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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A63H
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A63H
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A63H
審判 訂正 2項進歩性 訂正する A63H
管理番号 1283392
審判番号 訂正2013-390142  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-09-12 
確定日 2013-12-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4849496号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4849496号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
平成23年 9月 5日 出願
(平成22年1月15日出願の特願2010-6628の分割)
平成23年10月28日 特許権の設定登録 (請求項1?7)
平成25年 9月12日 本件訂正審判請求

第2 請求の要旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、
特許4849496号の明細書、特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書等」という。)を、審判請求書に添付の訂正明細書、特許請求の範囲(以下「訂正明細書等」という)のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。

(1)訂正事項1:訂正前の請求項1に「前記前輪用シャーシは、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され、」との事項を加えるとともに、訂正前の請求項1に「前記2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で、各先端部が前記前輪用シャーシと連結されるとともに」とあるのを、「前記2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結されるとともに」と訂正する。
(2)訂正事項2:特許請求の範囲の請求項3及び請求項4を訂正により削除する。
(3)訂正事項3:特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1?4のいずれか一項に記載の自動車玩具」とあるのを「請求項1又は2に記載の自動車玩具」と訂正する。
特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1?5のいずれか一項に記載の自動車玩具」とあるのを「請求項1、2、5のいずれか一項に記載の自動車玩具」と訂正する。
特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1?6のいずれか一項に記載の自動車玩具」とあるのを「請求項1、2、5、6のいずれか一項に記載の自動車玩具」と訂正する。
(4)訂正事項4:特許請求の範囲の請求項6において、「前記前輪用シャーシは、前記2つのアーム部の各先端部を上下から挟持する上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成されており、」とあるのを訂正により削除する。
(5)訂正事項5:願書に添付した明細書について、下記のとおり訂正する。
願書に添付した明細書の段落【0007】において、上記訂正事項1と同様に、「前記前輪用シャーシは、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され、」との事項を加えるとともに、「前記2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で、各先端部が前記前輪用シャーシと連結されるとともに」とあるのを、「前記2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結されるとともに」と訂正する。
願書に添付した明細書の段落【0009】【0010】において、記載内容を訂正により削除する。
特許請求の範囲の請求項5に対応する段落【0011】において、上記訂正事項3と同様に、「請求項1?4のいずれか一項に記載の自動車玩具」とあるのを「請求項1又は2に記載の自動車玩具」と訂正する。
特許請求の範囲の請求項6に対応する段落【0012】において、上記訂正事項3と同様に、「請求項1?5のいずれか一項に記載の自動車玩具」とあるのを「請求項1、2、5のいずれか一項に記載の自動車玩具」と訂正する。
特許請求の範囲の請求項7に対応する段落【0013】において、上記訂正事項3と同様に、「請求項1?6のいずれか一項に記載の自動車玩具」とあるのを「請求項1、2、5、6のいずれか一項に記載の自動車玩具」と訂正する。
願書に添付した明細書の段落【0012】において、上記訂正事項4と同様に、「前記前輪用シャーシは、前記2つのアーム部の各先端部を上下から挟持する上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成されており、」とあるのを訂正により削除する。
願書に添付した明細書の段落【0014】において、「また、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとによって2つのアーム部の各先端部が上下から挟持されているので、アーム部の先端部が前輪用シャーシから脱落することを抑制し、ロール角を拡大することが出来る。」を訂正により加入する。
願書に添付した明細書の段落【0016】において、「また、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとによって2つのアーム部の各先端部が上下から挟持されているので、アーム部の先端部が前輪用シャーシから脱落することを抑制し、ロール角を拡大することが出来る。」とあるのを訂正により削除する。

第3 訂正の目的の適否、訂正が願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものか、及び、特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無の判断
訂正事項1は、請求項1において、前輪用シャーシについて「前記前輪用シャーシは、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され」と、「2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で、各先端部が前記前輪用シャーシと連結される」ことについて「前記2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結される」と限定する訂正であるから、特許法126条第1項第1号の特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
訂正事項2?3は、訂正前の請求項3及び請求項4に記載の事項を請求項1に組み入れたことに伴い、当該請求項3及び請求項4を削除し、この請求項3及び請求項4の削除に伴い、引用する請求項を減少したものであり、特許法126条第1項第1号の特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6において、訂正事項1で請求項1を訂正したことによって発生する、特許法126条第1項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5は、訂正事項1?4で特許請求の範囲を訂正したことによって不明瞭となった発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載との整合性を得られるように訂正するものであって、特許法126条第1項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、各訂正は、本件特許明細書の【請求項3】、【請求項4】、【0023】及び【0032】に記載された事項であって、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項1ないし5は、何れも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

第4 独立特許要件の判断
以上のとおり、訂正事項1?3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるであるから、訂正後の請求項1,2,5?7に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

