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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01G
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01G
審判 全部無効 2項進歩性  G01G
管理番号 1280388
審判番号 無効2012-800214  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-12-27 
確定日 2013-10-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第5106125号発明「計量装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5106125号(以下、「本件特許」という。)は、特願2007-557332号として平成18年3月3日(優先権主張:平成17年3月3日(以下、「優先日」という。)、欧州特許庁)に国際特許出願したものであって、平成24年10月12日に特許権の設定の登録(発明の名称:計量装置、請求項の数:14)がなされたものである。
本件特許について、請求人から、平成24年12月27日付け審判請求書により、本件請求項1ないし14に係る特許を無効とすることを請求の趣旨として本件特許無効審判(無効2012-800214号)が請求されたところ、被請求人から平成25年4月30日付けで答弁書の提出があった。
その後、平成25年7月12日付けで請求人より口頭審理陳述要領書が、同年同月16日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書がそれぞれ提出され、同年同月30日に第1回口頭審理が行われ、該口頭審理をもって審決をするに熟したものとされたところ(第1回口頭審理調書を参照のこと)、同年8月7日付け上申書が請求人より提出された。

以下、本件特許に関し、その請求項1、請求項2、・・・及び請求項14に係る特許を、それぞれ、本件特許1、本件特許2、・・・及び本件特許14という。また、本件請求項1、請求項2、・・・及び請求項14に係る発明を、それぞれ、本件発明1、本件発明2、・・・及び本件発明14といい、全体を総称して本件発明という場合もある。さらに、以下、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を本件明細書等という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許1ないし14を無効とすることを請求の趣旨とし、その請求には理由があることについて、以下のように主張している。
甲第9号証、甲第10号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許1ないし14は、いずれも、特許法第36条第6項第2号、又は同条第4項第1号に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
また、甲第2号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許1ないし14は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
そして、本件特許を無効とすべき理由は、審判請求書、口頭審理陳述要領書(請求人)、第1回口頭審理調書、及び上記上申書の記載内容を総合すれば、概略、以下のとおりである。

1 無効理由1(特許法第36条関係)
(1)無効理由1-1
本件発明1は、「クリップオン機構」を構成要件としているところ、「クリップオン機構」は一般的な技術用語ではなく、発明の詳細な説明にもこの用語についての定義はないから、「クリップオン機構」を構成要件とする本件発明1は、その外延が明確でない。請求項1を引用する請求項2ないし14に係る本件発明2ないし14についても同様である。
したがって、本件発明1ないし14は、いずれも明確であるとはいえず、よって、本件特許1ないし14は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)無効理由1-2
本件発明13は、「前記コントローラが、生成物の一部の重量の情報を受けるよう接続されており、それに基づいて、速度及び/又は運転時間を調整するよう構成されている、請求項12記載の計量装置。」であるところ、本件明細書等には、本件発明13を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分な記載がなされているとはいえない。
したがって、本件特許13は、本件発明13に係る発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 無効理由2(特許法第29条関係)
本件発明1ないし14は、優先日前に頒布された甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許1ないし14は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 無効理由3(特許法第29条関係)
本件発明1ないし14は、優先日前に頒布された甲第3号証に記載された発明、並びに甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許1ないし14は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4 証拠方法
上記無効理由1ないし3について、請求人が提出した証拠方法は、いずれも、本件特許の優先日前に頒布された刊行物であり、以下のとおりである。

・甲第1号証:本件特許掲載公報
・甲第2号証:特開2003-130719号公報
(無効理由2についての主引用例である。詳細は、後述する。)
・甲第3号証:特開平10-332467号公報
(無効理由3についての主引用例である。詳細は、後述する。)
・甲第4号証:特開平5-79889号公報
(無効理由2,3についての周知例である。詳細は、後述する。)
・甲第5号証:特開平5-43034号公報
(無効理由2,3についての周知例である。詳細は、後述する。)
・甲第6号証:特開2001-242004号公報
(無効理由2,3についての周知例である。詳細は、後述する。)
・甲第7号証:特開平10-38667号公報
(無効理由2,3についての周知例である。詳細は、後述する。)
・甲第8号証:特開平6-219532号公報
(無効理由2,3についての周知例である。詳細は、後述する。)
・甲第9号証:特公平3-37654号公報
(無効理由1-1に関し、ボールとスプリングを用いた結合機構の例が存在することを立証するものである。)
・甲第10号証:広辞苑 第2版補訂版 昭和51年12月1日 株式会社岩波書店 第652頁
(無効理由1-1に関し、「クリップ」の用語の意味を立証するものである。)
・甲第11号証:特開昭62-113024号公報
(無効理由2,3についての周知例である。詳細は、後述する。)

第3 被請求人の反論
被請求人は、本件審判の請求は成り立たないことの審決を求め、その請求には理由がないことについて、答弁書、口頭審理陳述要領書(被請求人)及び第1回口頭審理調書の記載内容を総合すれば、概略、以下のとおり反論している。
1 無効理由1について
(1)無効理由1-1
「クリップオン機構」が意味するものは、クリック結合機構との関係で明確である。
したがって、本件発明は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

(2)無効理由1-2
本件発明13については、発明の詳細な説明の段落【0013】に、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。
したがって、本件発明13は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

2 無効理由2について
甲第2号証を始め、甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証には、本件発明1の特徴部が示されておらず、よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件発明1を限定した本件発明2ないし14についても、同様である。

3 無効理由3について
甲第3号証を始め、甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証には、本件発明1の特徴部が示されておらず、よって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、並びに甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件発明1を限定した本件発明2ないし14についても、同様である。

4 証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・乙第1号証:Webster's Third New International Dictionary VOLUME1
1965 第422頁、第424頁
・乙第2号証:特許庁発行に係る特許公報における「クリップオン」の記載例
(「クリップオン」の用語の使用状態を立証するものである。)
・乙第3号証:学術用語集 機械工学編 増訂版 第428頁
(「クリック」の用語の意味を立証するものである。)

第4 本件発明について
1 本件発明
本件発明1ないし14は、その特許請求の範囲の請求項1から14までのそれぞれに記載された事項によって特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物を計量する、計量装置であって、
計量される生成物のための送り込み部と、
前記送り込み部から計量システムへ生成物の一部を制御して搬送するための、少なくとも1つの投与機構と、を備えており、
前記投与機構が、モータ駆動の輸送スクリューと、制御ユニットと、を備えており、
前記輸送スクリューが、生成物を送り込み部から計量システムへ搬送するための、オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成されており、
前記制御ユニットが、所望量の生成物を計量システムへ搬送するために、モータを制御するようになっており、
前記送り込み部は、円錐形の中央底部を備えており、
前記輸送スクリューは、前記輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、クリップオン機構によって、前記モータと結合されており、
前記クリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられていることを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記螺旋形状のロッドが、その長さに沿って増加するピッチを有している、請求項1記載の計量装置。
【請求項3】
前記輸送スクリューの内部に位置するコアを更に備え、前記コアが、前記輸送スクリューの内径より小さい又は同じである、直径を、有している、請求項1又は2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記コアが、ほぼ円筒形である、請求項3記載の計量装置。
【請求項5】
前記コアが、前記輸送スクリューと同調して回転する、請求項3又は4に記載の計量装置。
【請求項6】
前記コアが、静止し続けている、請求項3又は4に記載の計量装置。
【請求項7】
前記コアが、異なる生成物を搬送するための、及び/又は、異なる搬送速度を与えるための、種々の直径を、助長するために交換可能である、請求項3?6のいずれか1つに記載の計量装置。
【請求項8】
前記オープントラフが、前記輸送スクリューの外径に、相当する又はそれより大きい、直径を備えた、円筒形を有する底部を、備えている、請求項1?7のいずれか1つに記載の計量装置。
【請求項9】
前記オープントラフが、送り込み部の側面にある開口を通って延びている、請求項8記載の計量装置。
【請求項10】
前記送り込み部が、円錐形の中央底部を備えており、前記中央底部は、生成物を、前記中央底部の周囲に円状に位置している幾つかの前記投与機構に対し、放射状に外側に導いている、請求項1?9のいずれか1つに記載の計量装置。
【請求項11】
前記輸送スクリューを駆動する前記モータが、前記送り込み部の前記中央底部の下に位置している、請求項10記載の計量装置。
【請求項12】
前記モータが、コントローラによって、速度及び運転時間が制御されている、請求項1?11のいずれか1つに記載の計量装置。
【請求項13】
前記コントローラが、生成物の一部の重量の情報を受けるよう接続されており、それに基づいて、速度及び/又は運転時間を調整するよう構成されている、請求項12記載の計量装置。
【請求項14】
前記装置が、2?40個の前記投与機構を備えている、請求項1?13のいずれか1つに記載の計量装置。」

