第9?16行)

キ 米国審査においては、Clavin特許(甲第15号証)に基づき本件発明3?11はその進歩性が否定され、Hosokawa特許(甲第17号証)に基づき本件発明1?6及び9?11はその進歩性が否定された。
「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性」がポリエチレン・テープ部材の固有性質であるので、Clavin特許(甲第15号証)の記載に基づいて本件発明1?2の新規性が否定され(無効理由2)、本件発明3?11については進歩性が否定された(甲第16号証、甲第19号証及び甲第21号証参照)。(請求書第105ページ第5?13行)

(3)主に無効理由3について
ア 甲第23号証の記載(特に段落【0006】の「幅は、ゴム状の帯1は適当でよく、2は眉の太さ程度、あまり狭いと瞼にすじ、しわが出来易く、3は、2と同じ位か少し広めでも良い。」なる記載)からは、瞼上に取り付けた帯状ゴム材によって、瞼にすじ、しわが出来ることが開示されている。特に図示されている上記の態様も併せて参照すれば、瞼上の帯状ゴム材を「二重瞼テープ」のごとく細くすれば、瞼皮膚に皺(特に二重瞼のような横方向の皺)ができることが強力に示唆されている。
つまり、甲第23号証に接した当業者にとってみれば、伸縮性の合成樹脂材を瞼上に適用すれば、その伸縮力に起因して二重瞼のような皺が形成できることを無理なく把握できる。(請求書第60ページ下から12行?5行等)

イ 甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証には「細い合成樹脂テープに粘着剤を塗着することにより構成された二重瞼形成用テープ」が開示されている。そして、甲第23号証に開示されている細いゴム帯は、細い高分子弾性体であって、引っ張れば伸び、伸びた後に引張力を緩めれば元の形状に戻る特性を有するので、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する細い合成樹脂帯」に相当する。
従って、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証における“細い合成樹脂テープ”を甲第23号証の「細いゴム帯」に置き換えると、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する細い合成樹脂テープに粘着剤を塗着することにより構成された二重瞼形成用テープ」には容易に至る。(請求書第63ページ第2?11行)

ウ 甲第24号証には、人の皮膚に適用される「接着剤(adhesive material)を備えた基材(backing material)」が開示されており、かかる「接着剤を備えた基材」が皺形成材(wrinkle producers)として用いられることが開示されている。また、基材自体が、延伸可能で、延伸後に伸縮性(即ち延伸後の縮み)を有する特性であることが記載されていると共に、基材を伸ばした状態で皮膚に適用して皺形成を行うことも開示されている。(請求書第67ページ下から15行?9行)

エ 甲第24号証には、「延伸後に弾性的な縮み特性を有する合成樹脂をストレッチさせた状態で皮膚に貼り付け、その収縮力により美容用の皺・襞を形成する」ことが開示または示唆されている。従って、かかる甲第24号証の内容を、“同じく皮膚適用部材ないしは皺形成用の粘着部材”といった点で技術的関連性が高い“甲第1号証?甲第4号証及び甲第23号証”へと適用すると、本件発明1の内容には容易に想到する。(請求書第69ページ下から11行?6行)

オ 甲第24号証には、「Some examples of specific uses of the adhesive material of the invention are as ・・・・・, eye liners, wrinkle producers (for theatrical make up) etc.」との記載がある(第3欄第1?5行)。つまり、“theatrical”といえども皺形成品の用途として「make up」と表出されている以上、甲第24号証に接した当業者にとってみれば、化粧のように容姿を変える概念が想起される。「make up」は、例えばWebster's Encyclopedic Unabridged Dictionary(甲第42号証)に依ると、 “cosmetic(facial cosmetic)”の意味を少なくとも包含している。甲第24号証の「wrinkle producer」について美容的な概念が含んでいると解しても特段不自然でない。(口頭審理陳述要領書第26ページ下から10行?末行)

カ 「延伸可能で、その延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂テープ」は、例えば甲第26号証、甲第27号証、甲第28号証、甲第10号証および甲第11号証などから分かるように、そもそも本件出願の優先日時点にて既に周知または慣用となった技術である。従って、当業者にとってみれば、「甲第1号証?甲第4号証の少なくとも1つと甲第23号証との組合せ」に対して、又は「それに甲第24号証を更に加えた組合せ」に対して、上記周知・慣用技術を適用して考えると、更により容易に本件発明1に想到する。(請求書第72ページ第11?19行)

キ したがって、当業者であれば、甲第1号証の段落【0015】の記載、及び甲第3号証の第5ページ下から第3行の記載を参照して、本件発明4において剥離シートをシリコン加工により設けたフィルムとすることは容易に想到できたものといえる。よって、本件発明6は、「甲第1号証と甲第3号証と甲第23号証との組合せ」、「甲第1号証と甲第3号証と甲第23号証と甲第24号証との組合せ」、「甲第1号証と甲第3号証と甲第23号証との組合せと周知・慣用技術」または「甲第1号証と甲第3号証と甲第23号証と甲第24号証との組合せと周知・慣用技術」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(請求書第79ページ第5?15行)

(4)主に無効理由4について
ア 甲第2号証には、「開眼時この二重瞼形成用薄膜は緊張して上瞼の下側縁を固定するので不貼着部がたるみ下つて二重瞼が形成されることとなる」と記載されているところ(第2欄第1行?第4行)、「二重瞼形成用薄膜は緊張して」及び「・・上瞼の下側縁を固定する」などの表現からは、開眼時に二重瞼形成用薄膜が張るように皮膚へと押圧力をもたらすこと、即ち、二重瞼形成用薄膜が引き締まるように作用して皮膚へと押圧力をもたらすことが容易に想起される。甲第29号証の広辞苑における「緊張」の用語意味も参照されたい。(請求書第82ページ下から9行?末行)

イ 甲第2号証では、(開眼時であるか閉眼時かに拘わらず使用時において)二重瞼形成用薄膜の緊張力(引き締めるような力)によって二重瞼形成用薄膜を結果的に瞼皮膚へと食い込ませ、それによって、二重瞼を形成することが開示又は示唆されている。つまり、甲第2号証では、本件発明1の二重瞼形成原理・作用と実質的に同じものが示唆されているので、当該甲第2号証に基いて本件発明1は容易想到できたものといえる。(請求書第84ページ第1?10行)

ウ 「延伸後に弾性的な縮み特性を有する合成樹脂によって美容用の皺・襞を形成する」ことが示唆されている甲第24号証の内容を、“同じく皮膚適用部材ないしは皺形成用の粘着部材”といった点で技術的関連性が高い甲第2号証に適用して考えると、本件発明1の内容には更に容易に想到する。(請求書第86ページ第2?6行)

エ 甲第2号証から把握できるのは、あくまでも甲第2号証の薄膜が二重瞼形成に寄与する原理である。具体的には、薄膜が瞼皮膚に結果的に食い込むように作用して二重瞼が形成されることが理解できる。
請求人の主張は、甲第2号証の“緊張”及び“固定”との表現から「薄膜がゆるみなくピタッっと瞼皮膚に食い込むこと」が当業者は想起されるので、より効果的に食い込みを引き起こすと考えられる伸縮性材質を用いることについて当業者は格別の創意工夫を要するといえない、ということである。(請求人口頭審理陳述要領書第30ページ下から7行?末行)

(5)主に無効理由5について
ア 当業者であれば、上記のような細い積層体をシート状積層体から得ようとすることは、生産性の観点(特に、二重瞼形成品を複数個のセットで販売することを念頭にして、ある程度の個数を一括して製造しようと試みる観点)に鑑みれば、極々自然なことである。つまり、積層体をシート状に幅広い大きいサイズで形成して、それを裁断することで細い積層体を得るぐらいのことは、当業者にとっては何の困難性もなく、容易に想起することができた事項にすぎない。(請求書第93ページ第1?7行)

イ 甲第30号証には「幅広いサイズのシート積層体をカットして細い積層体(特に“美容目的で瞼に適用される積層体”)を得ること」が強力に示唆されている。従って、かかる甲第30号証の内容を“同じく美容目的で瞼に適用されるといった点で技術的関連性が高い甲第1号証”に適用することによって当業者は本件発明7を更に容易に想到する。(請求書第95ページ第1?5行)

ウ 本件明細書を全体的に参酌すると、「粘着性のない把持部をテープ端部に形成する」ことも、「長手方向略中央に切欠溝を形成した剥離シートを設ける」ことも、いずれの場合でも「指で把持する部分を考慮して剥離シートに分断部を設ける」ことに変わりはないことが分かる。使用時の態様を踏まえた“必然的な最適化”は通常なされることである。よって、分断部を略中央に設けるかそうでないかなどは、使用時の態様に鑑みた単なる設計的事項の変更の範囲にすぎない。(請求書第98ページ下から3行?第99ページ第4行)

(6)主に無効理由7について
[第36条第6項1号違反について]
ア 本件特許請求の範囲の記載は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」として、すべての合成樹脂を含む広い記載になっており、発明の詳細な説明において当業者が本件発明が解決しようとする課題が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えている。
すなわち、本件明細書の段落[0010]には「テープ状部材1としては、・・・・特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ましい。」との記載があり、具体例としてポリエチレンが挙げられているが、当該記載は特定のポリエチレンにより二重瞼が形成されることを示したにとどまり、延伸後にどの程度の弾性的な伸縮性を有するポリエチレンによって本件発明が解決しようとする課題が解決されるのか開示も示唆もなく、まして当該記載をもってすべての合成樹脂を含むように一般化した「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂」により課題が解決できることを当業者が認識できるとは到底いえない。
また、本件明細書のどこをみても本件明細書段落[0008]に記載された作用効果を得るために必要な特定の伸縮性については開示も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号に違反する。(請求書第111ページ第1?21行)

イ 本件発明1における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、甲第4号証や甲第24号証に示されるような従来からある伸縮性を有する二重瞼形成用テープを含む記載になっており、明細書及び図面の記載を参酌しても本件発明1の発明を明確に把握することができない。(請求書第112ページ下から5行?末行等)

[第36条第6項2号違反について]
第36条第6項1号違反においても指摘したように、本件発明1等における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、従来からある伸縮性を有する二重瞼形成用テープを含む記載になっており、明細書及び図面の記載を参酌しても従来技術から区別された本件発明1を明確に把握することができない。
したがって、本件発明1は、特許法第36条第6項第2号に違反している。(請求書第114ページ第16?20行等)

[第36条第4項違反について]
エ 本件明細書には、本件発明1?11に係る「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂」が、どのような伸縮性を有していれば、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって二重瞼のひだが形成されるのか、明細書にはなんら記載されておらず、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になる伸縮性を見出すために試行錯誤が必要になり、また、合成樹脂として例示されたポリエチレン等は製造方法により延伸性及び伸縮性が異なることは技術常識であるから、本件発明1?11を実施しようとしたときに当業者に過度の試行錯誤を強いることとなり、特許法第36条第4項に違反する。(請求書第115ページ下から15行?7行)

オ 第2事件における合議体の判断は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」における「弾性的な伸縮性」がどの程度のものか分かっているという前提で、そのような「弾性的な伸縮性」を有する合成樹脂を市販されている合成樹脂の中から選定することは容易であると判断したものと解される。
上記第2事件における判断に対して、本審判事件では、審判請求書115頁19行?27行に記載したように、瞼に食い込む状態になるような「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性」を見出すプロセスに過度の試行錯誤が必要になることを理由として本件特許が実施可能要件を満足するものではないことを主張するものである。
したがって、本審判事件の実施可能要件に係る主張は、第2事件における主張及び判断とは理由が異なっており、一事不再理が適用されるものではない。(請求人口頭審理陳述要領書第13ページ下から15行?5行)

(7)その他
乙第4号証第7?11頁には、伸縮性がないものでも二重まぶたが形成されると示されている。伸縮性のみの要因で、二重まぶたが出来るか出来ないかが決まるものではない。(口頭審理調書の「請求人」欄3)

第4 被請求人の主張
1 要点
これに対し、被請求人は、以下の理由、証拠方法に基づき、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

