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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1282102
審判番号 不服2013-9664  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-27 
確定日 2013-11-28 
事件の表示 特願2008-199635「図柄多重化装置、図柄多重化方法、プログラムおよび異方性反射媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月18日出願公開、特開2010- 39048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年8月1日の出願であって、平成24年7月12日付けで手続補正がなされ、平成25年2月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成25年7月5日付け審尋に対して同年9月6日付けで回答書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成25年5月27日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成25年5月27日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「異方性反射特性を有するセルの集合により形成され、複数の図柄が多重化される異方性反射媒体の作製に用いる図柄多重化装置であって、
前記図柄ごとにセルグループを形成するセルグループ形成手段と、
前記図柄に係る三次元形状を投影面に投影し、投影された各画素の法線方向に係る仰角および方位角を法線情報として記録する法線情報記録手段と、
前記法線情報に係るベクトルを、前記図柄ごとに特定の方位角を持つ法線投影面に投影し、投影されたベクトルに係る仰角を変換法線情報とする法線情報変換手段と、
前記セルグループごとに条溝角度範囲を割り当てる条溝角度範囲割当手段と、
前記条溝角度範囲によって一意に定まる単調関数を用いて、前記変換法線情報をスケール変換することでセルごとに条溝角度を決定し、全てのセルグループに含まれるセル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段と、
を具備し、
前記条溝角度範囲割当手段は、複数の前記図柄に対応する条溝角度範囲の一部が互いに重複するように割り当てることを特徴とする図柄多重化装置。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-337622号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はホログラム記録媒体ならびにその作成方法および作成装置、特に、真正な物品であることを証明するためのセキュリティ用ホログラムシールへの利用に適したホログラム記録媒体ならびにその作成方法および作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】クレジットカード、預金通帳、金券などの偽造を防止するための手段として、ホログラムシールが利用されている。また、ビデオテープや高級腕時計などの商品についても、海賊版が出回るのを防止するために、ホログラムシールが利用されている。この他、装飾用、販売促進用といった目的にも、ホログラムシールが利用されている。このようなホログラムシールには、三次元立体像ではなく二次元の絵柄がモチーフとして用いられることが多い。
【0003】このようなホログラムシールを作成するには、通常、レーザ光を用いて干渉縞を形成させる光学的なホログラム撮影方法が用いられている。すなわち、二次元の絵柄モチーフが描かれた原稿を用意し、2つに分岐させたレーザ光の一方をこの原稿に照射し、その反射光と分岐したもう一方のレーザ光とを干渉させてその干渉縞を感光材に記録するのである。こうしてホログラム原版が作成できたら、この原版を用いて、プレスの手法によりホログラムシールを量産することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の光学的なホログラム撮影方法には、鮮明なホログラム像が得られないという問題がある。すなわち、光学的に形成された干渉縞は、振動に敏感であるため、振動を完全に排除した環境でのホログラム撮影を行う必要がある。ところが、かなりの精度の防振台を用いて撮影を行っても、振動を完全に排除することは困難であり、このため、干渉縞の記録像にいわゆる「ボケ」が生じ、コントラストのある明るいホログラム像が得られないのである。また、用いるレーザ光の発振波長にもゆらぎが生じるため、くも硝子状ノイズが避けられない。このように、光学的なホログラム撮影には再現性が悪いという問題があるため、同じ原版を何枚か作成することも困難になる。
【0005】そこで本発明は、鮮明なホログラム像が得られ、しかも再現性の良いホログラム記録媒体ならびにその作成方法および作成装置を提供することを目的とする。」

イ 「【0015】(10) 本願第10の発明は、回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法において、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報を用意する第2の段階と、このモチーフ画素情報において定義された各画素と、第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第3の段階と、この対応関係に基づいて、画素パターンを所定の画素位置に配置する第4の段階と、を行うようにしたものである。
…(略)…
【0017】(12) 本願第12の発明は、上述の第10の発明に係るホログラム記録媒体の作成方法において、第1の段階で、互いに近似したパラメータをもつ複数の画素パターンを1グループとして、複数グループの画素パターンを用意し、第2の段階で、複数の異なるモチーフについてのモチーフ画素情報をそれぞれ用意し、第3の段階で、異なるモチーフに所属する画素については、異なるグループに属する画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにしたものである。
【0018】(13) 本願第13の発明は、回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法において、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素をM行N列の配列上に定義することにより所定のモチーフを表現したモチーフ画素情報を、複数の異なるモチーフについてそれぞれ用意する第2の段階と、m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列を定義し、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意する第3の段階と、モチーフ画素情報において定義された各画素と、第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第4の段階と、単位副画素配列自身をM行N列に配列することにより、(m×M)行(n×N)列の副画素配列を定義し、第4の段階で定義した対応関係に基づいて、各モチーフごとに各単位副画素配列に対応する画素パターンを抽出し、第3の段階で用意した副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンを所定の副画素位置に配置する第5の段階と、を行うようにしたものである。
…(略)…
【0021】(16) 本願第16の発明は、回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する装置において、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意した画素パターンファイルを保持する手段と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報ファイルを入力する手段と、このモチーフ画素情報ファイルにおいて定義された各画素と、画素パターンファイル内に用意された各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義した対応関係情報ファイルを作成する手段と、この対応関係情報ファイルに基づいて、画素パターンを所定の画素位置に配置した画像データを作成する手段と、この画像データに基づいて、所定の記録媒体にホログラムパターンを形成する手段と、を設けたものである。
【0022】(17) 本願第17の発明は、上述した第16の発明に係るホログラム記録媒体の作成装置において、m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列について、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配列するかを定めた副画素構成情報ファイルを保持する手段を更に設け、画像データを作成する手段が、副画素構成情報ファイルに基づいて画素パターンの配置処理を行うようにしたものである。」

ウ 「【0023】
【作 用】本発明に係るホログラム記録媒体の特徴は、回折格子が形成された画素を平面的に配置することにより、ホログラムパターンを記録するようにした点にある。このように、画素を並べる方法を採れば、コンピュータによって任意のモチーフ画像を作成することができる。また、各画素内に形成する回折格子の画像パターンも、コンピュータによって作成することができ、最終的なホログラムパターン作成までの作業をすべてコンピュータによって処理することができる。要するに、本発明によれば、光学的な撮影を行うことなしに、コンピュータによって発生した回折格子パターンデータによってホログラム記録媒体の作成が可能になる。一度作成した回折格子パターンデータを保存しておき、このデータに基づいて再度ホログラム記録媒体の作成作業を行えば、ほぼ同じ記録媒体を得ることができ、ほぼ完全な再現性が得られることになる。また、光学的な撮影を行う必要がないため、鮮明なホログラム像が得られる。
【0024】このように本発明では、回折格子が形成された画素を並べることにより所望のモチーフを表現しているため、種々の特殊効果を利用することができる。たとえば、回折格子を構成する格子線の線幅、ピッチ、配置角度、を変えることにより、光学的特性の異なる回折格子を作成することができる。そこで、このような光学的特性の異なる複数の画素を用意しておき、適宜使い分ければ、種々の特殊効果が表現できるのである。具体的には、第1のモチーフについては第1の画素を並べて表現し、第2のモチーフについては第2の画素を並べて表現するようにすれば、2つのモチーフを同一平面上に記録することができ、しかも光学的特性の違いにより、これら2つのモチーフを別々に観察することができるようになる。
【0025】なお、一般に「ホログラム」という文言は、干渉縞によって得られた像を指す言葉として用いられており、そのような意味からすれば、本発明の記録媒体上に作成される像は、「ホログラム」ではなく「疑似ホログラム」あるいは「回折格子パターン」と言うべきものである。しかしながら、偽造防止用のシールとして用いられている記録媒体は、一般に「ホログラムシール」と呼ばれているため、本願明細書においては、記録媒体上に形成されている「回折格子パターン」についても「ホログラム」という言葉を用いることにする。」

