• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1282731
審判番号 不服2012-12287  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-28 
確定日 2013-12-18 
事件の表示 特願2010-208573「他のソフトウェアの使用を正当なユーザのみに規制するためのソフトウェアおよびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月 3日出願公開、特開2011- 44155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・概要

1.手続の経緯
本件請求に係る出願(以下「本願」と記す)は
1999年12月20日を国際出願日とする特願2001-547259号を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願として、
平成22年9月16日付けで出願されたものであって、
同日付けで上申書が提出され、
平成22年9月30日付けで審査請求がなされ、
平成23年7月13日付けで拒絶理由通知(平成23年7月26日発送)がなされ、
平成24年1月25日付けで意見書が提出されると共に、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成24年2月16日付けで拒絶査定(平成24年2月28日謄本送達)がなされ、
平成24年6月28日付けで、「原査定を取り消す、この出願の発明は特許をすべきものであるとの審決を求める。」との趣旨で、本件審判請求がなされると共に、
同日付けで、手続補正書が提出されたものである。

なお、
平成24年9月25日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成24年12月6日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成24年12月11日発送)がなされ、これに対して
平成25年3月8日付けで回答書が提出されている。

2.補正の内容
(1)平成24年1月25日付け手続補正
上記平成24年1月25日付けの手続補正書により、本願の特許請求の範囲は以下のとおりに補正された。
「 【請求項1】
ソフトウェアの所定費用が認可済み使用者により支払われ、且つ該ソフトウェアの第1のコピーが第1の計算装置上で使用可能となった後、
該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する一方、該ソフトウェアが更に少なくとも追加の1つ(第2)の計算装置上で使用可能にすることにより、該所定費用で販売される保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法であって、該方法が、
(a)第2の計算装置から遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する工程と、
(b)該遠隔地にある電子商取引システムより該認証情報が正しいとの証明結果を第2の計算装置が受信する工程と、
(c)当初、第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアの第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程と、を有し、該認証情報は、もし正しければ、該遠隔地にある電子商取引システムが該認可済の使用者の口座からの支払いの実行を可能にする認可に使用することができ、該認可は、無料または該所定費用より安い費用で実施される、保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項2】
該保護したいソフトウェアは、プロテクトされたファイルの形で該認可済の使用者により使用可能である、請求項1に記載の保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項3】
前記保護したいソフトウェアは、前記提供する工程の前に、第2の計算装置に存在する、請求項1に記載の保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項4】
第2の計算装置と前記遠隔地にある電子取引システムとは、通信ネットワークの使用を介して互いに通信する、請求項1に記載の保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項5】
前記使用工程は、
第2の計算装置に、秘密裡に前記認証情報の正しさを表示する情報を記憶するための必要条件として、前記認証情報が正しいとの証明を使用するサブステップの後に、前記ソフトウェアの第2のコピーが第2の計算装置上で使用されることを許可するための必要条件として、前記第2の計算装置に記憶された前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報を使用するサブステップからなり、前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報は前記ソフトウェアの第2のコピーではない、請求項1に記載の保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項6】
前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報は、前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報に基づき、前記第2のコピーが使用される計算装置を第2の計算装置と以降認可するための、及び前記認可がなされれば、前記第2のコピーの使用を許可するための、第2の計算装置から得られたソフトウェア及び/又はハードウェアの情報を含む、請求項5に記載の保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項7】
前記ソフトウェアは、各々が所有権に関係する情報を含み、更に、
前記ソフトウェアから前記所有権に関係する情報を得る工程;
前記所有権に関する情報に基づき、前記ソフトウェアが同じ所有権に属するかどうかを決定する工程;
もし前記決定工程において、前記ソフトウェアが異なる所有権に属すると決定されたならば、前記ソフトウェアの少なくとも1つが前記第2の計算装置上で使用されることを防止し、そうでない場合は、前記ソフトウェアが前記第2の計算装置上で使用されるようにする工程、からなる請求項1に記載の保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項8】ソフトウェアの所定費用が認可済み使用者により支払われ、且つ該ソフトウェアの第1のコピーが第1の計算装置上で使用可能となった後、
該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する一方、該ソフトウェアが更に少なくとも追加の1つ(第2)の計算装置上での使用を許可することにより、該所定費用で販売される保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する装置であって、該装置が、
(a)遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する手段と、
(b)該遠隔地にある電子商取引システムから該認証情報の正しさを証明する結果を受信する手段と、
(c)当初、第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアが第2の計算装置上で使用される、認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する手段と、を有し、
該認証情報は、もし正しければ、該遠隔地にある電子商取引システムが該認可済の使用者の口座からの支払いの実行を可能にする認可に使用することができ、該認可は、無料または該所定費用より安い費用で実施される、保護したいソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する装置。」

(2)平成24年6月28日付け手続補正
上記平成24年6月28日付けの手続補正書は、本願の特許請求の範囲を以下のとおりに補正しようとするものである。
「 【請求項1】
ソフトウェアの所定費用が認可済み使用者により支払われ、且つ該ソフトウェアの第1のコピーが、第1の計算装置上で使用可能となった後、
該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する一方、該ソフトウェアを、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上でさらに使用可能にすることにより、該所定費用で販売されるソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法であって、
(a)第2の計算装置から遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する工程と、
(b)該遠隔地にある電子商取引システムより該認証情報が正しいとの証明結果を該第2の計算装置が受信する工程と、
(c)当初、該第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、該第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアの該第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程とを含み、
該認証情報は、もし正しければ、該遠隔地にある電子商取引システムが該認可済の使用者の個人口座からの支払いの実行を可能にする認可に使用することができ、
該認可は、無料または該所定費用より安い費用で該個人口座に対して実施される、ソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項2】
該ソフトウェアは、プロテクトされたファイルの形で該認可済の使用者により使用可能である、請求項1に記載のソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項3】
前記ソフトウェアは、前記提供する工程の前に、第2の計算装置に存在する、請求項1に記載のソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項4】
第2の計算装置と前記遠隔地にある電子取引システムとは、通信ネットワークの使用を介して互いに通信する、請求項1に記載のソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項5】
前記使用する工程は、
第2の計算装置に、秘密裡に前記認証情報の正しさを表示する情報を記憶するための必要条件として、前記認証情報が正しいとの証明を使用するサブステップの後に、前記ソフトウェアの第2のコピーが第2の計算装置上で使用されることを許可するための必要条件として、前記第2の計算装置に記憶された前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報を使用するサブステップからなり、前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報は前記ソフトウェアの第2のコピーではない、請求項1に記載のソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項6】
前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報は、前記認証情報が正しいとの証明を表示する前記情報に基づき、前記第2のコピーが使用される計算装置を第2の計算装置と以降認可するための、及び前記認可がなされれば、前記第2のコピーの使用を許可するための、第2の計算装置から得られたソフトウェア及び/又はハードウェアの情報を含む、請求項5に記載のソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項7】
前記ソフトウェアは、各々が所有権に関係する情報を含み、 前記ソフトウェアから前記所有権に関係する情報を得る工程と、 前記所有権に関する情報に基づき、前記ソフトウェアが同じ所有権に属するかどうかを決定する工程とをさらに含み、
もし前記決定する工程において、前記ソフトウェアが異なる所有権に属すると決定されたならば、前記ソフトウェアの少なくとも1つが前記第2の計算装置上で使用されることを防止し、そうでない場合は、前記ソフトウェアが前記第2の計算装置上で使用されるようにする工程、からなる請求項1に記載のソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。
【請求項8】
ソフトウェアの所定費用が認可済み使用者により支払われ、且つ該ソフトウェアの第1のコピーが、第1の計算装置上で使用可能となった後、
該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する一方、該ソフトウェアの、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上での使用をさらに許可することにより、該所定費用で販売されるソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する装置であって、 (a)遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する手段と、
(b)該遠隔地にある電子商取引システムから該認証情報の正しさを証明する結果を、受信する手段と、
(c)当初、第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを該第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアが該第2の計算装置上で使用される、認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する手段とを備え、 該第2の計算装置は、該提供する手段と、該受信する手段と、該使用する手段とを備え、
該認証情報は、もし正しければ、該遠隔地にある電子商取引システムが該認可済の使用者の個人口座からの支払いの実行を可能にする認可に使用することができ、該認可は、無料または該所定費用より安い費用で該個人口座に対して実施される、ソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する装置。」