2 本件発明の特徴
本件発明の技術的特徴をより明確に理解するために、本件明細書等の記載を参酌する。
(1)本件明細書等の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある。

ア「【発明が解決しようとする課題】
【0002】
このような計量装置においては、送り込み部から計量システムに生成物を搬送するためのトラフとして位置づけられた振動皿を備えた投与又は計量機構を使用すること、及び、計量システムへ所望量の生成物を搬送するために、振動の時間及び強度を制御すること、が知られている。このような計量装置は、十分に安定しており且つ組織的な方法で、生成物を振動によって搬送することができる限り、広範囲の生成物に使用することができる。計量システムに所望量の生成物を搬送するための別の方法は、管状のハウジング内に、スクリューコンベヤーを設けることであり、それは、例えば、欧州特許第1439379号明細書で知られているように、粒状又は粉状の物質を制御して輸送するのに適している。しかし、通常のスクリューコンベヤーは、生成物に比較的大きな機械的影響を与える。しかし、そのような機械的影響は、敏感な生成物に関しては、避けるべきである。このため、敏感な、粘着性のある、及び/又は、曲がりやすい、生成物、例えば、鶏肉、魚、新鮮な肉、マリネにした肉、及びそれらに相当するゴツゴツした及び/又は粘着性のある材料に関して、振動及びスクリューコンベヤーによる生成物の搬送は、十分に安定でなく、明確でなく、及び穏やかでなく、そのため、このようなタイプの生成物の所要の搬送方法として提供されるものではない。」

イ「【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の目的は、振動搬送に適していない生成物の明確な搬送を提供できる、上述したような計量装置を提供することであり、この目的は、粘着性のある及び/又は曲がりやすい、生成物、例えば、新鮮な肉、マリネにした肉、鶏肉、魚、及びそれらに相当するゴツゴツした及び/又は粘着性のある材料、を計量するための、計量装置によって、達成される。本発明のそれは、請求項1に記載の特徴を備えている。上記装置は、螺旋形状のロッドとして形成された、モータ駆動の輸送スクリューを、備えており、そのスクリューは、生成物が、粘着性のある及び/又は曲がりやすい、又は、その他の理由で、振動搬送に適していないものであっても、送り込み部から計量システムへ生成物の明確な搬送を提供する。
【0004】
オープントラフにおけるスクリューの位置決めは、生成物に大きな機械的影響又は圧力を与えることなく、緩やかな搬送を提供する。」

ウ「【0006】
図1に示された装置は、送り込み部1を備えており、送り込み部1は、送り込み部1の外周に沿って対称的に位置している18個の投与機構3を有している。それぞれの投与機構3は、トラフ4を備えており、螺旋形状のロッドの形の輸送スクリュー5が、中に位置しており、モータ7(図3参照)によって駆動されている。コア6は、輸送スクリュー5と同軸上に位置しており、任意のものと考えられており、輸送スクリュー5の内径よりも小さい直径を有している。
【0007】
図2の断面図で示された送り込み部1は、送り込み部1の外壁12に向かって生成物を分配する、円錐形の中央底部2を、備えている。送り込み部の円錐形の中央底部2は、送り込み部の外壁12から少し離れて終わっており、それらの間で、生成物が、個々のトラフ4の中に落ちる。個々のトラフ4の中では、輸送スクリュー5及び可能なコア6が、トラフ4の端部の下方に位置している計量システムに、生成物を制御された量だけ搬送するための制御された方法で、生成物を送り込み部1から搬出するよう、位置づけられている。」

(2)本件発明1について
アないしウ及び図1ないし3の記載によれば、本件発明1は、まず、輸送スクリューとして、通常のスクリューコンベヤーに代えて、「輸送スクリューが、生成物を送り込み部から計量システムへ搬送するための、オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成され」たとの構成を備えたことにより、粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物に大きな機械的影響又は圧力を与えることなく緩やかに搬送できる、との作用効果を奏する点に、その技術的特徴があるものと認められる。
そして、本件明細書等において、上記通常のスクリューコンベヤーに関する従来例として、欧州特許第1439379号を挙げている。

(3)本件発明2ないし14について
請求項1を引用する請求項2ないし14に係る本件発明2ないし14も、上記技術的特徴を有するものである。

第5 当審の判断
1 無効理由1について
(1)無効理由1-1
ア 「クリップオン機構」について
本件発明1に係る「クリップオン機構」との用語について、以下検討する。
(ア)用語の意味
まず、「クリップ」とは、「広辞苑(第6版)、岩波書店、2008年1月11日発行)」によれば、「小型の挟み金具。」のこととされており、また、「マグローヒル 科学技術用語大辞典 改訂第3版、日刊工業新聞社、2000年3月15日発行)」によれば、「止め金またはフックによって、部品を他の部品にかたく結びつける道具」のこととされている。
次に、「オン」とは、上記広辞苑によれば、「スイッチや機械などが点灯・操作中のこと。」とされており、また、上記マグローヒル 科学技術用語大辞典によれば、「装置が動作状態にあることまたは回路の二つの状態の一つ」のこととされている。

(イ)本件明細書等の記載
他方、「クリップオン機構」に関し、本件明細書には、以下の記載がある。
「【0009】
図3に示すように、モータ7と輸送スクリュー5との間の結合部は、ブッシング8を備えており、ブッシング8の上には、輸送スクリュー5が、例えば溶接によって、恒久的に結合されており、又は、前記ブッシング8は、存在する場合には、コア6の中に一体化されることも可能である。ブッシング8は、モータ駆動軸へ無回転結合を提供するピン9と、例えばスプリング及びボールによって与えられる、クリック結合機構10と、を備えている。前記ボールは、モータ軸の中に設けられた凹部内に押し込められている。」

(ウ)検討
以上、「クリップ」及び「オン」がそれぞれ意味する内容や、本件明細書等の記載から見て、本件発明1に係る「クリップオン機構」とは、部品を他の部品にかたく結びつける状態を維持するための機構のことと解され、その意味するところは明確である。
しかも、「クリップオン」という用語は、以下(a)ないし(f)に示す様に、(a)カメラの分野、(b)自動二輪車の分野、(c)軸受装置の分野、(d)レール支持装置の分野、(e)秤の分野、(f)眼鏡の分野など、多様な技術分野において、上記のような意味で用いられていることも事実である。以下において、下線は当審で付した。

(a)特許第3810189号公報(平成18年8月16日発行)、【発明の名称】ストロボ着脱識別装置
「【0001】【発明の属する技術分野】
この発明は、カメラのホットシューに装着可能なストロボの着脱をカメラ側で認識し得るストロボ着脱識別装置に関する。
【0002】【従来の技術】
この種のホットシューのほぼ中央には、クリップオンタイプのストロボを装着した際にノンコードでストロボのトリガ回路とカメラ側シャッタのX接点とを電気的に接続するための接続用接点が設けられており、これらのホットシューの形状や接続用接点の位置等はJISにより詳細に規定されている。
【0003】このように、ストロボとの接続用接点のみを備えたホットシューを有するカメラにクリップオンタイプのストロボを装着してストロボ撮影を行う場合、カメラが例えばフォーカルプレンシャッタを有する中判の一眼レフカメラのように、・・・。」

(b)特許第2934730号公報(平成11年(1999)8月16日発行)、【発明の名称】自動二輪車等のハンドル取付け構造
「〔産業上の利用分野〕
本発明は倒立型フロントフォークを採用した自動二輪車等のハンドルの取付け構造に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、自動二輪車等のフロントフォークとして、外筒に下方から内筒を挿入した倒立型フロントフォークがある。そして、この種のフロントフォークに取付けられるハンドルとしては、外筒上部にハンドルのボス部を嵌合させる所謂クリップオンタイプのハンドルがあった。このハンドルは、ボス部嵌合孔の孔径が締付けボルトによって調節できるように構成されており、ボス部で外筒を緊縛することにより外筒に固定されていた。・・・。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄12行)

