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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1282984
審判番号 不服2012-7181  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-19 
確定日 2013-12-27 
事件の表示 特願2008-519597「歯の色を変更するための組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月 4日国際公開、WO2007/002887、平成20年12月25日国内公表、特表2008-546844〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年6月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は、次のとおりである。

平成22年10月14日付け 拒絶理由通知書
平成23年 2月18日付け 意見書
同日付け 手続補正書
平成23年12月16日付け 拒絶査定
平成24年 4月19日付け 審判請求書
同日付け 手続補正書
平成25年 3月11日付け 審尋

第2 平成24年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
前記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
結晶性ヒロドキシアパタイトを含む白色度付与粒子状材料;
アクリル酸t-ブチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸を含むアクリレートポリマー;及び
カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、海水コロイド(marine colloid)、キトサン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の非アクリレートポリマー
を含み、
前記アクリレートポリマーは、前記組成物中に、総組成物の60?99重量%の量で存在する、歯のコーティング組成物。」

2.補正の適否
前記請求項1は、組成物の構成成分について、補正前の請求項19の態様に限定するものであるから、この補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記「1.補正の内容」に記載したとおりのものである。

(2)刊行物及びその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2002-3335号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した。

(刊1-1):「【請求項1】 化学式1:
【化1】

(式中、R^(1)は水素原子またはメチル基であり、R^(2)は-COOR^(3)または-CONHR^(3)であり、R^(3)は水素原子、または、炭素数1?10の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基である)から選択される2以上のモノマーの共重合体である1以上のポリマーI、化学式2:
【化2】

(式中、R^(4)は水素原子またはメチル基であり、R^(5)は-COOR^(6)、アセトキシル基、または2-ピロリジル基であり、R^(6)は炭素数1?6の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基である)から選択される2以上のモノマー(ただし、少なくとも一つは、R^(6)が2-ピロリジル基である)の共重合体である1以上のポリマーII、およびアルコール溶媒を含む、化粧用コーティング組成物。
【請求項2】 前記ポリマーIとして、(メタ)アクリル酸アルキルおよび(メタ)アクリル酸からなる群より選択される二以上のモノマーからなる共重合体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 前記ポリマーIは、アクリル酸t-ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】 前記ポリマーIは、前記化学式1のモノマーとしてN-オクチルアクリル酸アミドを含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】 前記ポリマーIは、メタクリル酸イソブチル・N-オクチルアクリル酸アミド・アクリル酸共重合体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】 前記ポリマーIIとして、N-ビニル-2-ピロリドン・酢酸ビニル共重合体を含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】 さらに粉末顔料を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】 前記粉末顔料は有彩色系顔料であり、歯牙に用いることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】 さらに微細薄片を含む請求項1?8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】 さらにエチルセルロースを含む請求項1?9のいずれか一項に記載の組成物。
・・・」

(刊1-2):「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化粧用コーティング組成物に関する。より詳細には、皮膚、爪または歯を白くする、着色する、または輝きを与えることでファッション性を向上させるための化粧用コーティング組成物に関する。」

