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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C08J
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1283398
審判番号 無効2013-800027  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-19 
確定日 2013-12-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4667695号発明「顔料濃縮物およびその製造法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

平成12年12月 6日 本件出願(特願2001-544867号)
平成23年 1月21日 設定登録(特許第4667695号)
平成24年 2月22日 別件無効審判請求(2012-800013号)
同 年 7月 4日 訂正請求書提出
同 年11月26日 審決(訂正を認め、請求不成立。その後確定)
平成25年 2月19日 本件無効審判請求
同 年 6月14日 審判事件答弁書、訂正請求書提出
同 年 9月12日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同 年 9月13日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同 年 9月26日 上申書提出(被請求人)
同 年 9月27日 第1回口頭審理



第2 訂正の適否について

1.訂正の内容
平成25年6月14日付け訂正請求(以下、「本件訂正」という。)により被請求人が求める訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
平成24年7月4日付け訂正請求書により訂正され、その後確定した特許第4667695号に係る明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の
「【請求項1】少なくとも1種類の顔料、エチレンとそれぞれ0?20モル%のプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンまたは1-ウンデセンから選択される1種類以上のコモノマーとからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス、必要に応じて熱可塑性重合体、および必要に応じて添加剤を含み、
メタロセン触媒が、
rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、若しくは
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、又は
これらに対応する二臭化物、又はジメチル化合物であることを特徴とする顔料濃縮物。
【請求項2】少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックス、熱可塑性重合体および添加剤を含む請求項1に記載の顔料濃縮物。
【請求項3】少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックスおよび添加剤を含む請求項1または2に記載の顔料濃縮物。
【請求項4】ワックスの融点を超過する温度で各成分を混合する請求項3に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項5】ワックスおよび熱可塑性重合体の融点を超過する温度で各成分を混合する請求項1または2に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項6】請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体またはプラスチックシート。
【請求項7】請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物を用い、各成分を溶融体状で均質化することにより混合する請求項7に記載の成形体またはシートを着色する方法。」を、
「【請求項1】少なくとも1種類の顔料、エチレンからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス、必要に応じて熱可塑性重合体、および必要に応じて添加剤を含み、
メタロセン触媒が、
rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
若しくは
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、又は
これらに対応する二臭化物、又はジメチル化合物であることを特徴とする顔料濃縮物。
【請求項2】少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックス、熱可塑性重合体および添加剤を含む請求項1に記載の顔料濃縮物。
【請求項3】少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックスおよび添加剤を含む請求項1または2に記載の顔料濃縮物。
【請求項4】ワックスの融点を超過する温度で各成分を混合する請求項3に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項5】ワックスおよび熱可塑性重合体の融点を超過する温度で各成分を混合する請求項1または2に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項6】請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体またはプラスチックシート。
【請求項7】請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物を用い、各成分を溶融体状で均質化することにより混合する請求項6に記載の成形体またはシートを着色する方法。」
とする訂正。

上記訂正事項1は、下記の訂正事項1-1ないし1-3を内容とするものである。

ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1において、「エチレンとそれぞれ0?20モル%のプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンまたは1-ウンデセンから選択される1種類以上のコモノマーとからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス」を「エチレンからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス」とする訂正。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1において、「若しくは」の位置を、「ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド」と「ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド」との間から、「ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド」と「2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド」との間に移動する訂正。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項7において、「請求項7に記載の成形体またはシートを着色する方法」を「請求項6に記載の成形体またはシートを着色する方法」とする訂正。

2.訂正の適否の判断
(1)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、ポリエチレンワックスについて、「とそれぞれ0?20モル%のプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンまたは1-ウンデセンから選択される1種類以上のコモノマーと」の部分を削除し、それによって、ポリエチレンの種類を、ホモの「ポリエチレンワックス」のみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-1は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、「若しくは」の位置を文章作成上の慣例に従い移動するものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであって、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、引用する請求項について明らかな誤記の訂正を目的とするものであって、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1からなる本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項の規定により準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正を認める。



第3 本件発明

上記第2 のとおり本件訂正は認められるので、特許第4667695号の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明7」といい、これらを併せて単に「本件発明」という場合がある。)は、平成25年6月14日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書(以下、「本件明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】少なくとも1種類の顔料、エチレンからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス、必要に応じて熱可塑性重合体、および必要に応じて添加剤を含み、
メタロセン触媒が、
rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
若しくは
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、又は
これらに対応する二臭化物、又はジメチル化合物であることを特徴とする顔料濃縮物。
【請求項2】少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックス、熱可塑性重合体および添加剤を含む請求項1に記載の顔料濃縮物。
【請求項3】少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックスおよび添加剤を含む請求項1または2に記載の顔料濃縮物。
【請求項4】ワックスの融点を超過する温度で各成分を混合する請求項3に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項5】ワックスおよび熱可塑性重合体の融点を超過する温度で各成分を混合する請求項1または2に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項6】請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体またはプラスチックシート。
【請求項7】請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物を用い、各成分を溶融体状で均質化することにより混合する請求項6に記載の成形体またはシートを着色する方法。」



第4 請求人の主張

請求人は、審判請求書、及び、平成25年9月13日付け口頭審理陳述要領書を提出し、「特許第4667695号の特許(請求項の数は7。以下「本件特許」という。)を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、その証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出しているところ、その理由の概要は、第1回口頭審理調書に記載された請求人の陳述の要領からみて、以下のとおりである。

無効理由
1 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第3乃至10号証に記載された発明に基いて、また、本件特許の請求項2ないし7に係る発明は、甲第1号証及び甲第3乃至13号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
3 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
なお、上記無効理由1及び2に関連して、請求人は、本件発明1ないし7に対する甲第2号証を引用文献とすることに基づく新規性欠如の主張(審判請求書の9頁9?12行)、ならびに、本件発明1ないし7に対する甲第2号証を主たる引用文献とすることに基づく進歩性欠如の主張(審判請求書の9頁13?17行)をそれぞれ撤回している(第1回口頭審理調書)。

証拠方法
甲第1号証:特開平8-239414号公報
甲第2号証:特開平8-269140号公報
甲第3号証:「ワックスの性質と応用」、初版第1刷、株式会社幸書房、昭和58年9月10日、第122?133頁
甲第4号証:高橋健「縁の下の力持ち ポリエチレンワックス」、化学と工業、1971年、第24巻、第1号、第183?185頁
甲第5号証:「現場マニアルXI巻(プラスチック加工の問題点とその解決)プラスチックの混練加工とその装置編」、昭和47年5月、綜合化学研究所、第190?202頁
甲第6号証:「プラスチック用着色剤・カラーコンパウンド総合技術」、第1版第1刷、グレースラボラトリ、1990年10月15日、第19?49頁
甲第7号証:George Sonn "The Concept for Improved Plastic Color Concentrated" Society of Plastics Engineers. Annual Technical Conference, 1987年、第45巻、第21?22頁
甲第8号証:Manfred Dicks "EFFECTS OF SPECIALITY WAXES IN POLYOLEFINS AND ENGINEERING PLASTICS" Total Systems Approach, 1988年、第126?147頁
甲第9号証:H.J.Pfister et al. "Fine-particle, surface-coated calcium carbonate in white masterbaches" Kunststoffe German Plastics, 1986年、第76巻、第16?18頁
甲第10号証:Robin Hilder et al. "PEARL LUSTRE PIGMENT MODIFICATION-IMPROVING HANDLING CHARACTERISTICS" Society of Plastics Engineers. Annual Technical Conference, 1999年、第57巻、第2868?2872頁
甲第11号証:鈴木茂「カラーマスターバッチ」、日本ゴム協会誌、1983年、第56巻、第8号、第473?488頁
甲第12号証:国際公開第99/12997号
甲第13号証:塑料、1998年、27(3)、第33?37頁
なお、審判請求書においては、甲第5号証について、「発光元:総合化学研究所」と記載されているが、「綜合化学研究所」の誤記である。



第5 被請求人の主張

被請求人は、平成25年6月14日付け審判事件答弁書、平成25年9月12日付け口頭審理陳述要領書、及び、平成25年9月26日付け上申書を提出し、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と主張し、その証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。

証拠方法
乙第1号証:平成25年6月14日付け訂正請求書の写し
乙第2号証:EP1238026B1号異議申立事件における提出書類(2006年1月20日付け)
乙第3号証:乙第2号証の部分翻訳



第6 当審の判断

当合議体は、本件特許について、以下述べるように、無効理由1ないし3はいずれも理由がなく、よって本件特許を無効とすることはできないと判断する。

1.無効理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第13号証の記載事項
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている。
1a.「【請求項1】(A)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む第IVB族遷移金属化合物と、
(B)前記第IVB族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と、
(C)有機アルミニウム化合物とからなるオレフィン重合用触媒の存在下にエチレンを単独重合させるか、あるいはエチレンと炭素原子数が3以上のオレフィンとを共重合させて、極限粘度[η]が0.40dl/g以下であるエチレン(共)重合体を形成させることを特徴とするエチレン系ワックスの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1)

1b.「【発明の技術分野】本発明は、エチレン系ワックスの製造方法に関し、さらに詳しくは、分子量分布の狭いエチレン系ワックスを高い生産性で製造するエチレン系ワックスの製造方法に関するものである。」(段落0001)

1c.「【発明の技術的背景】ポリエチレンワックスなどのオレフィン系低分子量重合体は、たとえば顔料分散剤、樹脂加工助剤、印刷インキ用添加剤、塗料用添加剤、ゴム加工助剤、繊維処理剤などの用途に用いられている。また、オレフィン系低分子量重合体は、トナー用離型剤にも用いられている。近年、省エネルギー化の観点から低温定着トナーが求められており、低温での離型性のよいワックス、すなわち同一組成、同一分子量であっても、融点の低いワックスの出現が望まれている。」(段落0002)

1d.「ところでこのようなオレフィン系低分子量重合体を製造する方法としては、従来から工業的には通常チタン系触媒が使用されている。しかし、この触媒系では触媒単位量当たりの低分子量重合体の収量は大きく、高活性であるという利点はあるが、重合系内の気相の水素分圧を大きく維持することが必要であり、その結果、アルカンの副生が多いという欠点があった。さらには、得られた低分子量重合体の分子量分布が広く、とくに分子量が1000以下の低分子量重合体においては、ベタつきが大きいために、低分子量部を除去しなければ上記の用途には使用することが困難であった。」(段落0003)

1e.「本発明者らは、上記のような従来技術における問題点に鑑み鋭意検討した結果、特定のメタロセン系触媒の存在下にエチレンを単独重合させるか、あるいはエチレンと炭素原子数が3以上のオレフィンとを共重合させると、高い生産性で分子量分布の狭いエチレン系ワックスが得られることを見出した。また、100℃以上の温度で上記(共)重合を行うとさらに高い生産性で分子量分布が狭く、融点が低いエチレン系ワックスが得られることを見出し本発明を完成するに至った。」(段落0007)

1f.「【発明の目的】本発明は、分子量分布の狭いエチレン系ワックスを得るとともに、このようなエチレン系ワックスを効率よく製造する方法を提供することを目的としている。」(段落0008)


1g.「まず、本発明で用いられるオレフィン重合用触媒を形成する各成分について説明する。
オレフィン重合用触媒を形成する(A)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む第IVB族遷移金属化合物としては、下記式(I)で表される化合物を例示することができる。
MLX … (I)
式中、Mは、周期律表第IVB族の遷移金属であり、具体的には、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムである。
Lは、遷移金属に配位する配位子(基)であり、少なくとも1個のLは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは、炭素数が1?12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、-SO_(3)R(ただし、Rはハロゲンなどの置換基を有していてもよい炭素数1?8の炭化水素基である。)または水素原子である。
・・・
以下に、Mがジルコニウムである遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、・・・
ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、・・・エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、・・・エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、・・・ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、・・・ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、・・・ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、・・・など。
なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2-および1,3-置換体を含み、三置換体は1,2,3-および1,2,4-置換体を含む。またプロピル、ブチルなどのアルキル基は、n-、i-、sec-、tert-などの異性体を含む。
・・・
さらに、下記一般式(II)、(III)および(IV)で示される第IVB族遷移金属化合物を例示することができる。
・・・

【化2】

式中、Mは周期律表第IVB族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R^(11)は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1?6の炭化水素基であり、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシルなどのアルキル基、ビニル、プロペニルなどのアルケニル基などが挙げられる。
これらのうちインデニル基に結合した炭素が1級のアルキル基が好ましく、さらに炭素原子数が1?4のアルキル基が好ましく、特にメチル基およびエチル基が好ましい。
・・・
以下に上記一般式(III)で表される第IVB族遷移金属化合物の具体的な例を示す。・・・rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド・・・など。
・・・
本発明では、通常前記一般式(III)で表される第IVB族遷移金属化合物のラセミ体がオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。」(段落0015?0045)

