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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A47L
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  A47L
管理番号 1281644
審判番号 無効2012-800106  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-06-20 
確定日 2013-09-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4919510号発明「食器カゴ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第4919510号の請求項1、2、4に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4919510号に係る出願は、平成19年10月3日に特許出願され、平成24年2月10日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。

1.平成24年 6月20日 本件無効審判の請求
2.平成24年 9月 4日 審判事件答弁書
3.平成24年 9月 4日 訂正請求書
4.平成24年11月12日 審判事件弁駁書
5.平成25年 1月10日 審理事項通知書
6.平成25年 2月 4日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
7.平成25年 2月14日 口頭審理陳述要領書(請求人)
8.平成25年 2月14日 口頭審理
9.平成25年 3月 5日 審決の予告
10.平成25年 5月 9日 訂正請求書
11.平成25年 6月24日 審判事件弁駁書

第2 訂正の請求について

1.訂正の内容
被請求人が平成25年 5月 9日付けの訂正請求書により請求する訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりにすること、すなわち、次の訂正事項1及び2による訂正である。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「食器を上から積重ねるように収納するための収納開口と、
収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口と、を備えた食器カゴ。」を、

「食器を上から積重ねるように収納するための収納開口と、
収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口と、
食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントによって隙間を作るための載置される食器の開口面に略直交するように設けられ、表面が樹脂で覆われ、食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際にコンベアに接する面であるコンベア面との間に隙間をあけて配置された下枠に設けられた食器載置レールと、を備えた食器カゴ。」(下線は訂正個所、以下同様)
とする訂正。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0011】の
「以下に、本願発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、請求項2などに関し、実施例2は主に請求項3などに関し、実施例3は主に請求項4などに関する。なお、本願発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。」を、
「以下に、本願発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項2などに関し、実施例2は主に請求項3などに関し、実施例3は主に請求項1、請求項4などに関する。なお、本願発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。」
とする訂正。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に係る発明に食器載置レールを追加するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。同様に、請求項1を引用する請求項2?4に係る発明を減縮するものである。
そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2には、訂正事項1により訂正する特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする。
そして、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)請求項3について
特許無効審判の請求がされていない請求項3に係る発明については、拒絶理由を発見しないので、特許出願の際独立して特許を受けることができたものである。

3.むすび
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項及び第9項で準用する又は読み替えて準用する同法第126条第5?7項の規定に適合する。

第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正は認められるので、請求項1、2及び4に係る本件特許発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2及び4に記載された次のとおりのものである(以下、本件訂正後における各請求項に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明4」という。)

請求項1
「食器を上から積重ねるように収納するための収納開口と、
収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口と、
食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントによって隙間を作るための載置される食器の開口面に略直交するように設けられ、表面が樹脂で覆われ、食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際にコンベアに接する面であるコンベア面との間に隙間をあけて配置された下枠に設けられた食器載置レールと、
を備えた食器カゴ。」

請求項2
「水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されている請求項1に記載の食器カゴ。」

請求項4
「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載の食器カゴ。」

第4 請求人の主張
1.請求の趣旨
審判請求人は、「特許第4919510号の特許請求の範囲の請求項1、2、及び4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、以下の無効理由を主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第9号証、甲第9号証の1及び2、甲第10号証を提出している。

2.無効理由ア
本件訂正発明1、2、及び4は、甲第1号証に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

3.無効理由イ
本件訂正発明1、2、及び4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

4.証拠方法
甲第1号証:特開平8-528号公報
甲第2号証:特開2002-219091号公報
甲第3号証:特開平10-108816号公報
甲第4号証:特許第2791862号公報
甲第5号証:日興調理機株式会社2000年度カタログ(2000年3月発行)の30-31頁
甲第5号証の1:同上カタログの31頁の食器投入口の拡大図
甲第6号証:同上カタログの32-33頁
甲第7号証:特開平5-269073号公報
甲第8号証:特開平10-117988号公報
甲第9号証:展示会出品証明書
甲第9号証の1:甲第9号証の展示会出品証明書の2ページ目に表示されている新型洗浄システムで使用された食器篭の拡大写真
甲第9号証の2:甲第9号証の展示会の会場での写真
甲第10号証:実公昭35-32740号公報

第5 被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書において「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理において、要点次のとおり主張している。

1.理由の大別
本件特許が無効とされない理由を大別すると次の2点となる。
理由A 訂正後の請求項1に記載の「水流用開口」に相当する構成要素を備える食器カゴは、請求人が示す証拠のいずれにも開示されていない。
理由B 訂正後の本件特許発明で新たに必須構成要素とした「食器載置レール」を有する食器カゴは、請求人が示す証拠のいずれにも開示されていない。

2.甲第1?9号証について
(1)甲第1号証
(1)-1 理由Aについて
ア 甲第1号証の食器収納篭は、「食器洗浄用水流を浴びせて」行う洗浄に用いるためのものではない。むしろ食器を収納した篭を洗浄層に浸して行う洗浄に用いることを主に念頭に置いたものであると考えられる。
イ 甲第1号証記載の発明に用いられる食器は、食器同士が完全に接触することなく積み重ねることができるための突起を備えた食器であることを明示している。
つまり水流を浴びせて互いに接触している食器を離すという思想は甲第1号証には無いのであるから、同証の食器篭は「水流用開口」を技術的思想として備えたものではない。
ウ 甲第1号証では同証の食器篭を用いた洗浄について水の噴射を用いるとの明示はない。また、本件発明が想定している作用・効果を奏するとの意図も示されていない。
本件発明の特許性を否定する技術的思想が記載されていない。
(1)-2 理由Bについて
エ 甲第1号証に示された食器篭は、食器を取り囲むように配置されている四本の横枠3で食器を支持するかのごとき構成が示されているが、食器を取り囲むように配置されている横枠全体で食器を支持するようになっており、レール上で食器が姿勢を変えることが可能な構成ではない。
オ 甲第1号証の食器篭は、食器篭を縦にした状態で食器どうしを正確に重ね合わせることができるように設計されるものであるから、2本の横枠上で回転するほどの余裕がないほうが好ましい。
カ 縦置きから横置き、横置きから縦置きと置き方を変えるものであるので、食器篭を横置きにした際に食器が水流でもって回転するほどの隙間があるような食器篭としては記載されていない。
キ 甲第1号証に記載の食器篭は、「食器に開モーメントが加えられた時に食器載置レールを支点として食器が小角度回転するように食器と食器との間に隙間を作る」という機能は何ら備えていない。

(2)甲第5?8号証
ク 甲第5号証から甲第8号証には、「コンベア進行経路に食器洗浄用水流を浴びせるために注水部を設けること」は何ら開示されていない。
甲第5号証から甲第8号証には開モーメントを生じさせることを目的とした注水について何ら記載も示唆もなく、その観点から適切な言葉である「浴びせる」という言葉も用いられていない。

(3)甲第9号証
ケ 注水によって「食器に開モーメントを生じさせる」ことはどこにも示されていない。
コ 同証に記載されている「食器篭」が洗浄水を通過させる構成を有しているとしても、水流によって食器に開モーメントを加えて食器と食器との間に隙間を作るという技術思想に基づいて設計されたものでない。

3.本件特許発明について
サ 請求項1において、「水流用開口」は、その開口から注がれる水流によって食器カゴ内の食器に開モーメントを生じさせ、積み重ねて収納されていた食器と食器の間に隙間を作るように構成される開口である。従って、水流用開口の用途を限定した発明である。
シ「食器載置レール」は、食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントによって隙間を作るためのものである。
ス「載置」は載せて置くという意味であり、載置された食器はそのレール上で姿勢を変化させることができる。つまり「載置」は食器の姿勢の変化を許容する構成をも明らかにしている。
セ「食器に開モーメントを生じさせる」とは、食器を食器載置レールを支点として小角度回転させる作用(レール上で食器が滑りながら小角度回転することを妨げない)をいう。

4.証拠方法
乙第1号証:本件特許発明に係る食器カゴを用い、「開モーメントによって食器と食器の間に隙間を作る」状態を具体的に説明するための写真

第6 当審の判断
1.本件訂正発明1の無効理由イについて

(1)甲第1号証
甲第1号証(特開平8-528号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】お椀、お皿、ランチ皿、トレイ等の食器の外形に相似した形状の断面部を有する篭に於いて、篭の頂部及び底面部と、その頂部と底面部との中間部にその頂部及び底面部と同形状の複数個の枠を有し、前記長手方向に前記の食器等の外形に略沿つて前記の枠部に重置接合している複数個の棒状部を有し、篭の頂部または前部及び底部には断面の部分に枠部に係合している食器の脱落防止用の止め金具を有し、篭の頂部付近はお椀、お皿、トレイ等の出し入れを自在とするとする上部空間部を有する自動食器洗浄機用の食器収納篭。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、食後、食器を食器篭に収納し、自動食器洗浄機までの搬送時の時は、残菜及び汁等がこぼれない様に図6の様にして運ぶ。自動食器洗浄機で洗浄する時は、食器を垂直になる様、食器篭を約90゜倒して洗浄する。洗浄後、食器消毒保管庫に収納し、消毒の時は食器を伏せる様な型で図6の食器収納篭を約180゜回転して消毒を行う。自動食器洗浄機に用いるお椀、お皿、ランチ皿、トレイ等の食器収納篭に於いて、収納する食器類を簡便に無駄なく収納し、洗浄後に於いても、そのままに消毒保管庫に収納して、且つ、その後の取り出しも自在であることを目的とする自動食器洗浄機用の食器収納篭に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の自動洗浄機にあつては、食器は通例のお椀、お皿、ランチ皿、トレイ等であるために、これらを食器収納篭に収納する際にあつても、食器は通例の食器であるために収納にあたって、食器と食器を互いに離して収納するための手段が食器に施されていないために、食器篭に例えば食器を積み重ねる如く収納されると、食器と食器は互いに接触し、この部分は洗浄が例え噴射的に行われても、食器に付着している残滓等を完全に洗い落とすことは不可能であつた。この為に、食器収納篭には食器と食器がある間隔をもって収納されるように、収納篭には食器と食器の仕切り部分が設けられていた。」

