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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1281853
審判番号 不服2012-9320  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-21 
確定日 2013-11-21 
事件の表示 特願2006- 50354「通信システム、ソフトウェア更新方法、通信装置、管理サーバ装置、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 6日出願公開、特開2007-226740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成18年2月27日の出願であって,平成20年9月2日付けで審査請求がなされ,平成23年11月24日付けで拒絶理由通知(同年11月29日発送)がなされ,平成24年1月30日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,平成24年2月13日付けで拒絶査定(同年2月21日謄本送達)がなされたものである。

これに対して,本件審判請求は,「原査定を取り消す。本願は,特許をすべきものである,との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成24年5月21日付けで審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

そして,平成24年6月8日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,平成25年2月14日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年2月19日発送)がなされ,同年4月15日付けで回答書の提出があったものである。


第2.平成24年5月21日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年5月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正

平成24年5月21日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,本件補正前に,

「 【請求項1】
ソフトウェア記憶手段に記憶されるソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置と,前記ソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信可能な管理サーバ装置とを備えた通信システムであって,
前記通信装置内での前記ソフトウェアの動作情報に基づいて前記ソフトウェアの中で更新が必要なソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段と,
前記判定手段により更新が必要であると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新を行う更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記判定手段は,
前記動作情報に加えて,前記ソフトウェアに対する版数情報と,前記更新用ソフトウェアに対する版数情報とに基づいて更新が必要なソフトウェアを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記更新手段は,
前記通信装置に設けられ,前記判定手段により更新が必要であると判定されて前記管理サーバ装置から送信された前記更新用ソフトウェアを受信するダウンロード手段と,
前記通信装置に設けられ,前記ダウンロード手段が受信した前記更新用ソフトウェアに対応するソフトウェアを前記更新用ソフトウェアに書き換える書換手段と,
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記更新手段は,
前記通信装置に設けられ,前記判定手段により更新が必要と判定されたソフトウェアが存在する場合に前記ソフトウェアの更新が必要であることを通知するための通知手段を備え,
前記ダウンロード手段は,
前記通知手段が通知した後に,前記通信装置に設けられる操作手段に対するユーザの操作により前記操作手段からダウンロード可の指示の入力を受けたときに,前記管理サーバ装置から,前記更新用ソフトウェアを受信することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記更新手段は,
前記ソフトウェアの更新が行われた場合,更新が行われたソフトウェアに対応する動作情報を初期化する動作情報初期化手段
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項6】
前記動作情報検出手段は,
前記通信装置内での前記ソフトウェアの動作履歴に関する情報を動作情報として検出し,検出した前記動作情報を動作情報記憶手段に記録し,
前記判定手段は,
前記動作情報記憶手段に記憶される前記動作情報に基づいて更新が必要な前記ソフトウェアを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記判定手段は,
前記動作情報記憶手段に記憶される前記動作情報が示す前記動作履歴に関する情報が所定条件に合致する場合に更新が必要な前記ソフトウェアであるとして判定することを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記動作履歴とは,前記ソフトウェアの動作有無,または動作回数,または動作頻度,または動作累積時間であることを特徴とする請求項6または7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記更新手段は,
前記判定手段により更新が必要であると判定された前記ソフトウェアが複数存在する場合,前記動作情報に応じた優先度で前記複数のソフトウェアのそれぞれに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記通信装置に前記複数のソフトウェアの更新を行わせることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項10】
通信装置に用いられるソフトウェアを管理サーバ装置から送信される更新用ソフトウェアに基づき更新するソフトウェア更新方法であって,
前記通信装置内での前記ソフトウェアの動作情報を検出し,
検出した前記動作情報に基づいて更新が必要なソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定し,
更新が必要であると判定された前記ソフトウェアに対応する前記管理サーバ装置から送信される前記更新用ソフトウェアを用いて前記通信装置に当該ソフトウェアの更新を行わせることを特徴とするソフトウェア更新方法。
【請求項11】
管理サーバ装置から前記更新用ソフトウェアを受信して内部に記憶するソフトウェアを更新する通信装置であって,
前記ソフトウェアの動作情報を検出する動作情報検出手段と,
前記動作情報検出手段が検出する前記動作情報を前記管理サーバ装置に送信する送信手段と,
前記動作情報に基づいて更新が必要であると前記管理サーバ装置が判定したソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアのみを前記管理サーバ装置から受信する受信手段と,
前記受信手段が受信した前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェアの更新を行うソフトウェア更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項12】
通信装置にて各種機能を動作させるソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信する管理サーバ装置であって,
前記通信装置から前記ソフトウェアの動作情報を受信する受信手段と,
前記受信手段が受信した前記動作情報に基づいて前記ソフトウェアの中で更新が必要なソフトウェアを判定する判定手段と,
前記通信装置からの要求を受けて,前記判定手段により更新が必要であると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを前記通信装置に送信する送信手段と,
を備えたことを特徴とする管理サーバ装置。
【請求項13】
更新用ソフトウェアを送信する管理サーバ装置から前記更新用ソフトウェアを受信して内部に記憶するソフトウェアを更新する通信装置の制御コンピュータに,
前記ソフトウェアの動作情報を検出するステップと,
検出した前記動作情報を前記管理サーバ装置に送信するステップと,
前記管理サーバ装置により前記動作情報に基づいて更新が必要であると前記管理サーバ装置が判定したソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアのみを前記管理サーバ装置から受信するステップと,
受信した前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェアの更新を行うステップと,
を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
通信装置にて各種機能を動作させるソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信する管理サーバ装置の制御コンピュータに,
前記通信装置から前記ソフトウェアの動作情報を受信するステップと,
受信した前記動作情報に基づいて前記ソフトウェアの中で更新が必要なソフトウェアを判定するステップと,
前記更新用ソフトウェアを選択するステップと,
前記通信装置からの要求を受けて,更新が必要であると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを前記通信装置に送信するステップと,
を実行させるためのプログラム。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
とあったものを,