1.訂正後の請求項1,2,5?7に係る発明
訂正明細書等の請求項1,2,5?7に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
前輪車軸を支持する前輪用シャーシと、後輪車軸を支持する後輪用シャーシとを備える自動車玩具において、
前記前輪用シャーシは、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され、
前記後輪用シャーシは、両側部から前方へ延出する2つのアーム部を有し、
前記2つのアーム部は、
車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結されるとともに、
それぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能することを特徴とする自動車玩具。」(以下、「訂正発明1」という。)
「【請求項2】
前記2つのアーム部は、それぞれ捻回可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車玩具。」(以下、「訂正発明2」という。)
「【請求項5】
前記2つのアーム部の各先端部と、当該各先端部が連結された前記前輪用シャーシの各連結部とは、上下方向の中心軸を有する互いに相補的な半球状の摺動面を有し、当該摺動面で互いに摺動可能なように連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車玩具。」(以下、「訂正発明3」という。)
「【請求項6】
前記上部前輪用シャーシの両側部には、下方へ突設された半球状の第1凸部がそれぞれ形成され、
前記2つのアーム部の各先端部には、前記第1凸部と相補的であって上方へ開口する半球状の第1凹部と、下方へ突設された半球状の第2凸部とが互いに同心状に形成され、
前記下部前輪用シャーシの両側部には、前記第2凸部と相補的であって上方へ開口する半球状の第2凹部がそれぞれ形成され、
前記2つのアーム部の先端部は、前記第1凹部を前記第1凸部に摺動可能に嵌合させるとともに前記第2凸部を前記第2凹部に摺動可能に嵌合させつつ、前記前輪用シャーシの両側部と連結されていることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか一項に記載の自動車玩具。」(以下、「訂正発明4」という。)
「【請求項7】
前記2つのアーム部は、当該アーム部の延出方向と直交する断面の形状が車幅方向の内側に向かって傾斜する方形状にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1、2、5、6のいずれか一項に記載の自動車玩具。」(以下、「訂正発明5」という。)

2.特許法第29条第2項について
(1)甲第1?4号証とその記載事項
ア.本願遡及日前に頒布された刊行物である甲第1号証(米国特許第5338247号明細書。以後、「刊行物1」という。)には、バッテリ駆動モデルカーに関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
なお、文末の( )は、請求人が甲第1号証(刊行物1)の日本語による翻訳文として提出したものの対応箇所である。