イ 「【0007】
【作用】本発明の自動食器洗浄機用の食器収納篭を使用するときは、篭の外形が使用すお椀、お皿、ランチ皿、トレイ等に合わせてあり、且つ使用されている食器は食器の外面部または内面部に複数個の突起を有しているので、積み重ねられた食器は完全に接触することなく、常に突起部分に於いては軽く、他の部位にあつてはある間隔をもって収納される。
【0008】この為に、食器類が食器収納篭に収納されて、自動食器洗浄機に収納されて洗浄が開始されると、通例の単なる洗浄機に用いられても勿論であるが、特に4つの作用による洗浄機、つまり浸透、洗浄、すすぎ、仕上げの部分を有する自動食器洗浄機に於いては、食器を食器収納篭に対して、垂直にして洗浄するので、食器の軽い接触と間隙部の存在により完全な洗浄が行われることとなる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施例の構成を示す1例の斜視図である。Aは本発明の食器収納篭の1実施例であつて1は前面枠、2は後面枠、3は横枠、4は中間枠である。横枠3及び中間枠4は前面枠1及び後面枠2の中間部にあつて複数個で構成されている。図に示す如く横枠3は前面枠1から中間枠4を通して後面枠2に重置接合されている。
【0010】前面枠には収納されている食器の脱落を防止するめの止め金具5、又、後面には同じく食器脱落防止用の別の止め金具6がある。そして本発明の食器篭にあつては、食器を自在に食器篭に出し入れすることが可能の上部開口部8が枠の上部に枠を中断する如く設けられている。本発明は以上の如き構成であるが、これを実際に使用するにあたっては、次の如きものを食器収納篭Aに取り付けて使用している場合が多い。
【0011】即ち、自動食器洗浄機の食器収納篭の移動がコンベアー式、それも所謂、エプロンコンベアー式でなく、移動装置の上部に取り付けられた2本のレール取り付け型においては、前面と後面枠2の中間部の枠部分に食器収納篭がコンベアー駆動金具7を取り付けて、この金具を利用して食器収納篭の移動を円滑に行つて、この食器収納篭Aの取り扱いの便宜を図る。つまり、この食器収納篭Aは、自動食器洗浄機に収納して食器の洗浄を始めるにあたって、自動食器洗浄機の各部、各槽を移動すので、この自動食器洗浄機に適した移動装置によって各槽を移動進行するのが通例であるので、この移動装置を用いて食器収納篭Aに例えば食器篭の移動がかくの如き移動金具7を使用して移動装置に係設して移動せしめることが多い。
【0012】実際の使用は次の手順によることになる。食器収納篭Aは、使用するお椀、お皿、トレイ等の食器の外形に略沿つた形状であるので、この食器収納篭の上部開口部8から容易に食器を篭内に収納し又取り外し得る。この際に使用されている食器はその食器の内部または外部に複数個の突起を有するものが通例は使用されているので、単に順番に積み重ねるのみで、何等の注意を払わなくても、収納された食器は違いに軽く接触するのみにて、ある間隔を有しているので、収納に際して収納篭に食器区分けの部分がないので楽に行うことができる。」

ウ 「【0014】図2は本発明の食器収納篭の他の実施例Bであつて、図に示す如くこの場合は前面及び後面枠が単なる枠でなく、図に示す如く支持製品と言える前面部10であるので中間枠は、場合によりこれを必要としないこともある。面支持物は食器を自在に出し入れできる空間部11を有して、前面部10は食食器の外形より少しく狭い空間を有するものであつて、このために、前面支持物の周辺で食器の脱落が防止される。
【0015】この場合に、図に示す如き一体のものであつて、後面部は水切りや、重量軽減ともなる複数の開口部を有する底板12であつて、底板が後面部となつているので、勿論、脱落防止ともなる。この食器収納篭Bの場合にはその構造が単なる枠よりも堅牢であり、持運びの手掛かりも多いので取って金具は必ずしも必要としない。本構造の食器篭においても、必要に応じて、コンベア駆動金具を取り付け得ることは勿論である。」

エ 「【0017】図6に本発明の食収納篭に食器を収納する状態の説明図を示してある。つまり、例えば、この食器収納篭をたてて、空間部を利用して食器を上から投入する。この際に、使用する食器は食器の内または外に突起を有するので重ねられた食器は密に接触することは絶対になく、突起部にて軽く接触するのみで、全体として食器と食器はある間隙を有している。 【0018】本発明に使用する材質は金属で構成されている事が多いが、本発明の目的に充分に沿うものであれば合成樹脂やその他、本発明の目的に沿うものであれば、特にその材質については問わない。本発明はその使用目的からして立てたり、横にしたりして使用するので、それに充分耐えて長期間使用できて、破損や曲がり等の生じないものが使用される。」

オ 上記の「食器篭に例えば食器を積み重ねる如く収納されると」(記載事項ア、段落【0002】)、「単に順番に積み重ねるのみで、」(記載事項イ、段落【0012】)、「図6に本発明の食収納篭に食器を収納する状態の説明図を示してある。つまり、例えば、この食器収納篭をたてて、空間部を利用して食器を上から投入する。この際に、・・・重ねられた食器は・・・」(記載事項エ、段落【0017】)等の記載から、「食器は、空間部11を利用して、上から投入され、食器収納篭に順番に積み重ねて収納される」ということができる。

カ 上記の「自動食器洗浄機で洗浄する時は、食器を垂直になる様、食器篭を約90°倒して洗浄する。」(記載事項ア、段落【0001】)、「食器を食器収納篭に対して、垂直にして洗浄する」(記載事項イ、段落【0008】)、「自動食器洗浄機の食器収納篭の移動がコンベアー式、それも所謂、エプロンコンベアー式でなく、移動装置の上部に取り付けられた2本のレール取り付け型においては、前面と後面枠2の中間部の枠部分に食器収納篭がコンベアー駆動金具7を取り付けて、この金具を利用して食器収納篭の移動を円滑に行って、」(記載事項イ、段落【0011】)、「底板が後面部となっているので、」(記載事項ウ、段落【0015】)、「本構造の食器篭においても、必要に応じて、コンベア駆動金具をとりつけ得ることはもちろんである。」(記載事項ウ、段落【0015】)等の記載から、甲第1号証に示された食器収納篭は、「洗浄時に、空間部11が自動食器洗浄機のコンベア進行方向に向けて配置される」ことは明らかである。

キ 甲第1号証の図2、5、6からみて、甲第1号証には「洗浄時に、食器収納篭の上側となる面は、複数個の棒状の横枠3により画定される」ことが示されている。
そして、上記複数個の棒状の横枠3の高さについてみると、図2からは、複数個の棒状の横枠のうち、左右外端の横枠は、他の横枠より若干高くなっているように看取できるが、図5からは、どれも同じ高さであるようにも看取できる。一般に、特許公報の図面は厳密な位置関係を表す性質のものではないことを考慮すると、甲第1号証の「複数個の棒状の横枠3」は、「ほぼ同じ高さ」であると認定できる。

ク 同様に、甲第1号証の図2、5、6からみて、甲第1号証には「洗浄時に、1列の食器は、2本の棒状の横枠上に置かれ、上記2本の棒状の横枠は、置かれた食器の面に略直交するように設けられる」ことが示されている。
そして、複数個の棒状の横枠3により画定される食器収納篭の上側となる面と、2本の棒状の横枠の間には、部材が存在しないことが伺える。
さらに、食器が置かれる上記2本の棒状の横枠は、空間部11が自動食器洗浄機のコンベア進行方向に向けて配置された際に、前面部10と底板12の下側となる辺から高さを有し、上記前面部10と底板12に接合されていることが示されている(なお、【符号の説明】の「11 後面部」は「11 空間部」の誤記と認められる。)。

上記記載事項ア?エ、上記認定事項オ、カ及び図示内容キ、クを総合すると、甲第1号証には、図2、3及び6に記載された実施例に係る発明として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「食器が上から投入され、食器収納篭に順番に積み重ねて収納されるために利用される空間部11と、
食器が垂直になる様に、空間部11が自動食器洗浄機のコンベア進行方向に向けて配置された際に、複数個の棒状の横枠3により画定される食器収納篭の上側となる面と、
洗浄時に、食器が置かれ、置かれた食器の面に略直交するように設けられる2本の棒状の横枠と、
を備えた食器収納篭であって、
上記複数個の棒状の横枠3はほぼ同じ高さであり、
上記複数個の棒状の横枠3により画定される食器収納篭の上側となる面と、2本の棒状の横枠の間には、他の部材が存在せず、
上記2本の棒状の横枠は、空間部11が自動食器洗浄機のコンベア進行方向に向けて配置された際に、前面部10と底板12の下側となる辺から高さを有し、上記前面部10と底板12に接合されている
食器収納篭」

(2)甲第9号証
甲第9号証の第2ページ目は、平成19年3月13日?16日に、東京ビッグサイトにおいて開催された第7回厨房設備機器展において展示したパネルの記載内容であることは、当業者において争いはない。そして、上記甲第9号証の第2ページ目には、図面と共に次の事項が記載されている。

ケ 「1.高い洗浄力を実現
新機構の「離間」洗浄方式は、食器と食器の隙間1ヶ所をつくりながら連続して洗浄する方式。洗浄スプレーを、1枚に集中させて洗うので強力な洗浄力を生み出すと共に、洗浄スペースを最小限に圧縮した今までに無い画期的な洗浄方法です。」(左上欄1?5行目)

コ 「3.省スペース
食器篭は食器1枚分のスペースを開けるだけ。
食器に隙間を持たせて洗う従来の食器篭に比べ大幅な省スペース化を実現しました。」(左下欄1?7行目)

サ 「1.高い洗浄力を実現」に記載された2つの図面には、
食器を垂直方向に重ねて収容した食器篭が食器洗浄機内を進行する食器洗浄機において、食器篭の進行に伴い、食器が順次離間する隙間に、洗浄ノズルから洗浄スプレーが噴射される食器洗浄機が示されている。
そして、図面からみて、洗浄スプレーは、洗浄ノズルから、食器が離間する隙間に集中して、食器の中心を越えるほどの強さで真下に噴射されていることが窺える。

シ 甲第9号証の第2ページ目には、食器を離間させる力が、洗浄ノズルからの洗浄水により生ずることは、明記されていないが、「「離間」洗浄方式は、食器と食器の隙間1ヶ所をつくりながら連続して洗浄する方式。洗浄スプレーを、1枚に集中させて洗うので強力な洗浄力を生み出す」との記載、食器が離間する隙間に、洗浄スプレーが食器の中心を越えて噴射されている図示内容及び一般に強い洗浄スプレーが食器を移動させる力を生じることは技術常識であることからして、当業者であれば、食器を離間させる力は洗浄ノズルからの洗浄水から生じると理解するのが普通である。

上記記載事項ケ、コ、上記認定事項シ及び図示内容サを総合すると、甲第9号証の第2ページ目には、以下の技術例(以下「周知例1」という。)が記載されている。

「食器を垂直方向に重ねて収容した食器篭が食器洗浄機内を進行し、食器を離間させる力を生じさせ、食器が順次離間して隙間を作るように、
洗浄ノズルから洗浄スプレーを、隙間に集中させて噴射する食器洗浄機」

(3)特開平10-137172号公報
平成25年1月8日付け審理事項通知書により周知例として提示した特開平10-137172号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

ス 「【0008】またこの発明の食器の洗浄方法は、上述したような食器篭を用い、その食器収納部に各食器の間に保持部材が介在している状態で複数個の食器を重ねて収納し、この食器篭を食器の内面が進行方向に向く姿勢で洗浄水の噴射ノズルを備えた洗浄装置内を移動させ、先頭の食器から順次洗浄水を当てることにより、洗浄水のエネルギーによって食器を1個ずつ保持部材と共に食器篭の進行方向に順送りに移動させ、この移動に伴って隣接する食器との間に洗浄に必要な間隔を生じさせながら洗浄水による洗浄を順次行うようにしている。」

セ 「【0021】ノズル11は各食器収納部1bごとに1個ずつあるいは複数個ずつ設けられるが、その具体的な配置や噴射方向などは、各食器4の内面と外面に万遍なく洗浄水が当たって洗浄が支障なく行われると共に、1個ずつ進行方向に順送りに移動させる力を食器4に作用させることができるように、食器4の形状や大きさに応じて適切に選定される必要がある。」

ソ 「【0024】保持部材3は移動が容易であると共に、食器収納部1bに食器4をスムーズに収納でき、収納された食器4を確実に保持できることが必要である。図6はこのような条件を具備した保持部材3を例示したものであり、支持棒2にスライド可能に嵌挿するための軸穴3aと、フランジ状の係止部3bを備えている。図6の各図はいずれも支持棒2を上下方向に向けて食器4を収納した時の状態を示しており、洗浄時には図の上側が進行方向に向くように横倒しにされる。」

