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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09B
管理番号 1280736
審判番号 不服2011-24354  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-11 
確定日 2013-10-24 
事件の表示 特願2001-227616「銅フタロシアニン顔料」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月23日出願公開、特開2002-121420〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月27日(国内優先権主張 平成12年8月7日)の出願であって、
平成22年8月25日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年10月26日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、
平成23年8月9日付けの拒絶査定に対し、平成23年11月11日付けで審判請求がなされるとともに手続補正書及び手続補足書の提出がなされ、
平成24年8月21日付けの審尋に対し、平成24年10月16日付けで回答書が提出され、
平成25年4月22日付けの補正の却下の決定により平成23年11月11日付けの手続補正が却下され、
平成25年4月22日付けの拒絶理由通知に対し、平成25年6月20日付けで意見書及び手続補正書並びに回答書の提出がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成25年6月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願請求項1に係る発明(以下、「本1発明」という。)は、次のとおりのものである。
『窒素吸着法におけるBET比表面積95?150m2/gを有し、かつ銅フタロシアニン誘導体を含有することを特徴とするε型銅フタロシアニン微細顔料。』
なお、上記「m2/g」との記載は、本願の出願当初の請求項1の記載からみて「m^(2)/g」の誤記であると認める。

第3 当審による拒絶の理由
平成25年4月22日付けの当審による拒絶理由通知書(以下、「下記の拒絶理由通知書」という。)に示した拒絶の理由は、
理由2として『この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?14に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』という理由を含むものである。

第4 進歩性について
1.引用刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開平10-273606号公報
先の拒絶理由通知書で引用した上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:段落0015
「酸化処理顔料の窒素ガスの比表面積(Sn)は、60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下でなければならない。窒素ガスの比表面積(Sn)が200m^(2)/gを越える酸化処理顔料は凝集しやすく,該顔料を水性媒体中に分散させてなる水性顔料分散体は、安定性が悪い。一方、Snが60m^(2)/g未満の酸化処理顔料は、水性インクジェット記録液の製造時における濾過操作が困難であり,記録液の経時での沈降を生じさせる。酸化処理を行う顔料のSnが60m^(2)/g未満である場合には,酸化処理の前に、顔料をソルトミリング処理(無機塩を破砕助剤とし,顔料の一次粒子径を機械的に微細化する処理)することが好ましい。」

摘記1b:段落0019及び0021?0022
「顔料の酸化処理としては、…スルファミン酸処理が好ましい。…
顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと,…C.I.ピグメントブルー15,15:1,15:4,15:6,22,60,64…等が例示できる。…
顔料は,場合によっては異なる二種類以上を併用してもよい。」

(2)刊行物2:特開平10-239905号公報
先の拒絶理由通知書で引用した上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項3
「BET比表面積が90?150m^(2)/gのシアン顔料」

摘記2b:段落0019及び0021
「本発明は、それぞれの色においてBET比表面積が上記した範囲よりも小さい顔料を含有するトナーを用いると、得られる画像は透明性や着色性が悪く、一方BET比表面積が上記した範囲よりも大きい場合は、画像の透明性は良好であるが、耐光性が低下し、また画像濃度も低下する。…
本発明に用いられる特定のBET比表面積の3色の顔料は、具体的にはいわゆるソルトミリング処理によって得ることが出来る。」

摘記2c:段落0025及び0030
「シアン顔料の具体例をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、(1)フタロシアニン系としては、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6等(2)スレン系としてはC.I.ピグメントブルー60、64等が挙げられる。…
本発明における着色剤を得る際にフタロシアニン顔料誘導体、高分子型分散剤等の分散剤、可塑剤等の添加剤を併用しても良いし、2種以上の処理有機顔料の水性分散体を混合して処理しても良い。」