1h.「【実施例1】充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン1リットルを装入し、水素を2kg/cm^(2)-G となるまで導入した。次いで、系内の温度を130℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002ミリモルおよびビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.001ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を30kg/cm^(2)-G に保ち、140℃で15分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンをパージした。得られたポリマー溶液を大過剰のメタノール中に投入することにより、ポリマーを析出させた。ポリマーを濾過により回収し、80℃で減圧下で一晩乾燥した。その結果、極限粘度[η]が0.15dl/gであり、Mw/Mnが2.05であり、融点が120.5であるエチレン重合体44.9gを得た。結果を表1に示す。」(段落0098)

1i.「【表1】



イ 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
3a.「現在、世界各国で製造,販売されているPE-ワックスの製法は、次の三つに大別される。
I)エチレンの重合により製造する方法.
現在,市販されているPE-ワックスのほとんどが,この方法により製造されており,この方法は重合方法により,下記の2つに分けることができる.
I-1)ラジカル重合により高温高圧下で重合する方法.
I-2)チーグラー触媒により低圧で重合する方法.」」(第123頁)

3b.「4.2.5 ポリエチレンワックスの用途
PE-ワックスは,前記のような各種の特性を生かして次のような用途に使用されている。
1)樹脂着色助剤(顔料分散剤)
ポリエチレンなどの樹脂の着色は,顔料と分散媒とをロールなどで混練したカラーマスターバッチ方式で行う場合と,顔料と分散媒を微粉末状にし,これを分散混合させるドライカラー方式で行う場合がある・・・これらの要求にはまさに,PE-ワックスが最適であり,マスターバッチ用には低密度タイプおよびエマルションワックスが,ドライカラー用には高密度タイプが使用されている。」(第131頁)

ウ 甲第4号証には、次の事項が記載されている。
4a「2 PE-WAXの用途
・・・
5 プラスチック加工用
1) 着色顔料分散剤
われわれの眼に触れるきれいな色のついたプラスチック製品は,適当な顔料を原料レジンに均一に分散させる必要がある。その方法としては,ドライカラー法とマスターバッチ法がある・・・ポリオレフィン系,スチレン系,塩化ビニル系をはじめ多くのレジンに対してステアリン酸系の金属セッケンがこの分散剤としてよく使われているが,PE-WAXはこの金属セッケンに匹敵する分散効果があり,特にポリオレフィン系レジンの場合にはより少量のPE-WAXで十分で,かつ金属セッケンのような製品表面への析出現象がなく,好まれて使用されている。添加顔料はレジン当り約1?3%であるが,PE-WAXは顔料当り50%以下である。」

エ 甲第5号証には、次の事項が記載されている。
5a.「加工顔料は一般に、顔料にかなりの量のワックスや脂肪酸金属塩・・・、ポリマー分散剤(例えば、低分子量PE・・・)を添加混合、必要に応じて混練加工したものである・・・マスターバッチ顔料と呼ばれるものと加工顔料とは大差はないが、マスターバッチ顔料が材料の樹脂と同一、或は、近似する性質のポリマー分散剤を用いる点、配合面からは設計されたものである場合が多い・・・溶融状態下のポリマーヘの顔料の分散による方法」(第192頁)

5b.「

」(第192頁の図43-2)

5c.「同一配合同一製法のマスターバッチを、同一の主体樹脂に分散するに際し、ロール・ミル法と、連続混練押出機による方法とを並行して行ったものを、インフレーション法でフィルムを成形した」(第201頁)

オ 甲第6号証には、次の事項が記載されている。
6a.「

」(第24頁の表2)

6b.「樹脂に顔料を練り込む場合、次のような過程を経る。(1)樹脂ペレットと顔料の混合物がかくはんされる→(2)樹脂が溶融する→(3)顔料の表面が次第に樹脂でぬらされる→(4)顔料表面が完全に樹脂でおおわれ、混練が効果的に効くようになる。」(第24頁)

6c.「顔料をあらかじめ、分散させやすい分散媒に分散させておき、その予備分散体を更に樹脂に分散させて、マスターバッチとする方法である。この際の分散媒としては、樹脂よりも融点や溶融粘度が低く、顔料表面をぬらしやすい一方、樹脂との相溶性がよい物であることが条件である。このような条件を満たすものは通常、顔料分散剤と呼ばれるものであり、金属石けん類、各種ワックス、樹脂などがある。」(第25頁)

6d.「通常、マスターバッチは・・・樹脂、マスターバッチを計量し、これをタンブラーやヘンシェルミキサーでブレンドし、混合物を成形機に供給する。」(第27頁)

カ 甲第7号証には、次の事項が記載されている。
7a.「

」(第21頁)

7a.の部分和訳「改良プラスチック着色濃縮物のコンセプト
・・・
顔料の製造および顔料の最終加工は、改良されたプラスチック着色濃縮物の提供に寄与する。
・・・
従来のプラスチック着色濃縮物はドライカラーから製造されているが、ドライカラーは、種々の分散剤または表面改質剤で処理された場合でさえ、ランダムな数の凝集顔料粒子である。従来の意味におけるドライカラーの分散は、激しい粉末化を意味する。・・・
この論文は、顔料濃縮物の顔料成分として有機顔料のプレスケーキが使用されてきていることを前提としている。・・・
本論文に記載された着色濃縮物は、50%の低分子量ポリエチレンと、50%の有機顔料とからなる。その製造プロセスは、高出力二軸混練器中の溶融した低分子量ポリエチレンに添加される、有機顔料のプレスケーキの使用を含む。」

キ 甲第8号証には、次の事項が記載されている。
8a.「

」(第127頁)

8a.の和訳「イントロダクション
色調合業者や配合業者は、ワックスとプラスチックが「同類である」という事実をうまく利用している。このことは特に、ポリオレフィン樹脂と同様の方法で製造されるポリオレフィンワックスにあてはまる。ワックスは、加工上の課題を解決し特性を最適化するので、プラスチック工業において重要な役割を果たしている。低分子化合物・高分子化合物として、ワックスは多くのポリマーと相溶し、特別な表面・界面作用をもたらす。他のプラスチック添加剤とは異なり、ワックスには、配合業者が着色濃縮物や化合物を最適化できるように特定の品質等級が示されていないことが多い。
本論文は、エンジニアリング樹脂のための新世代のスペシャリティーモンタン酸塩、繊維用途のためのポリプロピレンワックス、および摩耗性の低い顔料濃縮物のための高融点、高密度ポリエチレンワックスについて記載する。」

8b.「

」(第131頁)

8b.の和訳「新規高密度ポリエチレンワックスによる課題の解決
世界最大規模のワックス製造企業の1つである我々に利用できるリソースが摩耗という課題に対する解決策を見出す一助となった。我々は、融点が258°Fであり密度が0.97である新規ポリエチレンワックス(Hostalub H3)の開発に成功した(図11)。新規ポリエチレンワックスの284°Fにおける溶融粘度は、従来の低融点ポリエチレンワックスの溶融粘度よりもさらに低く、これにより得られるマスターバッチは高い濡れ性と高い分散性を有することができる。
40%の高密度ポリエチレンワックスを含むマスターバッチの溶解レオロジーは、高密度ポリエチレン樹脂の溶解レオロジーと類似する。通常の低密度ポリエチレン/ポリエチレンワックスキャリアとは異なり、DSC分析において単一の融解ピークのみが観察され、均一な結晶化が起きていることが示唆される。この新世代ワックスと、同量の前述したクロムオキシドグリーンとを含むマスターバッチは、実質的に摩耗性を示さない(図12)。」

8c.「

」(第145頁)

8c.の和訳「



ク 甲第9号証には、次の事項が記載されている。
9a.「

」(第16頁)

9a.の和訳「1.ポリマー製品における顔料の凝集および脱凝集
極性顔料は、ポリオレフィンなどの非極性ポリマー内で凝集するという独特の傾向がある。この傾向は酸化チタン(TiO_(2))粒子においても見られる。直径が5μmまたは10μmである酸化チタン凝集体は、サイズが5μmまたは10μmである酸化チタンと同じ光屈折を示す。よって、ポリエチレンフィルでは、これらの凝集体の不透明度は非常に低い。そのため、酸化チタンや他の着色顔料を最大限に利用するためには、存在する顔料粒子全てを粉砕し、かつ、個々の粉砕片の再凝集を防止することが必須である。しかしながら、これは、[1]で使用されている比較的粗い炭酸カルシウム(CaCO_(3))では不可能である。直径が最大15μmであり、サイズが0.2?0.3μmである酸化チタン粒子よりも大きい「炭酸カルシウムのかけら」が存在することによって、顔料が粉砕できなかったり、炭酸カルシウムの小粒子が酸化チタン粒子間に押し込められないからである。
これに対して、平均粒径が最大1.0μmである非常に微細に粉砕された表面被覆炭酸カルシウムは最適に分散させることができる。この表面被覆炭酸カルシウムは最適は、溶融プラスチック内の酸化チタン粒子とサイズが同程度であるため、酸化チタン粒子同士を分離させ、溶融状態から固体状態への相変化過程において酸化チタン粒子同士を離間させる。これを酸化チタンと二種類の炭酸カルシウムとの粒子サイズの違いに基づいて図1に示す。
もはや最先端技術に相当しない白色マスターバッチ処方が[1]において議論されている。下記の例は、50%の酸化チタンと50%のLDPE(双方、炭酸カルシウム添加または未添加;平均3μm)により構成された古典的な形態のマスターバッチと、非常に微細な表面被覆炭酸カルシウムを含む、技術的に等価であるがより安価な新規なバリアントとを比較するものである。[1]に記載されている、古典的な顔料マスターバッチの欠点の多くを回避することができる。」

9b.「

」(第17頁)

9b.の和訳「



9c.「

」(第18頁)

9c.の和訳「4.結論
平均粒径3μmの未被覆炭酸カルシウム、または非常に微細な被覆グレードが、全てのケースにおいてポリオレフィンや他のポリマーの優れたフィラーである。しかしながら、(白色)顔料マスターバッチという特殊なケースでは、物理的な理由から、より微細な被覆グレードを使用する必要がある。このような炭酸カルシウムだけが、その粒子分布曲線および表面被覆により、微細な顔料分子の「脱凝集助剤」や「分散助剤」として作用することができる。
少量のポリエチレンワックスの添加により、炭酸カルシウムの添加量を増やしても、顔料マスターバッチのMFI(メルトフローインデックス)を一定にすることが可能になる。また、ポリエチレンワックスの湿潤効果は、連続的分散操作単位に対する、顔料マスターバッチの生産量も顕著に向上させる。」

ケ 甲第10号証には、次の事項が記載されている。
10a.「

」(第2868頁)

10a.の和訳「要約
高アスペクト比顔料のような合成パール光沢の固体フロー挙動は悪い。押出機による熱可塑性マスターバッチの製造において供給ゾーンの輸送量が制限されるため、生産量が落ちてしまう。独自のワックスカプセル化技術により、配合プロセス前に顔料の粒子形状や粒径分布を変化させずに、押出機による生産量を4倍以上向上させることが可能となる。また本カプセル化プロセスはダスト性の低下につながる。」

10b.「

」(第2869頁)

10b.の和訳「カプセル化製品は、不規則な粒状の流動性パウダーであって、その色がパール光沢顔料のグレードに影響を与える。詰め固めていない状態のバルク密度は、原料であるパウダー顔料の密度よりも若干高く、ダスト性が実質的に低い。標準グレードは、70%の顔料と、30%のワックスバインダーとを含む。ワックスバインダーにより、流動性と低ダスト性能との最適な組み合わせが得られることがわかった。
全ての製品において、湿潤剤などの表面活性剤の使用を避けるように試みた。表面活性剤は、その後の配合工程(印刷工程など)において予測できない悪影響をもたらすことがある。我々は当初、ポリオレフィン市場をターゲットとしていたので、標準グレードはポリエチレンワックスをベースとした。ポリエチレンワックスは、高い分散能を与え、表面移動しにくく、従来のマスターバッチ処方において非常に広範囲に用いられている。多くの場合において、これらの顔料濃縮物の使用は全体的なワックス添加を増加させず、マスターバッチ製造業者は、顔料濃縮物のワックス成分によって現在のワックス添加量を低減させなければならない。」

コ 甲第11号証には、次の事項が記載されている。
11a.「顔料をあらかじめ,分散させやすい分散媒に分散させておき,その予備分散体を更に樹脂に分散させて,マスターバッチとする方法である。この際の分散媒としては,樹脂よりも融点や溶融粘度が低く,顔料表面をぬらしやすい一方,樹脂との相溶性がよい物であることが条件である。このような条件を満たすものは通常,顔料分散剤と呼ばれるものであり,金属石けん類,各種ワックス,樹脂などがある。」(第478頁)

