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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1282612
審判番号 不服2011-25955  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-01 
確定日 2013-12-19 
事件の表示 特願2004-109978「中空状物品」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日出願公開、特開2005-289931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,平成16年4月2日の特許出願(特許法30条1項の規定の適用を受けようとするもの。以下,同条4項の規定により提出された書面を「新規性の喪失の例外証明書」という。)であって,平成23年9月2日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年12月1日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書が補正されたので,特許法162条所定の審査がされた結果,平成24年2月10日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知され,同年4月16日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正され,同年5月9日付けで同法164条3項の規定による報告がされ,平成25年7月5日付けで同法134条4項の規定による審尋がされ,同年8月29日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年4月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面(以下,当該明細書と図面を併せ,「本願明細書」という。)の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「第1の管状体の先端部がストップ栓で閉じられ,中空形状をなしている中空体の内面に,液体中に存在する物質と反応して気体を発生する感応膜が形成されてなる,一端開放形状の中空状物品であって,
該第1の管状体の内部に第2の管状体が配置されて前記ストップ栓の一端部が該第2の管状体の内側に挿入されており,
前記ストップ栓が挿入された側と反対側の先端部は,前記第1の管状体と前記第2の管状体との間が閉じられているとともに,該第2の管状体に,前記感応膜によって発生した気体を排出するための排出口が設けられ,
前記感応膜が,前記中空体の内面上に,1種以上の触媒を含有する樹脂層を積層させてなる触媒固定化膜であり,
前記触媒が,前記中空体を液体中に入れたときに,液体中に存在する物質との触媒反応によって反応後に気体を発生させる酵素又は微生物であり,
液体中に入れた前記中空体の前記感応膜で発生した気体を,前記第1の管状体と前記第2の管状体との間,前記ストップ栓と前記第2の管状体との間,および前記第2の管状体の内部を通して前記排出口から排出させることができる,中空状物品。」

第3 本件拒絶理由
本件拒絶理由は,要するに,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である下記引用文献2に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができず,または,下記引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
なお,下記引用文献2は,新規性の喪失の例外証明書に係る刊行物が発表された日(2003年10月4日)よりも後に発表された刊行物であり,また,その発表した者は,本願発明について特許を受ける権利を有する者と異なっている(上記発表した者のうち,青木宏司は,本願の発明者ではない。)。
引用文献2: 生体材料を利用した人工運動体関する研究,21世紀連合シンポジウム論文集,2003年11月16日, vol.2nd, pages 143-144

第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 本件拒絶理由で引用された引用文献2には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
・摘記a(143頁10?18行)
生体材料であるカタラーゼ酵素を利用し,基質である過酸化水素の触媒反応に伴う体積変化(能動的な圧力発生)を駆動エネルギーとする新規な運動体(ケミカル・アクチュエータ)を構築した。
本デバイスは外殻を透析チューブ,内部を熱収縮管にて形成し,先端部分をシリコンリングとストップ栓にて密閉した「一端開放の円柱型中空体」で,内部表面に酵素を固定化して作製した。
本アクチュエータを過酸化水素溶液中に浸したところ,外殻とした透析チューブ側面より過酸化水素を中空内部に取り込み,カタラーゼの触媒反応に伴う酸素を生成・気化し,開放端より放出する連続的な浮泳運動が可能であった。
・摘記b(143頁下から5行?144頁8行)
【2】実験方法
作製した運動体の構成図を,図1に示す。
運動体は外殻を透析チューブ(Spectra/Por molecular porous membrane tubing:φ3.8, molecular weight: 15000/Spectram)により形成したもので,チューブ内面にカタラーゼ酵素…を固定化し,熱収縮管を組み合わせて構成された一端開放の円柱型中空体である。
作製ではまず,熱収縮管を適当な長さに切断した後,一端部分を収縮し,この部分を排出口とした。一方,外殻となる透析チューブはストップ栓とシリコンリングにて片側を密閉し,一端開放の形状として準備した。最後に,カタラーゼと光架橋性樹脂…との混合溶液…をシリンジにて,透析チューブの内部表面に塗布し,熱収縮管の排出口が開放端側となるようにチューブ内に挿入した後,…乾燥させ,…合計6時間の蛍光灯照射を行うことで酵素を包括固定化し,作製した。
・摘記c(144頁13?18行)
【3】結果と考察
実験の結果,基質である過酸化水素溶液…中で運動体の連続的な浮泳運動を観察することが可能であった。…この運動は,基質である過酸化水素を運動体側面(透析チューブ)より中空内部に取り込み,固定化されたカタラーゼの触媒反応にて酸素が生成され,気化し,チューブの開放端より放出したことによるものである。
・摘記d(144頁_図1.人工運動体の構造)