(3)刊行物3:特公昭52-6301号公報
先の拒絶理由通知書で引用した上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:請求項1
「下記混合物を80?200℃、好ましくは100?160℃において、強い機械的歪力をもつてミリングすることによるε型結晶形を有する銅フタロシアニン顔料組成物の製造法。
(A)銅フタロシアニン 100重量部
(B)ベンゼン核に置換基を導入されたフタロシアニン誘導体(ただしハロゲン化銅フタロシアニンを除く。)、フタロシアニン窒素同構体、無金属フタロシアニン及び銅以外の金属フタロシアニンの群から選ばれた1種若しくは2種以上 0.5?50重量部」

摘記3b:第2欄第4?35行
「これまでに、銅フタロシアニンはα型、β型、γ型、δ型、ε型の5種の多形態で存在していることが知られている。…ε型は特公昭40-2780号に記載されているように、…ソルトミリングすることによつて得られる赤みの強い青色顔料であり、その独特の優れた色相のゆえに印刷インキ、塗料及びプラスチツク等の着色剤として広い用途がある。」

摘記3c:第4欄第41行?第6欄第8行
「本発明の実施により得られる銅フタロシアニン顔料組成物は粒子が極めて柔らかく容易に展色剤中に分散することができ、…
特に銅フタロシアンとこれらフタロシアニン誘導体等とを特定温度下に強い機械的歪貨をもつてミリングすることにより、従来のε型銅フタロシアニンよりも鮮明で着色力の大きい顔料組成物が得られることに特長がある。
以下実施例を示す。例中部とは重量部を示す。 実施例1」

摘記3d:第7欄第11行?第9欄第13行
「銅フタロシアニンと上記誘導体を98%硫酸に溶解し、水に沈殿させてロ過、水洗、乾燥することによつて両者の均一な混合物を得る。この混合物100部、粉砕食塩200部及びポリエチレングリコール80部をニーダーに入れ、80?160℃で5時間摩砕した。取り出し後2%の希硫酸水溶液で精製し、ロ過、水洗、乾燥して鮮明な赤みの青色顔料を得た。この顔料はε型銅フタロシアニンと同様のX線回折図を示した。…この系統の銅フタロシアニン誘導体は表第1に示す。
第1表
┌─────┬────────────────────────┐
│実施例番号│ 銅フタロシアニン誘導体 │
├─────┼────────────────────────┤
│ 1-a │ Cu-Pc-(COCH_(2)NHC_(2)H_(5))_(1.1) │
├─────┼────────────────────────┤
…(ただし、表1中Cu-Pcは銅フタロシアニン核、カツコ外の数字は分析による平均置換数を示す。)」

(4)刊行物4:特開2000-136333号公報
先の拒絶理由通知書で引用した上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:段落0001?0002、0006、0009及び0015
「本発明は、液晶カラーディスプレイ、撮像素子等の製造に使用されるカラーフィルター用着色組成物及びこれを用いたカラーフィルターに関する。更に詳しくは透明性、流動性、貯蔵安定性に優れたカラーフィルター用着色組成物及びこれを用いたカラーフィルターに関する。…
青色カラーフィルター形成用の顔料として、通常、ε型銅フタロシアニンブルーが用いられている…
本発明者らは高顔料濃度における上記顔料誘導体使用の上記の問題点を解決し、カラーフィルター用着色剤の色品位の向上及び低粘度化を可能にする顔料改質剤を開発すべく鋭意研究した結果、特定なフタロシアニン化合物が優れた分散性向上処理剤として作用し、着色組成物の低粘度化が達成でき、且つ貯蔵時の増粘ゲル化の防止及びカラーフィルターとして最も重要な透明性も向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。…
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、本発明の上記の顔料誘導体を単独又は、混合物として顔料改質剤として使用することにより、特異的に顔料粒子の凝集を防止することが可能となる。従って、分散が良くなることにより透明性が向上する。又、着色組成物の構造粘性が低減され、低い粘度が発現する。その結果として着色組成物の増粘、ゲル化が抑制され、貯蔵安定性も向上する。…
(ハ)使用する顔料と顔料改質剤とをアトライター、ボールミル等の湿式媒体分散機で微分散し、樹脂ワニスに添加する方法。」

