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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1283549
審判番号 不服2011-24798  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-16 
確定日 2014-01-06 
事件の表示 特願2005-518074「生理活性組成物及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月25日国際公開、WO2005/077395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年2月16日(国内優先権主張 平成16年2月16日)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答し平成23年7月19日付けの手続補正書と意見書が提出されたが、平成23年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月16日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に平成23年11月16日付けで手続補正なされれたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋に応答し平成25年9月6日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成23年11月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前(平成23年7月19日付けの手続補正書参照)の
「【請求項1】
生理活性組成物であって、
(a)Reishi Fungus(レイシ)の子実体の抽出成分と、
(b)Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分と、
チクセツニンジンの根の抽出成分と、
(c)チクセツニンジンの根の抽出成分と、
(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分又はAgrics blazei Murill(アガリクス)の子実体の抽出成分と、
を、含有する組成物。」から、
補正後の
「【請求項1】
生理活性組成物であって、
(a)Reishi Fungus(レイシ)の子実体の抽出成分と、
(b)Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分と、
チクセツニンジンの根の抽出成分と、
(c)チクセツニンジンの根の抽出成分と、
(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分と、
を、含有する組成物。」(下線は、原文のとおり。)
とする補正を含むものである。

この補正は、補正前後の発明特定事項を対比すると、(d)の成分について、「又はAgrics blazei Murill(アガリクス)の子実体の抽出成分」との選択肢を削除し、「(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分」との選択肢を残したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「平成18年改正前特許法」ともいう。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)補正の適否
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-1)本願補正発明について
補正後の請求項1には、(b)成分と(c)成分の間の行に「チクセツニンジンの根の抽出成分と、」との記載があるが、(c)成分自体が「チクセツニンジンの根の抽出成分」とされていて、二重に記載されていると認められること、及び、本願明細書(特に実施例)を検討しても、(a)?(d)の4つの成分の原料を配合しその後抽出処理を行っているにすぎず、(b)成分として「Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分」と「チクセツニンジンの根の抽出成分」との両方を含むものと、(a)、(c)、(d)の成分とを含有させて組成物とすることを説明していないことをも勘案すると、その記載は単なる誤記と解するのが相当であると言えるので、本願補正発明(補正後の請求項1に係る発明)を次の様に認定する。なお、補正前の請求項1についても同様な誤記があるものと認める。
<本願補正発明>
「生理活性組成物であって、
(a)Reishi Fungus(レイシ)の子実体の抽出成分と、
(b)Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分と、
(c)チクセツニンジンの根の抽出成分と、
(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分と、
を、含有する組成物。」

(2-2)引用例
原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第01/56589号(以下、「引用例1」という。)、特開2002-229号公報(以下、「引用例2」という。)、特開2002-235084号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の技術事項が記載されている。
なお、引用例1は英文であるため翻訳文で示し、翻訳に際し参考にしたパテントファミリーの特表2004-521854号公報(以下「参照公報」ともいう。)の対応する段落を、参考までに、摘示の頁行に続け「;」を介在させ併記した。また、下線は当審で付与した。