11b.「

」(第483頁の表5)

11c.「通常,マスターバッチは・・・樹脂,マスターバッチを計量し,これをタンブラーやヘンシェルミキサーでブレンドし,混合物を成型機に供給する。」(第484頁)

11d.「マスターバッチに他の添加剤などを加え,着色以外の機能も持たせたものを多機能マスターバッチと呼ぶ。」(第487頁)

サ 甲第12号証には、次の事項が記載されている。
12a.「Background of the invention
Coloration of plastic resins is usually achieved using a masterbatch. A masterbatch is a granular, usually dust free colorant composition comprising substantially high concentrations of pigment. This masterbatch is normally added to a thermo-plastic resin, which is normally in granular form also, prior to processing of the mixture, by extrusion or injection for example.」(第1頁)

12a.の和訳「 背景技術
プラスチック樹脂の着色は、通常、マスターバッチを用いて行われる。マスターバッチは、実質的に高濃度の顔料を含む、顆粒状で、通常粉塵のない、着色組成物である。このマスターバッチは、通常、例えば押し出しや注入により混合物を処理する前に、同様に顆粒形態の熱可塑性樹脂に添加される。」

12b.「Detailed description of the invention
The colorant composition of the invention for a masterbatch comprises pigments. The pigments are the colouring agent. They are comprised in a masterbatch because mixing them directly with a thermo-plastic resin may be difficult due to a low affinity. Once the pigments are integrated in a masterbatch, usually together with a carrier, the masterbatch can be mixed with the thermo- plastic resin for coloration. Normally, mixing occurs when the masterbatch and the thermo-plastic resin are in a granular state. The word "resin" refers to a family of materials which can be processed to be in granular form or in liquid form. It is a feature of the process of the present invention that the resin is used in a granular form. The pigments used may be organic or inorganic pigments. A colorant composition usually contains between 15% to 90% by weight, preferably 20% to 80%, more preferably 40% to 60%, most preferably 45% to 55%, of pigments.」(第2頁)

12b.の和訳「発明の具体的説明
本発明のマスターバッチための着色組成物は顔料を含む。この顔料は着色剤である。それらの顔料は親和性が低いことから熱可塑性樹脂と直接混合するのは難しいため、マスターバッチに含まれている。顔料をマスターバッチと、通常、担体と共に一体化すると、マスターバッチを、着色のための熱可塑性樹脂と混合することができる。通常、マスターバッチと熱可塑性樹脂が顆粒状態のときに混合がなされる。「樹脂」という用語は、顆粒形態または液体形態で処理することのできる材料系列のことを言う。本発明の方法の特徴は、樹脂を顆粒形態で用いることである。用いる顔料は、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。着色組成物は、通常、15?90重量%、好ましくは20?80重量%、より好ましくは40?60重量%、最も好ましくは45?55重量%の顔料を含有している。」

12c.「The colorant composition of the invention comprises a metallocene catalysed resin. Indeed, it was found that a metallocene catalysed resin would significantly improve the homogenisation and dispersion of the pigment in the mixture. Because of the improvement in the masterbatch dispersion, a more uniform phase can be obtained. Consequently, less pigment may be used. Indeed it is an object of the present invention to reduce material costs, in particular pigment costs, while maintaining coloration quality. This objective can be obtained when introducing the metallocene catalysed resins, which differ from, for example, the Ziegler-Natta catalysed resin, in that the molecular weight distribution of metallocene catalysed resins is narrower. The molecular weight distribution is defined here as M w / M n , whereby M w is the weight average molecular weight and M n is the number average molecular weight. A molecular weight distribution of metallocene catalysed resins is typically of less than 3.5, especially from 1.5 to 2.5, whereas the molecular weight distribution of Ziegler-Natta catalysed resin is typically of more than 3.5, most typically of more than 5.」(第3頁)

12c.の和訳「本発明の着色組成物は、メタロセン触媒処理された樹脂を含んでいる。確かに、メタロセン触媒処理された樹脂は、混合物中の顔料の均質化と分散を大幅に改善することが知見されていた。マスターバッチの分散を改善するため、より均一な相を得ることができる。従って、顔料の使用量が減る。このように、本発明の目的は、着色品質を維持しつつ、材料のコスト、特に顔料のコストを下げることである。この目的は、例えば、チーグラー‐ナッタ触媒処理された樹脂とは、分子量分布が狭いという点で異なっているメタロセン触媒処理された樹脂を導入することで達成される。分子量分布は、ここではMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)として定義される。メタロセン触媒処理された樹脂の分子量分布は、一般に、3.5未満、好ましくは1.5?2.5であり、これに対し、チーグラー‐ナッタ触媒処理された樹脂の分子量分布は、一般に、3.5を超え、より一般的には5を超える。」

12d.「Various kinds of metallocene catalysed resins may be used in the colorant composition. Such resins comprise poly-olefins, preferably poly-ethylene or poly-propylene. The choice of the resin to use may depend on the thermo- plastic resin which should be coloured. For example, metallocene catalysed poly-propylene will have an excellent affinity for mixing with a poly-propylene resin to be coloured.」(第4頁)

12d.の和訳「様々な種類のメタロセン触媒処理された樹脂を本着色組成物に用いることができる。かかる樹脂は、ポリオレフィン、好ましくは、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含む。用いる樹脂の選択は、着色すべき熱可塑性樹脂によって異なる。例えば、メタロセン触媒処理されたポリプロピレンは、着色されるポリプロピレン樹脂と混合すると良好な親和性を示す。」

12e.「In a preferred embodiment of the invention, the thermo-plastic resin to be coloured is a poly-propylene. The thermo-plastic resin to be coloured may be another poly-olefin such as poly-ethylene. The thermo-plastic resin to be coloured may also be a blend of different materials. The metallocene used in the colorant composition is a poly-ethylene, which has a good affinity with polypropylene. The metallocene catalysed resin may be used to replace completely the traditional carrier such as low density poly-ethylene, or may replace it partially only. Preferably, a colorant composition contains between 8% to 85% by weight, preferably 5% to 70%, more preferably 10% to 60%, even more preferably 15% to 40% and most preferably 20% to 30%, of metallocene catalysed resin.」(第4頁)

12e.の和訳「本発明の好ましい実施形態において、着色される熱可塑性樹脂はポリプロピレンである。着色される熱可塑性樹脂は、ポリエチレンのような他のポリオレフィンであってもよい。着色される熱可塑性樹脂はまた、異なる材料のブレンドであってもよい。本着色組成物に用いるメタロセンはポリエチレンであり、これは、ポリプロピレンに対して良好な親和性を有している。メタロセン触媒処理された樹脂は、低密度ポリエチレンのような従来の担体と完全に、または部分的にのみ置き換えて用いてもよい。好ましくは、着色組成物は、8?85重量%、好ましくは5?70重量%、より好ましくは10?60重量%、さらに好ましくは15?40重量%、最も好ましくは20?30重量%のメタロセン触媒処理された樹脂を含有する。」

12f.「The addition of metallocene resin to the masterbatch does not only ease coloration and does not only have aesthetic consequences on the final mixture, but also has consequences on the mechanical properties of the object obtained after processing of the mixture. Indeed, because the pigment has a better dispersion, thus allowing a better crystallisation, the object obtained shows an improved stress cracking resistance, which is a further advantage given by the invention. This aspect of the invention is particularly useful if the object is in contact with a chemically aggressive composition such as an oxidising composition, for example. This particularly applies to packaging of products such as bleach containing compositions.」(第5頁)

12f.の和訳「メタロセン樹脂のマスターバッチへの添加は、着色を容易にし、最終混合物に美観を与えるばかりでなく、混合物の処理後に得られる目的物の機械特性に影響を与える。すなわち、顔料が良好に分散されるため。良好に結晶化して、得られる目的物の応力亀裂抵抗が改善される。これは本発明によりさらに得られる利点である。本発明のこの態様は、目的物を、例えば、酸化剤のような化学的に攻撃的な組成物と接触させる場合には特に有用である。これは、漂白剤含有組成物のような製品のパッケージングに特に適用される。」

12g.「Example:
The masterbatch of the example is made of a granular colorant composition comprising 80% by weight of pigments and up to 20% by weight of metallocene catalysed polyethylene having a molecular weight distribution of less than 3.5. The masterbatch can also include additional materials that do not affect its essential character, for instance stabilizers, processing aids such as waxes, deodorizing agents, anti-static agents, anti-blocking agents, plasticizers and the like.
The granular thermoplastic resin for coloration is made of Ziegler-Natta catalysed polypropylene having a density of 0.9 g/cm 3 .
The thermoplastic resin in the granular form is mixed with the masterbatch in the granular form to obtain the granular mixture. In this example, the granular mixture is composed of 4% by weight of the granular colorant composition composing the masterbatch and of 96% by weight of the thermoplastic resin. The granular mixture is subsequently injected to obtain the coloured object desired. 」(第5頁)

12g.の和訳「実施例:
実施例のマスターバッチは、80重量%の顔料と、20重量%までの分子量分布が3.5未満のメタロセン触媒処理されたポリエチレンとを含む顆粒着色組成物から作成される。このマスターバッチは、例えば、安定化剤、処理助剤(例えばろう)、脱臭剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、可塑剤等の本質的な性質に影響しない材料もさらに含むことができる。
着色のための顆粒熱可塑性樹脂は、密度が0.9g/cm^(3)のチーグラー‐ナッタ触媒処理されたポリプロピレンから作成される。
顆粒形態の熱可塑性樹脂を、顆粒形態のマスターバッチと混合して、顆粒混合物を得る。本実施例において、顆粒混合物は、マスターバッチを構成する顆粒着色組成物4重量%と、熱可塑性樹脂96重量%から構成される。続いて、顆粒混合物を注入して、所望の着色された目的物を得る。」

シ 甲第13号証には、次の事項が記載されている。
13a.「

」(第34頁)

13a.の部分和訳「
・・・
1 ポリエチレンワックスのカラーマスターバッチ中顔料に対する分散メカニズム
・・・
ポリエチレンワックスを加えたカラーマスターバッチは加工時に、まずポリエチレンワックスが樹脂と溶融し顔料の表面を覆う。ポリエチレンワックスは粘度が低く顔料表面との相溶性も良いので、顔料のぬれも起こりやすく顔料コロイド粒子内部の隙間に浸透し凝集力を弱め、顔料コロイド粒子への外からのせん断力が加わる中、さらに破砕されやすくなり、新生粒子も迅速なぬれと保護を受けられる。この他、ポリエチレンワックスはシステム粘度を下げ、流動性を高める働きがある。このため、マスターバッチ生産時にポリエチレンワックスを添加することによって生産効率を向上させ、生産量を増加させ、さらに濃度の高い顔料の使用も可能になるのである。
2 カラーマスターバッチにおけるポリエチレンワックスの性能指標
ポリエチレンワックスのカラーマスターバッチにおける作用メカニズムの理解及び実際の加工や応用を通じて、我々はカラーマスターバッチのポリエチレンワックス使用には以下のいくつかの指標を備えるべきだと考えた。
2.1 比較的高い熱安定性
カラーマスターバッチに使われるポリエチレンワックスは、カラーマスターバッチの製造と着色製品の成型時に加工温度に耐える性能が比較的高くなければならない。・・・ポリオレフィンカラーマスターバッチ及び製品の加工温度は一般に160?280°Cの間で、この温度範囲内なら一般的なポリエチレンワックスは温度に耐えられる。」

13b.「

」(第34頁)

13b.の和訳「2.3 比較的狭い分子量分布
分子量分布はポリエチレンワックスの分散性能にある程度の影響を与える。我々は分子量が基本的に近く分子量分布の異なるワックスをカーボンブラックマスターバッチの分散剤に採用、同程度の着色力に達したとき、400Pワックス(MWD=2.74)は用量が3%であったのに対し、F4ワックス(MWD=15.97)は10%以上必要だった。これは分子量分布の狭いワックスの方が分子量分布の広いものに比べて分散率が高いことを意味している。この点で、カラーマスターバッチの分散剤に用いる際、重合法で得られるポリエチレンワックスが分解法で得られるものより良いことを示している。」

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、摘示1aからみて、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「(A)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む第IVB族遷移金属化合物と、
(B)前記第IVB族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と、
(C)有機アルミニウム化合物とからなるオレフィン重合用触媒の存在下にエチレンを単独重合させるか、あるいはエチレンと炭素原子数が3以上のオレフィンとを共重合させて、極限粘度[η]が0.40dl/g以下であるエチレン(共)重合体を形成させることにより得られたエチレン系ワックス。」