「 【請求項1】
ソフトウェア記憶手段に記憶される複数の各ソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置と,前記ソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信可能な管理サーバ装置とを備えた通信システムであって,
前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中で実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段と,
前記判定手段により実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新を行う更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記判定手段は,
前記動作情報に加えて,前記ソフトウェアに対する版数情報と,前記更新用ソフトウェアに対する版数情報とに基づいて更新が必要なソフトウェアを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記更新手段は,
前記通信装置に設けられ,前記判定手段により更新が必要であると判定されて前記管理サーバ装置から送信された前記更新用ソフトウェアを受信するダウンロード手段と,
前記通信装置に設けられ,前記ダウンロード手段が受信した前記更新用ソフトウェアに対応するソフトウェアを前記更新用ソフトウェアに書き換える書換手段と,
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記更新手段は,
前記通信装置に設けられ,前記判定手段により更新が必要と判定されたソフトウェアが存在する場合に前記ソフトウェアの更新が必要であることを通知するための通知手段を備え,
前記ダウンロード手段は,
前記通知手段が通知した後に,前記通信装置に設けられる操作手段に対するユーザの操作により前記操作手段からダウンロード可の指示の入力を受けたときに,前記管理サーバ装置から,前記更新用ソフトウェアを受信することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記更新手段は,
前記ソフトウェアの更新が行われた場合,更新が行われたソフトウェアに対応する動作情報を初期化する動作情報初期化手段
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項6】
前記動作情報検出手段は,
前記通信装置内での前記ソフトウェアの動作履歴に関する情報を動作情報として検出し,検出した前記動作情報を動作情報記憶手段に記録し,
前記判定手段は,
前記動作情報記憶手段に記憶される前記動作情報に基づいて更新が必要な前記ソフトウェアを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記判定手段は,
前記動作情報記憶手段に記憶される前記動作情報が示す前記動作履歴に関する情報が所定条件に合致する場合に更新が必要な前記ソフトウェアであるとして判定することを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記動作履歴とは,前記ソフトウェアの動作有無,または動作回数,または動作頻度,または動作累積時間であることを特徴とする請求項6または7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記更新手段は,
前記判定手段により更新が必要であると判定された前記ソフトウェアが複数存在する場合,前記動作情報に応じた優先度で前記複数のソフトウェアのそれぞれに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記通信装置に前記複数のソフトウェアの更新を行わせることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項10】
通信装置に用いられる複数のソフトウェアを管理サーバ装置から送信される更新用ソフトウェアに基づき更新するソフトウェア更新方法であって,
前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報を検出し,
検出した前記動作情報に基づいて,実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定し,
実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェアに対応する前記管理サーバ装置から送信される前記更新用ソフトウェアを用いて前記通信装置に当該ソフトウェアの更新を行わせることを特徴とするソフトウェア更新方法。
【請求項11】
管理サーバ装置から前記更新用ソフトウェアを受信して内部に記憶するソフトウェアを更新する通信装置であって,
複数の前記ソフトウェアの動作情報を検出する動作情報検出手段と,
前記動作情報検出手段が検出する前記動作情報を前記管理サーバ装置に送信する送信手段と,
前記動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中から更新が必要であると前記管理サーバ装置が判定したソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアのみを前記管理サーバ装置から受信する受信手段と,
前記受信手段が受信した前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェアの更新を行うソフトウェア更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項12】
通信装置にて各種機能それぞれを動作させる各ソフトウェアに対応する複数の更新用ソフトウェアを送信する管理サーバ装置であって,
前記通信装置から複数の前記ソフトウェアの動作情報を受信する受信手段と,
前記受信手段が受信した前記動作情報に基づいて複数の前記ソフトウェアの中で実際に更新を行う必要があるソフトウェアを判定する判定手段と,
前記通信装置からの要求を受けて,前記判定手段により複数の前記ソフトウェアの中から,実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを前記通信装置に送信する送信手段と,
を備えたことを特徴とする管理サーバ装置。
【請求項13】
更新用ソフトウェアを送信する管理サーバ装置から前記更新用ソフトウェアを受信して内部に記憶するソフトウェアを更新する通信装置の制御コンピュータに,
複数の前記ソフトウェアの動作情報を検出するステップと,
検出した前記動作情報を前記管理サーバ装置に送信するステップと,
前記管理サーバ装置により前記動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中から実際に更新を行う必要があると前記管理サーバ装置が判定したソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアのみを前記管理サーバ装置から受信するステップと,
受信した前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェアの更新を行うステップと,
を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
通信装置にて各種機能を動作させる複数のソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信する管理サーバ装置の制御コンピュータに,
前記通信装置から前記ソフトウェアの動作情報を受信するステップと,
受信した前記動作情報に基づいて複数の前記ソフトウェアの中で,実際に更新を行う必要があるソフトウェアを判定するステップと,
前記更新用ソフトウェアを選択するステップと,
前記通信装置からの要求を受けて,複数の前記ソフトウェアの中から,更新が必要であると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを前記通信装置に送信するステップと,
を実行させるためのプログラム。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正することを含むものである。