[引用例1]
(1-i)「1. 担子菌類サルノコシカケ科に属する1種類以上の担子菌の抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根の抽出成分、とを含有する組成物。
2. 前記組成物の水溶液の酸化還元電位が約1230mV未満である、請求項1記載の組成物。
3. 前記1種類以上の担子菌は、マンネンタケ(Ganodrma Lucidum)および/またはカワラタケ(Coriolus versicolor)である請求項1又は2に記載の組成物。
4. 前記ウコギ科の植物は薬用ニンジンである、請求項1又は2記載の組成物。
・・・・
10. 前記組成物の水溶液の酸化還元電位が約330mV未満である、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
11. 前記組成物が抗腫瘍活性を示す、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
・・・
14. 前記組成物が低血糖性の効果を示す、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。」(第24頁1行?第25頁14行の請求項1?4、10、11、14参照)
(1-ii)「本発明者は、担子菌類由来抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根由来抽出成分とを配合した組成物につき、顕著に高い抗腫瘍活性を見出した。また、本発明者は、これらの組成物につき、高血糖症者において血糖値を下げる効果(以下、「血糖降下作用」という。)を見出した。さらに理論的に拘束されるものではないが、発明者は、これらの組成物の生理活性は、それらの酸化還元電位と関連していると考える。」(第2頁5?11行;参照公報段落【0004】)
(1-iii)「・・・。担子菌類のサルノコシカケ科には、マンネンタケ、カワラタケ及び他のキノコ類が属している。特に好ましくは、その抽出成分としては、これらサルノコシカケ科に属する1種類以上の菌の子実体及び/又は菌糸体培養物(菌糸体の他、培養液も含む)から得られる。
担子菌としては、好ましくは、マンネンタケおよびカワラタケから選択される1種類以上を用いる。特に好ましくは、マンネンタケとカワラタケとを合わせて用いる。なお、本明細書において、用いられる担子菌類の分類学上の同定は、"Primary Color Picture Book of Japanese Mushrooms" written by Imazeki and Hongou (Hoiku Co.) (今関六也、本郷次雄の共著「原色日本菌類図鑑」(保育社)) に準拠している。
特に、マンネンタケにあっては、Reishi Fungus ( Ganoderma Lucidum)を例示することができる。この菌は、生来、樹木に好んで繁殖するものの、自生菌は稀少である。しかしながら、人工栽培も可能である。この菌は、つやのある、ワックス状のかさ部分と軸部とを有しており、その軸の長さは、15cm程度にも到達される。子実体の色は、赤色、青色、黄色、白色、紫色、黒色を呈する。この菌は、切り株上や、病気で弱った木の基部付近で生長し、白い糸状体となる。
Coriolus Versicolor菌は、日本の西部、特に、信州地方(特に、長野県)、四国地方、九州地方に自生している。この菌は、生来、好材菌であり、特に広葉樹を好む。この担子菌類は、天然に自生するものでもよく、また、人工的に栽培したもの、あるいは細胞培養によるものでもあってもよく、特に限定しない。好ましくは、天然自生のものである。
これらの菌類の、本発明において使用する形態は、子実体及び/又は菌体培養物であればよいが、好ましくは子実体である。また、子実体にあっては、暗所で室温で風乾されたものが好ましい。
特にマンネンタケにあっては、自生で成熟した黒色の子実体を用いるのが推薦される。また、カワラタケにあっては、夏に採取された自生の子実体であることが好ましく、暗所で室温で風乾されたものがさらに好ましい。
好ましくは、薬用人参はウコギ科植物であり、オタネ人参(Panax ginseng C. A. Meyer)の他、アメリカ人参(P. quinquefolium L.)、三七人参(田七人参、P. notogingseng)、竹節人参(チクセツニンジン)(珠子参、P. japonicus C. A. Meyer)等が含まれる。本発明においては、オタネニンジン及び/又はチクセツニンジンを用いることが好ましい。特に好ましくはチクセツニンジンである。これらのニンジンは、いずれもその根を用いる。ウコギ科植物としては、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。ウコギ科植物の代用として、セリ科に属する植物を用いることもできる。」(第3頁32行?第4頁31行;参照公報段落【0009】?【0013】)
(1-iv)「なお、上記したいずれの配合においても、担子菌類として、マンネンタケとカワラタケ(いずれも子実体)とのみを用いることが好ましい。より好ましくは、ウコギ科植物として、オタネニンジン又はチクセツニンジンを用いる。特に、好ましくはチクセツニンジンを用いるが、これらの配合例において、チクセツニンジンを、オタネニンジンに変えても好ましい組成物が得られる。
本発明の好ましい方法としては、マンネンタケ子実体:カワラタケ子実体:チクセツニンジン(根)の配合比(重量比)が、1:1:1の抽出原料から本組成物を製造する。例えば、マンネンタケ子実体6g、カワラタケ子実体6g、チクセツニンジン6gをそれぞれ採取し、混合し、5mm角程度の細片にまで粉砕し、この粉砕物に対して500mlの蒸留水を添加し、環流凝縮器を用いて3時間煮沸し、濾過後、本発明に用いる組成物(原液)とする。」(第6頁24行?第7頁2行;参照公報段落【0020】?【0021】)
(1-v)「このように調製した組成物は、その溶液あるいは懸濁液状態における酸化還元電位が約+1230mV以下であるものを用いる。より好ましくは、酸化還元電位が+900mV以下のものを本発明の組成物として用いる。特に、抗腫瘍活性組成物としてこのような酸化還元電位のものを用いるのが好ましい。
酸化還元電位は、水性溶媒、好ましくは、水中で測定される値である。上記抽出によって得られた原液あるいは、その水性の希釈液については、そのまま酸化還元電位を計測することもできる。もし、組成物が固体化されている場合には、適当な溶媒、あるいは水等に溶解、懸濁した状態で測定する。」(第7頁10?18行;参照公報段落【0023】)