(ア)「ABSTRACT
A rear suspension for battery powered on-road scale model car of the type having a straight rear axle and a nonindependent rear suspension is disclosed. The model car includes a chassis having a central longitudinal axis with a centrally located battery pack. A pair of remotely steerable wheels are pivotably affixed to the chassis front end. A motor pod pivotably supports a pair of rear wheels interconnected by a straight rear axle and includes a mechanism for attaching an electric drive motor. The rear suspension elastically attaches the motor pod to the chassis for limited vertical bounce movement and limited torsional roll movement of the motor pod relative to the chassis. The rear suspension components are spaced sufficiently from the battery pack to provide clearance for a row of batteries oriented centrally along the chassis. The central battery design minimizes mass moment of inertia of the model car measured about the longitudinal axis resulting in improved maneuverability.」
(「要約:
まっすぐな後車軸及び非独立性のリアサスペンションを有するタイプのバッテリ駆動オンロードスケールモデルカーのリアサスペンションが公表された。そのモデルカーは、中央に配向されたバッテリパックと共に中央縦軸を有している。一対のリモート操舵可能な車輪がシャーシの前端にピボット作用可能に添付されている。モータポッドはまっすぐな後車軸によって相互に接続された一対の後輪をピボット作用可能に支持する。そして、モータポッドは電動モータを取り付けるための機構を含んでいる。リアサスペンションは、限られた垂直バウンド及びシャーシに対するモータポッドの限られたねじれ回転運動のために弾性的にモータポッドをシャーシに取り付けている。リアサスペンションの要素は、バッテリパックから十分に離され、シャーシに沿って中央に配向されたバッテリ列のためにクリアランスを与えている。中央のバッテリデザインは、縦軸に対して測定されるモデルカーの質量慣性モーメントを最小化し、結果として、改良された操縦性が得られる。」)
(イ)「A second embodiment of the model car of the present invention is shown in FIGS. 5-7. Second model car embodiment 80 includes a chassis 82 of generally similar construction to chassis 12 described with reference to the first model car embodiment 10. Chassis front end 84, a rear end 86 are on opposite ends of central longitudinal axis 88. A battery pack which is made up of a series of cylindrical battery cells are oriented in transverse alignment with the longitudinal axis 88. The batteries are centrally oriented on the chassis immediately forward of the chassis rear end 86.
The primary difference between model car 80 and model car 10 is a design of the rear suspension. Car 80 is provided with a rear suspension 90 which includes a generally U-shaped spring 92. U-shaped spring 92 is formed of a generally planar sheet of fiberglass or the like. The central portion of the U-shaped spring 94 is securely affixed to motor pod 96 while the U-shaped spring forward ends 98 and 98' are pivotably affixed to chassis 82 by a pair of swivel joints 100 and 100'. These swivel joints are located along a transverse axis TA which extends generally perpendicular to longitudinal axis 88. Due to the planar configuration of the U-shaped spring, the spring is very stiff when loaded transversely, yet is flexible when a motor pod is rotated in torsion about longitudinal axis 88.
Pivots 100, which may comprise assemblies as shown in FIGS. 5 and 7, enable the U-shaped spring attached to the motor pod to rotate about the transverse axis enabling the motor pod to move vertically relative to the chassis in bounce. The U-shaped spring 92 acts as a control arm. The torsional spring rate of the motor pod relative to the chassis is controlled by U-shaped spring 92. U-shaped spring 92 and pivots 100 are equivalent to T-bar 50 in the first embodiment in that they provide pivot means for connecting the motor pod to the chassis enabling limited free relative movement therebetween about the transverse pivot axis TA. Of course, other joints such as a central pivot socket with alignment pins or control arms to maintain axle alignment, could also be used.
A spring rate of bounce is controlled by telescopic strut 102. Telescopic strut 102 is affixed at one end to the motor pod 96 and affixed at its other end to post 104. Post 104 extends vertically from deck 106 which is spaced above and generally parallel to chassis 82 to provide clearance for batteries 108 therebetween. The deck 106 is affixed to the chassis by a series of spacers 110, 112 and 114. As the motor pod moves vertically in bounce, the telescopic strut is compressed. Telescopic strut 102 is preferably of a conventional design which includes a compressible coil spring and an internal damper. The static height of the rear suspension can be adjusted by moving a collar 116 axially along the strut to vary its initial length when the vehicle is at rest. As in the first embodiment, strut 104 is preferably forwardly upwardly inclined relative to the vehicle's longitudinal axis.
By utilizing the deck 106, post 104 can be moved forward relative to post 70 and model car 10 enabling the battery pack to be positioned in a more rearward location. The location of transverse axis TA is likewise significantly forward of the transverse axis in the first embodiment which enables the pivot point of the telescopic strut motor pod attachment to be located very close to the longitudinal axis. This design minimizes the interrelationship between the telescopic strut spring rate and the torsional roll couple which is generated by the generally U-shaped leaf spring 92.
The generally U-shaped spring is illustrated in greater detail in FIG. 6. The orientation of the leaf spring relative to longitudinal axis 88 and transfer axis TA are best illustrated with reference to this figure as well as FIG. 7. When the motor pod and the rear wheels were vertically moved relative to the chassis in bounce, a motor pod moves along an arcuate path rotating about axis TA.」(第4欄第45行?第5欄第53行)
(「本発明のモデルカーの第2の実施形態は図5から7に示されている。第2のモデルカーの実施形態80は、第1のモデルカーの実施形態10に関連して述べたシャーシ12に略似通った構成のシャーシ82を含んでいる。シャーシの前端84、後端86は、中央の縦軸88の反対側の端にある。一連の円柱状のバッテリセルで形成されたバッテリパックは、縦軸88に対して横配列で配向されている。バッテリは、シャーシの後端86の直ぐ前のシャーシ上の中央に配向されている。
モデルカー80とモデルカー10との最初の相違点は、リアサスペンションのデザインである。自動車80は、略U-形のスプリング92を含むリアサスペンション90を備えている。U-形のスプリング92は、ガラス繊維等の略平坦なシートで形成されている。U-形のスプリング94の中央部分は、U-形のスプリングの前端98及び98’がスイベルジョイント100及び100’.のペアによってシャーシ82にピボット作用可能に添付されている一方で、しっかりとモータポッド96に添付されている。これらのスイベルジョイントは、縦軸88に略直立して延びる横軸TAに沿って配向されている。U-形のスプリングの平面的構成の結果、スプリングは横方向に負荷が掛かったときに大変硬く、モータポッドが縦軸88に対するねじれで回転した時には柔軟である。
ピボット100は、図5及び7に示すようにアッセンブリから成り、モータポッドに連結されているU-形のスプリングが、バウンド時にモータポッドをシャーシに対して垂直に運動することを可能にしている横軸に対して回転することを可能にさせている。U-形のスプリング92は、制御アームとして動作する。シャーシに対してのモータポッドのねじれスプリングレートは、U-形のスプリング92によって制御される。U-形のスプリング92及びピボット100は、横ピボット軸TAに対する限られた自由相対運動を可能にさせるシャーシにモータポッドを連結させるためにピボット手段を備えるという点で、第1の実施形態の中のT-バー50に相当する。勿論、軸調整を維持するため調整ピン又は制御アームを持つ中央ピボットソケットのような他のジョイントを用いることもできる。
バウンドのスプリングレートは、伸縮自在な支柱102によって制御されている。伸縮自在な支柱102は、一端がモータポッド96に添付され、他端が支柱104に添付されている。支柱104は、バッテリ108のためのクリアランスを提供するためにシャーシ82の上に且つ略平行に配置されたデッキ106に直立して延びている。デッキ106は一連のスぺーサ110、112及び114によってシャーシに添付されている。バウンド時にモータポッドが垂直に動いた時、伸縮自在な支柱は圧縮される。伸縮自在な支柱102は、好ましくは、圧縮可能なコイルスプリング及び内部ダンパを含む従来型のデザインである。リアサスペンションの静的な高さは、ビークルが休止している時にその最初の長さを変えるために支柱に沿って軸方向にカラー116を動かすことによって調整することができる。第1の実施形態のように、支柱104は、好ましくは、ビークルの縦軸に対して相対的に前方上方に傾いている。
デッキ106を利用することによって、支柱104は、バッテリパックをもっと後方に位置させることができるように、支柱70及びモデルカー10に対して前方に動くことができる。横軸TAの配向は、第1の実施形態の横軸の前方でかなり似通っていて、伸縮自在な支柱モータポッドアタッチメントのピボット点が縦軸に非常に近く配置されることを可能にしている。このデザインは、伸縮自在な支柱スプリングレートと、U-形のリーフスプリング92によって形成されたねじれ回転対の相互関係を最小限に抑えることができる。
略U-形のスプリングは図6において詳細に示されている。縦軸88及び横軸TAに対するリーフスプリングの配向は、図7のようにこの図面で最適に図示されている。モータポッド及び後輪がバウンド時にシャーシに対して垂直に動かされた時、モータポッドは、軸TAの回りに正確な軌跡で回転する。」)
(ウ)FIG5?7には、記載事項(ア)の「シャーシ」が、前輪の車軸を支持するシャーシ82として図示されている。
また、記載事項(イ)のリアサスペンション90の「U-形のスプリング92の中央部分」が、「モータポッド96に添付され」、「U-形のスプリング92」は、中央部分の両側部に前方へ延出する2つの部分を有した構造で図示されている。

すると、刊行物1には、図5?7記載の第2の実施形態のモデルカーに着目して、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「前輪の車軸を支持するシャーシ82と、
まっすぐな後車軸によって相互に接続された一対の後輪をピボット作用可能に支持するモータポッド96と、
略U-形のスプリング92を含むリアサスペンション90と、
を備えるモデルカーにおいて、
リアサスペンション90のU-形のスプリング92は、
ガラス繊維等の略平坦なシートで形成され、
中央部分がしっかりとモータポッド96に添付され、
中央部分の両側部から前方へ延出する2つの部分を有し、
中央部分の両側部から前方へ延出する2つの部分は、
前端98及び98’がスイベルジョイント100及び100’.のペアによってシャーシ82にピボット作用可能に添付される、
モデルカー。」