そして,本件補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ソフトウェア記憶手段に記憶されるソフトウェア」を「ソフトウェア記憶手段に記憶される複数の各ソフトウェア」に限定し,補正前の請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「通信装置に用いられるソフトウェア」を「通信装置に用いられる複数のソフトウェア」に限定し,補正前の請求項11,13に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記ソフトウェアの動作情報を検出する」を「複数の前記ソフトウェアの動作情報を検出する」に限定し,補正前の請求項12に記載した発明を特定するために必要な事項である「通信装置にて各種機能を動作させるソフトウェア」を「通信装置にて各種機能それぞれを動作させる各ソフトウェア」に限定し,補正前の請求項12に記載した発明を特定するために必要な事項である「対応する更新用ソフトウェア」を「対応する複数の更新用ソフトウェア」に限定し,補正前の請求項14に記載した発明を特定するために必要な事項である「通信装置にて各種機能を動作させるソフトウェア」を「通信装置にて各種機能を動作させる複数のソフトウェア」に限定し,補正前の請求項1,10,12,14に記載した発明を特定するために必要な事項である「更新が必要なソフトウェア」を「実際に更新を行う必要があるソフトウェア」に限定し,補正前の請求項11,13に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記動作情報に基づいて更新が必要であると前記管理サーバ装置が判定したソフトウェア」を「前記動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中から更新が必要であると前記管理サーバ装置が判定したソフトウェア」に限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを,以下に検討する。

2.独立特許要件

本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許法第29条2項に規定する要件を満たしているかについて以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記「1.」において,補正後の請求項1として引用した,次のものである。

「ソフトウェア記憶手段に記憶される複数の各ソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置と,前記ソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信可能な管理サーバ装置とを備えた通信システムであって,
前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中で実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段と,
前記判定手段により実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新を行う更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信システム。」

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定
本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された下記引用文献には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,当審で参考までに付与したものである。)

<引用文献>
特開2000-148454号公報(平成12年5月30日出願公開)

A「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,通信端末装置および該通信端末装置に接続されたセンター装置に係り,特に通信端末装置のプログラムをセンター装置のプログラムにより更新するプログラム更新に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,ファクシミリ装置などの通信端末装置においては,装置を制御するプログラムに不具合がある場合や,新規に機能を追加したい場合,該プログラムを変更することが可能である。例えば,プログラムの変更方法として,センター装置などのある相手先と交信して,相手先に保管されている変更されたプログラムを自端末のメモリにロードするという方法がある。
【0003】このような変更方法に関するものとして,特開平7-143271号公報に記載されたものや特開平10-91406号公報に記載されたものがある。この特開平7-143271号公報に記載されたものは,通信回線を利用してセンター局からプログラムを配信し更新するものである。また,特開平10-91406号公報に記載されたものは,通信回線から配信されたプログラムによって,自端末の制御プログラムが更新された場合に更新情報を通知するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のものにあっては,全てのプログラムについて配信されてしまうため,更新の必要のないプログラムまで配信され,更新作業がされてしまう。そのため,プログラム配信のための無駄な通信や不必要なプログラム更新がなされてしまう。」

