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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01C
審判 全部無効 2項進歩性  G01C
管理番号 1284467
審判番号 無効2012-800104  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-06-19 
確定日 2014-01-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4416756号発明「ナビゲーション装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 平成25年8月30日付け訂正の請求による訂正を認める。 特許第4416756号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効にする。 特許第4416756号の請求項3ないし6に係る発明についての請求は,成り立たない。 審判費用は,その3分の2を請求人の負担とし,3分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る特許第4416756号についての手続の経緯の概要は,次のとおりである。
・平成18年 5月 9日: 特許出願(特願2006-129934号)。
・平成21年12月 4日: 特許権の設定登録(特許第4416756号)。
・平成24年 6月19日: 本件特許無効審判請求(無効2012-800104号)〈請求人〉。
・平成24年 9月 3日: 答弁書の提出,訂正の請求〈被請求人〉。
・平成24年10月30日: 弁駁書の提出〈請求人〉。
・平成24年12月17日: 審理事項の通知〈審判長〉。
・平成25年 2月 7日: 口頭審理陳述要領書の提出〈被請求人〉。
・平成25年 2月 7日: 口頭審理陳述要領書の提出〈請求人〉。
・平成25年 2月21日: 口頭審理陳述要領書(2)の提出〈請求人〉。
・平成25年 2月21日: 被請求人に対する質問(ファックス)の提示〈審判長〉。
・平成25年 2月26日: 回答(ファックス)の提出〈被請求人〉。
・平成25年 2月28日: 第1回口頭審理。
・平成25年 3月25日: 審決の予告〈審判長〉。
・平成25年 5月24日: 審判事件上申書の提出,訂正の請求〈被請求人〉。
・平成25年 6月 3日: 書面審理の通知〈審判長〉。
・平成25年 7月 4日: 弁駁書2の提出〈請求人〉。
・平成25年 7月19日: 弁駁書2による審判請求書の補正の許可決定〈審判長〉。
・平成25年 7月19日: 訂正拒絶理由の通知〈審判長〉。
・平成25年 8月30日: 答弁書及び意見書の提出,訂正の請求〈被請求人〉。
・平成25年10月17日: 弁駁書3の提出〈請求人〉。
・平成25年11月21日: 審理の終結の通知〈審判長〉。

なお,設定登録された時点で願書に添付されていた明細書,特許請求の範囲及び図面を,以下,それぞれ,「特許査定時の明細書」,「特許査定時の特許請求の範囲」,「特許査定時の図面」といい,また,それら合わせたものを「特許査定時の明細書等」ということとする。

第2 訂正の請求
1 本件訂正請求
被請求人は,平成25年5月24日付けで訂正請求書を提出し,明細書及び特許請求の範囲について訂正することを請求した。
この手続により,平成24年9月3日付け訂正請求書による訂正の請求は,特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされる。
さらに被請求人は,平成25年8月30日付けで訂正請求書を提出し,明細書及び特許請求の範囲について訂正することを請求した(以下,この訂正の請求を「本件訂正請求」という。)。
この手続により,平成25年5月24日付け訂正請求書による訂正の請求も,特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされる。
本件訂正請求の内容は,以下のとおりである(下線部が訂正部分である。)。

(1)請求項1?3からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
特許査定時の特許請求の範囲の請求項1の「移動速度の区分ごとに閾値を設定した閾値テーブルと,」を「移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,」とする。
イ 訂正事項2
特許査定時の特許請求の範囲の請求項1の「急加減速が行われたか否かを判定し,」を「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,」とする。
ウ 訂正事項3
特許査定時の特許請求の範囲の請求項1の「急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とする」を「急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とする」とする。
エ 訂正事項4
特許査定時の特許請求の範囲の請求項2の「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間,回数を含むことを特徴とする」を「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数を含むことを特徴とする」とする。
オ 訂正事項5
特許査定時の特許請求の範囲の請求項3の「前記出力手段にその旨を報知する」を「前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」とする。
カ 訂正事項6
特許査定時の特許請求の範囲の請求項3の「特徴とする請求項1ないし請求項2の何れか1項に記載のナビゲーション装置。」を「特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。」とする。
キ 訂正事項7
特許査定時の明細書の段落【0015】,【0022】の「移動速度の区分ごとに閾値を設定した閾値テーブルと,」を「移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,」とする。
ク 訂正事項8
特許査定時の明細書の段落【0015】,【0022】の「急加減速が行われたか否かを判定し,」を「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,」とする。
ケ 訂正事項9
特許査定時の明細書の段落【0015】,【0022】の「急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する」を「急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する」とする。
コ 訂正事項10
特許査定時の明細書の段落【0018】,【0026】の「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間,回数を含む」を「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数を含む」とする。
サ 訂正事項11
特許査定時の明細書の段落【0019】,【0027】の「請求項1ないし請求項2の何れか1項にかかるナビゲーション装置において,前記加速度判定部は,前記不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知する」を「請求項2にかかるナビゲーション装置において,前記加速度判定部は,前記不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」とする。