乙第1号証
伸縮性を有する基材(低密度ポリエチレン)から成る本件発明の実施品(メザイク)及び請求人の製品(メジカル)と、伸縮性のない基材(ポリエステル)から成るタックインテープとを用いた二重瞼形成実験の結果を示すDVD
乙第2号証の1
伸縮性を有する基材(低密度ポリエチレン)から成る本件発明の実施品(メザイク)及び請求人の製品(メジカル)と、伸縮性の無い基材(ポリエステル)から成るタックインテープ及び伸縮不可テープとを用いた二重瞼形成実験の結果(装着時のテープ幅が何れも約0.4mm)を示すDVD。
乙第2号証の2
伸縮性を有する基材(低密度ポリエチレン)から成る本件発明の実施品(メザイク)と、伸縮性の無い基材(ポリエステル)から成るタックインテープ及び伸縮不可テープとを用いた二重瞼形成実験の結果(装着時のテープ幅が何れも約1mm)を示すDVD
乙第3号証
第2事件判決(写し)
乙第4号証
被請求人が請求人を相手取って東京地方裁判所に提起している損害賠償等請求事件(平成22年(ワ)第36485号)において、被請求人が裁判所に提出した技術説明資料
乙第5号証
第2事件における第1回口頭審理調書

2 主張の概要
被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)主に無効理由1に対する反論
ア 甲第5号証?甲第7号証には、プラスチック(すなわち合成樹脂)の一般的な性質が示されているに過ぎない。(答弁書第5ページ第14?15行)
イ 本件発明は単なる「合成樹脂テープ」に係るものではなく「二重瞼形成用テープ」に係るもので、その用途が限定されているところ、本件発明を特定する各用語(発明特定事項)の意味を解釈するにあたっては、本件明細書及び図面に記載された定義・説明並びに技術常識を考慮することにより、その用途に則した合理的な解釈をするべきである。(答弁書第6ページ第2?7行)
ウ 本件発明における「延伸可能」とは、「使用者自らの手で延伸させて使用することができる」ことである。(答弁書第8ページ下から8行?7行)
エ 本件発明に係る二重瞼形成用テープは、瞼にくい込んで二重瞼のひだを形成することができる弾性的な伸縮性を有しているということができる。よって、本件発明における「延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」とは、「延伸させた後にも、瞼にくい込んで二重瞼のひだの形成に寄与する弾性的な伸縮性を有する」ことである。(答弁書第9ページ第17?22行)
オ 本件発明において「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる事項は、二重瞼の形成に関して技術的意義を有している。したがって、本件発明における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる事項は、決して「合成樹脂により形成した細いテープ状部材(糸状部材)が有する固有の性質」を意味するものではない。(答弁書第10ページ下から10行?末行)

(2)主に無効理由2及び6に対する反論
ア 本件発明に係る二重瞼形成用テープは、ひだの無い一重の瞼にひだを形成して二重瞼にするためのものであるのに対し、甲第15号証に記載の化粧用テープ(両面粘着細片)は、たるんだ皮膚に非外科的にタックを作ることによって、その皮膚のたるみを軽減するためのもので、ひだの無い瞼にひだを形成するものではないから、「二重瞼形成用テープ」とはいえない。(答弁書第48ページ第7?13行)
イ 被請求人は、日米両国の審査における具体的な運用の違いや、用語の解釈の違い等、様々な事情を考慮して、最終的に、審査官が許可することができるとしたクレームに限定したに過ぎない。(答弁書第23ページ第19?22行)
ウ 甲第17号証における装着部がポリエステル、塩化ビニル、アセテートなどのプラスチックフィルムで製作されているからといって、該装着部が、本件発明でいうところの「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」ものであるとは到底いうことはできない。(答弁書第49ページ下から11行?7行)

(3)主に無効理由3に対する反論
ア 甲第1号証の段落【0014】に記載されているように、テープ基材2から成るテープ単体1Aの形状を略三日月形状としたのは、瞼に貼り付ける際に、その形状を利用して瞼の凸曲面に適合させるためであることからすると、当該テープ単体1Aは、貼着の前後でその形状が維持されている必要があり、「延伸」等によって変形することがないものであることが予定されているというべきである。(答弁書第12ページ第8?14行)
イ 甲第3号証のプラスチックシートから成る整形用粘着シート片の形状を三日月形状としたのは、瞼に貼り付ける際に、その形状を利用して瞼の凸曲面に適合させるためであることからすると、当該整形用粘着シート片は、貼着の前後でその形状が維持されている必要があり、「延伸」等によって変形することがないものであることが予定されているというべきである。(答弁書第14ページ下から2行?第15ページ第4行)
ウ 甲第4号証の各処理剤については、そもそも使用前には液状のもので、上瞼に塗布、乾燥してはじめて塗膜や被膜を形成するものであるから、「延伸」させての使用自体が不可能である。また、甲第4号証記載のテープは、瞼のテープを貼付した部分と貼付していない部分との硬さ及び伸縮性の違いを利用して二重瞼を形成するもので、本件発明の従来技術に相当するものに過ぎない。(答弁書第16ページ第6?11行)
エ 甲第23号証に記載の発明は、パッチリとした大きな目を実現するため、ゴムの張力で瞼の脂肪を取り除くものであって、一重瞼に二重瞼のひだを形成する二重瞼形成用テープとは何ら関係が無いものである。また、この甲第23号証に記載されたものは無端のゴムによって構成されたもので、装着した状態においてゴム2に常に長手方向に張力が作用しているのに対し、二重瞼形成用テープは両端を有していて、装着した状態において長手方向に張力が作用していないことからすれば、両者は、その作用や機能から見ても全く無関係である。(答弁書第25ページ下から6行?第26ページ第3行)
オ 甲第24号証には、感圧接着材料を、延伸後の弾性的な伸縮性を利用して二重瞼を形成する二重瞼形成用テープとして使用することについては何ら開示されていない。また、そもそも甲第24号証の記載では、伸縮性基材を使用した舞台効果のためのしわ形成とは、如何なる形態のしわを意味するのかが何ら明確となっていない。(答弁書第27ページ第8?13行)

(4)主に無効理由4に対する反論
甲第2号証は、その形態を「瞼の形状に略々合わせての横細長片でその長さも瞼の長さに合う程度のもの」としたものであることや、「使用にあたっては、自分に最もあうものをとり出し隅角部分などを鋏等で曲線を付して切落すことにより各人の瞼とぴったりのものとすることが出来」るように、このような形態を採用したこと等を勘案すれば、二重瞼形成用薄膜は、貼着の前後でその形状が維持されている必要があり、「延伸」等によって変形することがないものであることが予定されているというべきである。(答弁書第34ページ末行?第35ページ第8行)

(5)主に無効理由5に対する反論
甲第30号証には、付け睫用の両面テープが開示されているに過ぎず、その両面テープを二重瞼の形成に用いることや、その両面テープが、本件発明における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」ことについては何ら開示されておらず、示唆さえもされていない。(答弁書第44ページ下から6行?2行)

(6)主に無効理由7に対する反論
ア 本件発明における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる事項は、決して合成樹脂固有の性質を示すものではなく、それぞれ「延伸」、「延伸可能」及び「その延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる事項の二重瞼形成における技術的意義は、本件明細書の段落【0008】?【0010】、【0016】及び【0017】等の記載を、技術常識をもって理解することにより明確である。また、本件発明は、テープ状部材の延伸後の弾性的な伸縮性を利用して該テープ状部材自身を瞼にくい込ませることにより二重瞼のひだを形成するという、段落【0002】に記載した従来の所謂「接着方式」や「被膜方式」とは全く異なる二重瞼の形成方式(メカニズム)を実現する二重瞼形成用テープであって、段落【0008】及び【0009】に記載の作用効果を奏するものであるから、本件発明が課題を解決することができるものであることも明らかである。よって、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を、何ら超えるものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を明らかに充たしている。(答弁書第54ページ第7行?第55ページ第2行)
イ 本件発明1等における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、従来からある二重瞼形成用テープを決して含むものではなく、従来技術から区別された本件発明1等を明確に把握することができるから、本件発明1等は、特許法第36条第6項第2号の要件を明らかに充たしている。(答弁書第56ページ下から10行?5行)
ウ 第2事件判決においても、裁判所は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項を充たしていると判示しており(乙第3号証)、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項の要件を充たしている。(答弁書第58ページ下から5行?第59ページ第3行)

第5 当審の判断
1 本件発明
本件発明1ないし本件発明11は、明細書及び図面の記載からみて、上記第2のとおりと認める。

2 各甲号証の記載内容
請求人が提出した証拠である甲第1号証ないし甲第44号証には、以下の発明または事項が記載されている。このうち、少なくとも、甲第1号証ないし甲第4号証、甲第10号証ないし甲第11号証、甲第15号証、甲第17号証、甲第23号証ないし甲第28号証、甲第30号証ないし甲第34号証、甲第37号証ないし甲第43号証は、本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である。

(2-1)甲第1号証
ア 甲第1号証に記載された事項
(ア)実用新案登録請求の範囲の請求項1
「【請求項1】 フィルムからなるテープ基材(2)の裏面に、粘着剤層(3)を介して剥離材(4)が設けられ、該剥離材(4)の裏面に、部分的な接着剤層(5)を介して台紙(6)が設けられ、前記テープ基材(2)及び剥離材(4)に共に、まぶたに貼り付ける所要形状・寸法のテープ単体(1A)を区切る切目(7)がループ状に設けられ、前記剥離材(4)に、テープ単体(1A)の左右方向中途部分に位置して上下方向に延びる切目(9)が設けられ、
前記接着剤層(5)は、前記ループ状切目(7)によって区切られた剥離材(4A,4B)及び前記テープ単体(1A)の左右両端部に指先でつまめる部分を残して該左右両端部の可及的近傍に設けられていることを特徴とする二重まぶた形成用テープ。」

(イ)段落【0001】
「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、人の目の上まぶたに貼って二重まぶたを形成するための二重まぶた形成用テープに関するものである。」

(ウ)段落【0007】
「【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、本考案は、フィルムからなるテープ基材の裏面に、粘着剤層を介して剥離材が設けられ、該剥離材の裏面に部分的な接着剤層を介して台紙が設けられ、前記テープ基材及び剥離材に共に、まぶたに貼り付ける所要形状・寸法のテープ単体を区切る切目がループ状に設けられ、前記剥離材に、テープ単体の左右方向中途部分に位置して上下方向に延びる切目が設けられ、前記接着剤層は、前記ループ状切目によって区切られた剥離材及び前記テープ単体の左右両端部に指でつまめる部分を残して該左右両端部の可及的近傍に設けられていることを特徴とするものである。」

(エ)段落【0013】
「【0013】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1?図3は、本考案に係る二重まぶた形成用テープ1の一実施形態を示している。
この二重まぶた形成用テープ1は、合成樹脂例えばポリエステルからなる半透明又は透明なフィルムであるテープ基材2と、該基材2の裏面に粘着剤層3(例えばアクリル系粘着剤)を介して設けられた剥離材4(表裏両面にセパレータ処理をした上質紙)と、剥離材4の裏面に部分的な接着剤層5を介して設けられた台紙6とにより構成されている。」

(オ)段落【0014】
「【0014】
前記テープ基材2及び剥離材4には、共に略三日月形状をした所要形状・寸法のテープ単体1A?1Aを区切るループ状の切目7が、左右2列(左眼用と右眼用の一対)に、且つ上下方向に所定間隔で複数組設けられている。また、前記テープ基材2の表面には、前記各切目7の外側に位置してこれを囲むようにループライン状の目印8が夫々設けられている。」

(カ)段落【0023】
「【0023】
前記テープ基材2は、前記材料に限定されるものではなく、また、適度に所望の着色を施したものとすることができ、形状・サイズ等も任意に設定し、使用者の個性を生かしうる二重まぶた形成用テープとすることができる。・・・(後略)」