エ 「【0026】
【実施例】以下、本発明を図示するいくつかの実施例に基づいて説明する。
【0027】§1.基本的実施例
本発明に係るホログラム記録媒体の特徴は、複数の画素の集合によって構成されるモチーフを、媒体上にホログラムとして表現した点にある。ここでは、図1(a)に示すような比較的単純なモチーフ(英文字の「A」を示す)を本発明によってホログラム記録媒体上に表現する方法について説明する。なお、本発明に係るホログラム記録媒体の作成方法は、コンピュータを用いて実施することを前提としたものであり、これから説明する各処理は、いずれもコンピュータを用いて実行される。
【0028】まず、図1(a)に示すモチーフに対応する画像データとして、図1(b)に示すようなモチーフ画素情報を用意する。ここに示す例では、7行7列に画素が配列されており、各画素は「0」または「1」のいずれかの画素値をもっており、いわゆる二値画像を示す情報となる。このような情報は、いわゆる「ラスター画像データ」と呼ばれている一般的な画像データであり、通常の作画装置によって作成することができる。あるいは、紙面上に描かれたデザイン画をスキャナ装置によって取り込むことにより、このようなモチーフ画素情報を用意してもかまわない。
【0029】続いて、図2に示すように、所定線幅dの格子線を所定ピッチpおよび所定角度θで所定の閉領域V内に配置した画素パターンを定義する。ここで、閉領域Vは1つの画素を構成する領域であり、実際には非常に微小な要素になる。別言すれば、図1(a),(b)に示した7×7の配列における1つ1つの画素に相当した大きさのものになる。この実施例では、閉領域Vとして、縦×横が50μm×45μmの大きさの長方形を用いている。また、この閉領域V内に配置される格子線Lの線幅dおよびピッチpも光の波長に準じた微小な寸法をもったものであり、この実施例では、線幅d=0.6μm、ピッチp=1.2μmである。要するに、格子線Lは回折格子としての機能を果たす線幅dおよびピッチpで配置されている必要がある。格子線Lの配置角度θは、所定の基準軸に対して設定された角度である。本明細書では、図示するような方向にX軸およびY軸をとったXY座標系を定義し、X軸を基準軸として格子線Lの配置角度θを表わすことにする。このような画素パターンも、コンピュータ上では画像データとして用意されることになる。なお、この画素パターンの画像データは、「ラスター画像データ」として用意してもよいし(この場合は、モチーフを構成する1つ1つの画素が、更に微小な画素によって表現されることになる)、あるいは、格子線Lを構成する四角形の4頂点の座標値を指定することにより格子線Lの輪郭線を定義した「ベクトル画像データ」として用意してもよい。データ量を抑えるためには、後者の方が好ましい。
【0030】次に、図1(b)に示すようなモチーフ画素情報における各画素値に基づいて、図2に示すような画素パターンを所定の画素に対応づけ、各画素位置に、対応する画素パターンを配置する処理を行う。具体的には、図1(b)に示すモチーフ画素情報において、画素値が「1」である画素のそれぞれに図2の画素パターンを対応づける。画素値が「0」である画素には、画素パターンは対応づけられない。こうして対応づけられた画素位置に、それぞれ画素パターンを配置してゆく。いわば、図1(b)に示す配列を壁にたとえれば、この壁の中の「1」と描かれた各領域に、図2に示すようなタイルを1枚ずつ貼る作業を行うことになる。この結果、図3に示すような画像パターンが得られる。この画像パターンが最終的にホログラム記録媒体に記録されるパターンである。図1(a)に示すモチーフがそのまま表現されているが、1つ1つの画素は回折格子で構成されており、ホログラムとしての視覚的な効果が得られることになる。
【0031】もっとも、図2に示すような画素パターンを「タイル」として貼り付ける処理は、コンピュータ内での画像処理として行われる。この処理は、たとえば、図4に示すように、モチーフ全体に対応する画像の右下位置に座標原点Oをとった場合、貼り付けるべき画素位置に基づいたオフセット量a,bを演算により求め、画像データとしての貼り込み処理を行えばよい。このような演算処理の結果、図3に示すようなパターンを示す画像データが得られるので、この画像データに基づいて、図3に示すようなパターンをフィルムなどの上に物理的に出力すれば、所望のホログラム記録媒体が作成できることになる。なお、本実施例では、後述するように、コンピュータで作成した画像データを電子ビーム描画装置に与え、電子ビームにより図3に示すようなパターンを原版上に描画し、この原版を用いてプレスの手法でホログラムシールを大量生産するようにしている。」

オ 「【0032】§2.複数の画素パターンを用いる実施例
上述した基本的実施例では、図2に示すような画素パターンのみを用いてホログラム記録媒体を作成したが、ここでは、複数種類の画素パターンを用いる方法を説明する。図2に示すように、この画素パターンは、格子線Lの線幅d、ピッチp、配置角度θという3つのパラメータによって特定されるパターンである。この3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることにより、異なったパターンが得られることになる。より具体的には、線幅dおよびピッチpを変えると、そのパターンから観察される色が変化することになり、配置角度θを変えると、そのパターンが観察できる向きが変化することになる。したがって、パラメータを変えた複数種類の画素パターンを用意しておき、これらを使い分けることにより、変化に富んだ効果的なホログラム像を形成させることができる。
【0033】具体的な例を示すと次のようになる。たとえば、図5に示すような5種類の画素パターンP1?P5を用意する。これらの画素パターンは、3つのパラメータのうち、線幅dおよびピッチpは同じであるが、角度θがそれぞれ異なっている。すなわち、図示したように、角度θ=30°,60°,90°,120°,150°の5とおりが用意されている(実際の格子線は所定の幅をもったものであるが、図示の便宜上、以下の図では格子線を単なる線で示すことにする)。
【0034】このように複数の画素パターンを用いる場合、どの画素位置にどの画素パターンを配置するかを決める必要がある。そこで、図6(a)に示すような対応関係情報を用意する。この対応関係情報は、図1(b)に示すモチーフ画素情報において画素値が「1」となっている各画素について、図5に示す5種類の画素パターンP1?P5のいずれか1つを対応させたことを示す情報である。画素値が「0」となっている画素については、いずれの画素パターンも対応させていない(あるいは、格子線が全く形成されていない空の画素パターンP0なるものを定義し、画素値が「0」となっている画素については、この空の画素パターンP0を対応させてもよい)。この対応関係情報は、いわば、「5種類のタイルのうちのどれをどの位置に貼り込むか」ということを指示する情報ということになる。したがって、このような対応関係情報を作成しておけば、コンピュータによる機械的な貼り込み作業が可能になる。なお、図6(a)の例では、対応関係情報として画素パターンの名称P1?P5を特定する情報を用いているが、図6(b)の例のように、格子線の角度θの値(すなわち、パラメータの値)を特定する情報を用いるようにしてもかまわない。
【0035】こうして5種類の画素パターンを用いて形成されるホログラム像は、より変化に富んだものとなる。この例のように、角度θというパラメータを変えた複数の画素パターンを用いた場合、図1(a)に示すモチーフにおける左右の各部において光が観察される角度が異なるため、実際の記録媒体を手に取って傾けながら観察すると、左右に光が流れるような効果が得られる。線幅dあるいはピッチpというパラメータを変えた複数の画素パターンを用いれば、左右において観察される色が異なるような効果が得られることになる。もちろん、2つ以上のパラメータを変えた種々の画素パターンを用意することも可能である。
【0036】ところで、図6に示すような対応関係情報を用意するには、コンピュータに対して何らかの指示を与える必要がある。最も基本的な指示の与え方は、ディスプレイ上に図1(a)に示すようなモチーフを表示させ、このモチーフを構成する1つ1つの画素それぞれについて、P1?P5(あるいは30°?150°)のいずれかを指定する方法である。このような方法で対応関係情報を作成すれば、全く任意の対応関係を定義することが可能である。しかしながら、画素1つ1つについて、対応する画素パターンを1つ1つ指示してゆく作業は、かなり労力と時間を有する作業になる。そこで、この実施例では、簡単な操作で対応関係情報を作成することができる機能をコンピュータのプログラムに用意してある。ここで、図6(b)に示す対応関係情報を見ると、ある規則性が発見できる。すなわち、2列目の画素はθ=30°6列目の画素はθ=150°、の画素パターンが対応づけられており、2列目から6列目に向かうにしたがって、θの値は30°ずつ増えている。このようにパラメータの値を徐々に変化させてゆく手法は、一般に「グラデーション」と呼ばれている手法であり、この例では、水平方向にグラデーションがかかっていることになる。
【0037】このようなグラデーションをかけるための対応関係情報の作成は、次のような簡単な作業で行うことができる。すなわち、図7に示すように、テーマとなっているモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与えればよい。具体的には、水平方向へのグラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、2列目の画素位置をマウスなどで指定して初期値θ=30°を入力し、6列目の画素位置をマウスなどで指定して終期値θ=150°を入力すればよい。このような情報が与えられれば、3?5列目の画素については線形補間を行うことにより、θの値を自動的に設定することができる。したがって、オペレータは画素1つ1つについて、対応する画素パターンを指定する必要はない。もちろん、垂直方向にグラデーションをかけるような設定も同様に行うことができる。また、ここでは角度θに関するグラデーションをかけているが、格子線の線幅dやピッチpに関するグラデーションも同様に設定することが可能である。
【0038】なお、図示する例は、7×7の比較的小規模な画素配列のものであるが、実際には、より大規模な画素配列のモチーフが用いられる。したがって、初期値と終期値だけを指定したのでは、画素パターンのバリエーションが膨大な数になってしまう場合がある。たとえば、初期値を指定した画素から終期値を指定した画素に至るまでに、121画素が存在したとすると、上述のような設定では、θの値が、右の画素から左の画素へ向かって30°,31°,32°,…,149°,150°と増加してゆき、121通りもの画素パターンが必要になる。このような場合には、初期値と終期値の他に、ステップ値を指定すればよい。たとえば、ステップ値として30°を指定すれば、θの値のバリエーションは、30°,60°,90°,120°,150°の5種類に限定されるため、図5に示すような5通りの画素パターンを用意すれば十分である。
【0039】また、図1(b)に示したモチーフ画素情報は、各画素値が「0」または「1」のいずれかをとる二値画像情報であるが、階調をもった画像をモチーフとして用いる場合には、各画素値に基づいて対応させる画素パターンを決定することも可能である。たとえば、図1(b)に示すモチーフ画素情報の代わりに、図8に示すようなモチーフ画素情報が与えられた場合を考える。ここでは、各画素値は0?255までのいずれかの値をとる。ここで、このような画素値をもった各画素を、図5に示す5種類の画素パターンP1?P5に対応づけるのに、次のような規則を定義したとする。
【0040】
画素値50以下の画素:対応づけなし画素値51?100の画素:P1を対応づける画素値101?150の画素:P2を対応づける画素値151?200の画素:P3を対応づける画素値201?250の画素:P4を対応づける画素値251以上の画素:P5を対応づけるこのような規則を定義しておけば、図8に示すようなモチーフ画素情報に基づいて、図6に示すような対応関係情報を自動的に設定することが可能になる。」