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 対比
甲1発明の「(A)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む第IVB族遷移金属化合物」及び「エチレン系ワックス」は、本件発明1の「メタロセン触媒」及び「ポリエチレンワックス」に相当する。
そうすると、両発明は、ワックスが、「エチレンからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、メタロセン触媒が、「rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
若しくは
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、又は
これらに対応する二臭化物、又はジメチル化合物」(以下、「本件触媒化合物」という。)であるのに対して、甲1発明は、メタロセン触媒が、「(A)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む第IVB族遷移金属化合物」である点

相違点2:本件発明1は、「顔料濃縮物」であり、「少なくとも1種類の顔料」と「ポリエチレンワックス」を必須の構成成分として含むのに対して、甲1発明は、「ポリエチレンワックス」である点

(イ) 相違点についての判断
○相違点1について
上記の相違点1について検討すると、甲1発明の「(A)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む第IVB族遷移金属化合物」の具体的なものとして、甲第1号証には、「以下に、Mがジルコニウムである遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、・・・
ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、・・・エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、・・・エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、・・・ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、・・・ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、・・・ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、・・・など。
なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2-および1,3-置換体を含み、三置換体は1,2,3-および1,2,4-置換体を含む。またプロピル、ブチルなどのアルキル基は、n-、i-、sec-、tert-などの異性体を含む。」(摘示1g)、「以下に上記一般式(III)で表される第IVB族遷移金属化合物の具体的な例を示す。・・・rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド・・・など。」(摘示1g)及び「ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド」(摘示1h)が例示されており、これらは本件発明1における「本件触媒化合物」と重複一致するものである。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

○相違点2について
上記の相違点2について検討すると、本件発明1における「顔料濃縮物」と、甲1発明における「ポリエチレンワックス」とは、「顔料濃縮物」が「ポリエチレンワックス」だけでなく、「少なくとも1種類の顔料」をさらに構成成分として含むことからも、明らかに異なるものである。
そうすると、本件発明1は、甲1発明と相違点2において実質的に相違するものである。

(ウ) 請求人の主張に対する検討
請求人は、審判請求書及び平成25年9月13日付け口頭審理陳述要領書において、「甲第1号証には、『ポリエチレンワックスなどのオレフィン系低分子量重合体は、たとえば顔料分散剤・・・などの用途に用いられている。』と記載されているから、本件発明1における『少なくとも1種類の顔料』との発明特定事項を開示している。」と主張している。

以下、請求人のこの主張に対して検討する。
甲第1号証の摘示1cの記載は、「ポリエチレンワックスなどのオレフィン系低分子量重合体は、たとえば顔料分散剤、樹脂加工助剤、印刷インキ用添加剤、塗料用添加剤、ゴム加工助剤、繊維処理剤などの用途に用いられている。また、オレフィン系低分子量重合体は、トナー用離型剤にも用いられている。近年、省エネルギー化の観点から低温定着トナーが求められており、低温での離型性のよいワックス、すなわち同一組成、同一分子量であっても、融点の低いワックスの出現が望まれている。」と記載されているとおり、ポリエチレンワックスの用途が、顔料分散剤、樹脂加工助剤、印刷インキ用添加剤、塗料用添加剤、ゴム加工助剤、繊維処理剤及びトナー用離型剤などと列挙されているにとどまるものであって、例えこの記載をもって、顔料分散剤としての用途すなわち「顔料分散剤」が記載されているとしても、それが直ちに顔料を含む濃縮物すなわち「顔料濃縮物」が記載されているあるいは記載されているに等しいとまではいえない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

(エ) 小括
そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

イ 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7は、本件発明1を直接的ないしは間接的に引用する発明であって、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2ないし7も、本件発明1と同様の理由により甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(4)無効理由1についてのまとめ
以上のとおり、請求人の主張する無効理由1には理由がない。


2.無効理由2(特許法第29条第2項)について
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載された発明は、上記「第6 1.(2)甲第1号証に記載された発明」で述べたとおりのものである。

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、両発明は、上記「第6 1.(3)ア(ア)」で述べたとおりの点で一致し、相違点1及び2で相違する。

(イ) 相違点についての判断
○相違点1について
相違点1については、上記「第6 1.(3)ア(イ)○相違点1について」で述べたとおり、実質的な相違点ではない。

○相違点2について
上記相違点2について検討すると、甲第1号証には、摘示1cに記載されているとおり、ポリエチレンワックスの用途の1つとして「顔料分散剤」と記載されていることから、その発明の技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば、甲1発明に係るポリエチレンワックスを「顔料分散剤」に適用しようとすることまでは想定できるといえる。しかし、「顔料分散剤」としての用途を超えて、「顔料濃縮物」まで適用できるとはいえない。
すなわち、ポリエチレンワックスを顔料分散剤として適用する態様としては、専ら顔料濃縮物として用いる場合に限定されるものではなく、顔料濃縮物として用いることなく、着色対象樹脂に対して顔料と共にただ単に混合・分散する態様も存在するものと認められる。そうであれば、甲第1号証における「顔料分散剤」との記載をもってして、直ちにそれが「顔料濃縮物」のことを意味するものであるとはいえない。
確かに、甲第3号証ないし甲第10号証を併せみれば、「ポリエチレンワックスの用途として、樹脂の着色を行うための顔料濃縮物(マスターバッチ)として用いられること」が周知技術であることが認められるとしても、それは、せいぜい、「顔料分散剤」の態様の1つとして「顔料濃縮物(マスターバッチ)」が周知であることにとどまるものであるといえ、「顔料分散剤」と記載されていればそれがすなわち「顔料濃縮物(マスターバッチ)」のことを意味するとまでは認められるものではない。
また、甲第3号証ないし甲第10号証を併せみても、ポリエチレンの種類が、(エチレンの重合により得られるポリエチレンの場合としても)単なるポリエチレンワックス、すなわち高圧法ポリエチレンやチーグラー触媒により得られたポリエチレンにとどまるものであるといえ、メタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックスが顔料濃縮物として用いられることまでもが周知であると認められるものではない。
また、甲第1号証では、分子量分布の狭いエチレン系ワックスを高い生産効率で製造することを目的とする(摘示1f)ものであることからみても、「顔料分散剤」を超えて、「顔料濃縮物」に適用しようとする動機付けはないものといわざるを得ない。
そうすると、甲第3号証ないし甲第10号証に示された周知技術を併せみても、甲第1号証には、甲1発明の「ポリエチレンワックス」を、顔料濃縮物に適用することについて記載も示唆もされていないといわざるを得ない。
そして、本件発明1は、本件明細書の記載からみて、特定のメタロセン触媒で製造されたポリエチレンワックスを用いることによって、高圧法あるいはチーグラー-ナッタ触媒を用いて得られたポリエチレンワックスを用いた場合よりも格別の効果を奏するものであって、当該効果は、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第10号証からは導き出せないものである。

(ウ) 請求人の主張に対する検討
請求人は、審判請求書及び平成25年9月13日付け口頭審理陳述要領書において、以下のとおり主張している。
(a)「甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証および甲第6号証に記載のとおり、『ポリエチレンワックスをマスターバッチ法における顔料分散剤として用いること』は周知であったと解されるから、甲第1号証に記載された『ポリエチレン系ワックスからなる顔料分散剤』には、『マスターバッチ方式における顔料分散剤』としての用途が当然に予定されていると解さねばならない。」
(b)「甲第7号証、甲第8号証および甲第9号証に記載のとおり、カラーマスターバッチにポリエチレンワックスを配合することで、顔料の分散性を高めることはもちろん、顔料の凝集の抑制、低摩耗性の実現、流動性の制御などの種々の利点が得られることが周知であったと解されるから、これらの利点を得るべく、甲第1号証に記載のポリエチレン系ワックスからなる顔料分散剤を、マスターバッチに添加することが当然に予定されていると解さねばならない。」
(c)「仮に、甲第1号証に「顔料濃縮物」が記載されていないとしても、甲第1号証に記載の『ポリエチレン系ワックスからなる顔料分散剤』をマスターバッチの顔料分散剤として用いることにいささかの困難性もない。」

しかしながら、(a)ないし(c)に対しては、甲第3号証ないし甲第10号証に示された周知技術を併せみたとしても、甲第1号証における「顔料分散剤」との記載をもってして、直ちにそれが「顔料濃縮物」のことを意味するものであるとはいえないし、甲第1号証には、甲1発明の「ポリエチレンワックス」を、顔料濃縮物に適用することについて記載も示唆もされていないことは、上記(イ)で述べたとおりである。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。

(エ) 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7は、本件発明1を直接的ないしは間接的に引用する発明であって、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
そして、上記「(イ)○相違点2について」で述べたとおり、甲第1号証には、甲1発明の「ポリエチレンワックス」を、顔料濃縮物に適用することについて記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第11号証ないし甲第13号証の記載をさらに参酌しても、本件発明2ないし7は、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第13号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)無効理由2についてのまとめ
以上のとおり、請求人の主張する無効理由2には理由がない。


3.無効理由3(特許法第36条第6項第1号)について

特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは、特許請求の範囲に記載された本件発明と発明の詳細な説明に記載された発明とを対比し、特許請求の範囲に記載された本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
本件発明は、エチレンから「本件触媒化合物」をメタロセン触媒として用いて得られたポリエチレンワックスを含む顔料濃縮物であることをその発明を特定するための技術的な事項(以下、「発明特定事項」という。)としているから、当該メタロセン触媒を用いることに係る本件発明が、当業者において、本件発明の課題を解決できると認識できるような記載があるか否かについて確認する。
そこで、まず、無効理由3に関連すると認められる本件明細書の発明の詳細な説明の記載を以下に摘記する。

(1)本件明細書の発明の詳細な説明の記載事項
ア 「本発明は、少なくとも1種類の顔料、エチレンと必要に応じて1種類以上のオレフィンとからメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンワックス、および必要に応じて熱可塑性重合体、および必要に応じて添加剤を含む顔料濃縮物に関する。」(段落0001)

イ 「種々の顔料が顔料濃縮物の形態で市販されており、これによりプラスチックを着色する際の加工が容易となっている。この様な組成物は、一般に顔料の他に、分散剤、例えばワックス、および必要に応じて熱可塑性重合体(通常はポリオレフィン)を含むものである。熱可塑性重合体は担体重合体(キャリアポリマー)とも呼ばれる。ワックスは組成物中で顔料を微分散させ、分散液を安定化させる働きを有する。この様な顔料濃縮物(マスターバッチ)の典型的な市販の組成物は、25質量%の顔料、10質量%のワックス、65質量%のポリエチレンを含む。ワックスとしては、一般に、ラジカル重合もしくはチーグラー・ナッタ触媒の使用等により得られるポリエチレンワックスを用いることが多い。ポリエチレンワックスを、酸化等により極性を有するように修飾してもよい。各成分の使用割合は所定範囲内で変化可能である。」(段落0002)

ウ 「顔料凝集体は凝集体の塊状化を防ぐため、ワックスにより充分に湿潤させる必要がある。比較的大きな顔料凝集体を少量含む場合は、小さな顔料凝集体を多く含む場合よりも、顔料の着色力についての影響が低い。
従って、本願発明は大きな顔料凝集体を生じさせない製造方法を提供することもその目的とする。更に、既に生じた凝集状態の顔料を分離し、これを一次粒子に分割することが望ましい。また、本発明の方法により製造された一次粒子は分離されたまま保たれ、冷却の間に再凝集しないようにされるとよい。
上記目的を達成するため、ワックスは多数の要求を満たさなければならない。これらの要求の1つは溶融体の粘度に関する。溶融体の粘度が低い程、製造工程で、顔料凝集体の空隙に溶融したワックスが入り込むことが容易となる。このため、ワックスの融点を上回る温度で混合を行うのが一般的である。このように付加された剪断力の結果、凝集体は容易に一次粒子に分割される。
ワックスの湿潤力も優れていなければならない。 」(段落0004?0007)

エ 「しかるに、本発明は、
プラスチック成形体およびプラスチックシートの着色が可能であり、製造が容易であり、かつ顔料の含有割合を増大させずに従来よりも優れた光沢を与えることが可能な顔料濃縮物を提供すること、
この濃縮物の製造法を提供すること、
本発明の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体およびプラスチックシートを製造すること、および
熱可塑性重合体および成形体を本発明の顔料濃縮物を用いて着色する方法を提供すること、をその目的とする。」(段落0015)

オ 「本発明者等は、顔料濃縮物における分散剤としてメタロセンポリエチレンワックスを用いると、上記目的が達成されることを見出した。すなわち、本発明で使用されるメタロセンポリエチレンワックスを用いると慣用のポリエチレンワックスを用いた場合よりも良好な結果が得られることがわかっている。」(段落0016)