(2)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項12
特許査定時の特許請求の範囲の請求項4を
「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,
前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とするナビゲーション装置。 」
とする。
イ 訂正事項13
特許査定時の明細書の段落【0020】,【0028】の「請求項1にかかるナビゲーション装置において,」を「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,」とする。

(3)請求項5に係る訂正
ア 訂正事項14
特許査定時の特許請求の範囲の請求項5を
「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,
前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とするナビゲーション装置。」
とする。
イ 訂正事項15
特許査定時の明細書の段落【0021】,【0029】の「請求項1にかかるナビゲーション装置において,」を「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,」とする。

(4)請求項6に係る訂正
ア 訂正事項16
特許査定時の特許請求の範囲に,
「【請求項6】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,
前記加速度判定部は,前記不適切な急加減速操作を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とするナビゲーション装置。」
を追加する。
イ 訂正事項17
特許査定時の明細書の段落【0021】,【0029】に,それぞれ,「本願の請求項6にかかる発明は,指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,前記加速度判定部は,前記不適切な急加減速操作を判定した場合には,判定を行っている運転中に,前記出力手段にその旨を報知することを特徴とする。」,「また,請求項6にかかる発明においては,指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,前記加速度判定部は,前記不適切な急加減速操作を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す。このような構成によれば,不適切な急加減速操作が行われた場合に利用者に報知し,省エネルギー運転を促すことができるようになる。」という記載を追加する。