第2.平成24年6月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年6月28日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成24年6月28日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、上記第1.2.(1)記載の特許請求の範囲から、上記第1.2.(2)記載の特許請求の範囲に補正しようとするものである。


2.補正内容の分析
本件補正は、下記の補正事項よりなるものである。

<補正事項1>
本件補正前の請求項1の
「且つ該ソフトウェアの第1のコピーが第1の計算装置上で使用可能となった後」
との記載中を
「且つ該ソフトウェアの第1のコピーが、第1の計算装置上で使用可能となった後」に変更する補正。

<補正事項2>
本件補正前の請求項1の
「該ソフトウェアが更に少なくとも追加の1つ(第2)の計算装置上で使用可能にすること」
との記載を
「該ソフトウェアを、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上でさらに使用可能にすること」
に変更する補正。

<補正事項3>
本件補正前の請求項1の
「該所定費用で販売される保護したいソフトウェア」
との記載を
「該所定費用で販売されるソフトウェア」
に変更する補正。

<補正事項4>
本件補正前の請求項1の
「保護する方法であって、該方法が、」
との記載を
「保護する方法であって、」
に変更する補正。

<補正事項5>
本件補正前の請求項1の
「(b)該遠隔地にある電子商取引システムより該認証情報が正しいとの証明結果を第2の計算装置が受信する工程」
との記載を
「(b)該遠隔地にある電子商取引システムより該認証情報が正しいとの証明結果を該第2の計算装置が受信する工程」
に変更する補正。

<補正事項6>
本件補正前の請求項1の
「(c)当初、第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアの第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程」
との記載を
「(c)当初、該第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、該第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアの該第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程」
に変更する補正。

<補正事項7>
本件補正前の請求項1の
「該認証情報が正しいとの証明を使用する工程と、を有し、該認証情報は」
との記載を
「該認証情報が正しいとの証明を使用する工程とを含み、
該認証情報は」
に変更する補正。

<補正事項8>
本件補正前の請求項1の
「使用者の口座」
との記載を
「使用者の個人口座」
に変更する補正。

<補正事項9>
本件補正前の請求項1の
「無料または該所定費用より安い費用で実施される」
との記載を
「無料または該所定費用より安い費用で該個人口座に対して実施される」
に変更する補正。

<補正事項10>
本件補正前の請求項1の
「、保護したいソフトウェア」
との記載を
「、ソフトウェア」
に変更する補正。

<補正事項11>
本件補正前の請求項2の
「該保護したいソフトウェア」
との記載を
「該ソフトウェア」
に変更する補正。

<補正事項12>
本件補正前の請求項2の
「請求項1に記載の保護したいソフトウェアを」
との記載を
「請求項1に記載のソフトウェアを」
に変更する補正。

<補正事項13>
本件補正前の請求項3の
「前記保護したいソフトウェア」
との記載を
「前記ソフトウェア」
に変更する補正。

<補正事項14>
本件補正前の請求項3の
「請求項1に記載の保護したいソフトウェアを」
との記載を
「請求項1に記載のソフトウェアを」
に変更する補正。

<補正事項15>
本件補正前の請求項4の
「請求項1に記載の保護したいソフトウェアを」
との記載を
「請求項1に記載のソフトウェアを」
に変更する補正。

<補正事項16>
本件補正前の請求項5の
「前記使用工程」
との記載を
「前記使用する工程」
に変更する補正。

<補正事項17>
本件補正前の請求項5の
「請求項1に記載の保護したいソフトウェアを」
との記載を
「請求項1に記載のソフトウェアを」
に変更する補正。

<補正事項18>
本件補正前の請求項6の
「請求項5に記載の保護したいソフトウェアを」
との記載を
「請求項5に記載のソフトウェアを」
に変更する補正。

<補正事項19>
本件補正前の請求項7の
「前記ソフトウェアは、各々が所有権に関係する情報を含み、更に、」
との記載を
「前記ソフトウェアは、各々が所有権に関係する情報を含み、」
に変更する補正。

<補正事項20>
本件補正前の請求項7の
「前記ソフトウェアから前記所有権に関係する情報を得る工程;」
との記載を
「前記ソフトウェアから前記所有権に関係する情報を得る工程と、」
に変更する補正。

<補正事項21>
本件補正前の請求項7の
「前記所有権に関する情報に基づき、前記ソフトウェアが同じ所有権に属するかどうかを決定する工程;」
との記載を
「前記所有権に関する情報に基づき、前記ソフトウェアが同じ所有権に属するかどうかを決定する工程とをさらに含み、」
に変更する補正。

<補正事項22>
本件補正前の請求項7の
「もし前記決定工程において」
との記載を
「もし前記決定する工程において」
に変更する補正。

<補正事項23>
本件補正前の請求項7の
「請求項1に記載の保護したいソフトウェアを」
との記載を
「請求項1に記載のソフトウェアを」
に変更する補正。

<補正事項24>
本件補正前の請求項8の
「且つ該ソフトウェアの第1のコピーが第1の計算装置上で使用可能となった後」
との記載を
「且つ該ソフトウェアの第1のコピーが、第1の計算装置上で使用可能となった後」
に変更する補正。

