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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1282923
審判番号 不服2012-19109  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-01 
確定日 2014-01-07 
事件の表示 特願2010- 51229「携帯端末、車載端末、スタンプカード管理方法、およびスタンプカード管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開、特開2011-186773、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年3月9日の出願であって,平成24年3月13日付けで拒絶理由が通知され,平成24年5月21日に意見書の提出とともに手続補正がされ,平成24年6月29日付けで拒絶査定がされ,平成24年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされ,平成25年5月24日付けの当審の審尋に対して,平成25年7月23日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年10月1日の手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
平成24年10月1日の,請求項1に係る手続補正は,平成24年5月21日の手続補正により補正された請求項1(以下「旧請求項1」などという。)に係る発明を特定する事項である,
(ア)「前記特定した店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して電子スタンプカードを生成するスタンプカード自動生成手段」
との事項を,
(イ)「前記特定した店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して表示部に表示させる電子スタンプカードを生成するスタンプカード自動生成手段」
との事項とし,
(ウ)「前記スタンプカード自動生成手段は,前記携帯端末を所持しているユーザは前記特定した店舗に来店がなく,かつ,該店舗における電子スタンプカードが未だ生成されていない場合に,該店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して新たに電子スタンプカードを生成する」
との事項を,
(エ)「前記スタンプカード自動生成手段は,前記特定した店舗における電子スタンプカードが未だ生成されていない場合に,該店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して新たに電子スタンプカードを生成する」
との事項とし,もって請求項1に係る発明(以下「新請求項1」などという。)とするものである。

2.補正の適否
上記(ア)との事項を(イ)との事項とする補正は,発明を実質的に変更するものではなく,発明を明確なものとするものであり,上記(ウ)との事項を(エ)との事項とする補正は,平成24年6月29日付け拒絶査定で指摘された事項を補正して明確なものとするものであるから,明りょうでない記載の釈明に当たる。
旧請求項6を新請求項6とし,旧請求項7を新請求項7とする補正も同様であるから,本件補正は全体として明りょうでない記載の釈明に当たり,特許法第17条の2第5項第4号の規定に適合する適法なものである。

第3 本願発明
上記のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,平成24年10月1日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「サーバとの通信機能を備えた携帯端末であって,
前記携帯端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と,
店舗識別子と,店舗の位置情報と,スタンプの付与規則とを関連付けて記憶するスタンプ付与情報記憶手段と,
前記携帯端末の位置情報を取得した際に,前記スタンプ付与情報記憶手段に記憶されている店舗の位置情報に基づいて,前記携帯端末の近傍に位置する店舗を特定する店舗特定手段と,
前記特定した店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して表示部に表示させる電子スタンプカードを生成するスタンプカード自動生成手段と,
を有し,
前記スタンプカード自動生成手段は,前記特定した店舗における電子スタンプカードが未だ生成されていない場合に,該店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して新たに電子スタンプカードを生成する
ことを特徴とする携帯端末。」

第4 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由の「理由1」は,以下のとおりである。
「【拒絶理由通知】
この出願の請求項1-7に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2008-90594号公報
2.特開2005-78323号公報
3.特開2008-186379号公報
4.特開2002-342349号公報
5.特開2008-140165号公報」
「【拒絶査定】
この出願については,平成24年3月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって,拒絶をすべきものです。なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。」