2 本件訂正請求の適否について
(1)請求項1?3からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項1について,明細書の段落【0013】,【0035】等を根拠とするものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
請求人は,訂正事項1に対し,弁駁書2,3において「平成24年10月30日付け弁駁書第2頁末行-第3頁15行目で指摘したとおり,特許法第134条の2第1項ただし書き各号のいずれにも該当しません。」と主張する。上記弁駁書の指摘個所には,「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値」とは,閾値を具体的にどのような値に限定したものであるかが不明であるから何らの限定にもなっていない旨記載されている。 請求人はまた,口頭審理期日において,「危険運転の判定のみを行うものが含まれるか否かが不明りょう」である旨主張した(第1回口頭審理調書の記載事項1参照。)。
(イ)当審の判断
・ 訂正事項1は,閾値が,急加減速を判定するための閾値である旨を明らかにすることで,特許請求の範囲を減縮しようとするものといえる。
すなわち,単に「急加減速」といった場合,例えば危険運転に相当するレベルのものも想起し得るのであるから,「急加減速」は必ずしも「省エネルギー運転」の観点から把握されるものには限られない。訂正事項1は,「急加減速」が「省エネルギー運転に影響を与える」ものであることを限定するものと評価できる。
そうであるから,請求人の,「何らの限定にもなっていない」等といった主張は採用することができないし,「危険運転の判定のみを行うものが含まれる」のではないことも明らかというべきである。
したがって,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
・ また, 特許査定時の明細書において説明される閾値テーブルに設定される閾値は,例えば,段落【0013】に「・・・,移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき,急激な加減速操作が適切な操作であるか,不適切な操作であるかを識別して省エネルギー運転支援を行うようになせば上記問題点を解消し得ることに想到して・・・」と記載され,段落【0035】に「・・・,ナビゲーション装置10が搭載された車両の加速度を検出して所定の閾値と比較し,急激な加減速を生じる運転操作がなされたか否かを判定するとともに,・・・」と記載されることからして,「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値」,すなわち訂正事項1は,特許査定時の明細書等から自明な事項といえる。
したがって,訂正事項1は,特許査定時の明細書等の範囲内のものであるから,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
・ 本件各特許発明は,もとより省エネルギー運転を支援することを目的としたものであるから,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず、したがって,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
・ よって,訂正事項1は,訂正要件を充足する。
イ 訂正事項2について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項2について,明細書の段落【0013】等を根拠とするものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
請求人は,弁駁書2,3において,訂正事項1についてと同様の主張をする。
(イ)当審の判断
訂正事項2は,急加減速が行われたか否かの判定に際し,当該急加減速とは省エネルギー運転に影響を与える急加減速である旨を明らかにすることで,特許請求の範囲を減縮しようとするものといえる。
そうすると,「ア 訂正事項1について」で述べたと同様に,訂正事項2は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
また,請求人の弁駁書2,3における主張も,採用できるものではない。
よって,訂正事項2は,訂正要件を充足する。
ウ 訂正事項3について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項3について,明細書の段落【0026】等を根拠とするものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
請求人は,弁駁書2,3において,訂正事項3は概念が不明確であるから特許請求の範囲の減縮にはならず,特許法第134条の2第1項ただし書各号のいずれにも該当しない旨主張する。
(イ)当審の判断
・ 訂正事項3は,請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「急加減速情報」について,「急加減速操作が行われた状況を示す」という発明特定事項を直列的に付加するものであり,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
・ 請求人は,この訂正事項3について,その概念が不明確である旨主張する。
被請求人が説明する訂正事項3の特許査定時の明細書等の記載における根拠個所として段落【0026】が挙げられており,そこには次のように記載されている。
「また,請求項2にかかる発朋においては,請求項1にかかるナビゲーション装置において,急加減速情報は,不適切な急加減速が行われた場所,時間,回数を含む。このような構成によれば急加減速操作が行われた状況を記億し,きめ細かい運転支援を行うことができるようになる。」
この段落【0026】の記載事項からは,急加減速情報は,不適切な急加減速が行われた場所,時間,回数を含み,それにより,急加減速操作が行われた状況を知ることができる,ということを理解することができる。
ところで,この段落【0026】の記載事項からは,個別の急加減速操作を特定するための情報を得ることが意図されているとまでは言うことはできない。すなわち,急加減速が行われた情報のうち“場所”については,個別の急加減速操作に対応するものと考えられるが,“回数”については,何度かの急加減速操作の回数の累計を示すものであり,また,“時間”も“時刻”の意味で用いられているのであれば個別の急加減速操作に対応するものと考え得るのであるが,長さを有する概念の意味ととることもできるのであって,その場合は,個別の急加減速操作に対応するとは限らない。
そうしてみると,段落【0026】の記載事項からすると,訂正事項3に係る「急加減速操作が行われた状況を示す」という字句は,個別の急加減速操作に対応する,或いは,個別の急加減速操作を特定し得る,ということを意味するものとは解せず,明らかに,複数の急加減速操作を合わせたものも含むものである。
そして,特許査定時の段落【0026】以外の明細書等の記載事項をみても,急加減速情報が個別の急加減速操作に対応する,或いは,個別の急加減速操作を特定し得る,という限定された意味に解釈すべきとする根拠は見あたらない。
さらに言えば,本件各特許発明は,省エネルギー運転を支援することを目的としたものであり,“省エネルギー運転”とは,いわば,運転者の運転の傾向について,省エネルギーの観点から評価しようとしたものであるから,それを,個別の運転操作でなく,一定の運転時間内での運転操作をまとめたものと解することにも合理性がある。
そうしたことを踏まえると,訂正事項3に係る「急加減速操作が行われた状況を示す」という字句は,“急加減速が行われた状況に関する”という程度の意味と理解するのが相当である。「状況」とは,日常生活でも良く用いられる日本語であるが,「急加減速操作が行われた状況を示す」という字句にあっても,被請求人が主張するように,辞書的な意味のもの,すなわち「その時,その時のありさま,ようす」という一般的な意味のものとして理解することに何ら問題があるものではない。
したがって,請求人の前記主張を採用することはできない。
・ また,訂正事項3,特にその「急加減速操作が行われた状況を示す」という事項は,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
・ さらに,訂正事項3は,新たな技術的な意義をもたらすようなものとは解せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
・ よって,訂正事項3は,訂正要件を充足する。
エ 訂正事項4について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項4について,「特許査定時の請求項2では,『不適切な急加減速が行われた場所,時間,回数を含むことを特徴とする』と記載していたことで,『場所と時間と回数の全てが含まれているもの』なのか,『場所か,時間か,回数のいずれかが含まれていればよいもの』なのかが明瞭でなかったため,『場所か,時間か,回数のいずれかが含まれていればよいもの』であることを明確にするための訂正」であるから特許法第134条の2第1項ただし書3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,また,「『場所,時間又は回数』が,不適切な急加減速操作が行われた状況を示す『場所,時間又は回数』であることを限定するもの」であるから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,「場所,時間又は回数」については明細書の段落【0045】,【0047】が,また,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す」については明細書の段落【0026】が,それぞれ根拠となる旨説明する。
