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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知  D03D
審判 全部無効 2項進歩性  D03D
審判 全部無効 1項2号公然実施  D03D
管理番号 1280389
審判番号 無効2013-800047  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-25 
確定日 2013-10-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第4763758号発明「ループパイル保持体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第4763758号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成20年7月 8日 本件特許出願
平成23年6月17日 設定登録
平成25年3月25日 本件無効審判請求
同年6月14日付け 審判事件答弁書
同年7月 8日付け 審理事項通知書
同年7月19日付け 口頭審理陳述要領書(両者)
同年7月25日付け 審理事項通知書
同年8月 1日付け 口頭審理陳述要領書(2)(両者)
同年8月 2日 口頭審理

本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。また、「……」は記載の省略を意味し、原文の丸囲み数字は、丸1のように置き換えた。
証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように簡潔に表記した。
請求人の平成25年7月19日付け口頭審理陳述要領書を「請求人要領書(1)」といい、請求人の平成25年8月1日付け口頭審理陳述要領書(2)を「請求人要領書(2)」という。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された、以下のとおりのものである。なお、分説は請求人によるものであるが、争いがなく、妥当と認められるので、そのまま採用した。

「【請求項1】
A 基体とループパイルを備えてなり、前記ループパイルは、その基部が基体に結合された状態で基体上に配設されているループパイル保持体であって、
B 前記ループパイルを形成するループパイル形成糸は、略円柱形状をなし、フィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されており、
C 前記ループパイルは、(ループパイルの高さ)/(ループパイル形成糸の直径)の比が1/1乃至5/1であり且つ(ループパイルの両基部の中心同士の距離)/(ループパイル形成糸の直径)の比が3/1以下であって、
D ループパイルの両基部において多数のフィラメントにより基体上に支持され、基体の表面に対し自立性を有するものであることを特徴とするループパイル保持体。
【請求項2】
E 基体とループパイルを備えてなり、前記ループパイルは、その基部が基体に結合された状態で基体上に配設されているループパイル保持体であって、
F 前記ループパイルを形成するループパイル形成糸は、略円柱形状をなし、フィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されており、
G 前記ループパイルは、[(ループパイル形成糸の長さ)-(ループパイルの両基部の中心同士の距離)]/(ループパイル形成糸の直径)の比が1/1乃至10/1であり且つ(ループパイルの両基部の中心同士の距離)/(ループパイル形成糸の直径)の比が3/1以下であって、
H ループパイルの両基部において多数のフィラメントにより基体上に支持され、基体の表面に対し自立性を有するものであることを特徴とするループパイル保持体。
【請求項3】
I 上記ループパイル形成糸が、基体の表面とその裏側を交互に貫き、基体の表面側においてループパイルを形成し、裏面側において縫い目を形成している請求項1又は2記載のループパイル保持体。
【請求項4】
J 上記ループパイルの両基部におけるフィラメントが、ループパイル形成糸の軸心から外方に向かって、基体の表面に対し平行状に又は基体の表面に向かう傾斜状に伸びる請求項1乃至3の何れか1項に記載のループパイル保持体。
【請求項5】
K 上記ループパイル形成糸が、フィラメントを飾り糸とする2本又は3本以上のモール糸が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項1乃至4の何れか1項に記載のループパイル保持体。
【請求項6】
L 上記フィラメントが0.05乃至0.8デニールのフィラメントである請求項1乃至5の何れか1項に記載のループパイル保持体。
【請求項7】
M 上記フィラメントが非吸水性のフィラメントである請求項1乃至6の何れか1項に記載のループパイル保持体。
【請求項8】
N 上記非吸水性のフィラメントが、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントである請求項7記載のループパイル保持体。
【請求項9】
O 上記非吸水性のフィラメントの吸水率が、20℃相対湿度65%において5%以下である請求項7又は8記載のループパイル保持体。
【請求項10】
P 基体上に上記ループパイルが多数配設されてなる請求項1乃至9の何れか1項に記載のループパイル保持体。
【請求項11】
Q 基体上に多数配設されたループパイルの少なくとも一部のループパイル群において、ループパイル同士が、ループパイル形成糸により形成されるループ面に沿った方向である縦方向に密接すると共に、前記ループ面に直交する方向である横方向に密接するものである請求項10記載のループパイル保持体。
【請求項12】
R 上記基体が基布である請求項1乃至11の何れか1項に記載のループパイル保持体。」

第3 請求人の主張
請求人は、特許第4763758号の本件特許発明1ないし12についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲1ないし甲11を提出し、以下の無効理由を主張する。