第5 当審の判断
1.引用例について
(1)引用例1について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2008-90594号公報」(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「【0001】 本発明は,携帯電話機やパーソナル・コンピュータ(以下,「パソコン」と言う。)を用いて,物品,サービス,ディジタル・コンテンツ等の購入をした場合に購入金額に応じた特典を購入者に付与するための特典付与支援システムに関する。」
(イ)「【0028】 次に,上記のように構成された特典付与支援システムSの動作について,図7に基づいて説明する。図7において,ステップS07,S08,S10,S11,S16の処理は,携帯電話機1がポイントアプリに従って行う処理である。
【0029】まず,ユーザ(購入者)は,携帯電話機1で,例えば店舗のチラシ等に掲載された2次元コードを読取って表示されたURLにアクセスすることにより,サーバ4にその店舗用のポイントアプリのダウンロードを要求する(ステップS01)。この要求を受信したサーバ4は,携帯電話機1にポイントアプリを送信する(S02,S03)。携帯電話機1は,ポイントアプリを記憶部16に格納(記憶)する(S04)。このとき,ポイントアプリに含まれている特典付与用リーダライタIDも記憶部16に格納される。
【0030】次に,ユーザが,店舗において物品やサービスの購入を行い,電子マネーによる決済を選択した場合,上述したように,店員等の操作により,端末装置3からリーダライタ2に読取り命令及び購入金額データが送信され,リーダライタ2は,電子マネー決済処理として,携帯電話機1との間で決済のためのデータ通信を行う(S05)。このとき,上述したように,携帯電話機1には,リーダライタ2から,購入金額データ,購入日時データ,及び,リーダライタ2のリーダライタIDを含む購入データが送信され,携帯電話機1は購入データを受信する(S06)。
【0031】携帯電話機1は,購入データ内のリーダライタIDと,記憶部16内の特典付与用リーダライタIDとを照合し,一致した場合に,購入データ中の購入金額データを購入金額情報として記憶部16に記憶するとともに,購入データ中の購入日時データを記憶部16に記憶し,購入回数情報である購入回数をカウントアップする(1増やす)(S08)。購入回数の初期値は0である。なお,購入回数が,その回数に達すれば特典付与を受けられるという所定の回数(本実施形態では5回)に既に達している場合には,購入日時及び購入金額の記憶,及び,購入回数のカウントアップは行わない。
【0032】一方,携帯電話機1は,購入データ内のリーダライタIDと,記憶部16内の特典付与用リーダライタIDとが一致しない場合には,かかる購入回数・金額・日時の保存は行わない。
【0033】次に,ユーザは,自分のポイントに当たる平均購入金額を知りたいときには,携帯電話機1において所定の操作を行って,ポイントアプリを起動させる(S09)。すると,携帯電話機1は,記憶部16内に記憶されている有効期限と,携帯電話機1自身が保持している現在の日付けとから,有効期限切れか否かを判断する。
【0034】そして,携帯電話機1は,有効期限切れでないと判断したときは,記憶部16内の購入回数と購入金額とに基づいて平均購入金額を演算する。本実施形態では,購入金額の合計を購入回数で除算することにより,平均購入金額を算出する。なお,割り切れない場合には,切捨て,切り上げ,四捨五入等,所定のルールで調整する。本実施形態では,小数点以下切捨てとする。そして,携帯電話機1は,算出した平均購入金額と,購入回数に応じた数の所定のマークとを,例えば図8に示すような画面で,表示部12に表示する(S10)。
【0036】 図8(a)?(c)は,平均購入金額と所定のマークとが表示されるアベレージ画面の例であり,(a)は購入1回目,(b)は3回目,(c)は5回目を示す。
(以下略)」
(ウ)図8の(a)には,「○○ラーメン スタンプキャッシュ」の見出しと,購入1回目であるスタンプMが丸囲みで「600」の数字で表示されている。

(2)引用例1発明について
そうすると,引用例1には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用例1発明」という。)
「携帯電話機を用いて特典を購入者に付与するための特典付与支援システムであって,
ユーザ(購入者)がサーバに店舗用のポイントアプリのダウンロードを要求すると,サーバは携帯電話機にポイントアプリを送信し,携帯電話機は,ポイントアプリを格納するとともに特典付与用リーダライタIDを記憶部に格納し,
ユーザが,店舗で電子マネー決済を選択した場合,携帯電話機にリーダライタのリーダライタIDを含む購入データが送信され,携帯電話機は購入データを受信し,購入データ内のリーダライタIDと,記憶部内の特典付与用リーダライタIDとを照合し,一致した場合に購入回数をカウントアップし,
ユーザが,ポイントアプリを起動させると,携帯電話機は,購入回数に応じた数の所定のマークを,表示部に表示するものであって,購入1回目には,『○○ラーメン スタンプキャッシュ』の見出しと,購入1回目であるスタンプMが丸囲みで『600』の数字で表示される特典付与支援システム。」

