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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1280499
審判番号 不服2006-20940  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-20 
確定日 2013-11-05 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2005-700093「医薬」拒絶査定不服審判事件について,平成24年7月2日付けの審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成24年(行ケ)第10295号,平成25年9月18日判決言渡)があったので,更に審理の結果,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願については,特許権の存続期間の延長登録をすべきものとする。 特許番号 特許第3677156号 延長の期間 0年4月16日 特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容 平成18年5月29日付け手続補正書により補正された願書に記載のとおり 
理由 1.手続の経緯
本件特許権存続期間延長登録出願は,平成17年12月16日に出願され,平成18年8月9日付けで拒絶査定がされたため,同年9月20日に審判請求がされたものである。
そして,平成20年10月21日付けでされた「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決は,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成20年(行ケ)第10458号,平成21年5月29日判決言渡)がされ,その後,最高裁判所における上告棄却の判決(平成21年(行ヒ)第324号,平成23年4月28日判決言渡)を経て,確定した。
その後,平成24年7月2日付けでされた「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決は,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成24年(行ケ)第10295号,平成25年9月18日判決言渡)がされ,確定した。

2.本件出願
本件特許権存続期間延長登録出願は,特許第3677156号の特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとして,0年4月16日の特許権存続期間の延長を求めるものであり,当該政令で定める処分の内容は,平成18年5月29日付け手続補正書により補正された願書に記載されたとおりのものである。

3.原査定の理由

原査定の理由は,特許第3677156号に記載の医薬製剤の有効成分「塩酸モルヒネ」について「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」の用途に適用することは既に厚生労働大臣によって承認されていた(薬事日報社編,最近の新薬2004,薬事日報社 2004,ISBN4-8408-0785-X,p182参照)と認められるから,出願人が特許権の存続期間延長を求めている特許発明の有効成分,効能・効果に関し,特許発明は既に実施することができるようになっていたものであり,したがって,当該承認は,上記特許発明の実施に必要な処分とはいえず,特許法第67条の3第1項第1号に該当するというものである。

4.最高裁判所における上告棄却の判決(平成21年(行ヒ)第324号,平成23年4月28日判決言渡)の判示事項

特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製造販売の承認(以下「後行処分」という。)に先行して,後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲に属しないときは,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできないというべきである。なぜならば,特許権の存続期間の延長制度は,特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とするところ,後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以上,上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明はもとより,上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができたとはいえないからである。そして,先行医薬品が,延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどのように解するかによって上記結論が左右されるものではない。
本件先行医薬品は,本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないのであるから,本件において,本件先行処分がされていることを根拠として,その特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないということはできない。

上記判示事項は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであって,行政事件訴訟法第33条第1項に規定する拘束力を有する。

5.平成24年7月2日付け審決の理由
平成18年5月29日付け手続補正書により補正された本件出願の願書に添付された資料によれば,「速放性製剤(FRG)」の最高血中薬物濃度到達時間は投与後1.04時間すなわち,62分24秒であるから,請求項1における(A)の速放性組成物の「最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物」との要件を満たしていない。
したがって,本件処分の対象となった医薬品「パシーフカプセル30mg」(本件対象医薬)は,本件特許発明の技術的範囲に属するものであると認めることができないから,本件出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項に定める処分を受けることが必要であったと認めることができない。

6.当審の判断
知的財産高等裁判所における審決取消しの判決(平成24年(行ケ)第10295号,平成25年9月18日判決言渡)において,次のとおり判示されている。

(1) 本件特許の請求項1の「最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物」との要件につき,審決はFRGなる組成物の最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内ではないことを根拠として,本件対象医薬が上記要件を充足しないとしている。しかし,FRGの組成は,本件対象医薬に用いられた速放性組成物(本件速放性組成物)の組成とは異なっている。そして,薬剤の最高血中薬物濃度到達時間が,有効成分の含有量のみならず,結合剤の含有量や種類によって影響を受けることは技術常識であると解されるので,本件速放性組成物と組成の異なるFRGの最高血中薬物濃度到達時間を基礎とした審決の認定判断は誤りであるといわざるを得ない。被告の主張するように,原告が出願時から審決時まで一貫して本件速放性組成物がFRGであることを前提とする主張をしていたとしても,本件訴訟における原告の主張が信義則に違反するとはいえない。
(2) 本件特許の請求項1の「薬物を含有し,最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物」との文言は,原告の主張するように,組合わせ医薬を投与した場合の速放性組成物の最高血中薬物濃度到達時間を意味するものと解釈すべきではなく,速放性組成物のみを投与した場合の最高血中薬物濃度到達時間を意味するものと解釈すべきである。
もっとも,原告は,本件対象医薬を健康成人男子に投与した場合の最高血中薬物濃度到達時間(速放部)の平均値±標準偏差が,0.705±0.188時間(本件使用成績)であった旨の証拠を提出しているところ,原告提出の解析結果や本件対象医薬の性質,大学教授の意見書等に照らすと,本件速放性組成物を単独で投与した場合の最高血中薬物濃度到達時間が,本件使用成績0.705±0.188時間よりも遅くなることはないと認められるので,本件使用成績は,本件対象医薬が本件クレームの「(A)薬物を含有し,最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内の速放性組成物」との要件を充足することの根拠となるものと認められ,これと反する審決の判断は誤っている。

上記判示事項は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであって,行政事件訴訟法第33条第1項に規定する拘束力を有する。

以上より,本件特許権存続期間延長登録出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当するとして拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-10-18 
出願番号 特願2005-700093(P2005-700093)
審決分類 P 1 8・ 71- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荒木 英則長部 喜幸  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 前田 佳与子
大宅 郁治
発明の名称 医薬  
代理人 高島 一  

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