[無効理由1]
本件特許発明1ないし5、10ないし12は、甲1及び甲3に示す商品「シェニール」により、本件特許の出願前に公然知られた又は公然実施された発明である(29条1項1号又は2号)。
[無効理由2]
本件特許発明6ないし9は、上記公然知られた又は公然実施された発明に、甲6、甲7を考慮して当業者が容易に発明をすることができたものである(29条2項)。
[無効理由3]
本件特許発明1ないし5、10ないし12は、上記公知又は公然実施された発明に、甲6、甲7を考慮して当業者が容易に発明をすることができたものである(29条2項)。

なお、請求人が上記無効理由3を主張することは、実質的に審判請求書の要旨を変更する補正に該当し、被請求人は上記補正に同意しないことから、口頭審理期日において、補正を許可しない決定をした。
よって、本件無効審判において審理対象となる無効理由は、上記無効理由1及び2である。

<証拠方法>
甲1 :平成25年2月15日付け上北登の陳述書
甲2の1:シンキョウ敷物の商品「シェニール」の価格表「VOL・157
-1」の写し
甲2の2:エル山本のシンキョウ敷物宛ての商品「シェニール」の納品書控
えの写し
甲2の3:エル山本のシンキョウ敷物宛ての商品「シェニール」の納品書控
えの写し
甲2の4:シンキョウ敷物の顧客に発送された商品「シェニール」の送り状
控え
甲2の5:シンキョウ敷物の顧客に発送された商品「シェニール」の送り状
控え
甲3 :平成25年2月20日付け角内宏光の陳述書
甲4の1:エル山本のシンコー九州宛ての商品「シェニール」の納品書控え
甲4の2:エル山本からシンコー九州に発送された商品「シェニール」の送
り状控え
甲5 :特開平5-125633号公報
甲6 :登録実用新案第3108152号公報
甲7 :特開2002-129431号公報
甲8 :オンライン辞書「Weblio」による「filament」の
和訳結果(URL http://ejje.weblio.j
p/content/filament)
甲9 :平成25年7月17日付け山本良作の陳述書
甲10の1ないし4:ループパイルの各寸法を測定した様子を示す写真
甲11の1ないし3:エル山本のシンキョウ敷物宛ての商品「シェニール」
の納品書控え
甲11の4ないし6:シンキョウ敷物の顧客に発送された商品「シェニール
」の送り状控え
甲11の7及び8:シンキョウ敷物からエル山本に入金された事実を示す銀
行通帳

甲1ないし甲7は審判請求書とともに、甲8及び甲9は請求人要領書(1)とともに、甲10の1ないし甲11の8は請求人要領書(2)とともに、それぞれ提出されたものである。
甲1ないし甲11の成立につき当事者間に争いはない。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として乙1ないし乙6を提出し、無効理由がいずれも成り立たないと主張する。

<証拠方法>
乙1:社団法人繊維学会編、「繊維便覧」、第2版、丸善株式会社、平成6
年3月25日、p.278-279
乙2:地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター編、「繊維技術シリ
ーズ 素材・織物の基礎知識」、株式会社工業調査会、2010年3
月31日、p.25-27
乙3:審判請求人から提示された商品「シェニール」の写真(作成者:審判
請求人、作成推定日:平成24年10月ないし11月)
乙4:商品「シェニール」が掲載された価格表「VOL・157-1」(甲
第2号証の1)のカラーコピー
乙5:アイブリッジ株式会社が運営するウェブサイト「ケンコーマーケット
」における「乾度良好 Ag+(銀イオン)バスマット 45*65
cm ブルー」のページ(URL http://shop.fru
itmail.net/detail/syousai.php?s
hopwork=SHOP_KC&codework=K12729
0H&katecode=KC)、及び、お問い合わせページ(UR
L http://shop.fruitmail.net/htm
l/link.php?cate=KC&page=questio
n&code=)
乙6:アイブリッジ株式会社が運営するウェブサイト「ケンコーマーケット
」における「乾度良好バスマット AG+(AGプラス) 45×6
5[○]」のページ(URL http://shop.fruit
mail.net/detail/syousai.php?sho
pwork=SHOP_KC&codework=K127300H
&katecode=KC)