B「【0012】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。本発明に係る通信端末装置の構成をファクシミリ装置に適用した例として図1に示す。図1に示すように,ファクシミリ装置は,フラッシュROM1,CPU2,通信制御装置3,モデム4,NCU5,メモリ6,SRAM7,DRAM8,プロッタ9,スキャナ10および時計11を備えている。
【0013】フラッシュROM1は,フラッシュメモリやハードディスク,フロッピー(登録商標)ディスクなどの不揮発のメモリーで,本通信端末装置を制御するためのプログラムを記憶するものである。CPU2は,本通信端末装置を制御するものであり,フラッシュROM1にあるプログラムを実行する。通信制御装置3は,通信を制御する装置である。本装置の制御はフラッシュROM1にプログラムされCPU2で実行されることも可能である。また,この通信制御装置3自体に異なる実行環境(CPUやプログラムなど)が整っている場合もある。モデム4は,通信を行う際にデジタルデータとアナログデータの変換を行う。NCU5は,外部の網(公衆回線や専用線など)との制御を行う。モデム4とNCU5は,たとえばデジタル公衆網の場合は,DSUとなる。また有線だけではなく無線手段をもつ通信端末の場合は,異なる構成となるが詳細な説明は行わない。
【0014】メモリ6は,通信したデータを一旦保管するメモリである。通信端末の電源が切られる可能性がある場合は不揮発性のメモリにする必要があるが,その対策がなされている場合には揮発性の安価なメモリを用いることも可能である。本発明において得られるプログラムデータも本メモリに一旦記憶することがある。SRAM7は,本通信端末の各種パラメータを記憶する不揮発性のメモリである。特に通信端末に付属のオプション,制御用スイッチ,フラグなどの情報,各種通信機能の実行履歴,回数の記憶などがある。これらの情報に基づいてプログラムの更新の可否を判断する。この判断についての例は後述する。また,交信期間の設定を行うとともに,センター装置の相手先識別番号(電話番号)も記憶されている。」

C「【0017】さて,本通信端末装置がプログラムの更新の可否を判断するための一つの例を図2にしたがって説明する。前置きとして,プログラム更新の可否の判断は,通信端末において行われること,センター装置で行われることのどちらでも可能である。通信端末において判断を行うためには,既存のプログラムにその判断用のプログラムも含まれることもある。また,通信の開始は本通信端末装置,センター装置のどちらでもかまわない。
【0018】本通信端末装置は,オプションの接続状況と各種機能の実行回数,各種設定状況を記憶している。またセンター装置においては,最新のプログラムについての適用情報(オプションの接続状況,各種設定状況,機能の使用頻度)を公開する。この適用情報とは,たとえばあるオプションが接続されているときに必要な更新プログラムのときは,オプションの接続状況がオンになっているといった具合である。以下,図2に基づいて説明する。」

D「【0019】先ず,通信手段により通信が開始されると,図2のs1に示すように,プログラム比較手段により最新のプログラムかどうかプログラムのバージョン情報を参照し,比較する。すでに最新の場合は,通信を終了する。バージョン情報は,フラッシュROM1に記憶されているか,もしくはSRAM7に記憶されている。これをセンター側の情報と比較することにより判断する。
【0020】最新のプログラムではない場合は,プログラム変更判断手段により以下の判断を行う。s2では更新の条件があるか判断する。更新の可否判断を行う必要がない場合は,無条件に通信データを受信する。この情報はセンター側によって設定されている。つまり,ファクシミリ装置であれば,スキャナの画情報読取という基本的な制御についての更新ならば,強制的に更新する必要がある。このように強制的に更新したい場合にセンター側で設定される。
【0021】更新の判断を行う必要がある場合は,s3でオプションの状況が一致するかの判断を行う。センター側の設定するオプション情報が,自端末のオプション接続状況に一致するときは,更新する。つまり,ファクシミリ装置の書込み装置であるプロッタにおいて,複数の記録紙が使用できるようにオプションの給紙装置が取りつけられるときに,オプションの給紙装置にしか関係のない更新プログラムであれば,オプション給紙装置を用いていない端末には必要ないと判断できる。
【0022】オプションの状況が一致しない場合は,s4で設定の状況が一致するかの判断を行う。センター側の設定状況が,自端末の設定状況に一致するときは更新する。つまりファクシミリ装置の一機能において,中継送信機能がある。その機能が有効になっているときにしか関係のない更新プログラムであれば,無効になっている端末には必要ないと判断できる。
【0023】設定の状況が一致しない場合は,s5でセンター側の示す機能の使用状況が,本通信端末で使われているか判断する。つまり受信しか使用されない通信端末において送信に関する更新プログラムであれば必要ないと判断できる。使用状況とは,その機能が使用されたらカウントを+1したり,過去1度でも使用されたらオンするフラグで表す。またエラー履歴なども記憶している。
【0024】上記の条件に該当したとき,s6において,通信手段によりプログラムを受信し,プログラム更新手段によりプログラムの更新を行う。プログラムデータの送信をセンター装置に要求すると,センター装置は最新のプログラムを送信するので,そのデータをメモリ6などに記憶する。この通信手段や更新手段に関しては周知であるのでとくに説明はしない。」