タ 「【0025】図6の(a)は係止部3bの下面に傾斜した案内面3cを形成し、これに続けて筒状部3dを設けたものであり、食器4を収納する時に保持部材3,3間のピッチと食器4,4間のピッチが多少異なっていても、食器4の周縁4aが筒状部3dまで案内面3cによって案内されるのでスムーズに収納される。また、洗浄時に食器4を移動させる力が作用した場合には、係止部3bが食器4の周縁4aに押されて共に移動する。なお、筒状部3dの下端には係止部3bより小径の円盤状の第2係止部3eを形成してあり、洗浄時に何らかの力が作用して保持部材3だけが移動しようとしても第2係止部3eが食器4の周縁4aに係止するので、保持部材3だけが移動することはない。」

上記記載事項ス?タ及び図示内容を総合すると、特開平10-137172号公報には、以下の技術例(以下「周知例2」という。)が記載されている。

「食器篭の食器収納部に各食器を重ねて収納し、
この食器篭を食器の内面が進行方向に向く姿勢で洗浄水の噴射ノズルを備えた洗浄装置内を移動させ、
食器を1個ずつ保持部材と共に食器篭の進行方向に順送りに移動させる力を食器4に作用させ、この移動に伴って隣接する食器との間に洗浄に必要な間隔を生じさせるように、食器4の形状や大きさに応じて、具体的な配置や噴射方向などが、適切に選定された噴射ノズルから、洗浄水を当てることにより、先頭の食器から順次洗浄を行うようにした
食器洗浄機」

(4)特許第3975220号公報
同様に、平成25年1月8日付け審理事項通知書により周知例として提示した特許第3975220号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

チ 「【請求項8】
複数の食器(40)を起立状態で水平移動自在として、かつ、重ね合わせ状に食器洗浄用籠(10)内に移動余裕代(W)をもって保持させ、 食器洗浄機(50)に、上記食器洗浄用籠(10)を搬入し、
該食器洗浄機(50)内にて該食器洗浄用籠(10)を搬送しつつ、該食器洗浄機(50)内の洗浄ノズル(52)から噴出される噴出洗浄液を該食器洗浄用籠(10)内の該食器(40)に当てて最も端の該食器(40)から順次、上記移動余裕代(W)に対応する距離を移動させ、隣り合う該食器 (40)(40) 間に洗浄用微小間隙(S)を形成しつつ、該食器(40)の洗浄を行うことを特徴とする食器洗浄方法。」

ツ 「【0012】
ここで、食器保持手段14は、図3?図7に於て示すように、複数の食器保持用棒部材2…と、起立状態の食器40の周縁近傍に配設されて食器40を水平移動自在(前後移動自在)にガイドする複数のガイド部3…と、を有している。 ガイド部3…は、食器40の上下左右への移動を規制して食器40を水平移動自在(前後移動自在)にするものである。本実施形態では、このガイド部3…として、左右ガイド部3a,3aと下ガイド部3bと上ガイド部3c,3cが設けられている。そして、これらのうち所定のガイド部(左右ガイド部3a,3aと下ガイド部3b)に、水平方向(前後方向)のスリット部4が設けられている。」

テ 「【0024】
次に、蓋枠9を閉じた後、ロック部11にて枠本体8と蓋枠9とを確実に閉じた状態で固定する。
次に、図10に示すように、食器洗浄用籠10を90度回転して通常載置状態に戻し、複数の食器40…を起立状態で重ね合わせ状とする。これにより、複数の食器40…は、起立状態で水平移動自在として、かつ、重ね合わせ状に、食器洗浄用籠10内に保持される。ここで、食器洗浄用籠10の前部(スリット部4の前部)に、食器40の移動余裕代Wをもつようにする。なお、この状態において、各食器40の食物載置面40cは、食器洗浄用籠10の前側に向くようにしている。」

ト 「【0025】
次に、図11に示すように、コンベア51と洗浄ノズル52とを内部に有する食器洗浄機50に、食器洗浄用籠10を前側から搬入する。 次に、図12及び図13に示すように、食器洗浄機50内のコンベア51にて食器洗浄用籠10を搬送しつつ、食器洗浄機50内の洗浄ノズル52から噴出される噴出洗浄液を、食器洗浄用籠10内の食器40に当てて一方への付勢力を与える(図12の矢印A方向)。
そして、最も前端の食器40から順次、移動余裕代Wに対応する距離を移動させて隣り合う食器40、 40間に洗浄用微小間隙Sを形成しつつ、食器40の洗浄を行う。洗浄用微小間隙Sを形成することにより、噴出洗浄液が、隣り合う食器40、 40間、特に食器40の糸尻40b部分に充分に浸入することができる。
そして、図14に示すように、食器洗浄用籠10内の全ての食器40…の洗浄が終わると、連続して、次の食器洗浄用籠10内の食器40…の洗浄を行っていく。」

上記記載事項チ?ト及び図示内容を総合すると、特許第3975220号公報には、以下の技術例(以下「周知例3」という。)が記載されている。

「複数の食器(40)を、起立状態で重ね合わせ状に食器洗浄用籠(10)内に移動余裕代(W)をもって保持させ、
コンベア51と洗浄ノズル52とを内部に有する食器洗浄機50に、食器洗浄用籠10を前側から搬入し、
食器40に一方への付勢力を与え、移動余裕代Wに対応する距離を移動させて隣り合う食器40、 40間に洗浄用微小間隙Sを形成するように、
食器洗浄機50内の洗浄ノズル52から噴出される噴出洗浄液を、食器洗浄用籠10内の食器40に当てて洗浄を行う
食器洗浄機」

(5)対比
そこで、本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明の「食器収納篭」及び「自動食器洗浄機」は、その機能に照らし、それぞれ本件訂正発明1の「食器カゴ」及び「食器洗浄装置」に相当する。
同様に、引用発明の「食器が、上から投入され、食器収納篭に順番に積み重ねて収納されるために利用される空間部11」は本件訂正発明1の「食器を上から積重ねるように収納するための収納開口」に相当する。
そして、引用発明の「食器が、垂直にしてなる様に、空間部11が自動食器洗浄機のコンベア進行方向に向けて配置された際に、複数個の棒状の横枠3により画定される食器収納篭の上側になる面」と本件訂正発明1の「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」とは、「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、食器カゴの上側となる面」の点で共通する。
また、引用発明の「洗浄時に、食器が置かれ、置かれた食器の面に略直交するように設けられる2本の棒状の横枠」と本件訂正発明1の「食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントよって隙間を作るための載置される食器の開口面に略直交するように設けられる食器載置レール」とは、「食器が置かれ、置かれた食器の開口面に略直交するように設けられる部材」の点で共通する。

そうすると、両者は、
「食器を上から積重ねるように収納するための収納開口と、
収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、食器カゴの上側となる面と、
食器が置かれ、置かれた食器の開口面に略直交するように設けられる部材と、
を備えた食器カゴ」の点で一致し、

ア 「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、食器カゴの上側となる面」が、本件訂正発明1は「コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」であるのに対し、引用発明は「複数個の棒状の横枠3により画定される」面であり、該「複数個の棒状の横枠3により画定される」面が、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口といえるかどうかは不明である点、

イ 「食器が置かれ、置かれた食器の開口面に略直交するように設けられる部材」について
イ-1 本件訂正発明1は「食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントによって隙間を作るための」「食器載置レール」であるのに対し、引用発明は「2本の棒状の横枠」であり、該「2本の棒状の横枠」が、食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に食器洗浄用水流によって生じる開モーメントよって隙間を作るためのものであるかどうかは不明である点、
イ-2 本件訂正発明1は「樹脂で覆われ」ているのに対し、引用発明は、樹脂で覆われているかどうかは不明である点、
イ-3 本件訂正発明1は「食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ」ているのに対し、引用発明は、複数個の棒状の横枠3により画定される食器収納篭の上側となる面と、2本の棒状の横枠の間には、他の部材が存在しない点、
イ-4 本件訂正発明1は「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際にコンベアに接する面であるコンベア面との間に隙間をあけて配置された下枠に設けられ」ているのに対し、引用発明は、前面部10と底板12の下側となる辺から高さを有し、上記前面部10と底板12に接合されている点

で相違する。

(6)相違点についての判断

ア 本件訂正発明1について
請求項1に記載の「浴びせる」は、その文言自体が曖昧であるので、明細書及び図面の記載を参酌して、「注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせる」こと及び「注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」を次のa及びbのように解釈する。
同様に、「食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントよって隙間を作るための」「食器載置レール」を次のcのように解釈する。
さらに、「食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ」を次のdのように解釈する。

a 「浴びせる」ことに関し、本件明細書には、次の事項が記載されている。
i)「【0024】
(水流用開口:具体的構成の一例)
次に、水流用開口の具体的構成の一例について説明する。
図2は、本実施例の食器カゴの概要図であるが、図1と異なり、食器を洗浄するために食器洗浄装置のコンベア上に載置した時の状態、即ち、水流用開口を上に向けた状態の食器カゴを、食器洗浄装置(一部)の位置とともに示した側面図である。
【0025】
本図の「食器カゴ」0200は、食器洗浄装置の「コンベア」0231上に載置され、矢印A方向に向かって進行している状態である。食器カゴ内には「食器」0220が収納され、収納された食器の積層側面に対して食器洗浄装置の「注水口」0232から水流を浴びせられている状態である。
【0026】
その際、本図に示すように、食器は多少の余裕を持って重ね合わせられた状態で食器カゴに収納される。このようにすることで、食器の開口面はコンベア面に対して厳密には垂直にはならず、垂直方向から若干傾斜して収納された状態となる。そして、注水部の真下を通過する時に、食器が若干開いた状態となり、この開いた隙間に注水部からの食器洗浄用水流が水流用開口を通じて浴びせられる。
【0027】
かかる構造の食器洗浄装置については、本願発明と同一の発明者が発明し、本願出願人と同一の出願人が出願(特願2007‐085969)を行ったところであり、本願発明に係る食器カゴは、この食器洗浄装置に用いる場合に最もその効果を発揮しうるものである。この食器洗浄装置の特徴、構成については当該出願にかかる明細書等に詳細に説明したところであるが、一言で言えば、上に述べたように多少の余裕を持って重ね合わせられた食器と食器の間に開モーメントを加えて隙間を作るとともに、食器を一枚ずつ回転して移動させ、この順次形成される隙間に対しほぼ真上に設けられた注水部から強い水流を浴びせて食器に残った残飯を洗い落とすように構成されたものである。
【0028】
その際、注水部から浴びせる水流は、その水圧ではなく水量が重要であり、滝のように大量の水を食器の積層側面に対して浴びせることで、食器の隙間が大量の浄水用水流で満たされ、食器にこびりついた固形化した米飯類等を洗い落とすことが可能となる。そこで、かかる特徴、構成を有する食器洗浄装置に適した本願発明に係る食器カゴにおいては、水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されていることが望ましく、さらに好適には、大量の水を食器の積層側面に対して浴びせることができるよう、水流用開口はできるだけ大きな開口面積を有していることが望ましい。
【0029】
ここで「水を食器の積層側面に対して浴びせる」とは、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、重ね合わせられた食器と食器の間に開モーメントを加えて作った隙間に対し水を浴びせるという意味である。 」

