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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1280976
審判番号 不服2011-15162  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-13 
確定日 2013-10-30 
事件の表示 特願2005-302888「入力画像の色補正をするための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-121695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年10月18日(パリ条約による優先権主張2004年10月18日欧州特許庁)の出願であって、平成22年4月20日付で拒絶の理由が通知され、平成22年10月19日付で意見書・手続補正書が提出されたものの、平成23年3月14日付で拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成23年7月13日付で請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、当審において、前置報告書の内容について審判請求人の意見を求めるために、平成23年10月13日付で審尋がなされ、平成24年1月16日付で回答書が提出され、平成24年7月30日付で拒絶の理由が通知され、平成24年10月31日付で意見書・手続補正書が提出され、平成24年11月14日付で最後の拒絶理由通知として拒絶の理由が通知され、平成25年5月20日付で意見書・手続補正書が提出されている。

2.補正の目的・特許請求の範囲の記載
平成25年5月20日付手続補正書による特許請求の範囲についての補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、同手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下のとおり記載されている。

「【請求項1】
入力画像を色補正するための装置において、
処理ユニットにより、前記入力画像の色パラメータ表示を計算する手段と、
手動で、又は、自動的に入力パラメータをユーザが与えることにより、複数の参照画像を特定する手段であって、前記参照画像は、色補正後の所望の期待される効果をもたらすことが可能な色を表す広範囲の色を含むように選択される、前記特定する手段と、
前記参照画像の色パラメータ表示を得るために、選択された前記複数の参照画像のそれぞれの色又は選択された前記複数の参照画像の1つの領域の色を分析する手段と、
前記参照画像のそれぞれについて、処理ユニットにより、距離基準に従って前記入力画像の前記色パラメータ表示が前記参照画像の前記色パラメータ表示に近くなるように、前記入力画像の色に対する複数の可能な変換を計算する手段であって、前記変換は、入力色を変換色に写像する数学的関数から成っている、前記計算する手段と、
処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段と、
選択された前記変換から対話式で1つの変換を視覚的に選択する手段と
を有し、
前記色パラメータ表示は、色域又は色ヒストグラムである、前記入力画像を色補正する
ための装置。」

3.平成24年11月14日付の拒絶の理由の概要

『A.本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1?6,7:
(1) 平成24年10月31日付手続補正書で補正された請求項1には「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的なシーンを表示する画像を生じさせる、前記選択する手段」と記載されている。

・・・

すなわち、この出願の明細書及び図面には、請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的なシーンを表示する画像を生じさせる、前記選択する手段」をどのように実現するかについて記載されていると認めることはできない。

(2)・・・
(3)・・・
(4)・・・

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が平成24年10月31日付手続補正書で補正された請求項1に係る発明、及び、請求項1を引用する請求項2?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
また、上記請求項に係る発明と同様の理由で、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が平成24年10月31日付手続補正書で補正された請求項7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

B.本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1,2,5,6,7:
・・・

請求項3:
・・・

請求項4:
・・・

C.本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1?6,7:
・・・』

4.当審の判断
平成24年11月14日付の拒絶の理由の理由『A.本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。』について以下検討する。