カ 「メタロセンポリエチレンワックスは公知である。これらは例えばEP-A0321851号公報、EP-B060259号公報に記載されている。これらのメタロセンポリオレフィンワックスの製造法はEP-B0602509号公報に記載されている。ここで使用されるメタロセンは式Ia-eで示されるサンドウィッチ化合物である。」(段落0031)

キ 「式Ia-eで示される極めて好ましいメタロセンの例は以下のとおりである。
rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
およびこれらに対応する二臭化物およびジメチル化合物が挙げられる。」(段落0066?0067)

ク 「上述のメタロセン触媒のいずれかを用いた上述の重合方法により得られたポリオレフィンワックスを種々の方法により加工し、マスターバッチを得ることもできる。全ての方法において、所定工程で顔料を添加せずにワックスおよび担体重合体を溶解させ、1種類以上の顔料と、場合に応じて添加剤とを、これに導入する。」(段落0083)

ケ 「成形体およびシートは、重合体の融点を超過する温度での、射出成形、フィルム押出し、またはキャスティングにより製造される。本発明の顔料濃縮物を添加することにより得られた成形体およびシートの加工特性に悪影響が与えられることはない。
本発明で使用される方法により得られた成形体およびシートは、市販の成形体およびシートとは異なり、着色において光沢が顕著に向上している。また、本発明の顔料濃縮物を使用することによって、材料の機械的特性が悪影響を受けることはない。」(段落0090?0091)

コ 「[実施例]
シリカゲル担体上に施されたビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドをメタロセン触媒として使用し、MAOにより活性化した。メタロセン触媒の使用法はEP-B0571882号公報、実施例5に記載されているが、この方法に以下の変更を加えた。
【表1】

メタロセンポリエチレンワックスをEP-B0602509号公報、実施例1、または同公報19ページの図面に記載の装置を用いて製造した。懸濁媒体としてはプロパンの代わりにイソブタンを用い、水素を用いずに60℃で重合を行った。
このように得られたワックスは以下の特性を有する。凝固点:128℃、Mw:4900g/mol、Mn:2200g/mol。
実施例1における新規顔料濃縮物の成分として以下の成分を使用した。
25質量%のHeliogen(登録商標)Blau(BASF社の製品)、
15質量%のポリエチレンワックス、
60質量%の粒体状ポリエチレン(Lupolen(登録商標)1800S)(Elenac社の製品)。
類似した処理による実施例2において、以下の成分を使用した。
25質量%のHeliogen(登録商標)Gruen(BASF社製)、
15質量%のポリエチレンワックス、
60質量%の粒体状ポリエチレン(Lupolen(登録商標)1800S)(Elenac社の製品)。
各成分を高速混合機で予備混合し、ワックスの融点に加熱した。この操作では、ワックスが顔料を湿潤させ、ダストを含まない状態とした。これによりワックス相中に顔料を含む分散体が得られた。次いでこの混合物を二軸押出機に導入した。温度を更に10℃上昇させた。この処理工程では、PE粒体を薄いワックス層中に包み込んだ。押出後、顔料濃縮物を非常に注意深く冷却し、凝固した顔料/ワックス層が分離しないようにしないようにした。
比較生成物を同様の方法で製造した。市販のサンプルをワックスとして使用した。
色の濃淡を調べるため、実施例に記載した1gの顔料濃縮物を、蛍光増白剤としての91.5gのLupolen50Dおよび7.5gのTiO_(2)と予備混合し、吹込成型機内で130?150℃で混合し、吹込成型によりキャニスターを製造した。
色の濃淡を評価するため、キャニスターから5×5cmのサンプル片を切り取り、DIN6176に基づき波長400?700nmでの分光分析法による試験を行った(Datacolor社製Spectraflash 600を使用)。
結果を表1に示す。
表1: 実施例1?2および比較例1a/bおよび2a/bによる色の濃淡の評価
【表2】

」(段落0092?0106)

(2)本件発明について
本件発明(前記「第3 本件発明」参照。)は、「プラスチック成形体およびプラスチックシートの着色が可能であり、製造が容易であり、かつ顔料の含有割合を増大させずに従来よりも優れた光沢を与えることが可能な顔料濃縮物を提供すること、この濃縮物の製造法を提供すること、本発明の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体およびプラスチックシートを製造すること、および熱可塑性重合体および成形体を本発明の顔料濃縮物を用いて着色する方法を提供すること」(摘示エ)を目的とするものであって、本件発明1ないし3で特定される顔料濃縮物、本件発明4及び5で特定される顔料濃縮物の製造方法、本件発明6で特定されるプラスチック成形体またはプラスチックシート、及び、本件発明7で特定される成形体またはシートを着色する方法によって、発明の課題の解決を達成するものであると認められる。
そして、本件発明における「顔料濃縮物」を得るためには、「少なくとも1種類の顔料」と、「エチレンからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス」、必要に応じて「熱可塑性重合体」および「添加剤」を含み、当該「ポリエチレンワックス」を製造するためには、「エチレンからメタロセン触媒を用いて」製造すれば良くて、当該「メタロセン触媒」が、「本件触媒化合物」であるとされている。
そして、本件発明に係る顔料濃縮物についての製造過程及びその結果が、当該顔料濃縮物を製造する具体的な方法と当該顔料濃縮物が示す物性について、実施例1及び2として具体的に表1及び2に記載されている(摘示コ)。

(3)判断
前記「(1)本件明細書の発明の詳細な説明の記載事項」に記載したとおり、本件発明は、顔料濃縮物の成分であるポリエチレンワックスに関し、「エチレンからメタロセン触媒を用いて得られた」ものであることを発明特定事項としており、当該メタロセン触媒として24種の特定骨格を有する化合物が具体的に限定されており、そして当該メタロセン触媒の内の1つである「ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド」を使用して製造されるポリエチレンワックスを用いたものについては、具体的に実施例として記載されている(摘示コ)。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明について、その技術的な意義について明確に記載されており(摘示ア?オ)、本件発明に係る顔料濃縮物の成分であるポリエチレンワックスを得るための一般的手段についても明記(摘示カ)されていて、その実施例についても、上記のとおり特定の1つのもののみではあるものの具体的に開示されている。
そして、メタロセン触媒について検討すると、メタロセンポリエチレンの技術分野においては、メタロセン触媒を構成する中心金属の種類や配位子の種類の違いにより、得られるポリエチレンは異なったものが得られるとはいうものの、本件触媒化合物は、全部で24種類の特定骨格を有する化合物に限定されるものであって、それらの中心金属は、ジルコニウムとチタンに限定されるものであって、これらは共にチタン族(4族)であり類似の性質を有するものである。また、それらの配位子は、シクロペンタジエニル環またはインデニル環に限定されており、ここでインデニル環はシクロペンタジエニル環にベンゼンが縮合した構造を有するものであるから、結局のところ、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子に限定されるものであり、配位子として類似の性質を有するものである。そして、配位子以外の基についても、ジクロリド、二臭化物又はジメチル化合物に限定されており、これらは同様に類似の性質を有するものである。そうすると、メタロセン触媒として、本件発明において特定されたものは、全体としてみて類似の性質を有するものであるといえる。してみると、メタロセンポリエチレンの技術分野における当業者であってみれば、本件発明における24種の特定骨格を有するメタロセン触媒であれば、実施例で具体的に記載されたメタロセン触媒と同様に本件発明の課題を解決できると理解できるものといえる。
また、ポリエチレンワックスの種類について検討しても、ポリエチレンホモポリマーのみに限定されており、これは実施例で具体的に製造されている
ものと一致している。
してみると、本件発明に関しての本件明細書の記載は、上記(1)において言及したとおりであって、当該記載に基づけば、本件出願時における当業者の技術常識を踏まえれば、ポリエチレンワックスを製造する際のメタロセン触媒の種類を本件発明において規定する特定のものとし、しかもポリエチレンワックスの種類をポリエチレンホモポリマーのみに限定することで、本件発明の課題を解決できると理解できるものと認められる。
そうであってみれば、本件明細書の記載は、当業者の技術常識に照らせば、本件発明の課題を解決できると認識できるような記載がなされているといえることから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、特許法第36条第6項第1号の規定を満足しているといえる。

(4)請求人の主張についての検討
無効理由3について、請求人は、審判請求書において、以下の事項を主張している。

「(4-4-2)そして、本件特許明細書の実施例(段落0092?0106)には、「顔料濃縮物における分散剤として、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドをメタロセン触媒として用いた、メタロセンポリエチレンワックスを用いる」ことで、顔料の分散状態を高め、ポリエチレン樹脂の着色性が高まったことのみが,一応示されている。
(4-4-3)しかしながら、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドをメタロセン触媒として用いて得たメタロセンポリエチレンワックスが顔料の分散状態を高めることが、示されているとしても、請求項1において特定された「メタロセン触媒」を用いて得たメタロセンポリエチレンワックス」のいずれもが、顔料の分散状態を高めるとは、到底予測できない。」

しかしながら、本件明細書の実施例において、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドをメタロセン触媒として用いたメタロセンポリエチレンワックスが記載されていることのみを主張する、請求人の主張は、(3)で述べたとおり、採用できない。