(2) 上記(1)の摘記,特に摘記a及びbの記載,ならびに摘記dの図面における左右側面図の対比より,ストップ栓と熱収縮管の中心軸が同軸上に配置されてなること,ストップ栓の径が熱収縮管の収縮されていない部分(透析チューブ内に位置する部分)の径よりも小さいことが認められるので,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定しうる。
「透析チューブの先端部がストップ栓とシリコンリングで閉じられた中空形状をなしている中空体の内面に,過酸化水素溶液中に存在する過酸化水素と反応して酸素を発生するカタラーゼ酵素を固定化した膜が形成されてなる,一端開放形状の中空状の運動体(ケミカル・アクチュエータ)であって,
該透析チューブの内部に,前記ストップ栓の径よりも大きい径を有する熱収縮管が前記ストップ栓と同軸上に配置されており,
前記ストップ栓とシリコンリングで閉じられた側と反対側の先端部は,前記透析チューブと前記熱収縮管との間がシリコンリングにて閉じられているとともに,該熱収縮管に,その一端部分が収縮され,前記膜によって発生した酸素を排出するための排出口が設けられ,
前記膜が,前記中空体の内面上に,カタラーゼ酵素を含有する光架橋性樹脂層を積層させてなる触媒固定化膜であり,
前記カタラーゼ酵素が,前記中空体を過酸化水素溶液中に入れたときに,溶液中に存在する過酸化水素との触媒反応によって反応後に酸素を発生させる酵素であり,
過酸化水素溶液中に入れた前記中空体の前記膜で発生した酸素を,前記透析チューブと前記熱収縮管との間,および前記熱収縮管の内部を通して前記排出口から排出させることができる,中空状の運動体」

2 対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「透析チューブ」,「熱収縮管」及び「中空状の運動体」は,それぞれ本願発明の「第1の管状体」,「第2の管状体」及び「中空状物品」に相当する。
また,引用発明の「カタラーゼ酵素を固定化した膜」は,本願発明の「感応膜」ないしは「触媒固定化膜」に相当するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明との一致点,相違点はそれぞれ次のとおりである。
・ 一致点
第1の管状体の先端部がストップ栓で閉じられ,中空形状をなしている中空体の内面に,液体中に存在する物質と反応して気体を発生する感応膜が形成されてなる,一端開放形状の中空状物品であって,
該第1の管状体の内部に第2の管状体が配置されており,
前記ストップ栓が挿入された側と反対側の先端部は,前記第1の管状体と前記第2の管状体との間が閉じられているとともに,該第2の管状体に,前記感応膜によって発生した気体を排出するための排出口が設けられ,
前記感応膜が,前記中空体の内面上に,1種以上の触媒を含有する樹脂層を積層させてなる触媒固定化膜であり,
前記触媒が,前記中空体を液体中に入れたときに,液体中に存在する物質との触媒反応によって反応後に気体を発生させる酵素であり,
液体中に入れた前記中空体の前記感応膜で発生した気体を,前記第1の管状体と前記第2の管状体との間,および前記第2の管状体の内部を通して前記排出口から排出させることができる,中空状物品。
・ 相違点
第1の管状体(透析チューブ)の内部に配置された第2の管状体(熱収縮管)について,本願発明は「前記ストップ栓の一端部が該第2の管状体の内側に挿入」されてなる特定事項を有し,併せて,液体中に入れた中空体の感応膜で発生した気体を「前記ストップ栓と前記第2の管状体との間」をも通して排出口から排出させることができるとの特定事項を有するものであるのに対し,引用発明はそのような特定事項を有していない点