カ 「【0041】§3. 複数のモチーフを表現する実施例
続いて、同一平面上に複数のモチーフを重複させて表現する実施例について説明する。たとえば、図9(a)に示すモチーフAと、同図(b)に示すモチーフBとが与えられ、これら2つのモチーフを同一平面上に重複して表現することを考える。この場合、図10に示すような2つの画素パターンP1,P2を用意する。ここで、画素パターンP1,P2は、格子線の線幅dやピッチpは同じであるが、角度θがP1では45°であるのに対し、P2では90°になっている。そして、モチーフAに所属する画素については、画素パターンP1を対応させ、モチーフBに所属する画素については、画素パターンP2を対応させるように、対応関係情報を作成するのである。具体的には、モチーフAにおいて画素値「1」をもった画素位置に画素パターンP1を対応づけた対応関係情報R1を図11(a)に示すように作成するとともに、モチーフBにおいて画素値「1」をもった画素位置に画素パターンP2を対応づけた対応関係情報R2を図11(b)に示すように作成する。そして、これら2つの対応関係情報R1,R2に基づいて、画素パターンP1,P2の貼り込み処理を行えば、図12に示すような回折格子パターンをもったホログラム記録媒体が作成される。ここで、モチーフAはθ=45°の回折格子で表現され、モチーフBはθ=90°の回折格子で表現されているため、両モチーフは観察できる角度が異なり、別々のモチーフとして区別して観察される。このような方法によれば、複数のモチーフ(3つ以上も可能である)を同一平面上に重複させて表現することができる。
【0042】また、同一のモチーフについて、複数の画素パターンを用いることも可能である。この場合、他のモチーフとの区別を可能ならしめるために、互いに近似したパラメータをもつ複数の画素パターンを1グループとして定義するとよい。たとえば、図13に示す6種類の画素パターンは、第1のグループに属する3つの画素パターンP11,P12,P13と、第2のグループに属する3つの画素パターンP21,P22,P23と、によって構成されている。これらの画素パターンは、いずれも線幅dおよびピッチpは同じであるが、角度θがそれぞれで異なっている。ただし、第1のグループに属する画素パターンの角度θは、40°,45°,50°と互いに近似しており、第2のグループに属する画素パターンの角度θも、85°,90°,95°と互いに近似している。このような6種類の画素パターンを用意し、たとえば、モチーフAに所属する画素については、第1のグループに属する画素パターンを対応させ、モチーフBに所属する画素については、第2のグループに属する画素パターンを対応させるようにする。具体的には、図9(a)に示すモチーフAについては、図14(a)に示すような対応関係情報R1を作成し、図9(b)に示すモチーフBについては、図14(b)に示すような対応関係情報R2を作成すればよい。このような対応関係情報を用いて作成されたホログラム記録媒体上のパターンは、図12に示すものとほぼ同じになるが、同じモチーフ内でも格子角度値が若干分散しているため、より効果的な表現が可能になる。なお、モチーフAについてはθ=45°を中心として5°ずつ分散しているのに対し、モチーフBについてはθ=90°を中心として5°ずつ分散しているため、モチーフAとBとを区別して把握するためのパターン認識は十分に可能である。」