(キ)図1
以下の図1によれば、テープ基材2のループ状切目7の内側のテープ単体1Aに対応する部分、が左右対称の湾曲した形状をしていることが看て取れる。


イ 甲第1号証記載の発明
上記摘記事項ア(オ)及び上記(キ)で示した図1から、「二重まぶた形成用テープ単体1A」の形状を画定する「テープ基材2」は、細いテープ基材2、ということができる。
そして、上記摘記事項ア(ア)ないし(カ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件発明1に照らして整理すると、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲1発明」という。)。
「合成樹脂により形成した細いテープ基材2に、粘着剤層を設けることにより構成した、
二重まぶた形成用テープ単体1A。」

(2-2)甲第2号証
ア 甲第2号証に記載された事項
(ア)実用新案登録請求の範囲
「セロフアン、紙、又は合成樹脂を材料とし横細長に形成した薄膜1・・・・・・の表面は肌色に着色し且つその裏面には粘着剤4を塗布せるもの複数を、スリツト3を設けた台紙2上に貼着して構成するものとした二重瞼形成用薄膜品。」

(イ)第1欄第18?26行
「1はセロフアン、紙又は合成樹脂等の薄膜よりなるもので瞼の形状に略々合わせての横細長片でその長さも瞼の長さに合う程度のものとし、かつ肌色のものに予じめ着色乃至染色している二重瞼形成用薄膜で、これの裏面には貼着用の粘着剤4が塗布されており、この粘着剤で、二重瞼形成用薄膜1は台紙2に貼着されていると共に使用の際は皮膚への接着作用を果すものとなつている。」

(ウ)第1欄第27?30行
「そして台紙2の中央にはスリツト3が設けられる。該スリツト3は使用片たる二重瞼形成用薄膜1が小形でしかも薄いことを考慮してその剥離を容易にするために設けられたものである。」

(エ)第1欄第32?第2欄第4行
「本考案にかゝる二重瞼形成用薄膜はこのように構成されているので、台紙のスリツトの左右手でもつて引き離せば二重瞼形成用薄膜は台紙から簡単に剥がれ、これを瞼を閉じた状態の上瞼に粘着剤を介して貼着すると、開眼時にこの二重瞼形成用薄膜は緊張して上瞼の下側縁を固定するので不貼着部がたるみ下つて二重瞼が形成されることゝなる。」

(オ)図面


イ 甲第2号証記載の発明
上記摘記事項ア(イ)に「1は・・・合成樹脂等の薄膜よりなるもので・・・横細長片で」とあることなどから、「二重瞼形成用薄膜」は、合成樹脂により形成した細い薄膜1、ということができる。
そして、上記摘記事項ア(ア)ないし(エ)を、図面(オ)を参照しつつ技術常識を踏まえて本件発明1に照らして整理すると、甲第2号証には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲2発明」という。)。
「合成樹脂により形成した細い薄膜1に、粘着剤4を塗布することにより構成した、
二重瞼形成用薄膜。」

(2-3)甲第3号証
ア 甲第3号証に記載された事項
(ア)実用新案登録請求の範囲の1
「1 表面を光散乱性にした透明性プラスチツクシートと透明なプラスチツクシートで構成され、前記プラスチツクシートの何れか一方の裏面に粘着剤層を設けると共に他方の表面に剥離層を設け、前記一方のプラスチツクシートの粘着剤層に他方のプラスチツクシートの剥離層を貼り合わせた粘着シートまたはテープ。」

(イ)第2ページ第1?8行
「従来表面にマツト加工等して光散乱性にした薄いプラスチツクシートの裏面に粘着剤層を設け、これを剥離性台紙等に貼り合わせた粘着シート上に所望の形状例えば、上瞼の曲線に応当して三日月形状の切抜線を刻設し、刻設された所望の形状以外の不要のプラスチツクシートを剥ぎ取り若しくはそのままにして、瞼整形用貼着片として市販されているものがある」

(ウ)第3ページ第3?15行
「以下実施例について説明すると、透明なプラスチツクを加工等して所要の光散乱性な表面(2)を有する透明性プラスチツクシート(1)を形成し、該プラスチツクシートの裏面に粘着剤層(3)を設け、この粘着剤層付プラスチツクシート(4)は表面に剥離層(7)を有する透明なプラスチツクシート(6)で形成された台紙(5)に貼着して台紙付粘着シート(8)を形成している。
上記透明性プラスチツクシート(1)若しくは透明なプラスチツクシート(6)は酢酸繊維素系プラスチツク、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、弗素樹脂、珪素樹脂、ポリアミド、ポリエステルその他の合成樹脂で形成されている。」

(エ)第5ページ第17行?末行
「これらを酢酸繊維素製透明プラスチツクシートの表面側にシリコーンの剥離層(塗布量約2g/m^(2))を有する厚さ100μの透明な台紙に貼り、粘着剤の異なる3種の台紙付粘着シートを形成し、」

(オ)第6ページ第3行?第10行
「上記の粘着シートは二重瞼にするために瞼に貼着する左右対称の整形用粘着シート片(9)(第4?5図)、注射針等の傷口の止血その他皮膚に貼着する医療用粘着シート片(9)(第6図)、脱毛用粘着シート片、書籍補修用粘着シート片その他の貼着してあることが判明し難いようにしたい部分に用いる各種の粘着シート片の切抜き用として特に有効に使用でき、」

(カ)第4図
以下の第4図によれば、整形用粘着シート片(9)が左右対称の湾曲した形状をしていることが看て取れる。


イ 甲第3号証記載の発明
上記摘記事項ア(イ)から、「二重瞼形成用粘着シート片(9)」の形状を画定する「シート(1)」は、細いシート(1)、ということができる。 また、摘記事項ア(オ)の「整形用粘着シート片(9)」は、「二重瞼にするために瞳に貼着する」ものであるから、「二重瞼形成用粘着シート片(9)」ということができる。
そこで、上記摘記事項ア(ア)ないし(オ)(特に(ア)、(ウ)及び(オ))を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件発明1に照らして整理すると、甲第3号証には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「合成樹脂により形成した細いシート(1)に、粘着剤層(3)を設けることにより構成した、
二重瞼形成用粘着シート片(9)。」

(2-4)甲第4号証
ア 甲第4号証に記載された事項
(ア)第2欄第6?13行
「最近では、上瞼の下縁部に幅1?2mm程度の極薄(数?数十μ)のテープを貼付し、テープを貼付した部分と貼付していない部分との硬さ及び伸縮性の違いを利用して二重瞼にする方法や、上瞼にゴムラテックスを幅数mmに塗布して乾燥した後、先端の細い部材でゴムラテックス乾燥被膜を押圧し、該ゴムラテックス乾燥被膜の自着性で折目部を強制的に形成・保持して二重瞼にする方法がある。」

イ 甲第4号証記載の発明
上記摘記事項ア(ア)の、特に前半部の記載を技術常識を踏まえて本件発明1に照らして整理すると、甲第4号証には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「極薄のテープであって、
テープを貼付した部分と貼付していない部分との硬さ及び伸縮性の違いを利用して二重瞼にする、
二重瞼形成用テープ。」

(2-5)甲第5号証
甲第5号証には、プラスチックのクリープ現象に関し、「プラスチック」即ち、「合成樹脂」と呼ばれるものは、荷重を掛けると伸びるように変形し、その後除重すると徐々に回復すること等が記載されている。(第51ページ下から10行?末行等)

(2-6)甲第6号証
甲第6号証には、「プラスチック」は「合成樹脂」ともいわれる旨、記載されている。

(2-7)甲第7号証
甲第7号証はプラスチックの入門書であり、プラスチックを早く引っ張り、切れる前に引っ張るのを止めると、伸びていたのが縮むが完全に元の長さには戻らない旨、記載されている。(第38ページ第10?11行)

(2-8)甲第8号証
クリープは応力が一定で歪みと塑性変形が増大する現象である旨、記載されている。

(2-9)甲第9号証
ポリエチレンは、伸ばし易く、伸ばした後の収縮力が比較的大きいという特性を有している旨、記載されている。

(2-10)甲第10号証
甲第10号証には以下の事項が記載されている。
(ア)段落【0006】?【0007】
「【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案の医療用テープは、合成樹脂フィルム支持体の片面に粘着剤層が形成された医療用テープにおいて、該支持体の50%伸長時における荷重が200?900g/15mmであり、かつ50%伸長時から5秒後の応力残留率が90%以下もしくは60秒後の応力残留率が75%以下であることを特徴とし、そのことにより、上記目的が達成される。
【0007】
以下に本考案を詳細に説明する。
本考案で支持体に使用される合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン・・・(後略)」

(イ)段落【0044】
「【0044】
【考案の効果】
本考案の医療用テープは、適度の柔軟性を有し細かな動きに追随して伸長するので貼付感がよく、密着性がよいので剥がれが起こりにくい上に、貼付した際に肌の突張りがないので違和感がなく、指に巻いた場合にも巻締まりが生じない。
また、本考案の医療用テープは、適度の透湿性を有するので、蒸れによるかぶれや紅斑等の皮膚刺激を起こさず、優れた貼付感を与える。」

上記摘記事項(ア)及び(イ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第10号証には以下の事項が記載されていると認める(以下「甲10事項」という。)。
「合成樹脂により形成した伸長可能な支持体に、粘着剤層を形成することにより構成した、
医療用テープ。」

(2-11)甲第11号証
甲第11号証には以下の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲の請求項3
「【請求項3】 延伸方向に直交する方向への20%モジュラスが200g以上であり、19mm幅での引張強度が0.4kg以上である請求項1記載の医療用粘着テープもしくはシート。」

(イ)段落【0016】?【0018】
「【0016】実施例1
線状低密度ポリエチレン樹脂140重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒径1.2μm)200重量部、顔料0.5重量部を加熱条件下で充分に混練してこれをシート状に押出し、さらに3.4倍に一軸延伸して多孔質化した支持フィルムを得た。厚みは80μmであった。一方、剥離紙上にアクリル酸エステル系粘着剤(溶液粘度300ポイズ)を乾燥後の粘着剤層厚が80μmとなるように塗布し、未乾燥状態でポリエステルフィラメントからなる坪量12g/m^(2) の不織布(スパンボンド法にて製造、孔径200?1000μm、繊維太さ5?10μm)をラミネートした。支持フィルムの非延伸方向へのこの不織布の伸張度は60%であった。
【0017】不織布に充分に粘着剤溶液を含浸させたのち、粘着剤層を乾燥し上記にて作製した支持フィルムを貼り合わせて本発明の医療用粘着テープもしくはシートを得た。
【0018】実施例2
実施例1において用いるポリエステル製不織布を、坪量15g/m^(2) 、繊維太さ8?20μm、伸張度17%とした不織布とした以外は、実施例1と同様にして本発明の医療用粘着テープもしくはシートを得た。」

上記摘記事項(ア)及び(イ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第11号証には以下の事項が記載されていると認める(以下「甲11事項」という。)。
「合成樹脂により形成した伸長可能な支持フィルムに、粘着剤層を貼り合わせることにより構成した、
医療用粘着テープ。」

(2-12)甲第12号証
特許庁の「特許・実用新案の審査基準審査基準」のうち、「特定の表現を有する請求項における発明の認定の具体的手法」に関する部分が引用されている。

(2-13)甲第13号証
本件特許に対応する米国出願の公開公報(第2002/0041956号公報)が示される。

(2-14)甲第14号証
上記甲第13号証の米国出願の審査を経た米国特許第6733856号明細書が示される。

(2-15)甲第15号証
ア 甲第15号証に記載された事項
甲第15号証には、「Cosmetic tape, applicator therefor and method」(化粧用テープとそのアプリケータ及び方法)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、主に請求人による英和仮訳である(以下、同様)。