上記本件明細書の記載事項i)及び図2、図3(a)、(b)の図示内容からみて、
「注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせる」ことは、重ねられて収納された食器に開モーメントを加えて隙間を作るように、注水部から大量の洗浄水を流すことと解される。

b 「水流用開口」に関し、本件明細書には、次の事項が記載されている。
ii)「【0033】
(水流用開口:網状部材で覆われた開口でない構成例)
また、大量の水を食器の積層側面に対して浴びせることができるよう、水流用開口はできるだけ大きな開口面積を有していることが望ましいとの観点から、本実施例の食器カゴの水流用開口は、網状部材(開口部分が細かい網目状になっていて開口径が極めて小さい部材で覆われたものをいう。)で覆われた開口でないことが望ましい。かかる「網状部材で覆われた開口でない」一例は、図1で示したように、枠及び各面央部に設けられた桟を線状部材で形成したものである。
【0034】
図4は、本実施例の食器カゴの概要図であって、図1に示したのと同様の食器カゴ0400の水流用開口0402を上に向けた状態を斜視図で示したものである。従って、本図の食器カゴも、図1に示した食器カゴと同様、枠及び各面央部に設けられた桟を線状部材で形成し、かつ桟を設置する数及び位置を食器0420が食器カゴから飛び出さないようにするために最低限必要な数と位置とした好適な例である。また、本図では、収納開口0401をかかる食器規制部を構成する桟0411が塞いでいる状態が示されているが、本図の例も図1と同様、収納開口と水流用開口が一つの桟を共有している場合の例、即ち、収納開口または水流用開口に択一的に配置可能な食器規制部を有する食器カゴの例であり、図1では水流用開口を塞いでいた桟を、両開口が接する辺を構成する枠0403に備えられている蝶番0405を中心に270度回転させて収納開口を塞ぐ状態にしたものである(かかる食器規制部の構成の詳細については後述する)。そこで、図4の状態では、水流用開口は、何ら食器規制部を構成する桟で塞がれることはなく、開口全面が開放された状態となっている。このようにすることで、注水部からの洗浄用水流を食器カゴに収納された食器の積層側面に対してより大量に浴びせることが可能となる。」

上記本件明細書の記載事項ii)から、「注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」は、できるだけ大きな開口面積を有していることが望ましいが、開口全面が開放されたものに限定されず、開口を線状部材で形成した桟で塞いでいるものも含むと理解できる。
そうすると、上記本件明細書の記載と上記aの解釈と合わせて、「注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」は、「注水部から食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせ」たときに、水流を大きく妨げることなく、食器に開モーメントを加えることが可能となる開口であると解される。

c 「食器載置レール」に関し、本件明細書には次の事項が記載されている。
iii)「【0036】
(食器載置レール)
また、本実施例の食器カゴは、食器洗浄時における底面に、食器を載置するためのレール状の部材である食器載置レールを有していてもよい。この食器載置レールの目的は、食器洗浄時において横向きの食器を安定的に支持するとともに、開モーメントを加えて食器と食器の間に隙間を作る工程が円滑に実現されるよう、食器の微動を容易にすることにある。かかる構成についても、別の実施例として後述する。」
iv)「【0065】
(具体的構成の他の一例:食器載置レール)
また、本実施例の食器カゴの流出用開口は、食器を載置するためのレール状の部材である食器載置レールを設けることにより形成されるようにしてもよい。この食器載置レールの目的は、既述のように、食器洗浄時において横向きの食器を安定的に支持するとともに、開モーメントを加えて食器と食器の間に隙間を作る工程が円滑に実現されるよう、食器の微動を容易にすることにある。しかし、食器洗浄時における底面に食器載置レールを設けた場合には、これにより食器を安定的に支持することができる結果、底面の他の部分はすべて開口状態とすることが可能となる。そこで、かかる開口を通じて、洗浄水が食器に大量に浴びせられて食器を洗浄した際の残飯を洗浄水とともに食器カゴ内からスムーズに排出することによって、残菜が引掛かり食器カゴに溜まる要因を少なくすることができる。つまり、この場合、食器載置レールを設けることで、上に述べた本来の目的のほか、食器洗浄時における底面に流出用開口を設ける構成も合わせて実現することが可能となる。
【0066】
図7は、食器載置レールを有する食器カゴの形状の一例を示す図であって、食器洗浄時における食器カゴの底面図で示したものである。本図に示すように、食器カゴ0700に設けられる食器載置レール0740は、食器0720の開口面0721に略直交する方向、換言すれば食器洗浄装置のコンベア進行方向(矢印A方向で示す)に略平行な方向に渡される。また、本図に示すように、食器載置レールの本数は、好適には、一列の食器につき2本である。これは、一列の食器を支持するのに必要かつ十分な数である。
【0067】
さらに、食器載置レールの表面を樹脂で覆ってもよい。これにより、レール上での食器の滑りをよくすることによって、食器の洗浄時に各食器が微動しやすくなり、洗浄効果をよくすることができる。」

上記本件明細書の記載iii)、iv)及び図7、8の図示内容からみて、「食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントよって隙間を作るための」「食器載置レール」は、食器に開モーメントが加えられたときに、食器の微動を容易にするものであると解される。
そして、「食器載置レール」の実施例として、食器の開口面に略直交する方向に一列の食器について2本の線状部材からなるレールが示されている。
また、食器載置レールの「表面が樹脂で覆われ]ることの技術的意義は、レール上での食器の滑りをよくすることによって、食器の洗浄時に各食器が微動しやすくすることであると認められる。

d 「食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ」た「食器載置レール」に関し、被請求人は、平成25年5月9日付け訂正請求書により、「6面上の部材のほかには食器載置レールのみが備えられている食器カゴの例が記載されているといえる」(5ページ21?22行 )
「以上のことから、論理必然的に食器載置レールが食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられた部材であることになる」(5ページ23?24行)
と主張する。これらの主張を参酌し、「食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ」た「食器載置レール」は、食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられた部材である食器載置レールと解釈する。

イ 引用発明の「食器カゴの上側となる面」について
引用発明の「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、食器カゴの上側となる面」は、「複数個の棒状の横枠3により画定される」面であり、棒状の横枠3以外に水流を妨げる要素が存在しないことから、上記面は、注水部から食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせたならば、水流を大きく妨げることなく、食器に開モーメントを加えることが可能となる開口ということができる。

ウ 引用発明の「食器の開口面に略直交するように設けられる部材」について
引用発明の「食器が置かれ、置かれた食器の開口面に略直交するように設けられる部材」は、「2本の棒状の横枠」であるが、甲第1号証の「食器収納篭Aは、使用するお椀、お皿、トレイ等の食器の外径に略沿った形状であるので、この食器収納篭の上部開口部8から容易に食器を篭内に収納し又取り外し得る。」(段落【0012】)、「収納された食器は違いに軽く接触するのみにて」(同段落、なお、「違いに」は「互いに」の誤記と認められる。)との記載からみて、食器収納篭に収納された食器は、上記2本の棒状の横枠上で、洗浄時に完全に固定されるものでないことは明らかである。
そうすると、引用発明の上記2本の棒状の横枠は、食器の姿勢の変化を許容するものであり、食器収納篭に置かれた食器に、注水部から食器洗浄用水流を浴びせたならば、食器の微動を容易にするものであるということができる。

エ 周知例について
a 周知例1と本件訂正発明1を対比すると、周知例1の「食器を離間させる力を生じさせ」ること及び「順次離間して隙間を作る」ことは、その機能に照らして、それぞれ本件訂正発明1の「食器に開モーメントを加え」ること及び「隙間を作る」ことに相当する。そして、周知例1は、「食器篭が食器洗浄機内を進行」するものであるので、何らかのコンベアを備えていることは自明である。また、流す洗浄水は、食器に開モーメントを加えて隙間を作るような大量であるということができる。
したがって、周知例1は、「重ねられて収納された食器に開モーメントを加えて隙間を作るように、コンベア進行経路に設けられている注水部から大量の洗浄水を流す食器洗浄機」ということができる。

b 周知例2と本件訂正発明1を対比すると、周知例2の「噴射ノズル」及び「間隔を生じさせ」ることは、その機能に照らして、それぞれ本件訂正発明1の「注水部」及び「隙間を作る」ことに相当する。
また、周知例2は、「食器篭を食器の内面が進行方向に向く姿勢で洗浄水の噴射ノズルを備えた洗浄装置内を移動」させるものであるので、コンベア進行経路に注水部が設けられたものである。
そして、周知例2は、移動が容易であると共に、食器をスムーズに収納でき、食器を確実に保持できるために「保持部材」を設けたものであるが、洗浄水を食器に当てることにより、食器に移動させる力を作用させる点において、食器に開モーメントを加えるものということができる。
さらに、流す洗浄水は、食器に開モーメントを加えて隙間を作るような大量であるということができる。
したがって、周知例2は、「重ねられて収納された食器に開モーメントを加えて隙間を作るように、コンベア進行経路に設けられている注水部から大量の洗浄水を流す食器洗浄機」ということができる。

c 周知例3と本件訂正発明1を対比すると、周知例3の「洗浄用微小間隙Sを形成」すること及び「噴出洗浄液」は、その機能に照らして、本件訂正発明1の「隙間を作る」こと及び「洗浄水」に相当する。
そして、特許第3975220号公報には、食器ガイド部を有する食器保持手段を備えた食器洗浄用籠が開示されている(上記記載事項(3)セ)。上記食器ガイド部は、起立状態の食器を水平移動自在にガイドするものであるが、周知例3は、噴出洗浄液を食器40に当てて一方への付勢力を与える点において、食器に開モーメントを加えるものということができる。
さらに、流す洗浄水は、食器に開モーメントを加えて隙間を作るような大量であるということができる。
したがって、周知例3は、「重ねられて収納された食器に開モーメントを加えて隙間を作るように、コンベア進行経路に設けられている注水部から大量の洗浄水を流す食器洗浄機」ということができる。

上記a、b、cのように、上記周知例1?3には、何れにも「重ねられて収納された食器に開モーメントを加えて隙間を作るように、コンベア進行経路に設けられている注水部から大量の洗浄水を流す食器洗浄機」が示されている。
そして、上記アaに記載した「浴びせる」ことに関する本件訂正発明1の解釈と合わせて、上記周知例1?3に示されるように、「重ねられて収納された食器に開モーメントを加えて隙間を作るように、コンベア進行経路に設けられている注水部から大量の洗浄水を流す食器洗浄機」、すなわち「コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせる」食器洗浄機は、周知である。

オ 相違点アについての判断
食器洗浄機において、浸漬による洗浄手段を採用したもの、水流による洗浄手段を採用したもの又は両者を採用したものは何れも周知である。そして、水流による洗浄手段として、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせる洗浄手段を採用した食器洗浄機も上記エに記載したように周知である。
ところで、甲第1号証には、食器収納篭を水流による洗浄手段で使用するという直接的な記載はないが、浸漬による洗浄手段でのみに使用するとの記載もなく、水流による洗浄手段での使用を除くと限定的に解釈する理由は見あたらない。
よって、引用発明を、水流による洗浄手段を採用する上記周知の食器洗浄機で使用することは、当業者が容易に想到することである。
そして、引用発明の食器カゴ(食器収納篭)に収納された食器に、注水部から洗浄用水流を浴びせたときに、食器カゴの上側となる面(食器収納篭の上側となる面)は、食器に開モーメントを加えることが可能となるものであることは、上記イに記載したとおりである。
したがって、上記アbに記載した「水流用開口」に関する本件訂正発明1の解釈と合わせ、引用発明を上記周知の食器洗浄機で使用することにより、引用発明の「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、食器カゴの上側となる面」を、「コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」とすることは、当業者が容易に想到することである。