イ.本願遡及日前に頒布された刊行物である甲第2号証(英国特許出願公開第1072412号明細書。以後、「刊行物2」という。)には、玩具や車両模型に関する改良に関し、図面とともに、金属製の平板11とプラスチック製の成形型2に、平板状のプラスチックサスベンション9が挟まれた構造の自動車玩具が記載されている。

ウ.本願遡及日前に頒布された刊行物である甲第3号証(国際公開第2004/056437号。以後、「刊行物3」という。)には、走行玩具並びに走行玩具のサスペンション装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「1. 操舵用の複数の前輪と駆動装置と接続される複数の後輪を備える走行玩具において、その一端で走行装置の車体に立設された支持壁上部に回動可能に軸支される第1端部と、前記車体上に支持壁から所定の間隔を設けて突設される中空円筒部を貫通させるその中央部に設けた第1穴部と、その中空円筒部頂上に設けたねじ部と第1穴部端部との間に付勢させて介装されるばね部と、他端部に水平方向に開口する第2穴部とを有するトレーリングアームであって、前記トレーリングアームがこの第2穴部に後輪の車軸を貫通させて車軸から伝達されるショックを前記ばねに吸収させる走行玩具。」(請求の範囲)
(イ)「本発明に係る走行玩具用サスペンション装置1を搭載する走行玩具3は、図5に示すように、車体4に前輪タイヤ5と後輪タイヤ7と駆動装置9を備える。走行玩具用サスペンション装置1は、後輪タイヤ7が車体と接合するために使用される装置である。
図1は本発明の装置を明らかにするために後輪タイヤ7を除いた走行玩具用サスペンション装置1の側面図を示す。後輪タイヤ7を装着した状態は図2に示す。また、説明のために片方の後輪タイヤ7を除いた平面図を図3に示す。図1に示すように本発明に係る走行玩具用サスペンション装置1において、トレーリングアーム2は、一端が車体4と回動自在に挟持され、もう一端が車軸6と連結し、中央で、圧縮ばね8を介して車体4と上下動可能に配置される。
トレーリングアーム2の一端10は、円筒状に加工されて、さらにこの円筒より小さい半径のブッシュ12が水平方向両側でかつ、進行方向に垂直に突出する(図4)。一方、車体4から立設する2枚の支持壁14の上部にU字型形状に切欠した軸受16が設けられ、この軸受16にブッシュ12が回動自在に軸支される。この軸受16がトレーリングアーム2の作動点となる。ここで、図1では、説明のため車体用カバー18が記載されていないので、図面上は軸受16の上方が開放されているが、実際に本発明に係る走行玩具用サスペンションを搭載した走行玩具が走行するために、車体4上には車体用カバー18が被せられる(図5参照)。このため軸受16上部が閉鎖されてブッシュ12の上部への移動が制限され、軸受16内部の回転のみが可能となる。」(第5頁第7行?第6頁第1行)

エ.本願遡及日前に頒布された刊行物である甲第4号証(「ミニッツで遊ぼう!」(八重洲出版)表紙、目次、11、58頁、裏表紙。以後、「刊行物3」という。)には、ミニッツに関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「リヤは左右リジットながらユニット全体を柔軟性のあるバーで支持するサスベンションを持ち、路面に少々のギャップがあってもスムーズな走りを見せてくれる。」(第11頁第10?13行)
(イ)「対応車種:formula
0.5mm厚FRP製のリヤサスプレート。特有のしなりと高い耐久性を持つ。」(第58頁左列4番目の写真の説明文)

(2)訂正発明1と引用発明との対比
ア.両発明の対応関係
(a)引用発明の「前輪の車軸を支持するシャーシ82」は、訂正発明1の「前輪車軸を支持する前輪用シャーシ」に相当し、同様に
「まっすぐな後車軸によって相互に接続された一対の後輪をピボット作用可能に支持するモータポッド96」及び、「モータポッド96に添付され」たリアサスペンション90の「U-形のスプリング92」は、両方で、「後輪車軸を支持する後輪用シャーシ」に、
「モデルカー」は、「自動車玩具」に、
「U-形のスプリング92」の「中央部分の両側部から前方へ延出する2つの部分」は、「後輪用シャーシ」の「両側部から前方へ延出する2つのアーム部」に相当する。
(b)引用発明の「中央部分の両側部から前方へ延出する2つの部分は、前端98及び98’がスイベルジョイント100及び100’.のペアによってシャーシ82にピボット作用可能に添付され」ることと、訂正発明1の「2つのアーム部は、
車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結されるとともに、
それぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能する」こととは、前者の「リアサスペンション90」が、「ガラス繊維等の略平坦なシートで形成され」た「U-形のスプリング92」を含むものであるので、両者は、「2つのアーム部は、
車幅方向に離間した状態で、前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で連結されるとともに、
それぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能する」点で共通する。

イ.両発明の一致点
「前輪車軸を支持する前輪用シャーシと、後輪車軸を支持する後輪用シャーシとを備える自動車玩具において、
前記後輪用シャーシは、両側部から前方へ延出する2つのアーム部を有し、
2つのアーム部は、
車幅方向に離間した状態で、前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で連結されるとともに、
それぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能する自動車玩具。」

ウ.両発明の相違点
相違点1:前輪用シャーシが、訂正発明1は「上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され」ており、2つのアーム部は、「前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて」前輪用シャーシの両側部で連結されるものであるのに対して、引用発明はそうでない点。