キ 「【0043】§4.画素が重複する複数のモチーフを表現する実施例
前述の例において、図9に示す2つのモチーフA,Bは、画素値「1」をもった画素が重複することはないため、図12に示すように、両モチーフの画素を混合した表現が可能になる。ところが、画素値「1」をもった画素が重複する複数のモチーフについては、前述の例のような手法をそのまま適用することはできない。たとえば、図15(a),(b)に示すような2つのモチーフA,Bに対して、前述の手法をそのまま適用して作業を進めてみる。ここでは、モチーフAについては図10に示すパターンP1を対応させ、モチーフBについては図10に示すパターンP2を対応させるものとしよう。すると、モチーフAについては図16(a)に示すような対応関係情報R1が作成され、モチーフBについては図16(b)に示すような対応関係情報R2が作成される。ところが、この2つの対応関係情報R1,R2に基づいて、実際に画素パターンを貼り込む作業を行おうとすると、図16に実線で囲った画素について画素パターンの衝突が生じる。たとえば、2行3列目の画素について見ると、対応関係情報R1によれば画素パターンP1を貼り込む旨が示されているのに対し、対応関係情報R2によれば画素パターンP2を貼り込む旨が示されている。このため、実際にはどちらの画素パターンを貼り込めばよいか判断できなくなる。
【0044】このような問題を解決するため、本発明では、次のような副画素という概念を導入する。いま、図17に示すように、M行N列(この例では7行7列)の画素配列によって所定のモチーフが表現されている場合を考える。この場合、図の右方に示すように、m行n列(この例では2行2列)に配列された副画素から構成される「単位副画素配列」というものを定義する。この例では、この「単位副画素配列」は1つの画素に対応する大きさを有している。より具体的に説明すれば、図17に示す例では、1つの画素を4分割したものが副画素となっており、4つの副画素によって1つの「単位副画素配列」が構成されている。続いて、この「単位副画素配列」内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を作成する。たとえば、モチーフAとモチーフBとを重複表示する場合、各副画素位置には、モチーフAの画素かモチーフBの画素かのいずれかが配置されることになる。そこで、図18に示すような副画素構成情報を作成して、各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定義するのである。図18の例では、左上および右下の副画素位置にモチーフAの画素を、左下および右上の副画素位置にモチーフBの画素を、それぞれ配置することが定義されている。これは、どのような定義を行ってもよいが、両モチーフを対等に表示する上では、このように対角位置に同じモチーフの画素を配置するのが好ましい。
【0045】次に、図17に示すように定義した「単位副画素配列」自身を、図19(a)に示すように、M行N列に配列する。前述のように、この例では、「単位副画素配列」は1つの画素に対応する大きさを有しているので、この図19(a)に示す「単位副画素配列」の配列は、図17の左方に示す画素の配列と同じものになる。なお、この図19(a)に示す「単位副画素配列」の配列を、「副画素」の配列としてみた場合は、図19(b)示すような(m×M)行(n×N)列(この例では14行14列)の配列となる。
【0046】ところで、図16(a),(b)に示したように、2つのモチーフA,Bについては、それぞれ対応関係情報R1,R2が得られるので、この情報を用いれば、各「単位副画素配列」について、所定の画素パターンを抽出することができる。図20は、このようにして抽出された画素パターンを示すものである。49組の「単位副画素配列」のうちのいくつかには画素パターンP1あるいはP2が抽出され、別ないくつかにはその両方が抽出されている。続いて、この抽出された画素パターンを、図18で定義した副画素構成情報に基づいて、所定の副画素位置に配置するのである。すなわち、モチーフAについての画素パターンP1は、図21(a)に示すように、「単位副画素配列(図21では実線で示してある)」内の左上および右下の副画素位置に配置する。また、モチーフBについての画素パターンP2は、図21(b)に示すように、「単位副画素配列」内の左下および右上の副画素位置に配置する。このような配置を同一平面上に重複して行うようにすれば、図22に示すようなパターンが得られ、これが実際のホログラム記録媒体に記録されるパターンとなる。
【0047】この図22に示すパターン内には、モチーフAとモチーフBとが重複して表現されていることになる。しかも、モチーフAを表現する副画素と、モチーフBを表現する副画素とでは、格子線の形成角度が異なるため、ある1つの方向から観察するとモチーフAが認識でき(図21(a)のようなパターンが認識できる)、別な方向から観察するとモチーフBが認識できる(図21(b)のようなパターンが認識できる)ようになっている。このような手法を用いれば、画素が重複する複数のモチーフについても、同一平面上に重複して表現することが可能になる。なお、図15に示した2つのモチーフA,Bは、いずれも解像度の低い画像であるため、図21(a),(b)に示すパターンは、もとのモチーフに比べてかなり歪んだものとなっているが、実際には、より解像度の高い画像をモチーフとして用いるため、観察される画像の歪みはほとんど問題にはならない。
【0048】なお、この手法では、3つ以上のモチーフについての重複表現も可能である。たとえば、図23(a)に示すような副画素構成情報を定義すれば、4つのモチーフA,B,C,Dを同一平面上に重複表現することができる。また、図23(b)に示すような副画素構成情報を定義すれば、3つのモチーフA,B,Cを同一平面上に重複表現することができる。ただし、この場合、3つのモチーフA,B,Cは対等ではなく、モチーフCの濃度がモチーフA,Bの濃度の2倍になる。変則的な例としては、図23(c)に示すような副画素構成情報を定義することも可能である。ここで、「A+C」なる表示は、AまたはCのいずれか一方の画素がここに表示されるという意味であり、モチーフAとモチーフCとが相補的なパターン(たとえば、図9に示すようなモチーフA,Bのように、画素値「1」をもった画素位置が重なることがないようなパターン)である場合を前提とした定義の仕方である。なお、3つのモチーフA,B,Cを対等に重複表現する場合には、図24(a)または(b)に示すような副画素構成情報を定義するとよい。この場合、「単位副画素配列」は3行3列の配列になる。
【0049】ここで、まとめの意味で、上述した手法を用いた場合における個々の画素と個々の副画素との一般的な対応関係を述べておく。いま、図25に示すように、モチーフAがM行N列の画素配列で表現されており、個々の画素には、A11,A12,…と名前が付されており、同様に、図26に示すように、モチーフBがM行N列の画素配列で表現されており、個々の画素には、B11,B12,…と名前が付されている場合を考える。この場合、図27に示すように、M行N列の「単位副画素配列」が定義でき、これは(m×M)行(n×N)列の副画素配列ともいうことができる。このとき、図25および図26に示す個々の画素と、図27に示す個々の副画素との対応関係は、図示したようになる(個々の画素に付された名前を参照)。ここで、1つの「単位副画素配列」についての左上副画素と右下副画素には全く同じ画素が対応し、左下副画素と右上副画素にも全く同じ画素が対応することになる(たとえば、図27における1行1列目の「単位副画素配列」に着目すると、左上副画素と右下副画素には全く同じ画素A11が対応し、左下副画素と右上副画素にも全く同じ画素B11が対応している)。
【0050】これに対して、次に述べる変形例は、各副画素のそれぞれに全く異なる画素を配置する方法を示すものである。この変形例では、図27に示す「単位副画素配列」の代わりに、図28に示す「単位副画素配列」が用いられる。いずれも実線で示した領域が「単位副画素配列」であるが、両者では大きさが異なる。すなわち、図27の例では、モチーフの1画素と同じ大きさをもった「単位副画素配列」が定義されているため、副画素はモチーフの1画素の1/4の大きさになるのに対し、図28の例では、モチーフの4画素分の大きさをもった「単位副画素配列」が定義されているため、副画素はモチーフの1画素と同じ大きさになる。結局、図28の例では、モチーフ全体を示すためには、「単位副画素配列」自身を(M/m)行(N/n)列に配置した「単位副画素配列」の配列を定義することになる。この配列は、副画素の配列としてみれば、M行N列の配列になる。
【0051】ここで、図28における1行1列目の「単位副画素配列Z(周囲をハッチングして示してある)」内には、どのような画素パターンの貼り込み処理が行われるかを考えてみる。モチーフAに関しては、図25を参照すればわかるように、画素A11,A12,A21,A22に対応した画素パターンが貼り込み候補として抽出される。一方、モチーフBに関しては、図26を参照すればわかるように、画素B11,B12,B21,B22に対応した画素パターンが貼り込み候補として抽出される。そこで、図28の下方に示した副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンのうちの一部のみを選択して、これを所定の副画素位置に配置するのである。具体的には、モチーフAに関しては、抽出された画素A11,A12,A21,A22のうちの左上および右下位置にある画素A11,A22だけが選択され、モチーフBに関しては、抽出された画素B11,B12,B21,B22のうちの左下および右上位置にある画素B12,B21だけが選択されることになる。こうして、図28の「単位副画素配列Z」に示されているように、この中には、画素A11,B12,B21,A22の4つについての画素パターンが貼り込まれることになる。ここで、図28に示す「単位副画素配列」の配列全体を観察すればわかるように、もとのモチーフAおよびモチーフBを構成する画素のうちの2つに1つは間引かれている。実際に用いるモチーフはかなり解像度の高い画像であるため、このような間引きを行っても特に問題はない。
【0052】図27に示す手法では、画素は間引かれることはないが、副画素の大きさがモチーフの画素の大きさよりも細かくなってしまうのに対し、図28に示す手法では、副画素の大きさはモチーフの画素の大きさと同じであるが、画素は間引かれてしまうことになり、いずれも一長一短がある。したがって、実際に用いるモチーフの絵柄や解像度などを考慮して、いずれか適した手法を採用すればよい。
【0053】なお、画素や副画素の形状として、これまでの実施例では長方形のものを用いているが、図29(a)に示すような正方形のもの(たとえば、50μm×50μmの大きさ)や、図29(b)に示すような円形のものを用いてもかまわない。ただ、回折格子の形成密度を高める意味では、円形の画素よりも矩形の画素(長方形や正方形)を用いる方が好ましい。」

ク 「【0055】§6. 具体的な装置構成例
最後に、上述したホログラム記録媒体の作成方法を実施するための具体的な装置構成例を図31に示しておく。この装置の基本的な構成要素は、ワークステーション10、データフォーマット変換装置20、電子ビーム描画装置30、プレス装置40である。ワークステーション10は、上述した種々の演算処理を行うためのプログラムを搭載したコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力機器、ディスプレイやプリンタなどの出力機器、フロッピディスクドライブ装置やハードディスクドライブ装置などの外部記憶装置、などを有する。ここでは、3つのモチーフA,B,Cについてのモチーフ画素情報ファイルをそれぞれフロッピディスク1,2,3でワークステーション10に供給している状態が示されている。このように、モチーフ画素情報(ラスター画像データ)は、他の作画装置などで作成したものをワークステーション10に入力するようにしてもよいし、紙面上に描かれたデザイン画をスキャナ装置でワークステーション10に入力するようにしてもよいし、ワークステーション10に搭載した作画ソフトウエアを用いて、ワークステーション10自身で作成するようにしてもよい。
【0056】続いて、ワークステーション10を用いて、入力したモチーフ画素情報に基づいた対応関係情報を作成し、これを対応関係情報ファイル11として保存する。また、副画素構成情報を定義して、これを副画素構成情報ファイル12として保存し、更に、必要な画素パターンを必要な種類だけ作成し、これを画素パターンファイル13として保存する。オペレータはワークステーション10に対して対話式に指示を入力することにより、これらのファイルを用意することができる。これらのファイルが用意できたら、ワークステーション10は、対応関係情報ファイル11および副画素構成情報ファイル12を検索しながら、画素パターンファイル13内の所定の画素パターンを、所定の画素位置に貼り込む処理を行い、ホログラムパターンデータを出力する。
【0057】このホログラムパターンデータは、データフォーマット変換装置20に与えられる。このデータフォーマット変換装置20は、ワークステーション10が出力したホログラムパターンデータを、電子ビーム描画装置30の要求するフォーマットに変換する機能をもった装置である。フォーマット変換されたデータは、電子ビーム描画装置30に与えられ、ホログラムパターンがホログラム原版4上に物理的なパターンとして出力される。プレス装置40は、このホログラム原版4を用いて、フィルム上にホログラムパターンをプレスする装置であり、ホログラムシール5が大量生産されることになる。
【0058】なお、図2に示す画素パターンにおいて、各格子線Lは任意の四角形の形状をしたものであるが、電子ビーム描画装置30として、フォトマスク作成用に市販されている一般的な装置を用いるのであれば、対向する辺がX軸またはY軸に平行な平行四辺形の形状をした格子線Lを用いるのが好ましい。たとえば、格子線Lの配置角度θが、-45°≦θ≦45°の場合には、図32に示すように、短辺がY軸に平行な平行四辺形の格子線Lを用い、格子線Lの配置角度θが、θ>45°または、θ<-45°の場合には、図33に示すように、短辺がX軸に平行な平行四辺形の格子線Lを用いるとよい。このように、対向する辺がX軸またはY軸に平行な平行四辺形を用いると、フォトマスク作成用の電子ビーム描画装置における描画効率が向上する。」