(3)引用例2について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2005-78323号公報」(以下「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「【0001】 本発明は,ユーザが各種店舗において,商品やサービスを購買した際,店舗側から提供される還元サービスを管理するのに用いられる還元サービス管理システム,及び還元サービス管理方法に関する。」
(イ)「【0017】 次に,上記した還元サービス管理システム1の動作例について説明する。まず,携帯端末2を所有するユーザが管理サーバ5にアクセスし,顧客登録を行なう。この顧客登録は,例えば,管理サーバ5を特定するURLに空メールを送信した後,それを発信した携帯端末に返信される所定のフォームに,住所,年齢,性別,メールアドレス等,そのユーザに関する属性情報を入力することで行なわれる(入力される属性情報の内容は適宜変形される)。これに伴って,二次元バーコード/スタンプ情報生成部17にて,そのユーザを特定する固有の二次元バーコードが生成され,所定の形式で二次元バーコードと関連付けられてユーザDB14に記憶される。また,このユーザに付与された二次元バーコードは,メール送信部18を介して,登録が完了したユーザの携帯端末2にダウンロードされ,その画像表示部2aには,図2に示すように,その個人特有の二次元バーコード3が表示される。
【0018】 次に,ユーザが,上記した還元サービス管理システム1を導入している店舗に入店する際,或いは,精算時などにおいて,その店舗内に設置されている読取装置7(図3参照)に対して,画像表示部2aに表示した二次元バーコード3をスキャンさせる。読取装置7でスキャンされた情報は,通信網Pを介して管理サーバ5の受信部10で受信され,ユーザDB14に格納されている顧客リストの該当ユーザにスタンプ情報が記録されると共に,店舗DB15に格納されている店舗毎の顧客リストに,そのユーザの利用状況が記録される。この際,記録されたスタンプ情報は,直ちに,図4に示すようなフォームで,スキャン操作を行なった携帯端末2に対して,最新のスタンプメールとして配信される。」
(ウ)図4には,携帯端末の画面表示であって,「現在のスタンプ数は9スタンプです。」の表示とともに,「☆」印が9個表示されている。

(4)引用例2発明について
そうすると,引用例2には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用例2発明」という。)
「ユーザが各種店舗において提供される還元サービスを管理するのに用いられる還元サービス管理システムであって,
携帯端末を所有するユーザが管理サーバにアクセスし,ユーザに付与された二次元バーコードをユーザの携帯端末にダウンロードし,
ユーザが,店舗に入店したり精算したりする際,読取装置に二次元バーコードをスキャンさせると,ユーザDBに格納されている顧客リストの該当ユーザにスタンプ情報が記録されると共に,店舗毎の顧客リストに,そのユーザの利用状況が記録され,記録されたスタンプ情報は,携帯端末にスタンプメール配信され,『現在のスタンプ数は9スタンプです。』の表示とともに,『☆』印が9個表示される還元サービス管理システム。」

(5)引用例3について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2008-186379号公報」(以下「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例3摘記事項」という。)
(ア)「【0001】 この発明は,事業者が発行する特典待遇情報を電子データとして記憶可能な携帯端末に関し,特に記憶する特典待遇情報の蓄積/管理に関するものである。」
(イ)「【0021】実施の形態4.図10は,本実施の形態4に係る携帯端末と,これを用いた電子ポイントカードサービスシステムを示す。図1と同じ符号は同じものを示す為,説明を省略する。10は,GPS用の人工衛星であり,携帯端末1は,実施の形態1の機能に加え,人工衛星10からの信号に基づき自局の位置を計算するGPS機能を備える。11は,電子地図や電話帳情報を有するデータベースであり,携帯端末1の内部メモリ上,もしくは通信網上に配置され
る。図11はデータベース11の詳細を示す。データベース11は,店舗名,住所,電話番号の他に,検索に必要なキーワード情報である「ポイントカード名」,「サービスカテゴリ」,位置を示す「座標(x,y)」を含む店舗情報13で構成され,さらにデータベース内のキーワード検索を可能とするキーワード処理部12を備える。
【0022】携帯端末1は,ユーザーの操作に基づいて,自局内に登録されている各仮想ポイントカード3のポイントカード属性情報4と,GPS機能により取得した自局の現在位置情報とを検索キーワードとして前記データベース11に入力/送信することで,現在位置の近隣に所在する店舗情報の検索を行い,抽出された店舗情報13を表示部6へ表示する。複数のポイントカード属性情報4(ポイントカード名,サービスカテゴリなど)を統合して使用することにより,ポイントカードを発行した店舗,ポイントカードを使用可能な店舗,関連する商品を扱う店舗,など,自由度のある店舗検索を行うことができる。」

(6)引用例3記載事項について
そうすると,引用例3には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例3記載事項」という。)
「特典待遇情報を電子データとして記憶可能な携帯端末であって,
携帯端末は,人工衛星からの信号に基づき自局の位置を計算するGPS機能と,店舗名,住所,電話番号や位置を示す「座標(x,y)」を含む店舗情報で構成されるデータベースを有し,
ユーザーが携帯端末でGPS機能により取得した自局の現在位置情報をデータベースに入力することで,現在位置の近隣に所在する店舗情報の検索を行い,抽出された店舗情報を表示部へ表示する携帯端末。」

