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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1279995
審判番号 不服2012-24674  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-12 
確定日 2013-09-30 
事件の表示 特願2008-326745「架橋ポリエチレン管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日出願公開、特開2010-150299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,平成20年12月24日を出願日とする特許出願であって,平成24年1月20日付けで拒絶理由が通知され,同年3月12日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正され,同年6月21日付けでいわゆる最後の拒絶理由が通知され,同年8月6日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正されたが,同年9月18日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年12月12日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1 平成24年8月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)の後の特許請求の範囲の記載
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。(なお,請求項2及び3の記載は,省略する。)
「【請求項1】 ポリエチレン樹脂ペレット,ポリエチレン樹脂パウダー及びシラン化合物とラジカル発生剤の混合物をミキサーで混合後,押出機の途中に,L/D=25?40の注入孔を設け,先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機を用いて酸化防止剤を添加するL/D=35?45の単軸押出機のホッパーに供給し,溶融,混練,反応させて変性ポリエチレンとし,前記単軸押出機の途中に設けた,前記注入孔から,先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機を用いて,前記ポリエチレン樹脂ペレットにシラノール縮合触媒及び抗酸化剤を含有させたマスターバッチを添加して,加熱,溶融,混練し,管状に溶融押出成形して,水分と接触させて架橋させることを特徴とする架橋ポリエチレン管の製造方法」

(2) ところで,請求項1の記載(上記(1))は,例えば,「押出機の途中に,L/D=25?40の注入孔を設け,先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機を用いて酸化防止剤を添加するL/D=35?45の単軸押出機のホッパーに供給し」の部分の記載についてみたとき,単軸押出機,サブの押出機ならびに注入孔の構成・配置関係が不明りょうであり,また,サブの押出機を用いて添加するとされる「酸化防止剤」と「シラノール縮合触媒及び抗酸化剤を含有させたマスターバッチ」との関係が不明であり,さらに,マスターバッチが添加される対象が「ポリエチレン樹脂ペレット,ポリエチレン樹脂パウダー及びシラン化合物とラジカル発生剤の混合物をミキサーで混合」したものであるか,「前記ポリエチレン樹脂ペレット」であるか不明であるなど,その記載全体の措辞が不明となっている。

2 本願発明の要旨認定
(1) 特許出願に係る発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。しかし,上記1(2)のとおり,特許請求の範囲(請求項1)の記載は,その技術的意義が一義的に明確に理解できないし,また一見して誤記であることが本願の明細書の記載に照らして明らかであるといえるから,本願の発明の要旨認定にあたっては,明細書の記載を参酌することが許される。

(2) そこで,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)の要旨は,本件補正により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)の記載を参酌すると,次のとおりのものと認めることができる。
「ポリエチレン樹脂ペレット,ポリエチレン樹脂パウダー及びシラン化合物とラジカル発生剤の混合物をミキサーで混合後,L/D=35?45の単軸押出機のホッパーに供給し,溶融,混練,反応させて変性ポリエチレンとするにあたり,前記単軸押出機の途中,L/D=25?40の位置に設けられた注入孔から,先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機を用いて,シラノール縮合触媒及び抗酸化剤を含有させたマスターバッチを添加すること,
前記マスターバッチを添加してなる前記変性ポリエチレンを加熱,溶融,混練し,管状に溶融押出成形して,水分と接触させて架橋させること
を特徴とする架橋ポリエチレン管の製造方法」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,本願の出願日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。),下記引用文献3?5に開示の技術及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
引用文献1: 特開2005-199633号公報
引用文献3: 特開2000-281731号公報
引用文献4: 特開2000-343583号公報
引用文献5: 特開2000-219785号公報