E「【0032】さて,本センター装置がプログラムの更新の可否を判断するための例を説明する。前置きとして,可否の判断は,通信端末装置において行われること,センター装置で行われることどちらでも可能である。また,通信の開始はセンター装置,通信端末装置のどちらでもかまわない。通信端末装置はオプションの接続状況と各種機能の実行回数,各種設定状況を記憶している。またセンター装置においては,最新のプログラムについての適用情報(オプションの接続状況,各種設定状況,機能の使用頻度)を各更新プログラムごとに記憶している。この適用情報とは,たとえばあるオプションが接続されているときに必要な更新プログラムのときは,オプションの接続状況がオンになっているといった具合である。
【0033】判断方法に関しては,ほぼ図2において説明したものと同様である。加えて,センター装置の場合,判断プログラムは多様に設定可能であるから,常に同じ判断条件を用いることはなく,プログラムのバージョンごと,機種ごとに区別することは可能である。たとえば,通信端末の各種機能カウンタとエラーカウンタが利用できれば,エラーの発生状況がある基準を越えているときに「更新する」という具合いである。」

F「一実施例の通信端末装置がプログラム更新の可否を判断するためのフローチャート」である図2には,“s5「機能が使われているか?」で「使われている」と判断された場合に,s6「プログラムデータを更新する。」処理を行う態様”が記載されている。

以下に,上記引用文献の記載事項について検討する。

ア.引用文献は,上記Aに「本発明は,通信端末装置および該通信端末装置に接続されたセンター装置に係り,特に通信端末装置のプログラムをセンター装置のプログラムにより更新するプログラム更新に関する。」と記載されているように,「通信端末装置と,センター装置とを備えたことを特徴とする通信システム」を説明する文献であるところ,
当該「通信システム」に関し,上記Aの「通信端末装置においては,装置を制御するプログラムに不具合がある場合や,新規に機能を追加したい場合,該プログラムを変更することが可能である。」との記載,上記Bの「通信端末装置の構成をファクシミリ装置に適用した例として図1に示す。図1に示すように,ファクシミリ装置は,フラッシュROM1,・・・メモリ6,・・・を備えている。 ・・・フラッシュROM1は,・・・本通信端末装置を制御するためのプログラムを記憶するものである。」との記載,上記Dの「プログラムデータの送信をセンター装置に要求すると,センター装置は最新のプログラムを送信するので,」との記載から,引用文献には,
「フラッシュROMに記憶されるプログラムにより各種機能を実行させる通信端末装置と,最新のプログラムを送信可能なセンター装置とを備えた通信システム」が記載されているといえる。

イ.上記「通信システム」に関し,
上記Eの「本センター装置がプログラムの更新の可否を判断するための例を説明する。・・・通信の開始はセンター装置,通信端末装置のどちらでもかまわない。通信端末装置は・・・各種機能の実行回数,・・・を記憶している。・・・判断方法に関しては,ほぼ図2において説明したものと同様である。加えて,センター装置の場合,判断プログラムは多様に設定可能であるから,常に同じ判断条件を用いることはなく,プログラムのバージョンごと,機種ごとに区別することは可能である。たとえば,通信端末の各種機能カウンタとエラーカウンタが利用できれば,・・・という具合いである。」との記載,上記Dの「プログラム変更判断手段により以下の判断を行う。・・・s5でセンター側の示す機能の使用状況が,本通信端末で使われているか判断する。・・・使用状況とは,その機能が使用されたらカウントを+1したり,過去1度でも使用されたらオンするフラグで表す。」との記載から,
上記「通信システム」は,「前記通信端末装置内での前記各種機能の使用状況に基づいて,前記プログラムの更新の可否をセンター装置が判断するプログラム変更判断手段」を備えることがよみとれる。

ウ.上記「通信システム」に関し,
上記Bの「メモリ6は,通信したデータを一旦保管するメモリである。・・・本発明において得られるプログラムデータも本メモリに一旦記憶することがある。」との記載,上記Dの「プログラム変更判断手段により以下の判断を行う。・・・s5でセンター側の示す機能の使用状況が,本通信端末で使われているか判断する。・・・」との記載,上記Fの“s5「機能が使われているか?」で「使われている」と判断された場合に,s6「プログラムデータを更新する。」処理を行う態様”,上記Dの「s6において,通信手段によりプログラムを受信し,プログラム更新手段によりプログラムの更新を行う。プログラムデータの送信をセンター装置に要求すると,センター装置は最新のプログラムを送信するので,そのデータをメモリ6などに記憶する。この通信手段や更新手段に関しては周知であるのでとくに説明はしない。」との記載からすると,
上記「通信システム」は,「前記プログラム変更判断手段により機能が使われていると判定されると,前記最新のプログラムを用いてプログラムの更新を行うプログラム更新手段」を備えることがよみとれる。

以上,ア?ウで指摘した事項から,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

フラッシュROMに記憶されるプログラムにより各種機能を実行させる通信端末装置と,最新のプログラムを送信可能なセンター装置とを備えた通信システムであって,
前記通信端末装置内での前記各種機能の使用状況に基づいて,前記プログラムの更新の可否をセンター装置が判断するプログラム変更判断手段と,
前記プログラム変更判断手段により機能が使われていると判定されると,前記最新のプログラムを用いてプログラムの更新を行うプログラム更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信システム。