乙1ないし乙6の成立につき当事者間に争いはない。

第5 当審の判断
1.無効理由1について
(1)無効理由1についての請求人の主張
無効理由1について、請求人は、概略、以下のように主張している。
「甲第1号証は、商品「シェニール」を販売するシンキョウ敷物株式会社の従業員(販売当時)である上北登の陳述書であり、商品「シェニール」の具体的な構成として、下記のものを備えることが記載されている。
……
すなわち、商品「シェニール」は、本件特許請求項1に係る発明の構成A乃至Dを備えており、本件特許請求項2に係る発明の構成E乃至Hを備えている。
また、商品「シェニール」は、本件特許請求項3乃至5に係る発明の構成I乃至Kを備えている。
また、商品「シェニール」は、本件特許請求項10乃至12に係る発明の構成P乃至Rを備えている。
更に、甲第1号証には、シンキョウ敷物株式会社が商品「シェニール」を平成17年9月頃から販売を開始したことが記載されており、商品「シェニール」が本件特許出願前に公然知られたもの又は公然実施されたものであるという事実が示されている。」(審判請求書9ページ下から7行?11ページ7行)

「a.請求項1,2
本件特許出願前に公然知られた又は公然実施されたものである商品「シェニール」の構成は、甲第1号証から明らかなように、本件特許請求項1に係る発明の構成A乃至Dを全て備えており、本件特許請求項2に係る発明の構成E乃至Hを全て備えている。
したがって、本件特許請求項1及び2に係る発明は、その出願前に公然知られた又は公然実施された発明と同一である。
b.請求項3乃至5
商品「シェニール」は、本件特許請求項3乃至5に係る各発明の構成I乃至Kを全て備えているから、本件特許請求項3乃至5に係る発明は、その出願前に公然知られた又は公然実施された発明と同一である。」(審判請求書16ページ下から8行?17ページ3行)

「e.請求項10乃至12
商品「シェニール」は、本件特許請求項10乃至12に係る各発明の構成P乃至Rを全て備えているから、本件特許請求項10乃至12に係る発明は、その出願前に公然知られた又は公然実施された発明と同一である。」(審判請求書18ページ6行?9行)

「丸1 甲1に記載された商品「シェニール」の構成は、甲1に記載のとおり、請求人である有限会社エル山本が保管していた滑り止め加工の不良品を、上北氏が観察して記載したものである。
……
丸3 上記不良品の構成および材質は、甲第9号証において補足されている。甲第9号証において、商品「シェニール」の全体構成は、資料2に示されており、ループパイルの形状は、資料3に示されており、ループパイルの芯糸に対するフィラメントの取り付け状態は、資料4に示されており、ループパイルの材質については、資料5に示されている。」(請求人要領書(1)5ページ7行?6ページ2行)

以上を整理すると、無効理由1についての請求人の主張は、要するに、商品「シェニール」が、本件特許出願前に販売されたものであって、本件特許発明1ないし5、10ないし12は、商品「シェニール」と同一である、というものである。そして、請求人である有限会社エル山本が保管していた滑り止め加工の不良品(以下、「不良品」という。)の構成によって、商品「シェニール」の構成を立証しようとするものである。
よって、無効理由1の成否を判断するには、
・本件特許出願前に、商品「シェニール」が公然と販売されたか
・商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一か
・不良品が、本件特許発明1ないし5、10ないし12と同一か
を検討する必要がある。

(2)本件特許出願前に、商品「シェニール」が公然と販売されたか
甲1には、次の記載がある。
「1.経歴等
私は、昭和63年3月に、シンキョウ敷物株式会社(以下、「当社」といいます。)に入社し……商品「シェニール」は、有限会社エル山本が中国から輸入して、当社が平成17年9月頃から販売を開始しました。」

甲2の1は、平成17年9月10日付けの価格表であって、「シェニール」という品名の商品が記載されている。

甲2の2は、平成18年4月27日付けの「シンキョウ敷物株式会社」宛て納品書及び物品受領書であり、「品番・品名」欄に「シェニール」との記載があり、「摘要」欄に「送先スミノエ西日本」との記載がある。
甲2の3は、平成18年4月27日付けの「シンキョウ敷物株式会社」宛て納品書及び物品受領書であり、「品番・品名」欄に「シェニール」との記載があり、「摘要」欄に「送先東洋フレンヂ」との記載がある。
甲2の4は、平成18年4月27日付けの送り状控えであり、「ご依頼主」欄に「シンキョウ敷物(株)」、「お届け先」欄に「スミノエ西日本 中部金沢 営業所」との記載がある。
甲2の5は、平成18年4月27日付けの送り状控えであり、「ご依頼主」欄に「シンキョウ敷物(株)」、「お届け先」欄に「東洋フレンヂ(株)」との記載がある。