(5)無効理由3についてのまとめ
以上のとおり、請求人の主張する無効理由3には理由がない。



第7 結び

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1ないし7に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
顔料濃縮物およびその製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の顔料、エチレンからメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンワックス、必要に応じて熱可塑性重合体、および必要に応じて添加剤を含み、
メタロセン触媒が、
rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、若しくは
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、又は
これらに対応する二臭化物、又はジメチル化合物であることを特徴とする顔料濃縮物。
【請求項2】
少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックス、熱可塑性重合体および添加剤を含む請求項1に記載の顔料濃縮物。
【請求項3】
少なくとも1種類の顔料、ポリエチレンワックスおよび添加剤を含む請求項1または2に記載の顔料濃縮物。
【請求項4】
ワックスの融点を超過する温度で各成分を混合する請求項3に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項5】
ワックスおよび熱可塑性重合体の融点を超過する温度で各成分を混合する請求項1または2に記載の顔料濃縮物の製造方法。
【請求項6】
請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体またはプラスチックシート。
【請求項7】
請求項1?3のいずれかに記載の顔料濃縮物を用い、各成分を溶融体状で均質化することにより混合する請求項6に記載の成形体またはシートを着色する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1種類の顔料、エチレンと必要に応じて1種類以上のオレフィンとからメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンワックス、および必要に応じて熱可塑性重合体、および必要に応じて添加剤を含む顔料濃縮物に関する。
【0002】
種々の顔料が顔料濃縮物の形態で市販されており、これによりプラスチックを着色する際の加工が容易となっている。この様な組成物は、一般に顔料の他に、分散剤、例えばワックス、および必要に応じて熱可塑性重合体(通常はポリオレフィン)を含むものである。熱可塑性重合体は担体重合体(キャリアポリマー)とも呼ばれる。ワックスは組成物中で顔料を微分散させ、分散液を安定化させる働きを有する。この様な顔料濃縮物(マスターバッチ)の典型的な市販の組成物は、25質量%の顔料、10質量%のワックス、65質量%のポリエチレンを含む。ワックスとしては、一般に、ラジカル重合もしくはチーグラー・ナッタ触媒の使用等により得られるポリエチレンワックスを用いることが多い。ポリエチレンワックスを、酸化等により極性を有するように修飾してもよい。各成分の使用割合は所定範囲内で変化可能である。
【0003】
この様な濃縮物の使用可能性について重要とされる必須要件は、ワックス成分を正しく選択することである。ワックス自体は着色されていないが、顔料濃縮物の光沢に影響を与える。更に詳細な情報については、例えば「Luwax(登録商標)-Anwendung in Pigmentkonzentraten(顔料濃縮物の使用)」というBASF社製ポリエチレンワックスに関する商品案内パンフレット等が参考とされる。
【0004】
顔料凝集体は凝集体の塊状化を防ぐため、ワックスにより充分に湿潤させる必要がある。比較的大きな顔料凝集体を少量含む場合は、小さな顔料凝集体を多く含む場合よりも、顔料の着色力についての影響が低い。
【0005】
従って、本願発明は大きな顔料凝集体を生じさせない製造方法を提供することもその目的とする。更に、既に生じた凝集状態の顔料を分離し、これを一次粒子に分割することが望ましい。また、本発明の方法により製造された一次粒子は分離されたまま保たれ、冷却の間に再凝集しないようにされるとよい。
【0006】
上記目的を達成するため、ワックスは多数の要求を満たさなければならない。これらの要求の1つは溶融体の粘度に関する。溶融体の粘度が低い程、製造工程で、顔料凝集体の空隙に溶融したワックスが入り込むことが容易となる。このため、ワックスの融点を上回る温度で混合を行うのが一般的である。このように付加された剪断力の結果、凝集体は容易に一次粒子に分割される。
【0007】
ワックスの湿潤力も優れていなければならない。
【0008】
種々の製造工程により、原則的に、極性基がワックスに導入される。
【0009】
大気中の酸素または過酸化物化合物によりワックスを部分的に劣化させる方法がある。この場合に使用される過酸化物化合物の例は過酸化水素(H_(2)O_(2))およびジアルキルペルオキシドである。部分的劣化方法では、極性基としてのヒドロキシル基とカルボキシル基を巨大分子に導入する。このような極性基は分子上に不均一に分散されるため、ワックスの分子鎖の湿潤力は最適とならない。
【0010】
他の方法では、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルまたは酢酸ビニル等の極性コモノマーが、場合により鹸化処理を施して使用される。この方法の不都合な点は、極性コモノマーがチーグラー・ナッタ触媒に対して触媒毒として作用し、これにより触媒が活性を失うことである。この他の不都合な点は、コモノマーがワックスに均一に組み込まれないことである。コモノマーは、通常、短鎖分子の周辺に組み込まれ、これにより不均一な特性を有するワックスが得られてしまう。
【0011】
多くの顔料濃縮物は、高品質な適用には輝度が不十分である。この不具合は顔料の割合を多くすることにより、ある程度は改善される。しかしながら顔料濃縮物の製造費用は、顔料の値段により多大な影響を受ける。このため、顔料の割合を多くすることは経済的な不利益となる。
【0012】
逆に、満たすべき要件の少ない使用目的においては、高価な顔料の含有割合が小さい顔料濃縮物も好適に用いられる。
【0013】
EP-A0890584号公報には、70%より大きいアイソタクチシティインデックスを有するメタロセンポリプロピレンワックスをマスターバッチとして使用する方法が記載されている。しかしながら、メタロセンポリプロピレンワックスを使用するには、特定のメタロセンのラセミ異性体を用いてアイソタクチックポリプロピレンを製造しなければならないという不都合がある。慣用の合成法から生ずるメソ異性体は、まず分離し、次いで廃棄するか、更なる工程を経て所望のラセミ体に変換しなければならない。
【0014】
高い顔料含有率では、マスターバッチの光沢の向上が継続的に得られないことがわかっている。これは分散が充分に行われないためと考えられる。分散状態の不十分な凝集体は顕微鏡検査等により検出される。
【0015】
しかるに、本発明は、
プラスチック成形体およびプラスチックシートの着色が可能であり、製造が容易であり、かつ顔料の含有割合を増大させずに従来よりも優れた光沢を与えることが可能な顔料濃縮物を提供すること、
この濃縮物の製造法を提供すること、
本発明の顔料濃縮物により着色されたプラスチック成形体およびプラスチックシートを製造すること、および
熱可塑性重合体および成形体を本発明の顔料濃縮物を用いて着色する方法を提供すること、をその目的とする。
【0016】
本発明者等は、顔料濃縮物における分散剤としてメタロセンポリエチレンワックスを用いると、上記目的が達成されることを見出した。すなわち、本発明で使用されるメタロセンポリエチレンワックスを用いると慣用のポリエチレンワックスを用いた場合よりも良好な結果が得られることがわかっている。
【0017】
本発明によると、以下の成分を含む顔料濃縮物(マスターバッチ)が提供される。
【0018】
・無機および有機顔料から選択された少なくとも1種類の顔料
無機顔料の例は、
亜鉛白、硫化鉛、リトポン、鉛白、硫酸鉛、白亜、二酸化チタン、
黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、ニッケル-チタンイエロー、クロム-チタンイエロー、クロムイエロー、クロム酸鉛、バナジン酸ビスマス、ネープルスイエローまたは亜鉛黄、
ウルトラマリーンブルー、コバルトブルー、マンガンブルー、群青、
ウルトラマリーングリーン、コバルトグリーン、酸化クロム(緑色酸化クロム)、
ウルトラマリーンバイオレット、コバルトバイオレット、マンガンバイオレット、
ウルトラマリーンレッド、モリブデンレッド、クロムレッド、カドミウムレッド、
酸化鉄ブラウン、クロム-鉄ブラウン、亜鉛-鉄ブラウン、マンガンチタンブラウン、
酸化鉄ブラック、鉄-マンガンブラック、スピネルブラック、カーボンブラック、
橙色スピネルおよびアルミナ、カドミウムオレンジ、クロムオレンジ、モリブデン酸鉛、
アルミニウムまたはCu/Zn合金である。
【0019】
有機顔料の例は、
金属フタロシアニン、例えばフタロシアニンブルーまたはフタロシアニングリーン、ペリレンレッド、ジアリールイエロー、イソインドリンイエロー、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、マラカイトグリーン、チオインジゴ、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、被覆アゾ顔料、ナフトールAS顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジケトピロロピロール、インダントロン、アゾ濃縮顔料、ジアゾ濃縮顔料、アントラキノン顔料、ピラゾロン、ペリノン、アミノケトン顔料、インジゴまたはトリフェニルメタン顔料である。
【0020】
慣用の無機および有機顔料の概要は、例えばK.LeisslerおよびG.Roesch著、Kunststoffe 1996,86,965およびUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie、第4版、Keywords:pigments、導入部、第18巻、547ページ以降、Organische Pigment,第18巻、661ページ以降、Thieme Verlag出版、シュトゥットガルト、1977に記載されている。1種類の顔料を含む濃縮物を製造することも、2種類、3種類又はこれ以上の異なる顔料混合物を含む濃縮物を製造することも可能である。
【0021】
・ポリエチレン、またはエチレンと、0?20モル%の1種類以上のコモノマー、例えばプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンもしくは1-ウンデセンとの共重合体を含むワックス状の成形組成物である、ポリエチレンワックス。
【0022】
この様なポリオレフィンワックスの平均モル質量M_(w)500?20000g/モル、好ましくは2000?10000g/モル、特に好ましくは3000?8000g/モルである。Q値は1.5?5、好ましくは1.8?3.5、特に好ましくは2?3である。これらのワックスの融点は80?165℃、好ましくは100?140℃、特に好ましくは105?120℃である。
【0023】
・場合に応じて、熱可塑性重合体を担体重合体として用いる。この様な重合体の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリスチレン共重合体、例えばスチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン三元共重合体、ポリ塩化ビニル、またはエチレンと0.1?20モル%の1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンもしくは1-ウンデセンとの共重合体である。
【0024】
・必要に応じて、0?10質量%の添加剤を使用してもよい。例えば酸化防止剤、好ましくは立体障害を有するフェノールまたは立体障害を有するアミン類「HALS」等、特に好ましくは立体障害を有するフェノールであるCiba社製Irganox(登録商標)が使用される。
【0025】
種々の成分の使用割合は広範囲に変更可能である。使用割合は各成分の合計が100質量%となるように決定される。
【0026】
1種類以上の顔料の最低使用量を1質量%、好ましくは5質量%、特に好ましくは10質量%の量として使用する。使用割合が上記よりも少ない場合は、充分な色の濃さがられない。顔料は顔料濃縮物のうち最も高価な成分であるため、適当な上限は60質量%、特に45質量%とされる。
【0027】
上記ワックスは、担体重合体を含む顔料濃縮物に対し1質量%以上の量で用いられる。2質量%以上用いると好ましく、この質量割合を下回ると顔料および担体重合体が充分な湿潤性を有さない。担体重合体を含む顔料濃縮物におけるワックスの最大使用量は、30質量%であると好ましく、20質量%であると特に好ましい。これは、最終生成物におけるワックスの含有量が非常に多いと、着色対象のプラスチック成形体またはシートの機械特性に不都合な影響を与えることになり得るためである。担体重合体を使用せずに得られる顔料濃縮物の場合、ワックス含有率上限を90質量%とするのが好ましい。担体重合体を含まない顔料濃縮物におけるワックス含有率の下限を40質量%とすると適切である。これは濃縮物をあまり高価にしないようにするためである。
【0028】
場合に応じて担体重合体を添加する。担体重合体を使用する場合、30質量%以上の割合で使用する。これによりプラスチック成形体およびプラスチックシートの製造において後から顔料濃縮物を混合することが容易とされる。適当な上限は80質量%である。
【0029】
添加剤は必要な場合にのみ用い、使用する場合も少量で用いる。Irganox(登録商標)等の酸化防止剤の添加量下限は0.1質量%である。これを下回る量の添加では、酸化防止剤による実質的な酸化保護は不可能である。酸化防止剤の添加量の下限は0.5質量%であることが好ましく、1質量%であると特に好ましい。添加剤の添加量上限は5質量%であり、この値を上回ると低分子量成分により顔料の加工特性が目に見えて低下するためである。添加剤の添加量上限は2質量%であると好ましく、1.5質量%であると更に好ましい。
【0030】
他の種類の添加剤としては、鉛塩、例えば塩基性硫酸鉛、ステアリン酸鉛またはこれらの混合物が挙げられる。これらはそれぞれ0.5?2質量%、好ましくは1.0?1.5質量%の量で添加される。
【0031】
メタロセンポリエチレンワックスは公知である。これらは例えばEP-A0321851号公報、EP-B060259号公報に記載されている。これらのメタロセンポリオレフィンワックスの製造法はEP-B0602509号公報に記載されている。ここで使用されるメタロセンは式Ia-eで示されるサンドウィッチ化合物である。
【0032】
【化1】

【0033】
上記式Ia中、
MはTi、Zr、Hf、V、NbまたはTaから選択された酸化状態+4の元素、好ましくはTi、ZrまたはHf、特に好ましくはZrまたはHfであり、
XおよびYは、それぞれ互いに独立に決定され、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
【0034】
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、または
NR^(17)R^(18)であって、R^(17)、R^(18)はそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、およびC_(6)-C_(14)アリールから選択され、これらは共同で飽和もしくは不飽和の5?10員の環状基を形成してもよいが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルフェニルアミノおよびジフェニルアミノを形成すると好ましい。飽和環基を有するアミノ基の例はN-ピペリジル基、N-ピロリジニル基であり、不飽和環基を有するアミノ基の例はN-ピロリル、N-インドリル基およびN-カルバゾリル基であり、
EはC、Si、GeおよびSnから選択され、CまたはSiであると特に好ましく、
nは1、2または3から選択され、1または2であると好ましく、1であると特に好ましく、
RおよびR’はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
【0035】
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシであって、
RおよびR’とEとが共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、
【0036】
R^(1)?R^(8)はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
モノハロゲン化またはポリハロゲン化C_(1)-C_(12)アルキル基、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、およびペルフルオロブチル、特に好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペルフルオロブチル、
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
【0037】
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基であって、R^(19)?R^(21)がそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(3)-C_(12)シクロアルキル、C_(6)-C_(14)アリール、置換C_(6)-C_(14)アリール、C_(1)-C_(12)アルコキシ、ベンジル、およびC_(6)-C_(14)アリール、好ましくはトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、ジエチルイソプロピルシリルオキシ、ジメチルヘキシルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ、トリベンジルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシおよびトリ-パラ-キシリルシリルオキシ、特に好ましくはトリメチルシリルオキシおよびtert-ブチルジメチルシリルオキシから選択され、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、
【0038】
1種類以上のC_(1)-C_(12)アルキル基、C_(1)-C_(12)アルケニル基、C_(3)-C_(12)シクロアルキル基、C_(6)-C_(14)アリール基、OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基またはC_(1)-C_(12)アルコキシル基(これらの各基は上記の定義を有する)により置換されているC_(6)-C_(14)アリール基を意味し、
これらのうち2個の隣接する基は、共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、例えば2個の隣接する基が共同で
-(CH_(2))_(3)-(トリメチレン)、-(CH_(2))_(4)-(テトラメチレン)、-(CH_(2))_(5)-(ペンタメチレン)、-(CH_(2))_(6)-(ヘキサメチレン)、-CH_(2)-CH=CH-、-CH_(2)-CH=CH-CH_(2)-、-CH=CH=CH-CH-、-O-CH_(2)-O-、-O-CH(CH_(3))-O-、-CH-(C_(6)H_(5))-O-、-O-CH_(2)-CH_(2)-O-、-O-C(CH_(3))_(2)-O-、-N(CH_(3))-CH_(2)-CH_(2)-N(CH_(3))-、-N(CH_(3))-CH_(2)-N(CH_(3))-または-O-Si(CH_(3))_(2)-O-を形成してもよい。
【0039】
特に好ましい実施の形態には、式Ibで示されるメタロセンが含まれる。
【0040】
【化2】

