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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) E04D |
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管理番号 | 1284191 |
判定請求番号 | 判定2013-600030 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2013-09-06 |
確定日 | 2014-02-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3764660号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「雪止め金具」は、特許第3764660号発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求の趣旨と手続の経緯 本件審判請求の趣旨は、判定請求書に添付したイ号物件説明書に示す「雪止め金具」(以下「イ号物件」という。)は、特許第3764660号発明の技術的範囲に属する、との判定を求める、ものである。 これに対して、当審において平成25年9月26日付けで被請求人に判定請求書副本を送達するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたところ、同年10月29日付けで判定請求答弁書が提出された。 なお、本件特許は請求人の所有する特許であり、イ号物件は被請求人が製造していると請求人が主張しているものである。 第2 本件特許発明 本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、当該明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件特許発明」という。)を、構成要件ごとに分説すると、次のとおりである。 「【請求項1】 A 雪止め板又は雪止め装着部の何れかからなる雪止め部の背後に、背面下板を連設すると共に、 B 前記背面下板が、挟圧下部と、挟圧下部が上方に位置する段差を介した瓦下方差込部と、瓦下方差込部の尾端を跳ね上げて引掛部とを備え、 C 前記背面下板と対面する挟圧上部と、前記挟圧上部が下方に位置する段差を介して連続する瓦抑え部とを備えた背面上板を設け、 D 対面させた挟圧下部と挟圧上部を貫通する挟圧ボルトを装着してなる E ことを特徴とする瓦屋根用雪止め金具。」 第3 イ号物件 1.イ号物件説明書には、[構造の説明]に以下の記載がある。 「[構造の説明] イ号物件は、金具本体と背面上板(3)とからなり、金具本体は、雪止め板部(11)を備えた雪止め板(1)の背後に、背面下板(2)を連設している。前記背面下板(2)は、前方下板部(25)、前方段差(26)、前方段差(26)を介して上方位置とした挟圧下部(21)、後方段差(23)、後方段差(23)を介して挟圧下部(21)が上方位置となる瓦下方差込部(22)、瓦下方差込部(22)の端部を跳ね上げた引掛部(24)を連続して形成している。また挟圧下部(21)には、挟圧ボルト(4)を直立固定させている。 背面上板(3)は、段差(33)を介して挟圧上部(31)と瓦抑え部(32)とを形成している。また前記挟圧上部(31)には、長ボルト孔(34)を穿設し、側縁に折曲ガイド(35)を設けている。この背面上板(3)は、挟圧ボルト(4)を長ボルト孔(34)に挿通し、挟圧上部(31)と挟圧下部(21)、及び瓦抑え部(32)と瓦下方差込部(22)とを対面させ、挟圧ボルト(4)に緊締ナット(5)を螺合して背面下板(2)に装着している。」との記載がある。 2.被請求人が提出した判定請求答弁書には、「8.3.1 イ号物件の構成」に以下の記載がある。 「8.3.1 イ号物件の構成 (1)雪止め板から成る雪止め部の背面中央部に背面下板の前端部を連結する。 (2)前記背面下板の中央から後側部には、その前後両部においてそれぞれ上り段差部を介して中空間部(凸段形部)を形成し、後部段差部からは瓦下方差込部と引掛部を形成する。 (3)前記背面下板の後側部の中空間部(凸段形部)上に対面する上部調整部と、この上部調整部の後側部に上り段差部を形成して水平に延長する瓦抑え部とを備えて成る背面上板を設ける。 (4)上下に対面した背面下板の後側部と背面上板の上部調整部との間を連結する螺子を上部調整部の長孔に挿通し上部調整部を前後に作動して緊締し、上部調整部の左右両側部には折曲ガイドを設ける。 (5)瓦屋根雪止め金具。」 3.イ号物件の特定 イ号物件説明書の[イ号物件の図面(写真代用)]に示されるイ号物件は、被請求人が主張する上記2.の記載を中心にして、各構成ごとに分説して記載すると次のとおりである。(なお、「引掛部」については、判定請求答弁書6頁15?16行の記載の「このように、イ号は、瓦下方差込部と引掛部との構成を具備している点では本件発明1の一部分と同じではあるが、」との主張を参酌して、上記1.の記載も援用した。当該援用箇所については、下線参照。) 