相違点2:2つのアーム部が、「前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ」前方へ延出し各先端部が連結されるものであるのに対して、引用発明はそうでない点。

(3)訂正発明1の容易推考性の検討
ア.相違点1について
(a)刊行物3の記載事項(イ)の「走行玩具」は、訂正発明1の「自動車玩具」に相当し、以下同様に、
「車体4」は「下部前輪用シャーシ」に、
「車体用カバー18」は「上部前輪用シャーシ」に、
「走行玩具用サスペンション装置」は「サスペンション」に相当する。
(b)そして、刊行物3の記載事項(イ)の「トレーリングアーム2は、一端が車体4と回動自在に挟持され」ることは、「図1では、説明のため車体用カバー18が記載されていないので、図面上は軸受16の上方が開放されているが、実際に本発明に係る走行玩具用サスペンションを搭載した走行玩具が走行するために、車体4上には車体用カバー18が被せられる(図5参照)。このため軸受16上部が閉鎖されてブッシュ12の上部への移動が制限され、軸受16内部の回転のみが可能となる」ものであるので、訂正発明1の「上部前輪用シャーシ」と「下部前輪用シャーシ」で、2つのアーム部の各先端部を「上下から挟持する」ことに相当する。
(c)上記刊行物3の記載事項(イ)の各構成は、サスペンション装置の部品の前端を車体4に回動自在に固定する点で、引用発明の「スイベルジョイント100及び100’.のペア」によって「前端98及び98’が・・・シャーシ82にピボット作用可能に添付」した構成と機能が共通するものであり、引用発明の前輪の車軸を支持するシャーシ82(訂正発明1の「前輪用シャーシ」に相当するもの)を、刊行物3の記載事項(イ)の「車体4」(訂正発明1の「下部前輪用シャーシ」に相当するもの)及び「車体用カバー18」(訂正発明1の「上部前輪用シャーシ」に相当するもの)として構成すると共に、引用発明の中央部分から前方へ延出する2つの部分を「シャーシ82にピボット作用可能に添付され」る構成を、刊行物3の記載事項(イ)の「車体4上には車体用カバー18が被せられる(図5参照)。このため軸受16上部が閉鎖されてブッシュ12の上部への移動が制限され、軸受16内部の回転のみが可能となる」様にした「車体4と回動自在に挟持され」る構成として相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について
2つのアーム部が、「前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ」前方へ延出し連結される構成は、甲第1?4号証に記載も示唆もされておらず、引用発明の「リアサスペンション90のU-形のスプリング92」の「中央部分の両側部から前方へ延出する2つの部分」を、「前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ」前方へ延出したものとすることは、当業者が、容易に想到し得たとはいえない。

ウ.まとめ
そうすると、訂正発明1は、本願遡及日前に頒布された刊行物である甲第1?4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)訂正発明2?5の容易推考性の検討
訂正発明2?5は、訂正発明1にさらに構成を付加したものであり、上記(3)で訂正発明1が当業者が容易になし得たものであると認められない以上、訂正発明2?5が当業者が容易になし得たものであると認められない。

3.小括
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しないので、訂正後の請求項1,2,5?7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。