甲2の4、甲2の5に「シェニール」との記載はないが、日付とお届け先の記載が、甲2の2、甲2の3と符合するものと認められる。このことから、商品「シェニール」が平成18年4月27日付けでシンキョウ敷物(株)の複数の顧客宛てに発送されたことがうかがわれる。

甲11の1は、平成17年10月21日付けの納品伝票控であり、あて名として「シンキョウ敷物(株)」と記載され、「品番、柄番」の欄に「シェニール」と記載され、「岡山 宇治郷様 送り」との記載がある。
甲11の2は、平成17年11月11日付けの納品伝票控であり、あて名として「シンキョウ敷物(株)」と記載され、「品番、柄番」の欄に「シェニール」と記載され、「熊本 鶴尾百貨店東館4F インテリア売場送り」との記載がある。
甲11の3は、平成17年11月17日付けの納品伝票控であり、あて名として「シンキョウ敷物(株)」と記載され、「品番、柄番」の欄に「シェニール」と記載され、「天満 CaCaN天満店 送り」との記載がある。
甲11の4は、送り状の控えであり、「ご依頼主」欄に「シンキョウ敷物(株)」、「お届け先」欄に「宇治郷(株)」とそれぞれ記載され、「お荷物引渡予定日」欄に「17年10月22日」と記載されている。
甲11の5は、送り状の控えであり、「ご依頼主」欄に「シンキョウ敷物(株)」、「お届け先」欄に「鶴尾百貨店東館4Fインテリア売場」とそれぞれ記載され、受領印の日付が「17.11.11.」であることが認められる。
甲11の6は、送り状の控えであり、「ご依頼主」欄に「シンキョウ敷物(株)」、「お届け先」欄に「CaCaN天満橋店」とそれぞれ記載され、「お荷物引渡予定日」欄に「11月18日」と記載されている。

甲11の4ないし6に「シェニール」との記載はなく、また、甲11の6は、日付に年の記載がなく、お届け先の記載に甲11の3とわずかな相違が見られる。しかし、甲11の1ないし6の全体をみれば、甲11の4ないし6の日付とお届け先が、甲11の1ないし3に対応することが認められる。このことから、商品「シェニール」が平成17年10月ないし11月頃にシンキョウ敷物(株)の複数の顧客宛てに発送されたことがうかがわれる。

以上の甲各号証によれば、少なくとも本件特許出願前である、平成17年10月ないし11月頃には、商品「シェニール」が公然と販売すなわち譲渡されたと推認できる。

(3)商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一か
商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であることに関し、請求人は、以下のとおり主張する。
「甲1は、有限会社エル山本に保管されていた商品(不良品)を、上北氏が商品「シェニール」であると認めた上で、陳述したものである。
商品「シェニール」は、甲第9号証に記載のとおり、1200枚を同時に輸入した後、追加発注は行っていないことから、全て同じ構成である。」(請求人要領書(1)6ページ下から5行?下から2行)
「丸1 請求人が保管する「不良品」は、甲第1号証で上北氏が商品「シェニール」と認めるだけでなく、甲第3号証で角内氏も商品「シェニール」と認めている。上北氏および角内氏は、当時も現在も全くの別会社に所属しており、それぞれ異なる時期および場所で陳述を行ったものである。
上北氏および角内氏はいずれも長期間営業職に従事しており、取扱い商品の特徴は熟知していると思われる一方、「不良品」は、ループ状の青いパイルと柱状の白いパイルとがストライプ模様を構成しており、特徴的かつシンプルな形態を有することから、自身の過去の記憶を頼りに「不良品」を商品「シェニール」と判別できたとしても、何ら不自然な点は存在しない。
上北氏および角内氏は商品を販売する側の立場であるから、上北氏および角内氏からみれば、請求人は多数の仕入先の1つに過ぎず、請求人の代わりとなる企業は多数存在する。このような状況の下で、上北氏および角内氏の双方が、いずれも請求人の利益のために虚偽の陳述を行うことは考えにくい。
したがって、「不良品」が商品「シェニール」である可能性は極めて高いといえる。」(請求人要領書(2)3ページ2行?16行)

上記請求人の主張によれば、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であることの証拠は、上北氏及び角内氏が不良品を商品「シェニール」であると認めた旨の、甲1、甲3の陳述書のみである。なお、商品「シェニール」が全て同じ構成である旨の主張は、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であることとは直接関係しない。