(刊1-3):「【0051】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
・・・
【0057】まずポリマーIについて説明する。ポリマーIはアクリル酸系エステル共重合体であり、乾燥後の優れた光沢および耐久性を実現するために用いられる。・・・
・・・
【0060】その一実施形態は、(メタ)アクリル酸アルキルおよび(メタ)アクリル酸からなる群より選択される二以上のモノマーからなる共重合体であり、具体的には、アクリル酸t-ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体が好ましい。これは接着性、成膜性、耐久性およびつやにおいて優れている。
・・・
【0062】ポリマーIの含有量は、組成物に対して0.1?50質量%、好ましくは2?30質量%である。ここで含有量が0.1質量%未満の場合、成膜性が悪く、一方で50質量%を超過する場合、溶媒への溶解性、分散性が低下し、均一な膜を形成しにくく、塗りむらの原因になるため、いずれも好ましくない。
・・・
【0067】好ましくは、ポリマーIIは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、酢酸ビニルおよびN-ビニル-2-ピロリドンから選択されるモノマー(ただし少なくとも一つはN-ビニル-2-ピロリドンである)の共重合体であり、具体的にはN-ビニル-2-ピロリドン・酢酸ビニル共重合体、N-ビニル-2-ピロリドン・アクリル酸系共重合体が好ましく用いられる。
・・・
【0069】上述のようなポリマーを用いることによって、皮膚、爪または歯表面と適度な接着性を保ち得る。すなわち歯へ塗布した場合は、優れた接着性および耐久性を示し飲食等の摩擦では剥離し難く、かつ必要に応じて除去剤により容易に除去されうるコーティング膜を形成することができる。さらに、ポリマーIにポリマーIIを併せて用いることにより、ポリビニルピロリドンやポリ酢酸ビニル等のホモポリマーを用いるよりも、成膜性、速乾性、分散安定性およびつやを顕著に改善することができる。さらに、ポリマーIおよびII以外のポリマー、樹脂も組成物中に混合することができ、例えばセラックである。
・・・
【0071】次に、粉末顔料を含むコーティング組成物について説明する。粉末顔料は、塗布後、爪または歯を白く見せるために添加され、具体的には酸化チタン、雲母チタン、二酸化ケイ素、タルク、カオリン、酸化アルミナ、酸化チタンゾル、酸化亜鉛、低温焼結酸化亜鉛、無水ケイ酸、セリサイト等が挙げられる。これらは溶媒への分散性が高く、安定で、かつ安価という利点を有する。さらに塗布後の歯表面に光を当てた場合、これらの粒子が乱反射することによりパール調の美しい色を実現することができる。前述したもの以外に、魚鱗箔、貝の粉末等のパール顔料も同様に使用できる。
・・・
【0077】また本発明のコーティング組成物は、上記のラメまたは微小箔等の分散性の悪い粒子を安定して分散させるために、分散剤を混合することができる。分散剤として、具体的には、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の繊維素誘導体、(メタ)アクリル酸系共重合体、N-ビニル-2-ピロリドン系共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体等の高分子ポリマー、またはアルギン酸ナトリウム、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ペクチン質、カラギーナン、ガラクトマンナン、アラビアゴム等の多糖類、増粘性シリカ、モンモリロナイト、ベントナイトである。好ましくはエチルセルロースであり、これは他の繊維素誘導体系の分散剤に比べて、前記微細薄片や顔料を長時間良好に分散性を保つことができ、ほとんど沈殿を生じない。」

(刊1-4):「【0082】次に、本発明のコーティング組成物に加え得るその他の成分について説明する。まず、上述の組成に加えて、ポリマーや顔料の分散性と安定性を良くするため、界面活性剤を含有することもできる。・・・
・・・
【0092】さらに分散剤としてエチルセルロースを組成に添加することができる。エチルセルロースは分散剤として添加され、他の分散剤に比べて顔料等を長時間良好な分散状態で維持することができ、沈殿や液層の分離をほとんど生じない。
・・・
【0095】次に、本発明の微細薄片を含むコーティング組成物について説明する。微細薄片を含むコーティング組成物は、アクリル酸系共重合体、酢酸ビニル系共重合体およびピロリドン系共重合体よりなる群より選択されるポリマー、エチルセルロース、アルコール溶媒および微細薄片を含むことを特徴とする。エチルセルロースを添加することにより、比重が大きく分散安定性の悪い微細薄片を均一に分散させ、かつ長期間その状態を維持することができる。
・・・
【0098】微細薄片は、前記化粧用コーティング組成物と同様のものが用いられる。微細薄片の含有量は、薄片の種類によりそれぞれ異なるため特に限定されないが、一般的に、好ましくは組成物に対し0.1?40質量%、さらに好ましくは1?20質量%である。ここで含有量が0.1質量%未満の場合、十分な輝きや発色が達成されず、一方で40質量%を超過する場合、粘度が高くなりすぎ塗りむらを生じ、いずれも好ましくない。
【0099】エチルセルロースは、溶液をゲル化したり適度な粘性を与えたりすることによって微細薄片を組成物中に均一分散させる効果があり、他の繊維素誘導体に比べ、撹拌直後の微細薄片の分散状態が極めて良好で、かつ長期間に渡って均一な分散状態を維持することができる。従って歯牙に塗布すると、微細薄片が凝集したり分布が偏ってむらにならずに、微細薄片が均一に分散したコーティング膜をつくることができ、見た目の美しさ、輝きを増強することができる。」