(1-vi)「組成物の調製後、あるいは、溶解あるいは懸濁後、経時的に酸化還元電位が変化する。したがって、酸化還元電位を経時的にチェックすべきであり、その溶液が+900mV以下になった時点で使用するのが好ましい。なお、使用(投与)毎に組成物の酸化還元電位をチェックすることが好ましい。好ましくは、組成物は25℃で保存し、測定場所の温度も25℃とすることが好ましい。
得られた組成物の酸化還元電位は、重要と思われる。なぜなら、特に、その組成物が+900mV以下の酸化還元電位を持つ場合に、本組成物の酸化還元電位と抗腫瘍活性とは、負の相関性があるからである。すなわち、酸化還元電位が低いほど、抗腫瘍活性が高くなる。
したがって、本発明によれば、組成物の酸化還元電位を測定することにより、予め実施の前に、その抗腫瘍活性や血糖降下活性を予測できる。この方法で、治療効率を改善することができる。
その教えに従う組成物について言えば、酸化還元電位は、好ましくは、+330mV以下であり、より好ましくは、+300mv以下であり、さらに好ましくは+250mV以下である。さらに、酸化還元電位は、-1200mV以上であることが好ましく、より好ましくは-300mV以上である。」(第7頁33行?第8頁18行;参照公報段落【0024】)
(1-vii)「なお、本発明の組成物においては、担子菌類抽出成分とウコギ科植物根抽出成分のみを含有していてもよい。しかしながら、本発明の組成物の好ましい組成は、その他の有効成分を含有することを妨げるものではなく、本発明の組成物における上記2種の抽出成分の相乗的作用を妨げない範囲において、他の有効成分を含ませることができる。例えば、実施のための適切な組成物とするために、抽出成分は、薬学的に許容できる担体や、添加物と混合することができる。」(第8頁19?24行;参照公報段落【0025】参照)
(1-viii)「本発明の組成物は、抗腫瘍活性、特に、白血病、子宮頸ガン、肺ガン、卵巣ガン、乳腺ガン(転移ガンを含む)、皮膚ガン(転移ガンを含む)に対する抗腫瘍活性を有している。白血病としては、赤芽球性白血病(erythroblastic leukosis)を例示できる。本発明の組成物は、ヒトをはじめ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ等の広く哺乳類における抗腫瘍剤として使用できる。
担子菌類の抽出成分には、従来から抗腫瘍活性が認められ、また、ウコギ科植物の根の抽出成分にも抗腫瘍活性が確認されていたが、本発明の組成物は、各単独の抗腫瘍活性に比して、予想外に高い抗腫瘍活性が得られることを論証している。
また、本発明の組成物は、血糖降下作用も有している。この血糖降下剤は、インシュリン依存性糖尿病、インシュリン非依存性糖尿病の双方において作用を発揮する。
加えて、本発明の組成物は、副作用がなく、また、他の薬剤の副作用を低減、消滅させるという特徴がある。
たとえば、抗腫瘍剤として用いた場合には、腫瘍の治癒あるいは縮退の他、また、痛みの減少、食欲改善、良好な睡眠が得られる等の各種の効果がある。また、血糖降下剤として用いた場合には、血糖値の低下以外に、身体の痛みの緩和、とくに、頭痛、四肢のしびれが大幅な改善、食欲の亢進、視力の回復、ストレスの減少、快適な睡眠等の効果がある。」(第8頁31行?第9頁20行;参照公報段落【0026】?【0027】参照)
(1-ix)「実施例1 -最初の代表組成物の調製
マンネンタケ( Ganoderma Lucidum)の子実体、カワラタケ(Coriolous Versicolor)の子実体、及びチクセツニンジン(Panax japonicus C.A. Meyer)の根を用いた。マンネンタケは、夏期に中国北部の森林で採取した自生の成熟した黒色の子実体を、暗所で室温で風乾したものを用いた。カワラタケは、夏期に日本で採取した自生の子実体を、暗所で室温で風乾したものを用いた。チクチクセツニンジンは、夏期に日本で採取した成熟体の根を、暗所で室温で風乾したものを用いた。
マンネンタケ6g、カワラタケ6g、及びチクセツニンジン6gをそれぞれ秤量し、これらの混合物を5ミリ角程度の細片とした。この混合物に対して、(イオン交換水、純度1μS/cm以下)を500ml添加して、還流凝縮器を用いて、還流しながら2時間煮沸した。その後、ろ過し、本実施例の組成物とした。なお、本組成物1mlあたり、マンネンタケ約0.012g量相当の抽出成分と、カワラタケ約0.012g量相当の抽出成分と、チクセツニンジン約 0.012g量相当の抽出成分が含有されている。この組成物をさらに、前記イオン交換水を用いて1/4、1/8、1/16,1/32、1/64、1/128、1/256に希釈した。
実施例2 -2つ目の代表組成物の調製
マンネンタケ6g、カワラタケ6g、及びチクセツニンジン6gをそれぞれ秤量し、これらの混合物を粉末とする以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2の組成物を調製した。また、実施例1と同様に希釈した。
実施例3 -抗腫瘍活性の確認とヒト白血球ガン細胞であるK562細胞系列の増殖抑制効果
K562細胞系列の培養液を、ミクロタイタープレートの凹部に対し、150μl(20×10^(3)細胞)をそれぞれ添加した。・・・中略・・・ 前記実施例1,2の組成物の原液及び各希釈液ろ過した前記組成物50μlを添加し、37℃で培養した。24時間、48時間、72時間及び96時間培養し、それぞれ細胞増殖をSRB法(sulfohodamine B)によって評価した。
SRB法は、次のように行った。80%TCA(トリクロロ酢酸)50μlをミクロタイタープレートの各凹部に添加し、1時間細胞を固定化する。その後、4回洗浄し、十分に乾燥させた。4%のSRB 200μlを各凹部に添加し、30分間細胞を染色し、その後、4回洗浄し、乾燥させた。10mMの緩衝化していないトリス塩基を各凹部に添加し、5分間攪拌した。その後、各凹部内液につき波長490nmにおける吸光度を測定した。この結果から得られる所定時間培養後の細胞数に対する初期細胞数の割合を増殖抑制率(%)とした。
実施例1,2の各実施例の組成物についての結果を表1?2に示す。これらの表1及び2に示すように、実施例1の組成物は、原液?16倍希釈液において、顕著なK562細胞系列の増殖抑制効果を示した。また、実施例2の組成物は、原液?8倍希釈液において、顕著なK562増殖抑制効果を示した。これらのことから、これらの組成物が、抗腫瘍活性があることが示された。また、細片状として抽出することにより、抗腫瘍活性が高いことも示された。
【表1】 K562細胞増殖抑制率(%)

