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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1283067
審判番号 不服2013-3954  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-28 
確定日 2013-12-26 
事件の表示 特願2008-272337「内燃機関のシリンダブロック構造」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月 6日出願公開、特開2010-101225〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年10月22日の出願であって、平成24年8月16日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、平成24年10月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成24年11月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、平成25年2月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると共に手続補正書が提出され、さらに、平成25年5月9日付けで審尋がなされ、これに対し、平成25年7月10日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成25年2月28日付け手続補正書による補正について
平成25年2月28日付け手続補正書による補正(以下「本件補正)という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関し、本件補正前に「前記オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバーが、前記圧力室が収容されるラダーフレームの長手方向に亘って延在されている」であったものを、本件補正後に「前記オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバーが、前記圧力室が収容されるラダーフレームのクランク軸と直交する方向に亘って延在されている」(なお、下線は、当審において補正箇所を明示するために付したものである。)とするものである。
本件補正は、同日付けの審判請求書における「審査官殿は、引用文献1には、『・・・ポンプカバー(引用文献1ではポンプカバー11)が、圧力室が収容されるラダーフレームの長手方向(引用文献1では気筒配列方向)に亘って延在される構成が記載されていると認められる』とご認定されておりますが、引用文献1のポンプカバー11は、図1にて、オイルポンプ16の周囲に略円形状のものが示されているだけで、それ以外には、ポンプカバー11は示されておりません。従いまして、審査官殿の『ポンプカバー(引用文献1ではポンプカバー11)が、圧力室が収容されるラダーフレームの長手方向(引用文献1では気筒配列方向)に亘って延在される構成』が記載されている、とのご認定には到底承服することはできないものであります。」(5頁13?28行)との主張と本件補正の内容を合わせて考慮すると、ポンプカバーが延在する「ラダーフレームの長手方向」についての審査官の見解を考慮して、当該ラダーフレームの方向について明確にしたものと評価できるので、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものと判断する。

3.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年2月28日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「クランクシャフトを回転自在に支持するジャーナル部を含むシリンダブロックと、
当該シリンダブロックの下側に取り付けられ、クランクシャフトを回転自在に支持するために前記ジャーナル部に対応して配設されるベアリングキャップ部を有するラダーフレームと、
を含んで構成される内燃機関のシリンダブロック構造であって、
前記ラダーフレームと略一体的にオイルポンプを配設し、
前記オイルポンプが配設されるラダーフレームには、前記オイルポンプのポンプギアを収容してエンジンオイルを所定に昇圧して吐出するための圧力室を備えたケースが収容されていると共に、
前記オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバーが、前記圧力室が収容されるラダーフレームのクランク軸と直交する方向に亘って延在されている
ことを特徴とする内燃機関のシリンダブロック構造。」


4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-37729号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンにおけるラダーフレーム型クランクベアリングキャップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】エンジンにおけるオイルポンプとして、シリンダブロックの前端面に一体形成されたオイルポンプケーシングに装着したものが知られているが、その場合オイルポンプはクランク軸の斜め上方に配設する必要があり、その他の補機との関係で配置スペースの確保が困難なことがあるという問題があり、またその吸入口とオイルパン内のオイル面との間に距離があるため、エンジン始動後のオイル圧の上昇が遅く、また低温時にオイル吸込不良を来す恐れもあるという問題がある。
【0003】このような問題を解消するオイルポンプの配置構成として、例えば実公昭60-24882号公報には、図9に示すように、クランクベアリングキャップ41とは別に、シリンダブロック40の下端面にスティフナー42をボルト止めにて取付けるとともに、このスティフナー42にオイルポンプ43を装着することにより、オイルポンプ43をオイルパン44内に配置したものが開示されている。
【0004】図9において、45はクランク軸である。
【0005】また、特開平5-332113号公報には、シリンダブロックの下端面にラダーフレーム型クランクベアリングキャップを接合し、その下面に単体のオイルポンプを取付けたものが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記実公昭60-24882号公報に開示された構成では、クランクベアリングキャップ41とは別にスティフナー42をシリンダブロック40の下端面に取付け、そのスティフナー42にオイルポンプ43を装着する必要があり、部品点数が多く、組立工数もかかるためにコスト高になるという問題がある。
【0007】また、特開平5-332113号公報に開示された構成では、単体のオイルポンプをラダーフレーム型クランクベアリングキャップの下面に取付けているので、コンパクトに構成できず、また組立ライン上での組み付けに手間がかかるとともにオイルパイプの配管が別途に必要となる等、同じく部品点数が多く、組立工数もかかるためにコスト高になるという問題がある。
【0008】本発明は、このような従来の問題点に鑑み、オイルポンプ及びリリーフバルブを内蔵してオイルポンプ配置構成をコンパクトにでき、かつ部品点数や組立工数が少なくなってコスト低下を図れるラダーフレーム型クランクベアリングキャップを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、シリンダブロックの下端面に接合されるとともに、その上端面にクランク軸芯に沿ってクランクベアリングキャップ部が設けられたラダーフレーム型クランクベアリングキャップにおいて、その前端面にオイルポンプケーシングを一体形成してオイルポンプを内蔵させ、かつこのラダーフレーム型クランクベアリングキャップ内に、リリーフバルブを内蔵させるとともに一端がオイルポンプケーシングの吐出口に連通し他端が上面で開口してシリンダブロックのメインギャラリに接続される吐出通路を形成し、その吐出通路の途中をリリーフバルブに連通させることにより、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップにオイルポンプ及びリリーフバルブとその付帯構成を内蔵させてオイルポンプ配置構成をコンパクトにし、かつ部品点数や組立工数を少なくしてコスト低下を図れるようにしている。」