カ 相違点イ-1についての判断
上記オで判断したように、引用発明を上記周知の食器洗浄機で使用することは、当業者が容易に想到することである。そして、上記ウで判断したように、引用発明の2本の棒状の横枠は、食器の姿勢の変化を許容するものであるので、食器を載置するものということができ、食器カゴ(食器収納篭)に収納された食器に、注水部から洗浄用水流を浴びせたときに、食器の微動を容易にするものである。
したがって、上記アのcに記載した「食器載置レール」に関する本件訂正発明1の解釈と合わせ、引用発明を上記周知の食器洗浄機で使用することにより、引用発明の「食器が置かれ、置かれた食器の開口面に略直交するように設けられる部材」を「食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントよって隙間を作るための」「食器載置レール」とすることは、当業者が容易に想到することである。

キ 相違点イ-2についての判断
機械一般において、摺動性を必要とする部材に、表面を滑らかに仕上げる又は摺動性の高い樹脂をコーティングする等の加工を施すことは、周知・慣用手段であり、引用発明の2本の棒状の横枠は、食器の微動を容易にするものであるので、摺動性を必要とする部材である。そして、食器カゴの線状材の表面に、樹脂コーティングすること自体は周知であり(例えば、請求人が平成25年6月24日付け審判事件弁駁書で提示する特開2003-126006号公報、登録実用新案第3077228号公報及び特開平10-14854号公報等参照)、他に阻害要因も見あたらないので、引用発明の2本の棒状の横枠の表面を樹脂で覆うことは、当業者が直ちに想到することである。

ク 相違点イ-3についての判断
引用発明の「食器収納篭の上側となる面と2本の棒状の横枠の間には、他の部材が存在しない」ことは、2本の棒状の横枠は、食器収納篭の上側となる面の下、はじめて設けられた部材となるので、本件訂正発明1の「食器載置レール」が「食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ」た部材であることと相違していない。

なお、上記1.(1)で、引用発明の「食器収納篭の上側となる面」を、ほぼ同じ高さである複数個の棒状の横枠により画定される面と認定したが、仮に、引用発明の「食器収納篭の上側となる面」を、複数個の棒状の横枠のうち、他の横枠より若干高くなっている左右外端の横枠により画定される面と認定したとすると(以下、仮に認定した引用発明を「仮の引用発明」という。)、他の横枠は、上記食器収納篭の上側となる面より若干低い位置になるので、本願訂正発明1の食器載置レールが、「食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ」ているのに対し、仮の引用発明は、食器収納篭の上側となる面と2本の棒状の横枠の間に、上記他の横枠が存在する点が、新たな相違点となる。

上記新たな相違点について検討すると、上記アのbで検討したように、本件訂正発明1の「注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口」は、「注水部から食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせ」たときに、水流を大きく妨げることなく、食器に開モーメントを加えることが可能となる開口であり、そうである限りは、開口全面が開放されたものに限定されず、開口を同じ高さの線状部材で塞いでいるものも本件訂正発明1に含まれる。
そして、仮の引用発明は、上記イでの引用発明の検討と同様に、注水部から食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせたならば、水流を大きく妨げることなく、食器に開モーメントを加えることが可能なものである点で本件訂正発明1と共通する。

そうすると、上記新たな相違点は、本願訂正発明1に包含される「複数個の棒状の横枠を全て同じ高さ」とする構成に対して、仮の引用発明が 複数個の棒状の横枠のうち、左右外端の横枠が他の横枠より若干高くなっていることの違いと言い換えることができる。
しかし、複数個の棒状の横枠を全て同じ高さとすることが、仮の引用発明に対して、新たな効果を生じるものとは認められないので、複数個の棒状の横枠を全て同じ高さとするか、複数個の棒状の横枠のうち、左右外端の横枠を他の横枠より若干高くするかは、設計上の微差といえる程度のことであり、両者は実質的に一致している。
したがって、上記の仮の認定によっても、本件訂正発明1の進歩性を肯定することはできない。

ケ 相違点イ-4についての判断
甲第1号証の「自動食器洗浄機の食器収納篭の移動がコンベアー式、それも所謂、エプロンコンベアー式でなく、移動装置の上部に取り付けられた2本のレール取付型においては、前面と後面枠2の中間部の枠部分に食器収納篭がコンベアー駆動金具7を取り付けて、この金具を利用して食器収納篭の移動を円滑に行って、この食器収納篭Aの取り扱いの便宜を図る」(段落【0011】)及び「本構造の食器篭においても、必要に応じて、コンベア駆動金具を取り付け得ることは勿論である」(段落【0015】)の記載から、食器収納篭の移動において、移動装置の上部に取り付けられた2本のレール取付型のコンベアを使用する場合は、コンベアー駆動金具7を取り付け、エプロンコンベアー式を使用する場合は、コンベアー駆動金具7が必要無いことが理解できる。すなわち、移動のために、エプロンコンベアー式と2本のレール取り付け型の2種類のコンベアー式を採用することが可能であることが示されているということができる。どちらを採用するかは、当業者が適宜決定しうることである。
そして、エプロンコンベアー式を採用した場合に、引用発明の「前面部10と底板12の下側となる辺」は、コンベアに接する面上となることは明らかであるので、引用発明の「2本の棒状の横枠」が「前面部10と底板12の下側となる辺から高さを有し」ていることは、コンベア面と隙間をあけて配置されることということができるので、その点において両者は一致している。

さらに、本件訂正発明1が、食器載置レールが、コンベア面に隙間をあけて配置された下枠に設けられているのに対し、引用発明の「2本の棒状の横枠」が、「前面部10と底板12」に接合されている点で相違するが、食器カゴ全体を線状部材で形成した場合に、食器載置レール(2本の棒状の横枠)をコンベア面との間に隙間をあけるように配置するためには、食器載置レール(2本の棒状の横枠)をコンベア面との間に隙間をあけて配置するための線状部材が必要であって、その線状部材を下枠として形成することは設計上の事項にすぎず、上記相違点は、食器カゴ全体を、線状部材により形成するか、前面部10及び底板12を用いて形成するかの違いから生じるものということができる。そして、食器洗浄機用の食器カゴ全体を線状部材で形成することは、例示するまでもなく周知である。
また、本件明細書の「また、図8に示す例のように、下枠0813と食器洗浄装置のコンベア面0831の間に隙間が設けられていることが望ましい。これは、食器を下枠に設けられた2本の食器載置レールによって支持した場合、下枠より下にはみ出す部分が生じるところ、下枠とコンベア面の間に隙間がないと、食器が食器載置レールから浮き上がってしまい、これをうまく支持することができないおそれがあるが、かかる隙間を設けることで、2本の食器載置レールによって安定的に食器を支持することができるからである。また、食器洗浄時に、食器を洗浄した後の残飯を洗浄水とともに食器カゴからスムーズに排出させるためでもある。」(段落【0069】)の記載から、本件訂正発明1は、食器載置レールをコンベア面との間に隙間をあけて設けることに、技術的意味があるものであり、食器載置レール(2本の棒状の横枠)が、下枠に設けられていることに、特段の技術的意味があるものでもない。
したがって、引用発明において、2本の棒状の横枠を、「前面部10と底板12」に接合することに代え、コンベア面に隙間をあけて配置された下枠に設けることは、当業者が容易に想到することである。

コ まとめ
本件訂正発明1が、引用発明及び周知技術以上の格別な作用・効果を奏するものとは認められない。
さらに、洗浄用水流を浴びせる洗浄は周知であるので、食器洗浄機の食器カゴの用途として新たな用途を提供したということはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証及び上記周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものである。

2.本件訂正発明2の無効理由イについて
本件訂正発明2は、本件訂正発明1に、「水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されている」ことを限定したものである。
しかし、周知例1を示す甲第9号証の第2ページ目の「1.高い洗浄力を実現」に記載された上側の図面、周知例2を示す特開平10-137172号公報の図4、周知例3を示す特許第3975220号公報の図12?15には、それぞれ周知例1?3に関し、垂直に収納した食器に対して、上部より水流を浴びせることが示されている。これは、本件訂正発明2の「水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されている」ことに相当する。
よって、引用発明を上記周知の食器洗浄機で使用することにより、水流用開口を収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置することは、当業者が容易に想到することである。
したがって、本件訂正発明2は、甲第1号証及び上記周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものである。

3.本件訂正発明4の無効理由イについて
本件訂正発明1又は2を引用した本件訂正発明4は、本件訂正発明1又は2に
「収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、
コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、
水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有する」
ことを限定するものである。
しかし、上記周知の食器洗浄機は、「重ねられて収納された食器に隙間」に、「注水部から大量の洗浄水を流す」ものであるので、「一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って」水流を流すものであることは明らかである。また、引用発明の食器収納篭の洗浄時に下側となる面は、「食器が置かれ」る「2本の棒状の横枠」であるので、引用発明を上記周知の食器洗浄機で使用したときに、水流が直接的に食器篭外に流出する流出用開口となることは明らかである。
よって、引用発明を上記周知の食器洗浄機で使用することにより、本件訂正発明4による限定事項とすることは当業者が容易に想到することである。
したがって、本件訂正発明4は、甲第1号証及び上記周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものである。