摘記4b:段落0023、0027、0031及び0038
「合成例1…ビス-(ピペリジノメチル)銅フタロシアニン(顔料改質剤1)を10部得た。…
顔料処理例1 ε型銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)のプレスケーキ(固形分45%)を顔料分が100部になるように取り、水2,000部を加え充分に解膠する。これに顔料改質剤1の6%希酢酸溶液170部を加え1時間攪拌する。10%炭酸ナトリウム水溶液を徐々に滴下しアルカリ性になるまで加える、その後1時間攪拌して濾過する。中性になるまで充分に水洗し、80℃で乾燥して110部の処理顔料1を得た。…
実施例7、8 実施例1で使用した顔料と顔料改質剤の代わりに顔料処理例1及び2で得られた処理顔料1又は処理顔料2を20部使用して同様にして青色のベースカラーを得た。…
表2から明らかなように実施例1?8のカラーフィルター用着色組成物は、比較例1、2の組成物に比べて最大光透過率は高く、初期粘度、貯蔵粘度(1ヶ月)も低く、カラーフィルター用着色組成物として優れた性質を示している。」

摘記4c:段落0046
「上記本発明によれば、フタロシアニン顔料誘導体をカラーフィルターの青色パターン形成用着色組成物に分散性向上処理剤として添加して使用することにより、着色組成物の製造の工程においても安定に製造することができ、又、最終的にカラーフィルター用着色組成物として使用される際にも優れた分光カーブ特性を有し、鮮明で冴えた、透明感の高い、しかも耐光性、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、耐水性等の諸堅牢性に優れたカラーフィルターを得ることができる。」

(5)刊行物5:特開平4-252273号公報
先の拒絶理由通知書で引用した上記刊行物5には、次の記載がある。
摘記5a:段落0001、0003及び0006?0007
「本発明は色材、電子材料等に利用価値の高いε型銅フタロシアニン顔料を工業的に有利に製造する方法に関する…
α型、γ型あるいはδ型からε型に結晶変換するのに16時間以上の長時間の摩砕を必要とし、…
得られる顔料の粒子サイズをコントロールすることが出来る。なかでも色相、鮮明性、着色力等に優れるε型銅フタロシアニン顔料が効率良く製造できる…
フタルイミドメチル銅フタロシアニン等の銅フタロシアニンの誘導体を添加することにより、摩砕時間を短縮できる。銅フタロシアニンの誘導体としては銅フタロシアニンの結晶成長を抑制するものなら何でもよく、他に銅フタロシアニンスルホンアミド類、アミノメチル銅フタロシアニン類等が挙げられる。」

摘記5b:段落0022
「実施例11 製造例1で得た粗製ε型銅フタロシアニン250部と、粗製β型銅フタロシアニン250部と、フタルイミドメチル銅フタロシアニン15部とを5lアトライターで400分間摩砕して、ε型銅フタロシアニンとα型銅フタロシアニンの重量比(ε/α)が15/85で、β型の全てがα型に変換している摩砕物を得た。得られた摩砕物を60部をトルエン180部、n-ブタノール90部および水400部からなる混合溶剤に投入し、共沸温度で4時間加熱した後、溶剤を蒸留回収し、濾過、乾燥してε型銅フタロシアニン顔料510gを得た。この顔料はX線解析図から完全にε型の顔料であった。この顔料の比表面積は77m^(2)/gであった。」

(6)刊行物11:特公昭64-6234号公報
先の拒絶理由通知書で引用した上記刊行物11には、次の記載がある。
摘記11a:第4欄第9?18行及び第6欄第39?41行
「純粋にε型のX線回折スペクトルを示す銅フタロシアニンを、安定に、高収率で得られる方法を鋭意検討した結果、…結晶系改質剤として油溶性の低い銅フタロシアニンスルホクロリドと芳香族アミンとの縮合反応物を用い、予め製造されたBET法による比表面積が35m^(2)/g以上のε型銅フタロシアニンをシード結晶として一定量、最初から添加することにより目的を達成することができた。…
本発明方法により得られたε型銅フタロシアニンはBET法による比表面積15?35m^(2)/gで、一次結晶は長方向1.5?3.0μmの針状であり、そのままでも顔料として使用出来るが、米国特許第2556730号、同第2982666号等に記載された公知の方法で、一次結晶をより小さくする摩砕処理を行なつてから使用するとより鮮明、より高濃度に着色することが出来る。」