ケ 「【0059】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係るホログラム記録媒体およびその作成方法によれば、回折格子が形成された画素を平面的に配置することにより、ホログラムパターンを記録するようにしたため、鮮明で再現性の良いホログラム像が得られるようになる。」

コ 上記アないしケからみて、引用例1には、
「三次元立体像ではなく二次元の絵柄がモチーフとして用いられ、二次元の絵柄モチーフが描かれた原稿を用意し、2つに分岐させたレーザ光の一方をこの原稿に照射し、その反射光と分岐したもう一方のレーザ光とを干渉させてその干渉縞を感光材に記録する光学的なホログラム撮影方法が用いられていた従来のホログラムシールの作成では、
鮮明なホログラム像が得られないという問題及び再現性が悪いという問題があったので、
鮮明なホログラム像が得られるようにし、しかも、再現性を良くした、ホログラム記録媒体の作成装置であって、
所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意した画素パターンファイルを保持する手段と、
それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報ファイルを入力する手段と、
このモチーフ画素情報ファイルにおいて定義された各画素と、画素パターンファイル内に用意された各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義した対応関係情報ファイルを作成する手段と、
この対応関係情報ファイルに基づいて、画素パターンを所定の画素位置に配置した画像データを作成する手段と、
を設け、
m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列について、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配列するかを定めた副画素構成情報ファイルを保持する手段を更に設け、
前記画像データを作成する手段が、副画素構成情報ファイルに基づいて画素パターンの配置処理を行うようにし、
所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意するとともに、互いに近似したパラメータをもつ複数の画素パターンを1グループとして、複数グループの画素パターンを用意する第1の段階と、
それぞれ所定の画素値をもった複数の画素をM行N列の配列上に定義することにより所定のモチーフを表現したモチーフ画素情報を、複数の異なるモチーフについてそれぞれ用意する第2の段階と、
m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列を定義し、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意する第3の段階と、
モチーフ画素情報において定義された各画素と、第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義するとともに、異なるモチーフに所属する画素については、異なるグループに属する画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにする第4の段階と、
単位副画素配列自身をM行N列に配列することにより、(m×M)行(n×N)列の副画素配列を定義し、第4の段階で定義した対応関係に基づいて、各モチーフごとに各単位副画素配列に対応する画素パターンを抽出し、第3の段階で用意した副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンを所定の副画素位置に配置する第5の段階と、
を行うことによって、
コンピュータによって任意のモチーフ画像を作成することができ、また、各画素内に形成する回折格子の画像パターンも、コンピュータによって作成することができ、最終的なホログラムパターン作成までの作業をすべてコンピュータによって処理することができ、光学的な撮影を行うことなしに、コンピュータによって発生した回折格子パターンデータによってホログラム記録媒体の作成を可能にし、一度作成した回折格子パターンデータを保存しておき、このデータに基づいて再度ホログラム記録媒体の作成作業を行えば、ほぼ同じ記録媒体を得ることができ、ほぼ完全な再現性が得られ、光学的な撮影を行わないめ鮮明なホログラム像が得られるようにした、
回折格子により所定のモチーフを表現するホログラム記録媒体の作成装置において、
上述した種々の演算処理を行うためのプログラムを搭載したコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力機器、ディスプレイやプリンタなどの出力機器、フロッピディスクドライブ装置やハードディスクドライブ装置などの外部記憶装置、などを有するワークステーションを基本的な構成要素として有し、
該ワークステーションにより、オペレータは、対話式に指示を入力することにより、搭載した作画ソフトウエアを用いてモチーフ画素情報を作成し、作成したモチーフ画素情報に基づいた対応関係情報を作成して対応関係情報ファイルとして保存し、副画素構成情報を定義して副画素構成情報ファイルとして保存し、更に、必要な画素パターンを必要な種類だけ作成して画素パターンファイルとして保存し、対応関係情報ファイル及び副画素構成情報ファイルを検索しながら画素パターンファイル内の所定の画素パターンを所定の画素位置に貼り込む処理を行わせてホログラムパターンデータを出力させることができ、
第1の段階で、線幅dおよびピッチpを変えると、そのパターンから観察される色が変化することになり、配置角度θを変えると、そのパターンが観察できる向きが変化することになるので、パラメータを変えた複数種類の画素パターンを用意しておき、これらを使い分けることにより、変化に富んだ効果的なホログラム像を形成させることができ、例えば、配置角度θというパラメータを変えた複数の画素パターンを用い、テーマとなっているモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、2列目の画素位置をマウスなどで指定して初期値θ=30°を入力し、6列目の画素位置をマウスなどで指定して終期値θ=150°を入力し、他に、ステップ値として30°を指定するといったグラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与えると、モチーフにおける左右の各部において光が観察される角度が異なり実際の記録媒体を手に取って傾けながら観察すると左右に光が流れるような効果が得られ、また、テーマとなっているモチーフが第1のモチーフのときに、所属する画素について互いに近似したパラメータをもつ第1のグループに属する複数の画素パターンを対応させる第1の対応関係情報を作成し、テーマとなっているモチーフが第2のモチーフのときには、所属する画素について互いに近似したパラメータをもつ第2のグループに属する画素パターンを対応させる第2の対応関係情報を作成し、同じモチーフ内でも格子角度値を若干分散させてより効果的な表現を可能にするとともに、第1のモチーフについては配置角度範囲の中心角を例えば45°とし、第2のモチーフについては配置角度範囲の中心角を例えば90°とし、配置角度の分散を例えばいずれも5°にすると、第1のモチーフと第2のモチーフとを区別して把握するためのパターン認識は十分に可能になる、回折格子が形成された画素を平面的に配置したホログラムパターンを記録したホログラム記録媒体の作成装置。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-84056号公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性反射特性を有する画像を利用して、視点や光源により異なる情報を示す画像、その画像を媒体に印刷した印刷物、及び、その画像を生成する画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年様々な商品やサービス等に用いられるバーコード或いは2次元バーコードは、2次元平面上に規則的な情報を示す画像である。通常のバーコード等は、視点位置や光源位置に依存せず、どのような使用環境でも同一の情報を提供する画像であるが、磁気バーコードには磁気異方性を組み合わせて、磁気読み取り装置の位置により読み取ることのできる記録情報を変化させることができるため、記録可能な情報量を多くする技術が開発されている。(例えば、特許文献1)
一方、紙やプラスチックや金属といった媒体に、異方性反射特性を有する画像を生成し、擬似的に3次元構造体の立体模様を表現する技術が開発されている。(例えば、特許文献2)
【0003】
【特許文献1】特開平10-302035号公報
【特許文献2】特開2001-138700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バーコード或いは2次元バーコードといった2次元平面上に示される規則的なパターン情報は、視点位置や光源位置に拠らず、一定の情報量を表すことしかできなかった。
また、磁気異方性を利用した磁気バーコードは、読み取る角度により多くの情報を表せるが、磁気バーコードに対応した読取装置を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、視点位置や光源位置により異なる角度から画像を見ると異なる情報を表示し、表現する情報量の多い画像を容易に提供することを目的とする。」