4.無効理由アについて
上記第6の1.(5)のとおり、本件訂正発明1と甲第1号証に記載されたものとは、相違点が存在し、また、本件訂正発明2、4は、本件訂正発明1を引用したものであるので、本件訂正発明1、2又4は、甲第1号証に記載されたものとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2及び4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食器カゴ
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食器洗浄装置用の食器カゴに関する。
【背景技術】
【0002】
学校施設、医療施設、介護施設などへ給食を提供する給食センターや、学内食堂、社員食堂など、一度に大量の食事を供給する必要がある施設では、食事を供給した後の大量の食器を効率的に回収して洗浄するため、食器カゴ内に収納した食器を食器カゴごと食器洗浄装置に載せ、食器カゴ内の食器に直接注水を行うことにより食器を洗浄するという方法が従来から広く用いられている。
【0003】
その際、洗浄作業を適切に行って所要の洗浄効果を得るためには、食器を食器カゴ内に所定の向き、間隔で整然と収納する必要があり、このように整然と収納されていない場合には、洗浄前に食器を洗浄に適した向き、間隔に収納し直す必要がある。この煩雑さを避けるため、食器カゴの形状を工夫するなどにより、食器を整然と収納することが容易で、食器を収納しなおす必要をなくして、より効率的に食器の洗浄を行えるようにした食器カゴも知られている。例えば、特許文献1では、食器を仕切るための仕切り部材を取り付けることで食器1個ごとの収納部を複数設け、かつ仕切り部材の形状を食器の形状に合わせて湾曲させることなどによって、低学年の児童などでも食器を整然と収納することができ、そのままの状態で食器洗浄装置に載せて食器カゴごと洗浄することができるようにした給食用食器籠が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10‐014854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、同文献に記載の食器カゴの場合、食器を収納する際に、はじめから食器を洗浄するときの状態である食器の開口面(食器に対して食物が盛られる側の面)を横に向けた状態で収納するようにしているため、収納時に食器から落下する残り汁や油などの残飯を受けるための汁受けパンを必要としていた。このため、この汁受けパンは、食器の外周に沿って移動可能に設けられ、食器洗浄の際には邪魔にならない食器の側方の位置に回避されることになるが、食器洗浄時においては、食器が汁受けパンの陰となって洗浄水が全面に行き届かないことから、食器洗浄後も汁受けパン内に残飯が残ったままとなり、別途汁受けパンの洗浄を要していた。即ち、食器洗浄に際して食器を洗浄する作業以外の作業も必要となり煩雑であった。
【0005】
そこで、本願発明の解決すべき課題は、食器を整然と収納することが容易で、食器を収納し直す必要をなくして、より効率的に食器の洗浄を行えるようにした食器カゴであって、しかも、収納時に残飯が落下することがないようにして、食器を洗浄する作業だけで食器洗浄作業を完結させることが可能な食器カゴを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本願発明は、食器の回収時には食器の開口面を上にして食器カゴに収納することができるようにして残飯が落下しないようにするとともに、食器を収納し直すことなく、食器の開口面を横向きにして洗浄を行うことができる食器カゴを提供する。即ち、第一の発明は、食器を上から積重ねるように収納するための収納開口と、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口とを備えた食器カゴを提供する。
【0007】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されている食器カゴを提供する。
【0008】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、収納開口または、水流用開口に択一的に配置可能な食器規制部を有する食器カゴを提供する。
【0009】
また、第四の発明は、第一から第三のいずれか一の発明を基礎として、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有する食器カゴを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、食器を整然と収納することが容易で、食器を収納し直す必要をなくして、より効率的に食器の洗浄を行えるようにした食器カゴであって、しかも、収納時に残飯が落下することがないようにして、食器を洗浄する作業だけで食器洗浄作業を完結させることが可能な食器カゴを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本願発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項2などに関し、実施例2は主に請求項3などに関し、実施例3は主に請求項1、請求項4などに関する。なお、本願発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0012】
<概要>
本実施例の食器カゴは、食器の回収時には食器の開口面を上にして食器カゴに収納することができるようにして残飯が落下しないようにするとともに、食器の洗浄時には食器を収納し直すことなく、食器の開口面を横向きにして洗浄を行うことができる食器カゴである。このため、本実施例の食器カゴは、食器を上から積重ねるように収納するための開口と、食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための開口とを備える。また、食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための開口が収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されているものも本実施例の食器カゴに含まれる。
【0013】
<構成>
(全般)
図1は、本実施例の食器カゴの概要図である。本図は、食器を収納する時の状態、即ち、食器を上から積重ねるように収納するための開口を上に向けた状態の食器カゴを斜視図で示したものである。
【0014】
本図に示す食器カゴ0100は、6個の面(一部図に現れない面がある)を有する略直方体であり、この略直方体の形状を構成するための枠及び各面の央部に設けられた桟を線状部材(例えばステンレス製の金属線)で形成したものである。本図の食器カゴは、1つの面として、食器0120を上から積重ねるように収納するための収納開口0101(本図では上面として現れている)を備える。また、本図の食器カゴは、他の一つの面として、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向(その典型的一例を矢印A方向で示す)に向けて配置した際にコンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口0102(本図では右側の側面として現れている)を備える。
【0015】
本願発明の食器カゴの収納対象となる「食器」には、例えば、皿、椀、小鉢、どんぶり、コップ、トレイ等が含まれる。また、ここでいう「食器」は、文字通り食物を盛り付けて食卓に供するための器に限られず、調理に用いる器具類であっても、食器カゴ内に積重ねて収納し、その積層側面に対して水流を浴びせることで洗浄効果が得られるものを広く含む概念であり、例えば、まな板、中華なべ、フライパン、焼肉用の鉄板などもここでいう「食器」に該当する。
【0016】
食器カゴの材料としては、例えばステンレスなどの金属が用いられるが、食器を収納した状態での搬送及び洗浄時の注水に耐え得るものであれば、その材料は特に限定されない。
【0017】
また、食器カゴの形状もこれを問わない。図1では略直方体のものを示しているが、食器の形状などに応じて略円柱、(略直方体以外の)略多角柱などであってもよく、要するに、食器を整然と収納することが容易で、かつ食器洗浄装置に載置可能な形状であればよく、特に限定はされない。また、図1の食器カゴは、既述のように、略直方体の形状を、枠及び各面の央部に設けられた桟を線状部材(例えばステンレス製の金属線)で形成したものであり、かかる形状の食器カゴ(特に水流用開口をかかる形状に形成したもの)は、好適な一例である。かかる形状が好適である理由は、第一に、水流用開口を通じて大量の食器洗浄用水流を収納された食器に対して浴びせることができるため(このように浴びせることが望ましい理由については後述する)であり、第二に、食器を収納した状態での搬送を容易に行えるように食器カゴ全体の重量を小さくできるためである。なお、図1において水流用開口の央部に設けられている2本の桟0111は、食器が食器カゴから飛び出さないように規制するための食器規制部であり、かかる桟を設置する数及び位置は、好適には、食器が食器カゴから飛び出さないようにするために最低限必要な数と位置である。図1における桟の設置数及び位置もかかる好適な一例である。
【0018】
なお、図1では、収納時の状態を示しているため、収納に利用されている収納開口には食器が食器カゴから飛び出さないようにするための食器規制部は設けられていない。しかし、後述のように食器洗浄時には、収納開口は食器カゴの側面に位置することになるので、その際には食器が食器カゴから飛び出さないようにするための食器規制部が設けられることが望ましい。そこで、このための構成として、収納開口には、収納時には当該開口を全面的に開放し、食器洗浄時には当該開口から食器が飛び出さないように規制することができる開閉自在な桟である食器規制部を設けることが考えられる。この収納開口に設けられる食器規制部は、例えば、収納時には食器が水流用開口を通じて食器カゴから飛び出さないように規制するための食器規制部として水流用開口に設けられる桟を、収納開口と水流用開口とが共有する一つの桟として設けるようにしてもよい。図1の例もかかる両開口が共有する桟である食器規制部を有する食器カゴの例である。かかる構成の詳細については別の実施例にて後述する。
【0019】
(収納開口)
「収納開口」は、既述のように、食器を上から積重ねるように収納するための開口である。食器を上から積重ねるように収納できるようにしたのは、使用された食器の収納時に食器から残飯が落下することがないようにするためである。「上から積重ねるように収納する」態様としては、図1に示したように、上面に位置する収納開口から食器の開口面を上にした状態で一枚ずつもしくは複数枚を重ねて一度に収納する態様が典型的に考えられる。
【0020】
(水流用開口:全般)
「水流用開口」は、これも既述のように、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための開口である。
【0021】
本願発明の食器カゴが用いられる食器洗浄装置の概要については後述するが、上に言う食器洗浄装置の「コンベア」とは、その上に載置された食器カゴを移送するための手段(例えば無限軌道にて回転するベルトなど)である。また、「コンベア進行方向」は、好適にはコンベアの前進方向、換言すればコンベア上の食器カゴが進行していく先の方向を言う。これは、食器の洗浄を好適に行うため、通例、食器の開口面が前進方向に向くようにしてコンベアを進行させるためである。
【0022】
ただし、本願発明の食器カゴが用いられる食器洗浄装置は、食器の洗浄を行う際に、食器の開口面が前進方向とは逆の方向に向くようにしてコンベアを進行させるものも排除しない。従って、「コンベア進行方向」には、コンベアの後進方向、換言すればコンベア上の食器カゴが進行していく方向とは逆の方向も含まれる。即ち、水流用開口が、収納開口面を食器洗浄装置のコンベアの後進方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための開口であるものも、本願発明の技術的範囲に属する。
【0023】
また、食器洗浄装置の「注水部」は、コンベア上を移送中の食器カゴ内の食器に食器洗浄用水流を浴びせるための手段をいう。
【0024】
(水流用開口:具体的構成の一例)
次に、水流用開口の具体的構成の一例について説明する。
図2は、本実施例の食器カゴの概要図であるが、図1と異なり、食器を洗浄するために食器洗浄装置のコンベア上に載置した時の状態、即ち、水流用開口を上に向けた状態の食器カゴを、食器洗浄装置(一部)の位置とともに示した側面図である。
【0025】
本図の「食器カゴ」0200は、食器洗浄装置の「コンベア」0231上に載置され、矢印A方向に向かって進行している状態である。食器カゴ内には「食器」0220が収納され、収納された食器の積層側面に対して食器洗浄装置の「注水口」0232から水流を浴びせられている状態である。
【0026】
その際、本図に示すように、食器は多少の余裕を持って重ね合わせられた状態で食器カゴに収納される。このようにすることで、食器の開口面はコンベア面に対して厳密には垂直にはならず、垂直方向から若干傾斜して収納された状態となる。そして、注水部の真下を通過する時に、食器が若干開いた状態となり、この開いた隙間に注水部からの食器洗浄用水流が水流用開口を通じて浴びせられる。
【0027】