4.1.明細書および図面の記載
この出願の明細書および図面には以下の記載がある。

「【実施例】
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は本発明の非限定的実施例の説明を通して明らかとなる。これらの実施例は添付した図面を用いて図解される。」
「【0023】
図1に示されているモジュールは、物理的に切り離されたユニット又は同じ物理的ユニット内に収容することのできるユニットに相当する機能単位である。例えば、これらのモジュール又は少なくともそれらのうちの幾つかは単一のコンポーネントにまとめられ得る又は同じソフトウェアの機能を構成することができる。逆に、幾つかのモジュールは場合によっては別個のユニットに分割してもよい。」
「【0024】
参照画像の集合、又は参照画像の領域は、ユーザにより選択される。以下では、これを選択参照画像と呼ぶ。これらの参照画像は例えば写真監督のような熟練した専門家により選択される。これらの参照画像は所望の色に似た色を有する画像である。選択参照画像の集合は、所望の期待された効果、例えば遅い夕方の雰囲気を表しうる色、肌の色、又は室内の色のための可能な色である広範囲の色を含んでいる。色補正すべき入力画像は、色補正後には、選択された色に密接に関連する色だけを有する。
参照画像の選択は主にオペレータにより手動で行われる。なぜならば、色補正は芸術的な創作に近いからである。他の実施形態では、色補正が自動的に行われるようにすることもでき、ユーザは、例えば、色、照明、フィルムの時間範囲などに関連した入力パラメータを入力する。
例えば、色補正が夜の雰囲気を有する画像を得ることを目的としている場合には、参照画像も夜の雰囲気を有するものとする。」
「【0025】
色分析手段1はユーザから入力として参照画像10を受け取る。色分析手段1はすべての参照画像10の色パラメータ表示を計算し、出力する。色パラメータ表示として、色域M_(R)を選択することができる。色パラメータ表示は参照画像10に含まれているすべての色を記述する。
本発明の他の実施形態では、色ヒストグラムH_(R)を色パラメータ表示として選択してもよい。又は、支配的な色の選択もしくはベクトル量子化を行ってもよい。」
「【0026】
色分析はまた色分析すべき入力画像11に対しても実行される。これは入力として入力画像11を受け取るモジュール2の機能である。
参照画像10に対しての分析と同じ分析が入力画像11に対しても行われる。色域に基づいた分析が参照画像10に対して行われる場合には、入力画像11に対しても色域に基づいた分析が行われる。」
「【0027】
色パラメータ表示は、国際照明委員会(CIE)により定義されたXYZのような空間又はCIE xy(色度)空間におけるすべての参照画像の色を表す。色パラメータ表示
は、色域と呼ばれる色空間内の凸体積に基づいていてもよいし、又は例えば色ヒストグラムのような他の体積表示に基づいていてもよい。他の実施形態では、他の色表示を用いてよい。体積という用語は一般的な意味で使用されており、3次元色空間の場合には3次元体積に相当する。
色分析モジュール2は入力画像11に対応する色域8も出力する。
これらの色域に基づいて、手段4は入力画像11に対する可能な色変換の集合を計算する。」
「【0028】
可能な変換13は、それぞれ距離基準に基づいて入力画像11の色を参照画像10の色に近いものにする変換の集合である。
各変換は入力色を変換色に写像する数学的関数から成っている。入力色と変換色は例えばXYZ又はxy座標で表現することができる。変換は例えば、線形の数学的関数、非線形の数学的関数、又はルックアップテーブルから成っていてよい。」
「【0029】
線形変換の一例は」
「【0030】
【数2】