そこで、甲1、甲3について検討すると、甲1には、次の記載がある。
「「シェニール」の不良品(マット裏面側の滑り止め加工の不良)が有限会社エル山本に現在保管されていると、有限会社エル山本の代表である山本良作氏から連絡を受けましたので現物をお借りしましたが、私が当時取り扱っていた「シェニール」に間違いありませんでした。顧客への「シェニール」の納品は、実際には有限会社エル山本から顧客に直接行われていましたが、商品の品質を販売開始前に現物で十分確認しておりますので、「シェニール」の構成はよく覚えています。
お借りした「シェニール」の青いループパイルは、指でつまみ上げると、写真1に示すように指を離しても起立状態が維持され、自立性を有するものでした。……マットの裏面側には、写真2に示すように、ループパイル形成糸の縫い付けによって複数の縫い目が平行に形成されており、この縫い目の方向に沿って、マットの表面側にパイルループのループ面が形成されています。ループパイル同士は、縫い目方向に沿って密接すると共に、縫い目と直交する方向にも密接しています。」

甲3には、次の記載がある。
「上北登氏の平成25年2月15日付けの商品「シェニール」に関する陳述書を、株式会社エル山本に保管されていた商品「シェニール」の現物と共に確認しましたところ、私が過去に取り扱った「シェニール」と同一の商品について説明されたもので間違いありません。」

甲1には、上記のとおり「マットの表面側にパイルループのループ面が形成されています。」と記載されている。一方、甲1に添付された写真1、甲9に添付された資料2、資料3の写真、甲10の1ないし4の写真によれば、不良品は、ループパイルに撚りが生じており、ループ面が形成されていると認めることはできない。請求人も「被請求人が主張する「所定の面(ループ面)」は、……、本件特許や商品「シェニール」においてそもそも存在しない」(請求人要領書(1)4ページ10行?12行)と、不良品にループ面が存在しないことを認めている。
そうすると、甲1の「マットの表面側にパイルループのループ面が形成されています。」との記載は事実に反するものである。
よって、甲1には、事実に反する記載も含まれており、甲1の記載内容を、そのまま事実として認めることはできない。
そして、甲1の「「シェニール」の不良品……現物をお借りしましたが、私が当時取り扱っていた「シェニール」に間違いありませんでした。」との記載内容は、これを裏付ける他の証拠はないから、事実であると認めることはできない。
甲3には、甲1について「私が過去に取り扱った「シェニール」と同一の商品について説明されたもので間違いありません。」との記載があるが、そのことを裏付ける他の証拠はなく、甲1には上記のとおり事実に反する部分があるのに、「間違いありません」と記載されていることを考慮すると、不良品が商品「シェニール」であると認めるに足りないものである。
なお、甲2の1と甲9に添付された資料2を対比すると、商品「シェニール」と不良品は、いずれも青いパイルと白いパイルのストライプ模様であることがうかがわれるが、甲2の1は電子データを印刷したものであって証拠価値はそれほど高いとはいえないこと、上記ストライプ模様の商品が、商品「シェニール」のみであったかは明らかでないこと、を考慮すると、これらの写真によって、不良品が商品「シェニール」であると認めることもできない。
よって、請求人が提出する証拠によっては、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であると認めるに足りない。

(4)不良品が、本件特許発明1ないし5、10ないし12と同一か
ア.本件特許発明の「フィラメント」について
被請求人は、「本件特許発明1の構成B及びD並びに本件特許発明2の構成F及びH中の「フィラメント」は、それぞれ「連続長繊維」を意味する」と主張し(答弁書2ページ5行?6行)、請求人は、「本件特許の請求項1等における「フィラメント」は、「連続長繊維」に限定されるものではなく、商品「シェニール」に使用されているモール糸の飾り糸のように、綿からなる線条体も含むものである」(請求人要領書(1)3ページ14行?16行)と主張するので、まず、この点から検討する。

甲8によれば、「filament」の和訳として、「細糸」、「糸状体」、「線条」、「繊条」等と訳されている例が認められる。
これに対し、乙1には「連続長繊維をフィラメントという。」(279ページ左欄下から3行)と記載され、乙2には「繊維は……長さによってフィラメント(長繊維)とステープル(短繊維)に分類される。フィラメントは、生糸のような連続した長い繊維をいい、ステープルは綿や羊毛の繊維のような非連続の短い繊維をいう。」(25ページ3行?7行)と記載されている。
乙1は、繊維学会編の「繊維便覧」であり、乙2は、東京都立産業技術研究センター編の「繊維技術シリーズ 素材・織物の基礎知識」であって、いずれも、繊維分野の専門書である。
そうすると、「フィラメント」は、一般的には、「細糸」、「糸状体」、「線条」、「繊条」等の意味を有するが、繊維分野においては、連続した長い繊維、すなわち「連続長繊維」を意味する用語であると認められる。