<補正事項25>
本件補正前の請求項8の
「該ソフトウェアが更に少なくとも追加の1つ(第2)の計算装置上での使用を許可すること」
との記載を
「該ソフトウェアの、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上での使用をさらに許可すること」
に変更する補正。

<補正事項26>
本件補正前の請求項8の
「該所定費用で販売される保護したいソフトウェア」
との記載を
「該所定費用で販売されるソフトウェア」
に変更する補正。

<補正事項27>
本件補正前の請求項8の
「保護する装置であって、該装置が、」
との記載を
「保護する装置であって、」
に変更する補正。

<補正事項28>
本件補正前の請求項8の
「結果を受信する手段」
との記載を
「結果を、受信する手段」
に変更する補正。

<補正事項29>
本件補正前の請求項8の
「使用する手段と、を有し、」
との記載を
「使用する手段とを備え、」
に変更する補正。

<補正事項30>
本件補正前の請求項8の
「該認証情報は、もし正しければ」
との記載の前に、
「該第2の計算装置は、該提供する手段と、該受信する手段と、該使用する手段とを備え、」
との記載を追加する補正。

<補正事項31>
本件補正前の請求項8の
「使用者の口座」
との記載を
「使用者の個人口座」
に変更する補正。

<補正事項32>
本件補正前の請求項8の
「無料または該所定費用より安い費用で実施される」
との記載を
「無料または該所定費用より安い費用で該個人口座に対して実施される」
に変更する補正。

<補正事項33>
本件補正前の請求項8の
「、保護したいソフトウェア」
との記載を
「、ソフトウェア」に変更する補正。


3.新規事項追加禁止要件
本件補正について検討するに、上記補正事項8、9、31、32によって、補正後の請求項1、8に記載されることとなった「該認可済の使用者の個人口座からの支払いの実行」および該認可が「該個人口座に対して実施される」旨の技術的事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。
なお、請求人は審判請求書において『補正後の請求項1は、日本語として自然な表現になるように、補正前の請求項1の記載を整えるとともに、「使用者の口座」を「使用者の個人口座」に限定したものです。当該補正は、補正前の請求項1および出願当初の明細書の段落[0031]に基づいています。』と説明している。
しかしながら、当初明細書等の段落【0031】には
「これに加えて、ユーザが中央プログラムを実行させる際に、別の初期化工程が自動的に実行するように、ACサブプログラムが暗号化された状態情報をリセットし、その認可のために、中央コンピュータからの他の暗号化された命令が要求される。この暗号化された命令は、無料または保護されたソフトウェアの価値と比べて比較的安いサービス料金で提供されるべきである」
との記載があるのみで、口座を「個人口座」とすることは記載も示唆もされていない。
また、当初明細書等の他の箇所を参酌しても、口座を「個人口座」とすることを直接的にも間接的にも示唆する記載は見あたらない。
すなわち、当初明細書等のすべての記載を総合しても、上記の技術的事項を導き出し得るものではなく、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。


4.目的要件
本件補正は、審判の請求と同時にする補正であり、上記のとおり特許請求の範囲についてする補正であるから、以下に、本件補正における特許請求の範囲についてする補正の目的について検討する。
審判請求書で請求人が「なお、補正の前後で請求項の対応関係は変化していません。」と説明するとおり、本件補正前後で請求項の対応関係は変化してはいないので、本件補正は特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除には該当しない。
また、補正事項16、22は、特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものと認められる。
また、審判請求書で請求人が『また、上記補正は「使用者の口座」を「使用者の個人口座」と内的に限定するものであり、補正の前後で解決しようとする課題および産業上の利用分野は変化していないため、「限定的減縮」に該当します。』と説明するとおり、上記補正事項8、9、31、32は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条の第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下「限定的減縮」と記す。)に該当するものと言えなくもない。
そして、残る補正事項1?7、10?15、17?21、23?30、33に関しては.審判請求書で請求人が説明するとおり「日本語として自然な表現になるように、補正前の請求項1の記載を整え」、これに合わせて『保護したいソフトウェア」から「保護したい」を削除し、単に「ソフトウェア」と書き改めたもの』とするもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められるものの、上記補正事項1?7、10?15、17?21、23?30、33で補正された点に関して、拒絶の理由は通知されてはいないので、特許法第17条の2第4項第4号の括弧書き「(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)」との要件を満たすものではない。したがって、これらの補正事項は特許法第17条の2第4項第4号の「明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)」には該当しない。また、これらの補正事項が、特許法第17条の2第4項第1号、同第2号、同第3号のいずれにも該当しないことは明らかである。
してみると、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものに限られるものではない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。


5.独立特許要件
本件補正は、限定的減縮を目的とするものとも解し得る上記補正事項8、9、31、32を含むものであるので、本件補正後の請求項1、8に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。


5-1.本件補正後の請求項1に係る発明について

5-1-1.本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記第1.2.(2)において【請求項1】として記載したとおりのものである。


5-1-2.先行技術

(1)引用文献
本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年7月13日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献>
特開平11-98136号公報(平成11年4月9日出願公開)

<引用文献記載事項1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 データ提供者からネットワークを介してディジタルコンテンツ等の商品の提供を受けた利用者に課金を行う課金システムにおいて、システムを使用する利用者は利用者登録を行い、利用者が商品の提供要求を行う時は登録された利用者であることを表す利用者識別子及び提供要求商品を表すリクエストから構成される商品購入要求情報をネットワーク内の特定の中継サーバに送信し、中継サーバでは受信した利用者識別子から正規の利用者か否かを判定し、正規の利用者であればリクエストを解析し、提供要求商品の対象となるデータ提供者のサーバに前記リクエストを転送し、データ提供者のサーバでは中継サーバからリクエストを受信した時、対応する商品及びその課金情報を中継サーバに転送し、中継サーバでは受信した課金情報を利用者識別子に対応するデータとして加算するとともに料金情報を作成し、受信した商品とともに利用者に転送することを特徴とする課金システム。
【請求項2】 請求項1の課金システムにおいて、中継サーバはシステムに登録されていない利用者からの商品購入要求情報を受信した時は接続を拒否することを特徴とする課金システム。
【請求項3】 請求項1の課金システムにおいて、データ提供者のサーバは利用者から直接、提供要求商品を表すリクエストを受信した時は接続を拒否することを特徴とする課金システム。
【請求項4】 請求項1の課金システムにおいて、データ提供者のサーバはリクエストに対応する商品の一部を利用者に直接転送することを特徴とする課金システム。
【請求項5】 請求項1の課金システムにおいて、中継サーバは登録された利用者との間で送受信するデータ並びにデータ提供者との間で送受信するデータを記録することを特徴とする課金システム。」