(ア)第1欄第11?17行
「The present invention relates to precut, preshaped adhesive tape strips or members for application to an upper eyelid to retain a fold in the skin thereof, an applicator device for facilitating placement of such an adhesive member on the skin surface of the eyelid, and a method for use of the tape strip in nonsurgically taking a tuck in loose skin, such as at the upper eyelid.」
(本発明は、上瞼に貼付されてその皮膚のひだを保持するための予め切断された成形粘着テープ細片または部材と、瞼の皮膚表面へのこのような粘着部材の載置を容易にするためのアプリケータ器具と、上瞼等たるんだ皮膚にタックを非外科的に作る際にテープ細片を使用するための方法とに関連する。)

(イ)第2欄第46?59行
「The tape strip member has a backing of hypo-allergenic material and adhesive ・・・(中略)・・・The skin of the upper eyelid is folded down over the adhesive strip and attached to the exposed adhesive on the other side of the adhesive strip; and, the folded skin of the upper eyelid folded back upon itself with its edge along the bottom edge of the adhesive strip to form an artificial super tarsal fold which is deeper and higher than the natural fold. The application of the tape strip is facilitated by the use of an applicator device which releasably carries the tape strip to the eyelid.」
(・・・(前略)テープ細片部材は低アレルギー材料の裏材と粘着剤とを有する。上瞼の皮膚が粘着細片の上に折り畳まれて粘着性細片の反対側の露出粘着剤に貼付され、その縁部が粘着性細片の底縁部に沿った状態で上瞼の畳まれた皮膚が戻されて、自然なひだよりも深さと高さのある人工的な二重瞼を形成する。テープ細片を瞼へ脱着可能に移すアプリケータ器具の使用によって、テープ細片の貼付が容易になる。)

(ウ)第3欄第49?61行
「According to the present invention, a very thin strip of double-sided adhesive tape 32 generally less than 1 cm in width and 4 cm in length is attached to the upper eyelid 10 with the bottom edge spaced about 8-12 mm above the ciliary margin 20 and/or the top edge above the fold line of the natural super tarsal fold. The skin above the adhesive strip 32 is then folded down and then back upon itself as shown in FIG. 5 with the bottom edge of the skin aligned along the bottom edge of the tape strip 32. The adhesive strip 32 maintains the deeper and higher artificial super tarsal fold thus formed in the desired position.」
(本発明によれば、底縁部がまつげ縁部20から約8?12mm離間した、および/または上縁部が本来の二重瞼のひだラインの上にある状態で、概ね幅が1cm未満で長さが4cmの両面粘着テープの超細片32が上瞼10に貼付される。次に粘着性細片32の上の皮膚が下に折り曲げられてから、図5に示されたように、皮膚の底縁部がテープ細片32の底縁部と整合した状態で、それ自身に折り返される。粘着性細片32は、こうして所望の位置に形成された深さと高さを持つ人工的な上瞼を維持する。)

(エ)第5欄第39?53行
「Another example of a strip member 32 suitable for use in the present invention is that made by the Minnesota Mining & Manufacturing Co. (3M) of St. Paul, Minn. under specification No. 1512-3 of August, 1981. In such a 3M tape, the strip material may comprise a backing material of transparent polyethylene film having a thickness of 1.5 mils. The adhesive coating or lamina on each side surface of the backing material may be a hypoallergenic, synthetic, acrylate based pressure sensitive adhesive. The thickness of the backing material and the adhesive lamina on opposite side surfaces thereof may result in a thickness of about 3 mils. The backing material of polyethylene film in the 3M example is generally occlusive and is suitable for use for relatively short periods of time.」
(本発明での使用に適した細片部材32の別の例は、1981年8月の仕様書第1512-3に基づく、ミネソタ州St. PaulのMinnesota Mining & Manufacturing Co. (3M)による製品である。このような3Mテープにおいて、細片材料は、1.5ミルの厚さを持つ透明ポリエチレンフィルムの裏材を具備する。裏材の各側の表面にある粘着性のコーティングまたは薄膜は、低アレルギー性の合成アクリレートベース感圧性粘着剤でよい。裏材およびその両側表面の粘着薄膜との厚さにより、結果的に厚さは約3ミルとなる。3Mの例におけるポリエチレンフィルムの裏材は概して閉塞性であって、比較的短時間の使用に適している。)

(オ)第5欄第54?62行
「Liner sheet 44 may be a skin bleached two-sided silicone treated polyethylene coated paper of a suitable basis weight.
Examples of strip members 32 as described above comprising a backing material and adhesive lamina may be cut into a shape to provide an elongated strip of varying width with curved or arcuate longitudinal edges to readily conform to the three dimensional contours or shape of the skin forming the upper eyelid.」
(ライナシート44は、適当な坪量を持つ、肌色に漂白された両面シリコン加工ポリエチレンコーティングペーパーでよい。
裏材および粘着性薄膜を具備する上述した細片部材32の例は、上瞼を形成する皮膚の三次元的輪郭または形状に適合しやすくするため湾曲または弓形の長手方向エッジを持つ幅可変の長尺細片となる形状に切断されてもよい。)

(カ)第6欄第18?30行
「Practice of the method of this invention, namely, attaching one side of an adhesive strip member having adhesive on both sides along one surface of the intended tuck area, folding the skin of the intended tuck area over the adhesive strip and attaching it to the exposed adhesive on the other side of the adhesive strip is facilitated by the use of an applicator device as shown in FIGS. 16, 17 and 18. FIG. 16 is similar to FIG. 7 in the illustration of the pulling back of the loose upper eyelid skin 10 by a finger and positioning of strip member 32 on the eyelid skin surface substantially as shown in FIG. 7. In FIG. 16, the strip member 32 is shown as being applied by an applicator device 70.」
(本発明の方法の実施、すなわち、両面に粘着剤を有する粘着性細片部材の片側を予定のタック範囲の表面の一方に沿って貼付し、粘着性細片の上に予定タック範囲の皮膚を折畳み、粘着細片の他の側に露出した粘着剤にこれを貼付することは、図16,17,18に示されたようなアプリケータ器具の使用によって容易となる。図16は、たるんだ上瞼の皮膚10を指で引っ張って、実質的には図7に示された瞼の皮膚表面に細片部材32を配置している図という点で、図7と類似している。図16では、アプリケータ器具70によって貼付された状態で細片部材32が示されている。)

(キ)図7及び図16
以下の図7及び図16によれば、テープ細片32が細長い形状をしていることが看て取れる。







(ク)図5

イ 甲第15号証記載の発明
上記摘記事項ア(エ)に「the strip material may comprise a backing material of transparent polyethylene film having a thickness of 1.5 mils.」(細片材料は、1.5ミルの厚さを持つ透明ポリエチレンフィルムの裏材を具備する。)とあり、また摘記事項(オ)に「elongated strip」(長尺細片)とあること及び認定事項(キ)から、「テープ細片32」は、ポリエチレンにより形成した細いテープ細片32、ということができる。
そこで、上記摘記事項ア(ア)ないし(カ)及び認定事項(キ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件発明1に照らして整理すると、甲第15号証には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲15発明」という。)。
「ポリエチレンにより形成した細いテープ細片32に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼を形成するためのテープ細片32。」

(2-16)甲第16号証
本件特許に対応する米国出願(甲13号証等)のオフィス・アクション(2002年12月18日発行)が示されている。

(2-17)甲第17号証
ア 甲第17号証に記載された事項
甲第17号証には、「FALSE EYELASH STRUCTURE」(つけまつげ構造)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)第1欄第20?26行
「Thus, one object of the present invention is to provide false eyelashes which may be simply mounted on the eyelid and are not easily accidentally separated therefrom.
Another object of the present invention is to provide false eyelashes which may change a single eyelid to a double eyelid.」
(ゆえに,本発明の目的は、瞼に簡単に装着されてこれから突然簡単に剥がれることのないつけまつげを提供することである。
本発明の別の目的は、一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげを提供することである。)

(イ)第2欄第13?18行
「Numeral 3 represents a mounting part made of plastic film such as polyester, vinyl chloride, acetate, etc., which film may not give a feeling of foreign matter when adhered to a human being. The film of part 3 has the resiliency and strength necessary for holding the false eyelash bodies and,」
(数字3は、ポリエステル、塩化ビニル、アセテートなどのプラスチックフィルムで製作された装着部を表し、このフィルムは人に貼付された時に異物感を与えない。装着部3のフィルムは、つけまつげ本体を把持するのに必要な弾性および強度を有し、)

(ウ)第2欄第33?44行
「In order to mount the eyelashes of the present invention to the upper eyelids, after an adhesive is coated on the backside of the part 3, which part also has the hair bodies bonded thereto, then the false eyelashes may be simply mounted by placing the surface of the part 3 coated with the adhesive onto the skin surface of the upper eyelid and then lightly pressing them thereonto.
・・・(中略)・・・
An adhesive tape may be substituted for the adhesive coated part 3, which tape may also be colored.」
(毛本体も接合された装着部である装着部3の裏側が粘着剤でコーティングされた後で、本発明によるまつげを上瞼に装着するには、粘着剤がコーティングされた装着部3の表面を上瞼の皮膚表面に載置してからこれを軽く表面に押圧するだけで、つけまつげが簡単に装着される。
・・・(中略)・・・
粘着剤がコーティングされた装着部3の代わりに粘着テープが使用されて、このテープも着色されてもよい。)

(エ)第2欄第45?54行
「It should be understood from the foregoing description that, due to the manner in which the false eyelashes of the present invention are constructed, it is very easy to mount the false eyelashes onto the upper eyelid, the time to mount them is greatly reduced, the false eyelashes as mounted are difficult to separate from the eyelid, and the single eyelid may be changed to a double eyelid and, if the film is colored, may function as eye shadow.」
(本発明の付けまつげが構成される方法により、つけまつげを上瞼に装着するのは非常に容易であり、これを装着する時間が大幅に短縮され、装着されたつけまつげは瞼から剥がれにくく、一重瞼が二重瞼に変化し、フィルムが着色される場合にはアイシャドーとして機能することが、上記の説明から理解されるはずである。)

(オ)図1
「装着部3」は、細い部材からなることが看て取れる。

イ 甲第17号証記載の発明
上記摘記事項ア(イ)に、「数字3は、ポリエステル、塩化ビニル、アセテートなどのプラスチックフィルムで製作された装着部」とあり、また、認定事項ア(オ)から、「装着部3」は、プラスチックにより形成した細いフィルム状部材、ということができる。
そこで、上記摘記事項ア(ア)ないし(エ)及び認定事項(オ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件発明1に照らして整理すると、甲第17号証には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲17発明」という。)。
「プラスチックにより形成した細いフィルム状部材に、粘着剤をコーティングすることにより構成した、
一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげ。」

(2-18?22)甲第18号証?甲第22号証
甲16号証と同様、本件特許に対応する米国出願(甲13号証等)のその後のオフィス・アクションと、それに対する意見書及び補正書が示される。

(2-23)甲第23号証
ア 甲第23号証に記載された事項
甲第23号証には、「目をパッチリ開かせる器具」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】身に付けた時の位置が、耳の上にあたる周辺を、圧迫しない様に工夫した、輪状のキャップ、又は、帽子状の物の、耳の上付近から、滑り止めを施したゴム状の帯を、前方方向に取り付けた物である。」

(イ)段落【0001】
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、瞼の脂肪を取り除き、目をパッチリ開かせ、表情のある瞳を作らせるグッズに関するものである。」

(ウ)段落【0002】
「【0002】
【従来の技術】従来の、美しい瞳を作らせる物としては、接着剤を使っての二重瞼を作らせたり、整形手術に頼るものでしかなかった。」

(エ)段落【0003】
「【0003】
【発明が解決しようとする課題点】本発明が解決したかったのは、接着剤では、瞼の脂肪は取り除けず、整形手術の様に危険性がなく、簡単に瞼の脂肪を取り除き、より美しい瞳を作らせようとしたかった。」

(オ)段落【0004】
「【0004】
【課題を解決する為の手段】構成を説明すると、・・・(中略)・・・
(ハ) この滑り止めの効いたゴム状の帯2は、眉毛の下付近に装着する。
・・・(後略)」