請求人は,弁駁書2,3において,「『不適切な急加減速操作が行われた状況を示す』とした部分については,特許明細書等には,『急加減速操作が行われた状況』には『場所,時間,回数』が含まれると記載されているのであって,『急加減速操作が行われた状況』を示す『場所,時間,回数』と『急加減速操作が行われた状況』を示さない『場所,時間,回数』とがあるとしているものではありません。」と主張し,訂正事項3と同様に,特許請求の範囲の減縮には当たらず,特許法第134条の2第1項ただし書各号のいずれにも該当しない旨主張する。
請求人はまた,弁駁書2,3において,弁駁書で指摘したとおり,「場所,時間又は回数」とする部分については,特許請求の範囲を拡張するものである旨主張する。弁駁書2で指摘された弁駁書の個所には,訂正前の請求項2は,「場所,時間及び回数」の全てを含む発明であると解釈することができるから,請求項2が急加減速情報が場所のみであるものも含む発明とされる訂正は,特許請求の範囲を拡張する旨記載されている。
(イ)当審の判断
訂正事項4は,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す」とした部分と「場所,時間又は回数」とした部分を含むが,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す」については,訂正事項3として判断したとおりであり,訂正要件を充足する。
そこで,以下,訂正事項4のうちの「場所,時間又は回数」とした部分につき判断する。
a 訂正の目的について
訂正事項4のうちの「場所,時間又は回数」とした部分は,請求項2の「場所,時間,回数」が不明りょうであるとの請求人の無効理由1に応じた訂正であるところ,本件特許発明2では「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間,回数を含むことを特徴とする」と記載していたことで,「場所と時間と回数の全てが含まれているもの」なのか,「場所か,時間か,回数の何れかが含まれていればよいもの」なのかが明瞭でなかったことに鑑み,「場所か,時間か,回数の何れかが含まれていればよいもの」であることを明確にするため,「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間又は回数を含むことを特徴とする」と訂正するものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 特許査定時の明細書等の範囲内の訂正か否かについて
特許掲載公報の段落【0045】には「以上のようにして加速度判定部111が急激な加減速操作を検出し,不適切な操作であると判定した場合には,急加減速情報としてその操作が行われた場所や時間,回数を記憶する。」と記載されており,段落【0047】にも「加速度判定部111が不適切な操作であると判定した場合には,急加減速情報としてその操作が行われた場所や時間,回数を記憶する。」と記載されている。ここで,「や」とは通常「語と語の間にあって並列を示す。」単語であり,「場所や時間,回数を記憶する。」という記載によれば,「場所」のみを記憶することや,「時間」のみを記憶することや,「回数」のみを記憶することは明らかであるので,訂正事項4は,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正か否かについて
上記aで述べたように,訂正事項4のうちの「場所,時間又は回数」とした部分は,「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間,回数を含むことを特徴とする」と記載していたものを,「場所か,時間か,回数の何れか」が含まれていればよいものであることを明確にするために,「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間又は回数を含むことを特徴とする」とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項4は,その全体としても,訂正要件を充足する。
オ 訂正事項5について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項5について,図5のフローチャートを根拠とするものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
・ 訂正事項5は,加速度判定部が不適切な急加減速を判定した場合に,出力手段にその旨を報知することに加えて,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを表している。
ここで,訂正事項5の技術的な意味を検討するに,請求人が訂正事項5の根拠とする特許査定時の図面の図5及びそれを説明した特許査定時の明細書の段落【0057】?【0061】の記載に照らせば,加速度判定部が不適切な急加減速を判定した場合には,その都度出力手段にその旨を報知するものと解釈するのが相当である。
特許査定時の明細書等の他の記載個所をみても,その他の意味,例えば,複数回の不適切な急加減速を判定した後で初めて出力手段にその旨を報知するような内容が含まれるとは解せない。
・ 以上から,訂正事項5は,加速度判定部が不適切な急加減速を判定した場合の出力手段への報知が,不適切な急加減速を判定する都度行われるものに限定するものと解せるので,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。また,訂正事項5は,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
さらに,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから,訂正事項5は,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
・ よって,訂正事項5は,訂正要件を充足する。
カ 訂正事項6について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項6について,引用請求項を減少させるものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項6は,特許査定時の特許請求の範囲の請求項3の記載が「請求項1ないし請求項2の何れか1項」を引用していたものを「請求項2」のみを引用するものに変えるものであるから,特許請求の範囲を減縮しようとするものといえる。
そうすると,訂正事項6は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項6は,訂正要件を充足する。
キ 訂正事項7について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項7について,訂正事項1に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項7は,訂正事項1に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項1と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項7は,訂正要件を充足する。
ク 訂正事項8について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項8について,訂正事項2に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項8は,訂正事項2に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項2と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項8は,訂正要件を充足する。
ケ 訂正事項9について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項9について,訂正事項3に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項9は,訂正事項3に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項3と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項9は,訂正要件を充足する。
コ 訂正事項10について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項10について,訂正事項4に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項10は,訂正事項4に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項4と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項10は,訂正要件を充足する。
サ 訂正事項11について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項11について,訂正事項5,6に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項11は,訂正事項5,6に係る訂正に伴って特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項5,6と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項11は,訂正要件を充足する。
シ 小括
以上のとおり,請求項1?3からなる一群の請求項に係る訂正事項1?11は,いずれも,訂正要件を満たしているのであるから,請求項1?3からなる一群の請求項に係る訂正を認める。