による変換Tである。
可能なすべての変換13のパラメータcR,cG,cBは、以下のステップで繰り返し生成される多角形Pにより決定される変換の色域の中にある:
1.すべての色を包摂するようにPを大きなRGB立方体に初期化する。
2.入力画像色域の多角形の最初の点(R,G,B)をとる。
3.参照画像色域の多角形のN個の点(R_(n),G_(n),B_(n))に関して、N個の変換
(c_(R,n)=R'_(n)/R c_(G,n)=G'_(n)/G c_(B,n)=B'_(n)/B);0≦n<N
を計算する。
これらN個の変換が一時的な色域P_(tmp)を形成する。
4.PとP_(tmp)の共通部分を計算し、Pをこの共通部分として定義する。
5.入力画像色域の多角形の次の点(R,G,B)をとり、ステップ2から続ける。入力画像色域の多角形のすべての点が既に処理されている場合には、Pの計算を終了する。」
「【0031】
可能な変換13は変換空間内の変換の色域MTにより記述することができる。変換空間は変換を定義するパラメータの空間である。例えば、変数空間内で近い2つの変換はたいてい類似した変換特性を有している。」
「【0032】
画像を特徴付けるために色域を使用する場合には、可能な変換の基準は、変換を適用した後の入力画像の色域が一連の孤立値まで参照画像の色域の中にあることである。孤立値は参照画像の色域の外部にある変換色である。例えば、孤立値の数はすべての変換色の数のあるパーセンテージに限定されうる。別の方策は、参照画像の色域から最大の距離までの孤立値を許容することである。他の実施形態では、他の基準を使用してよい。」
「【0033】
(クローズアップ、すべて非常に似通った色をしたオブジェクトを有するシーン、飽和度の低いシーンのような)アンバランスなシーンを示す参照画像10に関しては、変換された入力画像の色域が参照画像の色域に含まれるという制約条件を充たす色変換が存在しないということが起こりうる。この場合には、色域M_(R)が拡大され、図2に示されているように、拡大された色域M_(R)’となる。」
「【0034】
図2は、色域が多角形で表される2次元空間の場合の一例を示している。色域は基本幾何学要素(立体、球、…)又は曲線(スプライン、数学的関数、…)のような他の手段で表してもよい。色空間は例えばCIEのxy色度座標により定義することができる。xy座標は0から1の間の値に制限されているため、拡大された色域M_(R)’の体積が色空間の限界を超すことなくM_(R)の体積と可能な最大体積との間にあるように拡大の幅を計算することができる。このような操作はパラメータkによりパラメトライズすることができる。ただし、k=0は拡大なしを表し、k=1は最大の拡大を表す。拡大のために、M_(R)の重心Pが計算される。つぎに、重心から色域の包絡線上の点に直線cを引くことにより、この包絡線の点は拡大された色域M_(R)’の包絡線を形成する色域の外部に移される。
別の実施形態では、他の点よりも大きく動かされる点があってもよい。例えば、色空間の限界から遠い点は他の点よりも大きく動かされる。」
「【0035】
さらに別の実施形態においては、色分析モジュール1及び2が色ヒストグラムを作成する場合には、可能な変換の基準はこの色ヒストグラムに関係する。
この実施形態では、
- T_(I)^(E)Iが均等化されたヒストグラムを、すなわち、ヒストグラム値が0でるか又は一定であるようなヒストグラムを有するように、色変換T_(I)^(E)を入力画像11に適用する、
- T_(R)^(E)Rが均等化されたヒストグラムを有するように、色変換T_(R)^(E)を参照画像10に適用する、
- 単一の変換T_(1)=T_(1)^(fixed)=(T_(R)^(E))^(-1)T_(I)^(E)を計算する。
Eは均等化されたヒストグラムを出力する変換を意味する。
いったんこの単一の変換T_(1)が得られると、可能な変換13の集合を得るために、立体、球、又は楕円面の変換色域が変換空間内においてT_(1)の周りに形成される。この変換色域M_(T)のサイズは、T_(1)と画像に対する影響のない変換である中立変換との間の距離に関連して設定される。例えば、円形の色域を選んだ場合には、半径はT_(1)と中立変換との間の距離に設定される。色域は負の係数のようなある限界値を超えたときにクリッピングされるようにしてもよい。クリッピングとは、色域の関連部分が色域から削除されることを意味する。他の実施形態はこのことから予想されうる。」
「【0036】
モジュール4は上で述べたようにして計算された可能な変換13の集合をモジュール5に伝送する。
モジュール5は変換13の集合の中から変換14の部分集合を選択する機能を果たす。
変換13の集合は上記の好適な実施形態における変換色域M_(T)により記述される。色域M_(T)に含まれたすべての変換は、入力画像を上記の数学的制約条件を充たす出力画像に変換する。」
「【0037】
可能な変換13の中から変換14の部分集合を選択する1つの目的は、物理的に可能なシーンを表す画像を生じる変換を得ることである。
実際、変換13の集合の数学的変換の中には、非現実的なシーンを示す赤すぎ、緑すぎ、青すぎ、又は暗すぎの出力画像を生じるものもある。
これは、入力画像11と参照画像10の中のシーンがすべての色をカバーしておらず、反射性のオブジェクトを含んでいるか、又は蛍光部分を有している場合に生じる。この場合には、色域M_(T)が大きすぎて、最終的な変換を妥当に選択することができない。」
「【0038】
モジュール5は以下の物理的かつ発見的な基準を用いて変換の部分集合を形成する:
- 部分集合選択モジュール5は図3に示されているように色域M_(T)に含まれた曲線C_(T)を出力として出す。
上記曲線は直線である。このような線は色域M_(T)の内部において例えば変換空間内の2つの変換T_(start),T_(end)の間に定めることができる。
T_(start)は中立変換T_(o)となるように選ばれる。
T_(o)が色域M_(T)の内部にない場合には、M_(T)を拡大してM_(T)’とすることができ、M_(T)は図3に示されているようにM_(T)’で置き換えられる。
T_(end)は、O=T_(MAX)Iに従って変換された出力画像の最大色域M_(o)を与える変換として選ばれる。
曲線C_(T)は他の実施形態では閉曲線としてもよく、またT_(start)とT_(end)を互いに異なるものとして選ぶこともできる。例えば、この曲線を最小色域M_(o)を与える変換であるT_(start)で始まり、最大色域M_(o)を与える変換であるT_(end)まで走る色域M_(T)の包絡線上の曲線として定義することができる。」
「【0039】
本発明の別の実施形態では、部分集合選択モジュール5により形成される変換14の部分集合は、図4に示されているようにM_(T)よりも小さな変換M″_(T)の色域である。
この変換M″_(T)の色域は、M_(T)の重心T_(C)を計算し、T_(C)とM_(T)の包絡線上の点とを通る線を定め、包絡線上の点をこの線上で内側方向に動かして、最終的に、より小さな色域M″_(T)の包絡線を形成することにより得られる。
中心点T_(C)はT_(0)I=Iにより定義される中立変換T_(0)としてよい。中立変換は色域M_(T)内の重要な物理的点である。というのも、中立変換は入力画像をそのままに保つ場合に相当するからである。T0が色域に含まれていない場合には、T_(C)を重心としてよい。」
「【0040】
部分集合選択モジュール5は、変換の集合から単一の変換9を選択するモジュール6のために変換の部分集合を形成する。
このステップはオペレータにより制御される。部分集合選択手段5が変換の数を減らすので、ユーザによる選択に長い時間は必要なく、オペレータに特殊な技術が要求されることもない。
この実施形態では、部分集合は変換空間内の曲線CTによって表されているので、オペレータは曲線の開始点と終了点との間をスライドすることで変換を選択することができる。即時の計算と変換入力画像の表示のおかげで、オペレータは芸術的な側面を考慮して最終的な変換T∈CTを選択することできる。このインタラクティブな選択のために、モジュール5は変換画像の即時表示を可能にするモジュール3に接続されている。モジュール6はグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を有するリモコンであってよい。ユーザはこのリモコンを用いて曲線に沿ってカーソルをスライドさせ、モジュール3において入力画像に適用した変換の結果を出力として得ることができる。
出力画像12はモジュール3により出力される。この出力画像12は、選択された変換9を適用した入力画像に相当する。」
「【図1】