第4 本願が拒絶されるべき理由
1 引用発明
(1) 査定の理由で引用された上記引用文献1には,次の記載がある。(下線は本審決による。以下同じ。)
「密度が0.940g/cm^(3)以上のエチレン系樹脂ペレットに対して,少なくとも,密度が0.935g/cm^(3)以下のエチレン系樹脂パウダー,エチレン性不飽和シラン化合物,及びラジカル発生剤を添加し混合した後,押出機のホッパーに供給し溶融混練して,エチレン系樹脂をエチレン性不飽和シラン化合物で変性し,管状に溶融押出成形して変性エチレン系樹脂管となし,次いで,シラノール縮合触媒の存在下に水分と接触させて該変性エチレン系樹脂を架橋させることを特徴とする架橋エチレン系樹脂管の製造方法。」(【請求項1】)
「本発明によれば,シラン変性エチレン系樹脂の水架橋方法を用いて,樹脂の熱劣化を抑制して安定した品質を有するのみならず,曲げ加工性に優れ,且つ,耐クリープ性にも優れる架橋エチレン系樹脂管を製造することができる架橋エチレン系樹脂管の製造方法を提供することができる。」(【0008】)
「前記エチレン系樹脂ペレットに対して,前記エチレン系樹脂パウダー,前記エチレン性不飽和シラン化合物,及び前記ラジカル発生剤を添加し混合するには,例えば,タンブラーブレンダー,リボンブレンダー,V型ブレンダー,ヘンシェルミキサー等の混合機を用い,該混合物を押出機のホッパーに供給し,通常150?300℃程度の温度範囲内で,用いたラジカル発生剤の分解温度以上の温度で溶融混練して,エチレン系樹脂をエチレン性不飽和シラン化合物で変性し,マンドレルを備えた環状ダイより管状に溶融押出し,内部サイジング或いは外部サイジングすることにより成形して変性エチレン系樹脂管となす。」(【0021】)
「又,前記シラノール縮合触媒の使用方法としては,シラノール縮合触媒を,前記エチレン系樹脂パウダー,前記エチレン性不飽和シラン化合物,及びラジカル発生剤と共に前記エチレン系樹脂ペレットに添加し混合する方法,シラノール縮合触媒を押出機の途中に設けた注入孔から圧入する方法,又は,シラノール縮合触媒を溶液又は分散液として変性エチレン系樹脂管表面に塗布するか,或いは,その溶液又は分散液に変性エチレン系樹脂管を含浸させる等の方法が採られる。中で,本発明においては,シラノール縮合触媒を,前記エチレン系樹脂パウダー,前記エチレン性不飽和シラン化合物,及びラジカル発生剤と共に前記エチレン系樹脂ペレットに添加し混合する方法,又は,シラノール縮合触媒を押出機の途中に設けた注入孔から圧入する方法によるのが好ましく,シラノール縮合触媒を,前記エチレン系樹脂パウダー,前記エチレン性不飽和シラン化合物,及びラジカル発生剤と共に前記エチレン系樹脂ペレットに添加し混合する方法によるのが特に好ましい。」(【0024】)
「水架橋は,しかる後,前記変性エチレン系樹脂管を,常温?200℃程度,通常は常温?100℃程度の液状又は蒸気状の水に1時間?1週間程度,通常は3?12時間程度にわたって接触させることによりなされ,得られる架橋エチレン系樹脂管における樹脂の架橋度としてのゲル分率は,65%以上とするのが好ましい。
」(【0025】)
「尚,本発明における前記架橋エチレン系樹脂管には,本発明の効果を損なわない範囲で,前記エチレン性不飽和シラン化合物変性エチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂やゴム,及び,酸化防止剤,光安定剤,紫外線吸収剤,造核剤,中和剤,帯電防止剤,滑剤,ブロッキング防止剤,分散剤,流動性改良剤,可塑剤,離型剤,難燃剤,着色剤,充填材等が添加されていてもよい。」(【0026】)