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

上記平成23年11月24日付けの原審の拒絶理由通知において引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2004-355563号公報(平成16年12月16日出願公開。以下,参考文献1という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,当審で参考までに付与したものである。)

G「【0038】
図2はこの発明に係る情報端末装置12の概念を示す系統図であって,装置全体の制御を司るCPU20を始めとして,複数のアプリケーションソフトウエアがインストールされたメモリ手段22を有する。メモリ手段22としては大容量の記憶容量を確保できる半導体メモリやハードディスク装置(HDD)などが好適である。図2はハードディスク装置を使用した場合である。
【0039】
さらにオペレーティング・システム(OS)などのソフトウエアや,固定値などのデータを格納するメモリ手段(ROM)24の他に,アプリケーションソフトウエアの自動更新処理を実現するために必要なアプリケーションソフトウエアや,更新ファイルが格納されたワーキング用のメモリ手段(RAM)26を有し,さらにはこの例では外部の通信回線14などとの通信を行うための送受信手段28や,液晶表示素子(LCD)などを使用した表示手段30などがバス32によって相互に接続されている。」

H「【0042】
更新ファイルには,インストールされた全てのアプリケーションソフトウエアに関する更新情報が記録される。図3はこの更新ファイルに記録される情報の一例を示すもので,この例ではアプリケーションソフト名,バージョン,インストール日,起動回数,最終起動日お前回の更新処理日の各情報が更新情報として記録される。
【0043】
まずインストールされたアプリケーションソフトウエアのソフトウエア名が記録される。次に,そのバージョン情報が記録される。バージョン情報はアプリケーションソフトウエアの更新の都度,最新のバージョンに更新される。インストール日は最初にそのアプリケーションソフトウエアをインストールした日付である。
【0044】
起動回数は,アプリケーションソフトウエアの起動情報であって,そのアプリケーションソフトウエアの利用回数に相当するものである。起動回数はアプリケーションソフトウエアが起動されるたびに更新(+1だけインクリメント)される。起動回数はユーザがそのアプリケーションソフトウエアをどの程度利用したかを示す指標であるため,起動回数はそのアプリケーションソフトウエアの習熟度にも関連する数値となる。起動回数が多ければそれだけそのアプリケーションソフトウエアに対する習熟度が高まると考えられるからである。」

I「【0059】
ステップ68あるいはステップ74での認証がなされたときには,ユーザ側から更新ファイル情報がデータベースセンタ16側に送信される(ステップ78)。更新ファイル情報とは図3に示すような登録情報であるが,この場合登録情報の全てを送信することもできれば,その一部のみ(例えば,上述したソフトウエア名,バージョンおよび起動回数)を送信してもよい。この例では,全ての登録情報が送信されるようになされている。
【0060】
データベースセンタ16側では受信した更新ファイル情報に基づいて,更新条件を満たすアプリケーションソフトウエアが存在するかどうか検証される。ここで,更新条件は全てのアプリケーションソフトウエアに対して同一に設定される。
【0061】
更新条件としては,習熟度を示す情報が規定値を満たすかどうかによって判断される。習熟度を示す情報としてはアプリケーションソフトウエアの起動情報,具体的には起動回数が利用される。規定値Nとしては任意の起動回数をセットできる。例えばN=30のような値に設定できる(図8参照)。」

J「【0063】
したがって,図6の例では,アプリケーションソフトウエアの習熟度を示す情報,つまり更新条件としては起動情報(起動回数)が使用されることになる。
【0064】
データベースセンタ16側に送られる更新ファイル情報は,装置にインストールされている全てのアプリケーションソフトウエアに関する情報が含まれているので,それぞれのアプリケーションソフトウエアに関する起動情報と,更新条件から更新の対象となるアプリケーションソフトウエアとそうでないアプリケーションソフトウエアとが,データベースセンタ16側で峻別されることになる。
【0065】
さて,図6のフローチャートにおいて,上述した更新条件にマッチしたアプリケーションソフトウエアが存在するかどうかをデータベースセンタ16側で判断した結果,更新すべきアプリケーションソフトウエアの候補がなく,したがって情報端末装置12側にダウンロードすべきアプリケーションソフトウエアがないときには,つまりデータベースセンタ16側からの受信情報が存在しないときには(ステップ80),該当するアプリケーションソフトウエアが存在しない旨を表示手段30に表示する(ステップ82)。その後ユーザへの確認処理を行ってから,回線切断の意思があるときには回線を切断する処理を実行し,アプリケーションソフトウエアの自動更新処理を終了させる(ステップ84,85)。
【0066】
これに対して,更新条件にマッチしたアプリケーションソフトウエアが存在したときには(ステップ80),該当する全てのアプリケーションソフトウエアをダウンロードし,メモリ手段22に登録されている当該アプリケーションソフトウエアを最新バージョンのアプリケーションソフトウエアに書き替えられる(ステップ86)。」