4.2.請求項1の記載と発明の詳細な説明および図面の記載の対応関係
平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1には「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」と記載されているが、この記載と、上記明細書の記載の、どの部分が対応しているのか、以下検討する。

第一に、明細書段落【0001】?【0021】、及び、上記段落【0022】【0023】の記載からみて、これら段落の記載は、請求項1に係る発明の個々の「手段」と対応するものではない。
第二に、上記段落【0024】の記載からみて、上記段落【0024】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「手動で、又は、自動的に入力パラメータをユーザが与えることにより、複数の参照画像を特定する手段であって、前記参照画像は、色補正後の所望の期待される効果をもたらすことが可能な色を表す広範囲の色を含むように選択される、前記特定する手段」との記載が対応している。
第三に、上記段落【0025】の記載からみて、上記段落【0025】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「前記参照画像の色パラメータ表示を得るために、選択された前記複数の参照画像のそれぞれの色又は選択された前記複数の参照画像の1つの領域の色を分析する手段」との記載が対応している。
第四に、上記段落【0026】の記載からみて、上記段落【0026】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「処理ユニットにより、前記入力画像の色パラメータ表示を計算する手段」との記載が対応している。
第五に、上記段落【0027】の記載からみて、上記段落【0026】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「前記色パラメータ表示は、色域又は色ヒストグラムである」との記載が対応している。
第六に、上記段落【0028】?【0036】の記載からみて、上記段落【0028】?【0036】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「前記参照画像のそれぞれについて、処理ユニットにより、距離基準に従って前記入力画像の前記色パラメータ表示が前記参照画像の前記色パラメータ表示に近くなるように、前記入力画像の色に対する複数の可能な変換を計算する手段であって、前記変換は、入力色を変換色に写像する数学的関数から成っている、前記計算する手段」との記載が対応している。
第七に、上記段落【0040】の記載からみて、上記段落【0040】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「選択された前記変換から対話式で1つの変換を視覚的に選択する手段」との記載が対応している。