(カ)段落【0006】
「【0006】
【実施例】ゴム状の帯1を保持するキャップは、帽子状の物でもテープ状の物でもなんでも良く、注意する事は、耳の上あたりを圧迫させない事であり、圧迫すると気分が悪くなったりするので、配慮が必要である。ゴム状の帯1及び2、3は、長さ調整できる物の方が最適あり、幅は、ゴム状の帯1は適当でよく、2は眉の太さ程度、あまり狭いと瞼にすじ、しわが出来易く、3は、2と同じ位か少し広めでも良い。又、あまり長く装着していると、交感神経の緊張しすぎる事が起るので、注意が必要である。」

イ 甲第23号証記載の発明
上記摘記事項ア(ア)ないし(カ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第23号証には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲23発明」という。)。
「ゴム状の帯を眉毛の下付近等に装着することにより構成した、
目をパッチリ開かせるグッズ。」

(2-24)甲第24号証
ア 甲第24号証に記載された事項
(ア)第1欄第25?30行
「According to the present invention there is provided a moisture-vapor-permeable pressure-sensitive adhesive material for use on animal skin and nails, comprising a backing material having a pressure-sensitive adhesive on at least substantially the whole of the body-adhering portion of at least one surface of said backing material,」
(本発明では、基材の少なくとも一方の表面のボディー接着部の少なくとも実質的に全体に施される感圧接着材を有する基材を有して成る、動物の肌や爪に使用するための透湿性感圧接着材料が供される。)

(イ)第2欄第74行?第3欄第1行
「The adhesive materials may be used on any part of the human body, e.g., for surgical, dermatological or cosmetic use.」
(本発明の接着材は例えば、外科用、皮膚用又はコスメ用品として人間の体のいずれかの部分に使用されてよい。)

(ウ)第3欄第1?5行
「Some examples of specific uses of the adhesive material of the invention are as surgical drapes, suture strips and sheets, adhesive dressings, bandages, plasters, decorative nail coverings, solid eye liners, wrinkle producers (for theatrical make up) etc.」
(本発明の接着材の特定のある使用例として、外科用ドレープ、縫合ストリップおよびシート、接着包帯、バンデージ、ばんこうこう、装飾的なネイル被覆、固形アイライナー、(劇場用のメークアップのための)しわ形成等がある。)

(エ)第6欄第3?11行
「Properties of a 1-mil thick film of Estane 5702 are:
Mvp 1,620 g.s.m./24 hr.
O_(2) permeability 4,880 cc./m.^(2)/Atmos./24 hr.
Tensile strength (p.s.i.) 5,300
Elongation 730 percent
Modulus at 300 percent extension (p.s.i.) <500
Hardness (Durometer A) 70
Low-temperature brittleness point (°F.) <-100」
(1ミルの厚さのフィルムであるエスタン5702の特性は、
MVP 1,620 g.s.m./24時間
O_(2)の透過性 4,880 cc./m^(2)/Atmos./24時間
伸張強度(p.s.i.) 5,300
伸張 730%
300%伸びた時のヤング率(p.s.i.) <500
硬度(デュロメーターA)70
低温での脆性点(°F.) <-100)

(オ)第7欄第13?16行
「One of the preferred uses of the present invention is in decorative cosmetic products, e.g., nail covers, eye liners, beauty spots, stage effects, e.g., wrinkle producers (attach to skin in stretched state).」
(本発明の好ましい使用形態の一つは、装飾品コスメ品、例えばネイルカバー、アイライナー、ビューティースポット、舞台効果、例えば皺形性(ストレッチ状態での肌への取付けによる皺形成)である。)

(カ)第10欄第33?40行
「Material similar to those shown in FIGs. 2 to 7 may be used for various other purposes. For example by using different shaped adhesive materials comprising a backing and an adhesive other decorative cosmetic products such as beauty spots and eye liners may be formed. Also by using an elastic backing material a wrinkle producer for stage effect may be obtained. The material is stretched adhered to the skin and allowed to contract causing a wrinkle effect.」
(図2?7に示されるものと同様の材料が様々な他の目的のために使用されてよい。例えば、基材と接着材を有して成る異なる形状の接着材を使用することにより、ビューティースポットやアイライナー等の他の装飾用コスメ品が形成されてもよい。又、伸縮性基材を使用することで、舞台効果のためのしわ形成が可能となるかもしれない。この材料をストレッチし、肌に接着し、収縮させることでしわ効果を生じさせることが可能である。)

そこで、上記摘記事項ア(ア)ないし(カ)(特に、(ア)及び(カ))を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第24号証には以下の事項が記載されていると認める(以下「甲24事項」という。)。
「基材の少なくとも一方の表面に接着材を有する感圧接着材料を、肌に接着し収縮させることで、舞台効果のためのしわ形成を可能とすること。」

(2-25)甲第25号証
IPC 特許・実用新案 国際特許分類表第7版であり、「顔面きょう正装置」に関する国際特許分類が示される。

(2-26?28)甲第26号証?甲第28号証
甲第26号証ないし甲第28号証には、いずれも、伸長可能で接着層を有するテープ、が記載されている。

(2-29)甲第29号証
辞書(広辞苑)であり、「緊張」の意味が示される。

(2-30)甲第30号証
甲第30号証には以下の事項が記載されている。
(ア)明細書第1ページ下から7?5行
「本考案は付け睫瞼用両面テープに関するもので,その目的とするところは瞼に付け睫を簡単容易に接着することが出来る付け睫用両面テープを提供しようとするものである。」

(イ)明細書第2ページ第7?16行
「本考案付け睫9を瞼に接着する両面テープ1は上述のように支持シート4の両面に接着剤3と接着剤5とを夫々塗着し、接着剤3には台紙2を、接着剤5には剥離シート6を夫々貼着してなり、台紙2を除く接着剤3、支持シート4、接着剤5および剥離シート6は第1図および第2図に示すように付け睫9の支持体7を接着し得る幅員を以てあらかじめ切れ目10を設けることにより両面テープ片11_(1),11_(2),・・・11_(n-1),11_(n)の複数条を台紙2上に列設せしめてなり、」

(ウ)明細書第5ページ第4?13行
「本考案においては・・・(中略)・・・・支持シート4によつて二重瞼の調節にも利用し得るものである。」

上記摘記事項(ア)ないし(ウ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第30号証には以下の事項が記載されていると認める(以下「甲30事項」という。)。
「粘着性の支持シート4にあらかじめ切れ目10を設けてテープ片として列設させること。」

(2-31?34)甲第31号証?甲第34号証
甲第31号証ないし甲第34号証には、いずれも、シート状部材、粘着剤層及び及び把持部から構成されるシート状の積層体を細く裁断して粘着性積層体を得る方法、が記載されている。

(2-35)甲第35号証
甲第35号証には、“適度にまぶた引き上げ”、“自然な二重”が女性の間で流行っていること等が記載されている。

(2-36)甲第36号証
本件特許の出願経過書類として提出された平成13年12月18日提出の意見書が示される。

(2-37,40,41)甲第37号証、甲第40号証、甲第41号証
プラスチック材料の延伸について記載されている。

(2-38?39)甲第38号証?甲第39号証
延伸加工についての説明や二軸延伸フィルムの特性が記載されている。

(2-42)甲第42号証
辞書(Webster's Encyclopedic Unabridged Dictionary)であり、「make-up」の意味が示される。

(2-43)甲第43号証
辞書(日本語大辞典)であり、「扮装」の意味が示される。

(2-44)甲第44号証
特許庁の「特許・実用新案の審査基準審査基準」のうち、進歩性判断の論理付けの一部が引用されている。

3 無効理由1について
(1)本件発明1の要旨認定について
請求人は、上記第3の3(1)アないしエで示したように、本件発明1等の要旨認定につき、本件発明1等における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる要件は、引用発明との対比において考慮する必要はない旨主張しているので、まずこの点を検討する。
請求人も援用しているように(上記第3の3(1)タ)、発明の要旨の認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁)。
請求人は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」といった性質は、「合成樹脂により形成した細いテープ状部材」が有する固有の性質であり発明を特定する構成ではない旨主張する(上記第3の3(1)アないしウ)。しかし、製造時に高延伸させられた合成樹脂の中には,それ以上にほとんど延伸させることができないものや,延伸させることができたとしても,瞼に貼り付けても瞼へのくい込みによってひだが形成されるほどの弾性的な伸縮性を有さないものがあり得ることは,技術常識であり,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という性質が合成樹脂固有の性質であるということはできない(第2事件判決参照)。
したがって、本件発明1の合成樹脂が「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という特定は、合成樹脂を限られたものに特定する点で技術的意義を有するものであり、上記判例でいう「特段の事情」に該当するものということはできず、請求人の主張するような、引用発明との対比において考慮する必要はないようなものではない。

次に、請求人は,無効理由1として、甲第1号証ないし甲第3号証記載の各発明との同一性(第29条第1項3号)を主張しているので、順に検討する。

(2)甲1発明との同一性について
甲1発明と本件発明1、2ないし5、及び9ないし11との同一性をそれぞれ検討する。
(2-1)甲1発明と本件発明1との同一性について
ア 甲1発明
甲1発明は、上記2(2-1)イで指摘したように、
「合成樹脂により形成した細いテープ基材2に、粘着剤層を設けることにより構成した、
二重まぶた形成用テープ単体1A。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。
甲1発明の「テープ基材2」は本件発明1の「テープ状部材」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に、「粘着剤層を設ける」は「粘着剤を塗着する」に、「二重まぶた形成用テープ単体1A」は「二重瞼形成用テープ」に相当することも明らかである。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼形成用テープ。」

そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点甲1-本1>
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明1は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲1発明はその点が不明である点。

ウ 相違点についての判断
まず、上記(1)にて検討したように、本件発明1における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる特定事項は、合成樹脂を限られたものに特定する点で技術的意義を有するものであり、引用発明との対比において考慮する必要のないものではない。
次に、甲第1号証には、テープ基材2が左右対称の湾曲した形状をしていることが示されていることから(上記2(2-1)ア認定事項(キ))、甲1発明の二重まぶた形成用テープ単体1Aを形成するテープ基材2は、「延伸」させて使用することは予定されていないといえる。
したがって、相違点甲1-本1は実質的な差異であり、本件発明1は甲1発明と同一であるとはいえない、ということとなる。
よって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(2-2)甲1発明と本件発明2ないし5との同一性について
本件発明2ないし5は、いずれも本件発明1の特定事項をすべて備え、さらに、請求項2ないし5に記載された事項を特定事項として加えるものである。そして、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるといえない以上、本件発明2ないし5も、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(2-3)甲1発明と本件発明9との同一性について
本件発明9は、二重瞼形成用糸に係るものであるところ、本件発明1と同様に、合成樹脂について、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という特定がなされている。したがって、上記(2-1)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明9は甲1発明と同一であるとはいえない、ということとなる。
よって、本件発明9は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(2-4)甲1発明と本件発明10及び11との同一性について
本件発明10及び11は、いずれも本件発明9の特定事項をすべて備え、さらに、請求項10及び11に記載された事項を特定事項として加えるものである。そして、本件発明9は甲第1号証に記載された発明であるといえない以上、本件発明10及び11も、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(2-5)小括
したがって、本件発明1、2ないし5,及び9ないし11は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(3)甲2発明との同一性について
甲2発明と本件発明1、2ないし5、及び9ないし11との同一性をそれぞれ検討する。
(3-1)甲2発明と本件発明1との同一性について
ア 甲2発明
甲2発明は、上記2(2-2)イで指摘したように、
「合成樹脂により形成した細い薄膜1に、粘着剤4を塗布することにより構成した、
二重瞼形成用薄膜。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると以下のとおりである。
甲2発明の「薄膜1」は本件発明1の「テープ状部材」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に、「粘着剤4」は「粘着剤」に、「塗布」は「塗着」に、「二重瞼形成用薄膜」は「二重瞼形成用テープ」に相当することも明らかである。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼形成用テープ。」

そして、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。
<相違点甲2-本1>
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明2は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲2発明はその点が不明である点。

