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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1283844
審判番号 不服2013-5006  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-15 
確定日 2014-02-04 
事件の表示 特願2012-134066「移動体通信システム、移動体通信方法、ゲートウェイ、及びHomeeNodeB」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-170162、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年3月19日(国内優先権主張 特願2009-068727号 平成21年3月19日、 特願2009-159214号 平成21年7月3日)を国際出願日とする国際出願である特願2011-504764号の一部を平成24年6月13日に特願2012-134066号として新たな特許出願としたものであって、平成24年7月2日付けで拒絶理由が通知されたのに対して、平成24年9月7日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成24年9月27日付けで最後の拒絶理由が通知されたのに対して、平成24年12月3日付けで意見書が提出され、平成24年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年3月15日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
移動端末とネットワークとを接続する移動体通信システムであって、
前記移動端末と、
前記移動端末と無線で通信を行うHome eNode Bと、
前記ネットワークへの中継を行うゲートウェイと
を備え、
前記移動端末の認証を、キャリア網に設置されたMobility Management Entityで行うと共に、前記ゲートウェイと前記Home eNode Bとを同じ装置内に共存させて、これらの間で通信を行うことで、前記移動端末から送信された通信を、前記キャリア網内のノードを経由することなく、前記Home eNode Bから前記ゲートウェイを介して、前記ネットワークに送信するようにした
ことを特徴とする移動体通信システム。」


第3.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊 行 物 一 覧

1.特開2001-320424号公報
2.特開2006-287705号公報
3.特開2006-053673号公報
4.国際公開第2008/136422号
5.国際公開第2009/002841号


第4.当審の判断

1.引用発明
刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(a)段落番号【0028】-【0030】
「【0028】図2は本実施例の携帯無線端末を使用した通信システムの概要を表わしたものである。本実施例の携帯無線端末201は、基地局221を介してインターネット網222上のWWW(world wide web)サーバ223に接続できるようになっている。本実施例で基地局221は、パケット通信ゲートウェイ225と回線交換ゲートウェイ226の2つのゲートウェイを備えている。ここでパケット通信ゲートウェイ225はインターネット網222とパケット通信用の通信路227を介して接続され、WWWサーバ223との間でパケット通信を行うことでデータの送受信を行うために設けられている。これに対して回線交換ゲートウェイ226は、公衆網228に接続され、インターネット接続業者としてのインターネットプロバイダ229を介してインターネット網222に接続されてWWWサーバ223との間で通信を行うようになっている。
【0029】図3は本実施例の無線端末を使用してインターネット上のホームページ(コンテンツ)をアクセスして所望のページをダウンロードする場合の処理の流れを表わしたものである。この処理の前提として、携帯無線端末201は図2に示した基地局221に登録されており初期的にパケット通信網に接続されている。携帯無線端末201のユーザは、アクセスしようとするホームページのURL(Uniform Resource Locator)をその操作部208から入力する(ステップS241)。すると、携帯無線端末201のブラウザ処理部205の前記したCPUはこの入力されたURLを通信制御部204を介して送受信器203に出力する。送受器203は入力されたURLを変調し、アンテナ202からHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)のリクエスト(GET URL HTTP/1.0)
として基地局221に向けて送信する(ステップS242)。
【0030】携帯無線端末201から送出されたこのリクエストは、基地局221のパケット通信ゲートウェイ225に入力され、パケット通信用の通信路227を介してインターネット網222に送出され、該当するURLを有するWWWサーバ223がこれを受け取る(ステップS243)。リクエストを受けたWWWサーバ223はそのURLを記述するHTMLデータをインターネット網222に送出し、パケットデータとしてパケット通信用の通信路227を介して基地局221に送られる(ステップS244)。」

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「携帯無線端末201は、基地局221を介してインターネット網222上のWWW(world wide web)サーバ223に接続できるようになっており、基地局221は、パケット通信ゲートウェイ225と回線交換ゲートウェイ226の2つのゲートウェイを備えており、ここでパケット通信ゲートウェイ225はインターネット網222とパケット通信用の通信路227を介して接続され、WWWサーバ223との間でパケット通信を行うことでデータの送受信を行うために設けられており、
無線端末を使用してインターネット上のホームページ(コンテンツ)をアクセスして所望のページをダウンロードする場合、この処理の前提として、携帯無線端末201は基地局221に登録されており初期的にパケット通信網に接続されていて、携帯無線端末201のユーザは、アクセスしようとするホームページのURL(Uniform Resource Locator)をその操作部208から入力し(ステップS241)、すると、携帯無線端末201のブラウザ処理部205の前記したCPUはこの入力されたURLを通信制御部204を介して送受信器203に出力し、送受器203は入力されたURLを変調し、アンテナ202からHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)のリクエスト(GET URL HTTP/1.0)として基地局221に向けて送信し(ステップS242)、
携帯無線端末201から送出されたこのリクエストは、基地局221のパケット通信ゲートウェイ225に入力され、パケット通信用の通信路227を介してインターネット網222に送出され、該当するURLを有するWWWサーバ223がこれを受け取り(ステップS243)、リクエストを受けたWWWサーバ223はそのURLを記述するHTMLデータをインターネット網222に送出し、パケットデータとしてパケット通信用の通信路227を介して基地局221に送られる(ステップS244)、
移動体通信システム。」