そうすると、上記段落【0037】?【0039】の記載と、平成25年5月20日付手続補正書で補正された請求項1の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」との記載が対応することとなる。

4.3.明細書段落【0037】?【0039】の記載についての検討
以下、平成24年10月31日付手続補正書で補正された請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」という点に関して、明細書段落【0037】?【0039】の記載が、当業者が平成24年10月31日付手続補正書で補正された請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるか否かについて検討する。

4.3.1.段落【0037】
上記段落【0037】の記載からみて、段落【0037】は「可能な変換13の中から変換14の部分集合を選択する1つの目的」について述べているに留まるから、この記載から請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」が存在する目的について理解することはできるものの、段落【0037】の記載のみからは、請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」をどのように実施するのか、特に「選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる」をどのように実現するかを理解することはできない。

4.3.2.段落【0038】
以下、上記段落【0038】の記載について検討する。

まず、上記段落【0038】の「部分集合選択モジュール5は図3に示されているように色域M_(T)に含まれた曲線C_(T)を出力として出す。」との記載、及び、上記段落【0040】の「この実施形態では、部分集合は変換空間内の曲線C_(T)によって表されているので」との記載からみて、変換空間内の曲線C_(T)が請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」が選択する「入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換」に対応するものと認められる。
ここで、上記段落【0038】の「このような線は色域M_(T)の内部において例えば変換空間内の2つの変換T_(start),T_(end)の間に定めることができる。」との記載からみて、「曲線C_(T)」は「変換空間内の2つの変換T_(start),T_(end)の間に定めることができる」曲線であると認められる。そして、上記段落【0038】の「T_(start)は中立変換T_(o)となるように選ばれる。」との記載からは、変換T_(start)は中立変換T_(o)である、すなわち、入力画像に変換T_(start)に従う変換を行っても、結局、入力画像となんら異ならないものとなるが、この出願の明細書段落【0002】に記載されるように映画撮影を前提としているこの出願の発明では、元々入力画像が「現実的な画像を表示する画像」であるから、結局、変換T_(start)が現実的な画像を表示する画像を生じさせるものであることは明らかである。
しかしながら、上記段落【0038】の「T_(end)は、O=T_(MAX)Iに従って変換された出力画像の最大色域M_(o)を与える変換として選ばれる。」との記載からは、入力画像に変換T_(end)に従う変換を行った場合に得られる画像が現実的な画像を表示する画像となるかについては、なんら導き出すことはできない。
更に、例え「2つの変換T_(start),T_(end)」のいずれもが、入力画像にその変換を行った場合に得られる画像が現実的な画像を表示する画像である変換であったと仮定しても、上記段落【0038】には「変換空間内の2つの変換T_(start),T_(end)の間に定めることができる」曲線である「曲線C_(T)」上に存在する変換の全てについて、入力画像にその変換を行った場合に得られる画像が現実的な画像を表示する画像となるものであることも、導き出すことはできない。(なお、この「曲線C_(T)」が上記段落【0038】の「上記曲線は直線である。」との記載に基づき、直線であると限定出来たとしても、依然として、この点を導き出すことはできない。)
したがって、上記段落【0038】には、請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」をどのように実現するか、特に「選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる」をどのように実現するかについて記載されていると認めることはできない。