・「【0011】図1において、1はエンジンのシリンダブロックである。2はシリンダブロック1の下端面に接合されてシリンダブロック1の剛性を高めるとともに、その上端面にクランク軸芯に沿ってクランクベアリングキャップ部3(図3、図4参照)が設けられたラダーフレーム型クランクベアリングキャップであり、その下面にオイルパン4が取付けられている。5はクランク軸であり、その前端部にカムシャフト駆動チェーン6とオイルポンプ駆動チェーン7を巻回させるスプロケット(図示せず)が固定されている。8はカムシャフト駆動チェーン6のチェーンガイド、9はカムシャフト駆動チェーン6にテンションを付与するテンションガイドである。
【0012】ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面の一側部にはオイルポンプケーシング10(図2?図5参照)が凹入形成されるとともに、その前面がオイルポンプカバー11にて閉鎖されることによって、このラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2に内蔵した状態でオイルポンプ12が配設されている。オイルポンプ12は、図2に示すように、オイルポンプケーシング10内にその軸芯周りに回転自在に嵌合されたアウタロータ13と、オイルポンプケーシング10の軸芯に対して偏芯した軸芯周りに回転自在に支持された駆動軸15に固定されたインナロータ14から成り、駆動軸15とともにインナロータ14が回転することにより、インナロータ14とアウタロータ13の歯の噛み合わせによりアウタロータ13も同方向に回転するとともにその噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するように構成されている。駆動軸15はオイルポンプカバー11を貫通して前方に突出し、その先端部に固定されたスプロケット16にオイルポンプ駆動チェーン7が巻回されており、オイルポンプ12がクランク軸5に連動して駆動されるように構成されている。
【0013】図3?図8において、オイルポンプケーシング10の奥壁には、下部に吸入凹部17が、上部に吐出凹部18が凹入形成されている。吸入凹部17からラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の下面で開口するように吸入通路19が下方に向けて穿孔され、オイルパン4内に配設されるストレーナ(図示せず)が接続される。吐出凹部18からは、クランク軸芯と略平行に所定距離後方に延びた後下方に向けて垂直に垂下する倒立L字状の第1の吐出通路20が穿孔され、この第1の吐出通路20はラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の下面に形成されたオイルフィルタ配置凹部22の外周部で開口している。オイルフィルタ配置凹部22の軸芯部にはラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の上面に向けて第2の吐出通路21が穿孔され、その開口端はシリンダブロック1に形成されたメインギャラリに接続される。オイルフィルタ配置凹部22には、オイルフィルタ(図示せず)が配設され、第1の吐出通路20から吐出されたオイルはこのオイルフィルタを通り、金属くず等が除去された後第2の吐出通路21を通ってメインギャラリに送給される。
・・・なお、図4及び図7において、32はラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2をシリンダブロック1に締結固定するためのボルト穴である。
【0015】以上の構成において、エンジンが稼働してクランク軸5が回転すると、オイルポンプ駆動チェーン7を介してオイルポンプ12が駆動され、吸入通路19に接続されたオイルパン4内のオイルがストレーナを通して吸入される。その際、オイルポンプ12がクラング軸5の斜め下方に位置しているので、オイルポンプ12がシリンダブロック1に装着又は内蔵されてクランク軸5の斜め上方に位置する場合に比してオイル面までの高さが低くなり、従ってエンジン始動後のオイル圧の上昇がはやくなり、また低温時にもオイル吸入不良を発生する恐れがない。」

・「【0017】そして、本実施形態ではこれらオイルポンプ12、リリーフバルブ31、オイルフィルタ及びその付帯構成がラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2に内蔵されているので、オイルポンプ配置構成をコンパクトにすることができ、かつ部品点数や組立工数も少なくなるため、コスト低下を図ることができる。」