第6 むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動車玩具
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行可能な自動車玩具においては、車軸を支持するシャーシが前後に分割されており、これら前後のシャーシを上下に相対揺動可能に連結した連結構造によって、車輪の路面追従機能やサスペンション機能を簡易に実現している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、この連結構造は、前輪車軸を支持する前輪用シャーシと後輪車軸を支持する後輪用シャーシとを、平面視略T字状の連結部材によって車幅方向の中央で連結した構造となっている。この連結部材は、棒状の突設部分(T字の下端部)を前輪用シャーシへ向けた状態で後輪用シャーシに固定され、突設部分の先端部がボールジョイント構造によって前輪用シャーシに揺動可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3798350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような連結構造では、前輪用シャーシの車幅方向中央に連結部材が連結されているため、電気基板等を配置するための前輪用シャーシ上のスペースが圧迫されていた。その結果、連結部材を回避して電気基板等を配置せざるを得ず、構造が複雑化して小型化や軽量化を図ることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、小型・軽量化を図りつつ前後のシャーシを連結することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、前輪車軸を支持する前輪用シャーシと、後輪車軸を支持する後輪用シャーシとを備える自動車玩具において、
前記前輪用シャーシは、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され、
前記後輪用シャーシは、両側部から前方へ延出する2つのアーム部を有し、
前記2つのアーム部は、
車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結されるとともに、
それぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車玩具において、
前記2つのアーム部は、それぞれ捻回可能に形成されていることを特徴とする。
【0009】(削除)
【0010】(削除)
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動車玩具において、
前記2つのアーム部の各先端部と、当該各先端部が連結された前記前輪用シャーシの各連結部とは、上下方向の中心軸を有する互いに相補的な半球状の摺動面を有し、当該摺動面で互いに摺動可能なように連結されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1、2、5のいずれか一項に記載の自動車玩具において、
前記上部前輪用シャーシの両側部には、下方へ突設された半球状の第1凸部がそれぞれ形成され、
前記2つのアーム部の各先端部には、前記第1凸部と相補的であって上方へ開口する半球状の第1凹部と、下方へ突設された半球状の第2凸部とが互いに同心状に形成され、
前記下部前輪用シャーシの両側部には、前記第2凸部と相補的であって上方へ開口する半球状の第2凹部がそれぞれ形成され、
前記2つのアーム部の先端部は、前記第1凹部を前記第1凸部に摺動可能に嵌合させるとともに前記第2凸部を前記第2凹部に摺動可能に嵌合させつつ、前記前輪用シャーシの両側部と連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1、2、5、6のいずれか一項に記載の自動車玩具において、
前記2つのアーム部は、当該アーム部の延出方向と直交する断面の形状が車幅方向の内側に向かって傾斜する方形状にそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、後輪用シャーシは、両側部から前方へ延出する2つのアーム部を有し、この2つのアーム部は、車幅方向に離間した状態で各先端部が前輪用シャーシと連結されているので、前輪用シャーシ上のスペースを圧迫することなく、前輪用シャーシと後輪用シャーシとを連結することができる。これにより、T字状の連結部材を使用していた従来に比べ、連結部材を回避する必要なく電気基板等を容易に配置することができ、つまり、構造を簡素化して小型・軽量化を図ることができる。したがって、小型・軽量化を図りつつ前後のシャーシを連結することができる。
また、2つのアーム部がそれぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能するので、当該各アーム部を上下方向へ弾性変形させて、サスペンションとして機能させることができる。
また、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとによって2つのアーム部の各先端部が上下から挟持されているので、アーム部の先端部が前輪用シャーシから脱落することを抑制し、ロール角を拡大することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、2つのアーム部がそれぞれ捻回可能に形成されているので、このアーム部の捻回によってロール角を更に拡大することができる。
【0016】(削除)
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、2つのアーム部の各先端部と前輪用シャーシの各連結部とは、上下方向の中心軸を有する互いに相補的な半球状の摺動面を有し、当該摺動面で互いに摺動可能なように連結されているので、前輪用シャーシと後輪用シャーシとを左右方向や上下方向へ滑らかに相対揺動させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、2つのアーム部の先端部は、第1凹部を上部前輪用シャーシの第1凸部に摺動可能に嵌合させるとともに、第2凸部を下部前輪用シャーシの第2凹部に摺動可能に嵌合させつつ、前輪用シャーシの両側部と連結されている。つまり、アーム部の先端部は、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとによって、相互に摺動可能な状態で挟持されている。したがって、前輪用シャーシからのアーム部の先端部の脱落を抑制してロール角を拡大しつつ、前輪用シャーシと後輪用シャーシとを左右方向や上下方向へ滑らかに相対揺動させることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、2つのアーム部は、当該アーム部の延出方向と直交する断面の形状が車幅方向の内側に向かって傾斜する方形状にそれぞれ形成されているので、車幅方向に平行な外力が加わった場合であっても、傾斜角度に応じてこの外力を分散させることができる。つまり、平板状のアーム部を水平に設けた場合に比べ、弾性変形しにくい幅方向への荷重を低減させることができ、ひいては、アーム部の変形や破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態における自動車玩具の外観図である。
【図2】ボディを取り外した状態の自動車玩具の平面図である。
【図3】図2のA-A矢視での断面図である。
【図4】図2のB-B矢視での断面図である。
【図5】自動車玩具の後端部の部分断面図である。
【図6】リモコンの外観図である。
【図7】充電器の外観図である。
【図8】横転防止リングを設けた自動車玩具の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態における自動車玩具1の外観図である。
この図に示すように、自動車玩具1は、オフロード車を模した走行玩具であり、前輪21,21を左右へ揺動可能に支持する前輪車軸2と、後輪31,31を支持する後輪車軸3(図5参照)と、ボディ4と、ウイング部材7とを備えている。
【0023】
図2は、ボディ4を取り外した状態の自動車玩具1の平面図である。