本件特許発明1、2において、「ループパイル形成糸は、略円柱形状をなし、フィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されており」と、「ループパイル形成糸」に関連して「フィラメント」との用語が用いられている。「糸」は繊維の集合体である(乙1 278ページ左欄「a.(i)(1)」参照。)から、上記「フィラメント」は、繊維に関連していることが明らかであり、繊維分野における通常の意味に解するのが相当である。
さらに、本件特許明細書の、例えば【0031】に「芯糸」、「飾り糸」との記載があり、「糸」と「フィラメント」の語を使い分けていることからも、「フィラメント」が、糸を含む上位概念の「線状体」を意味するとは解し難い。

請求人は、「本件特許は、ループパイル保持体に関するものであって、繊維分野とは特定されていないから、フィラメントは、連続長繊維に限られるものでない。」と主張する(第1回口頭審理調書参照。)が、特許請求の範囲に「繊維」との記載はなくとも、「ループパイル形成糸」との記載があり、明細書にも「芯糸」、「飾り糸」との記載(【0031】)や、「繊維」との記載(【0012】)があることから、本件特許発明が繊維分野に関することは明らかである。
また、請求人は、過去の特許明細書において「綿フィラメント」との用語が用いられた例があることを主張する(請求人要領書(1)2ページ下から3行?3ページ13行)が、当該用語がどのような意味で用いられたのかは明らかでなく、本件特許明細書に「綿フィラメント」との用語はないのであるから、上記請求人の主張は、本件特許発明における「フィラメント」の解釈を左右するものではない。

したがって、本件特許発明における「フィラメント」は、「連続長繊維」を意味すると解される。

イ.本件特許発明1と不良品の対比
本件特許発明1は、構成B、すなわち「前記ループパイルを形成するループパイル形成糸は、略円柱形状をなし、フィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されており」との構成を備えている。上記「ア.」における「フィラメント」の解釈を前提に、構成Bに着目して、本件特許発明1と不良品を対比する。

甲1には、不良品の青いループパイルを形成するループパイル形成糸について、「ループパイル形成糸のフィラメントは、ループパイル形成糸の軸線となる芯糸に係合していることから、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され、且つ軸線方向にも密設されています。また、ループパイル形成糸の略円柱形状外周面は、フィラメントの先端部により形成されています。」と記載されている。
しかし、甲1に、事実に反する記載が含まれており、甲1の記載内容を、そのまま事実と認められないことは、前記(3)に示したとおりである。
一方、甲9に添付された資料4を参照すると、青いループパイルを形成する糸は、白い芯糸に、青い糸が径方向に放射状に密設され、軸線方向にも密設されていることがうかがわれる。そして、青い糸の先端部により、略円柱形状の外周面が形成されているともいえる。また、甲9に添付された資料5の「パイル:綿100%」、「(芯糸:ポリエステル)」との品質表示を参照すれば、上記白い芯糸がポリエステル、青い糸が綿100%からなるものと認められる。
よって、不良品の青いループパイルを形成するループパイル形成糸について、「青いループパイルを形成するループパイル形成糸は、略円柱形状をなし、綿100%からなる青い糸が、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記綿100%からなる青い糸の先端部により形成され」ていることが、一応認められる。
そして、乙1の「繊維の長さが比較的短く、それ自体は糸の形態を成していない繊維から構成される糸を紡績糸という。比較的短い繊維のなかでも綿糸のように2?5cm程度の繊維を紡績した糸を短繊維紡績糸、毛糸のように7.5?20cm程度の繊維を紡績した糸を長繊維紡績糸という。」(279ページ左欄2行?7行)との記載、乙2の「繊維は……長さによってフィラメント(長繊維)とステープル(短繊維)に分類される。……ステープルは綿や羊毛の繊維のような非連続の短い繊維をいう。」(25ページ3行?7行)、「糸を構成する単繊維の長さに基づいて、長繊維から成るフィラメント糸と短繊維からなる紡績糸に分類される。……紡績糸はステープルを紡績して製造した糸である。……紡績糸の例として綿を示す。」(26ページ下から2行?27ページ4行)との記載によれば、綿の繊維は「ステープル(短繊維)」であり、これを紡績して製造した糸が綿糸である。
よって、綿100%からなる青い糸は、ステープル(短繊維)あるいは紡績糸であって、「フィラメント」ではない。
したがって、不良品の青いループパイルを形成するループパイル形成糸について、上記甲1に記載されたとおりのものとまでは認められない。