2.刊行物1?5及び11に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
摘記1aの「酸化処理顔料の窒素ガスの比表面積(Sn)は、60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下でなければならない。」との記載、及び摘記1bの「顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと,…C.I.ピグメントブルー…15:6…等が例示できる。」との記載からみて、刊行物1には、
『窒素ガスの比表面積が60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下の酸化処理顔料であって、顔料がC.I.ピグメントブルー15:6である酸化処理顔料。』についての発明(以下、「刊1発明」という。)が記載されている。

(2)刊行物2に記載された発明
摘記2aの「BET比表面積が90?150m^(2)/gのシアン顔料」との記載、及び摘記2cの「シアン顔料の具体例…フタロシアニン系としては、C.I.ピグメントブルー…15:6等…が挙げられる。…本発明における着色剤を得る際にフタロシアニン顔料誘導体…を併用しても良い」との記載からみて、刊行物2には、
『BET比表面積が90?150m^(2)/gで、フタロシアニン顔料誘導体を併用したシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)。』についての発明(以下、「刊2発明」という。)が記載されている。

(3)刊行物3に記載された発明
摘記3aの「ミリングすることによるε型結晶形を有する銅フタロシアニン顔料組成物の製造法。」との記載、摘記3cの「鮮明で着色力の大きい顔料組成物が得られる」との記載、及び摘記3dの「銅フタロシアニンと上記誘導体…の均一な混合物を得る。この混合物100部、粉砕食塩200部…をニーダーに入れ…摩砕した。…鮮明な赤みの青色顔料を得た。この顔料はε型銅フタロシアニンと同様のX線回折図を示した。…この系統の銅フタロシアニン誘導体は表第1に示す。」との記載からみて、刊行物3には、
『銅フタロシアニンと銅フタロシアニン誘導体の混合物をミリングした、鮮明で着色力の大きいε型結晶形を有する銅フタロシアニン顔料組成物。』についての発明(以下、「刊3発明」という。)が記載されている。

(4)刊行物4に記載された発明
摘記4bの「ビス-(ピペリジノメチル)銅フタロシアニン(顔料改質剤1)…ε型銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)のプレスケーキ…に顔料改質剤1…を加え…処理顔料1を得た。…実施例7…処理顔料1…を20部使用して同様にして青色のベースカラーを得た。…実施例1?8のカラーフィルター用着色組成物は、比較例1、2の組成物に比べて最大光透過率は高く、初期粘度、貯蔵粘度(1ヶ月)も低く、カラーフィルター用着色組成物として優れた性質を示している。」との記載からみて、刊行物4には、
『ε型銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)に顔料改質剤1〔ビス-(ピペリジノメチル)銅フタロシアニン〕を加えて得られた処理顔料1。』についての発明(以下、「刊4発明」という。)が記載されている。

(5)刊行物5に記載された発明
摘記5bの「実施例11…粗製ε型銅フタロシアニン250部と、粗製β型銅フタロシアニン250部と、フタルイミドメチル銅フタロシアニン15部とを5lアトライターで400分間摩砕して、…ε型銅フタロシアニン顔料510gを得た。この顔料はX線解析図から完全にε型の顔料であった。この顔料の比表面積は77m^(2)/gであった。」との記載からみて、刊行物5には、
『顔料の比表面積が77m^(2)/gで、フタルイミドメチル銅フタロシアニンを含む、ε型銅フタロシアニン顔料。』についての発明(以下、「刊5発明」という。)が記載されている。