(c)特許第5103960号公報(平成24年12月19日発行)、【発明の名称】回転速度検出装置付き軸受装置
「【0004】・・・この構成においてパルス検知センサは、外輪部材の端部外周面に嵌合されるセンサホルダにクリップオン式に挿し込み固定される。センサホルダは、車体インナー側にて外輪部材の端部外周面に嵌合するリング状の取付部と、パルス検知センサの装着方向先端部を挿し入れる枠形ポケット状のセンサ収容部とからなる。センサ収容部にはクリップ形態のセンサ付勢保持部が設けられ、センサ付勢保持部の弾性力によりパルス検知センサのヘッドをクリップオン式に装着できるようにしている。」

(d)特許第4966996号公報(平成24年7月4日発行)、【発明の名称】レール支持装置およびシートの延伸方法
「【0145】このシート取り込みの入口において、左右の無端ループ210R、210Lのクリップ220によってシート32の両側縁が把持(クリップ・オン)され、左右の無端ループ210R、210Lの移動、つまり、基準レール300に案内された各クリップ担持部材230の移動により、シート32は、まず、予熱ゾーンA1に進入する。」

(e)特許第4230687号公報(平成21年2月25日発行)、【発明の名称】計量区画を有する秤
「【0020】【好ましい実施例の詳細な説明】
・・・被計量荷重受け部2は、接続ボルト22に掛かる鉤状部分10を有するので、被計量荷重受け部2を接続ボルト22から簡単に取り外すことができる。被計量荷重受け部2は、たとえばボウルや実験室用容器や試料を計量するための他の容器などいろいろな用途に用いる多様なクリップオン式装置用プラットフォームとして、あるいは計量される試料を載せるプラットフォームの役目をする。図1の実施例において、被計量荷重受け部2は、平坦な格子16の形状に構成される。・・・。」

(f)第2983213号公報(平成11年11月29日発行)、【発明の名称】メガネ付加レンズの製造方法
「【0002】【従来の技術】眼鏡の常用者が紫外線の強い地域で活動したり、レジャーを楽しんだり、あるいはOA機器のディスプレーを前にして長時間の作業を行うときなどは、視力を矯正するレンズを装着した既着メガネの上に、さらに調光レンズのメガネを重ね掛けしたり、既着メガネのフロント枠にクリップ付の調光レンズ枠を引っ掛ける形式のクリップ・オン前枠を取り付けるといった方法が採られている。」

イ 「クリック結合機構」について
次に、「クリック結合機構」との用語について、上記「クリップオン機構」との関連で、検討する。
(ア)用語の意味
まず、「クリック」の原文に当たる「click」について、「学術用語集 機械工学編(増訂版)(社)日本機械学会、2004年2月10日発行」の428頁には、「クリック止め」と記載されている。

(イ)本件明細書等の記載
他方、本件明細書等には、「クリック結合機構」に関し、上記「ア(イ)」の記載があり、図3によれば、輸送スクリュー5のブッシング8内にクリック結合機構10が設けられていること、ピン9とクリック結合機構10とによりブッシング8とモータ7の駆動軸とが結合されていることが見て取れる。

(ウ)検討
本件明細書等の上記記載によれば、
ブッシング8は、モータ7と輸送スクリュー5との結合を担うものであるところ、
(i)まず、ブッシング8上に設けられた輸送スクリュー7は、ブッシング8に対し、例えば溶接により恒久的に結合されるものであること、
(ii)これに対し、ブッシング8は、モータ駆動軸に対し、ピン9とスプリング及びボールからなるクリック結合機構10により、ボールがモータ駆動軸に設けられた凹部内に押し込められることによって結合されていることから、ブッシング8と、これに恒久的に結合された輸送スクリュー5は、モータ駆動軸から容易に取り外したり、交換することが可能であること、
が把握できる。
すなわち、輸送ブッシング8とモータ駆動軸との結合を維持すること、すなわち、両者をクリップオンするための具体的な機構は種々あるところ、本件発明1に対応する実施例では、ピン9と、スプリング及びボールによって与えられるクリック結合機構10とが開示されているものである。
以上のことから、「クリック結合」とは、部品に設けられたばねの押圧力によってボールが該部品を他の部品にかたく結びつける様を意味すると解され、その意味するところは明確である。
しかも、「クリック結合」という用語は、以下(a)ないし(c)に示す様に、多様な技術分野において上記のような意味で用いられていることも事実である。以下において、下線は当審で付した。

(a)特許第3676498号公報、平成17年7月27日発行、【発明の名称】ホースコネクター
「【0016】
太い外径の周壁面15の中央部には、ストッパーリング20の軸方向の移動を規制するためのストッパー16が突き出して設けてある。又、ストッパーリング20をクリック係合するための4個の周面凸部17を一定の間隔を置いて設けてある。
【0017】
レリースリング30の内面には、ロックボール40を内部に押え込むためのロツクボール押え35と、ソケツト本体10の溝13に摺動自在に嵌合する逆反り爪37と、ストッパーリング20側の端面にストッパーリング20の窪み部24と対応する2個の突出部31を180度ずらして設けている。
【0018】
ストッパーリング20には、前記レリースリング30側の端面に180度ずらして2個の窪み部24を設けると共に、周面凸部17とクリック結合させるための凸部22を内面に設けてある。・・・。」

(b)特許第3368979号公報、平成15年1月20日発行、【発明の名称】レンズ付きフイルムユニット
「【0019】これらの第1及び第2クリックボール22,23は、レンズホルダー15cの側面に形成された半球状の凹部26とクリック結合することで、第2レンズ6bを望遠位置と広角位置とに正確に位置決めする。第2レンズ6bが第1レンズ6aの近傍(望遠位置)に位置して第1レンズ6aと第2レンズ6bとによる撮影レンズ6の焦点距離は望遠側となったときには、第1クリックボール22と凹部26がクリック結合される。また、第2レンズ6bが第1レンズ6aから後方に離れ広角位置にあり、第1レンズ6aと第2レンズ6bとによる撮影レンズ6の焦点距離が広角側となったときには、第2クリックボール23と凹部26がクリック結合される。レンズホルダーユニット15は、これら広角位置と望遠位置との間をラック16と噛合した後述する第1ギア27によってスライド移動される。なお、上記クリック結合によって、一旦広角位置あるいは望遠位置にレンズホルダ15cがセットされたときには、振動やフレーミング中に誤って操作ダイアル7に触れたりしても、容易に第2レンズ6bが移動されて撮影レンズ6の焦点距離が変わらないようになるとともに、後述するファインダ視野枠ユニット32もこれに連動して移動しないようになっている。」

(c)特開平1-14885号公報、平成1年1月19日発行、【発明の名称】ピンコネクタ
「[発明の概要]
この発明による改良されたビンコネクタにおいては、第1の端子(すなわち、非可動端子)の先端面がV字形乃至V字形に近い断面形状の凹面として形成されており、第2の端子(可動端子)が第1の端子に接触する時には該第2の端子の最先端部が該凹面に接触せずに該第2の端子の非最先端部の少くとも2ケ所が該凹面に接触するように構成されていることを特徴とするものである。本発明による改良されたビンコネクタでは、第2端子(ビン端子)の摺接面と電気的接触面とが異っているため、該電気的接触面や第1端子表面にごみ等が滞積することがなく、従って、使用が重っても電気的接続不良が発生する恐れがない。また、本発明による改良されたピンコネクタでは、第1端子と第2端子との機械的係合がいわゆるクリック係合(もしくは、とび込みピン係合)であるため、第1端子と第2端子とが係合した後には該係合が極めて小さな外力により不本意に解除されてしまう恐れがない。」