【表2】 K562細胞増殖抑制率(%)

」(第12頁27行?第14頁20行;参照公報段落【0032】?【0037】)
(1-x)「(実施例4)-組成物の酸化還元電位の測定
実施例1の原液及び各希釈組成物について、25℃でインキュベートした場合の24時間後の酸化還元電位(mV)を測定した。酸化還元電位の測定には、酸化還元測定装置(東亜電波工業製、HM-14P、白金電極、比較電極(塩化銀、内部液3.3mol/lKCl)を用い、測定室内温度25℃で測定した。25℃における比較電極の単極電位は206mVであった。電位読みとり値を表3に示す。表3の各電位に206mVを加算したものが酸化還元電位である。
【表3】 酸化還元電位(mV)

すなわち、酸化還元電位は、例えば、1:4希釈の場合には、この明細書で使われているように226mVである。さらに、これら各希釈率の組成物の酸化還元電位と実施例3で測定した細胞増殖抑制率(24時間後)との相関関係を算出したところ、-0.960であり、酸化還元電位と細胞増殖抑制効果とが相関関係にあることがわかった。」(第14頁21行?第15頁15行;参照公報段落【0038】?【0039】)

[引用例2]
(2-i)「【請求項1】 ローヤルゼリー乾燥粉末と、β-グルカンを豊富に含有するキノコのうち1種又は複数種のキノコの乾燥粉末との混合物を含むことを特徴とする健康食品。
【請求項2】 前記キノコがアガリクス茸、山伏茸、チャーガ、霊芝、メシマコブであることを特徴とする請求項1に記載の健康食品。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項2】参照)
(2-ii)「【0008】霊芝はサルノコシカケ科のマンネンタケの一種で、中国では古くから不老長寿の薬として非常に貴重なものとされていた。天然のものは希少であるため、最近では人工栽培が盛んに行われている。β-グルカンを乾燥状態で約10重量%含むキノコである。
【0009】メシマコブはタバコウロコタケ科のこぶ状のキノコで、桑黄(そうおう)とも呼ばれ、漢方では利尿作用の薬として古くから使われていた。長崎県男女群島の女島(めしま)に自生する野生の桑の木に寄生していることからこの名がついたという。抗癌作用が高いキノコで、国立ガンセンターの発表では96.7%という癌増殖阻止率を示している。
【0010】一般に、キノコが抗癌作用を示すのは、キノコに含まれているβ-グルカンをはじめとする多糖類が、生体の免疫力を高めて癌細胞の生育を阻止することによるといわれている。また、自然治癒力が向上するため、炎症を抑えたり、発癌物質を除去する効果もあるとされている。」(段落【0008】?【0010】参照)
(2-iii)「【0024】このようにして得られたローヤルゼリー乾燥粉末と3種類のキノコの乾燥粉末を、2:1:1:1の重量比で配合し、30分間攪拌混合して均一な健康食品を得る。ここでは、キノコの選び方の異なる3通りの健康食品A?Cを示す。
【0025】健康食品A:ローヤルゼリーと霊芝とメシマコブとアガリクス茸
健康食品B:ローヤルゼリーと霊芝とメシマコブとチャーガ
健康食品C:ローヤルゼリーと霊芝とメシマコブと山伏茸
本発明に係る別の実施例の健康食品2は、FD(フリーズドライ)製法によるローヤルゼリー乾燥粉末と、アガリクス茸、山伏茸、チャーガ、霊芝、メシマコブのうち3種のキノコの菌糸体培溶液乾燥粉末とからなる。
・・・中略・・・
【0030】試験の検体として、5週齢のICR/Slc系のメスのマウス8匹ずつをA?Oの15群用意して行なった。各群の内容は、以下の通りである。
【0031】A?M群の検体には、移植後7日目のマウスから採取したSarcoma180癌細胞を移植し、24時間後から投与を始めた。N群(担癌マウス)とO群(正常マウス)は対照群である。
【0032】また、すべての群の検体に対し、体重1kg当り500mgの以下の食品を、1日2回(朝、夕)、連日20間、胃ゾンデを用いて経口投与した。
【0033】
A群:本発明に係る健康食品A
B群:本発明に係る健康食品B
C群:本発明に係る健康食品C
D群:本発明に係る健康食品D
E群:本発明に係る健康食品E
F群:本発明に係る健康食品F
G群:ローヤルゼリー乾燥粉末のみ
H群:霊芝乾燥粉末のみ
I群:霊芝菌糸体乾燥粉末のみ
J群:アガリクス茸乾燥粉末のみ
K群:アガリクス茸菌糸体乾燥粉末のみ
L群:メシマコブ乾燥粉末のみ
M群:メシマコブ菌糸体乾燥粉末のみ
N群:生理食塩水のみ
O群:生理食塩水のみ
移植21日目に各検体の癌の大きさを測定し、対照群であるN群と比較した癌抑制率を各群において算出した。
【0034】癌抑制率(%)=(1-T/C)×100
ただし、T:各試験群A?Mの癌の平均面積。
【0035】C:対照群Nの癌の平均面積。
【0036】また、移植21日目における癌完全消失率およびマウス生存率も算出した。その結果は以下のとおりである。
【0037】 【表1】