<引用文献記載事項2>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワーク上でディジタルコンテンツ等の商品を取引する電子商取引に適用可能な課金システムに関するものである。」

<引用文献記載事項3>
「【0002】
【従来の技術】インターネットの普及に伴い、ネットワーク上でディジタルコンテンツ等の商品を取引する電子商取引が試みられている。このような電子商取引における決済手段として、現在、銀行や郵便貯金の口座引き落とし、クレジットカードによる決済、プリペイド方式による支払い等が使用されている。」

<引用文献記載事項4>
「【0014】図3は中継サーバにおける処理の流れ図、図4はデータ提供者のサーバにおける処理の流れ図であり、これらを用いて図2での処理の流れを説明する。
【0015】まず、このシステムを利用したい利用者はシステムに登録する。登録することにより利用者識別子が利用者に発行され、中継サーバ3に登録されることにより、該当利用者の端末1がシステムで使用できるようになる。利用者登録の方法については詳しく説明しないが、郵送で利用者から登録要求を受けて郵送で登録番号を利用者に通知したり、あるいはオンラインで利用者が登録したりできることはいうまでもない。
【0016】ここで、登録利用者がデータ提供者のサーバ4に格納されている商品を購入する場合を説明する。登録利用者は商品を購入したい時、端末1から利用者識別子(ID)及び提供要求商品を表すリクエストを含んだ商品購入要求情報6を中継サーバ3に送信する。中継サーバ3は送信された情報6中のIDを利用者認証処理7でチェックし、当該利用者が正規の利用者か否かを判定する。
【0017】正規の利用者であればデータベース15に要求があったことを記録するとともに、商品購入要求情報6から提供要求商品を表すリクエスト(8)を抽出し、これを解析して提供要求商品の対象となるデータ提供者のサーバが登録されているか否かを調査し、登録されていれば中継サーバ3から該当データ提供者のサーバ4に転送する。なお、正規の利用者でない、即ち未登録利用者であれば接続(アクセス)を拒否して終了し、また、該当データ提供者のサーバが登録されていなければ利用者に応答不能通知を送信して終了する。
【0018】データ提供者のサーバ4では送信されてきたリクエスト8をアクセス制御処理9でチェックし、中継サーバ3から正規に送られてきたものか否かを判定する。正規のものであれば、リクエスト8を解析し、対応する商品(コンテンツ)及びその価格の情報である課金情報を合わせた情報10を中継サーバ3に送信する。
【0019】中継サーバ3では送信されたコンテンツ及び課金情報10から課金情報を抽出し、課金処理11で中継サーバ3のデータベース15に加算するとともに料金処理12で料金情報13を作成し、これをコンテンツ14とともに要求を出した登録利用者に送信する。この時、商品の項目を併せてデータベース15に記録しても良い。
【0020】なお、未登録利用者の端末2から提供要求商品を表すリクエスト16が直接、データ提供者のサーバ4に送信された場合、前記同様にデータ提供者のサーバ4のアクセス制御処理9でチェックされ、このリクエスト16が中継サーバ3から送信された正規のものでないと判定されるため、データ提供者のサーバ4では接続を拒否する。また、データ提供者のサーバ4から送信されるコンテンツ及び課金情報10のうち、コンテンツ14についてはその全てを中継サーバ3に送信せず、利用者に直接送信しても良く、特にコンテンツ14のデータ量が膨大な場合には中継サーバ4の負担を減らすことができる。」

<引用文献記載事項5>
「【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、利用者とデータ提供者との取引が常に中継サーバを経由して行われるため、登録利用者毎の課金情報の総和を管理できる。この総和の情報を一定期間毎に決済することにより、一つ一つの商品価格が非常に安いものでも利用回数が多ければ高額となるため、クレジットカード等の決済を実施しても手数料の点で問題がないという利点がある。さらに、中継サーバで登録利用者との間並びにデータ提供者のサーバとの間の送受信データを全て記録可能となるため、これらの情報を使用して、データマイニング等が可能になる。例えば、登録利用者毎によく参照する商品をWWW(World Wide Web)のホームページで最初に表示したり、データ提供者は参照された回数や購入回数等の情報を得ることができ、商品動向を的確に把握することが可能になる。」


(2)参考文献
本願の出願前に頒布された下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<参考文献1>
特開平8-95777号公報(平成8年4月12日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【0048】
【実施例】以下、図に示す実施例に基づいてこの発明を詳述する。なお、この発明はこれによって限定されるものではない。図9にこの発明におけるソフトウェアの利用制御を行うシステム(以下、超流通システムと呼ぶ)全体の構成図を示す。この超流通システムは、ソフトウェアの生産・販売をするソフトウェア供給者とソフトウェアを利用するユーザとから構成され、さらにソフトウェア供給者は、情報提供者と管理センタとから構成される。
【0049】この超流通システムの特徴は、ライセンス情報を持たなければ利用できない仕組みを供給するソフトウェアの中に組み込んで広く配付し、利用を希望するユーザはライセンスを購入することによってはじめてソフトウェアの利用が可能になる点にある。
【0050】すなわち、情報提供者はソフトウェアを管理センタに登録し、ユーザのソフトウェア利用に応じた利用料を管理センタから得る。
【0051】管理センタは、登録されたソフトウェアに保護機構を組み込み、保護されたソフトウェア、すなわちコンテンツを広く配付する。また登録したユーザに対して、ユーザからのライセンス要求に応じたライセンスを発行し、ソフトウェア利用に対する料金の徴収分配を行う。コンテンツには、ソフトウェア本体と、保護化のための認証プログラムが組み込まれる。
【0052】ライセンスの発行を受けたユーザは、必要に応じて利用許可装置を管理センタから有償又は無償で貸与してもらい、ユーザ所有のハードウェアでコンテンツを利用する。コンテンツの利用に際して、認証プログラムと利用許可装置との間でソフトウェアの利用許可をしてよいかどうかの認証処理が行われ、認証が成功した場合にのみ、ソフトウェアの利用が許可されることになる。以上が超流通システムの全体構成であるが、この発明は、ユーザに配付されたコンテンツと利用許可装置、及びこれらを用いたソフトウェアの利用許可制御に関するものである。」