【0041】
式Ib中、
MはTi、Zr、Hf、V、NbまたはTaから選択された酸化状態+4の元素、好ましくはTi、ZrまたはHf、特に好ましくはZrまたはHfであり、
XおよびYは、それぞれ互いに独立に決定され、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
【0042】
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、または
NR^(17)R^(18)であって、R^(17)、R^(18)はそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、ベンジル、およびC_(6)-C_(14)アリールから選択され、これらは共同で飽和もしくは不飽和の5?10員の環状基を形成してもよいが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルフェニルアミノおよびジフェニルアミノを形成すると好ましい。飽和環基を有するアミノ基の例はN-ピペリジル、およびN-ピロリジニル基であり、不飽和基を有するアミノ基の例はピロリル基、N-インドリル基およびN-カルバゾリル基であり、
EはC、Si、GeおよびSnから選択され、CまたはSiであると特に好ましく、
nは1、2または3から選択され、1または2であると好ましく、1であると特に好ましく、
RおよびR’はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
【0043】
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシであって、
RおよびR’とEとが共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、
【0044】
R^(1)、R^(2)、R^(5)、およびR^(9)?R^(16)はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
モノハロゲン化またはポリハロゲン化C_(1)-C_(12)アルキル基、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、およびペルフルオロブチル、特に好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペルフルオロブチル、
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
【0045】
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基であって、R^(19)?R^(21)がそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(3)-C_(12)シクロアルキル、C_(6)-C_(14)アリール、置換C_(6)-C_(14)アリール、C_(1)-C_(12)アルコキシ、ベンジル、およびC_(6)-C_(14)アリール、好ましくはトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、ジエチルイソプロピルシリルオキシ、ジメチルヘキシルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ、トリベンジルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシおよびトリ-パラ-キシリルシリルオキシ、特に好ましくはトリメチルシリルオキシおよびtert-ブチルジメチルシリルオキシから選択され、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、
1種類以上のC_(1)-C_(12)アルキル基、C_(1)-C_(12)アルケニル基、C_(3)-C_(12)シクロアルキル基、C_(6)-C_(14)アリール基、OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基またはC_(1)-C_(12)アルコキシル基(これらの各基は上記の定義を有する)により置換されているC_(6)-C_(14)アリール基を意味し、
これらのうち2個の隣接する基は、共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、例えば2個の隣接する基が共同で、
-(CH_(2))_(3)-(トリメチレン)、-(CH_(2))_(4)-(テトラメチレン)、-(CH_(2))_(5)-(ペンタメチレン)、-(CH_(2))_(6)-(ヘキサメチレン)、-CH_(2)-CH=CH-、-CH_(2)-CH=CH-CH_(2)-、-CH=CH-CH=CH-、-O-CH_(2)-O-、-O-CH(CH_(3))-O-、-CH-(C_(6)H_(5))-O-、-O-CH_(2)-CH_(2)-O-、-O-C(CH_(3))_(2)-O-、-N(CH_(3))-CH_(2)-CH_(2)-N(CH_(3))-、-N(CH_(3))-CH_(2)-N(CH_(3))-または-O-Si(CH_(3))_(2)-O-を形成してもよい。
【0046】
特に好ましい実施の形態には、式Icで示されるメタロセンが含まれる。
【0047】
【化3】

【0048】
式Ic中、
MはTi、Zr、Hf、V、NbまたはTaから選択された酸化状態+4の元素、好ましくはTi、ZrまたはHf、特に好ましくはZrまたはHfであり、
XおよびYは、それぞれ互いに独立に決定され、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、または
NR^(17)R^(18)であって、R^(17)、R^(18)はそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、およびC_(6)-C_(14)アリールから選択され、これらは共同で飽和もしくは不飽和の5?10員の環状基を形成してもよいが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルフェニルアミノおよびジフェニルアミノを形成すると好ましい。飽和環基を有するアミノ基の例はN-ピペリジル、およびN-ピロリジニル基であり、不飽和基を有するアミノ基の例はピロリル基、N-インドリル基およびN-カルバゾリル基であり、
【0049】
R^(1)?R^(8)、R^(22)およびR^(23)はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
モノハロゲン化またはポリハロゲン化C_(1)-C_(12)アルキル基、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、およびペルフルオロブチル、特に好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペルフルオロブチル、
【0050】
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基であって、R^(19)?R^(21)がそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、C_(3)-C_(12)シクロアルキル、C_(6)-C_(14)アリール、置換C_(6)-C_(14)アリール、C_(1)-C_(12)アルコキシおよびベンジル、好ましくはトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、ジエチルイソプロピルシリルオキシ、ジメチルヘキシルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ、トリベンジルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシおよびトリ-パラ-キシリルシリルオキシ、特に好ましくはトリメチルシリルオキシおよびtert-ブチルジメチルシリルオキシから選択され、
【0051】
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、
1種類以上のC_(1)-C_(12)アルキル基、C_(1)-C_(12)アルケニル基、C_(3)-C_(12)シクロアルキル基、C_(6)-C_(14)アリール基、OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基またはC_(1)-C_(12)アルコキシル基(これらの各基は上記の定義を有する)により置換されているC_(6)-C_(14)アリール基を意味し、
これらのうち2個の隣接する基は、共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、例えば2個の隣接する基が共同で
-(CH_(2))_(3)-(トリメチレン)、-(CH_(2))_(4)-(テトラメチレン)、-(CH_(2))_(5)-(ペンタメチレン)、-(CH_(2))_(6)-(ヘキサメチレン)、-CH_(2)-CH=CH-、-CH_(2)-CH=CH-CH_(2)-、-CH=CH-CH=CH-、-O-CH_(2)-O-、-O-CH(CH_(3))-O-、-CH-(C_(6)H_(5))-O-、-O-CH_(2)-CH_(2)-O-、-O-C(CH_(3))_(2)-O-、-N(CH_(3))-CH_(2)-CH_(2)-N(CH_(3))-、-N(CH_(3))-CH_(2)-N(CH_(3))-または-O-Si(CH_(3))_(2)-O-を形成してもよい。
【0052】
特に好ましい実施の形態には、式Idで示されるメタロセンが含まれる。
【0053】
【化4】

【0054】
式Id中、
MはTi、Zr、Hf、V、NbまたはTaから選択された酸化状態+4の元素、好ましくはTi、ZrまたはHf、特に好ましくはZrまたはHfであり、
XおよびYは、それぞれ互いに独立に決定され、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
【0055】
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、または
NR^(17)R^(18)であって、R^(17)、R^(18)はそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、およびC_(6)-C_(14)アリールから選択され、これらは共同で飽和もしくは不飽和の5?10員の環状基を形成してもよいが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルフェニルアミノおよびジフェニルアミノを形成すると好ましい。飽和環基を有するアミノ基の例はN-ピペリジル、およびN-ピロリジニル基であり、不飽和基を有するアミノ基の例はピロリル基、N-インドリル基およびN-カルバゾリル基であり、
R^(1)?R^(3)、R^(5)?R^(7)、R^(9)?R^(16)はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
【0056】
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
モノハロゲン化またはポリハロゲン化C_(1)-C_(12)アルキル基、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、およびペルフルオロブチル、特に好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペルフルオロブチル、
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
【0057】
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基であって、R^(19)?R^(21)がそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、C_(3)-C_(12)シクロアルキル、C_(6)-C_(14)アリール、置換C_(6)-C_(14)アリール、C_(1)-C_(12)アルコキシおよびベンジル、好ましくはトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、ジエチルイソプロピルシリルオキシ、ジメチルヘキシルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ、トリベンジルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシおよびトリ-パラ-キシリルシリルオキシ、特に好ましくはトリメチルシリルオキシおよびtert-ブチルジメチルシリルオキシから選択され、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、
1種類以上のC_(1)-C_(12)アルキル基、C_(1)-C_(12)アルケニル基、C_(3)-C_(12)シクロアルキル基、C_(6)-C_(14)アリール基、OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基またはC_(1)-C_(12)アルコキシル基(これらの各基は上記の定義を有する)により置換されているC_(6)-C_(14)アリール基を意味し、
これらのうち2個の隣接する基は、共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、例えば2個の隣接する基が共同で
-(CH_(2))_(3)-(トリメチレン)、-(CH_(2))_(4)-(テトラメチレン)、-(CH_(2))_(5)-(ペンタメチレン)、-(CH_(2))_(6)-(ヘキサメチレン)、-CH_(2)-CH=CH-、-CH_(2)-CH=CH-CH_(2)-、-CH=CH-CH=CH-、-O-CH_(2)-O-、-O-CH(CH_(3))-O-、-CH-(C_(6)H_(5))-O-、-O-CH_(2)-CH_(2)-O-、-O-C(CH_(3))_(2)-O-、-N(CH_(3))-CH_(2)-CH_(2)-N(CH_(3))-、-N(CH_(3))-CH_(2)-N(CH_(3))-または-O-Si(CH_(3))_(2)-O-を形成してもよい。
【0058】
特に好ましい実施の形態には、式Ieで示されるメタロセンが含まれる。
【0059】
【化5】

【0060】
式Ie中、
MはTi、Zr、Hf、V、NbまたはTaから選択された酸化状態+4の元素、好ましくはTi、ZrまたはHf、特に好ましくはZrまたはHfであり、
XおよびYは、それぞれ互いに独立に決定され、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
【0061】
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、または
NR^(17)R^(18)であって、R^(17)、R^(18)はそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(6)アルキル、およびC_(6)-C_(14)アリールから選択され、これらは共同で飽和もしくは不飽和の5?10員の環状基を形成してもよいが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルフェニルアミノおよびジフェニルアミノを形成すると好ましい。飽和環基を有するアミノ基の例はN-ピペリジル、およびN-ピロリジニル基であり、不飽和基を有するアミノ基の例はN-ピロリル基、N-インドリル基およびN-カルバゾリル基であり、
EはC、Si、GeおよびSnから選択され、CまたはSiであると特に好ましく、
【0062】
nは1、2または3から選択され、1または2であると好ましく、1であると特に好ましく、
RおよびR’はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
【0063】
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシであって、
RおよびR’とEとが共同で飽和または不飽和の4?9員環を形成しても良く、R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に、
水素、
ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはC_(1)-C_(4)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、
【0064】
モノハロゲン化またはポリハロゲン化C_(1)-C_(12)アルキル基、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、およびペルフルオロブチル、特に好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペルフルオロブチル、
C_(2)-C_(12)アルケニル、好ましくはC_(2)からω-C_(8)アルケニル、例えばビニル、アリル、ブタ-3-エン-1-イル、ω-ペンテニル、ω-ヘキセニル、ω-ヘプテニルおよびω-オクテニル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニル、
【0065】
OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基であって、R^(19)?R^(21)がそれぞれ独立に、水素、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(2)-C_(12)アルケニル、C_(3)-C_(12)シクロアルキル、C_(6)-C_(14)アリール、置換C_(6)-C_(14)アリール、C_(1)-C_(12)アルコキシ、およびベンジル、好ましくはトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、ジエチルイソプロピルシリルオキシ、ジメチルヘキシルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ、トリベンジルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシおよびトリ-パラ-キシリルシリルオキシ、特に好ましくはトリメチルシリルオキシおよびtert-ブチルジメチルシリルオキシから選択され、
C_(1)-C_(12)アルコキシ、好ましくはC_(1)-C_(6)アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、n-ヘキソキシおよびイソヘキソキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシ、
1種類以上のC_(1)-C_(12)アルキル基、C_(1)-C_(12)アルケニル基、C_(3)-C_(12)シクロアルキル基、C_(6)-C_(14)アリール基、OSiR^(19)R^(20)R^(21)で示されるシロキシ基またはC_(1)-C_(12)アルコキシル基(これらの各基は上記の定義を有する)により置換されているC_(6)-C_(14)アリール基を意味し、
これらのうち2個の隣接する基は、共同で飽和または不飽和の4?9員環、好ましくは5?8員環を形成しても良く、例えば2個の隣接する基が共同で
-(CH_(2))_(3)-(トリメチレン)、-(CH_(2))_(4)-(テトラメチレン)、-(CH_(2))_(5)-(ペンタメチレン)、-(CH_(2))_(6)-(ヘキサメチレン)、-CH_(2)-CH=CH-、-CH_(2)-CH=CH-CH_(2)-、-CH=CH-CH=CH-、-O-CH_(2)-O-、-O-CH(CH_(3))-O-、-CH-(C_(6)H_(5))-O-、-O-CH_(2)-CH_(2)-O-、-O-C(CH_(3))_(2)-O-、-N(CH_(3))-CH_(2)-CH_(2)-N(CH_(3))-、-N(CH_(3))-CH_(2)-N(CH_(3))-または-O-Si(CH_(3))_(2)-O-を形成してもよく、
Aは酸素、硫黄、N-R^(24)またはP-R^(24)を意味し、R^(24)はハロゲン、C_(1)-C_(12)アルキル、C_(3)-C_(12)シクロアルキル、置換または無置換C_(6)-C_(14)アリールおよびC_(1)-C_(12)アルコキシ(これらの各基は上記R^(1)の定義を有する)から選択される。
【0066】
式Ia-eで示される極めて好ましいメタロセンの例は以下のとおりである。
【0067】
rac-エチレンビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレンビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-テトラメチレンシリルビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリルビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]-ジルコニウムジクロリド、
2,2-イソプロピリデンシクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチル-シクロペンタジエニル-9-フルオレニルジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチルベンゾ[4,5]インデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[4,5,6,7-テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ビス[2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
ジメチルシリルイソプロピルアミドテトラメチルシクロペンタジエニル-チタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリル-tert-ブチルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルフェニルアミドテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
ジメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
2,3,5-トリメチルシリルオキシテトラメチルシクロペンタジエニルチタンジクロリド、
およびこれらに対応する二臭化物およびジメチル化合物が挙げられる。
【0068】
触媒活性を有するメタロセンは、メタロセニウムイオン生成可能な適当な化合物により活性化されなければならない。メタロセニウムイオン生成可能な化合物は、電子を引き抜く基を有するホウ素化合物から選択される。この例は、トリスペンタフルオロフェニルボラン、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリ-n-ブチルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビスペルフルオロメチル)フェニルボレート、トリ-n-ブチルアンモニウムテトラキス(3,5-ビスペルフルオロメチル)フェニルボレートおよびトリチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートである。これらの活性剤はEP-A0468537号およびEP-A0426638号各公報に記載されている。好ましい例は、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートおよびトリスペンタフルオロフェニルボランである。
【0069】
メタロセニウムイオン生成可能な他の適当な化合物は、式IIa-bのアルミノキサンにより生成するものである(例えばDE-A3007725号公報)。
【0070】
アルミノキサンの構造は正確にはわかっていない。これらはアルミニウムアルキルを注意深く部分的に加水分解することにより得られる生成物である(DE-A3007725号公報)。この様な生成物は純粋な形状ではなく、下記IIaおよびIIbの鎖状構造と管状構造による複数種の混合物としての形態をとりやすい。この様な混合状態の化合物は相互に力学的平衡を保っているものと考えられる。
【0071】
【化6】