この結果から明らかなように、ローヤルゼリーとβ-グルカンを豊富に含有するキノコとを混合した本発明に係る健康食品A?Fは、従来の健康食品G?Mに比べて癌抑制率や癌完全消失率、生存率が高くなっており、抗癌作用が強化されていると言える。これは、ローヤルゼリーとキノコの抗癌作用の相乗効果によるものと思われる。」(段落【0024】?【0037】参照)

[引用例3]
(3-i)「【請求項1】 アガリクス、メシマコブ、及びプロポリスから成る群から選択される1種を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。」(【特許請求の範囲】の【請求項1参照)
(3-ii)「【0002】
【従来の技術】近年、細胞に酸素が呼吸過程で生じるほか、放射線や紫外線の照射、発ガン物質の代謝過程等で生じる「活性酸素」が、不飽和脂肪酸と反応して過酸化脂質を生じ、人体に悪影響を及ぼすことが明らかになってきている。活性酸素とは、水や酸素から生成し、不安定な不対電子を持つ反応性に富んだ分子種であり、一般には、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素の4種をいう。活性酸素は、多すぎると生体成分である脂質やタンパク、核酸等の酸化障害を引き起こし、ガンや動脈硬化、糖尿病等の疾病の原因になり、老化促進にもつながる。このように、活性酸素は生体に悪影響を及ぼすゆえ、これを消去する作用を有する抗酸化物質が近年注目されており、数多くの報告がある。最も名高いのは、・・・(後略)。」(段落【0002】参照)
(3-iii)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アガリクス、メシマコブ、プロポリスについて優れた活性酸素消去作用を有することを新たに見出すとともに、アガリクスの抗酸化性と、メシマコブ、プロポリス、クロレラの抗酸化性とは互いに異なり、それらを組みあわせると互いの抗酸化作用を相補・相加的に増強できることをも見出し、本発明を完成させるに至った。」(段落【0005】参照)
(3-iv)「【0008】メシマコブの調製
メシマコブ(Phellinus linteus)は、担子菌類サルノコシカケ科に属し、同じくβ-D-グルカンを最も多く含むキノコであり、桑黄キノコとも呼ばれている。β-D-グルカンは免疫細胞と関連のある物質として注目されているため、メシマコブは東方アジア諸国においては健康維持成分として飲食用にされている。本発明の抗酸化剤に使用する抗酸化成分は、上記メシマコブの子実体または菌糸体であって、自然界から採取される天然品、あるいは人工的にタンク培養した培養品のいずれであってもよい。子実体または菌糸体は微粒子に粉砕したものを用いることが好ましいが、熱水抽出し、凍結乾燥したものを用いてもよい。」(段落【0008】参照)
(3-v)「【0018】本発明の抗酸化剤を含有した医薬組成物は、紫外線、生体内食細胞、放射線、化学物質、タバコ、ストレス等により必要以上に生じた活性酸素が関わるとされている各種疾患、例えば、糖尿病合併症、心筋梗塞、動脈硬化、肺炎、喘息、脳梗塞、パーキンソン病、胃潰瘍、各種の悪性腫瘍、肝炎、膵炎、腎炎、アトピー性皮膚炎、膠原病、関節リウマチ、高コレステロール血症、白内障、不定愁訴(冷え性、腰痛、肩こり、便秘)、ベーチェット症候群、クローン病、レイノー病、顔面色素異常沈着症(しみ、そばかす)等の予防・治療に有効である。」(段落【0018】参照)