これら(特に、請求項1,3,6,7,8及び(刊1-2))によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

(刊行物1発明):「アクリル酸t-ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体(ポリマーIに相当する成分)と、N-ビニル-2-ピロリドン・酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース(いずれもポリマーIIに相当する成分)と、歯を白くする粉末顔料とを含む歯牙用コーティング組成物。」

(3)対比(一致点・相違点の認定)
本願明細書の段落【0013】には、「大部分の状況で、本組成物は、知覚される白色の色を生じる顔料を含むように配合されよう。着色剤は、白色度付与粒子状材料としてよい。このような白色度付与粒子状材料は、任意の白色に着色したまたは白色の顔料添加粒子、例えば、白色無機質粒子、白色金属酸化物粒子、または白色ポリマー粒子を含む。」との記載があるから、刊行物1発明の「歯を白くする粉末顔料」は、本願補正発明の「白色度付与粒子材料」に当たる。
また、本願明細書の段落【0025】の記載「様々な他の成分を本歯のコーティング組成物中に含めてよく、これは例えば、1つ以上の非アクリレートポリマー、例えば、セルロースの例えばカルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、海水コロイド(marine colloid)、キトサン、及び/またはポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーである。」に照らすならば、刊行物1発明の「N-ビニル-2-ピロリドン・酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース」は、いずれも、本願補正発明の「非アクリレートポリマー」に当たる。
そして、刊行物1発明の「アクリル酸t-ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体」が本願補正発明の「アクリル酸t-ブチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸を含むアクリレートポリマー」に当たり、刊行物1発明の「歯牙用コーティング組成物」が本願補正発明の「歯のコーティング組成物」であることは明らかであるから、本願補正発明と刊行物1発明との間には、次の一致点・相違点があるということができる。

(一致点):「白色度付与粒子状材料と、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸を含むアクリレートポリマーと、非アクリレートであるエチルセルロース、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーを含む、歯のコーティング組成物。」

(相違点1):「白色度付与粒子状材料」に関し、前者は「結晶性ヒドロキシアパタイトを含む」ものであると特定するのに対して、後者にはこのような特定がない点。

(相違点2):「アクリレートポリマー」の量に関し、前者は、「総組成物の60?99重量%の量で存在する」と特定するのに対して、後者にはこのような特定がない点。

(4)判断(相違点1,2の容易想到性の検討)
(4-1)相違点1について
刊行物2には、歯牙美白パッチに係る発明が記載されているところ、その段落【0050】には、「また本発明のパッチを歯牙に貼付けた時化学的、物理的作用による美白だけではなく視覚的に白く見られるよう支持体層に白色顔料である二酸化チタン、滑剤(タルク)、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛などを混用することができる。このような顔料が美白剤である過酸化物と相溶性が不良な時は表面処理された二酸化チタンを使用することもできる。また、白色顔料以外に個性によってパール剤や多様な色相の顔料を適用することもできる。」との記載がある。
このように、ヒドロキシアパタイトは、歯の美白を指向して採用される白色顔料として、二酸化チタンや酸化亜鉛と並び周知の材料である。(この点は、平成22年10月14日付け拒絶理由通知書において記載されている。)そして、このヒドロキシアパタイトは、白色顔料である以上、固体であり、これを、特に、「結晶性ヒドロキシアパタイト」と特定することに困難性はない。
したがって、当業者において、刊行物1発明の「白色度付与粒子状材料」として、当技術分野において周知の「結晶性ヒドロキシアパタイト」を採用することは、格別困難なことではないということができる。
よって、相違点1は、当業者が想到するに困難性はない。