4.3.3.段落【0039】
以下、上記段落【0039】の記載について検討する。
まず、上記段落【0039】の「本発明の別の実施形態では、部分集合選択モジュール5により形成される変換14の部分集合は、図4に示されているようにM_(T)よりも小さな変換M″_(T)の色域である。」との記載からみて、変換空間内の変換M″_(T)が請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」が選択する「入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換」に対応するものと認められる。
そして、上記段落【0039】の「中心点T_(C)はT_(0)I=Iにより定義される中立変換T_(0)としてよい。」との記載から、「中心点T_(C)」が「中立変換T_(0)」であるときには、「中心点T_(C)」に対応する変換については、その変換が現実的な画像を表示する画像を生じさせるものであることは明らかである。しかしながら、上記段落【0039】には「T_(0)が色域に含まれていない場合には、T_(C)を重心としてよい。」との記載もあり、「T_(C)を重心」としたときには、「中心点T_(C)」に対応する変換が現実的な画像を表示する画像を生じさせるものであることについて上記段落【0039】の記載から導き出すことはできない。
更に、「中心点T_(C)」以外の「変換空間内の変換M″_(T)」についても、それに対応する変換が現実的な画像を表示する画像を生じさせるものであることについて上記段落【0039】の記載から導き出すことはできない。
したがって、上記段落【0039】にも、請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」をどのように実現するか、特に「選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる」をどのように実現するかについて記載されていると認めることはできない。

5.審判請求人の主張
審判請求人は平成24年10月31日付意見書において、

『理由C(特許法第36条第4項第1号)について
上記の理由A及び理由Bにおける対応により、本拒絶理由は解消したと思料します。以下、説明します。

請求項1,3?4,7,8:
請求項1を「・・・処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的なシーンを表示する画像を生じさせる、前記選択する手段と、・・・」と記載し、段落【0037】の「非現実的なシーン」という記載に併せて、「現実的なシーン」という用語を使いました。また、段落【0036】に、「モジュール5は変換13の集合の中から変換14の部分集合を選択する機能を果たす。」という記載があり、段落【0038】の冒頭に、「モジュール5は以下の物理的かつ発見的な基準を用いて変換の部分集合を形成する:」という記載があり、段落【0038】?【0040】において、現実的なシーンを表示する画像を生じさせる変換をどのように選び出すか記載されています。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、補正された請求項1に係る発明、及び、請求項1を引用する請求項3?4,7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものです。
請求項8(補正後の請求項7)については、上記と同様の主張をします。』

と主張し、また、平成25年5月20日付意見書において、

『3.拒絶理由に対する意見
(1)理由A(特許法第36条4項1号)について
理由A(1)について
変換の部分集合の選択は、例えば本願の明細書[0035]-[0040]等に記載されています。そして、明細書等には複数の実施形態が開示されています。例えば、第1の実施形態は、段落[0037]-[0038]等に記載されています。又、第2の実施形態は、段落[0039]等に記載されています。
さらに、補正前の請求項1,7に記載されていた「現実的なシーンを表示する画像を生じさせる、」について、補正後の請求項1,6のように「現実的な画像を生じさせる、」と補正したことにより、当該理由に該当しないものと思料いたします。』

と主張している。

しかし、上記「4.2.請求項1の記載と発明の詳細な説明および図面の記載の対応関係」「4.3.明細書段落【0037】?【0039】の記載についての検討」で述べたように、この出願の発明の詳細な説明および図面、特に明細書段落【0035】?【0040】には、請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」をどのように実現するか、特に「選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる」をどのように実現するかについて記載されていると認めることはできない。

6.むすび
したがって、この出願の発明の詳細な説明および図面には、請求項1に係る発明の「処理ユニットにより、前記複数の可能な変換の中から、前記入力画像に適用した際に物理的に可能な色補正された入力画像を与える変換を選択する手段であって、選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる、前記選択する手段」をどのように実現するか、特に「選択された前記変換は、現実的な画像を生じさせる」をどのように実現するかという点について記載されていると認めることはできない。
また、この点が、当業者に自明のものであると認めることもできない。

よって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-03 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2005-302888(P2005-302888)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大室 秀明  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 千葉 輝久
渡邊 聡
発明の名称 入力画像の色補正をするための方法及び装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
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