(6)刊行物11に記載された発明
摘記11aの「純粋にε型のX線回折スペクトルを示す銅フタロシアニンを、安定に、高収率で得られる方法を鋭意検討した結果、…結晶系改質剤として油溶性の低い銅フタロシアニンスルホクロリドと芳香族アミンとの縮合反応物を用い、予め製造されたBET法による比表面積が35m^(2)/g以上のε型銅フタロシアニンをシード結晶として一定量、最初から添加することにより目的を達成することができた。…本発明方法により得られたε型銅フタロシアニンはBET法による比表面積15?35m^(2)/gで、一次結晶は長方向1.5?3.0μmの針状であり、そのままでも顔料として使用出来るが、米国特許第2556730号、同第2982666号等に記載された公知の方法で、一次結晶をより小さくする摩砕処理を行なつてから使用するとより鮮明、より高濃度に着色することが出来る。」との記載からみて、刊行物11には、
『銅フタロシアニンスルホクロリドと芳香族アミンとの縮合反応物を用い、予め製造されたBET法による比表面積が35m^(2)/g以上のε型銅フタロシアニンをシード結晶として添加することにより得られたBET法による比表面積15?35m^(2)/gのε型銅フタロシアニンについて、その一次結晶をより小さくする摩砕処理を行なつてから使用する、より鮮明、より高濃度に着色することが出来る顔料。』についての発明が記載されている。

3.対比・判断
(1)刊行物3又は4を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本1発明と刊3発明とを対比すると、
刊3発明の「銅フタロシアニンと銅フタロシアニン誘導体の混合物」は、その顔料組成の中に銅フタロシアニン誘導体が含有されていることが明らかであるから、本1発明の「銅フタロシアニン誘導体を含有する」に相当し、
刊3発明の「ミリングした…ε型結晶形を有する銅フタロシアニン顔料組成物」は、ミリングによって顔料が微細に磨砕されていることが明らかであるから、本1発明の「ε型銅フタロシアニン微細顔料」に相当する。
してみると、本1発明と刊3発明は『銅フタロシアニン誘導体を含有するε型銅フタロシアニン微細顔料。』に関するものである点において一致し、
(α)窒素吸着法におけるBET比表面積の数値範囲が、前者においては「95?150m^(2)/g」に特定されているのに対して、後者においては数値範囲が特定されていない点においてのみ一応相違している。

また、本1発明と刊4発明とを対比すると、
刊4発明の「顔料改質剤1〔ビス-(ピペリジノメチル)銅フタロシアニン〕を加えて得られた」は、本1発明の「銅フタロシアニン誘導体を含有する」に相当し、
刊4発明の「ε型銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)…処理顔料1」は、摘記4aの「特異的に顔料粒子の凝集を防止することが可能となる。従って、分散が良くなることにより透明性が向上する。」との記載からみて、ε型銅フタロシアニンブルー顔料が透明性が向上する程度に微細な粒子になっていることから、本1発明の「ε型銅フタロシアニン微細顔料」に相当する。
してみると、本1発明と刊4発明は『銅フタロシアニン誘導体を含有するε型銅フタロシアニン微細顔料。』に関するものである点において一致し、
(α)窒素吸着法におけるBET比表面積の数値範囲が、前者においては「95?150m^(2)/g」に特定されているのに対して、後者においては数値範囲が特定されていない点においてのみ一応相違している。

イ.判断
上記(α)の相違点について検討する。
摘記3cの「本発明の実施により得られる銅フタロシアニン顔料組成物は粒子が極めて柔らかく容易に展色剤中に分散することができ、…強い機械的歪貨をもつてミリングすることにより…鮮明で着色力の大きい顔料組成物が得られることに特長がある。」との記載にあるように、刊3発明は『容易に分散することができ、従来のε型銅フタロシアニンよりも鮮明で着色力の大きい』という作用効果を奏するものであって、刊3発明の顔料の比表面積については、分散性や鮮明性や着色力の点で優れた数値範囲にあるのが好ましいものと認められる。