ウ 以上、ア、イで述べたことを総合すると、本件発明1における「前記輸送スクリューは、前記輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、クリップオン機構によって、前記モータと結合されており、前記クリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられていること」が意味するところは、
(a)輸送スクリューを容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するために、輸送スクリューが、クリップオン機構によってモータと結合されていること、
(b)このクリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられる機構であること、
が一義的に明確である。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1は明確であり、請求項1を引用する請求項2ないし14に係る本件発明2ないし14も、同様に明確である。
よって、本件特許1ないし14は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(2)無効理由1-2
ア 本件発明13
本件発明13は、「前記コントローラが、生成物の一部の重量の情報を受けるよう接続されており、それに基づいて、速度及び/又は運転時間を調整するよう構成されている、請求項12記載の計量装置。」であるところ、請求項12に係る本件発明12は、「前記モータが、コントローラによって、速度及び運転時間が制御されている、請求項1?11のいずれか1つに記載の計量装置。」というものである。
そこで、請求項1を引用する請求項12を更に引用する本件発明13について検討するに、本件発明13に係る記載を他の請求項を引用しない記載のものとすると、以下のとおりである。

「粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物を計量する、計量装置であって、
計量される生成物のための送り込み部と、
前記送り込み部から計量システムへ生成物の一部を制御して搬送するための、少なくとも1つの投与機構と、を備えており、
前記投与機構が、モータ駆動の輸送スクリューと、制御ユニットと、を備えており、
前記輸送スクリューが、生成物を送り込み部から計量システムへ搬送するための、オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成されており、
前記制御ユニットが、所望量の生成物を計量システムへ搬送するために、モータを制御するようになっており、
前記送り込み部は、円錐形の中央底部を備えており、
前記輸送スクリューは、前記輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、クリップオン機構によって、前記モータと結合されており、
前記クリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられており、
前記モータが、コントローラによって、速度及び運転時間が制御されており、
前記コントローラが、生成物の一部の重量の情報を受けるよう接続されており、それに基づいて、速度及び/又は運転時間を調整するよう構成されていることを特徴とする計量装置。」

ここで、請求項13に記載の「コントローラ」はモータを制御する機能を果たすものであるから、請求項1に記載の「制御ユニット」と実質的に同じ内容のものであり(請求項1における「制御ユニット」も、モータを制御するものである。)、請求項1に記載の「制御ユニット」を言い換えたものと解するのが自然である。

イ 本件明細書等の記載
本件発明13に対応する本件明細書等の記載は、以下のとおりである。
「【0013】 図示の装置は、以下のとおり作動する。計量される生成物は、前記送り込み部1における生成物をほぼ一定量に保つために、制御された方法で、送り込み部1に搬送される。生成物は、送り込み部の円錐形の中央底部2によって、個々の投与機構3に分配される。生成物を個々のトラフ4の中に導くために、投与機構3の個々のトラフ4の間に、適切な傾斜面を設けることができる。投与機構3は、計量装置の全体制御による信号によって、既定量の生成物を、関連している計量システムに搬送する。制御された明確な分量が、制御された時間の間、モータ7の制御された速度によって搬送される。投与を最適化するために、搬送分量のその後の計量が、個々の投与機構3の各々からの生成物の投与を調整するために、時間及び/又はモータ速度を調整するのに、使用される。」

ウ 検討
上記本件明細書等の記載によれば、投与機構3により既定量の生成物を計量システムへ最適に搬送することに関し、以下の技術事項が開示されているものと認められる。
(ア)投与機構3は、計量装置全体を制御する制御信号によって、既定量の生成物を計量システムに搬送するものであること、
(イ)制御期間に、制御されたモータの回転速度によって、制御された生成物の的確な分量が計量システムに搬送、投与されること、
(ウ)計量システムへの投与を最適化するべく、各投与機構3からの生成物の投与量を調整するために、搬送した生成物の分量について、その後計量システムで計量した計量値が、上記制御期間やモータの回転速度を調整するのに用いられること。
そして、制御期間やモータの回転速度を調整するべく、搬送した生成物の分量についての計量値を用いるようにするためには、計量装置全体を制御する制御ユニット(または、コントローラ)が該計量値に係る信号を受け取るようにする必要があることは明らかである。
してみると、本件明細書等には、本件発明13の裏付けを成す具体的な技術手段が十分に記載されているといえる。

エ まとめ
以上のとおり、本件明細書等の発明の詳細な説明は、本件発明13を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえるから、本件特許13は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

2 無効理由2について
(1)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証発明
無効理由2に係る主引用例は、甲第2号証である刊行物、特開2003-130719号公報であるところ、かかる刊行物は、本件明細書等の段落【0002】において、従来技術として挙げた欧州特許第1439379号明細書のいわゆるパテントファミリーに当たる。

ア 記載事項
甲第2号証には、次の事項(a)ないし(f)が図面とともに記載されている。
(a)「【請求項1】 目標重量から所定誤差内にある粉粒体を計量するための粉粒体計量装置であって、それぞれ粉粒体を計量する複数の秤ユニットを有し、該複数の秤ユニットは、各秤ユニットの計量値の所定数の任意の組合せの合計値のうち、目標重量から所定誤差内にある合計値が得られる組合せを構成する前記秤ユニットから被計量物を排出する組合せ秤を構成している粉粒体計量装置。
【請求項2】 前記秤ユニットのそれぞれには、粉粒体を前記秤ユニットに供給するための粉粒体供給手段が設けられている請求項1記載の粉粒体計量装置。」

(b)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る粉粒体計量装置の断面模式図である。同図では、粉粒体計量装置を構成する一つの秤ユニット10の断面のみが示されているが、本実施形態の粉粒体計量装置は、中心線Cを中心としてその周りに複数の秤ユニット10が設けられた構成を有している。後述する図2?図11の実施形態に於いても同様である。」

(c)「【0013】本実施形態に於ける秤ユニット10では、粉粒体供給手段としてカットゲート11が設けられており、カットゲート11は上部から供給される粉粒体を各秤ユニット10に導くための粉粒体ホッパ12の下部に取り付けられている。カットゲート11を開閉中心11aに関して回転させることにより、粉粒体が供給ホッパ13に供給される。供給ホッパ13はカットゲート11から供給される粉粒体を一時的に保持する機能を果たし、カットゲート11は秤ユニット10の個別目標重量を目標として粉粒体を供給ホッパ13に供給する。カットゲート11から供給ホッパ13に供給された粉粒体は、その下部に位置するゲート式の計量ホッパ14に供給される。計量ホッパ14にはロードセル15が取り付けられており、このロードセル15は、計量ホッパ14内の粉粒体の重量を計測し、その計量値は図示しない制御部に送られる。計量ホッパ14の下部には、各計量ホッパ14から排出される粉粒体を一つにして包装機等に供給する集合シュート16が設けられている。更に、本実施形態では、カットゲート11、供給ホッパ13、計量ホッパ14及び集合シュート16の各構成要素の間に防塵蛇腹18が設けられている。」

(d)「【0015】本実施形態の粉粒体計量装置では、秤ユニット10の個別目標重量を目標として、粉粒体がカットゲート11から供給ホッパ13に供給され、その際、従来の粉粒体計量装置に於けるように、大投入及び小投入のような制御は行われず、ほぼ一定の流速で粉粒体が供給ホッパ13に供給される。従って、粉粒体の計量ホッパ14への供給速度は大きく、粉粒体計量装置全体の計量速度を大きくすることができる。加えて、複数の秤ユニット10に同時に粉粒体が供給されるので、また、目標重量の数分の1の個別目標重量を目標として粉粒体を供給すれば足りるので、粉粒体の供給時間を短縮することが可能となる。従って、粉粒体計量装置全体の計量速度を更に大きくすることが可能となる。更に、本実施形態の粉粒体計量装置では、例えば、本実施形態の粉粒体計量装置が20個の秤ユニット10によって構成されている場合、最初に例えば4個の秤ユニット10により所定誤差の目標重量が達成された後に、残りの16個の秤ユニット10の中にその合計重量が目標重量から所定誤差内にある秤ユニット10の組合せが更に存在すれば、先に粉粒体を排出した秤ユニット10の計量ホッパ14に粉粒体を供給している間に、更なる組合せを構成する秤ユニット10から粉粒体を排出することができ、粉粒体計量装置全体の計量速度を大きくすることができる。」

(e)「【0023】図4は本発明の第4の実施形態に係る粉粒体計量装置の断面模式図である。本実施形態の粉粒体計量装置に於ける秤ユニット40は、上述の図1の秤ユニット10に於けるカットゲート11に代えてスクリューフィーダ41を粉粒体供給手段として使用した点を除いて、秤ユニット10と同じであり、対応する同じ構成要素には同じ符号が付されている。」