イ 「【0011】
第5の発明は、媒体に、凹凸状の溝を用いて情報を表現する画像を生成する画像生成装置であって、前記情報を3次元形状として表す形状生成部と、前記3次元形状の表面上における法線ベクトルを、第1の投影面に投影した第1の投影ベクトルの第1の仰角と方位角を求める手段と、前記第1の投影面に対して垂直、かつ、前記方位角方向の第2の投影面に第1のベクトルを投影させた第2の投影ベクトルの第2の仰角を求める手段と、前記第2の仰角を、前記媒体上の前記溝の角度に変換する手段と、を具備することを特徴とする画像生成装置である。
【0012】
第5の発明は、主に、エンボス加工印刷により異方性反射特性を有する画像を生成する画像生成装置である。エンボス加工印刷は、紙や金属、プラスチックといった媒体に、凹凸状の溝を用いて異方性反射特性を有する画像を生成する。この溝の角度を算出するために、第3の発明である画像生成装置は、情報を3次元形状として表し、3次元形状の表面上における法線ベクトルを、第1の投影面に投影した第1の投影ベクトルの第1の仰角と方位角を求め、第1の投影面に対して垂直、かつ、前記方位角方向の第2の投影面に第1のベクトルを投影させた第2の投影ベクトルの第2の仰角を求めて、前記第2の仰角を、前記媒体上の前記溝の角度に変換するものである。
【0013】
第6の発明は、コンピュータを第3の発明である画像生成装置として機能させるプログラムである。
上述のプログラムは、CD-ROM等の記録媒体に保持させて流通させてもよいし、通信回線を介して送受することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、視点位置や光源位置によって、画像が異なる情報を表現し、表現する情報量の多い画像を容易に提供することが可能となる。」

ウ 「【0025】
次に、画像生成装置1について説明する。
画像生成装置1は、モデリング装置11、法線情報記録装置13、法線情報変換装置15、角度変換装置17等から構成される。各装置の処理については後述する。
画像生成装置1はコンピュータである。図3は、画像生成装置1のハードウェア構成を示す図である。
【0026】
画像生成装置1は、制御部51、記憶部52、メディア入出力部53、入力部55、印刷部56、表示部57等が、システムバス59を介して接続されて構成される。
【0027】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory )、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0028】
CPUは、記憶部52、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、システムバス59を介して接続された各装置を駆動制御し、画像生成装置1が行う後述する各種処理を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部52、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部51が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0029】
記憶部52は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部51が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、画像生成装置1が行う後述の処理に相当するアプリケーションプログラム等が格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部51により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0030】
メディア入出力部53(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ(-ROM、-R、-RW等)、DVDドライブ(-ROM、-R、-RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置等を有する。
【0031】
入力部55は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
入力部55を介して、画像生成装置1に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0032】
印刷部56は、プリンタであり、印刷出力処理を行う。
表示部57は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
システムバス59は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0033】
次に、図4に示すフローチャートを用いて、画像生成装置1による異方性反射部を有する画像の生成処理について説明する。この生成処理は、例えば、図2(d)に示す「情報a」と「情報b」を表現するバーコード61を生成する処理である。
モデリング装置11は、画像3或いは画像5に表現する情報を3次元形状としてモデリングする(ステップ101)。
【0034】
次に、法線情報記録装置13は、3次元形状の表面上の各要素における法線ベクトルnを投影面に投影して、投影面上の法線ベクトルNの2次元情報である、仰角と方位角を算出する(ステップ102)。法線情報記録装置13は、モデリング装置11によってモデリングされた3次元形状を所定の投影面に投影した際の法線ベクトルの分布を求める装置である。
【0035】
次に、法線情報変換装置15は、投影面上の法線ベクトルNを方位角方向に設けた法線投影面に投影させた際のベクトルN’の仰角tを求める(ステップ103)。法線情報変換装置15は、法線情報記録装置13によって求められた2次元情報をスカラー情報に変換する装置である。
【0036】
次に、角度変換装置17は、求められた仰角tに従って、画素ごとの溝の角度を求める(ステップ104)。角度変換装置17は、法線情報変換装置によって求められたスカラー情報に基づいて、画素ごとに溝の角度を求める装置である。
【0037】
以下、各ステップごとに詳細に説明する。
(ステップ101)
モデリング装置11は、画像によって表現する情報を3次元形状としてモデリングする。図5は3次元形状95の一例を示す図(断面)である。3次元形状95の場合、例えば光源が上方にあると、視点Aから見た場合は傾斜面97が見えるが、傾斜面99は見えない。逆に、視点Bから見た場合、傾斜面97は見えないが、傾斜面99は見える。即ち、3次元形状95は、視点により見え方が異なり、その見え方に対応させて2種類の情報を示すことができる。
【0038】
(ステップ102)
法線情報記録装置13は、モデリング装置11によってモデリングされた3次元形状の表面上の所定の点(画素に対応する点)における法線ベクトルnを投影面S1に投影し、投影面S1上の法線ベクトルNの2次元情報である、仰角kと方位角αを求める。
【0039】
図5は、投影面S1に投影された法線ベクトルNを示す。法線情報記録装置13は、表現したい情報をモデリングした3次元形状95における傾斜面97、99の法線ベクトルn1、n2を投影面S1に投影し、投影面S1上の点x1を始点とする法線ベクトルN1、点x2を始点とする法線ベクトルN2とする。
【0040】
次に、法線情報記録装置13は、投影面S1上の基準軸(原点O、u軸、v軸)に対する法線ベクトルN1の方位角α1と仰角k1、法線ベクトルN2の方位角α2と仰角k2を求め、それぞれの法線ベクトルの2次元情報とする。
【0041】
(ステップ103)
次に、法線情報変換装置15は、投影面S1に対して垂直で、方位角α方向の法線投影面S2に法線ベクトルNを投影させたベクトルN’の仰角tを求める。
図6は仰角tの算出法を説明するための図である。例えば、法線ベクトルN2を例に考えると、法線投影面S2は、投影面S1に対して垂直で、方位角α2方向に設けられた新たな投影面である。
【0042】
法線情報変換装置15は、法線ベクトルN2を法線投影面S2に投影したベクトルN2’の仰角t2を求め、新たな法線情報として出力する。
【0043】
(ステップ104)
角度変換装置17は、法線情報変換装置15によって求められた仰角tに基づいて、各画素におけるエンボス加工印刷の溝の角度θを求める。
図7は、仰角tと溝の角度θの変換を示す図である。仰角tが-90°≦t≦90°の範囲であるのに対し、それに対応する溝の角度θは-45°≦θ≦45°の範囲となるため、角度変換装置17は、仰角tに基づいて、各画素におけるエンボス加工印刷の溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化する。
【0044】
例えば、図7に示すように、異方性反射部121のエンボス加工異方性反射部123の溝125は基準線l2に対してθ11の角度をなし、エンボス加工異方性反射部133の溝135は基準線l2に対してθ21の角度をなす。こうして、エンボス加工異方性反射部123、133は視点位置や光源位置によって見え方が変わり、それにより異なる情報を示すことになる。
【0045】
角度変換装置17は、仰角tに基づいて、画素ごとに溝の角度(方向)を算出し、エンボス加工印刷による3Dホログラム原版の版下を作成する。
この版下を基に、画像生成装置1は、図2に示す異方性反射部63を有するバーコード61(画像)を生成する。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態では、視点位置や光源位置によって見え方の異なる異方性反射部を有する画像を用いて、多くの情報を容易に表現することができる。
【0047】
本実施の形態では、異方性反射部を有するバーコードを例に説明したが、異方性反射部を有する2次元バーコードにおいても同様の作用、効果が得られる。
バーコード或いは2次元バーコードとして、画素ごとに溝の角度を変化させたものを作成することもでき、多くの情報を表現することができる。
また、視点を同一にして光源位置を変化させてもよく、視点位置と光源位置の変化を適宜組み合わせることによって、異なる画像を認識させ、複数の異なる情報を表現することも可能である。
【0048】
また、本実施の形態では、異方性反射部の加工としてエンボス加工印刷を例に説明したが、レインボーホログラム印刷加工、シルクスクリーン印刷加工を用いても同様の作、効果が得られる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像及び画像生成装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。」