2.本願発明と引用発明の一致点・相違点

引用発明において、基地局221のパケット通信ゲートウェイ225は、パケット通信用の通信路227を介してインターネット網222と接続され、携帯無線端末201は、基地局221を介してインターネット網222上のWWW(world wide web)サーバ223に接続できるようになっているから、引用発明の携帯無線端末201、インターネット網222が、それぞれ、本願発明の「移動端末」、「ネットワーク」に相当し、引用発明と本願発明とは「移動端末とネットワークとを接続する移動体通信システム」である点で一致している。

引用発明の基地局221と本願発明の「Home eNode B」とは、「前記移動端末と無線で通信を行う基地局」である点で一致している。
引用発明のパケット通信ゲートウェイ225が、本願発明の「前記ネットワークへの中継を行うゲートウェイ」に相当する。

引用発明では、パケット通信ゲートウェイ225と基地局221とは、基地局221という一つの装置内に共存していると言える。
引用発明の携帯無線端末201から基地局221、パケット通信ゲートウェイ225及びパケット通信用の通信路227を経由してインターネット網222に至る経路には、キャリア網のノードが存在していない。
したがって、引用発明と本願発明とは「前記ゲートウェイと前記基地局とを同じ装置内に共存させて、これらの間で通信を行うことで、前記移動端末から送信された通信を、キャリア網内のノードを経由することなく、前記基地局から前記ゲートウェイを介して、前記ネットワークに送信するようにした」点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「移動端末とネットワークとを接続する移動体通信システムであって、
前記移動端末と、
前記移動端末と無線で通信を行う基地局と、
前記ネットワークへの中継を行うゲートウェイと
を備え、
前記ゲートウェイと前記基地局とを同じ装置内に共存させて、これらの間で通信を行うことで、前記移動端末から送信された通信を、前記キャリア網内のノードを経由することなく、前記基地局から前記ゲートウェイを介して、前記ネットワークに送信するようにした
ことを特徴とする移動体通信システム。」である点。

[相違点1]
移動端末と無線で通信を行うものが、本願発明では、Home eNode Bであるのに対して、引用発明では、基地局である点。

[相違点2]
本願発明では、「前記移動端末の認証を、キャリア網に設置されたMobility Management Entityで行う」のに対して、引用発明では、携帯無線端末201の認証を、キャリア網に設置されたMobility Management Entityで行っていない点。


3.相違点についての検討

[相違点1について]
刊行物2(特開2006-287705号公報)の図13には、ホーム20内で、ホームゲートウェイ42とDSRC(Dedicated Short-Range Communication:狭域通信)基地局23とが、ホームネットワーク21により接続された構成が開示されている。しかし、この刊行物2の技術を考慮しても、引用発明において、移動体通信の事業者が所有すると認められる基地局221を、ユーザが所有するHome eNode Bに置換する積極的な動機が存在したとは認められない。
刊行物3(特開2006-053673号公報)の図1には、家屋内で、ホームゲートウェイ装置105とホーム無線基地局装置107とが、ホームネットワークにより接続された構成が開示されている。しかし、この刊行物3の技術を考慮しても、引用発明において、移動体通信の事業者が所有すると認められる基地局221を、ユーザが所有するHome eNode Bに置換する積極的な動機が存在したとは認められない。

[相違点2について]
刊行物4(国際公開第2008/136422号)ないし5(国際公開第2009/002841号)に示されているように、LTEでは、MME(Mobility Management Entity)で端末の認証をすることが周知である。しかし、引用発明はLTEではなく、また引用発明における通信は、キャリア網に接続することなく行われているから、引用発明において、敢えてキャリア網に設置されたMMEで携帯無線端末201の認証を行うステップを設ける必然性も、積極的な動機もなかったものと認められる。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-22 
出願番号 特願2012-134066(P2012-134066)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石原 由晴  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 佐藤 聡史
加藤 恵一
発明の名称 移動体通信システム、移動体通信方法、ゲートウェイ、及びHomeeNodeB  
代理人 森 隆一郎  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松尾 直樹  

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