(f)「【0024】本実施形態の粉粒体計量装置に於いても、秤ユニット40の個別目標重量を目標として、粉粒体がスクリューフィーダ41から供給ホッパ13に供給され、その際、大投入及び小投入のような制御は行われず、ほぼ一定の流速で粉粒体が供給ホッパ13に供給される。また、複数の秤ユニット40に同時に粉粒体が供給され、しかも目標重量の数分の1の個別目標重量を目標として粉粒体を供給すれば足りるので、粉粒体の供給時間を短縮することが可能となる。更に、本実施形態の粉粒体計量装置に於いても、図1の粉粒体計量装置と同様に、その合計重量が目標重量から所定誤差内にある秤ユニット40の組合せが複数存在する場合、次の計量ホッパ14への粉粒体の供給とは独立して、更なる組合せを構成する秤ユニット40から粉粒体を排出する構成とすることもできる。」

イ 技術事項
(ア)前記記載(a)より、「粉粒体計量装置。」との技術事項が読み取れる。

(イ)前記記載(b)、(c)、(e)、図1、図4より、「粉粒体を送り込む、円錐形の中央底部を備えた粉粒体ホッパ12。」との技術事項が読み取れる。

(ウ)輸送スクリューはモータで駆動されることは技術常識であるから、前記記載(c)ないし(e)、図4の記載から、「粉粒体ホッパ12から計量ホッパ14側へ粉粒体を搬送する複数のスクリューフィーダ41。」、及び「スクリューフィーダ41は、モータ駆動の輸送スクリューを備える。」との技術事項が読み取れる。

(エ)図4に示されたスクリューフィーダ41の様子から、「スクリューフィーダ41を構成する輸送スクリューは、何らかの筒状部材の中に位置している。」との技術事項が見てとれる。

(オ)モータの駆動が何らかの制御手段により制御されることは技術常識であるから、前記記載(c)、(d)、(f)より、「スクリューフィーダ41がほぼ一定の流速で粉粒体を計量ホッパ14へ搬送するように、モータの駆動が制御手段により制御される。」との技術事項が読み取れる。

ウ 甲第2号証発明
以上の技術事項を総合勘案すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。

「粉粒体を計量する、粉粒体計量装置であって、
計量される粉粒体を送り込むための粉粒体ホッパ12と、
前記粉粒体ホッパ12から計量ホッパ14へ粉粒体を制御して搬送する複数のスクリューフィーダ41と、を備えており、
前記スクリューフィーダ41が、モータ駆動の輸送スクリューと、モータを制御する制御手段と、を備えており、
前記輸送スクリューが、被計量物を計量ホッパ14へ搬送するための、筒状部材の中に位置しており、
前記制御手段が、ほぼ一定の流速で粉粒体を計量ホッパ14側へ搬送するように、モータの駆動を制御するようになっており、
前記粉流体ホッパ12は、円錐形の中央底部を備えている、
粉流体計量装置。」(以下、「甲第2号証発明」という。)

(2)甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項

ア 甲第3号証
甲第3号証である特開平10-332467号公報には、粘着性のある被計量物を対象とした組合せ計量装置であって、樋状の案内体3にスクリュー4が設けられた供給装置を備える、という技術事項が記載されている(段落【0005】?【0007】、【図16】、【図17】参照)。

イ 甲第4号証
甲第4号証である特開平5-79889号公報には、組合せ計量装置において、佃煮昆布等のような粘着性の高い物を螺旋体11,13,68で供給して計量する、という技術事項(段落【0001】、【0014】、【0015】、【図1】、【図3】参照)、及び、供給装置3を容易に分解できるように、操作レバー60,振動アーム63などを備えたクランプ機構35により、第1円筒体10を支持台28から引き出せるようにした、という技術事項(段落【0032】?【0035】、【図3】参照)が記載されている。

ウ 甲第5号証
甲第5号証である特開平5-43034号公報には、計量機に、上部が開放されたすり鉢状のガイド路146内に搬送スクリュー14が設けられた搬送供給手段を備える、という技術事項が記載されている(段落【0002】、【0003】、【図2】、【図4】参照)。

エ 甲第6号証
甲第6号証である特開2001-242004号公報には、組合せ計量装置において、納豆のような粘着性及び流動性のある物品を送り出すスクリュー形状の送出部材51を筒状部材41から引き抜いて容易に清掃するために、連結ロッド53と送出部材51との連結部の折り曲げや、連結ロッドの切り離しができるようにした、という技術事項が記載されている(段落【0017】、【0033】、【図5】参照)。

オ 甲第7号証
甲第7号証である特開平10-38667号公報には、計量装置において、計量ホッパの洗浄や保守点検を楽に行えるようにするため、位置保持用ボール37とスプリング38を含む構造により、計量ホッパ7を回転軸19に支持する、という技術事項が記載されている(段落【0001】、【0028】?【0030】、【図4】、【図7】参照)。

カ 甲第8号証
甲第8号証である特開平6-219532号公報には、セラミックス、金属あるいは金属化合物等の粒子又はウイスカーなどの分散強化材を供給する装置において、スクリューフィーダの推進素子がヘリックスコイル1である、という技術事項(【請求項1】、段落【0001】、【図1】、【図3】参照)、及びスクリューフィーダの推進素子であるヘリックスコイル1の内部に同心状にコアが設けられている、という技術事項(【請求項2】、段落【0017】参照)が記載されている。

キ 甲第11号証
甲第11号証である特開昭62-113024号公報には、空の計量ホッパへのフィーダの供給量を制御して、常に組合せホッパ当りの平均重量を目標重量に近づくように制御する、という技術事項が記載されている(2頁左上欄16行?右上欄13行、5頁右上欄12?16行参照)。

(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲第2号証発明とを、主たる構成要件毎に、順に対比する。
(ア)甲第2号証発明の「粉粒体」も、本件発明1の「粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物」も、共に、「被計量物」である点で共通する。

(イ)甲第2号証発明の「粉粒体計量装置」は、本件発明1の「計量装置」に相当し、甲第2号証発明の「粉粒体ホッパ12」は、本件発明1の「送り込み部」に相当し、以下、同様に、「スクリューフィーダ41」は、「投与機構」に、「制御手段」は、「制御ユニット」に、「計量ホッパ14」は、「計量システム」にそれぞれ相当する。

(ウ)甲第2号証発明の「筒状部材」も、本件発明1の「オープントラフ」も、共に、「細長い部材」である点で共通する。

(エ)上記相当関係を踏まえると、甲第2号証発明における「前記制御手段が、ほぼ一定の流速で粉粒体を計量ホッパ14へ搬送するように、モータの駆動を制御するようになって」いることも、本件発明1における「前記制御ユニットが、所望量の生成物を計量システムへ搬送するために、モータを制御するようになって」いることも、共に、「前記制御ユニットが、所望量の被計量物を計量システムへ搬送するために、モータを制御するようになって」いる点で共通するといえる。

イ 一致点・相違点
以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「被計量物を計量する、計量装置であって、
計量される被計量物のための送り込み部と、
前記送り込み部から計量システムへ被計量物の一部を制御して搬送するための、少なくとも1つの投与機構と、を備えており、
前記投与機構が、モータ駆動の輸送スクリューと、制御ユニットと、を備えており、
前記輸送スクリューが、被計量物を送り込み部から計量システムへ搬送するための、細長い部材の中に位置しており、
前記制御ユニットが、所望量の被計量物を計量システムへ搬送するために、モータを制御するようになっており、
前記送り込み部は、円錐形の中央底部を備えている、
計量装置」

(相違点)
・相違点1 被計量物に関し、
本件発明1では、被計量物が「粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物」であるのに対し、甲第2号証発明では、粉粒体である点。

・相違点2 投与機構に関し、
本件発明1では、輸送スクリューが、「オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成されて」いるのに対し、甲第2号証発明では、筒状部材の中に位置しており、しかも、螺旋形状のロッドとしては形成されていない点。

・相違点3 輸送スクリューに関し、
本件発明1では、輸送スクリューは、「前記輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、クリップオン機構によって、前記モータと結合されており、前記クリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられている」のに対し、甲第2号証発明では、輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、又は交換することについて、不明である点。