・「【0019】
【発明の効果】本発明のラダーフレーム型クランクベアリングキャップによれば、以上のように前端面にオイルポンプケーシングを一体形成してオイルポンプを内蔵させ、かつこのラダーフレーム型クランクベアリングキャップ内に、リリーフバルブを内蔵させるとともに一端がオイルポンプケーシングの吐出口に連通し他端が上面で開口してシリンダブロックのメインギャラリに接続される吐出通路を形成し、その吐出通路の途中をリリーフバルブに連通させているので、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップにオイルポンプ及びリリーフバルブとその付帯構成が内蔵されており、従ってシリンダブロックにオイルポンプを配置する場合に比してオイルポンプをオイル面に近づけて配置することができて、エンジン始動後のオイル圧の上昇がはやくなり、また低温時にも吸入不良を生じる恐れがなく、かつラダーフレーム型クランクベアリングキャップをシリンダブロックの下端面に接合するだけでオイルポンプを配置できるとともにオイルポンプの配置スペースを別に必要とせず、コンパクトに構成でき、かつ部品点数や組立工数を少なくしてコスト低下を図ることができる。」

そして、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2のクランクベアリングキャップ部3は、クランク軸5が回転するものであることから、クランク軸5を回転自在に支持するために設けられたものであることは明らかである。
また、図1において、クランク軸5が、シリンダブロック1とラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2に跨って位置していること、及び、図3において、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2のクランクベアリングキャップ部3は、半円状の溝を呈していることから、シリンダブロック1は、クランクベアリングキャップ部3と同様の、クランク軸5を回転自在に支持するための支持部を含むことも明らかである。
また、図1ないし5の記載から、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2と略一体的にオイルポンプ12を配設していることが理解できる。
また、図2、図4及び図5の記載も合わせると、オイルポンプケーシング10が、オイルポンプ12の内歯を有するアウタロータ13と外歯を有するインナロータ14を収容することが理解できる。
また、オイルポンプ12は、インナロータ14とアウタロータ13の歯の噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するよう構成されているところ、図2の記載も合わせると、ポンプケーシング10は、インナロータ14とアウタロータ13の歯の噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するための室を備えたものであることが理解できる。
さらに、図1及び図3ないし5の記載も合わせると、オイルポンプケーシング10の前面を閉鎖するためのオイルポンプカバー11が、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面に沿って設けられていることが理解できる。

よって、これらの記載事項及び図示内容を本願発明の表現にならって整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「クランク軸5を回転自在に支持するための支持部を含むシリンダブロック1と、
当該シリンダブロック1の下端面に接合され、クランク軸5を回転自在に支持するために上端面にクランク軸芯に沿って設けられるクランクベアリングキャップ部3を有するラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2と、
を含んで構成されるエンジンの構造であって、
前記ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2と略一体的にオイルポンプ12を配設し、
前記オイルポンプ12が配設されるラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面の一側部には、前記オイルポンプ12の内歯を有するアウタロータ13と外歯を有するインナロータ14を収容して、前記インナロータ14と前記アウタロータ13の歯の噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するための室を備えたオイルポンプケーシング10が凹入形成されていると共に、
前記オイルポンプケーシング10の前面を閉鎖するためのオイルポンプカバー11が、前記ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面に沿って設けられている
エンジンの構造。」


5.対比・判断
そこで、本願発明(以下「前者」ということがある。)と引用発明(以下「後者」ということがある。)とをその機能・作用も考慮して対比する。
・後者の「クランク軸5」は、前者の「クランクシャフト」に相当し、後者の「クランク軸5を回転自在に支持するための支持部」は、前者の「クランクシャフトを回転自在に支持するジャーナル部」に相当する。
また、後者の「シリンダブロック1」は、前者の「シリンダブロック」に相当する。

・後者の「シリンダブロック1の下端面に接合され」る態様は、前者の「シリンダブロックの下側に取り付けられ」る態様に相当し、後者の「クランク軸5を回転自在に支持するために上端面にクランク軸芯に沿って設けられる」態様は、前者の「クランクシャフトを回転自在に支持するために前記ジャーナル部に対応して配設される」態様に相当する。
また、後者の「クランクベアリングキャップ部3」は、前者の「ベアリングキャップ部」に相当し、後者の「ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2」は、前者の「ラダーフレーム」に相当する。

・後者の「エンジンの構造」は、シリンダブロック1を含んで構成されており、前者の「内燃機関のシリンダブロック構造」に相当する。

・後者の「オイルポンプ12」は、前者の「オイルポンプ」に相当し、後者の「ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2と略一体的にオイルポンプ12を配設し」た態様は、前者の「ラダーフレームと略一体的にオイルポンプを配設し」た態様に相当する。