(2) 上記(1)の摘記,特に特許請求の範囲ならびにシラノール縮合触媒の使用方法に係る【0024】の記載などから,引用文献1には,次の発明(引用発明)が記載されていると認める。
「密度が0.940g/cm^(3)以上のエチレン系樹脂ペレットに対して,密度が0.935g/cm^(3)以下のエチレン系樹脂パウダー,エチレン性不飽和シラン化合物及びラジカル発生剤を添加しミキサー等の混合機を用いて混合した後,押出機のホッパーに供給し溶融混練して,エチレン系樹脂をエチレン性不飽和シラン化合物で変性し,管状に溶融押出成形して変性エチレン系樹脂管とするにあたり,シラノール縮合触媒を押出機の途中に設けた注入孔から圧入し,次いで,当該変性エチレン系樹脂管を水分と接触させて該変性エチレン系樹脂を架橋させる架橋エチレン系樹脂管の製造方法」

2 対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「密度が0.940g/cm^(3)以上のエチレン系樹脂ペレット」,「密度が0.935g/cm^(3)以下のエチレン系樹脂パウダー」,「エチレン性不飽和シラン化合物」,「架橋エチレン系樹脂管」は,それぞれ本願発明の「ポリエチレン樹脂ペレット」,「ポリエチレン樹脂パウダー」,「シラン化合物」,「架橋ポリエチレン管」に相当するのは明らかである。
また,引用発明における「エチレン系樹脂をエチレン性不飽和シラン化合物で変性し」たものは,本願発明における「溶融,混練,反応させて変性ポリエチレン」としたものに相当し,さらに「管状に溶融押出成形して変性エチレン系樹脂管」としたものは,「前記マスターバッチを添加してなる前記変性ポリエチレンを加熱,溶融,混練し,管状に溶融押出成形し」たものに相当するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,少なくとも次の点で一致し(一致点),次の点で相違する(相違点1?3)といえる。
・ 一致点
ポリエチレン樹脂ペレット,ポリエチレン樹脂パウダー及びシラン化合物とラジカル発生剤の混合物をミキサーで混合後,押出機のホッパーに供給し,溶融,混練,反応させて変性ポリエチレンとするにあたり,前記押出機の途中に設けられた注入孔からシラノール縮合触媒を添加すること,
シラノール縮合触媒を添加してなる前記変性ポリエチレンを加熱,溶融,混練し,管状に溶融押出成形して,水分と接触させて架橋させること
を特徴とする架橋ポリエチレン管の製造方法
・ 相違点1
途中に注入孔が設けられた押出機について,本願発明は「L/D=35?45の単軸押出機」であって,注入孔の位置を「L/D=25?40」と特定するのに対し,引用発明にはそのような特定がない点
・ 相違点2
注入孔から添加(圧入)される対象について,本願発明は「シラノール縮合触媒及び抗酸化剤を含有させたマスターバッチ」と特定するのに対し,引用発明は「シラノール縮合触媒」と特定する点
・ 相違点3
注入孔から上記相違点2に係る対象物を添加(圧入)するための手段について,本願発明は「先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機」と特定するのに対し,引用発明にはそのような特定がない点