ウ 相違点についての判断
相違点甲2-本1について検討する。
まず、上記(1)で示したように、本件発明1における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる特定事項は、引用発明との対比において考慮する必要のないものではない。
次に、甲第2号証には、「薄膜」の材料として「合成樹脂」に加えて「セロフアン、紙」が例示されていることからすれば(上記2(2-2)ア摘記事項(ア))、甲2発明の二重瞼形成用薄膜を形成する「薄膜1」は、「延伸」させて使用することが予定されているとは考え難い。
したがって、相違点甲2-本1については、上記(2)(2-1)ウにおける甲1発明についての検討と同様、実質的な差異であり、本件発明1は甲2発明と同一であるとはいえない。(以下、同様な相違点については、判断が同様である旨の記載を省略することがある。)
よって、本件発明1は甲第2号証に記載された発明であるということはできない。

(3-2)甲2発明と本件発明2ないし5及び9ないし11との同一性について
本件発明2ないし5及び9ないし11は、上記(2)(2-2)ないし(2-4)における甲1発明についての検討と同様、甲第2号証に記載された発明であるということはできない。

(3-3)小括
したがって、本件発明1、2ないし5,及び9ないし11は、いずれも、甲第2号証に記載された発明であるということはできない。

(4)甲3発明との同一性について
甲3発明と本件発明1及び9との同一性をそれぞれ検討する。
(4-1)甲3発明と本件発明1との同一性について
ア 甲3発明
甲3発明は、上記2(2-3)イで指摘したように、
「合成樹脂により形成した細いシート(1)に、粘着剤層(3)を設けることにより構成した、
二重瞼形成用粘着シート片(9)。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると以下のとおりである。
甲3発明の「シート(1)」は本件発明1の「テープ状部材」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に、「粘着剤層(3)を設ける」は「粘着剤を塗着する」に、「二重瞼形成用粘着シート片(9)」は「二重瞼形成用テープ」に相当することも明らかである。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼形成用テープ。」

そして、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で相違する。
<相違点甲3-本1>
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明3は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲3発明はその点が不明である点。

ウ 相違点についての判断
相違点甲3-本1について検討する。
まず、上記(1)で示したように、本件発明1における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる特定事項は、引用発明との対比において考慮する必要のないものではない。
次に、甲第3号証には、整形用粘着シート片(9)が左右対称の湾曲した形状をしていることが示されていることから(上記2(2-3)ア認定事項(カ))、甲3発明の二重瞼形成用粘着シート片(9)は、「延伸」させて使用することは予定されていないといえる。
したがって、相違点甲3-本1については、上記(2)(2-1)ウにおける甲1発明についての検討と同様、実質的な差異であり、本件発明1は甲3発明と同一であるとはいえない。
よって、本件発明1は甲第3号証に記載された発明であるということはできない。

(4-2)甲3発明と本件発明9との同一性について
本件発明9は、上記(2)(2-3)における甲1発明についての検討と同様、甲第3号証に記載された発明であるということはできない。

(4-3)小括
したがって、本件発明1及び9は、いずれも、甲第3号証に記載された発明であるということはできない。

(5)まとめ
よって、請求人の主張する無効理由1及び提出した証拠方法によっては、本件発明1、2ないし5、及び9ないし11に係る特許を無効にすることはできない。

4 無効理由2について
(1)本件発明1の要旨認定について
上記3(1)にて検討したように、本件発明1の合成樹脂が「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という特定は、合成樹脂を限られたものに特定する点で技術的意義を有するものであり、請求人の主張するような、引用発明との対比において考慮する必要はないものには該当しない。

(2)甲15発明との同一性について
甲15発明と本件発明1及び2との同一性をそれぞれ検討する。

(2-1)甲15発明と本件発明1との同一性について
ア 甲15発明
甲15発明は、上記2(2-15)イで指摘したように、
「ポリエチレンにより形成した細いテープ細片32に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼を形成するためのテープ細片32。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲15発明とを対比すると以下のとおりである。
甲1発明の「ポリエチレン」は本件発明1の「合成樹脂」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「テープ細片32」は「テープ状部材」に、「二重瞼を形成するためのテープ細片32」は「二重瞼形成用テープ」に相当することも明らかである。
したがって、本件発明1と甲15発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼形成用テープ。」

そして、本件発明1と甲15発明とは、以下の点で相違する。
<相違点甲15-本1>
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明1は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲15発明はその点が不明である点。

ウ 相違点についての判断
相違点甲15-本1について検討する。
まず、上記(1)で示したように、本件発明1における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる特定事項は、引用発明との対比において考慮する必要のないものではない。
次に、上記2(2-15)アにて指摘したように、甲第15号証には、「両面粘着テープの超細片32が上瞼10に貼付される。次に粘着性細片32の上の皮膚が下に折り曲げられてから、図5(当審注:上記2(2-15)(ク))に示されたように、皮膚の底縁部がテープ細片32の底縁部と整合した状態で、それ自身に折り返される」と記載されていることから(摘記事項(ウ))、甲15発明の細片部材32については、「延伸」させて使用することが予定されていないといえる。
したがって、相違点甲15-本1については、上記3「無効理由1について」における検討と同様、実質的な差異であり、本件発明1は甲15発明と同一であるとはいえない。
よって、本件発明1は甲第15号証に記載された発明であるということはできない。

(2-2)甲15発明と本件発明2との同一性について
本件発明2は、上記3「無効理由1について」における検討と同様、甲第15号証に記載された発明であるということはできない。

(3)まとめ
よって、請求人の主張する無効理由2及び提出した証拠方法によっては、本件発明1及び2に係る特許を無効にすることはできない。

5 無効理由3について
請求人は、無効理由3として、無効理由3-1ないし3-4(上記第3の1(3))を主張しているところ、以下順に検討する。

(1)無効理由3-1
無効理由3-1は、概略、本件発明1及び9は、甲第1発明、甲2発明、甲3発明及び甲4発明の少なくとも1つと、甲23発明とから想到容易というものである(上記第3の1(3)ア(ア))。

(1-1)甲1発明及び甲23発明からの想到容易性について
(1-1-1)本件発明1の甲1発明及び甲23発明からの想到容易性について
ア 甲1発明及び甲23発明
甲1発明は、上記2(2-1)イで指摘したように、「合成樹脂により形成した細いテープ基材2に、粘着剤層を設けることにより構成した、二重まぶた形成用テープ単体1A。」というものであり、甲23発明は、2(2-23)イで記載したように、「ゴム状の帯を眉毛の下付近等に装着することにより構成した、目をパッチリ開かせるグッズ。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記3(2)(2-1)イの一致点、相違点甲1-本1を有する。

ウ 相違点についての判断
まず、上記3(2)(2-1)ウにおいても指摘したように、甲第1号証には、テープ基材2が左右対称の湾曲した形状をしていることが示されていることから(上記2(2-1)認定事項ア(キ))、甲1発明の二重まぶた形成用テープ単体1Aを形成するテープ基材2は、「延伸」させて使用することは予定されていないといえる。

次に、甲23発明の甲1発明への適用容易性等を検討するに、
(ア)甲23発明は、「目をパッチリ開かせるグッズ」であるところ、「目をパッチリ開かせる」ことは、本件発明1のような「二重瞼形成用」に相当するとは通常いえない。
(イ)甲23発明の「ゴム状の帯」は無端のゴムによって構成されたものであるのに対し、甲1発明の二重瞼形成用テープは両端を有しており、両者は、その形状が大きく異なる。
(ウ)甲23発明は「ゴム状の帯」を用いているところ、ゴムは塑性領域に入るとすぐ破断するのが通常であるから、相違点甲1-本1に係る本件発明1の特定事項のような「延伸可能で」はない蓋然性が高い。
(エ)さらに、請求人が、甲23発明の甲1発明への適用容易性の根拠とする、上記摘記事項2(2-23)ア(カ)の「しわが出来易く」なる記載は「あまり狭いと瞼にすじ、しわが出来易く、」と望ましくない例として記載されているものであり、仮に甲23発明の「ゴム状の帯」が「延伸可能で」「その延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」ものであったとしても、該記載に基づいて、当業者が二重瞼のしわ形成のために甲23発明を甲1発明に適用することを試みるとは考え難い。

これらを総合的に考えれば、甲23発明を甲1発明に適用して、相違点甲1-本1に係る本件発明1の特定事項とすることを想到容易とすることはできないと解するのが相当である。
よって、本件発明1は甲1発明及び甲23発明からから当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-1-2)本件発明9の甲1発明及び甲23発明からの想到容易性について
本件発明9は、本件発明1と同様に、合成樹脂について「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という特定がなされているから、本件発明1と同様の相違点甲1-本1を有することとなる。
したがって、上記(1-1-1)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明9も甲1発明及び甲23発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない、ということなる。

(1-2)甲2発明及び甲23発明からの想到容易性について
(1-2-1)本件発明1の甲2発明及び甲23発明からの想到容易性について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記3(3)(3-1)イの一致点、相違点甲2-本1を有する。

イ 相違点についての判断
相違点甲2-本1は、相違点甲1-本1と同様、合成樹脂についての「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」との特定に関わるものである。
これを踏まえて検討するに、まず、上記3(3)(3-1)ウにおいても指摘したように、甲第2号証には、「薄膜」の材料として「合成樹脂」に加えて「セロフアン、紙」が例示されていることからすれば(上記2(2-2)摘記事項(ア))、甲2発明の二重瞼形成用薄膜を形成する「薄膜1」は、「延伸」させて使用することが予定されているとは考え難い。
そして、上記(1-1-1)の甲1発明について述べたところと同様の理由により、本件発明1は甲2発明び甲23発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-2-2)本件発明9の甲2発明及び甲23発明からの想到容易性について
上記(1-2-1)における本件発明1の検討と同様、本件発明9も甲2発明及び甲23発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-3)甲3発明及び甲23発明からの想到容易性について
上記3(4)(4-1)ウにおいても指摘したように、甲第3号証には、整形用粘着シート片(9)が左右対称の湾曲した形状をしていることが示されていることから(上記2(2-3)認定事項(カ))、甲3発明の二重瞼形成用粘着シート片(9)は、「延伸」させて使用することは予定されていないといえる。
したがって、上記(1-1)における甲1発明についての検討と同様、本件発明1及び9はいずれも、甲3発明及び甲23発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-4)甲4発明及び甲23発明からの想到容易性について
(1-4-1)本件発明1の甲4発明及び甲23発明からの想到容易性について
ア 甲4発明
甲4発明は、上記2(2-4)イで指摘したように、
「極薄のテープであって、
テープを貼付した部分と貼付していない部分との硬さ及び伸縮性の違いを利用して二重瞼にする、
二重瞼形成用テープ。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると以下のとおりである。
甲4発明の「極薄のテープ」は本件発明1の「細いテープ状部材」に相当することは、技術常識に照らして明らかである。
また、甲4発明の「テープを貼付した部分と貼付していない部分との硬さ及び伸縮性の違いを利用して二重瞼にする」「二重瞼形成用テープ」ことと、本件発明1の「粘着剤を塗着することにより構成した」「二重瞼形成用テープ」とは、テープ状部材の貼り付けによる二重瞼形成用テープ、である限りにおいて共通する。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
細いテープ状部材であって、
テープ状部材の貼り付けによる二重瞼形成用テープ。

そして、本件発明1と甲4発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。 <相違点甲4-本1>
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明1は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲4発明はその点が不明である点。

ウ 相違点についての判断
相違点甲4-本1は、相違点甲1-本1と同様、合成樹脂についての「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」との特定に関わるものである。
したがって、上記(1-1-1)の甲1発明について述べたところと同様の理由により、本件発明1は甲4発明び甲23発明からから当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-4-2)本件発明9の甲4発明及び甲23発明からの想到容易性について
上記(1-4-1)における本件発明1の検討と同様、本件発明9も甲4発明及び甲23発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-5)小括
上記(1-1)ないし(1-4)における検討は、甲1発明ないし甲4発明を適宜組み合わせて考えたとしても、変わるところはない。
したがって、請求人の主張する無効理由3-1及び提出した証拠方法によっては、本件発明1及び9に係る特許を無効にすることはできない。