(2-3)対比、判断
引用例1には、上記「(2-2)[引用例1]」の摘示した記載によれば
(あ)抗腫瘍活性を示す(摘示(1-i)の請求項11など参照)、「担子菌類サルノコシカケ科に属する1種類以上の担子菌の抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根の抽出成分、とを含有する組成物」(摘示(1-i)の請求項1を参照)の発明が開示されていて、
(い)該「担子菌類サルノコシカケ科に属する1種類以上の担子菌」としては、「マンネンタケ(Ganodrma Lucidum)および/またはカワラタケ(Coriolus versicolor)」とされ、「ウコギ科に属する植物」としては、「薬用ニンジン」であるとされている。そして、実施例では、「マンネンタケ( Ganoderma Lucidum)の子実体、カワラタケ(Coriolous Versicolor)の子実体、及びチクセツニンジン(Panax japonicus C.A. Meyer)の根を用いた」(摘示(1-ix)の実施例1参照)とされ、その抽出組成物に抗腫瘍活性があることがデータで示されていて、また、
(う)該「Ganoderma Lucidum」は、「Reishi Fungus」であるとの説明がある(摘示(1-iii)参照)。
そうすると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。
<引用例1発明>
「抗腫瘍活性を示す組成物であって、
Reishi Fungus(レイシ)の子実体の抽出成分と、
Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分と、
チクセツニンジンの根の抽出成分と、
を、含有する組成物。」

そこで、本願補正発明と引用例1発明を対比する。
引用例1発明の「抗腫瘍活性を示す組成物」は、生理活性組成物といえ、本願補正発明でも、抗腫瘍活性をその例として説明していることに鑑みると、本願補正発明の「生理活性組成物」に相当する。

してみると、両発明は、
「生理活性組成物(抗腫瘍活性)であって、
(a)Reishi Fungus(レイシ)の子実体の抽出成分と、
(b)Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分と、
(c)チクセツニンジンの根の抽出成分と、
を、含有する組成物。」
で一致し、次の相違点で相違する。
<相違点>
本願補正発明では、「(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分」を必須成分としているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点

そこで、この相違点について検討する。
引用例2には、メシマコブが抗癌作用が高い(国立ガンセンターの発表で96.7%の癌増殖阻止率)ことが知られていると明示されている(摘示(2-ii)参照)し、霊芝(レイシ)やメシマコブに癌抑制作用(即ち、抗腫瘍活性)があることがデータで示されていて、同様に癌抑制作用があるローヤルゼリーと併用すると、単独で使用する場合に比べ併用によって、その癌抑制作用が強化されることが示されている(摘示(2-i)?(2-iii)参照)。また、引用例3には、メシマコブが抗酸化作用を有することが明らかにされており、その抗酸化作用によって、活性酸素によって引き起こされるガンなどの疾病の治療・予防に有効であることが示されている(摘示(3-i)?(3-v)参照)。
そうすると、メシマコブが抗腫瘍作用を有することが知られているのであるから、引用例1発明の抗腫瘍活性を有する組成物と併用することによって、少なからず、その抗腫瘍活性を強化できると当業者が考えるのは当然のことといえる。現に、引用例2においても、癌抑制作用があるローヤルゼリーとメシマコブを併用して抗癌作用の強化を図っていることからも、薬剤の併用が検討されていることが明らかである。
よって、引用例1発明の生理活性(例えば、抗腫瘍活性)組成物において、さらに抗腫瘍活性のあるメシマコブを併用してみることは、当業者に格別の創意工夫を要するものとは言えない。

(作用効果について)
ここで、その併用によって、予想を超える優れた作用効果が奏されているか検討する。
本願明細書を検討しても、酸化還元電位についてはデータが示されているが、生理活性については、種々の作用があるとされているだけで、その活性データは何も示されていない。
なるほど、本願明細書には、米国特許第6746675号によって、処方液5(レイシとカワラタケとチクセツニンジンの抽出混合組成物)に抗腫瘍作用、血糖値低下作用、コレステロール低下作用が確認されていることがわかっている旨が記載されている(本願の国際公開であるWO2005/077395号の第14頁参照)が、本願補正発明がその処方液5より優れていること示す活性データは何も記載されていない。むしろ、本願明細書には、その米国特許第6746675号明細書(当審注:引用例1のパテントファミリーに相当する)に記載されている程度の、担子菌類とウコギ科植物の併用によって抗腫瘍活性などの生理活性を発現する有効な酸化還元電位を呈することを見出した(同書第2頁1?5行参照)とか、本願補正発明の組成物が各単独の成分の抗腫瘍活性に比して予想外に高いと説明されている(同書第10頁12?14行参照)などの記載を見出せるにすぎない。