(3-2)参考文献2

上記平成23年11月24日付けの原審の拒絶理由通知において引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2004-206260号公報(平成16年7月22日出願公開。以下,参考文献2という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,当審で参考までに付与したものである。)

K「【0040】
プログラム受信手段34は,サーバコンピュータ2から更新情報一覧24を受信し,ネットワーク監視手段33にネットワークの負荷情報330の情報提供を要求して,ネットワークの負荷情報331や更新情報一覧24などに基づき,更新プログラム21をサーバコンピュータ2より受信(以降,ダウンロードとする)するか否かの判断をする機能を備える。
【0041】
また,クライアントプログラム30を更新する優先順位を各クライアントコンピュータ3の条件に応じて,図6に示すように,優先順位情報340を設定し,この優先順位情報340を加味して更新プログラム21をサーバコンピュータ2よりダウンロードするか否かの判断をするようにしても良い。この優先順位は,例えば,クライアントプログラム30が起動された回数を記憶するようにして,更新対象のクライアントプログラム30の使用頻度が高いものほど高くするというように,使用頻度で優先順位を設定する。あるいは,クライアントプログラム30の重要度などで優先順位を設定しても良い。その他,更新期限の一番近い順に優先順位をつけたり,ファイルサイズが大きくてダウンロードに時間のかかるものを先に行う,または逆にファイルサイズの小さいものからダウンロードするといった優先順位をつけても良い。さらに,いつまでもダウンロードされないのを防ぐために,ダウンロードされなかったクライアントプログラム30の優先順位を適宜上げるようにしてもよい。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「フラッシュROM」は,そこに「記憶されるプログラム」が「通信端末装置」で「各種機能を実行させる」ことから,通信装置に各種機能を動作させるソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶手段といえるものであり,
してみると,引用発明の「フラッシュROMに記憶されるプログラムにより各種機能を実行させる通信端末装置」と,本願補正発明の「ソフトウェア記憶手段に記憶される複数の各ソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置」とは,ともに,“ソフトウェア記憶手段に記憶されるソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置”である点で共通するといえる。

(4-2)引用発明の「最新のプログラム」は,それを用いて,通信端末装置で各種機能を実行させる「プログラムの更新を行う」ものであって,「センター装置」が「送信可能な」ものでもあるから,通信装置に各種機能を動作させるソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアといえるとともに,管理サーバ装置によって送信可能な更新用ソフトウェアといえるものであり,
してみると,引用発明の「最新のプログラムを送信可能なセンター装置」は,本願補正発明の「前記ソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信可能な管理サーバ装置」に相当する。

(4-3)本願補正発明における「前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報」に関し,出願当初の発明の詳細な説明の段落【0026】の「動作情報記憶部19は,・・・各種機能に対応するソフトウェアごとの動作情報・・・を記憶している。・・・「動作有無履歴」には,各種機能ごとにそれぞれの機能が動作した場合には「有」が記憶され,動作をしていない場合「無」が記憶される。「動作頻度履歴」には,それぞれの機能が所定の時間,例えば,図2に示すように1日当たりに動作した回数の情報が記憶される。・・・動作情報とは,「動作有無履歴」,及び「動作頻度履歴」に記憶される情報を示す。」との記載があることを参酌すれば,通信装置内での各種機能に対応するソフトウェアごとの,その機能の動作の「有」「無」についての情報や,その機能が所定の時間に動作した回数の情報は,ソフトウェアが対応する複数の各種機能の動作情報といえるものであることから,上位概念において,「前記通信装置内での複数の各種機能の動作情報」であるといえる。
してみると,引用発明の「前記通信端末装置内での前記各種機能の使用状況」と,本願補正発明の「前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報」とは,ともに,“前記通信装置内での複数の前記各種機能の動作情報”である点で共通するといえる。
また,上記Eの「本センター装置がプログラムの更新の可否を判断するための例を説明する。」との実施例の記載から,引用発明における「前記通信端末装置内での前記各種機能の使用状況」は,それに基づいて,前記プログラムの更新の可否を,センター装置が判断するものであり,また,上記Dの「s5でセンター側の示す機能の使用状況が,本通信端末で使われているか判断する。つまり受信しか使用されない通信端末において送信に関する更新プログラムであれば必要ないと判断できる。」との記載からすれば,上記プログラムの更新の可否の判断とは,各種機能のための,実際に更新を行う必要があるプログラムを判定するものであるといえ,一方,本願補正発明の「実際に更新を行う必要があるソフトウェアを」「判定する」ことも,各種機能のための「ソフトウェア」の「判定」であるといえるものである。
してみると,引用発明の「前記通信端末装置内での前記各種機能の使用状況に基づいて,前記プログラムの更新の可否をセンター装置が判断するプログラム変更判断手段」と,本願補正発明の「前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中で実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段」とは,ともに,“前記通信装置内での複数の前記各種機能の動作情報に基づいて,各種機能のための,実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段”である点で共通するといえる。

