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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1283526
審判番号 不服2010-23246  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-14 
確定日 2014-01-06 
事件の表示 特願2000-589563「Chlamydiatrachomatis抗原」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月29日国際公開、WO00/37494、平成14年10月15日国内公表、特表2002-534062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年(1999年)12月17日(パリ条約による優先権主張 1998年12月18日、英国)を国際出願日とする出願であって、その請求項3に係る発明は、平成22年10月14日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項3に記載される、以下のとおりのものである。

「【請求項3】
Chlamydia trachomatis由来のhtrAタンパク質に80%以上の配列同一性を有する、タンパク質を含む免疫原性組成物であって、ここで、htrAは、48.4kDaの分子量、および、5.89のpIを有し、そして、N末端配列 LAVSSGDQEVSQEDLLKEを有する、組成物。」(以下、「本願発明」という。)

第2 原査定の理由
原査定の理由は、本願が特許法第36条第6項第2号の規定を満たさず、特許を受けることができないというものである。

第3 当審の判断
1.判断
本願発明は、「Chlamydia trachomatis由来のhtrAタンパク質に80%以上の配列同一性を有する、タンパク質」に係るものであって、アミノ酸配列の同一性の参照対象となる「Chlamydia trachomatis由来のhtrAタンパク質」について、「48.4kDaの分子量、および、5.89のpIを有し、N末端配列 LAVSSGDQEVSQEDLLKEを有する」ものとして特定するものである。
したがって、本願発明に係る「タンパク質」とは、N末端配列以外は特定されていない「htrAタンパク質」のアミノ酸配列に対して「80%以上の配列同一性を有する」という事項により特定されるものである。
そして、本願明細書において、「htrAタンパク質」のアミノ酸配列については、「N末端配列 LAVSSGDQEVSQEDLLKE」を除き、その余の配列は明らかにされておらず、また、当該アミノ酸配列は、出願時における技術常識であるともいえない。
そうすると、出願時の技術常識を参酌しても、「htrAタンパク質」について、Chlamydia trachomatis由来であること、48.4kDaの分子量、および、5.89のpIを有すること、そして、N末端配列 LAVSSGDQEVSQEDLLKEを有することをもって、残余のアミノ酸配列がいかなるものであるかを把握することはできず、さらに、把握できない「htrAタンパク質」のアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有するタンパク質がいかなるものであるかについては、到底把握することはできないものであるから、本願発明は明確ではない。

2.審判請求人の主張
(1)審判請求人は平成24年9月5日付けの回答書において、次のとおり主張している。
主張1:スポット15のN末端配列は、本願明細書段落【0079】の表IIIに開示されている。BLASTプログラムを用いてタンパク質ホモログを同定するためにデータベースにおいて実行された結果(甲第1号証)に示すとおり、1つのタンパク質、C.trachomatisのセリンプロテアーゼのみが、この配列を保有することを示している。したがって、スポット15のN末端配列はChlamydia trachoatis htrAに特異的であることを実証するものである。

主張2:C.trachomatisを含め4つのChlamydia種が現在公知であって、そしてそのゲノム配列(Serovar D)は既に公開されており、出願当初の明細書中のタンパク質サンプルの調製物は、本願明細書段落【0036】に例示されたとおりの標準的な手順を用いて得られ、標準的な手順の高分解能の2D電気泳動(甲第2号証)を用いて分離されたように、全ての実験手順は、本願発明の優先日時点の近代的な実験室において容易にかつ効率的に実施され得たものである。

主張3:審査基準は、「組換えタンパク質は、その機能、理化学的性質、起源・由来、製法等により特定して記載することもできる(ただし、発明が明確であること、及び、実施可能要件(1.1.2.1参照)を満たすことが必要である点に留意する)。」 と規定しており、特許法の下では、請求項中の特定のタンパク質を識別するためにそのタンパク質のアミノ酸配列全体または登録番号を記載することが絶対的に必要とされているわけではない。

主張4:平成22年8月31日付け知的財産高等裁判所判決(平成21年(行ケ)第10434号審決取消請求事件)で判示されているように、 特許法第36条第6項第2号は、「特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。」というものであり、技術的事項の意義まで明確にすることは求められておらず、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確というものではないので、特許法第36条第6項第2号違反ではない。

(2)以下、審判請求人の主張について検討する。
a.主張1及び2について
審判請求人は、主張1において、本願の出願日後に実施された、BLASTプログラムを用いた検索結果である甲第1号証を提示して、C.trachomatisのセリンプロテアーゼのみがこの配列を保有するものであること、そして、主張2において、C.trachomatisを含め4つのChlamydia種のゲノム配列は現在公開されていることを主張するが、これらはいずれも、本願の出願時において、C.trachomatisのhtrAタンパク質のアミノ酸配列が技術常識であったことを示すものではないから、当該審判請求人の主張は採用できない。

また、審判請求人は主張2において、本願発明は、発明の詳細な説明の記載された手順により実施可能であることを主張するが、本件は、実施可能要件違反を理由としたものではないので、当該審判請求人の主張は採用できない。

b.主張3について
本願発明は、「Chlamydia trachomatis由来のhtrAタンパク質」ではなく、あくまでも「htrAタンパク質に80%以上の配列同一性を有する、タンパク質」であるから、「48.4kDaの分子量、および、5.89のpIを有」することや、「Chlamydia trachomatis由来」であることを何ら要件とするものではなく、起源と他の特徴とを組み合わせて規定しているのは、配列同一性を検討する上で参照の対象となる「htrAタンパク質」であるから、当該審判請求人の主張は請求項の記載に基づいたものではない。

c.主張4について
上記1.に示した判断は、技術的事項の意義が明確でないことを理由に本願発明が明確でないとしたものではない。
また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点からみても、第三者が特許請求の範囲の記載を解釈するにあたり、C.trachomatisから調製物を得て、2D電気泳動を用いて分離し、得られたタンパク質サンプルを解析してアミノ酸配列を解明することを強いることになるのであるから、発明特定事項の開示として相当でないといえ、採用することはできない。

したがって、審判請求人の主張は、いずれも採用することができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明について、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-02 
結審通知日 2013-08-05 
審決日 2013-08-20 
出願番号 特願2000-589563(P2000-589563)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三原 健治上條 肇  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 田中 晴絵
冨永 みどり
発明の名称 Chlamydiatrachomatis抗原  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  
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