<参考文献記載事項1-2>
「【0089】図15に、ソフトウェア利用許可制御の第2実施例の説明図を示す。この第2実施例は、図10に示した利用許可装置60をユーザが持たない場合のソフトウェア利用制御を示している。そして、ユーザは、コンテンツ71を動作させるユーザ所有のハードウェア50のみを所有している。
【0090】ここでは、第1実施例と同様にしてソフトウェア供給者から送られてくるコンテンツ71に格納されたソフトウェアから生成した認証コードと、このコンテンツ71とは別ルートで送られてくる認証コードとを比較して正規のユーザかどうかの認証を行う例である。
【0091】また、ユーザ所有のハードウェア50で認証コードを生成するために、コンテンツIDと認証プログラム自体が持つ固有のライブラリ鍵と、ユーザあるいはユーザ所有のハードウェア50を特定するための識別コード、たとえばユーザ所有のハードウェア50のCPU固有のID(CPU-ID)、予め正規ユーザに付与されるユーザID、又は、ユーザ所有のハードウェア50に接続される外部機器の機器ID等が用いられる。
【0092】図15において、図11と同様に、71はコンテンツ、72はプログラム、73はライブラリ、54はユーザ所有のハードウェア50におけるハードディスクである。ハードディスク54には、ソフトウェア供給者から送られてくる認証コードAEkau(コンテンツID)が格納されている。
【0093】これは、第1実施例と同様に、コンテンツIDと、このコンテンツIDと1対1に対応する認証コードA Ekau(コンテンツID)が格納された情報としてユーザに送られてくるものである。このハードディスク54に格納されたEkau(コンテンツID)は、プログラム72によって、このプログラム本体に固有のコンテンツIDを基に検索されて読み出される。この検索処理は、たとえばフロッピーディスクで供給されたコンテンツ71が、ユーザ所有のハードウェア50のFDD58に挿入されて、コンテンツが起動されたときに、CPU51が行う。
【0094】図15では、ユーザ所有のハードウェア50のCPU51に固有のCPU-IDを識別コードとして用いる例を示している。CPU-IDはCPU51内部のROM又は、ROM52に書き込まれている。このCPU-ID等の識別コードは、ユーザがソフトウェアの利用をソフトウェア供給者に請求するときに、同時に申告する必要がある。
【0095】なお、上記した認証コードA Ekau(コンテンツID)は、ソフトウェア供給者側で、上記申告された識別コードをもとに暗号化されて生成されたコードである。
【0096】したがって認証コードが何らかの手段によって正規ユーザ以外の者に知られたとしても、識別コードがわからない限り不正利用ができないようにすることができ、さらに識別コードとしてこの実施例で示したCPU固有のCPU-IDを用いれば、そのCPU-IDを持つCPUを搭載したハードウェアでなければ使用ができないようにすることが可能である。
【0097】ライブラリ73において、変換73a、暗号73b及び比較73cの処理は、第1実施例と同様である。ただし、ここでは変換されるコードはCPU-IDであり、暗号73bによって生成される認証コードBはEkau(コンテンツID)である。」


<参考文献2>
特開平8-8851号公報(平成8年1月12日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【0006】2つめの方法は、ソフトウェアの利用に対して課金を行ない、ソフトウェアの配布は無料とするものである。従来からある課金に対する考え方の基本は(流通=課金対象)でありソフトウェアの取得行為に対して課金する方法とみなすことができるが、この方法においては流通は無料にする代りに(利用=課金対象)とする方がディジタル情報提供サービスには適するという考えに基づくものである。この方法の具体例としては、“超流通”と呼ばれる方式がある。なお、超流通は、次の文献に詳しい。
・森亮一,田代秀一:“ソフトウェア・サービス・システム(SSS)の提案”,電子情報通信学会論文誌, Vol.J70D,No.1,pp.70-81. ・Ryoichi Mori,Masaji Kawahara:“Superdistribution: The Concept and the Architecture”, Trans. of IEICE, Vol.E73, No.7, pp.1133-1146.
超流通の基本コンセプトは、以下の通りである。
(1)情報利用者は、ディジタル情報をほとんど無料で入手できる。すなわち、販売店から購入する以外に、人からコピーをもらう形態も許す。
(2)情報利用者の端末には、課金管理を行う装置が内蔵されており、情報を実際に利用するごとに課金装置に記録されていく。すなわち、使用量に応じて課金される。
(3)情報利用者はプリペイド方式あるいはクレジット方式などにより情報の利用可能度数を表すデータ(共通クレジットと呼ばれる)を購入し、その共通クレジットを端末に渡すことによりディジタル情報を利用できる。」


<参考文献3>
特開平9-34841号公報(平成9年2月7日出願公開)

<参考文献記載事項3-1>
「【請求項1】 通信網を介してユーザ端末との間で情報の送受信を行う通信手段と、
前記ユーザ端末から会話形式で受信するオーダー情報に基づいて、ユーザの記憶媒体内の暗号化された情報の暗号を、前記通信手段を介してオンラインで解除する会話手段とを備えることを特徴とするオンライン暗号解除システム。
【請求項2】 前記会話手段は、前記オーダー情報に基づいて、ユーザの鍵付記憶媒体に格納された情報を該ユーザ端末上で取り出すための第1の鍵情報を、前記通信手段を介してオンラインで該ユーザ端末に送ることを特徴とする請求項1記載のオンライン暗号解除システム。
【請求項3】 前記鍵付記憶媒体に格納された情報固有の第2の鍵情報を格納する情報格納手段をさらに備え、前記会話手段は、前記オーダー情報をもとに前記情報格納手段内を検索し、オーダーされた情報に対応する第2の鍵情報を取り出し、該第2の鍵情報を用いて生成された前記第1の鍵情報を前記ユーザ端末に送ることを特徴とする請求項2記載のオンライン暗号解除システム。
【請求項4】 前記オーダー情報に含まれる前記ユーザ端末の識別情報と前記第2の鍵情報とから、前記第1の鍵情報を生成する鍵生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のオンライン暗号解除システム。
【請求項5】 前記オーダー情報に含まれるユーザ識別情報と前記第2の鍵情報とから、前記第1の鍵情報を生成する鍵生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のオンライン暗号解除システム。
【請求項6】 前記オーダー情報に含まれるユーザ識別情報と前記ユーザ端末の識別情報と、前記第2の鍵情報とから、前記第1の鍵情報を生成する鍵生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のオンライン暗号解除システム。」