(2)無効理由3-2
無効理由3-2は、概略、本件発明1及び9は、甲第1発明、甲2発明、甲3発明及び甲4発明の少なくとも1つと、甲23発明及び甲24事項とから想到容易というものである(上記第3の1(3)ア(イ))。

(2-1)甲1発明、甲23発明及び甲24事項からの想到容易性について
(2-1-1)本件発明1の甲1発明、甲23発明及び甲24事項からの想到容易性について
ア 甲24事項
甲24事項は、上記2(2-24)イで指摘したように、
「基材の少なくとも一方の表面に接着材を有する感圧接着材料を、肌に接着し収縮させることで、舞台効果のためのしわ形成を可能とすること。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記3(2)(2-1)イの一致点、相違点甲1-本1を有する。

ウ 相違点についての判断
甲24事項は、「舞台効果のためのしわ形成を可能とする」ものであるところ、甲第24号証には二重瞼に関する着目する記載は一切ない。また、「舞台効果のためのしわ形成」は、舞台上の役者の体のどの部分か不明であり、これから瞼の部分のしわ形成とすることが直ちに想到容易とすることはできない。
したがって、請求人の主張するように甲第24号証に「for theatrical make up」(劇場用のメークアップ)という記載があること(上記第3の3(3)オ)を考慮しても、これを甲1発明のような二重瞼形成のための「しわ形成」に結びつけることは、想到困難といわざるを得ない。
これらを併せ考えれば、上記(1)(1-1-1)で検討した甲1発明に甲23発明を適用したものに、さらに甲24事項を適用したとしても、相違点甲1-本1に係る本件発明1の特定事項とすることを想到容易とすることはできない。
よって、本件発明1は甲1発明、甲23発明及び甲24事項からから当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(2-1-2)本件発明9の甲1発明、甲23発明及び甲24事項からの想到容易性について
上記(2-1-1)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明9も甲1発明、甲23発明及び甲24事項から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(2-2)甲1発明ないし甲4発明の少なくとも一つと、甲23発明及び甲24事項からの想到容易性について
上記(2-1)の甲1発明について述べたところと同様の理由により、本件発明1及び9はいずれも、甲1発明ないし甲4発明の少なくとも一つと、甲23発明及び甲24事項から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(2-3)小括
したがって、請求人の主張する無効理由3-2及び提出した証拠方法によっては、本件発明1及び9に係る特許を無効にすることはできない。

(3)無効理由3-3
無効理由3-3は、概略、本件発明1及び9は、甲第1発明、甲2発明、甲3発明及び甲4発明の少なくとも1つと、甲23発明と従来周知の事項から、あるいはさらに甲24事項とから当業者が容易に想到容易というものである(上記第3の1(3)ア(ウ))。
(3-1)甲1発明、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の技術からの想到容易性について
(3-1-1)本件発明1の甲1発明、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の事項からの想到容易性について
ア 従来周知の事項
上記2(2-10)で記載したように、甲10事項は、「合成樹脂により形成した伸長可能な支持体に、粘着剤層を形成することにより構成した、医療用テープ。」であり、また、2(2-11)で記載したように、甲11事項は、「合成樹脂により形成した伸長可能な支持フィルムに、粘着剤層を貼り合わせることにより構成した、医療用粘着テープ」というものである。
両者はいずれも同様な技術的事項であり、さらに甲第26号証ないし甲第28号証にも同様な技術的事項が記載されているところ、これらの共通点として、本件発明1の用語を用いて、以下の事項を従来周知の事項ということができる(以下「従来周知の事項A」という。)。
従来周知の事項A:「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤層を塗着することにより構成した、医療用テープ。」

イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記3(2)(2-1)イの一致点、相違点甲1-本1を有する。

ウ 相違点についての判断
従来周知の事項Aは、「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤層を塗着することにより構成した」ものであるものの、甲1発明のような「二重瞼形成用テープ」ではなく、「医療用テープ」であるから、これを甲1発明、あるいは甲1発明、甲23発明(及び甲24事項)に重畳的に適用する動機付けに乏しいといわざるを得ない。
加えて、従来周知の事項Aの合成樹脂は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」かは不明であり、仮に従来周知の事項Aを甲1発明、甲23発明(及び甲24事項)に重畳的に適用したとしても、相違点甲1-本1に係る本件発明1の特定事項とすることを想到容易とすることはできない。
よって、本件発明1は甲1発明、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の事項Aから当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(3-1-2)本件発明9の甲1発明、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の事項からの想到容易性について
上記(3-1-1)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明9も甲1発明、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の事項から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(3-2)甲1発明ないし甲4発明の少なくとも一つと、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の事項からの想到容易性について
上記(3-1)の甲1発明について述べたところと同様の理由により、本件発明1及び9はいずれも、甲1発明ないし甲4発明の少なくとも一つと、甲23発明(、甲24事項)及び従来周知の事項から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(3-3)小括
したがって、請求人の主張する無効理由3-3及び提出した証拠方法によっては、本件発明1及び9に係る特許を無効にすることはできない。

(4)無効理由3-4
無効理由3-4は、概略、本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11は、無効理由3-1ないし3-3の証拠たる甲1発明ないし甲4発明の少なくとも一つと、甲23発明、甲24事項及び従来周知の事項に加え、甲第1号証、甲第2号証および/または甲第3号証とから、当業者が想到容易というものである(上記第3の1(3)ア(エ))。
これにつき検討するに、本件発明2ないし6及び9ないし11はいずれも、本件発明1と同様に、合成樹脂について「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」及び「二重瞼形成用テープ」という特定が実質的になされているから、本件発明2ないし6及び9ないし11と、甲1発明ないし甲4発明の間も、本件発明1と同様の相違点甲1-本1を有することとなる。
したがって、上記(1)ないし(3)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明2ないし6及び10ないし11は、甲1発明ないし甲4発明の少なくとも一つと、甲23発明、甲24事項及び従来周知の事項に加え、甲第1号証、甲第2号証および/または甲第3号証とから当業者が容易に想到し得たものとすることはできない、ということなる。
よって、請求人の主張する無効理由3-4及び提出した証拠方法によっては、本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11に係る特許を無効にすることはできない。

(5)まとめ
以上により、請求人の主張する無効理由3及び提出した証拠方法によっては、本件発明1ないし6及び本件発明9ないし11に係る特許を無効にすることはできない。

6 無効理由4について
請求人は,無効理由4として、概略、本件発明1及び9の、甲2発明(、甲24号事項)及び従来周知の事項Aからの想到容易性(第29条第2項)、また、本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11の想到容易性を主張しているので、順に検討する。
(1)本件発明1の想到容易性について
請求人の主張する本件発明1についての無効理由4は、甲2発明及び従来周知の事項Aからの想到容易性、あるいは、甲2発明、甲24号事項及び従来周知の事項Aからの想到容易性、である。
しかし、上記5「無効理由3について」にて検討したように、本件発明1を、甲2発明、甲23発明、甲24号事項及び従来周知の事項Aから想到容易とすることはできない以上、甲23発明を証拠から除いたものである無効理由4によって想到容易とすることはできない。
これに関し、請求人は、甲第2号証には、開眼時この二重瞼形成用薄膜は緊張して上瞼の下側縁を固定するので不貼着部がたるみ下つて二重瞼が形成されることとなる」と記載されているところ(第2欄第1?4行)、「二重瞼形成用薄膜は緊張して」及び「・・上瞼の下側縁を固定する」などの表現からは、開眼時に二重瞼形成用薄膜が張るように皮膚へと押圧力をもたらすこと、即ち、二重瞼形成用薄膜が引き締まるように作用して皮膚へと押圧力をもたらすことが容易に想起される。また、甲第29号証の広辞苑における「緊張」の用語意味も参照されたい(上記第3の3(4)ア)などと主張している。
しかし、請求人の主張する甲第2号証の「二重瞼形成用薄膜は緊張して」及び「・・上瞼の下側縁を固定する」なる記載から、上記3(3)(3-1)イにて示した相違点甲2?本1に係る「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」なる事項までをも想到するのは、「緊張」の態様が甲第2号証の記載から判然としないこともあり、困難といわざるを得ない。また、請求人の示す甲第29号証の広辞苑における「緊張」の用語意味は、心理状態の「緊張」の意味と解する方が自然である。
したがって、請求人の主張には理由がない。

(2)本件発明9、本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11の想到容易性について
上記(1)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明2ないし6及び本件発明10ないし11も、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(3)まとめ
以上により、請求人の主張する無効理由4及び提出した証拠方法によっては、本件発明1ないし6及び本件発明10ないし11に係る特許を無効にすることはできない。

7 無効理由5について
請求人は,無効理由5として、概略、本件発明7及び8の甲1発明、甲30事項及び従来周知の事項からの想到容易性(第29条第2項)を主張しているので、順に検討する。

(1)本件発明7の想到容易性について
ア 甲1発明、甲30事項及び従来周知の事項
甲1発明は、上記2(2-1)イで記載したように、
「合成樹脂により形成した細いテープ基材2に、粘着剤層を設けることにより構成した、二重まぶた形成用テープ1。」というものであり、甲30事項は、2(2-30)で記載したように、「粘着性の支持シート4にあらかじめ切れ目10を設けてテープ片として列設させること。」というものである。
また、甲第31号証ないし甲第34号証には、いずれも、「シート状部材、粘着剤層及び把持部から構成されるシート状の積層体を細く裁断して粘着性積層体を得る方法」、が記載されているから、この点、従来周知の事項ということができる(以下「従来周知の事項B」という。)。

イ 対比
本件発明7は、「二重瞼形成用テープの製造方法」に係るものであるところ、本件発明1と同様に、「合成樹脂」について、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定がなされている。したがって、本件発明7と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも、上記3(2)(2-1)イの相違点甲1-本1を有する。

ウ 相違点についての判断
相違点甲1-本1については、上記3(2)(2-1)ウ「相違点についての判断」にて述べたように実質的な差異であるところ、甲30事項、さらには従来周知の事項Bは、この点を開示・示唆するものではない。
したがって、本件発明7と甲1発明との相違点甲1-本1以外の他の相違点が甲30事項及び従来周知の事項Bによって想到容易であったとしても、本件発明7を、甲1発明、甲30事項及び従来周知の事項から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(2)本件発明8の想到容易性について
本件発明8も、「二重瞼形成用テープの製造方法」に係るものであるところ、本件発明7と同様に、「合成樹脂」について、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定がなされている。したがって、上記(1)の本件発明7について述べたところと同様の理由により、本件発明8も、甲1発明、甲30事項及び従来周知の事項から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない、ということなる。

(3)まとめ
以上により、請求人の主張する無効理由5及び提出した証拠方法によっては、本件発明7及び8に係る特許を無効にすることはできない。

8 無効理由6について
請求人は無効理由6として、本件発明3ないし11の甲第15号証に記載された発明からの想到容易性(第29条第2項)を主張し、そして、本件発明1ないし6及び9ないし11の甲第17号証に記載された発明からの想到容易性を主張している。以下、順に検討する。

(1)甲15発明からの想到容易性について
甲15発明からの本件発明3ないし11の想到容易性をそれぞれ検討する。
(1-1)甲15発明からの本件発明3の想到容易性について
ア 対比
本件発明3は、本件発明1の二重瞼形成用テープにおいて、さらに「両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けた」という限定を付すものである。
そこで、本件発明3と甲15発明とを対比すると、上記4(2)(2-1)イにて示した一致点、及び相違点甲15-本1を有し、さらに、以下の点で相違する。
<相違点甲15-本3>本件発明3の二重瞼形成用テープは、「両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けた」ものであるのに対し、甲15発明は、そのようなもの不明である点。