(7)引用例4について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2002-342349号公報」(以下「引用例4」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例4摘記事項」という。)
「【要約】【課題】顧客の利便性及び店舗側の顧客獲得効率の向上を考え,顧客の記憶に頼らず,1度来店経験がある店を容易に検索し探し当てることが可能な店舗情報検索システムおよび店舗情報検索用携帯端末を提供する。
【解決手段】店舗内に配置される店舗情報出力装置11と,この店舗情報出力装置11から送信される店舗情報を受信する受信手段23と,受信した店舗情報を格納するメモリー(図示省略)を有する店舗情報検索用携帯端末2とから構成され,店舗情報検索用携帯端末2の所持者が来店した際に,店舗情報出力装置11から当該店舗情報検索用携帯端末2へ店舗情報を送信することにより当該店舗情報検索用携帯端末2にこの店舗情報を格納させることが可能であると共に,店舗情報検索用携帯端末2は,メモリーに格納された店舗情報の中から,ジャンルもしくはエリアの少なくとも一方に基づいて店舗情報を検索し,所定の様式でその検索結果を出力させる。」

(8)引用例4記載事項について
そうすると,引用例4には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例4記載事項」という。)
「来店の際に携帯端末へ店舗情報を格納し,店舗情報の中からエリアで店舗情報を検索することにより,携帯端末の所持者の来店経験がある店を検索すること。」

(9)引用例5について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2008-140165号公報」(以下「引用例5」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例5摘記事項」という。)
(ア)「【課題】移動端末のユーザが施設に滞在している場合に,移動端末のユーザに対して,この施設の評価を問い合わせるための質問情報を出力する情報通信システム,情報通信方法,および,プログラムを提供する。
【解決手段】施設を識別する施設情報,およびこの施設の位置範囲を示す施設位置情報を格納した施設情報管理テーブル34と,移動端末2の現在位置が,この施設の位置範囲内を示している場合,施設情報管理テーブル34からこの施設を示す施設情報を抽出する施設情報抽出部35と,移動端末2の情報または移動端末2が搭載されている移動体の情報に基づいて,施設情報抽出部35が抽出した施設情報が示す施設に,移動端末2のユーザが滞在しているか否かを判定する施設滞在判定部37と,移動端末2のユーザが施設に滞在している場合,移動端末2のユーザに対して,この施設の評価を問い合わせるための質問情報を出力する問い合わせ部40とを備える。」
(イ)「【0038】現在位置計測部21は,移動端末2aの現在位置を計測する。具体的には,現在位置計測部21は,例えば,GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能を備えており,複数の測地衛星(GPS衛星)から送信される電波を受信し,受信した電波の相対的な時間差に基づいて,移動端末2aの現在位置を計測する。」

(10)引用例5記載事項について
そうすると,引用例5には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例5記載事項」という。)
「GPS機能を備えた移動端末の現在位置が施設の位置範囲内の場合,移動端末のユーザに施設の評価を問い合わせること。」