3 相違点についての判断
(1) 引用発明(運動体)の外殻を構成する「透析チューブ」とは,引用文献2に「外殻とした透析チューブ側面より過酸化水素を中空内部に取り込み」(摘記a)との記載があることからも理解できるとおり,いわゆる透析膜であって,その膜厚は極めて薄いため,ストップ栓とシリコンリングが付設された透析チューブは,それのみで自立させるのは困難であると解される。この点,本願発明について,本願明細書にも,第1の管状体が透析チューブである場合,形態を維持するために,その内部に第2の管状体を配置することが好ましい旨の記載がある(【0020】)。
そして,引用発明は,上記1(2)で認定のとおり,ストップ栓と熱収縮管との関係について,「前記ストップ栓の径よりも大きい径を有する熱収縮管が前記ストップ栓と同軸上に配置」された構成からなるものであるところ,それのみでは自立するのが困難な透析チューブの一端側に設けられてなるストップ栓と,熱収縮管とが上述のような配置関係をとるためには,引用文献2に明示がなくとも,ストップ栓の一端部が熱収縮管の内側に挿入された構成が採用されていると当業者であれば容易に理解するといえる。しかも,引用発明は,過酸化水素溶液中に入れた中空体の膜で発生した酸素を,最終的に「前記熱収縮管の内部を通して前記排出口から排出させることができる」ようにしてなるものであるから,ストップ栓の熱収縮管に対する上記挿入の形態について,ストップ栓と熱収縮管との間には酸素が通過できる程度の間隙が形成されているとも当業者は理解するはずである。
そうすると,上記相違点はそもそも実質的な相違点であるといえない。

(2) 仮に,上記相違点が実質的に相違するものである,換言すれば,引用文献2にはストップ栓の一端部が熱収縮管の内側に挿入された構成が実質的に記載されているとはいえないとしても,本願発明の上記相違点に係る構成は,当業者であれば想到容易である。
すなわち,引用発明において,ストップ栓と熱収縮管との関係は,「前記ストップ栓の径よりも大きい径を有する熱収縮管が前記ストップ栓と同軸上に配置され」るものであって,ストップ栓の一端部については,熱収縮管の内側に挿入される構成をとるか,挿入されない構成をとるか,のいずれかである。さすれば,上記二者択一の構成のうち前者を採用することは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
あるいは,人工運動体として液中を浮泳運動する引用発明において,極めて薄い膜厚の透析チューブからなる当該運動体の運動方向先端部(しかも,該先端部にはストップ栓とシリコンリングが設けられている。)を固定しないことは通常考えられず,その固定にあたり,当該先端部に設けられたストップ栓をその径よりも大きい熱収縮管の内側に挿入する構成を想到するのは,当業者であれば容易になし得る。
しかも,上述のような構成をとるに際し,ストップ栓と熱収縮管との間に酸素が通過できる程度の間隙を形成することも,引用発明が過酸化水素溶液中に入れた中空体の膜で発生した酸素を最終的に「前記熱収縮管の内部を通して前記排出口から排出させることができる」ようにしてなるものであるからして,当業者が当然考慮すべき技術事項であるといえる。

(3) 請求人は,回答書において,本願発明の奏する作用効果として,本願発明はストップ栓の一端部が第2の管状体の内側に挿入されているので,ストップ栓がある側で第2の管状体の位置が定まらず,第1の管状体の内面と第2の管状体の外面とが接触して中空状物品の形態を維持することができなくなるといったことがなく,また,第1の管状体の内面と第2の管状体の外面とが接触しないので,接触箇所で気体の発生が妨げられ,最終的に排出される気体が少なくなって性能が低下するといった問題はない旨主張する。
そこで検討するに,そもそも本願発明の「前記ストップ栓の一端部が該第2の管状体の内側に挿入されて」なる構成は,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず,図1からそのような構成が認識されるにすぎないものである。
しかも,請求人が主張するような本願発明の奏する作用効果は,本願明細書に記載されたものではない。確かに,本願発明は請求人が主張するような効果を奏するものであるかもしれないが,そのような効果は,技術常識に照らし自明な事項である(であるから,本願明細書に記載がなくても,請求人の上記主張は許される。)。
以上を総合すると,本願発明の上記作用効果は,引用文献2に記載がなくても,引用発明が上記相違点に係る構成を採用したときに,予測しうる程度のものであるといえる。請求人の上記主張は,上記(1)及び(2)の判断を何ら左右しないといわざるを得ない。

4 小活
以上のとおり,本願発明は,引用発明と実質的に同一であるので引用文献2に記載された発明であるか,あるいは引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第5 むすび
したがって,本願発明は,引用文献2に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができず,または,引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-17 
結審通知日 2013-10-22 
審決日 2013-11-05 
出願番号 特願2004-109978(P2004-109978)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人瀬下 浩一  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 加賀 直人
須藤 康洋
発明の名称 中空状物品  
代理人 関根 武  
代理人 渡部 温  
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