かかる構造の食器洗浄装置については、本願発明と同一の発明者が発明し、本願出願人と同一の出願人が出願(特願2007‐085969)を行ったところであり、本願発明に係る食器カゴは、この食器洗浄装置に用いる場合に最もその効果を発揮しうるものである。この食器洗浄装置の特徴、構成については当該出願にかかる明細書等に詳細に説明したところであるが、一言で言えば、上に述べたように多少の余裕を持って重ね合わせられた食器と食器の間に開モーメントを加えて隙間を作るとともに、食器を一枚ずつ回転して移動させ、この順次形成される隙間に対しほぼ真上に設けられた注水部から強い水流を浴びせて食器に残った残飯を洗い落とすように構成されたものである。
【0028】
その際、注水部から浴びせる水流は、その水圧ではなく水量が重要であり、滝のように大量の水を食器の積層側面に対して浴びせることで、食器の隙間が大量の浄水用水流で満たされ、食器にこびりついた固形化した米飯類等を洗い落とすことが可能となる。そこで、かかる特徴、構成を有する食器洗浄装置に適した本願発明に係る食器カゴにおいては、水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されていることが望ましく、さらに好適には、大量の水を食器の積層側面に対して浴びせることができるよう、水流用開口はできるだけ大きな開口面積を有していることが望ましい。
【0029】
ここで「水を食器の積層側面に対して浴びせる」とは、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、重ね合わせられた食器と食器の間に開モーメントを加えて作った隙間に対し水を浴びせるという意味である。
【0030】
図3は、水を食器の積層側面に対して浴びせることの具体的意味を説明するための図であり、食器カゴ内に収納されて食器洗浄装置のコンベア上を進行中の食器を注水部の方向から見た平面図である(作図の便宜上食器洗浄装置のコンベア、注水部及び注水される水の図示を省略した)。このうち、図3(a)及び(b)は本実施例にいう「水を食器の積層側面に対して浴びせている状態」を示す。
【0031】
まず、図3(a)では、食器カゴ0300は、収納開口面0301(食器カゴ内の食器0320の開口面が向いている面として現れている)を前進方向に向けて矢印A方向に進行中であり、従って、食器に対する注水は、左端の食器から右端の食器へと矢印B方向に向かって順次食器と食器の間に作られた隙間に対して行われていくことになる(図は、左から4枚目の食器と5枚目の食器の間の隙間に注水がなされている状態を示す)。
【0032】
また、図3(b)では、食器カゴ0300は、収納開口面0301を後進方向に向けて矢印A方向に進行中であり、従ってやはり、食器に対する注水は、左端の食器から右端の食器へと矢印B方向に向かって順次食器と食器の間に作られた隙間に対して行われていくことになる(図は、左から4枚目の食器と5枚目の食器の間の隙間に注水がなされている状態を示す)。
【0033】
(水流用開口:網状部材で覆われた開口でない構成例)
また、大量の水を食器の積層側面に対して浴びせることができるよう、水流用開口はできるだけ大きな開口面積を有していることが望ましいとの観点から、本実施例の食器カゴの水流用開口は、網状部材(開口部分が細かい網目状になっていて開口径が極めて小さい部材で覆われたものをいう。)で覆われた開口でないことが望ましい。かかる「網状部材で覆われた開口でない」一例は、図1で示したように、枠及び各面央部に設けられた桟を線状部材で形成したものである。
【0034】
図4は、本実施例の食器カゴの概要図であって、図1に示したのと同様の食器カゴ0400の水流用開口0402を上に向けた状態を斜視図で示したものである。従って、本図の食器カゴも、図1に示した食器カゴと同様、枠及び各面央部に設けられた桟を線状部材で形成し、かつ桟を設置する数及び位置を食器0420が食器カゴから飛び出さないようにするために最低限必要な数と位置とした好適な例である。また、本図では、収納開口0401をかかる食器規制部を構成する桟0411が塞いでいる状態が示されているが、本図の例も図1と同様、収納開口と水流用開口が一つの桟を共有している場合の例、即ち、収納開口または水流用開口に択一的に配置可能な食器規制部を有する食器カゴの例であり、図1では水流用開口を塞いでいた桟を、両開口が接する辺を構成する枠0403に備えられている蝶番0405を中心に270度回転させて収納開口を塞ぐ状態にしたものである(かかる食器規制部の構成の詳細については後述する)。そこで、図4の状態では、水流用開口は、何ら食器規制部を構成する桟で塞がれることはなく、開口全面が開放された状態となっている。このようにすることで、注水部からの洗浄用水流を食器カゴに収納された食器の積層側面に対してより大量に浴びせることが可能となる。
【0035】
(その他)
(流出用開口)
以上のほか、本実施例の食器カゴは、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有していてもよい。かかる構成についても、別の実施例として後述する。
【0036】
(食器載置レール)
また、本実施例の食器カゴは、食器洗浄時における底面に、食器を載置するためのレール状の部材である食器載置レールを有していてもよい。この食器載置レールの目的は、食器洗浄時において横向きの食器を安定的に支持するとともに、開モーメントを加えて食器と食器の間に隙間を作る工程が円滑に実現されるよう、食器の微動を容易にすることにある。かかる構成についても、別の実施例として後述する。
【0037】
(食器保持板)
また、本実施例の食器カゴは、収納時における底面(収納時において収納開口が上面に位置する典型的な構成にあっては、収納開口の対面)に、食器を安定的に保持するための食器保持板を有していてもよい。
【0038】
図5は、収納開口面を上にした状態における食器カゴの一例を示す底面図である。本図の例では、食器カゴ0500の収納時における底面に、食器0520を保持するための食器保持板0504(斜線で示す)が備えられている。
【0039】
この食器保持板は、食器収納時に食器を安定的に積重ねることができるようにするとともに、食器の搬送を安定的にできるようにするためのものである。既述のように、本実施例の食器カゴは、(1)水流用開口を通じて大量の食器洗浄用水流を収納された食器に対して浴びせることができるようにするとともに、(2)食器を収納した状態での搬送を容易に行えるように食器カゴ全体の重量を小さくするため、好適には、枠及び各面の央部に設けられた桟が線状部材(例えばステンレス製の金属線)で形成されるが、半面、軽量化のみを追求した場合には、食器カゴの強度が不足し、食器収納時に食器を安定的に積重ねたり、食器の搬送を安定的に行ったりする上で困難を生じるおそれがあることも否めない。そこで、上述の(2)の目的を害しないように配意しつつ、食器収納時に食器を安定的に積重ねたり、食器の搬送を安定的に行ったりできるようにするため、このように食器カゴの底面に、食器保持用板を設けることで、食器カゴの強度を補強し、かかるおそれを解消することとしたものである。従って、板の重量は、食器カゴ全体の重量が重くなりすぎない程度のものであることが望ましく、また、板の幅は、食器収納時に食器を安定的に積重ねたり、食器の搬送を安定的に行ったりする上で必要十分なものであることが望ましい。好適な一例としては、底面中央に底面幅の1/3程度の幅で渡されたステンレス製もしくは樹脂製の薄板が挙げられる。図5の例もこのような好適な例である。
【0040】
<効果>
本実施例の発明により、食器を整然と収納することが容易で、食器を収納し直す必要をなくして、より効率的に食器の洗浄を行えるようにした食器カゴであって、しかも、収納時に残飯が落下することがないようにして、食器洗浄作業によってすべての食器の汚れを除去することが可能な食器カゴを提供することが可能となる。
【実施例2】
【0041】
<概要>
本実施例の食器カゴは、実施例1の食器カゴと基本的に共通する。ただし、本実施例の食器カゴは、収納開口または水流用開口に択一的に配置可能な食器規制部を有する点に特徴がある。
【0042】
<構成>
(全般)
本実施例の食器カゴは、収納開口または水流用開口に択一的に配置可能な食器規制部を有する。「食器規制部」を配置する目的は、収納開口または水流用開口から食器が飛び出さないようにすることにある。前出の図1、図4に示した食器カゴも食器規制部を有する例である。以下、この図1、図4を用いて、食器規制部の構成の一例について説明する。
【0043】
図1、図4では、食器規制部の一例として、収納時には収納開口を開放しつつ水流用開口を塞ぐとともに、食器洗浄時には収納開口を塞ぎつつ水流用開口を開放する、開閉自在な一つの桟を両開口が共有する例を示した。一方の開口を開放しつつ、他方の開口を塞ぐ理由は、収納時には、収納開口から食器を食器カゴ内に収納するため収納開口を全面的に開放する必要がある一方、側面に位置する水流用開口から食器が飛び出さないようにするために水流用開口を塞ぐ必要があるためである。また、食器洗浄時には、注水部からの大量の水を食器に浴びせるために、水流用開口を全面的に開放することが望ましい一方、側面に位置する収納開口から食器が飛び出したり食器が収納開口の下辺を形成する枠に乗り上げたりしないようにようするために収納開口を塞ぐ必要があるためである。
【0044】
また、この収納時に水流用開口を塞ぎ、食器洗浄時に収納開口を塞ぐための食器規制部を両開口が共有するようにした理由は、双方のどちらの用途に用いるときでも両開口を同時に塞ぐ必要がないためであるとともに、食器カゴの構成を少ない材料で簡易に実現し、その重量を軽減して運搬が容易になるようにするためである。
【0045】
(具体的構成の一例)
具体的には、この食器規制部は、例えば図1に示したような食器が2列に収納される食器カゴの場合には、互いに略平行に設けられた2本の線状部材(例えば金属線など)からなる桟で構成される(なお、図1の例と異なり、食器が1列に収納される食器カゴの場合には、1本の桟でもよい)。この桟の位置は、当該桟と略平行に位置する収納開口または水流用開口の枠との間隔(図1に示した収納時の例では、2本の桟0111と水流用開口の2本の枠0106、0107との間隔)が、食器が飛び出さないような間隔となるように決められる。このようにすることで、この2本の桟で構成される食器規制部が、食器カゴ内の食器が当該開口から飛び出さないように規制する役割を果たすことになる。
【0046】
また、この食器規制部は、食器カゴ0100の収納開口0101と水流用開口0102が接する辺を形成する枠0103に備えられた蝶番0105を中心に回転自在に形成されており、食器洗浄時には、図1の状態から矢印B方向に270度回転させることにより、食器洗浄時に側面に位置することになる収納開口0101を規制するように構成される。
【0047】
図4には、食器洗浄時において、このようにして回転させられた結果食器規制部を構成する2本の桟0411が、食器カゴ0400の収納開口0401の央部において当該開口を縦断する形で塞ぐように形成され、かかる構成によって食器規制部が食器カゴ内の食器が当該開口から飛び出さないように規制する役割を果たしている状態が示されている。
【0048】
このように、収納開口と水流用開口のうち、利用されていない開口(即ち、収納時に於ける水流用開口、食器洗浄時における収納開口)から食器が飛び出さないように規制するための、両開口が共有する桟などである食器規制部を設けることで、(1)収納時には収納開口を開放し、食器の収納を可能にするとともに、水流用開口から食器が飛び出さないようにし、(2)食器洗浄時には水流用開口を開放し、注水部からの大量の水を食器に浴びせることを可能にするとともに、収納開口から食器が飛び出さないようにするという構成を、少ない材料で簡易に実現し、食器カゴの重量を軽減して運搬が容易になるようにすることが可能となる。
【0049】
なお、以上では、食器規制部が線状部材(桟)で構成される好適な例を示した。かかる構成の食器規制部が好適である理由は、既に述べた水流用開口を通じて大量の食器洗浄用水流を収納された食器に対して浴びせることができるようにするとともに食器を収納した状態での搬送を容易に行えるように食器カゴ全体の重量を小さくすることができるようにするという本願発明の食器カゴの構成目的の一環として、食器規制部もかかる目的に資するように構成されていることが望ましいためである。しかし、食器規制部の構成目的自体は、食器カゴの利用していない開口から食器が飛び出さないように規制することにあるから、本願発明における食器規制部は、かかる線状部材で構成されるものに限られない。例えば、網状部材や板状部材で構成されるものであってもよい。
【0050】
(その他の構成例:食器規制部に取り付けられる鍵)
なお、図1に示すように、食器規制部には、食器規制部をより確実に収納開口または水流用開口のうち利用されていない開口に固定するための鍵が取り付けられていてもよい。
【0051】
図6は、かかる鍵が取り付けられた食器規制部の形状の一例を示す図である。このうち図6(a)は、図1に示したものと同様の例を示したものである。図6(a)の食器規制部は、収納開口と水流用開口が接する辺を形成する枠0603に備えられた蝶番0605に取り付けられた互いに略平行な2本の桟0611のほか、鍵を取り付けるための、当該2本の桟0611を水平に結ぶように設けられた2本の桟0612、0613を有する。
【0052】
また、図6(a)の例では、食器規制部に取り付けられている鍵は、中空の円筒状部材0614と錘0615とから構成されている(これも図1に示した中空の円筒状部材0114と錘0115と同様の例を示したものである)。このうち、錘は、その上端部が円筒状部材を貫通しない寸法を有しており(本図の例は、円筒状部材の内径よりも大きな直径を有する略球状の部材である)、また下端部も円筒状部材を貫通しない寸法を有するとともに先端が二股に分かれた形状をしている(本図の例は、円筒状部材の内径よりも大きな幅を有するU字形の部材である)。このため、錘は、円筒状部材をすり抜けることがない範囲内で移動可能に保持される。