ウ 相違点についての判断
(ア)相違点甲15-本1
相違点甲15-本1は、上記4(2)(2-1)イで示したように、
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明1は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲15発明はその点が不明である点、というものである。
これにつき検討する。上記2(2-15)アにて指摘したように、甲第15号証には、「両面粘着テープの超細片32が上瞼10に貼付される。次に粘着性細片32の上の皮膚が下に折り曲げられてから、図5(当審注:上記2(2-15)(ク))に示されたように、皮膚の底縁部がテープ細片32の底縁部と整合した状態で、それ自身に折り返される」と記載されていることから(摘記事項(ウ))、甲15発明の細片32については、「延伸」させて使用することが予定されていなといえる。
また、「湾曲または弓形の長手方向エッジを持つ幅可変の長尺細片となる形状に切断されてもよい」と記載され(摘記事項(オ))、さらに、「アプリケータ器具70によって貼付された状態で」使用されることが記載されている(摘記事項(カ))ことからして、甲15発明の「テープ細片32」は、貼着の前後でその形状が維持されることで、所定の作用効果が発揮されるから、これを延伸可能なものに置換することはできない。
したがって,相違点甲15-本1に係る本件発明3の特定事項は,当業者が容易に想到し得たものとはいうことはできない。
請求人は、米国審査においては甲第15号証に基づき本件発明3ないし11はその進歩性が否定され、甲第17号証に基づき本件発明1ないし6および9ないし11はその進歩性が否定されたことを主張し(上記第3の3(2)キ)、甲第16号証及び甲第18号証ないし甲第22号証にて米国における本件特許に対応する米国出願におけるオフィス・アクション等を示している。しかし、本件特許に対応する米国出願の米国特許制度及び運用に基づいた審査の経過や結果は、本件特許の無効理由に影響を及ぼすものではない。

(イ)小括
よって、相違点甲15-本3について検討するまでもなく、本件発明3は甲15発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(1-2)甲15発明からの本件発明4ないし11の想到容易性について
本件発明4ないし11はいずれも、本件発明3と同様に、合成樹脂について「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という特定が実質的になされているから、本件発明4ないし11も、本件発明3と同様の相違点甲15-本1を有することとなる。
したがって、上記(1-1)の本件発明3について述べたところと同様の理由により、本件発明4ないし11も甲15発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない、ということなる。

(2)甲17発明からの想到容易性について
甲17発明からの本件発明1ないし6及び9ないし11の想到容易性をそれぞれ検討する。
(2-1)甲17発明からの本件発明1の想到容易性について
ア 甲17発明
甲17発明は、上記2(2-17)イで指摘したように、
「プラスチックにより形成した細いフィルム状部材に、粘着剤をコーティングすることにより構成した、
一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげ。」というものである。

イ 対比
本件発明1と甲17発明とを対比すると以下のとおりである。
甲17発明の「プラスチック」は本件発明1の「合成樹脂」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に、「フィルム状部材」は「テープ状部材」に、「粘着剤をコーティングする」は「粘着剤を塗着する」に相当することも明らかである。
また、甲17発明の「一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげ」と本件発明1の「二重瞼形成用テープ」とは、二重瞼形成用の物品、である限りにおいて共通する。
したがって、本件発明1と甲17発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
二重瞼形成用の物品。」

そして、本件発明1と甲17発明とは、以下の2点で相違する。
<相違点甲17-本1-1>
テープ状部材を形成する合成樹脂について、本件発明1は、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」と特定しているのに対し、甲17発明はその点が不明である点。
<相違点甲17-本1-2>
二重瞼形成用の物品として、本件発明1は、二重瞼形成用テープであるのに対し、甲17発明は、一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげである点。

ウ 相違点についての判断
(ア)相違点甲17-本1-1及び相違点甲17-本1-2について
まず、甲17発明のような「つけまつげ」は、本来二重瞼を形成することを目的するものではないところ、甲17号証の記載を参酌しても、二重瞼形成については、「本発明の別の目的は、一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげを提供する」及び「一重瞼が二重瞼に変化し、」等の記載が断片的に存在するのみである。したがって、甲17発明は、「一重瞼を二重瞼に変化させるつけまつげ」であるものの、この「一重瞼を二重瞼に変化させる」ことに殊さら注目し、さらにこれを「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」合成樹脂(プラスチック)テープとすることが当業者にとって想到容易とすることは、困難といわざるを得ない。
さらに、「つけまつげ」たる甲17発明において、その「プラスチックにより形成した細いフィルム状部材」を、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」ものとすることは、綺麗な睫毛を見せるための「つけまつげ」としての本質的機能を損ないかねず、阻害事由にあたるというべきである。
これらを併せ考えると、相違点甲17-本1-1及び相違点甲17-本1-2に係る本件発明1の特定事項を、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(イ)小括
よって、本件発明1は甲17発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(2-2)甲17発明からの本件発明2ないし6及び9ないし11の想到容易性について
本件発明2ないし6及び9ないし11はいずれも、本件発明1と同様に、合成樹脂について「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」及び「二重瞼形成用テープ」という特定が実質的になされているから、本件発明2ないし6及び9ないし11と甲17発明も、本件発明1と同様の相違点甲17-本1-1及び相違点甲17-本1-2を有することとなる。
したがって、上記(2-1)の本件発明1について述べたところと同様の理由により、本件発明2ないし6及び9ないし11は甲17発明から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない、ということになる。

(3)まとめ
よって、請求人の主張する無効理由6及び提出した証拠方法によっては、本件発明1ないし11に係る特許を無効にすることはできない。

9 無効理由7について
(1)第36条第6項1号違反について
ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項1号で規定するサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される(知的財産高等裁判所の平成17年(行ケ)第10042号特許取消決定取消請求事件判決参照)。

イ これを本件について検討するに、まず、本件明細書の発明の詳細な説明には、以下のような記載がある。
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題を解決し、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、瞼に直接二重にするためのひだを形成し、自然な二重を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、二重瞼形成のための操作が安全かつ容易な二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、上記二重瞼形成用テープをきわめて容易に製造する方法を提供することにある。」
「【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明に係る二重瞼形成用テープは、基本的には、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とするものである。上記粘着剤は上記テープ状部材の両面または片面に塗着することができる。また、上記二重瞼形成用テープは、両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けることができる。」
「【0008】上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の不要な部分はその後に切除すればよい。
【0009】このようにして、上記テープ状部材は瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材の両端を持って引っ張った状態でそれを瞼のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自分の操作でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、本発明の二重瞼形成用テープは、それ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の二重瞼形成用テープの一実施例を示している。この二重瞼形成用テープは、基本的には、弾性的に伸縮する細いテープ状部材1の表裏に粘着剤2を塗着することにより構成することができるものである。上記テープ状部材1としては、両端を持って引っ張ったときに伸長し、しかも、弾性的に復帰しようとする収縮力が作用するものであればよいが、特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ましい。このテープ状部材1は、一般的には幅が1?3mm程度の細い帯状に形成されるが、幅が必ずしもその範囲内である必要はなく、また明確な帯状を形成していなくても差し支えない。更に、上記粘着剤2としては、皮膚用に用いられる各種粘着剤を利用することができる。」

ウ すなわち、本件明細書には、本件発明の構成及びその実施例が記載されており(上記イにて摘記する段落【0004】、段落【0008】?【0010】)、本件明細書に接した当業者において、本件発明の構成を採用することにより、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成することが困難であった、等の本件発明の課題(上記イにて摘記する段落【0003】)を解決できると認識できるものと認められるから、本件発明に係る本件特許は、特許法第36条第6項1号で規定するサポート要件に適合するというべきである。

エ さらに請求人は、本件発明1における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、甲第4号証や甲第24号証に示されるような従来からある伸縮性を有する二重瞼形成用テープを含む記載になっており、本件発明1の発明を明確に把握することができない旨主張する(上記第3の3(6)イ)。
これにつき検討するに、第2事件判決も判示するように、上記本件明細書の段落【0008】には,「延伸後の長さ」や「延伸後にも弾性的な伸縮性の程度」について,テープ状部材の両端を把持して引っ張った状態でテープ状部材を瞼に貼り付け,そのまま両端の把持部を離した際に,引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮み,これが貼り付けた瞼にくい込む状態となることが可能である程度の「延伸後の長さ」や「延伸後にも弾性的な伸縮性の程度」のものが必要であることが記載されている。
そして、請求人の主張する甲第4号証に示されるような従来から存在する伸縮性を有する二重瞼形成用テープは、その使用形態からして、通常上記のような「延伸後の長さ」や「延伸後にも弾性的な伸縮性の程度」を有するものではない。したがって、本件発明1等における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、従来から存在する伸縮性を有する二重瞼形成用テープとは明確に区別して把握できるものである。
よって、請求人の上記主張には理由がない。

(2)第36条第6項2号違反について
請求人は、本件発明1等における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、従来からある伸縮性を有する二重瞼形成用テープを含む記載になっており、明細書及び図面の記載を参酌しても従来技術から区別された本件発明1を明確に把握することができないから、本件の請求項1等の記載は明確でない旨主張する。(上記第3の3(6)イ)。しかし、上記(1)にて検討したように、本件発明1等における「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」は、従来らある伸縮性を有する二重瞼形成用テープと明確に区別して把握し得るものであるから、請求項1等の記載が明確性を欠き、第36条第6項2号に違反するということはできない。

(3)第36条第4項違反について
本件無効審判における第36条第4項違反の無効理由に関し、請求人は、第2事件における判断に対して、本審判事件では、瞼に食い込む状態になるような「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性」を見出すプロセスに過度の試行錯誤が必要になることを理由として本件特許が実施可能要件を満足するものではないことを主張するものであり、したがって、本審判事件の実施可能要件に係る主張は、第2事件における主張及び判断とは理由が異なっている旨主張する。(上記第3の3(6)オ)
しかし、本件明細書段落【0004】及び段落【0008】?【0010】の「本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1の二重瞼形成用テープにより二重瞼を形成する方法について,・・・(中略)・・・引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮み,このようにして弾性的に縮んだテープ状部材がこれを貼り付けた瞼に食い込む状態になって二重瞼のひだが形成されること,二重瞼形成用テープを構成するテープ状部材について,『両端を持って引っ張ったときに伸長し,しかも,弾性的に復帰しようとする収縮力が作用するもの』であることが必要があること,そのようなテープ状部材の材質として,特に,『延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂』が望ましいことが記載されているものと認められる。
そして,」請求人は、「3M社製の合成樹脂テープである#1522を用いて本件発明1の実施品を製造しており,同テープの材料である合成樹脂は,『延伸後にも弾性的な伸縮性』を有し,同テープは,本願の出願当時既に広く市販され容易に入手可能なものである(弁論の全趣旨)。・・・(中略)・・・
そうすると,上記」「記載に接した当業者は,格別の試行錯誤をすることなく,本件発明1の『テープ状部材』の材料として『延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂』を選択することができたものと認められる。
したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。」と第2事件判決は判示している。当該判示事項から、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂」を見出すプロセスに過度の試行錯誤は必要でない。
そして、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂」を見出すプロセスに過度の試行錯誤は必要でない以上、請求人の主張する「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性」を見出すプロセスにも過度の試行錯誤が必要ということはできないから、第36条第4項違反についての請求人の主張は失当であるという他はない。

(4)まとめ
よって、請求人の主張する無効理由7及び提出した証拠方法によっては、本件発明1ないし11に係る特許を無効にすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人主張の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし請求項11に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-12 
結審通知日 2013-08-14 
審決日 2013-08-30 
出願番号 特願2001-160951(P2001-160951)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (A61F)
P 1 113・ 111- Y (A61F)
P 1 113・ 536- Y (A61F)
P 1 113・ 121- Y (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 玲英子  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
登録日 2002-02-08 
登録番号 特許第3277180号(P3277180)
発明の名称 二重瞼形成用テープまたは糸及びその製造方法  
代理人 山尾 憲人  
代理人 鶴 由貴  
代理人 江間 晴彦  
代理人 林 直生樹  
代理人 鮫島 睦  
代理人 岩井 泉  
代理人 言上 惠一  
代理人 關 健一  
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