2.対比
以下,引用例1発明と本願発明とを対比する。
(引用例2発明との対比,判断や,その他請求項との対比,判断は後記する。)
(ア)引用例1発明は,ユーザ(購入者)がサーバに店舗用のポイントアプリのダウンロードを要求すると,サーバは携帯電話機にポイントアプリを送信し,携帯電話機は,ポイントアプリを格納するとともに特典付与用リーダライタIDを記憶部に格納する。ユーザが店舗で電子マネー決済を選択した場合,携帯電話機にリーダライタのリーダライタIDを含む購入データが送信され,携帯電話機は購入データを受信し,購入データ内のリーダライタIDと,記憶部内の特典付与用リーダライタIDとを照合し,一致した場合に購入回数をカウントアップし,ユーザが,ポイントアプリを起動させると,携帯電話機は,購入回数に応じた数の所定のマークを,表示部に表示するものであって,購入1回目には,「○○ラーメン スタンプキャッシュ」の見出しと,購入1回目であるスタンプMが丸囲みで「600」の数字で表示される。つまり,引用例1発明は,ユーザの携帯電話機に格納されたリーダライタIDで特定される○○ラーメン店で購入すると,特定された○○ラーメン店の購入回数に応じた数の所定のマークを表示部に表示する。
(イ)とすると,引用例1発明の「リーダライタID」は,これにより「○○ラーメン店」という「店舗が特定」されるものであるから,本願発明の「店舗識別子」に相当し,「○○ラーメン店で購入すると,特定された○○ラーメン店の購入回数に応じた数の所定のマークを表示部に表示する」ことは,「特定した店舗のスタンプ付与規則」に相当する。
(ウ)してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「店舗識別子と,スタンプの付与規則とを関連付けて記憶するスタンプ付与情報記憶手段と,店舗を特定する店舗特定手段と,特定した店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して表示部に表示させる電子スタンプカードを生成するスタンプカード自動生成手段」とを有する「携帯端末」である点で共通する。
(エ)そして,引用例1発明の携帯端末は,少なくともサーバとの通信機能を備える点で本願発明と共通する。
以上(ア)?(エ)のことから,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で一致し,また相違する。
[一致点]
「サーバとの通信機能を備えた携帯端末であって,
店舗識別子と,スタンプの付与規則とを関連付けて記憶するスタンプ付与情報記憶手段と,
店舗を特定する店舗特定手段と,
特定した店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して表示部に表示させる電子スタンプカードを生成するスタンプカード自動生成手段とを有する
ことを特徴とする携帯端末。」
[相違点]
本願発明の携帯端末は,「携帯端末の位置情報を取得する位置情報取得手段」を有し,「スタンプ付与情報記憶手段」が,「店舗識別子と,店舗の位置情報と,スタンプの付与規則」とを関連付けて記憶するものであり,「店舗特定手段」が,「携帯端末の位置情報を取得した際に,スタンプ付与情報記憶手段に記憶されている店舗の位置情報に基づいて,携帯端末の近傍に位置する店舗を特定」するものであり,「スタンプカード自動生成手段」は,「特定した店舗における電子スタンプカードが未だ生成されていない場合に,該店舗のスタンプ付与規則に基づいてスタンプ情報を生成し,その生成したスタンプ情報を付与して新たに電子スタンプカードを生成する」ものであるのに対し,引用例1発明は,携帯電話機が購入データを受信し,購入データ内のリーダライタIDと,記憶部内の特典付与用リーダライタIDとを照合し,一致した場合に,店舗を特定し,購入回数をカウントアップし,ユーザが,ポイントアプリを起動させると,携帯電話機は,購入回数に応じた数の所定のマークを,表示部に表示するものである点。