この図に示すように、前輪車軸2は前輪用シャーシ5に支持されており、後輪車軸3は後輪用シャーシ6に支持されている。
このうち、前輪用シャーシ5は、前輪車軸2を前端部で支持する略平板状の下部前輪用シャーシ51と、下部前輪用シャーシ51の車体中央部を覆う上部前輪用シャーシ52(図2では二点鎖線で図示)とが係合されて構成されている。下部前輪用シャーシ51上には、後述するリモコン8からの制御信号を受信して各部を駆動する電気基板53が載置されて上部前輪用シャーシ52に覆われている。また、下部前輪用シャーシ51には、図示しない操舵モータ及びギア機構が搭載されているとともに、前輪21,21に連結されたステアリングラック54が左右へ移動可能なように前輪車軸2と平行に支持されている。これらは自動車玩具1のステアリング機構を構成しており、操舵モータがギア機構を介してステアリングラック54を左右へ駆動することによって、前輪21,21が左右へ向きを変えて自動車玩具1が操舵される。更に、下部前輪用シャーシ51には、図示しないバッテリーが搭載されている。
一方、後輪用シャーシ6は、後輪車軸3と連結されたモータ軸を有する駆動モータ62が後端部に搭載されている。この後輪用シャーシ6は、両側部から前方へ延出する2つのアーム部61,61を有しており、平面視略コ字状に形成されている。
これら前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とは、2つのアーム部61,61によって両側部で連結されている。この2つのアーム部61,61は、車幅方向に離間した状態で前輪用シャーシ5の後端部を左右から挟みつつ、各先端部61aが前輪用シャーシ5の両側部に突設された連結部55と連結されている。
【0024】
図3は、図2のA-A矢視での断面図であり、図4は、B-B矢視での断面図である。但し、図3では、図示の分かり易さのために各部品の隙間を広げて図示している。
図3に示すように、連結部55には、下方へ突設するよう上部前輪用シャーシ52に設けられた半球状の第1凸部52aと、上方へ開口するよう下部前輪用シャーシ51に設けられた半球状の第2凹部51aとが形成されている。また、アーム部61の先端部61aには、第1凸部52aと相補的であって上方へ開口する半球状の第1凹部61bと、第2凹部51aと相補的であって下方へ突設された半球状の第2凸部61cとが互いに同心状に形成されている。そして、第1凸部52aと第1凹部61bとが摺動可能に嵌合されるとともに第2凸部61cと第2凹部51aとが摺動可能に嵌合されるように、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによってアーム部61の先端部61aが上下から挟持されている。
このような連結構造を両側部に設けることにより、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6との左右方向や上下方向への相対揺動を許容することができ、前後輪21,31の路面追従機能やサスペンション機能を実現している。
【0025】
また、2つのアーム部61,61は、図4に示すように、先端部61a近傍において車幅方向の内側に向かって傾斜する平板状にそれぞれ形成されている。より詳細には、このアーム部61,61は、図中の二点鎖線で示すように基端部では水平に設けられており、先端部61aに向かうにつれて内側に傾斜するように形成されている。このようにアーム部61,61を傾斜させることにより、当該アーム部に対して車幅方向に平行な外力が加わった場合であっても、傾斜角度に応じてこの外力を分散させ、アーム部61の幅方向に作用する荷重を低減させることができる。
更に、2つのアーム部61,61は、捻回可能な弾性部材でそれぞれ形成されている。そのため、このアーム部61の捻回によってロール角を拡大することができる。加えて、アーム部61を上下方向へ弾性変形させることができるため、サスペンション機能を強化することができる。
【0026】
図5は、自動車玩具1の後端部の部分断面図である。
この図に示すように、ウイング部材7は、弾性部材で形成されたステー部材71を介して後輪用シャーシ6に連結されている。ステー部材71は、前後方向に屈曲されたS字状の屈曲部を有しており、ウイング部材7の車幅方向中央部に1つだけ取り付けられている(図2参照)。このようなステー部材71を介してウイング部材7を取り付けることにより、自動車玩具1の横転等によりウイング部材7が壁や路面に接触した場合であっても、ステー部材71での局部的な応力集中を緩和して当該ステー部材71の塑性変形や破損を防止することができる。
【0027】
ステー部材71の前端部には、バネ部材63の一端が固定されており、このバネ部材63の他端は、上部前輪用シャーシ52後端の突設部52bに固定されている。このバネ部材63は、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とを略上下方向に付勢しており、主にサスペンションの機能を果たしている。
【0028】
また、下部前輪用シャーシ51の後端部には、後方へ突設された係止部51b,51bが形成されており、後輪用シャーシ6の前端部には、前方へ突設された突起部6a,6aが係止部51b,51bの上方に形成されている(図2参照)。これら係止部51b,51b及び突起部6a,6aは、アーム部61の先端部61aを中心とした前輪用シャーシ5及び後輪用シャーシ6の上下方向への相対揺動を規制するためのものである。こうして前輪用シャーシ5及び後輪用シャーシ6の相対揺動を所定範囲に規制することにより、アーム部61の先端部61aが連結部55から脱落することを防止するとともに、電気基板53と駆動モータ62との配線の露出を防止している。なお、バネ部材63は、これら係止部51b,51bと突起部6a,6aとが常態で所定距離だけ上下方向に離間した状態となるように、付勢力が調整されている。
【0029】
図6は、自動車玩具1を遠隔操作するリモコン8の外観図である。
この図に示すように、リモコン8は、駆動モータ62を駆動して自動車玩具1を前進又は後進させるためのレバー部81と、操舵モータを駆動して自動車玩具1を操舵するための操舵ホイール部82とを備えており、本実施形態では、左手でグリップ部8aを握りつつレバー部81を操作し、右手で操舵ホイール部82を操作するように構成されている。
レバー部81は、ニュートラル状態から図中のF方向に動かすと自動車玩具1を前進させ、B方向に動かすと自動車玩具1を所定時間だけ制動させた後に後進させる。また、レバー部81のB方向側部分には、操舵ホイール部82とは反対側(図6の手前側)への張出し部81aが形成されており、B方向へのレバー部81の操作の際に、操作する指(例えば、左手の人差し指)が簡単に抜けてしまわないようになっている。
操舵ホイール部82は、ニュートラル状態から左右に回転させることで、操舵モータを駆動させて自動車玩具1を左右に操舵することが可能となっている。
また、リモコン8には、電源スイッチ83の他、操作可能な自動車玩具1を切り替えるための周波数設定ボタン84を備えている。この周波数設定ボタン84は、自動車玩具1から設定信号を出力させた状態で押下することにより、この信号を出力している自動車玩具1の操作が可能なように設定することができる。
【0030】
図7は、自動車玩具1のバッテリーを充電するための充電器9の外観図である。
この図に示すように、充電器9は、電源スイッチ91と充電開始ボタン92とを備えており、図示しない充電ケーブルを自動車玩具1に接続した状態で電源スイッチ91をONにして充電開始ボタン92を押下することにより、図示しない内蔵電池から電力を供給して自動車玩具1のバッテリーを充電することが可能となっている。また、充電器9には電源LED93と充電LED94とが設けられており、電源LED93の点灯/消灯により電源のON/OFF状態を判別することができ、充電LED94の点灯/消灯により充電中/充電完了を判別することができる。
【0031】