【0053】
そこで、図1に示すように、食器規制部を構成する2本の桟0111を蝶番0105を中心に回転させて水流用開口を塞ぐ位置に持ってきた場合に、錘が自身の重量によって自然に下がり、2本の桟0111の先端で水流用開口を閉止している水平の桟0113(以下「閉止部材」という。)を水流用開口の枠0104ともに挟み込む。
【0054】
なお、錘の先端部が側面に位置する開口の下辺をなす枠を形成する線状部材まで達した場合、当該線状部材が床面ないし食器洗浄装置のコンベア面に直接接する構造であると、錘の先端部が当該線状部材をうまく挟むことができないおそれがある。そこで、図示は省略するが、これを回避するために閉止部材0113や水流用開口の枠0104とコンベア面との間に隙間を設けるようにしてもよい。
【0055】
また、図6(b)に示すように、収納開口と水流用開口が接する辺を形成する枠0603に備えられている蝶番0605部分を桟0611の長さ方向に沿った長孔形状とするとともに、鍵0616の先端部分が二股に分かれたものを枠0613の例えば二箇所に溶接などで固着させることによって、収納時には、食器規制部を一旦桟0611の長さ方向となる上方(図中矢印A方向で示す)へスライドさせてから、矢印B方向に270度回転させ、図1に示したように水流用開口を塞ぐ位置に持ってきた場合に、食器規制部が自身の重量によって自然に下へスライドして鍵の二股に分かれた先端部分が枠0104を挟み込むようにしてもよい。
【0056】
なお、以上はあくまで一例であり、鍵の形状や構造は、要するに食器規制部をより確実に収納開口または水流用開口のうち利用されていない開口に固定する機能が発揮できるようなものであればよい。例えば、錘が下がったときに、閉止部材や水流用開口の枠より外側にくるようなものであってもよい。
【0057】
<効果>
本実施例の発明により、特に、収納時には収納開口を開放し、食器の収納を可能にするとともに、側面に位置している水流用開口から食器が飛び出さないようにし、食器洗浄時には水流用開口を開放し、注水部からの大量の水を食器に浴びせることを可能にするとともに、側面に位置している収納開口から食器が飛び出さないようにするという構成を少ない材料で簡易に実現することが可能となる。
【実施例3】
【0058】
<概要>
本実施例の食器カゴは、基本的に実施例1又は2の食器カゴと共通する。ただし、本実施例の食器カゴは、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有する点に特徴を有する。平たく言えば、本実施例の食器カゴは、食器洗浄時に洗浄水が大量に浴びせられ食器を洗浄した際に、残飯などが食器カゴ内に引掛かり滞留しないようにするため、これら残飯が大量の洗浄水とともに食器カゴの底面(この場合の「底面」は、食器洗浄時における底面である)などからスムーズに排出されるよう底面などにも開口を設けたものである。
【0059】
<構成>
(全般)
本実施例の食器カゴは、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有する。
【0060】
「コンベア進行経路」、「注水部」の意味は、実施例1で説明したところと同じである。また、「食器表面」とは、食器の開口面をいい、「食器裏面」とは、その裏側の面、即ち食器の底面をいう。
【0061】
既述のように、本願発明の食器カゴを最も効果的に使用することが可能な食器洗浄装置は、多少の余裕を持って重ね合わせられた食器と食器の間に開モーメントを加えて隙間を作り、この隙間に対しほぼ真上に設けられた注水部から強い水流を浴びせて食器に残った残飯を洗い落とすように構成されたものである。この食器と食器の間に開モーメントを加えて作った隙間が、本実施例にいう「食器表面ならびに食器裏面により形成された間隙」に相当する。その際、注水部からの水流は、滝のように大量に食器の積層側面に対して浴びせられるので、一の食器の食器表面ならびにこの食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙には、大量の浄水用水流が満たされ、食器にこびりついた固形化した米飯類等を洗い落とすことが可能となる。しかし、この残飯を含んだ洗浄水が食器カゴから排出されるとき食器カゴにキャベツの千切りなどの残菜が引掛かってしまうと、せっかく洗浄された食器が使用後の洗浄水によって再び汚れてしまうことになりかねない。このため、「流出用開口」を設けて、これら残飯が大量の洗浄水とともに食器カゴからスムーズに排出されるようにしたのが、本実施例の食器カゴである。
【0062】
従って、流出用開口は、食器洗浄時における底面に設けられることが望ましいほか、食器洗浄時における側面の全部または一部にも設けられてもよい。ただし、側面にも流出用開口を設ける場合には、一の食器の食器表面ならびにこの食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に大量の浄水用水流が満たされることが確保されるようにする必要がある。従って、最も好適な一例としては、流出用開口が食器洗浄時における底面にのみ設けられたものを挙げることができる。
【0063】
なお、同様の観点から、これら大量の使用後の洗浄水が食器カゴから一旦排出されても再び食器カゴ内に還流することがないように、本実施例の食器カゴが用いられる食器洗浄装置のコンベアは、チェーンコンベアのようにコンベアの隙間から水を排出できるような構造のものであることが望ましい。
【0064】
(具体的構成の一例)
食器洗浄時における底面に設けられる流出用開口の具体的な構成の一例としては、実施例1で各面について述べたのと同様の、枠及び面の央部に食器が食器カゴから飛び出さないようにするために最低限必要な数及び位置で設けられた桟を線状部材(例えばステンレス製の金属線)で形成したものが挙げられる。このような構成とすることで、洗浄水が大量に浴びせられ食器を洗浄した際に、残飯を洗浄水とともに食器カゴ内からスムーズに排出することができるとともに、食器を収納した状態での搬送を容易に行えるように食器カゴ全体の重量を小さくすることも可能となる。
【0065】
(具体的構成の他の一例:食器載置レール)
また、本実施例の食器カゴの流出用開口は、食器を載置するためのレール状の部材である食器載置レールを設けることにより形成されるようにしてもよい。この食器載置レールの目的は、既述のように、食器洗浄時において横向きの食器を安定的に支持するとともに、開モーメントを加えて食器と食器の間に隙間を作る工程が円滑に実現されるよう、食器の微動を容易にすることにある。しかし、食器洗浄時における底面に食器載置レールを設けた場合には、これにより食器を安定的に支持することができる結果、底面の他の部分はすべて開口状態とすることが可能となる。そこで、かかる開口を通じて、洗浄水が食器に大量に浴びせられて食器を洗浄した際の残飯を洗浄水とともに食器カゴ内からスムーズに排出することによって、残菜が引掛かり食器カゴに溜まる要因を少なくすることができる。つまり、この場合、食器載置レールを設けることで、上に述べた本来の目的のほか、食器洗浄時における底面に流出用開口を設ける構成も合わせて実現することが可能となる。
【0066】
図7は、食器載置レールを有する食器カゴの形状の一例を示す図であって、食器洗浄時における食器カゴの底面図で示したものである。本図に示すように、食器カゴ0700に設けられる食器載置レール0740は、食器0720の開口面0721に略直交する方向、換言すれば食器洗浄装置のコンベア進行方向(矢印A方向で示す)に略平行な方向に渡される。また、本図に示すように、食器載置レールの本数は、好適には、一列の食器につき2本である。これは、一列の食器を支持するのに必要かつ十分な数である。
【0067】
さらに、食器載置レールの表面を樹脂で覆ってもよい。これにより、レール上での食器の滑りをよくすることによって、食器の洗浄時に各食器が微動しやすくなり、洗浄効果をよくすることができる。
【0068】
図8は、食器載置レールが食器を支持する状態をコンベア進行方向から見た図である。本図に示すように、一列の食器0820が下枠0813(ここではコンベア進行方向を向いている面を形成する枠のうち下側に位置する枠をいう)に設けられた2本の食器載置レール0840によって支持されている。
【0069】
また、図8に示す例のように、下枠0813と食器洗浄装置のコンベア面0831の間に隙間が設けられていることが望ましい。これは、食器を下枠に設けられた2本の食器載置レールによって支持した場合、下枠より下にはみ出す部分が生じるところ、下枠とコンベア面の間に隙間がないと、食器が食器載置レールから浮き上がってしまい、これをうまく支持することができないおそれがあるが、かかる隙間を設けることで、2本の食器載置レールによって安定的に食器を支持することができるからである。また、食器洗浄時に、食器を洗浄した後の残飯を洗浄水とともに食器カゴからスムーズに排出させるためでもある。なお、このコンベア面との間に隙間が形成されるように設けられる下枠は、収納開口については、食器規制部が設けられる場合に錘の先端部が閉止部材と枠とをうまく挟むことができるようにするために隙間が設けられる場合には、この隙間を形成するための枠と共通のものであってもよい。
【0070】
<効果>
本実施例の発明により、特に、注水部から食器に大量に浴びせられ、食器を洗浄して残飯などを含んだ洗浄水が食器カゴ内に滞留しないようにするため、これら大量の使用後の洗浄水が食器カゴの底面などからスムーズに排出されるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】
実施例1の食器カゴの概要図
【図2】
実施例1の食器カゴの概要図
【図3】
水を食器の積層側面に対して浴びせることの具体的意味を説明するための図
【図4】
実施例1の食器カゴの概要図
【図5】
収納開口面を上にした状態における食器カゴの一例を示す底面図
【図6】
鍵が取り付けられた食器規制部の形状の一例を示す図
【図7】
食器載置レールを有する食器カゴの形状の一例を示す図
【図8】
食器載置レールが食器を支持する状態をコンベア進行方向から見た図
【符号の説明】
【0072】
0100 食器カゴ
0101 収納開口
0102 水流用開口
0103 食器カゴの収納開口と水流用開口が接する辺を形成する枠
0104 食器カゴの水流用開口のうち収納開口と接する辺とは反対側の辺を形成する枠
0105 蝶番
0106 食器規制部を構成する桟と平行に位置する水流用開口の枠
0107 食器規制部を構成する桟と平行に位置する水流用開口の枠
0111 食器規制部を構成する桟
0112 食器規制部を構成する桟を水平に結ぶように設けられた桟
0113 食器規制部を構成する桟を水平に結ぶように設けられた桟
0114 鍵を構成する中空の円筒状部材
0115 鍵を構成する錘
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を上から積重ねるように収納するための収納開口と、
収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流を収納された食器に浴びせるための水流用開口と、
食器を載置するとともに、積み重ねて収納された食器と食器の間に前記食器洗浄用水流によって生じる開モーメントによって隙間を作るための載置される食器の開口面に略直交するように設けられ、表面が樹脂で覆われ、食器下側を支えるべく水流用開口下はじめて設けられ、収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際にコンベアに接する面であるコンベア面との間に隙間をあけて配置された下枠に設けられた食器載置レールと、
を備えた食器カゴ。
【請求項2】
水流用開口は、収納された食器の積層側面に対して水流を浴びせられるように配置されている請求項1に記載の食器カゴ。
【請求項3】
収納開口または、水流用開口に択一的に配置可能な食器規制部を有する請求項1又は2に記載の食器カゴ。
【請求項4】
収納開口面を食器洗浄装置のコンベア進行方向に向けて配置した際に、コンベア進行経路に設けられている注水部からの食器洗浄用水流であって、水流用開口を介して食器の積層側面に対して浴びせられ、一の食器の食器表面ならびに前記一の食器に隣接する一の食器の食器裏面により形成された間隙に沿って流れた水流を直接的に食器カゴ外に流出させるための流出用開口をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載の食器カゴ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-07-25 
結審通知日 2013-07-30 
審決日 2013-08-21 
出願番号 特願2007-259907(P2007-259907)
審決分類 P 1 123・ 121- ZAA (A47L)
P 1 123・ 113- ZAA (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 謙一  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 山崎 勝司
森川 元嗣
登録日 2012-02-10 
登録番号 特許第4919510号(P4919510)
発明の名称 食器カゴ  
代理人 工藤 一郎  
代理人 角谷 浩  
代理人 板谷 康夫  
代理人 工藤 一郎  
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