ウ 判断
前記相違点1ないし3について、以下、検討する。
事案に鑑み、相違点1と相違点2とを、併せて検討する。

(ア)相違点1、2について
a 主引用例である甲第2号証発明は、粉粒体を計量対象とした粉粒体計量装置であり、その段落【0006】に、「組合せ秤を、実質的に連続的な計量値を有する粉粒体に初めて応用したものである」と記載されていることからも明らかなように、まず、甲第2号証発明は、本件発明が計量対象とするような、粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物の計量に用いることは想定していない。
なるほど、佃煮昆布のような粘着性を有するものを計量対象として、搬送し、計量することは、この種の計量装置において周知である(甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証参照)けれども、粉粒体と粘着性のある生成物や曲がりやすい生成物とでは、その物理的性質が全く異なるものであるから、粉粒体を計量対象とする甲第2号証発明を、ただちに、粘着性のある生成物や曲がりやすい生成物の計量に用いるようにすることはできない。

b 次に、甲第2号証発明に係るスクリューフィーダ41は、粉粒体を搬送するものであるところ、粉粒体は、搬送中に飛散するおそれがあるものであるから、甲第2号証発明に係るスクリューフィーダ41を、本件発明1の如く、上方が開放したオープントラフのものに置き換えることには、阻害要因があるといえる。よって、たとえオープントラフのものが周知である(甲第3号証(前記(2)ア)、甲第5号証(前記(2)ウ)参照)としても、甲第2号証発明のスクリューフィーダ41をオープントラフのものに置き換えることは、当業者といえども容易であるということはできない。

c 次に、輸送スクリューの構造について検討するに、甲第2号証には、スクリューフィーダ41を構成する輸送スクリューの構造についての具体的記載は一切ないところ、その図4に示されたスクリューの様子から見て、甲第2号証発明に係る輸送スクリューは、いわゆる通常のアルキメディアンスクリュー形状を呈するものと解するのが自然である。なお、甲第2号証が本件明細書等で従来技術として挙げた欧州特許第1439379号明細書と、いわゆるパテントファミリーの関係にあることは、前述(1)したとおりである。
なるほど、螺旋形状のロッドとして形成した輸送スクリュー自体は、この種の計量装置などにおいて周知である(甲第4号証((2)イ)、甲第8号証((2)カ)参照。)けれども、甲第2号証発明は、粉粒体を搬送、計量対象としており、螺旋形状のロッドとして形成された輸送スクリューでは、粉粒体はほとんどこぼれてしまい、搬送することができないのであるから、甲第2号証発明の輸送スクリューとして、螺旋形状のロッドとして形成したものを採用することにも阻害要因があるというべきである。

d そして、本件発明1は、相違点1,2に係る、計量対象を「粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物」とし、輸送スクリューを、「オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成されて」いるものとしたことで、本件明細書等に記載の、粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物に大きな機械的影響又は圧力を与えることなく緩やかに搬送できる、との作用効果(前記「第4 2(2)」)を奏するものである。

(イ)相違点3について
a まず、甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証には、本件発明1に係る「輸送スクリューは、前記輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、クリップオン機構によって、前記モータと結合されており、前記クリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられている」との構成については、記載も示唆もない。

b なるほど、計量装置において、清掃を容易にするために、搬送機械の分解が容易である必要があることは周知の要請である(甲第4号証((2)イ)、甲第6号証((2)エ)参照。)としても、まず、甲第4号証は、螺旋体を囲む円筒体を引き出すようにしたものであり、螺旋体自体がクリップオン機構によってモータと結合されているものではなく、しかも、円筒体と支持台との結合はクランプ機能によるものであって、いわゆるクリック結合とも異なるものである。また、甲第6号証は、連結ロッド53と送出部材51との連結部の折り曲げや、連結ロッドの切り離しができるようにしたとの技術事項を開示するにとどまる。
また、計量装置において、洗浄や保守点検を容易にするために、スプリングとボールからなる結合機構を用いることが周知である(甲第7号証((2)オ)参照。)としても、甲第7号証は、計量ホッパを回転軸に支持するための結合機構に関するものであり、本件発明1とは、組み立て、分解、清掃、又は交換対象が異なる。
しかも、そもそも、無効理由2における主引用例である甲第2号証には、輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、又は交換することについて、記載も、示唆もない。
したがって、甲第2号証発明に、甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載の技術を適用することはできない。

c そして、本件発明1は、輸送スクリューを、スプリング及びボールによって与えられているクリップオン機構によって、モータと結合するようにしたことで、計量装置における輸送スクリューの組み立て、分解、清掃、又は交換が容易に行うことができるとの作用効果を奏するものと認められる。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲第2号証発明、並びに甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。

(4)本件発明3について
本件発明3は、「前記輸送スクリューの内部に位置するコアを更に備え、前記コアが、前記輸送スクリューの内径より小さい又は同じである、直径を、有している、請求項1又は2に記載の計量装置。」とあるように、本件発明1において、輸送スクリュー内部にその内径と同径のコアを備える、というものである。

ア 対比・判断
甲第2号証発明における輸送スクリューは、上述したように、アルキメディアンスクリューのことと認められるところ、その内部にはコアを有するものと解されるから、本件発明3と甲第2号証発明とを対比すると、両者は、輸送スクリューがコアを備える点で一致すると解する余地がある。
しかしながら、そうだとしても、前記相違点1ないし3で両者が相違することに変わりはないから、前記「(3)ウ」で検討したとおり、甲第2号証発明、並びに甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。

イ まとめ
以上のとおり、本件発明3も、甲第2号証発明、並びに甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。

(5)本件発明2、本件発明4ないし14について
本件発明2、本件発明4ないし14は、本件発明1を限定した発明である。
したがって、本件発明1についてした判断と同様、本件発明2、本件発明4ないし14も、甲第2号証発明、並びに甲第3号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。

3 無効理由3について
(1)甲第3号証の記載事項及び甲第3号証発明
無効理由3に係る主引用例は、甲第3号証である特開平10-332467号公報である。

ア 記載事項
甲第3号証には、次の事項(a)ないし(k)が図面とともに記載されている。
(a)「【特許請求の範囲】【請求項1】被計量物タンク内に収容されている被計量物を該被計量物タンクの底部に設けた複数の排出口から排出し、該排出口から排出された被計量物を個別供給器を介して複数の計量部に供給し、該複数の計量部で計量した被計量物をその計量結果に基づいて組合せ排出する組合せ計量装置において、
前記被計量物タンク内に収容された被計量物を前記各排出口に案内する傾斜面を各排出口毎に設けるとともに、前記被計量物タンク内の前記各排出口の上方位置で昇降自在に設けられた昇降支持体と、
前記排出口に対応した外形を有するゲート部が下端に設けられ該ゲート部が対応する排出口の傾斜面の傾斜方向に沿って移動できるように上部側が前記昇降支持体に回動自在に支持され、前記昇降支持体が下降するとき前記ゲート部を前記傾斜面に摺接させながら対応する排出口側へ下降させて該排出口への被計量物の流れ経路を狭め、前記昇降支持体が上昇するとき前記ゲート部を前記傾斜面に摺接させながら対応する排出口から遠ざかるように上昇させて該排出口への被計量物の流れ経路を広げるように形成された規制体と、
前記各昇降支持体を昇降駆動して、前記被計量物タンクの各排出口から前記各個別供給器に被計量物を供給する駆動装置とを設けたことを特徴とする組合せ計量装置。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の計量部で計量した被計量物を組合せ排出する組合せ計量装置において、各計量部に絡みやすい粘着性のある被計量物を適量ずつ自動供給するための技術に関する。」

(c)「【0003】このような計量部への被計量物の自動供給を行なうために、従来では、円形傘状の振動式の分散フィーダの上に被計量物を供給し、分散フィーダで分散された被計量物をその外周に放射状に配置された複数の振動式の直進フィーダに搬出し、各直進フィーダからプールホッパにそれぞれ被計量物を適量ずつ搬出して、空になった計量ホッパへプールホッパから被計量物を供給していた。」

(d)「【0004】ところが、このような振動型の分散フィーダを用いた組合せ計量装置では、被計量物が漬物や調理済みの肉等のように粘着性が強い場合や絡みやすい場合に、各直進フィーダへ均等に円滑に供給することができないという問題があった。」