<参考文献記載事項3-2>
「【0022】一方、ユーザは、CD-ROM鍵開センタ31から通知された鍵を記憶しておき、鍵付CD-ROMシステム21の鍵開機能部24を用いて、CD-ROM17内の商品の鍵開けを行う。このとき、鍵開機能部24は、ユーザが入力した鍵番号をユーザのUIDとユーザPCのMIDで復号し、オーダー商品のソフト鍵を入手して商品を復号した後、ユーザPCに導入する。これにより、はじめてユーザは商品をインストールし、使用することが可能となる。
【0023】このように、ソフト鍵をユーザPCのMIDで暗号化しておけば、その鍵はMIDに対応するユーザPC上でしか使用することはできない。したがって、他のパソコン上で不正に使用されることが防止できる。また、ソフト鍵をUIDで暗号化しておけば、その鍵が使用された時に、UIDをもとにして商品の代金を自動的にユーザに課金することができる。このことをあらかじめ各ユーザに通知しておけば、他のユーザに不正に転用されることが防止できる。さらに、MIDとUIDの両方で暗号化しておけば、これらの両方の防止効果が期待できる。」

<参考文献記載事項3-3>
「【0054】販売形態区分の内容は以下の通りである。
1:ユーザが同一ならマシンID(MID)によらず2回目以降は無料。→初回は有料。2回目は無料。以後何回やっても無料。2:ユーザが同一ならマシンIDによらず5回目まで無料。以降禁止。」


<参考文献4>
特開平9-44266号公報(平成9年2月14日出願公開)

<参考文献記載事項4-1>
「(15)(1)?(12)の方法に加えて、1ジョブ内で同一のソフトウェアを2回以上利用する場合、2回目以降の利用料金を割り引くことにより、ソフトウェアの利用状況を加味して課金する方法。」(第6欄第11行?第14行)


<参考文献5>
特開平8-166960号公報(平成8年6月25日出願公開)

<参考文献記載事項5-1>
「【0066】例えば、情報を出力する度に販売価格を下げるとか、何回目か以降は無料にするとか等のサービスの区別をする場合この出力回数データを調べることで可能になる。」


<参考文献6>
特開平3-266095号公報(平成3年11月27日出願公開)

<参考文献記載事項6-1>
「銀行のホストコンピュータ3は、少なくとも、ICカード1の利用者の口座である個人口座を第1の記憶領域として、管理会社が本実施例で用いる口座である管理会社口座32を第2の記憶領域として、専用端末5を設置している店舗の口座である店舗口座33を第3の記憶領域としてそれぞれ有し、さらに、図示しない指示手段および第1、第2の移替手段を備えている。上記指示手段は、プリペイド記録機2から振替金額および個人口座31の口座番号を受けると、この口座番号によって個人口座31の残高を調べ、上記振替金額が個人口座31の残高の金額以下であるとき、プリペイド記録機2にICカード1への書込みを行うように指示する。第1の移替手段は、上記指示手段が上述した指示をすると、振替金額に相当する分の金額を個人口座31から管理会社口座32へ振替える。第2の振替手段は、管理会社のホストコンピュータ6から上記期間累計を受けたとき、該期間累計に相当する分の金額を管理会社口座32から店舗口座33に振込む。」(第3ページ下右欄第15行?第4ページ上左欄第14行)


<参考文献7>
特開昭61-16388号公報(昭和61年1月24日出願公開)

<参考文献記載事項7-1>
「2.特許請求の範囲
(1)証明書を発行するシステムであって、
少なくとも個人識別情報が記録された記録媒体と、
前記記録媒体に記録された個人識別情報を読取る読取手段と、
前記個人識別情報を入力する入力手段と、
前記読取手段が読取った前記識別情報と前記入力手段により入力された前記識別情報とを比較する比較手段と、
前記個人識別情報に対応する証明すべき情報が記録される記憶手段と、
前記比較手段の一致情報に応答して、前記記憶手段に記録された、前記入力された識別情報に対応する前記証明情報を取出して前記証明書を発行する手段を備えた証明書発行システム。
(2)前記記憶手段は、さらに、前記個人識別情報に対応して、個人銀行口座番号をも記憶し、
前記比較手段からの前記一致情報に応答して、前記個人銀行口座から前記証明書発行の手数料を自動決済する手段を備える、特許請求の範囲第1項記載の証明書発行システム。」


5-1-3.引用発明の認定

(1)上記引用文献は上記引用文献記載事項2記載の如き「電子商取引に適用可能な課金システム」を説明するものであるから、上記引用文献からは
「課金システムによる電子商取引方法」も読み取ることができる。

(2)該「課金システム」としては、上記引用文献記載事項1の請求項1記載のものが挙げられるところ、該請求項1には「商品」の一例として「ディジタルコンテンツ」が明示されている。また、上記引用文献記載事項4等に記載されるように、利用者とのデータ送受は該利用者の「端末」が行うものであることは明らかである。
してみると、上記「課金システム」として、
「データ提供者からネットワークを介してディジタルコンテンツの提供を受けた利用者に課金を行う課金システムにおいて、
システムを使用する利用者は利用者登録を行い、
利用者がディジタルコンテンツの提供要求を行う時は登録された利用者であることを表す利用者識別子及び提供要求商品を表すリクエストから構成される商品購入要求情報を該利用者の端末からネットワーク内の特定の中継サーバに送信し、
中継サーバでは受信した利用者識別子から正規の利用者か否かを判定し、正規の利用者であればリクエストを解析し、提供要求商品の対象となるデータ提供者のサーバに前記リクエストを転送し、
データ提供者のサーバでは中継サーバからリクエストを受信した時、対応するディジタルコンテンツ及びその課金情報を中継サーバに転送し、
中継サーバでは受信した課金情報を利用者識別子に対応するデータとして加算するとともに料金情報を作成し、受信したディジタルコンテンツとともに利用者の端末に転送する課金システム」
を読み取ることができる。

(3)また、上記引用文献記載事項1の請求項2の記載等から上記「課金システム」は、
「前記中継サーバはシステムに登録されていない利用者の端末からの商品購入要求情報を受信した時は接続を拒否する課金システム」
であるとも言える。

(4)さらに、上記引用文献記載事項5等から、上記「課金システム」は
「登録利用者毎の課金情報の総和を管理し、この総和の情報で一定期間毎に決済をする」
ものであると言える。

(5)よって、引用文献には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「データ提供者からネットワークを介してディジタルコンテンツの提供を受けた利用者に課金を行う課金システムにおいて、
システムを使用する利用者は利用者登録を行い、
利用者がディジタルコンテンツの提供要求を行う時は登録された利用者であることを表す利用者識別子及び提供要求商品を表すリクエストから構成される商品購入要求情報を該利用者の端末からネットワーク内の特定の中継サーバに送信し、
中継サーバでは受信した利用者識別子から正規の利用者か否かを判定し、正規の利用者であればリクエストを解析し、提供要求商品の対象となるデータ提供者のサーバに前記リクエストを転送し、
データ提供者のサーバでは中継サーバからリクエストを受信した時、対応するディジタルコンテンツ及びその課金情報を中継サーバに転送し、
中継サーバでは受信した課金情報を利用者識別子に対応するデータとして加算するとともに料金情報を作成し、受信したディジタルコンテンツとともに利用者の端末に転送する課金システムであって、
前記中継サーバはシステムに登録されていない利用者の端末からの商品購入要求情報を受信した時は接続を拒否する課金システムによる電子商取引方法であって、
登録利用者毎の課金情報の総和を管理し、この総和の情報で一定期間毎に決済をする電子商取引方法」