摘記4cの「本発明によれば、フタロシアニン顔料誘導体をカラーフィルターの青色パターン形成用着色組成物に分散性向上処理剤として添加して使用することにより、…最終的にカラーフィルター用着色組成物として使用される際にも優れた分光カーブ特性を有し、鮮明で冴えた、透明感の高い…優れたカラーフィルターを得ることができる。」との記載にあるように、刊4発明は『分散性を向上し、鮮明で冴えた、透明感の高いカラーフィルターを得ることができる』という作用効果を奏するものであって、刊4発明の顔料の比表面積については、分散性や鮮明性や透明感の点で優れた数値範囲にあるのが好ましいものと認められる。

してみると、仮に『窒素吸着法におけるBET比表面積』の具体的な数値範囲において、本1発明と刊3発明(又は刊4発明)に実質的な差異があるとしても、
刊行物1には、刊1発明(窒素ガスの比表面積が60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下の酸化処理顔料であって、顔料がC.I.ピグメントブルー15:6である酸化処理顔料。)が記載され、銅フタロシアニンを含む顔料において、顔料の凝集や、安定性や、沈降などの諸問題を解決できることが記載されており(摘記1a)、
刊行物2には、刊2発明〔BET比表面積が90?150m^(2)/gで、フタロシアニン顔料誘導体を併用したシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)。〕が記載され、銅フタロシアニンを含む顔料において、透明性、着色性、画像濃度などの諸問題を解決できることが記載されている(摘記2a?2b)ので、
分散性、鮮明性、着色力又は透明感に優れた顔料を提供する刊3発明又は刊4発明の『窒素吸着法におけるBET比表面積』の数値範囲を、刊1発明の「窒素ガスの比表面積が60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下」という数値範囲、又は刊2発明の「BET比表面積が90?150m^(2)/g」という数値範囲の範囲内で最適化して、本願発明の「窒素吸着法におけるBET比表面積95?150m^(2)/g」という数値範囲に設定してみることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。

そして、補正後の本願明細書の段落0082に記載された「本発明のε型銅フタロシアニン微細顔料は、窒素吸着法におけるBET比表面積95?150m^(2)/gを有するので、従来のより小さい比表面積を有する同顔料に比べて、分散性に優れるという格別顕著な効果を奏する。この微細顔料をカラーフィルター用途で用いると、鮮明で明度の高い青色を発色する光透過量のより大きなカラーフィルターが得られるという格別顕著な効果を奏する。」という効果について、
摘記3cの「本発明の実施により得られる銅フタロシアニン顔料組成物は粒子が極めて柔らかく容易に展色剤中に分散することができ、…強い機械的歪貨をもつてミリングすることにより…鮮明で着色力の大きい顔料組成物が得られることに特長がある。」との記載にあるように、刊3発明は『容易に分散することができ、従来のε型銅フタロシアニンよりも鮮明で着色力の大きい』という作用効果を奏するものであり、
摘記4cの「本発明によれば、フタロシアニン顔料誘導体をカラーフィルターの青色パターン形成用着色組成物に分散性向上処理剤として添加して使用することにより、…最終的にカラーフィルター用着色組成物として使用される際にも優れた分光カーブ特性を有し、鮮明で冴えた、透明感の高い…優れたカラーフィルターを得ることができる。」との記載にあるように、刊4発明は『分散性を向上し、鮮明で冴えた、透明感の高いカラーフィルターを得ることができる』という作用効果を奏するものであるから、
本1発明に格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。