(e)「【0005】これを解決するために、図16および図17に示すような組合せ計量装置も提案されている。
【0006】この組合せ計量装置では、上下が開口したタンク1に被計量物を供給しておき、その下方にスクリュー式(あるいは振動式でもよい)の供給装置2を複数列配置して、各供給装置2からプールホッパ6に供給した被計量物を、それぞれ計量ホッパ7へ供給して計量し、その計量結果に基づいて組合せを選定し、選定した被計量物を計量ホッパから排出して集合装置8で集合排出する。
【0007】ここで、各供給装置2は、一端側がタンク1の下方に位置し他端側がプールホッパ6の上方まで延びた樋状の案内体3と、案内体3内で回転自在に支持されたスクリュー4と、案内体3の一端からスクリュー4を回転させて、タンク1内の被計量物を案内体3に沿って送り出すモータ5とによって構成されている。」

(f)「【0016】図2?4に示しているように、この組合せ計量装置20は、4本の脚21を有する基台22上に支持されている。
【0017】基台22の上には、略直方体状の主筐体23が支持されている。主筐体23の上面23aの四隅には支柱24が立設されており、この4本の支柱24によって、フレーム25が主筐体23の上方に支持されている。
【0018】フレーム25は、横長矩形の前板25a、前板25aの両端から後方へ屈曲された側板25b、25cとで上方からみて略コの字状に形成され、両側板25b、25cの下端の前後が、支柱24の上端に固定されている。」

(g)「【0020】フレーム25の内側には、2つの被計量物タンク30が横に並んで支持されている。被計量物タンク30は、図4?6に示しているように、正面からみて略横長矩形の前板30a、前板30aの両端から後方へ屈曲された逆台形状の側板30b、30c、側板30b、30cの後縁同士を連結するように傾斜した後板30dとによって外周部が形成されている。
【0021】被計量物タンク30の底部には、長方形状の開口された5つの排出口35が横一列に並んでおり、各排出口35の両側には排出口35側に傾斜した底板32が設けられている。各底板32は、その傾斜面32aで排出口35に被計量物を案内する。」

(h)「【0039】被計量物タンク30の各排出口35の下方には、直進フィーダ71が配置されている。各直進フィーダ71は、後述するプールホッパ73とともに、この実施形態の個別供給器を構成するものであり、主筐体23の上面に固定され第2駆動筐体68内の振動器(図示せず)によってトラフ72を前方側斜め上方へ振動させ、排出口35から排出される被計量物をトラフ72の前端側へ搬送する。」

(i)「【0041】各直進フィーダの先端側下方には、それぞれプールホッパ73が配置されている。プールホッパ73は、図12に示すように、合成樹脂で上下が開口された筒状体74と、後述する底板80とで構成されている。筒状体74の下部の前後縁部には鍔部74a、74bが設けられ、その一方の鍔部74aには、2つの係止穴75が設けられている。」

(j)「【0045】各プールホッパ73の下方には計量ホッパ83がそれぞれ配置されている。」

(k)「【0071】
【他の実施の形態】前記実施形態では、5つの排出口を底部に有する被計量物タンク30を2組用いていたが、これは本発明を限定するものではなく、例えば10個の排出口を有する一つの被計量物タンクを用いたり、4つの排出口を有する被計量物タンクを3組用いるようにしてもよい。
【0072】また、前記実施形態の被計量物タンク30は、複数の排出口が横一列に設けられていたが、円柱あるいは角柱状の被計量物タンクの底部に複数の排出口を放射状に設け、各排出口の傾斜面上方にそれぞれ規制体を支持するようにしてもよい。」

イ 技術事項
(ア)前記記載(a)、(b)、(d)より、「粘着性のある物を計量する組合せ計量装置。」との技術事項が読み取れる。

(イ)底部にある排出口に物を導くために傾斜面を利用することは技術常識であることを踏まえると、前記記載(f)、(g)、(k)、図3より、「計量される粘着性のある物を送り込むために、傾斜する中央底部を備える円柱状の被計量物タンク30を備えること。」との技術事項が読み取れる。

(ウ)振動式の直進フィーダ71を制御するために何らかの制御手段を備えることは技術常識である点を踏まえると、前記記載(c)、(h)ないし(j)、図3、図11より、「被計量物タンク30から計量ホッパ83へ粘着性のある物を搬送するために、複数の振動式の直進フィーダ71を備えること。」、及び「所望量の計量される粘着性のある物を搬送するために、振動式の直進フィーダ71を制御する何らかの制御手段を備えること。」との技術事項が読み取れる。

(エ)前記記載(e)、図17より、従来技術として、「被計量物が供給されたタンク1の下方にスクリュー式あるいは振動式の供給装置2を複数配置して、被計量物を計量ホッパ7に供給すること。」、及び「供給装置2は、樋状の案内体3と、スクリュー4と、スクリュー4を回転させるモータ5によって構成されること。」との技術事項が読み取れる。

ウ 甲第3号証発明
以上の技術事項(ア)ないし(ウ)を総合勘案すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。

「粘着性のある物を計量する、組合せ計量装置であって、
計量される粘着性のある物を送り込むための被計量物タンク30と、
被計量タンク30から計量ホッパ83へ計量される粘着性のある物を制御して搬送するための、複数の振動式の直進フィーダ71と、を備えており、
前記振動式の直進フィーダ71が、制御手段を備えており、
前記制御手段が、所望量の粘着性のある物を搬送するために、振動式の直進フィーダ71を制御するようになっており、
前記被計量物タンク30は、傾斜する中央底部を備えている、
組合せ計量装置。」(以下、「甲第3号証発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲第3号証発明とを、主たる構成要件毎に、順に対比する。
(ア)甲第3号証発明の「粘着性のある物」は、本件発明1の「粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物」に相当し、甲第3号証発明の「組合せ計量装置」は、本件発明1の「計量装置」に相当し、以下、同様に、「計量ホッパ83」は、「計量システム」に、「制御手段」は、「制御ユニット」に、それぞれ相当する。

(イ)甲第3号証発明の「振動式の直進フィーダ71」も、本件発明1のモータ駆動の輸送スクリューを備えた「投与機構」も、共に、「搬送手段」である点で共通する。

(ウ)甲第3号証発明の、傾斜する中央底部を備えている「被計量物タンク30」も、本件発明1の、円錐形の中央底部を備えた「送り込み部」も、共に、傾斜する中央底部を備えた「送り込み手段」である点で共通する。

(エ)上記相当関係などを踏まえると、甲第3号証発明の「前記制御手段が、所望量の粘着性のある物を搬送するために、振動式の直進フィーダ71を制御する」ことも、本件発明1の「前記制御ユニットが、所望量の生成物を計量システムへ搬送するために、モータを制御する」ことも、共に、「前記制御ユニットが、所望量の生成物を計量システムへ搬送するために、搬送手段を制御する」点で共通するといえる。

イ 一致点・相違点
以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物を計量する、計量装置であって、
計量される生成物のための送り込み手段と、
前記送り込み手段から計量システムへ生成物の一部を制御して搬送するための、少なくとも1つの搬送手段と、を備えており、
前記搬送手段が、制御ユニットを備えており、
前記制御ユニットが、所望量の生成物を計量システムへ搬送するために、搬送手段を制御するようになっており、
送り込み手段は、傾斜する中央底部を備えている、
計量装置。」

(相違点)
・相違点1 送り込み手段に関し、
本件発明1では、送り込み手段の中央底部が円錐形であるのに対し、甲第3号証発明では、傾斜する中央底部を備えているものの、その形状が円錐形であるかまでは明らかでない点。

・相違点2 搬送手段に関し、
本件発明1では、搬送手段が、「モータ駆動の輸送スクリュー」を備えるとともに」、「前記輸送スクリューが、生成物を送り込み部から計量システムへ搬送するための、オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成されて」いるのに対し、甲第3号証発明では、振動式の直進フィーダ71である点。

・相違点3 輸送スクリューに関し、
本件発明1では、輸送スクリューが、「輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、スプリング及びボールによって与えられているクリップオン機構によって、モータと結合されて」いるのに対し、甲第3号証発明では、搬送手段が振動式の直進フィーダ71であるため、輸送スクリューに関するこのような構成を備えてはいない点。