そうすると、本件特許発明1と不良品を対比すると、両者は少なくとも次の[相違点A]で相違する。
[相違点A]
本件特許発明1のループパイルを形成するループパイル形成糸は、「フィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成され」ているのに対し、不良品の青いループパイルを形成するループパイル形成糸は、「綿100%からなる青い糸が、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記綿100%からなる青い糸の先端部により形成され」ており、「綿100%からなる青い糸」が「フィラメント」ではない点。

ウ.本件特許発明2ないし5、10ないし12と不良品の対比
本件特許発明2の構成Fは、本件特許発明1の構成Bと同じである。よって、構成Fに着目して、本件特許発明2と不良品を対比すると、前記「イ.」で検討したのと同じく、両者は少なくとも[相違点A]で相違する。
また、本件特許発明3ないし5、10ないし12は、いずれも、本件特許発明1に他の限定を付加したもの、又は本件特許発明2に他の限定を付加したものに相当する。
よって、本件特許発明3ないし5、10ないし12は、少なくとも[相違点A]で不良品と相違する。

エ.まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし5、10ないし12と不良品とは、少なくとも[相違点A]で相違する。
よって、不良品は、本件特許発明1ないし5、10ないし12と同一ではない。

(4)無効理由1についてのまとめ
本件特許出願前に商品「シェニール」が公然と販売すなわち譲渡されたことは推認できるが、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であると認めることはできないから、不良品と同じ構成の発明が本件特許の出願前に公然知られた又は公然実施されたということはできない。
仮に、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であるとしても、本件特許発明1ないし5、10ないし12は、少なくとも[相違点A]において、商品「シェニール」と相違する。
したがって、本件特許発明1ないし5、10ないし12は、本件特許の出願前に公然知られた又は公然実施された発明であるということはできず、請求人の主張する無効理由1によっては、本件特許発明1ないし5、10ないし12についての特許を無効とすることはできない。

2.無効理由2について
「1.無効理由1について」に示したとおり、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であると認めることはできないから、不良品と同じ構成の発明が本件特許の出願前に公然知られた又は公然実施されたということはできず、まず、この点で無効理由2は成り立たない。

仮に、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であるとした場合に、本件特許発明6ないし9が、商品「シェニール」に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるかについて、更に検討する。
本件特許発明6ないし9は、いずれも、本件特許発明1に他の限定を付加したもの、又は本件特許発明2に他の限定を付加したものに相当するから、本件特許発明6ないし9は、少なくとも前記[相違点A]において、商品「シェニール」と相違する。
そこで、相違点Aの容易想到性を検討する。

甲6には、以下の記載がある。
「【請求項1】
基布にパイル糸を植糸した室内マットであって、該パイル糸の素材の繊維としてポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維を使用した極細繊維マット。」
「【考案が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合成繊維自体は吸水性に乏しいため、特殊吸水機能を持たせた糸、あるいは特殊吸水加工を施した糸を使用したものを除き、通常の合成繊維マットに高い吸水性を期待することはできない。また、天然繊維マットの場合では天然繊維自体に吸水性はあるものの乾燥が遅いという問題があった。さらに、従来の合成繊維や天然繊維によるマットでは、近年需要者が求める柔らかな風合いやソフトな肌触りを満足させることはできなかった。」
「【0009】
本考案によれば、パイル糸の素材の繊維に極細繊維を含んでおり、毛細管現象により速やかにパイル糸表面の水分がパイル糸側面及び底面に向けて吸水されるため、もともと吸水性に乏しい合成繊維を使用しながら、従来の合成繊維マットに比較して非常に高い吸水性を発揮するマットを提供することが可能となる。従って、キッチンマットやバスマットなど、特に水廻りにおいて使用され吸水機能が要求されるマットにおいて有効に活用できる。
また、極細繊維を含んだパイル糸は肌触りが非常にソフトであり、近年の需要者の嗜好を満足させるマットを提供することが可能となる。さらに、肌触りに優れるために、常時の吸水性が必ずしも不要な水廻り以外の用途、例えば室内カーペット等に利用しても十分な効果が期待できるものである。」
「【0010】
本考案においては、ポリエステル及びナイロンの合成繊維で構成される極細繊維をパイル糸の素材として使用する。……この極細繊維1本あたりの太さは1デニール未満であり、一般的にはマイクロファイバーと称される繊維である。
図1に示すように、この極細繊維(2)を含む合成繊維を用いて、撚糸又は合糸加工により繊維の束(3)を形成し、繊維の束(3)2本をさらに撚糸あるいは合糸加工することにより、800デニール以上の太さのパイル糸(1)を形成する。パイル糸(1)は、繊維の束(3)を3本以上撚糸又は合糸加工することによって形成してもよい。また、800デニール以上の繊維の束(3)を形成し、それをそのままパイル糸(1)として使用してもよい。
……800デニール以上の太さとするのは、ソフトタッチと高い吸水性という本考案の十分な効果を得るためである。」