・後者の「オイルポンプ12の内歯を有するアウタロータ13と外歯を有するインナロータ14」は、前者の「オイルポンプのポンプギア」に相当し、後者の「オイル」は、前者の「エンジンオイル」に相当し、また、後者の「オイルポンプケーシング10」は、前者の「ケース」に相当する。
また、後者の「オイルポンプ12の内歯を有するアウタロータ13と外歯を有するインナロータ14を収容して、前記インナロータ14と前記アウタロータ13の歯の噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するための室」は、吐出されたオイルが昇圧されたものであることは明らかであるから、前者の「オイルポンプのポンプギアを収容してエンジンオイルを所定に昇圧して吐出するための圧力室」に相当する。
そして、後者の「オイルポンプ12が配設されるラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面の一側部には」、「オイルポンプケーシング10が凹入形成されている」態様は、これにより、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2にオイルポンプケーシング10が収容された形態となることから、前者の「オイルポンプが配設されるラダーフレームには」、「ケースが収容されている」態様に相当する。
よって、後者の「オイルポンプ12が配設されるラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面の一側部には、前記オイルポンプ12の内歯を有するアウタロータ13と外歯を有するインナロータ14を収容して、前記インナロータ14と前記アウタロータ13の歯の噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するための室を備えたオイルポンプケーシング10が凹入形成されている」態様は、前者の「オイルポンプが配設されるラダーフレームには、前記オイルポンプのポンプギアを収容してエンジンオイルを所定に昇圧して吐出するための圧力室を備えたケースが収容されている」態様に相当する。

・後者の「オイルポンプケーシング10の前面を閉鎖するためのオイルポンプカバー11」は、これにより、オイルポンプケーシング10が備えた、インナロータ14とアウタロータ13の歯の噛み合いのずれによってオイルを吸入・吐出するための室の前方を密封することになることは明らかであり、前者の「オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバー」に相当する。
そして、後者の「オイルポンプケーシング10の前面を閉鎖するためのオイルポンプカバー11が、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面に沿って設けられている」態様は、ラダーフレーム型クランクベアリングキャップ2の前端面は、クランク軸5と直交する方向の面であり、これに沿って設けられるオイルポンプカバー11がクランク軸5と直交する方向に亘って延在することになるから、前者の「オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバーが、前記圧力室が収容されるラダーフレームのクランク軸と直交する方向に亘って延在されている」態様に相当する(なお、前者において「クランク軸と直交する方向」とあるのは「クランクシャフトと直交する方向」と同義であると理解できる。)。

したがって、両者は、
「クランクシャフトを回転自在に支持するジャーナル部を含むシリンダブロックと、
当該シリンダブロックの下側に取り付けられ、クランクシャフトを回転自在に支持するために前記ジャーナル部に対応して配設されるベアリングキャップ部を有するラダーフレームと、
を含んで構成される内燃機関のシリンダブロック構造であって、
前記ラダーフレームと略一体的にオイルポンプを配設し、
前記オイルポンプが配設されるラダーフレームには、前記オイルポンプのポンプギアを収容してエンジンオイルを所定に昇圧して吐出するための圧力室を備えたケースが収容されていると共に、
前記オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバーが、前記圧力室が収容されるラダーフレームのクランク軸と直交する方向に亘って延在されている
内燃機関のシリンダブロック構造。」
で一致し、発明特定事項(構成)の相違はない。

そして、引用発明は、本願発明と発明特定事項(構成)の相違がない以上、本願発明の効果と同様の効果を奏するものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明と同一であり、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。

なお、請求人は、平成25年7月10日付け回答書において、「このように、本願の図1?図3等に記載されているように、ラダーフレームの前フレーム2Cの部分の長手方向に亘って掛け渡すように、ポンプカバーを拡張した本願発明によれば、本願の当初明細書の段落【0027】 等に記載した通り、ラダーフレームの前フレーム2Cにギア室を設けることで、内燃機関の下方へのオイルポンプの突出量を抑えることができることに加えて(内燃機関の全高の省スペース化)、ポンプカバーをシリンダブロックの図3左右方向に掛け渡すように延在させたことで、剛性アップや騒音低減に貢献可能であります。そして、このような本願発明の独特の構成は、引用文献1からでは、到底示唆されないものであります。」(8頁第14?24行)と主張するが、本願の請求項1には、「前記オイルポンプの圧力室の前方を密封するためのポンプカバーが、前記圧力室が収容されるラダーフレームのクランク軸と直交する方向に亘って延在されている」と記載されており、ポンプカバーを、本願の図3の例のように、シリンダブロックの左右方向に掛け渡すように延在させたことまでは特定されていないのであって、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではないから、上記請求人の主張は採用することができない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、特許法第49条第2号に該当し、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-28 
結審通知日 2013-10-29 
審決日 2013-11-11 
出願番号 特願2008-272337(P2008-272337)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤間 充  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 藤井 昇
槙原 進
発明の名称 内燃機関のシリンダブロック構造  
代理人 提中 清彦  

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