したがって、本1発明は、刊行物1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.請求人の主張について
平成25年6月20日付けの意見書において、審判請求人は「刊3又は刊4の発明を刊1?2および6?14を組み合わせて本願の数値範囲の範囲内に設定してみることは、創作能力の範囲内ではない。なぜなら、ここで言及されている刊行物は、『ε型』の銅フタロシアニンを特定して記載しているものではなく、他の結晶径のフタロシアニンやその他の顔料についての粒子径の記載であることを認識していただきたい。つまり、本願発明の特定事項である、『ε型』に『数値範囲』を後付けして理由付けをしたものと解される。本願は、『ε型』、『銅フタロシアニン誘導体』、『数値限定』という特定の構成から見出された顕著な効果を発現できる発明であり、単なる寄せ集めではないこと理解していただきたい。」と主張している。
しかしながら、刊行物1には『窒素ガスの比表面積が60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下の酸化処理顔料であって、顔料がC.I.ピグメントブルー15:6である酸化処理顔料。』についての刊1発明が記載されており、
刊行物2には 『BET比表面積が90?150m^(2)/gで、フタロシアニン顔料誘導体を併用したシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)。』についての刊2発明が記載されており、
因みに、摘記4bの「ε型銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)」との記載、及び本願明細書の段落0010の「ε型銅フタロシアニン微細顔料は、C.I.PigmentBlue 15:6であり」との記載にあるように、刊1発明及び刊2発明の「C.I.ピグメントブルー15:6」が「ε型」の銅フタロシアニンであることは、明らかである。
してみると、刊行物1及び2には、顔料が「ε型」の銅フタロシアニンである場合の発明が記載されていることは明らかであるから、審判請求人の主張は採用できない。

(2)刊行物5を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本1発明と刊5発明とを対比すると、
刊5発明の「顔料の比表面積」は、本1発明の「窒素吸着法におけるBET比表面積」に相当し、
刊5発明の「フタルイミドメチル銅フタロシアニン」は、本1発明の「銅フタロシアニン誘導体」に相当し、
刊5発明の「ε型銅フタロシアニン顔料」は、本1発明の「ε型銅フタロシアニン微細顔料」に相当する。

してみると、両者は、『窒素吸着法におけるBET比表面積を有し、かつ銅フタロシアニン誘導体を含有するε型銅フタロシアニン微細顔料。』に関するものである点において一致し、
(α’)窒素吸着法におけるBET比表面積の数値範囲が、前者においては「95?150m^(2)/g」に特定されているのに対して、後者においては「77m^(2)/g」に特定されている点においてのみ相違する。

イ.判断
上記(α’)の相違点について検討する。
刊行物1には、C.I.ピグメントブルー15:6などの銅フタロシアニンを含む酸化処理顔料において、窒素ガスの比表面積を60m^(2)/g以上200m^(2)/g以下とすることで、顔料の凝集や、安定性や、沈降などの諸問題を解決できることが記載されており(摘記1a)、
刊行物2には、C.I.ピグメントブルー15:6などの銅フタロシアニンを含むシアン顔料において、BET比表面積を90?150m^(2)/gとすることで、透明性、着色性、画像濃度などの諸問題を解決できることが記載されており(摘記2a?2b)、
刊行物11には、BET法による比表面積15?35m^(2)/gのε型銅フタロシアニンについて、一次結晶をより小さくする磨砕処理を行ってから使用することで、より鮮明、より高濃度に着色することができることが記載されており(摘記11a)、例えば、特開平11-293165号公報(先の拒絶理由通知書において「刊行物9」として引用した公開公報)の段落0003の「顔料粒子が微細になるほど比表面積が増大し」との記載にあるように、刊行物11に記載された「一次結晶をより小さくする磨砕処理」を行った場合には、顔料の比表面積が増大することになる。

してみると、刊5発明の『窒素吸着法におけるBET比表面積』の数値範囲を、鮮明性や着色性などの観点から最適化させ、本願請求項1に記載された『窒素吸着法におけるBET比表面積95?150m^(2)/g』という数値範囲に設定してみることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。

そして、摘記5aの「色相、鮮明性、着色力等に優れるε型銅フタロシアニン顔料が効率良く製造できる」との記載、摘記1aの分散安定性についての記載、摘記2bの透明性や着色性についての記載、及び摘記11aの鮮明性や高濃度についての記載からみて、本1発明に格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。