(4-2)相違点2について
ア 刊行物1には、アクリレートポリマーであるアクリル酸t-ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体の配合量に関し、前記(刊1-3)のとおり、「組成物に対して0.1?50質量%、好ましくは2?30質量%である。ここで含有量が0.1質量%未満の場合、成膜性が悪く、一方で50質量%を超過する場合、溶媒への溶解性、分散性が低下し、均一な膜を形成しにくく、塗りむらの原因になるため、いずれも好ましくない。」との記載がある。
他方、刊行物1には、これら溶解性、分散性、膜の均一性ないし塗りむらに関し、「歯のコーティング組成物」において配慮すべき技術的要素として、前記(刊1-3)?(刊1-4)のとおり、分散剤として、エチルセルロース、(メタ)アクリル酸系共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体等の高分子ポリマー等を混合することにより、長時間良好に分散性を保つことができ、ほとんど沈殿を生じないこと、特に、「エチルセルロースは、溶液をゲル化したり適度な粘性を与えたりすることによって微細薄片を組成物中に均一分散させる効果があり、・・・撹拌直後の微細薄片の分散状態が極めて良好で、かつ長期間に渡って均一な分散状態を維持することができる。従って歯牙に塗布すると、微細薄片が凝集したり分布が偏ってむらにならずに、微細薄片が均一に分散したコーティング膜をつくることができ、見た目の美しさ、輝きを増強することができる」ことなども記載されている。
これらによれば、刊行物1は、アクリレートポリマーの配合量に関して、「50質量%を超過する場合」を「好ましくない」と言及してはいるが、「50質量%を超過する」態様を一律に排除するべきであることを教示するものではなく、むしろ、「50質量%を超過する」態様においては、特に、分散剤を利用することも視野に入れて、歯牙表面への塗布のしやすさや分散性・安定性等に配慮して配合量を適宜決定するべきであることを示唆するものであると解すことができる。
したがって、刊行物1には、当業者が、刊行物1発明の「アクリレートポリマー」の量を「総組成物の60重量%以上の量」とすることを阻害する要因があるとまではいえない。

イ 相違点2に関し、本願明細書には、次の記載がある。
(イ-1):「【0009】
アクリレートポリマーは任意の量で存在してよく;量は、最終製品のレオロジカル特性を変更するために変化させてよい。しかしながら、アクリレートポリマーは、総組成物の少なくとも約0.01重量%の量で、例えば、約0.01%?約99%、約0.03%?約80%、約0.1%?約60%、約0.3%?約40%、約1%?約30%、約3%?約20%、または約5%?約10%(全て総組成物の重量による)で存在することが好ましい。」
これによれば、本願補正発明は、歯のコーティング組成物中のアクリレートポリマーの量を「60?99重量%」と特定するが、その量は、そもそも任意でよいものであると説明しているということができる。そして、その量を「範囲」として示したときの「好ましい」態様が、発明の詳細な説明に例示されているところ、「上限値」を「99%」とするものは、下限値を0.01%とする最も広い範囲の態様として示されているが、「下限値」を「60%」とする態様は示されておらず、むしろ、「60%」は、「好ましい」態様としては、下限値を0.1%とする態様の「上限値」として、前記範囲より狭い範囲の態様として示されているのみであるということができる。
そして、本願明細書の実施例の記載を見ても、例えば、前記「好ましい」範囲として記載された「0.1?60%」あるいは「0.01%?99%」と比較して、「60?99%」が格別優れていると認め得る根拠はない。