【0072】
式IIaにおいて、
R^(25)で示される基は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、
C_(1)-C_(12)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルおよびn-ドデシル、好ましくはC_(1)-C_(6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、特に好ましくはメチル、
C_(3)-C_(12)シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
C_(7)-C_(20)アリールアルキル、好ましくはC_(7)-C_(12)フェニルアルキル、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチルおよび4-フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、
C_(6)-C_(14)アリール、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、特に好ましくはフェニルであり、
mは0?40、好ましくは0?25、特に好ましくは0?22の整数を意味する。
【0073】
かご状構造もアルミノキサンに関する文献に記載されている(Y.Koide、S.G.Bott,A.R.Barron Organometallics 1996,15,2213-26;A.R.Barron Macromol.Symp.1995,97,15-25)。アルミノキサンの実際の構造にかかわらず、このような構造の化合物もメタロセンの活性剤として適当である。
【0074】
メタロセンと、メタロセニウムイオン生成可能な化合物は、共同で触媒系(触媒組成物)を形成する。この触媒系の活性は、Al(R^(25))_(3)で示されるアルミニウムアルキル化合物を添加すると、更に向上する。
【0075】
ここでアルミニウムアルキルを更に添加することにより、触媒系の活性が向上するのみならず、アルミニウムアルキルが分子量調整剤としても作用する。この他の有効な分子量調整剤は水素である。更に、分子量は反応温度および滞留時間を用いた適切な方法で調節可能である。
【0076】
ポリオレフィンワックスを得るための現代の工業規模の製造方法には、溶液法、懸濁法、液体または超臨界モノマーによる塊状重合方法、および気相法がある。気相法は、攪拌下の気相または気相の流動床法によるものがある。
【0077】
懸濁法、塊状重合法または気相法において使用可能なメタロセンは、固体担体上に固定しておくと有効である。固定しない場合には、重合体の形態上の問題(塊の生成、壁部への析出、管路または熱交換機の閉塞)が起こり、プラントの閉鎖が強いられることがある。
【0078】
メタロセンと活性剤とを含む触媒系は固体担体上に容易に析出する。適する担体材料は、第2族から14族の金属による多孔性金属酸化物またはその混合物、並びに第1、2および13族の金属のシート状珪酸塩および固体ハロゲン化物である。第2?14族の金属酸化物の好ましい例は、SiO_(2)、B_(2)O_(3)、Al_(2)O_(3)、MgO、CaOおよびZnOであり、好ましいシート状珪酸塩は、モンモリロナイトおよびベントナイト、好ましいハロゲン化物はMgCl_(2)および非晶質AlF_(3)である。
【0079】
特に好ましい担体材料は球形シリカゲルおよび式SiO_(2)・aAl_(2)O_(3)(式中aは一般に0?2、好ましくは0?0.5)のアルミノシリケートゲルである。この様なシリカゲルは、W.R.Grace社製のSilica Gel 332またはS 2101等として市販されている。
【0080】
有用であることがわかっている担体材料粒子の平均粒径は1?300μm、好ましくは20?80μmである。担体材料の平均粒径は篩い分け等の公知方法により測定される。これらの担体材料の細孔容積は1.0?3.0ml/g、好ましくは1.6?2.2ml/g、特に好ましくは1.7?1.9ml/gである。BET表面積は200?750m^(2)/g、好ましくは250?400m^(2)/gである。
【0081】
担体材料に付着する不純物、特に水分を除去するためには、担体材料を焼成処理に付してからドーピング処理してもよい。このための適当な温度は45?1000℃である。100?750℃の温度であるとシリカゲルおよび他の金属酸化物に対して特に好適である。MgCl_(2)担体には、50?100℃の温度が好ましい。焼成は、0.5?24時間、好ましくは1?12時間にわたり行われる。圧力状態自体は重要ではないが、焼成は大気圧下で行われる。しかしながら、0.1?500ミリバール(1×10^(2)Pa?500×10^(2)Pa)に減圧すると有効であり、1?100ミリバールの範囲の減圧が特に有効であり、2?20ミリバールの減圧が極めて有効である。担体材料を化学的に予備処理することも可能である。
【0082】
触媒をドーピングする操作では、通常担体材料を懸濁媒体中のスラリーとし、この懸濁液をメタロセン/活性剤組成物の溶液と混合する。この場合、懸濁媒体の容量は、触媒担体の空隙容量の1?20倍とされる。次いで濾過、遠心分離または蒸発等の適する方法により触媒を懸濁媒体として分離してもよい。
【0083】
上述のメタロセン触媒のいずれかを用いた上述の重合方法により得られたポリオレフィンワックスを種々の方法により加工し、マスターバッチを得ることもできる。全ての方法において、所定工程で顔料を添加せずにワックスおよび担体重合体を溶解させ、1種類以上の顔料と、場合に応じて添加剤とを、これに導入する。
【0084】
実際の混合に先立ち、必要に応じて各成分を予備混合してよい。このためにはドラムまたはタンブラーミキサーが非常に有効である。必要に応じて微粉化を行ってもよい。
【0085】
実際の混合工程では、バッチ法と連続法の区別がある。バッチ法の場合は、簡単な混練器を使用することができ、連続法は、例えば高速ミキサー、一軸押出機、二軸押出機、Buss混練器、プラネタリロール押出機、開放ダブルトラフ混練器または高速攪拌機により行われる。
【0086】
次いで、顔料濃縮物を通常の方法で粒状化する。粒状化は押出物粒化機により行われ、混合物を連続ストランド状で水冷し、次いで水浴中で、または水浴から取り出した後にこれをペレット状または粒体状に切断する。有孔プレートもカッターとして好ましく用いられる(「ホットカットペレット化」)。
【0087】
成形体およびシートを製造するために、まず
0.01?10質量%、好ましくは0.5?5質量%、特に好ましくは0.5?2.5質量%の顔料濃縮物と、
90?99.99質量%、好ましくは95?99.5質量%、特に好ましくは97.5?98.5質量%の重合体と、
必要に応じて、0?5質量%の添加剤、好ましくは酸化防止剤または殺生物剤と、
から成る混合物を製造する。
【0088】
適する重合体の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリスチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン三元共重合体、ポリアミド、例えばナイロン6またはナイロン6.6、ポリ塩化ビニル、エチレンと0.1?20モル%の1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンまたは1-ウンデセンとの共重合体である。着色対象の重合体と、マスターバッチの担体重合体とは同一であっても、異なってもよい。
【0089】
顔料濃縮物と重合体と、必要に応じて添加剤とを混合する場合、マスターバッチ製造のための方法と同一の方法を用いてもよい。この場合にも、バッチ法では、簡単な混練器を使用することができ、連続法は、例えば高速ミキサー、一軸押出機、二軸押出機、Buss混練器、プラネタリロール押出機、開放ダブルトラフ混練器または高速攪拌機により行われる。連続法も好ましく用いられる。
【0090】
成形体およびシートは、重合体の融点を超過する温度での、射出成形、フィルム押出し、またはキャスティングにより製造される。本発明の顔料濃縮物を添加することにより得られた成形体およびシートの加工特性に悪影響が与えられることはない。
【0091】
本発明で使用される方法により得られた成形体およびシートは、市販の成形体およびシートとは異なり、着色において光沢が顕著に向上している。また、本発明の顔料濃縮物を使用することによって、材料の機械的特性が悪影響を受けることはない。
【0092】
[実施例]
シリカゲル担体上に施されたビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドをメタロセン触媒として使用し、MAOにより活性化した。メタロセン触媒の使用法はEP-B0571882号公報、実施例5に記載されているが、この方法に以下の変更を加えた。
【0093】
【表1】

【0094】
メタロセンポリエチレンワックスをEP-B0602509号公報、実施例1、または同公報19ページの図面に記載の装置を用いて製造した。懸濁媒体としてはプロパンの代わりにイソブタンを用い、水素を用いずに60℃で重合を行った。
【0095】
このように得られたワックスは以下の特性を有する。凝固点:128℃、M_(w):4900g/mol、M_(n):2200g/mol。
【0096】
実施例1における新規顔料濃縮物の成分として以下の成分を使用した。
【0097】
25質量%のHeliogen(登録商標)Blau(BASF社の製品)、
15質量%のポリエチレンワックス、
60質量%の粒体状ポリエチレン(Lupolen(登録商標)1800S)(Elenac社の製品)。
【0098】
類似した処理による実施例2において、以下の成分を使用した。
【0099】
25質量%のHeliogen(登録商標)Gruen(BASF社製)、
15質量%のポリエチレンワックス、
60質量%の粒体状ポリエチレン(Lupolen(登録商標)1800S)(Elenac社の製品)。
【0100】
各成分を高速混合機で予備混合し、ワックスの融点に加熱した。この操作では、ワックスが顔料を湿潤させ、ダストを含まない状態とした。これによりワックス相中に顔料を含む分散体が得られた。次いでこの混合物を二軸押出機に導入した。温度を更に10℃上昇させた。この処理工程では、PE粒体を薄いワックス層中に包み込んだ。押出後、顔料濃縮物を非常に注意深く冷却し、凝固した顔料/ワックス層が分離しないようにしないようにした。
【0101】
比較生成物を同様の方法で製造した。市販のサンプルをワックスとして使用した。
【0102】
色の濃淡を調べるため、実施例に記載した1gの顔料濃縮物を、蛍光増白剤としての91.5gのLupolen50Dおよび7.5gのTiO_(2)と予備混合し、吹込成型機内で130?150℃で混合し、吹込成型によりキャニスターを製造した。
【0103】
色の濃淡を評価するため、キャニスターから5×5cmのサンプル片を切り取り、DIN6176に基づき波長400?700nmでの分光分析法による試験を行った(Datacolor社製Spectraflash 600を使用)。
【0104】
結果を表1に示す。
【0105】
表1:実施例1?2および比較例1a/bおよび2a/bによる色の濃淡の評価
【0106】
【表2】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-10-22 
結審通知日 2013-10-24 
審決日 2013-11-06 
出願番号 特願2001-544867(P2001-544867)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (C08J)
P 1 113・ 113- YA (C08J)
P 1 113・ 537- YA (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 行令  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 田口 昌浩
須藤 康洋
登録日 2011-01-21 
登録番号 特許第4667695号(P4667695)
発明の名称 顔料濃縮物およびその製造法  
復代理人 野村 悟郎  
復代理人 高橋 修平  
復代理人 野村 悟郎  
代理人 鷲田 公一  
復代理人 倉脇 明子  
代理人 飯沼 和人  
代理人 江藤 聡明  
代理人 江藤 聡明  
復代理人 高橋 修平  
復代理人 倉脇 明子  

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