以上の自動車玩具1によれば、後輪用シャーシ6は、両側部から前方へ延出する2つのアーム部61,61を有しており、この2つのアーム部61,61は、車幅方向に離間した状態で各先端部61aが前輪用シャーシ5と連結されているので、前輪用シャーシ5上のスペースを圧迫することなく、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とを連結することができる。これにより、T字状の連結部材を使用していた従来に比べ、連結部材を回避する必要なく電気基板53等を容易に配置することができ、つまり、構造を簡素化して小型・軽量化を図ることができる。したがって、小型・軽量化を図りつつ前後のシャーシを連結することができる。
【0032】
また、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによって2つのアーム部61,61の各先端部61aが上下から挟持されているので、アーム部61の先端部61aが前輪用シャーシ5から脱落することを抑制し、ロール角を拡大することができる。
【0033】
また、2つのアーム部61,61の先端部61aは、第1凹部61bを上部前輪用シャーシ52の第1凸部52aに摺動可能に嵌合させるとともに、第2凸部61cを下部前輪用シャーシ51の第2凹部51aに摺動可能に嵌合させつつ、前輪用シャーシ5の両側部と連結されている。つまり、アーム部61,61の先端部61aは、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによって、相互に摺動可能な状態で挟持されている。したがって、前輪用シャーシ5からのアーム部61の先端部61aの脱落を抑制してロール角を拡大しつつ、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とを左右方向や上下方向へ滑らかに相対揺動させることができる。
【0034】
また、2つのアーム部61,61は、捻回可能な弾性部材でそれぞれ形成されているので、このアーム部61の捻回によってロール角を更に拡大することができる。
【0035】
また、2つのアーム部61,61は、車幅方向の内側に向かって傾斜する平板状にそれぞれ形成されているので、車幅方向に平行な外力が加わった場合であっても、傾斜角度に応じてこの外力を分散させることができる。つまり、平板状のアーム部を水平に設けた場合に比べ、弾性変形しにくい幅方向への荷重を低減させることができ、ひいては、アーム部61の変形や破損を抑制することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることは勿論である。
【0037】
例えば、上記実施形態では、2つのアーム部61,61は後輪用シャーシ6に設けられるものとしたが、当該2つのアーム部61,61は、車幅方向に離間した状態で前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とを連結していればよく、前輪用シャーシ5に設けられてもよいし、両シャーシとは独立した部材であってもよい。
【0038】
また、2つのアーム部61,61の各先端部61aと前輪用シャーシ5の各連結部55とに設けられる半球状の凸部や凹部は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。つまり、2つのアーム部61,61の各先端部61aと前輪用シャーシ5の各連結部55とは、上下方向の中心軸を有する互いに相補的な半球状の摺動面を有し、当該摺動面で互いに摺動可能なように連結されていればよい。これにより、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とを、左右方向や上下方向へ滑らかに相対揺動させることができる。
【0039】
また、図8に示すように、自動車玩具1には、略帯状の横転防止リング10を設けることが好ましい。この横転防止リング10は、透明のポリカーボネートで形成されており、前後方向の略中央部で自動車玩具1を囲うように下部前輪用シャーシ51の裏面に固定されている。また、横転防止リング10の上端部には、前後方向への2つの突起部10a,10aが、車幅方向の中心を跨ぐように異なる周方向位置に形成されている。このような横転防止リング10を設けることにより、自動車玩具1を保護することができる他、自動車玩具1が横転しそうな場合に、この横転防止リング10が壁や路面と接触して自動車玩具1の体勢を復帰させることができる。また、自動車玩具1が反転してしまった場合でも、突起部10aの先端で支持される不安定な反転状態となるため、前輪21,21を操舵したり後輪31,31を駆動したりして反動をつけることで自動車玩具1の体勢を復帰させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 自動車玩具
2 前輪車軸
3 後輪車軸
5 前輪用シャーシ
6 後輪用シャーシ
51 下部前輪用シャーシ
51a 第2凹部
52 上部前輪用シャーシ
52a 第1凸部
55 連結部
61 アーム部
61a 先端部
61b 第1凹部
61c 第2凸部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪車軸を支持する前輪用シャーシと、後輪車軸を支持する後輪用シャーシとを備える自動車玩具において、
前記前輪用シャーシは、上部前輪用シャーシと下部前輪用シャーシとから構成され、
前記後輪用シャーシは、両側部から前方へ延出する2つのアーム部を有し、
前記2つのアーム部は、
車幅方向に離間した状態で、前記前輪用シャーシの後端部を左右から挟みつつ前方へ延出し各先端部が前記前輪用シャーシの両側部で前記上部前輪用シャーシと前記下部前輪用シャーシとにより上下から挟持されて連結されるとともに、
それぞれ弾性部材で形成され、サスペンションとして機能することを特徴とする自動車玩具。
【請求項2】
前記2つのアーム部は、それぞれ捻回可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車玩具。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記2つのアーム部の各先端部と、当該各先端部が連結された前記前輪用シャーシの各連結部とは、上下方向の中心軸を有する互いに相補的な半球状の摺動面を有し、当該摺動面で互いに摺動可能なように連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車玩具。
【請求項6】
前記上部前輪用シャーシの両側部には、下方へ突設された半球状の第1凸部がそれぞれ形成され、
前記2つのアーム部の各先端部には、前記第1凸部と相補的であって上方へ開口する半球状の第1凹部と、下方へ突設された半球状の第2凸部とが互いに同心状に形成され、
前記下部前輪用シャーシの両側部には、前記第2凸部と相補的であって上方へ開口する半球状の第2凹部がそれぞれ形成され、
前記2つのアーム部の先端部は、前記第1凹部を前記第1凸部に摺動可能に嵌合させるとともに前記第2凸部を前記第2凹部に摺動可能に嵌合させつつ、前記前輪用シャーシの両側部と連結されていることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか一項に記載の自動車玩具。
【請求項7】
前記2つのアーム部は、当該アーム部の延出方向と直交する断面の形状が車幅方向の内側に向かって傾斜する方形状にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1、2、5、6のいずれか一項に記載の自動車玩具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2013-12-10 
出願番号 特願2011-192342(P2011-192342)
審決分類 P 1 41・ 121- Y (A63H)
P 1 41・ 851- Y (A63H)
P 1 41・ 853- Y (A63H)
P 1 41・ 856- Y (A63H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 住田 秀弘
杉浦 淳
登録日 2011-10-28 
登録番号 特許第4849496号(P4849496)
発明の名称 自動車玩具  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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