5-1-4.対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は「データ提供者からネットワークを介してディジタルコンテンツの提供を受けた利用者に課金を行う課金システム」「による電子商取引方法」であるところ、該「ディジタルコンテンツ」は本件補正発明における「ソフトウェア」に相当し、引用発明における「課金システム」では「システムに登録されていない利用者の端末からの商品購入要求情報を受信した時は接続を拒否する」ことがなされるのであるから、引用発明も本件補正発明と同様に「ソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法」と言えるものである。


(2)引用発明においては「中継サーバ」が「ディジタルコンテンツ」を「利用者の端末に転送する」ところ、該「ディジタルコンテンツ」を「受信」することができるのは「正規の利用者」に限られ、「システムに登録されていない利用者」は該「ディジタルコンテンツ」を「受信」できないことは明らかであるから、上記「ソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する」ことは、該「ディジタルコンテンツ」を「正規の利用者」にのみ使用可能になることによって実現していると言える。
また、引用発明は、「正規の利用者」の「端末」が複数であることは明らかであり、また、このようなシステムにおいては全ての取引が同時に行われることはありえず、通常は個々の取引が時間的に前後することを前提にしていることも明らかである。
また、本件補正発明における「該ソフトウェアを、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上でさらに使用可能にする」との記載は当該記載のみからはその技術的な意義が必ずしも明確なものではないところ、本願の発明の詳細な説明の段落【0027】?【0032】などを参酌すれば、この「少なくとも1つ追加された第2の計算装置」とは単に「ソフトウエアが利用可能でなかったコンピュータ」を意味するものと解することができ、引用発明における「ディジタルコンテンツ」を「受信」する前の「利用者」の「端末」はこれに相当する。
してみると、引用発明と本件補正発明とは、
「ソフトウェアの所定費用が認可済み使用者により支払われ、且つ該ソフトウェアの第1のコピーが、第1の計算装置上で使用可能となった後」、「該ソフトウェアを、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上でさらに使用可能にすることにより、該所定費用で販売されるソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法」である点で共通すると言える。

なお、「少なくとも1つ追加された第2の計算装置」との記載は、一人のユーザが複数のコンピュータを利用でき、該複数のコンピュータの内のある一つのコンピュータがソフトウエアが利用可能となされており、該複数のコンピュータの内の他の一つのコンピュータがソフトウエアが利用可能でない場合の後者の他の一つのコンピュータを表現することを意図した記載とも斟酌できるが、これを示唆する記載は本願の発明の詳細な説明にも本願の当初明細書等にもないため、このような解釈をすることは妥当でない。
また、一人のユーザが複数のコンピュータでソフトウエアを利用することも慣用されることである(必要があれば上記参考文献3-3参照)から、仮に「少なくとも1つ追加された第2の計算装置」が上記他の一つのコンピュータと解し得るとしても、この点に進歩性を認めることはできない。

(3)また、引用発明における「利用者がディジタルコンテンツの提供要求を行う時は登録された利用者であることを表す利用者識別子及び提供要求商品を表すリクエストから構成される商品購入要求情報を該利用者の端末からネットワーク内の特定の中継サーバに送信」する工程は、本件補正発明における「(a)第2の計算装置から遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する工程」に対応付けられるものであるところ、前者における「利用者識別子」は後者における「認証情報」に、前者における「中継サーバ」は後者における「電子商取引システム」に相当し、前者における「利用者の端末」は後者における「第2の計算装置」に相当する。
したがって、引用発明と本件補正発明は
「(a)第2の計算装置から遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する工程」
を含むものである点で共通すると言える。


(4)引用発明においては「中継サーバでは受信した課金情報を利用者識別子に対応するデータとして加算するとともに料金情報を作成し、受信したディジタルコンテンツとともに利用者の端末に転送する」ところ、該「料金情報」と「ディジタルコンテンツ」は、「中継サーバ」で「受信した利用者識別子から正規の利用者か否かを判定し、正規の利用者であればリクエストを解析し、提供要求商品の対象となるデータ提供者のサーバに前記リクエストを転送」することで得られたものであるから「認証情報が正しいとの証明結果」とも言えるものである。そして「中継サーバ」から転送された該「料金情報」と「ディジタルコンテンツ」が「利用者の端末」で受信されることは明らかである。
してみると、引用発明と本件補正発明とは
「(b)該遠隔地にある電子商取引システムより該認証情報が正しいとの証明結果を該第2の計算装置が受信する工程」
を含むものである点で共通すると言える。

(5)引用発明においては「中継サーバでは受信した利用者識別子から正規の利用者か否かを判定し、正規の利用者であればリクエストを解析し、提供要求商品の対象となるデータ提供者のサーバに前記リクエストを転送し」、「データ提供者のサーバでは中継サーバからリクエストを受信した時、対応するディジタルコンテンツ及びその課金情報を中継サーバに転送し」、「中継サーバでは受信した課金情報を利用者識別子に対応するデータとして加算」し、「登録利用者毎の課金情報の総和を管理し、この総和の情報で一定期間毎に決済をする」のであるから、引用発明と本件補正発明とは
「該認証情報は、もし正しければ、該遠隔地にある電子商取引システムが支払いの実行を可能にする認可に使用することができ」
るものである点で共通すると言える。

(6)よって、本件補正発明は、下記の本件補正発明と引用発明との一致点で引用発明と一致し、下記の本件補正発明と引用発明との相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「ソフトウェアの所定費用が認可済み使用者により支払われ、且つ該ソフトウェアの第1のコピーが、第1の計算装置上で使用可能となった後、
該ソフトウェアを、少なくとも1つ追加された第2の計算装置上でさらに使用可能にすることにより、該所定費用で販売されるソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法であって、
(a)第2の計算装置から遠隔地にある電子商取引システムへ認証情報を提供する工程と、
(b)該遠隔地にある電子商取引システムより該認証情報が正しいとの証明結果を該第2の計算装置が受信する工程とを含み、
該認証情報は、もし正しければ、該遠隔地にある電子商取引システムが支払いの実行を可能にする認可に使用することができ、
ソフトウェアを未認可の使用者による使用から保護する方法。」