(4-4)引用発明の「プログラム更新手段」は,プログラム変更判断手段により機能が使われていると判定されると,前記最新のプログラムを用いてプログラムの更新を行うものであって,上記(4-2)及び(4-3)の検討内容から,前記判定手段により実際に更新を行う必要があるソフトウェアと判定されたソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを用いてプログラムの更新を行うもの,といえるものであり,さらに,上記(4-1)の検討内容から,ここでいう「プログラムの更新」は,ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新,であると解され,
してみると,引用発明の「前記プログラム変更判断手段により機能が使われていると判定されると,前記最新のプログラムを用いてプログラムの更新を行うプログラム更新手段」は,本願補正発明の「前記判定手段により実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新を行う更新手段」に相当する。

以上から,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
ソフトウェア記憶手段に記憶されるソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置と,前記ソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信可能な管理サーバ装置とを備えた通信システムであって,
前記通信装置内での複数の前記各種機能の動作情報に基づいて,各種機能のための,実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段と,
前記判定手段により実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新を行う更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信システム。

(相違点1)
通信装置について,
本願補正発明は,「ソフトウェア記憶手段に記憶される複数の各ソフトウェアにより各種機能を動作させる」ものであるのに対し,
引用発明は,「フラッシュROMに記憶される」「プログラム」に関し,これが「単一のプログラム」であるのか「複数の各プログラム」であるのか不明な点。

(相違点2)
管理サーバ装置における判定手段について,
本願補正発明は,「通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報」に基づいて,「複数の前記ソフトウェアの中」から判定を行っているのに対し,
引用発明は,そのような構成となっていない点。

(5)判断

上記相違点1ないし相違点2について検討する。

上記Aの「従来のものにあっては,全てのプログラムについて配信されてしまうため,更新の必要のないプログラムまで配信され,更新作業がされてしまう。そのため,プログラム配信のための無駄な通信や不必要なプログラム更新がなされてしまう。」との記載から,通信システムの技術分野においては,更新の必要のないプログラムが配信されることによって,無駄な通信が生じることが課題として認識されていることが読み取れ,そのため,引用発明においても,更新の必要なプログラムと,更新の必要のないプログラムという,異なるすなわち複数のプログラムを対象として,その中から実際に更新が必要なプログラムを判断する構成を想定しているともいえる。

さらに,通信装置における複数の機能を対応する複数のプログラムとして実現することは常とう手段であるところ,一般的な通信システムにおけるアプリケーションソフトウェアの更新処理として,通信端末装置内での複数のプログラムの各起動回数に基づいて,複数の前記プログラムの中で実際に更新を行う必要があるプログラムを判定することは,本願出願時において周知の技術(例えば,上記参考文献1の上記G-J,上記参考文献2の上記K,の記載を参照)であり,
してみると,引用発明における,「プログラムにより各種機能を実行させる通信端末装置」に対し,上記周知技術を適用して,「ソフトウェア記憶手段に記憶される複数の各ソフトウェアにより各種機能を動作させる」ようするとともに,「前記通信装置内での複数の前記ソフトウェアの動作情報に基づいて,複数の前記ソフトウェアの中で実際に更新を行う必要があるソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する」よう構成すること,すなわち,相違点1ないし相違点2に係る構成とすることは,当然の如く想到する構成に過ぎない。
よって,相違点1ないし相違点2は格別なものでない。

(6)小括

上記で検討したごとく,相違点1ないし相違点2は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願補正発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.本件補正についての結び

上記で検討した通り,本願補正発明は,第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成24年5月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年1月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「ソフトウェア記憶手段に記憶されるソフトウェアにより各種機能を動作させる通信装置と,前記ソフトウェアに対応する更新用ソフトウェアを送信可能な管理サーバ装置とを備えた通信システムであって,
前記通信装置内での前記ソフトウェアの動作情報に基づいて前記ソフトウェアの中で更新が必要なソフトウェアを前記管理サーバ装置が判定する判定手段と,
前記判定手段により更新が必要であると判定されたソフトウェアに対応する前記更新用ソフトウェアを用いて前記ソフトウェア記憶手段に記憶されている当該ソフトウェアの更新を行う更新手段と,
を備えたことを特徴とする通信システム。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献およびその記載事項は,前記「第2.平成24年5月21日付けの手続補正の却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は,前記「第2.平成24年5月21日付けの手続補正の却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明から「複数の」を削除し,「実際に更新を行う必要があるソフトウェア」を「更新が必要なソフトウェア」へと上位概念化するとともに,「実際に更新を行う必要があると判定されたソフトウェア」を「更新が必要であると判定されたソフトウェア」へと上位概念化したものである。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が,上記「第2.平成24年5月21日付けの手続補正の却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(3)参考文献に記載されている技術的事項」ないし「(5)判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-19 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-07 
出願番号 特願2006-50354(P2006-50354)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 原 秀人
飯田 清司
発明の名称 通信システム、ソフトウェア更新方法、通信装置、管理サーバ装置、およびプログラム  
代理人 志賀 正武  
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