3 相違点についての判断
(1) 相違点1について
ア 引用文献1の記載(上記1(1))によれば,引用発明の技術分野は,本願発明と同じく,ポリエチレン樹脂,シラン化合物及びラジカル発生剤を押出機を用いて混練し,さらに押出機の途中からシラノール縮合触媒を添加・混練してポリエチレン樹脂をシラン化合物で変性し,管状に溶融押出成形してシラングラフト化ポリエチレン樹脂管となし,次いで,水分と接触させて架橋ポリエチレン樹脂管を製造する方法に関するものである。
そして,上述の技術分野において,押出機として単軸押出機(一軸スクリュー押出機)を用いることは,上記引用文献3(例えば,【請求項1】,【請求項5】,【0025】,【0026】参照。)及び引用文献4(例えば,【請求項1】,【0035】,【0042】参照。)に記載されているように,公知の技術であった。
そうすると,引用発明の「押出機」について,上記公知の技術を適用することすなわち単軸押出機とすることは,当業者であれば想到容易であるといえる。
イ さらに,押出機スクリューを設計するにあたり,その基本的要素であるスクリューの有効長(L)と直径(D)との比率(L/D)は当然考慮すべき技術事項であるところ,上記公知技術を引用発明の「押出機」に適用するにあたってそのL/Dを「35?45」とすることは,引用発明における混練効果を考慮して当業者が適宜設定した単なる設計事項にすぎないものである。同様に,引用発明の押出機における注入孔の位置を「L/D=25?40」とすることも,混練効果を考慮した設計事項にすぎない。
しかも,本願明細書には,本願発明の単軸押出機が「L/D=35?45」であり,注入孔の位置が「L/D=25?40」であることの技術的意義,すなわち本願発明が引用発明に比し相違点1に係る構成を有することによる有利な効果については何ら記載されておらず(本願明細書には,せいぜい【0013】の記載があるにすぎない。),このことからも,これら数値限定は単なる設計事項であるといえる。
ウ 請求人は,本願明細書の【表1】の記載すなわち実施例1及び2の記載を根拠に,本願発明は単軸押出機を用いることで,高額な設備費を要するニーディングディスクスクリューを用いた二軸押出機などの混練性の高い押出機を用いずとも,生産性の良い架橋ポリエチレン管の製造方法を提供できる旨主張する(平成24年8月6日付け意見書3頁など)。
しかし,本願明細書には,二軸押出機を用いた比較例の記載はなく,二軸押出機を用いずとも架橋ポリエチレン管を製造できることが記載されているにとどまる。本願明細書には,単軸押出機を用いたものが,二軸押出機を用いた場合に比して,生産性の点で有利な効果を奏するとの記載はない。そして,上記アで述べたように,単軸押出機を用いる技術が出願時に公知である以上,請求人が主張するような本願発明の効果は,上記公知の刊行物からみて,予測しうる程度のものであって,何ら格別でない。

(2) 相違点2について
本件の技術分野(上記(1)ア)において,シラノール縮合触媒を変性ポリエチレンに添加するにあたり,シラノール縮合触媒及び抗酸化剤を含有させたマスターバッチの形態で添加することは,上記引用文献5(例えば,【請求項1】,【0012】,【0014】参照。「シラノール縮合触媒及び酸化防止剤を含有させたキャリアポリマーB」が当該マスターバッチに相当する。)に記載されているように,出願時に公知の技術である。
また,引用発明は,引用文献1の【0026】の記載から,変性ポリエチレン中への酸化防止剤(抗酸化剤)の添加を許容するものである。
さすれば,引用発明において,シラノール縮合触媒を注入孔から添加(圧入)するに際し,引用文献5に接した当業者であれば,シラノール縮合触媒を抗酸化剤とともにマスターバッチの形態で添加することは想到容易であるといえる。

(3) 相違点3について
押出機の途中の注入孔から原料成分を添加する手段として,先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機を用いることは,周知の技術である(例えば,上記引用文献3の【0052】や,【図2】あるいは【図4】に係る実施例参照。なお,引用文献3には,サブの押出機(サイドフィーダー)の先端にブレーカープレートを装着することの記載はないが,押出機の先端にブレーカープレートを装着することは,出願時において普通に行われている。)。
そして,引用発明において,注入孔から原料成分を添加するための手段として,上述の周知技術(先端にブレーカープレートを装着したサブの押出機)を採用することは,当業者であれば格別困難なくなし得ることである。

4 小活
したがって,本願発明は,引用発明,上記引用文献3?5に開示された技術及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

第5 むすび
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-26 
結審通知日 2013-08-05 
審決日 2013-08-19 
出願番号 特願2008-326745(P2008-326745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 繁田 えい子  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 須藤 康洋
塩見 篤史
発明の名称 架橋ポリエチレン管の製造方法  
代理人 石川 幸吉  
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