<相違点1>本件補正発明は
「該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する」ものであり、
「(c)当初、該第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、該第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアの該第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程」を含む。
(これに対し、引用発明における「ディジタルコンテンツ」は、「中継サーバ」が「正規の利用者」にのみ「転送」するものであるため、「当初、該第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピー」と言えるものではなく、また、「該ソフトウェアの該第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する」ことも行われず、さらに、引用文献にはコピーの取得や使用の防止に関する記載はない。)

<相違点2>本件補正発明においては「該認可は、無料または該所定費用より安い費用で」なされる。
(これに対して、引用文献には具体的な料金体系についての記載はない。)

<相違点3>本件補正発明における認可は「認可済の使用者の個人口座からの」支払いの実行を可能にするもので、「該個人口座に対して実施される」ものである。
(これに対して、引用文献には「銀行や郵便貯金の口座引き落とし」や「クレジットカードによる決済」等の記載はある(引用文献記載事項3)ものの、引用発明における「決済」が「個人口座からの」支払いである旨や、認可が「個人口座に対して実施される」旨の直接的な記載はない。)


5-1-5.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
ア.コンテンツを暗号化等のライセンスなしには利用できない形態で広く配布し、該コンテンツの利用を欲するユーザはこれを復号するための鍵等のライセンスを購入し、該コンテンツの利用時に該ライセンスを利用した復号等をして利用可能とすると言う所謂「超流通」は、上記参考文献記載事項1-1、2-1等を上げるまでもなく、従来から適宜に採用されている常識的な流通形態であり、引用発明においても係る超流通の形態を採用することは当業者であれば適宜に採用する事項にすぎない。

イ.そして、この場合には、利用者に転送される「ディジタルコンテンツ」を「ライセンス」とし、「ディジタルコンテンツ」自体は暗号化等がなされた形態で広く配布、すなわちコピーとして配布されたものとなり、利用者の端末で購入した「ライセンス」を用いて「ディジタルコンテンツ」のコピーを利用することが必然的に採用される。
してみると、引用発明において「当初、該第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、該第2の計算装置上で使用可能にする」こと、及び「該ソフトウェアの該第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程」を含むものとすることは、当業者であるならば適宜に採用し得た設計変更に過ぎないものである。

ウ.また、上述したように、「超流通」はコンテンツを暗号化等のライセンスなしには利用できない形態で配布するものであるから、正規の利用者や正規の装置での使用でなければコンテンツの利用ができないようにすることも必然的に採用されるものであり(必要があれば参考文献記載事項1-2、3-1、3-2等参照。)、上記設計変更に際し「該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する」とともに「未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持する」ものとすることは当業者であれば適宜に選択し得た事項にほかならない。

エ.してみると、引用発明において超流通の形態を採用することで、引用発明を「該認可済の使用者が別の人にそのコピーを取得させ、及び使用させてしまうことを防止する」ものであり、「当初、該第2の計算装置上で使用可能でなかった該ソフトウェアの第2のコピーを、該第2の計算装置上で使用可能にする一方、未認可の他の計算装置上では該第2のコピーが使用できないように維持することにより、該ソフトウェアの該第2の計算装置上での使用の認可のための必須条件として、該認証情報が正しいとの証明を使用する工程」を含むものとすること、すなわち上記相違点1に係る事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことであると言える。

(2)相違点2について
コンテンツ利用の料金体系は、商取引の実施に際して適宜に定め得る事項にほかならず、例えば、コンテンツの2回目以降の利用料金を無料としたり、割り引いたりするすることも、従来から適宜に採用されている料金体系である(必要があれば参考文献記載事項3-3、4-1、5-1等参照。)から、引用発明において「該認可は、無料または該所定費用より安い費用で」なされるものとすること、すなわち上記相違点2に係る事項を採用することも、当業者が実施に際して適宜に採用し得る事項にすぎない。

(3)相違点3について
商取引に利用者の個人口座を用いることは従来から適宜に実施されている事であり(必要があれば参考文献記載事項6-1、7-1等参照。)、引用発明における決裁の対象口座を利用者の個人口座とすることでその認可を「認可済の使用者の個人口座からの」支払いの実行を可能にするもので「該個人口座に対して実施される」ものとすること、すなわち上記相違点3に係る事項を採用することも当業者であれば適宜になし得ることにすぎない。

(4)してみると、本件補正発明の構成は上記引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-2.本件補正後の請求項8に係る発明について
本件補正後の請求項8に記載されている事項により特定される発明は、上記第1.2.(2)において【請求項8】として記載したとおりのものであり、これは上記本件補正発明を装置の発明として表現したものにほかならない。
したがって、本件補正後の請求項8に係る発明も上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5-3.小結
以上のとおり、本件補正後の請求項1、8に係る発明はその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、他の請求項についての検討をするまでもなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。


6.回答書で提示の補正案について
上記回答書では当該補正案は上記補正後の請求項1、8における「無料または該所定費用より安い費用で」との記載を「無料で」との限定的減縮を目的とする補正をしようとする補正案が提示されているところ、コンテンツの2回目以降の利用料金を無料とすることも従来から適宜に採用されている料金体系である(必要があれば参考文献記載事項3-3、5-1等参照。)から、該補正案の請求項1、8に係る発明も特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、該補正案への補正の機会を設けることに益は無い。


7.むすび
上記3.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

上記4.のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

上記5.のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3.本件審判請求の成否について

1.手続の経緯、本願発明の認定
本願の手続の経緯は上記第1.記載のとおりのものであり、さらに、平成24年6月28日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
したがって、本願の特許請求の範囲は、平成24年1月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載のとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は、上記第1.2.(1)に【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.先行技術・引用発明の認定
上記第2.5-1-2.記載のとおり、本願の出願前に頒布され原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年7月13日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献には、上記引用文献記載事項が記載されており、本願の出願前に頒布された上記参考文献には、それぞれ、上記参考文献記載事項が記載されている。
そして、上記引用文献には上記第2.5-1-3.で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
上記第2.5-1.で検討した本件補正発明は、本願発明に対し上記第2.4で述べたように明瞭でない記載の釈明と限定的減縮をしたものであるから、本願発明は明瞭でない記載を含むものの、実質的には、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当する。
そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明が、上記第2.5-1.に記載したとおり、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本願の請求項8に係る発明について
本願の請求項8に係る発明は上記第1.2.(1)に【請求項8】として記載したとおりのものであり、これは上記本願発明を装置の発明として表現したものにほかならないので、本願の請求項8に係る発明も上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1、8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-12 
結審通知日 2013-07-16 
審決日 2013-07-30 
出願番号 特願2010-208573(P2010-208573)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 仲間 晃
原 秀人
発明の名称 他のソフトウェアの使用を正当なユーザのみに規制するためのソフトウェアおよびその方法  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