「a 雪止め板(1)から成る雪止め部の背面中央部に背面下板(2)の前端部を連結する。 b 前記背面下板(2)の中央から後側部には、その前後両部においてそれぞれ上り段差部(23)(26)を介して中空間部(凸段形部)(21)を形成し、後部段差部(23)からは瓦下方差込部(22)と、瓦下方差込部(22)の尾端を跳ね上げて引掛部(24)を形成する。 c 前記背面下板(2)の後側部の中空間部(凸段形部)(21)上に対面する上部調整部(31)と、この上部調整部(31)の後側部に上り段差部(33)を形成して水平に延長する瓦抑え部(32)とを備えて成る背面上板(3)を設ける。 d 上下に対面した背面下板(2)の後側部と背面上板(3)の上部調整部(31)との間を連結する螺子(4)を上部調整部(31)の長孔(34)に挿通し上部調整部(31)を前後に作動して緊締し、上部調整部(31)の左右両側部には折曲ガイド(35)を設ける。 e 瓦屋根雪止め金具。」 第4 属否の判断 1.本件特許発明とイ号物件の対比・判断 (1)構成要件Aについて イ号物件の「雪止め板(1)から成る雪止め部」、「雪止め部の背面中央部」、「背面下板(2)」は、それぞれ本件特許発明の「雪止め板からなる雪止め部」、「雪止め部の背後」、「背面下板」に相当するから、イ号物件の「雪止め板(1)から成る雪止め部の背面中央部に背面下板(2)の前端部を連結する」は、本件特許発明の「雪止め板又は雪止め装着部の何れかからなる雪止め部の背後に、背面下板を連設すると共に、」に相当する。 したがって、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足している。 (2)構成要件Bについて イ号物件の「上り段差部(23)(26)」のうちの「後部段差部(23)」、「中空間部(凸段形部)(21)」、「瓦下方差込部(22)」、「引掛部(24)」は、それぞれ本件特許発明の「段差」、「挟圧下部」、「瓦下方差込部」、「引掛部」に相当する。 イ号物件の「中空間部(凸段形部)(21)」は、「その前後両部においてそれぞれ上り段差部(23)(26)を介して」形成されるもので、その「後部段差部(23)からは瓦下方差込部(22)」「を形成」していることからすると、イ号物件の「中空間部(凸段形部)(21)」は、「後部段差部(23)」を介して「瓦下方差込部(22)」よりも上方に位置しているものと認められる。 そうすると、イ号物件の「前記背面下板(2)の中央から後側部には、その前後両部においてそれぞれ上り段差部(23)(26)を介して中空間部(凸段形部)(21)を形成し、後部段差部(23)からは瓦下方差込部(22)と、瓦下方差込部(22)の尾端を跳ね上げて引掛部(24)を形成する」は、本件特許発明の「前記背面下板が、挟圧下部と、挟圧下部が上方に位置する段差を介した瓦下方差込部と、瓦下方差込部の尾端を跳ね上げて引掛部とを備え、」ることに相当するので、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足している。 (3)構成要件Cについて イ号物件の「上部調整部(31)」、「背面上板(3)」の「上り段差部(33)」、「瓦抑え部(32)」、「背面上板(3)」は、それぞれ本件特許発明の「挟圧上部」、「段差」、「瓦抑え部」、「背面上板」に相当する。 イ号物件の「瓦抑え部(32)」は、「上部調整部(31)の後側部に上り段差部(33)を形成して水平に延長する」ものであるので、「瓦抑え部(32)」は「上部調整部(31)」よりも上部に位置し、「上部調整部(31))」、「上り段差部(33)」、「瓦抑え部(32)」は連続して形成されるものと認められる。 そうすると、イ号物件の「前記背面下板(2)の後側部の中空間部(凸段形部)(21)上に対面する上部調整部(31)と、この上部調整部(31)の後側部に上り段差部(33)を形成して水平に延長する瓦抑え部(32)とを備えて成る背面上板(3)を設け、」は、本件特許発明の「前記背面下板と対面する挟圧上部と、前記挟圧上部が下方に位置する段差を介して連続する瓦抑え部とを備えた背面上板を設け、」に相当するので、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足している。 (4)構成要件Dについて イ号物件の「螺子(4)」は、本件特許発明の「挟圧ボルト」に相当する。 上記cの記載を参照すると、イ号物件の「上部調整部(31)」は、「背面下板(2)の後側部の中空間部(凸段形部)(21)上に対面する」ので、イ号物件の「上下に対面した背面下板(2)の後側部と背面上板(3)の上部調整部(31)」の「背面下板(2)の後側部」とは、「背面下板(2)の後側部の中空間部(凸段形部)(21)」の意味である。 そうすると、イ号物件の「上下に対面した背面下板(2)の後側部と背面上板(3)の上部調整部(31)との間を連結する螺子(4)を上部調整部(31)の長孔(34)に挿通し」「て緊締し、」は、本件特許発明の「対面させた挟圧下部と挟圧上部を貫通する挟圧ボルトを装着してなる」に相当するから、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足している。 (5)構成要件Eについて イ号物件の構成eは、明らかに本件特許発明の構成要件Eを充足している。 (6)被請求人の主張に対して ア 被請求人は、判定請求答弁書「10. 10.1」において、 「これに対して、イ号物件にあっては、『背面下板の中央から後側部には、その前後両部においてそれぞれ上り段差部を介して中空間部(凸段形部)を形成し、後部段差部からは瓦下方差込部と引掛部を形成し』ているものである。 このように、イ号は、瓦下方差込部と引掛部との構成を具備している点では本件発明1の一部分と同じではあるが、それに至るまでの背面下板の中央から後側部において、その前後両部にそれぞれ上り段差部を設けるとともに中空間部(凸段形部)を形成している点では全く違う構成である。」と、構成上の相違点を主張し、 同じく「屋根瓦への取付け作業員は、瓦板の山峰部の適位置に本金具の背面下板の中央から後側部をそれぞれ挿入した後、前記螺子上のナットを緊締するが、これによって瓦板の山峰部面に接していた比較的長尺の背面下板の前側部分の左右両側端部は全面的に、また後側部分の瓦下方差込部の底面部は全面的に密着するようになり、この背面下板の前後両側部分に対しては、その間にある凸面形状に成る前後両上り段差部分の中空間部が、螺子による緊締によって起こされる緊張力によって、背面下板はその前側部分も後側部分も完全に瓦板に上下方向から定着して固定するようになるのである。 これに対し、本件発明1にあっては、その図3に見られるように、挟圧下部21を含む背面下板2の瓦板面との密接関係はきわめて弱体であるから、イ号が発揮している以上のような作用、及び効果を期待することはできないのである。」と、作用効果の違いについても主張している。 イ また、被請求人は、判定請求答弁書「10. 10.1」において、 「前記背面下板の後側部の中空間部の中央に突設している螺子が、上部に載置する背面上板の上部調整部の長孔に挿通しているのである。」と構成の相違点を、 さらに「8. 8.3.2」において、 「第2に、上部調整部によって上段瓦板との抑止部分の長さを調整することによって自由な加圧抑止をすることができるようにしている。」との作用効果を主張している。 ウ しかしながら、イ号物件が、「背面下板(2)の中央から後側部には、その前後両部においてそれぞれ上り段差部(23)(26)を介して中空間部(凸段形部)(21)を形成し」たことや、「上部調整部(31)の長孔(34)」との付加的な構成を備えるとしても、それらの付加的な構成は、本件特許発明の意義とは直接関係が無く、そしてイ号物件のその他の構成によって、本件特許発明と同様の機能(本件特許公報の段落【0019】に記載された「瓦の先端部分を瓦下方差込部と瓦抑え部とで挟持して瓦屋根に固定するもので、瓦の一部を剥がすことなく取付可能としたものである。」こと。)を発揮するものと認められる。 よって、両発明における本質的な機能に格別の相違はなく、上記ア及びイの主張は、本件特許発明とイ号物件の充足関係の判断に影響しない。 エ さらに上記アの主張について、乙第1号証を参照しながら検討する。 確かに中空間部(凸段形部)(21)の前側の上り段差部は、瓦板の山峰部面に接しており、背面下板(2)の一部が瓦板を抑えているかもしれない。 これに対し、本件特許発明の背面下板が瓦板に接しているか、また抑えているかは不明であるものの、本件特許公報の【図2】、【図3】を参照すると、雪止め板の設置板部(折曲面)12は、瓦板面と接している実施例も記載されており、少なくとも積雪時には、その積雪の重みにより背面下板が下がってきて、雪止め板部の設置板部(折曲面)12が瓦板に接し抑えるものと認められる。とすれば、本件特許発明とイ号物件とは、共に金具全体でみれば、瓦板に接し抑える機能を有するとも言える。 さらに瓦板の厚みや山峰部の高さ、さらに背面下板と背面上板の上り段差部の高さによって、それらの当接状況は変わってくるので、イ号物件の付加的な構成によって、必ずしも被請求人が主張するような背面下板全体が瓦板を抑えることができるとは言えない。(実際に、乙第1号証を参照すると、雪止め板(1)は瓦板から離れてしまっており、また背面下板(2)の前側部分の全体が接しているとは言い難い。) よって、両発明における本質的な機能に格別の相違はなく、上記アの主張は、本件特許発明とイ号物件の充足関係の判断に影響しない。 (7)小括 したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件A?Eを全て充足するものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2014-01-28 |
出願番号 | 特願2001-203319(P2001-203319) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(E04D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小島 寛史 |
特許庁審判長 |
高橋 三成 |
特許庁審判官 |
中川 真一 住田 秀弘 |
登録日 | 2006-01-27 |
登録番号 | 特許第3764660号(P3764660) |
発明の名称 | 瓦屋根用雪止め装置 |
代理人 | 牛木 理一 |
代理人 | 近藤 彰 |