ウ 本願明細書の段落【0038】?【0040】には、アクリル酸エチル、アクリル酸t-ブチル、及びメタクリル酸のコポリマーである「ルビマー(登録商標)30E(LUVIMER(登録商標)30E)」が71.8%、62%、60%、67%及び63%で配合された例が実施例1?5として記載されているので、これらの配合量が示す技術的意味を確認する。
例1?5において使用された「ルビマー(登録商標)30E」は、本願の優先権主張日前に市販されていた周知のアクリレートポリマー製品であり、例えば、特開平11-199453号公報には、その段落【0006】「【発明の実施の形態】(1)本発明の化粧料に使用するアクリル系樹脂」において、「・・・この様な使用実績のあるアクリル樹脂としては、・・・BASF社製のアクリル酸アルキル共重合体液(t-ブチルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体30%、エタノール70%)である、ルビマー30E、・・・等が例示でき、・・・」と記載されるように、70%のエタノールを含むものである。
したがって、本願明細書の段落【0040】に説明されるとおり、「ルビマー(R)30E」は「アクリル酸エチル、アクリル酸t-ブチル、及びメタクリル酸のコポリマーである」が、段落【0039】【表1】に記載された数値「71.8%、62%、60%、67%及び63%」については、原材料としての市販製品「ルビマー(R)30E」の配合量であって、その「ルビマー(R)30E」の中の純正な「アクリル酸エチル、アクリル酸t-ブチル、及びメタクリル酸のコポリマー」の量だけを取り出して記載した数値ではなく、あくまで市販製品として70%のエタノールを含む量が記載されているものであると解すべきである。
そうすると、段落【0038】?【0040】に実施例として示された例1?5は、いずれも、純正なアクリレートポリマーの配合量としては、総組成物の60%を超えるものではない。(むしろ、いずれも、アクリレートポリマーの配合量が総組成物の30%より少ないことを示しているということができ、そうであれば、前記(イ-1)の記載内容とも整合する。)

エ 前記ウも踏まえれば、本願明細書における前記イ(イ-1)の記載「アクリレートポリマーは任意の量で存在してよく;量は、最終製品のレオロジカル特性を変更するために変化させてよい。」は、高分子化合物であるポリマーについて、一般に、組成物中での含有量が多くなれば、その組成物の粘性等のレオロジカルな特性が高くなるとの、本願の優先権主張日前の技術常識を述べるに過ぎないものであり、数値範囲の上下限値、特に、下限値60%の臨界的意義を説明するものではないということができる。
したがって、本願補正発明のアクリレートポリマーの「量」について、「総組成物の60?99重量%の量」と数値範囲を特定することに格別の技術的意義を認めることはできない。

オ 以上ア?エを総合すれば、相違点2は、当業者が刊行物1発明に基づき適宜なし得るところを出るものではないということができる。

カ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)小括
よって、本件補正は、平成18年改正前特許第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年4月19日付けの手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年2月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「結晶性ヒロドキシアパタイトを含む白色度付与粒子状材料;
アクリル酸t-ブチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸を含むアクリレートポリマーを含み、
前記アクリレートポリマーは、前記組成物中に、総組成物の60?99重量%の量で存在する、歯のコーティング組成物。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記「第2[理由]2.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2.」で検討した本願補正発明から「組成物」の限定事項である「カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、海水コロイド(marine colloid)、キトサン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の非アクリレートポリマー」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]2.」に記載したとおり、刊行物1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上から、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-30 
結審通知日 2013-07-31 
審決日 2013-08-19 
出願番号 特願2008-519597(P2008-519597)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 裕美  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 郡山 順
田村 明照
発明の名称 歯の色を変更するための組成物及び方法  
代理人 小磯 貴子  
代理人 星野 修  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
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