3.判断
(ア)本願の明細書の記載によれば,本願発明はつまり,携帯端末の位置と店舗の位置とにより,携帯端末の近傍の店舗を特定し,特定した店舗の電子スタンプカードを表示させることにより,ユーザを煩わせることなく,又は意識させることなくスタンプカードをユーザに提示するものであり,そのため,携帯位置と店舗位置とにより店舗を特定してスタンプカードを表示し,又はスタンプカードがない場合には新たなスタンプカードを生成して表示するものである。
(イ)確かに,引用例1発明は,ユーザが店舗で購入した際にリーダライタIDと携帯電話機の特典付与用リーダライタIDとが一致した場合に購入回数をカウントアップし,ユーザがポイントアプリを起動すると購入回数に応じた数の所定のマークを表示することから,携帯端末が店舗識別子に相当するリーダライタIDやスタンプの付与規則を有して店舗を特定するものであり,特定された店舗のスタンプカードを表示しうるものではある。
(ウ)しかし,引用例1発明の携帯電話機が店舗を特定するとしても,その目的は,当該店舗の購入回数をカウントアップするためのものであるにとどまり,スタンプカードの表示はユーザが当該店舗のポイントアプリを起動することによりなされるものである。
してみると,引用例1発明と本願発明とは,店舗を特定する目的が異なる。
(エ)ここで引用例3には,引用例3記載事項,つまり,「特典待遇情報を電子データとして記憶可能な携帯端末であって,携帯端末は,人工衛星からの信号に基づき自局の位置を計算するGPS機能と,店舗名,住所,電話番号や位置を示す『座標(x,y)』を含む店舗情報で構成されるデータベースを有し,ユーザーが携帯端末でGPS機能により取得した自局の現在位置情報をデータベースに入力することで,現在位置の近隣に所在する店舗情報の検索を行い,抽出された店舗情報を表示部へ表示する携帯端末。」との事項が記載される。
この記載によれば引用例3には店舗を特定することに関して,[相違点]に係る「携帯端末が携帯端末の位置情報を取得する手段を有し,携帯端末の位置情報を取得した際に,店舗の位置情報に基づいて,携帯端末の近傍に位置する店舗を特定する」との事項が記載されている。
しかし,引用例1発明が店舗を特定する目的は,前記(ウ)のとおり,当該店舗の購入回数をカウントアップするためのものであるから,引用例1発明が店舗を特定する際に引用例3記載事項を適用したとしても,本願発明の,「携帯位置と店舗位置とにより店舗を特定してスタンプカードを表示する」との課題解決手段に到達するものではなく,「携帯端末の位置と店舗の位置とにより,携帯端末の近傍の店舗を特定し,特定した店舗の電子スタンプカードを表示させることにより,ユーザを煩わせることなく,又は意識させることなくスタンプカードをユーザに提示する」との効果を奏するものでもない。
(オ)その際,有効期限が切れた際に新たなスタンプカードを発行することや,初めて利用した店舗でスタンプカードを新規作成することが周知の事項であったとしても,「携帯位置と店舗位置とにより店舗を特定してスタンプカードを表示し,又はスタンプカードがない場合には新たなスタンプカードを生成して表示する」との本願発明の課題解決手段に到達するものでもない。
(カ)ここで,引用例4記載事項である「来店の際に携帯端末へ店舗情報を格納し,店舗情報の中からエリアで店舗情報を検索することにより,携帯端末の所持者の来店経験がある店を検索すること。」との事項や,引用例5記載事項である「GPS機能を備えた移動端末の現在位置が施設の位置範囲内の場合,移動端末のユーザに施設の評価を問い合わせること。」との事項が知られているとしても,これら記載事項は引用例3記載事項の開示を超えるものではないことから,さらに引用例4記載事項や引用例5記載事項などから,たとえ「携帯端末にて取得した位置情報により利用する施設を特定する」ことが周知の事項であったとしても,上記(ア)?(オ)の判断にかわりはなく,本願発明が,引用例1発明,引用例3?5記載事項,及び周知の事項から当業者想到容易であったとは言えない。

4.引用例2発明との対比,判断
引用例2記載事項によれば,引用例2には「ユーザが各種店舗において提供される還元サービスを管理するのに用いられる還元サービス管理システムであって,携帯端末を所有するユーザが管理サーバにアクセスし,ユーザに付与された二次元バーコードをユーザの携帯端末にダウンロードし,ユーザが,店舗に入店したり精算したりする際,読取装置に二次元バーコードをスキャンさせると,ユーザDBに格納されている顧客リストの該当ユーザにスタンプ情報が記録されると共に,店舗毎の顧客リストに,そのユーザの利用状況が記録され,記録されたスタンプ情報は,携帯端末にスタンプメール配信され,『現在のスタンプ数は9スタンプです。』の表示とともに,『☆』印が9個表示される還元サービス管理システム。」との発明が開示されるところ,引用例2発明は,簡単かつ不正が生じることなくスタンプカード提供サービスを行い,容易かつ正確に顧客分析等を行う(【0006】)ためのものであり,解決しようとする課題や目的,課題を解決するための手段が本願発明とは異なる。
したがって,引用例2が,たとえ携帯端末を用いてスタンプカードを生成し,利用するものであったとしても,引用例2発明と本願発明との一致点は,前記引用例1発明と本願発明との一致点を超えるものではない。
以上のことから,本願発明は,引用例2発明,引用例3?5記載事項及び周知の事項から当業者想到容易であったとは言えない。

5.その他請求項について
本願の請求項2?5に係る発明は,本願発明を引用し,さらに発明特定事項を付加し,又は発明特定事項を減縮するものであるから,本願発明と同様の理由で,引用例1発明又は引用例2発明,引用例3?5発明及び周知の事項から当業者想到容易であったとは言えない。
本願の請求項6,7に係る発明は,本願発明の方法の発明を特定し,又はプログラムの発明を特定することから,本願発明と同様の理由で当業者想到容易であったとは言えない。

第6 むすび
本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第5項第4号の規定に適合するから,本願の請求項1?7に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして,本願については,原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-16 
出願番号 特願2010-51229(P2010-51229)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 須田 勝巳
手島 聖治
発明の名称 携帯端末、車載端末、スタンプカード管理方法、およびスタンプカード管理プログラム  
代理人 清水 昇  

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