したがって、本1発明は、刊行物1?2、5及び11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.請求人の主張について
平成25年6月20日付けの意見書において、審判請求人は「刊5と本願発明は、比表面積の数値が相違し、一次粒子径の数値範囲が特定の有無で相違している。また、刊5の発明に刊1?2および6?14の数値範囲および課題を組み合わせることは、通常の操作能力の発揮の範囲内とは言えない。なぜなら、上記刊行物3または4を主引用例とした場合の検討と同様に理由付けとして数値範囲を組み合わせただけであり、動機付けがあるとは言えない。刊7の「ピグメント・ブルー15:6、一次粒子径:0.06μm」という『微細顔料』を用いることという記載に関しては、顔料種および一次粒子径に関する記載はあるものの、比表面積、フタロシアニン誘導体の記載がないことからも、容易に組み合わせる動機付けが存在しない。本願発明の本質は、本願明細書段落[0010]にあるように、『C.I.PigmentBlue 15:6であり、従来よりも、より大きな比表面積を有することを最大の特徴とする。』というように、従来の微細な顔料サイズでは得られなかった、際立って優れた鮮明性、明度を有する効果を有し、それらは、出願当時の技術水準から当業者が予測することが出来ない発明であることを再度、認識していただきたい。」と主張している。
しかしながら、刊5発明は、摘記5aの「色相、鮮明性、着色力等に優れるε型銅フタロシアニン顔料が効率良く製造できる」ということを課題としているものであって、
刊行物2に記載された発明は、摘記2bの「BET比表面積が上記した範囲よりも小さい顔料…得られる画像は透明性や着色性が悪く」との記載にあるように、得られる画像の「透明性や着色性」を改善するために顔料のBET比表面積を所定の数値範囲に設定するものであるから、刊5発明と刊行物2に記載された発明の課題は、鮮明性、透明性、着色性などの改善という共通した課題を有している。
また、刊5発明並びに刊行物1?2及び11に記載された発明は、本1発明と同様に、鮮明で着色力も高い上、結晶転移に対しても安定なことで知られる『ε型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)』に関するものである。
してみると、刊5発明に、刊行物1?2又は11に記載された発明を組み合わせることには十分な動機付けがあるといえるものであるから、審判請求人の主張は採用できない。
なお、本願明細書の段落0043の「本発明の微細顔料は、…インキ及び塗料等の粘度特性を向上にも寄与し」との記載にあるように、本1発明(及び本願請求項2に係る発明)の微細顔料は、カラーフィルター用途のみに限定されたものではない。
また、同意見書において、審判請求人は「刊11…そもそも一次結晶をより小さくするという操作は、結晶性がなくなり非晶質にすると解される。フタロシアニンにおいて、非晶質であるものは、通常α型を示し、異なった結晶構造からなるε型とは異なるものである。」と主張しているが、
刊行物11に記載された発明は、その「発明の名称」の欄の「ε型銅フタロシアニンの製造法」との記載にあるように「ε型」の銅フタロシアニンの製造法に関する発明であって、その第9欄第35?40行には、中性無水芒硝(硫酸ナトリウム)を用いてソルトミリングすることで『α型銅フタロシアニンより更に赤みの色調を有し、鮮明で着色力も高い』という極めて好ましい性質を持った銅フタロシアニンになることが記載されており、
なおかつ、刊行物11において引用された米国特許第2556730号明細書、及び同第2982666号明細書に記載された公知の方法は、いずれもソルトミリング処理に関するものであることから、上記「非晶質にすると解される」との主張は採用できない。

第5 むすび
以上総括するに、本1発明は、刊行物1?5及び11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の理由及びその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-27 
結審通知日 2013-08-29 
審決日 2013-09-10 
出願番号 特願2001-227616(P2001-227616)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神野 将志福永 千尋  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 木村 敏康
齋藤 恵
発明の名称 銅フタロシアニン顔料  
代理人 河野 通洋  
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