この点について、審判請求人は、審判請求理由において、「(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分」の有る場合と無い場合を対比した次のデータを提示している(回答書において誤記であるとしている点も併記した。)。しかし、そもそも本願明細書には、そのデータで釈明するための明示的な記載はなく、そもそも勘案すべきか疑義があるが、念のために検討する。
『(1)実験方法
(a)処方液の調製
処方液1の調製
乾燥したレイシ子実体、乾燥したカワラタケ子実体、乾燥したチクセツニンジンの根及び乾燥したメシマコブ子実体を、各6g合計18g(当審注:回答書において「各2g合計8g」と訂正)採取して配合し、それぞれ5mm角以下に細断し、イオン交換水(純度1μS/cm以下)を1000ml添加して、還流凝縮器を用いて、還流しながら2時間煮沸して抽出した。抽出後、ろ過を行い、処方液1とした。
処方液5の調製
乾燥したレイシ子実体、乾燥したカワラタケ子実体及び乾燥したチクセツニンジンの根を、各2g合計8g(当審注:回答書において「各6g合計18g」と訂正)採取して配合し、それぞれ5mm角以下に細断し、イオン交換水(純度1μS/cm以下)を1000ml添加して、還流凝縮器を用いて、還流しながら2時間煮沸して抽出した。抽出後、ろ過を行い、処方液5とした。
(b)腫瘍細胞増殖抑制試験
K-562株懸濁液(2.7×10^(4)細胞/ml)に対してそれぞれ外添で5%量の処方液を添加して、K-562株の増殖抑制試験を行った。一定時間経過ごとに増殖抑制率を計測した。なお、増殖抑制率は100%を下回るほど抑制効果がある。結果を以下に示す。

以上のとおり、処方液1が高い腫瘍細胞増殖抑制効果を示しました。また、腫瘍細胞懸濁液には各処方液を同量(5%量)を添加しているので、腫瘍細胞に供された原料濃度でみると、処方液1は、処方液5の半分以下(8/18(1/2.25))であるので、実際の原料重量あたりの増殖抑制率の差は、さらに大きいといえます』

そこで、誤記が訂正されたものとして検討を進める。
(イ)先ず、請求人は、「なお、増殖抑制率は100%を下回るほど抑制効果がある。」と主張(回答書でも強調)している。
しかし、増殖抑制率をどのように測定したのかその定義すら示されていないのであり、増殖抑制率は大きいほど(100%に近いほど)抑制効果があると理解するのが技術常識である。例えば、本願発明者・出願人と同一人による発明を記載した引用例1を検討すると、抗腫瘍活性のデータについて、「所定時間培養後の細胞数に対する初期細胞数の割合を増殖抑制率(%)とした」(摘示(1-ix)参照)と記載し、この記載からは増殖抑制率が大きいほど(100%に近いほど)抑制効果があると理解できるし、得られた表1,2のデータも、K562細胞増殖抑制率は、100%に近い方が効果があると説明されている(摘示(1-ix)参照)ように、前述の技術常識と同じ解釈がされているのであって、前記主張するような解釈はなされていないことをも併せ考えると、前記請求人の主張する解釈は採用できるものではない。
そうすると、処方液5の方が処方液1よりも増殖抑制率が良いのであるから、メシマコブの子実体の抽出物を配合したことによって、抗腫瘍活性が優れているとは解することはできない。
(ロ)次に、処方液5の処方(訂正後)は、引用例1の実施例1に記載された組成物の調製では、レイシ子実体、カワラタケ子実体、チクセツニンジンの根の各6gの混合物から抽出(5mm角程度に裁断し、イオン交換水で還流2時間、その後にろ過して処方液・組成物としている点でも同じ)している点で、その実施例1の組成物と同じと解されるところ、引用例1の実施例1ではイオン交換水500mlで抽出しているのに対し、上記処方液5ではイオン交換水1000mlで抽出しているので、引用例1における1/2に希釈したものに相当すると解するのが相当である。しかし、引用例1には、1/16に希釈したものであっても、K562細胞増殖抑制率は、72時間後にも97%を保っている(表1参照)のであり、審判請求時に提示されたデータとは明らかに齟齬している。ただ、K562(株)に対する抽出物の相対量が両者で必ずしも、一致しているわけではないが、追試データでは、2.7×10^(4)細胞/mlに対し5%の処方液、一方引用例1の150μl(20×10^(3)細胞、即ち2.0×10^(4)細胞)に対し組成物50μlであるところ、1mlの5%は50μlであり、その50μlを一致点として、引用例1を1として比べると追試データは、K562細胞数が1.35倍(=2.7/2.0)、K562細胞濃度は約1/4倍[=(2.7×10^(4)細胞/(1+0.05)ml)/(2.0×10^(4)細胞/(0.15+0.05)ml)]で、処方液の抽出物濃度が約8倍(1/2希釈と1/16希釈)であることに鑑みて、前記判断を左右するほどのものとは言えない。また、引用例1の表1では、1日後(24時間後)でも3日後(72時間後)でも増殖抑制率に殆んど変化はない点でも、追試データは齟齬している。そうすると、審判請求理由で提示された上記追試データは、その信憑性に欠けると言わざるを得ない。
(ハ)更に、誤記の訂正により処方液5は、本願明細書に記載された処方液5と同じになったものと認められるが、処方液1は、本願明細書に記載された処方液1とはその配合量が大きく異なっている点(各2gに対し各6g)でも疑義が残る。ただ、より不利な条件で使用したと言える可能性もあるが、処方液1の方が効果が劣るのであるから当然のことと言う他ない。
(ニ)したがって、請求人の追試データを根拠とした前記主張は採用できるものではない。