エ 上記アないしウの記載からみて、引用例2には、
「2次元平面上に示される規則的なパターン情報は、視点位置や光源位置に拠らず、一定の情報量を表すことしかできなかったので、
視点位置や光源位置により異なる角度から画像を見ると異なる情報を表示し、表現する情報量の多い画像の印刷物を容易に提供できるようにするために、
異方性反射特性を有する画像を利用して視点や光源により異なる情報を示す画像を生成できるようにした、
媒体に凹凸状の溝を用いて情報を表現する画像を生成する画像生成装置であって、
CPU、ROM、RAM等で構成される制御部、記憶部、メディア入出力部、入力部、印刷部、表示部等が、システムバスを介して接続されて構成されるコンピュータであり、CPUは、記憶部、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、システムバスを介して接続された各装置を駆動制御し、画像生成装置が行う後述する各種処理を実現し、記憶部は、HDDであり、制御部が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS等が格納され、プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、画像生成装置が行う後述の処理に相当するアプリケーションプログラム等が格納されており、
画像によって表現する情報を3次元形状としてモデリングするモデリング装置、モデリング装置によってモデリングされた3次元形状を所定の投影面に投影した際の法線ベクトルの分布を求める装置である法線情報記録装置、法線情報記録装置によって求められた2次元情報をスカラー情報に変換する装置である法線情報変換装置、法線情報変換装置によって求められたスカラー情報に基づいて、画素ごとに溝の角度を求める装置である角度変換装置等から構成され、
前記情報を3次元形状として表す形状生成部と、
前記3次元形状の表面上における法線ベクトルを、第1の投影面に投影した第1の投影ベクトルの第1の仰角と方位角を求める手段と、
前記第1の投影面に対して垂直、かつ、前記方位角方向の第2の投影面に第1のベクトルを投影させた第2の投影ベクトルの第2の仰角を求める手段と、
前記第2の仰角を、前記媒体上の前記溝の角度に変換する手段と、
を具備し、
異方性反射部を有する画像の生成処理は、
モデリング装置が、第1の画像或いは第2の画像に表現する情報を3次元形状としてモデリングする第1ステップと、
法線情報記録装置が、3次元形状の表面上の各要素(画素に対応する点)における法線ベクトルnを投影面に投影して、投影面上の法線ベクトルNの2次元情報である、仰角と方位角を算出する第2ステップと、
法線情報変換装置が、投影面上の法線ベクトルNを方位角方向に設けた法線投影面に投影させた際のベクトルN’の仰角tを求める第3ステップと、
角度変換装置が、求められた仰角tに従って、画素ごとの溝の角度を算出し、エンボス加工印刷による3Dホログラム原版の版下を作成する第4ステップと、
からなり、
仰角tが-90°≦t≦90°の範囲であるのに対し、それに対応する溝の角度θは-45°≦θ≦45°の範囲となるため、第4ステップでは、前記角度変換装置は、仰角tに基づいて、各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化し、例えば、異方性反射部の第1の異方性反射部の溝は基準線に対して第1の角度θ11をなし、第2の異方性反射部の溝は基準線に対して第2の角度θ21をなすことになると、第1及び第2の異方性反射部は視点位置や光源位置によって見え方が変わり、それにより異なる情報を示すことができる画像生成装置。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「回折格子が形成された画素」、「第1のモチーフと第2のモチーフ」、「ホログラム記録媒体」、「複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現する」、「『複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにする第4の段階』を行う『回折格子が形成された画素を平面的に配置したホログラムパターンを記録したホログラム記録媒体の作成装置』」、「所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意するとともに、互いに近似したパラメータをもつ複数の画素パターンを1グループとして、複数グループの画素パターンを用意する第1の段階と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素をM行N列の配列上に定義することにより所定のモチーフを表現したモチーフ画素情報を、複数の異なるモチーフについてそれぞれ用意する第2の段階と、m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列を定義し、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意する第3の段階と、モチーフ画素情報において定義された各画素と、第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義するとともに、異なるモチーフに所属する画素については、異なるグループに属する画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにする第4の段階と、単位副画素配列自身をM行N列に配列することにより、(m×M)行(n×N)列の副画素配列を定義し、第4の段階で定義した対応関係に基づいて、各モチーフごとに各単位副画素配列に対応する画素パターンを抽出し、第3の段階で用意した副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンを所定の副画素位置に配置する第5の段階と、を行う手段」及び「『テーマとなっているモチーフが第1のモチーフのときに、所属する画素について互いに近似したパラメータをもつ第1のグループに属する複数の画素パターンを対応させる第1の対応関係情報を作成し、テーマとなっているモチーフが第2のモチーフのときには、所属する画素について互いに近似したパラメータをもつ第2のグループに属する画素パターンを対応させる第2の対応関係情報を作成し、同じモチーフ内でも格子角度値を若干分散させてより効果的な表現を可能にするとともに、第1のモチーフについては配置角度範囲の中心角を例えば45°とし、第2のモチーフについては配置角度範囲の中心角を例えば90°とし、配置角度の分散を例えばいずれも5°』にする、『テーマとなっているモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、2列目の画素位置をマウスなどで指定して初期値θ=30°を入力し、6列目の画素位置をマウスなどで指定して終期値θ=150°を入力し、他に、ステップ値として30°を指定するといったグラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与えると、モチーフにおける左右の各部において光が観察される角度が異なり実際の記録媒体を手に取って傾けながら観察すると左右に光が流れるような効果が得られ』る手段」は、それぞれ、本願発明の「異方性反射特性を有するセル」、「複数の図柄」、「異方性反射媒体」、「複数の図柄が多重化される」、「異方性反射特性を有するセルの集合により形成され、複数の図柄が多重化される異方性反射媒体の作製に用いる図柄多重化装置」、「前記図柄ごとにセルグループを形成するセルグループ形成手段」及び「『前記セルグループごとに条溝角度範囲を割り当てる条溝角度範囲割当手段』と、『前記条溝角度範囲によって一意に定まる単調関数を用いて』、『セルごとに条溝角度を決定し』、『全てのセルグループに含まれるセル群の凹凸を表現する版下データを作成』する『版下データ作成手段』」に相当する。

(2)上記(1)に照らせば、本願発明と引用発明1とは、
「異方性反射特性を有するセルの集合により形成され、複数の図柄が多重化される異方性反射媒体の作製に用いる図柄多重化装置であって、
前記図柄ごとにセルグループを形成するセルグループ形成手段と、
前記セルグループごとに条溝角度範囲を割り当てる条溝角度範囲割当手段と、
前記条溝角度範囲によって一意に定まる単調関数を用いて、セルごとに条溝角度を決定し、全てのセルグループに含まれるセル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段と、
を具備する図柄多重化装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記条溝角度の決定が、
本願発明では、「前記図柄に係る三次元形状を投影面に投影し、投影された各画素の法線方向に係る仰角および方位角を法線情報として記録する法線情報記録手段」と、「前記法線情報に係るベクトルを、前記図柄ごとに特定の方位角を持つ法線投影面に投影し、投影されたベクトルに係る仰角を変換法線情報とする法線情報変換手段」と、をさらに具備し、該変換法線情報をスケール変換することでなされるのに対して、
引用発明1では、それらの手段を具備しない点。

相違点2:
複数の前記「図柄に対応する条溝角度範囲」が、
本願発明では、一部が互いに重複するのに対し、
引用発明1では、重複していない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)引用例2には、上記3(2)のとおり、引用発明2(上記3(2)エ参照。)が記載されている。
引用発明2は、
「2次元平面上に示される規則的なパターン情報は、視点位置や光源位置に拠らず、一定の情報量を表すことしかできなかったので、視点位置や光源位置により異なる角度から画像を見ると異なる情報を表示し、表現する情報量の多い画像の印刷物を容易に提供できるようにするために、異方性反射特性を有する画像を利用して視点や光源により異なる情報を示す画像を生成できるようにした、媒体に凹凸状の溝を用いて情報を表現する画像を生成する画像生成装置」であって、
「CPU、ROM、RAM等で構成される制御部、記憶部、メディア入出力部、入力部、印刷部、表示部等が、システムバスを介して接続されて構成されるコンピュータ」であり、
前記CPUは、「記憶部、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、システムバスを介して接続された各装置を駆動制御し、画像生成装置が行う後述する各種処理を実現」し、
前記記憶部は、HDDであり、「制御部が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS等」が格納され、プログラムに関しては、「OSに相当する制御プログラムや、画像生成装置が行う後述の処理に相当するアプリケーションプログラム等」が格納されており、
「画像によって表現する情報を3次元形状としてモデリングするモデリング装置」、
「モデリング装置によってモデリングされた3次元形状を所定の投影面に投影した際の法線ベクトルの分布を求める装置である法線情報記録装置」、
「法線情報記録装置によって求められた2次元情報をスカラー情報に変換する装置である法線情報変換装置」、
「法線情報変換装置によって求められたスカラー情報に基づいて、画素ごとに溝の角度を求める装置である角度変換装置」等から構成され、
「前記情報を3次元形状として表す形状生成部」と、
「前記3次元形状の表面上における法線ベクトルを、第1の投影面に投影した第1の投影ベクトルの第1の仰角と方位角を求める手段」と、
「前記第1の投影面に対して垂直、かつ、前記方位角方向の第2の投影面に第1のベクトルを投影させた第2の投影ベクトルの第2の仰角を求める手段」と、
「前記第2の仰角を、前記媒体上の前記溝の角度に変換する手段」と、を具備するものである。