ウ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2、3について、検討する。

(ア)相違点2について
a 甲第3号証には、その従来技術として、「上下が開口したタンク1に被計量物を供給しておき、その下方にスクリュー式(あるいは振動式でもよい)の供給装置2を複数列配置して」((1)ア(e))との記載があるから、甲第3号証発明の搬送手段である「振動式の直進フィーダ71」を、「モータ駆動の輸送スクリュー」に置き換えることについては、容易想到といえる。
しかしながら、甲第3号証に従来技術として記載されているスクリュー4については、その形状についての記載はなく、図17の記載からは通常のアルキメディアンスクリューが見て取れるに過ぎない。
なるほど、螺旋形状のロッドとして形成した輸送スクリュー自体は、計量装置などにおいて周知である(甲第4号証、甲第8号証参照)けれども、甲第3号証発明に係る「振動式の直進フィーダ71」を「モータ駆動の輸送スクリュー」に置き換えた上で、さらに、その輸送スクリューの形状を、螺旋形状のロッドとして形成されているものとすることまでが容易想到ということはできない。

b そして、本件発明1は、相違点2に係る搬送手段「モータ駆動の輸送スクリュー」とし、輸送スクリューを、「オープントラフの中に位置し、螺旋形状のロッドとして形成されて」いるものとしたことで、本件明細書等に記載の、粘着性のある及び/又は曲がりやすい生成物に大きな機械的影響又は圧力を与えることなく緩やかに搬送できる、との作用効果(前記「第4 2(2)」)を奏するものである。

(イ)相違点3について
a 前記「2(3)ウ(イ)」で説示したと同様に、甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証には、本件発明1に係る「輸送スクリューは、前記輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、及び交換するための、クリップオン機構によって、前記モータと結合されており、前記クリップオン機構は、スプリング及びボールによって与えられている」構成については、記載も示唆もない。

b また、計量装置において、清掃を容易にするために搬送機械の分解が容易である必要があることは周知の要請である(前記「2(2)イ 甲第4号証」、「2(2)エ 甲第6号証」参照)としても、まず、甲第4号証は、螺旋体を囲む円筒体を引き出すようにしたものであり、螺旋体自体がクリップオン機構によってモータと結合されているものではなく、しかも、円筒体と支持台との結合はクランプ機能によるものであり、いわゆるクリック結合とも異なるものであるし、甲第6号証は、連結ロッド53と送出部材51との連結部の折り曲げや、連結ロッドの切り離しができるようにしたとの技術事項を開示するにとどまるものである。
また、計量装置において、洗浄や保守点検を容易にするために、スプリングとボールからなる結合機構を用いることが周知である(前記「2(2)オ甲第7号証」参照)としても、甲第7号証は、計量ホッパを回転軸に支持するための結合機構に関するものであり、本件発明1とは、組み立て、分解、清掃、又は交換対象が異なるものである。
しかも、無効理由3における主引用例である甲第3号証は、搬送手段として「振動式の直進フィーダ71」を用いているから、甲第3号証には、輸送スクリューをクリップオン機構によってモータと結合することの動機付けもないばかりか、輸送スクリューを、容易に、組み立て、分解、清掃、又は交換することの動機付けもないといわざるをえない。
したがって、甲第3号証発明に、甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載の技術を適用することはできない。

c そして、本件発明1は、輸送スクリューを、スプリング及びボールによって与えられているクリップオン機構によって、モータと結合するようにしたことで、計量装置における輸送スクリューの組み立て、分解、清掃、又は交換が容易に行うことができるとの作用効果を奏するものと認められる。

エ まとめ
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証発明、並びに甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。

(4)本件発明2ないし14について
本件発明2ないし14は、本件発明1を限定した発明である。
したがって、本件発明1についてした判断と同様、本件発明2ないし14も、甲第3号証発明、並びに甲第4号証ないし甲第8号証、及び甲第11号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。

4 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書、口頭審理陳述要領書(請求人)、及び上申書において、無効理由2,3に関し、概略、次のように主張している。
ア 輸送スクリューについて
甲第2号証及び甲第3号証に記載の輸送スクリューは、その中心軸の周りに螺旋形ブレードを備えており、この螺旋形のブレードが本件発明1における「螺旋形状のロッド」に相当するといえる。

イ 円錐形の中央底部について
甲第3号証における他の実施形態についての記載(段落【0071】、【0072】)から見て、傾斜している後板30dは、円筒の中央に位置する円錐状の底板となり、これは、本件発明1における「円錐形の中央底部」に相当するといえる。

(2)検討
上記請求人の主張について、以下、検討する。
ア 輸送スクリューについて
まず、甲第2号証について見ると、輸送スクリューについては、図4にスクリューに見えるものが図示されているに過ぎず、輸送スクリューの形状についての記載はなく、甲第3号証についても、図17にスクリュー4が図示されているにとどまり、その形状についての記載はない。よって、まず、甲第2号証、甲第3号証に記載の輸送スクリューがその中心軸の周りに螺旋形ブレードを備えているとの主張は、妥当でない。
仮に、甲第2号証や甲第3号証に示された輸送スクリューが螺旋形のブレードを備えるものだとしても、ブレードとは、前記広辞苑によれば、「刃、水車・蒸気タービンなどの羽根。」のことであり、前記マグローヒル 科学技術用語大辞典によれば、「ファン、タービン、プロペラなどのような広い平らな羽根。鋸のような刃物の刃の部分。」のこととされている。
他方、ロッドとは、前記広辞苑によれば、「棒。」のことであり、前記マグローヒル 科学技術用語大辞典によれば、「金属製または木製の細い丸棒。」のこととされている。
以上のように、螺旋形のブレードは、いわば螺旋形をした羽根のことであり、本件発明1における「螺旋形状のロッド」は、いわば螺旋形状に巻回された丸棒のことと認められるから、両者の形状は、大きく異なる。そして、この形状の違いにより、粘着性のある生成物、又は曲がりやすい生成物を搬送する際に奏する作用効果も、自ずと異なるものである。

イ 円錐形の中央底部について
請求人が主張の根拠とする甲第3号証の記載を再掲すれば、以下のとおりである。
「【0071】
【他の実施の形態】前記実施形態では、5つの排出口を底部に有する被計量物タンク30を2組用いていたが、これは本発明を限定するものではなく、例えば10個の排出口を有する一つの被計量物タンクを用いたり、4つの排出口を有する被計量物タンクを3組用いるようにしてもよい。
【0072】また、前記実施形態の被計量物タンク30は、複数の排出口が横一列に設けられていたが、円柱あるいは角柱状の被計量物タンクの底部に複数の排出口を放射状に設け、各排出口の傾斜面上方にそれぞれ規制体を支持するようにしてもよい。」
上記記載によれば、他の実施の形態として、被計量物タンク30は円筒状であること、底部に複数の排出口が放射状に設けられること、各排出口には傾斜面があることは読み取れる。
そして、甲第3号証における主たる実施の形態として、甲第3号証には、横一列に排出口を有し、傾斜した後板30d及び傾斜面32aを有する底板32を備えた被計量物タンク30が記載されている(段落【0020】、【0021】、図6)ものの、この被計量物タンク30を円筒状にしたところで、傾斜している後板30dが各排出口毎に何らかの傾斜面を形成することとなるといえるにとどまり、その傾斜面が、全体として円錐状となることまではいえない。
よって、請求人が主張する他の実施の形態によっても、傾斜している後板30dは、円筒の中央に位置する円錐状の底板となることなく、本件発明1における「円錐形の中央底部」に相当するということにはならない。

以上のとおりであり、請求人の主張は、いずれも採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許1ないし14は、いずれも、特許法第36条第6項第2号又は同法同条第4項第1号に違反する特許出願に対してされたものとも、同法第29条第2項の規定に違反してされたものともすることはできない。
したがって、本件特許1ないし14は、いずれも、特許法第123条第1項第4号又は同法同条同項第2号の規定により無効とすべきものとすることはできない。
また、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-05 
結審通知日 2013-08-07 
審決日 2013-08-26 
出願番号 特願2007-557332(P2007-557332)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (G01G)
P 1 113・ 536- Y (G01G)
P 1 113・ 121- Y (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 下中 義之
関根 洋之
登録日 2012-10-12 
登録番号 特許第5106125号(P5106125)
発明の名称 計量装置  
代理人 藤岡 宏樹  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  
代理人 小林 武  

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