ところで、本願明細書では、本願補正発明の組成物は、酸化還元電位が時間の経過にかかわらず安定し優れている旨が記載されている。しかし、安定したことによってどのような利点があるのかは明確にされていないところ、前述の実験データの提示(審判請求理由)で、増殖抑制率が優れている旨を主張したが、上記のとおり採用できるものではないし、他に格別予想外に優れていると解すべき理由も見いだせない。
そもそも、引用例1では、本願補正発明と同様に、調製時の水溶液の酸化還元電位が+330mV以下であることが推奨されているし、酸化還元電位が低いほど抗腫瘍活性が高くなる旨が記載されている。しかも、希釈されるほどに、その酸化還元電位は大きくなっているのである(摘示(1-x)の表3参照;24時間後、1/4希釈で216mV,1/32で385.7mVなど)から、単に配合成分が特定されているだけで、その使用量、濃度が特定されていなことに鑑み、任意の使用量、濃度において本願明細書の表2で示されるような結果が得られるか否か不明であると言うしかない。また、レイシ子実体、カワラタケ子実体、チクセツニンジンの根の各6gの混合物からイオン交換水500mlで抽出した組成物についての、引用例1の実施例4のデータは、1/4希釈,24時間後で酸化還元電位が216mV(なお、226mVとの記載は、206mV+10.0mVが216mVであることから計算ミスであり誤っていることが明白)であるのに対し、本願補正発明の表2のデータは、上記(ロ)で検討したと同様にイオン交換水1000mlで抽出しているものをそのまま使用しているので、処方液5は、1/2希釈に相当し、24時間後(1日後)の酸化還元電位が322mV(1/4希釈だと酸化還元電位が322mVより更に大きくなる)であることは、同一抽出物(レイシ子実体、カワラタケ子実体、チクセツニンジンの根の各6gの混合物)であるにもかかわらず、216mVと322mVと大きく齟齬していることを意味し、そもそもその実験データの信憑性に欠けるといわざるを得ないし、もしそれが誤差範囲だとすると、本願明細書に記載された表2の酸化還元電位は全て誤差の範囲である解する外なくなる。

したがって、本願補正発明が格別予想外の作用効果を奏していると言うことはできない。
よって、本願補正発明は、引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
審判請求と同時にされた平成23年11月16日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成23年7月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるのもと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、前記「2.」の「[理由](1)」の補正前として摘示されたとおりのもの(再摘示は省略する。)であるが、前記「[理由](2)(2-1)」で示した同様な理由により、本願発明は、次の様に認定できる。
「【請求項1】
生理活性組成物であって、
(a)Reishi Fungus(レイシ)の子実体の抽出成分と、
(b)Coriolus Versicolor(カワラタケ)の子実体の抽出成分と、
(c)チクセツニンジンの根の抽出成分と、
(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分又はAgrics blazei Murill(アガリクス)の子実体の抽出成分と、
を、含有する組成物。」

(2)引用例
原査定の拒絶理由に引用される引用例とその記載事項は、前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(3)対比、判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「(d)の成分について」、「(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分」との限定事項に、「又はAgrics blazei Murill(アガリクス)の子実体の抽出成分」との選択肢を追加したものである。

そうすると、(d)の成分について「(d)Phellinus linteu(メシマコブ)の子実体の抽出成分」との選択肢を選択した場合の本願発明と一致する本願補正発明が、前記「2.[理由](3)」に記載したとおり、引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-01 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-20 
出願番号 特願2005-518074(P2005-518074)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 渕野 留香
天野 貴子
発明の名称 生理活性組成物及びその製造方法  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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