(2)引用発明1は、回折格子により所定のモチーフを表現するホログラム記録媒体の作成装置であって、コンピュータによって任意のモチーフ画像を作成することができ、また、各画素内に形成する回折格子の画像パターンも、コンピュータによって作成することができ、最終的なホログラムパターン作成までの作業をすべてコンピュータによって処理することができ、光学的な撮影を行うことなしに、コンピュータによって発生した回折格子パターンデータによってホログラム記録媒体の作成を可能にし、一度作成した回折格子パターンデータを保存しておき、このデータに基づいて再度ホログラム記録媒体の作成作業を行えば、ほぼ同じ記録媒体を得ることができ、ほぼ完全な再現性が得られ、光学的な撮影を行わないめ鮮明なホログラム像が得られるようにしたものであり、種々の演算処理を行うためのプログラムを搭載したコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力機器、ディスプレイやプリンタなどの出力機器、フロッピディスクドライブ装置やハードディスクドライブ装置などの外部記憶装置、などを有するワークステーションを基本的な構成要素として有しており、該ワークステーションにより、オペレータは、対話式に指示を入力することにより、搭載した作画ソフトウエアを用いてモチーフ画素情報を作成するものであるが、三次元立体像ではなく二次元の絵柄がモチーフとして用いられるものであるところ、
引用発明1のコンピュータも、引用発明2のコンピュータの記憶部が格納し制御部が実行する「画像生成装置が行う後述の処理に相当するアプリケーションプログラム」を搭載できるようになし得ることが当業者に自明であるから、
引用発明1において、3次元形状のモチーフ画像も扱えるようにするために、ワークステーションを基本的な構成要素として有している前記コンピュータに、引用発明2のコンピュータの記憶部が格納し制御部が実行する「画像生成装置が行う後述の処理に相当するアプリケーションプログラム」を搭載し、
引用発明2と同様に、
「画像によって表現する情報を3次元形状としてモデリングするモデリング装置」、「モデリング装置によってモデリングされた3次元形状を所定の投影面に投影した際の法線ベクトルの分布を求める装置である法線情報記録装置」、「法線情報記録装置によって求められた2次元情報をスカラー情報に変換する装置である法線情報変換装置」、「法線情報変換装置によって求められたスカラー情報に基づいて、画素ごとに溝の角度を求める装置である角度変換装置」を備え、
「前記情報を3次元形状として表す形状生成部」、「前記3次元形状の表面上における法線ベクトルを、第1の投影面に投影した第1の投影ベクトルの第1の仰角と方位角を求める手段」、「前記第1の投影面に対して垂直、かつ、前記方位角方向の第2の投影面に第1のベクトルを投影させた第2の投影ベクトルの第2の仰角を求める手段」及び「前記第2の仰角を、前記媒体上の前記溝の角度に変換する手段」も具備し、
「モデリング装置が、第1の画像或いは第2の画像に表現する情報を3次元形状としてモデリングする第1ステップ」と、「法線情報記録装置が、3次元形状の表面上の各要素(画素に対応する点)における法線ベクトルnを投影面に投影して、投影面上の法線ベクトルNの2次元情報である、仰角と方位角を算出する第2ステップ」と、「法線情報変換装置が、投影面上の法線ベクトルNを方位角方向に設けた法線投影面に投影させた際のベクトルN’の仰角tを求める第3ステップ」と、「角度変換装置が、求められた仰角tに従って、画素ごとの溝の角度を算出し、エンボス加工印刷による3Dホログラム原版の版下を作成する第4ステップ」とからなり、第4ステップでは、前記角度変換装置は、仰角tに基づいて、各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化する異方性反射部を有する画像の生成処理を行うようになすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことである。
そして、そのようにした引用発明1のホログラム記録媒体の作成装置において、前記第1及び第2のモチーフを表現する情報を3次元形状として前記モデリング装置でモデリングし、第4ステップで、前記角度変換装置が仰角tに基づいて各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化すると、第1のモチーフに対応する第1の異方性反射部の溝の配置角度範囲の中心角が例えば10°になり、第2のモチーフに対応する第2の異方性反射部の溝の配置角度範囲の中心角が例えば20°になるような3次元形状をモデリングし、第1のモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、始点の画素位置をマウスなどで指定して例えば初期値θ=0°を入力し、終点の画素位置をマウスなどで指定して例えば終期値θ=20°を入力し、ステップ値として例えば5°を指定するといったグラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与え、第2のモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、始点の画素位置をマウスなどで指定して例えば初期値θ=10°を入力し、終点の画素位置をマウスなどで指定して例えば終期値θ=30°を入力し、ステップ値として例えば5°を指定するといったグラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与えること、あるいは、第4ステップで、前記角度変換装置が仰角tに基づいて各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化すると、第1のモチーフに対応する第1の異方性反射部の溝の配置角度が例えば0°ないし20°の範囲で連続的に変化するものになり、第2のモチーフに対応する第2の異方性反射部の溝の配置角度が例えば10°ないし30°の範囲で連続的に変化するものとなるような3次元形状をモデリングすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである(ホログラム記録媒体の複数の画像の観察可能な角度範囲が重複するものは、例として、特開2007-333925号公報の【0068】ないし【0071】の記載、特開2007-333924号公報の【0069】ないし【0072】及び図2の記載、特開平9-300859号公報の【0025】及び【0026】の記載にみられるように、本願の出願前に周知である。)。

(3)上記(2)における「3次元形状の表面上の各要素(画素に対応する点)における法線ベクトルnを投影面に投影して、投影面上の法線ベクトルNの2次元情報である、仰角と方位角を算出する、モデリング装置によってモデリングされた3次元形状を所定の投影面に投影した際の法線ベクトルの分布を求める装置である法線情報記録装置」、「投影面上の法線ベクトルNを方位角方向に設けた法線投影面に投影させた際のベクトルN’の仰角tを求める、法線情報記録装置によって求められた2次元情報をスカラー情報に変換する装置である法線情報変換装置」及び「法線情報変換装置によって求められたスカラー情報に基づいて、画素ごとに溝の角度を求める装置である角度変換装置が、第4ステップで、仰角tに基づいて、各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化すること」は、それぞれ、本願発明の「前記図柄に係る三次元形状を投影面に投影し、投影された各画素の法線方向に係る仰角および方位角を法線情報として記録する法線情報記録手段」、「前記法線情報に係るベクトルを、前記図柄ごとに特定の方位角を持つ法線投影面に投影し、投影されたベクトルに係る仰角を変換法線情報とする法線情報変換手段」及び「前記変換法線情報をスケール変換すること」に相当し、
上記(2)のように「前記第1及び第2のモチーフを表現する情報を3次元形状として前記モデリング装置でモデリングし、第4ステップで、前記角度変換装置が仰角tに基づいて各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化すると、第1のモチーフに対応する第1の異方性反射部の溝の配置角度範囲の中心角が例えば10°になり、第2のモチーフに対応する第2の異方性反射部の溝の配置角度範囲の中心角が例えば20°になるような3次元形状をモデリングし、第1のモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、始点の画素位置をマウスなどで指定して例えば初期値θ=0°を入力し、終点の画素位置をマウスなどで指定して例えば終期値θ=20°を入力し、ステップ値として例えば5°を指定するといったグラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与え、第2のモチーフをディスプレイ画面上に表示させた上で、グラデーションをかける旨の指示を与えるとともに、始点の画素位置をマウスなどで指定して例えば初期値θ=10°を入力し、終点の画素位置をマウスなどで指定して例えば終期値θ=30°を入力し、ステップ値として例えば5°を指定するといったグラデーションをかけるための対応関係情報を作成する旨の指示を与える、あるいは、第4ステップで、前記角度変換装置が仰角tに基づいて各画素における溝の角度θを-45°≦θ≦45°の範囲に正規化すると、第1のモチーフに対応する第1の異方性反射部の溝の配置角度が例えば0°ないし20°の範囲で連続的に変化するものになり、第2のモチーフに対応する第2の異方性反射部の溝の配置角度が例えば10°ないし30°の範囲で連続的に変化するものとなるような3次元形状をモデリングする」と、「第1のモチーフに対応する第1の異方性反射部の溝の配置角度範囲0°ないし20°」と「第2のモチーフに対応する第2の異方性反射部の溝の配置角度範囲10°ないし30°」とは「10°ないし20°」の範囲で互いに重複するから、
引用発明1において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、上記(2)からして、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことであり、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、上記(2)からして、当業者が引用発明2に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(4)本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果及び引用発明2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(5)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-25 
結審通知日 2013-10-01 
審決日 2013-10-15 
出願番号 特願2008-199635(P2008-199635)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 図柄多重化装置、図柄多重化方法、プログラムおよび異方性反射媒体  
代理人 井上 誠一  

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