ここで、乙1の「(iv)フィラメント糸 連続長繊維をフィラメントという。再生繊維や合成繊維はフィラメントとして作られる。フィラメント1本で構成した糸をモノフィラメント糸、2本以上で構成した糸をマルチフィラメント糸という。」(279ページ左欄下から4行?右欄1行)との記載を参酌すれば、甲6の「ポリエステル及びナイロンで構成される極細繊維」は、合成繊維だから、フィラメントであるといえ、甲6の「この極細繊維(2)を含む合成繊維を用いて、撚糸又は合糸加工により繊維の束(3)を形成し、繊維の束(3)2本をさらに撚糸あるいは合糸加工することにより、800デニール以上の太さのパイル糸(1)」としたものは、2本以上のフィラメントで構成した糸だから、マルチフィラメント糸であるといえる。
よって、甲6には、基布にパイル糸を植糸した室内マットにおいて、パイル糸にフィラメントを用いるとの技術事項が記載されている。
しかしながら、パイル糸の具体的な構成について、甲6に「フィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成され」ている構成を示唆する記載はなく、【0010】に記載されるとおりのマルチフィラメント糸の構成が開示されているにすぎない。
そうすると、商品「シェニール」の青いループパイルを形成するループパイル形成糸と、甲6のパイル糸は、前提となる構成が大きく異なるから、技術分野の共通性や、甲6に天然繊維マットについての問題が示されていることを考慮しても、商品「シェニール」の青いループパイルを形成するループパイル形成糸の「綿100%からなる青い糸」に、甲6の技術事項を適用して、フィラメントを用いる動機付けはないというべきである。
仮に、商品「シェニール」に甲6の技術事項を適用するとしても、ループパイルを形成する糸の材質と、ループパイルの構造や寸法は、いずれも風合いや肌触りに関連することが普通に予測されるから、甲6の技術事項から糸の材質のみを抽出して、商品「シェニール」に適用しようとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。すなわち、商品「シェニール」に甲6の技術事項を適用しようとすれば、商品「シェニール」の青いループパイルを形成するループパイル形成糸それ自体を、甲6のパイル糸に置換することとなるから、相違点Aに係る本件特許発明の構成は得られないし、糸の材質を綿からフィラメントに変更しようとすれば、ループパイルの寸法も同時に変更されることとなり、本件特許発明の構成C又は構成Gを備えるものともならない。

また、甲7には、ポリアミドからなるモノフィラメントが記載されているものの、釣り糸に好適なものであって、マットを示唆するような記載はないから、甲7の技術事項を商品「シェニール」に適用する動機付けはなく、適用しても相違点Aに係る本件特許発明6ないし9の構成は得られない。

したがって、相違点Aに係る本件特許発明6ないし9の構成は、甲6、甲7を考慮しても、商品「シェニール」に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

以上のとおり、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であると認めることはできないから、不良品と同じ構成の発明が本件特許の出願前に公然知られた又は公然実施されたということはできず、仮に、商品「シェニール」の構成が不良品の構成と同一であるとしても、相違点Aに係る本件特許発明6ないし9の構成を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由2によっては、本件特許発明6ないし9についての特許を無効とすることはできない。

第6 結び
以上のとおり、請求人の主張する理由及び提出した証拠によっては本件特許発明1ないし12に係る特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-07 
結審通知日 2013-08-09 
審決日 2013-08-28 
出願番号 特願2008-177638(P2008-177638)
審決分類 P 1 113・ 112- Y (D03D)
P 1 113・ 121- Y (D03D)
P 1 113・ 111- Y (D03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 政志  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 二ッ谷 裕子
紀本 孝
登録日 2011-06-17 
登録番号 特許第4763758号(P4763758)
発明の名称 ループパイル保持体  
代理人 高良 尚志  
代理人 特許業務法人アローレインターナショナル  
代理人 特許業務法人アローレインターナショナル  
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