(2)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項12について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項12について,特許査定時の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1を引用しないものとし,独立形式請求項へ改める訂正であり,また,訂正事項1と同様に「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための」と記載し,訂正事項2と同様に「省エネルギー運転に影響を与える」と記載することにより,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
請求人は,弁駁書2,3において,訂正事項12は,特許法第134条の2第1項ただし書各号のいずれにも該当しない旨主張する。
(イ)当審の判断
訂正事項12は,特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とすることは明らかである。
そして,訂正事項12は,訂正事項1,2と同様に,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあるし,また,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,さらに,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項12は,訂正要件を充足する。
イ 訂正事項13について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項13について,訂正事項12に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項13は,訂正事項12に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項12と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項13は,訂正要件を充足する。
ウ 小括
以上のとおり,訂正事項12,訂正事項13は,いずれも,訂正要件を満たしているのであるから,請求項4に係る訂正を認める。

(3)請求項5に係る訂正
ア 訂正事項14について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項14について,特許査定時の請求項5が請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1を引用しないものとし,独立形式請求項へ改める訂正であり,また,訂正事項1と同様に「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための」と記載し,訂正事項2と同様に「省エネルギー運転に影響を与える」と記載することにより,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
請求人は,弁駁書2,3において,訂正事項14は,特許法第134条の2第1項ただし書各号のいずれにも該当しない旨主張する。
(イ)当審の判断
訂正事項14は,特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とすることは明らかである。
そして,訂正事項14は,訂正事項1,2と同様に,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあるし,また,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,さらに,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項14は,訂正要件を充足する。
イ 訂正事項15について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項15について,訂正事項14に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項15は,訂正事項14に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項14と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項15は,訂正要件を充足する。
ウ 小括
以上のとおり,訂正事項14,訂正事項15は,いずれも,訂正要件を満たしているのであるから,請求項5に係る訂正を認める。

(4)請求項6に係る訂正
ア 訂正事項16について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項16について,特許査定時の請求項3が請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1を引用しないものとし,独立形式請求項へ改める訂正であり,また,訂正事項1と同様に「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための」と記載し,訂正事項2と同様に「省エネルギー運転に影響を与える」と記載し,訂正事項5と同様に「し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」と記載することにより,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項16のうち請求項1を引用せずに独立形式請求項とする部分は,明らかに,特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして,訂正事項16のうち「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための」との記載,「省エネルギー運転に影響を与える」との記載及び「し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」との記載を付加する部分は,訂正事項1,2,5と同様に,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
訂正事項16は,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,さらに,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項16は,訂正要件を充足する。
イ 訂正事項17について
(ア)当事者の主張
被請求人は,訂正事項17について,訂正事項16に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと説明する。
(イ)当審の判断
訂正事項17は,訂正事項16に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものにほかならないから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項16と同様に,特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
よって,訂正事項17は,訂正要件を充足する。
ウ 小括
以上のとおり,訂正事項16,訂正事項17は,いずれも,訂正要件を満たしているのであるから,請求項6に係る訂正を認める。

3 まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正請求は,特許法第134条の2第1項ただし書き,及び同条第9項において準用する同法第126条第5項,第6項の規定に適合するので,適法なものと認める。
以下,願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面は,本件訂正請求後のものとし,それぞれ,「本件明細書」,「本件特許請求の範囲」,「本件図面」といい,また,それらを合わせたものを「本件明細書等」ということとする。

第3 本件特許発明
本件特許の各請求項に係る発明は,次のとおりのものである。

1 請求項1に係る発明
「【請求項1】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置。」(以下,「本件特許発明1」という。)
2 請求項2に係る発明
「【請求項2】
前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。」(以下,「本件特許発明2」という。)

3 請求項3に係る発明
「【請求項3】
前記加速度判定部は,前記不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。」(以下,「本件特許発明3」という。)

4 請求項4に係る発明
「【請求項4】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,
前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とするナビゲーション装置。」(以下,「本件特許発明4」という。)

5 請求項5に係る発明
「【請求項5】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,
前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とするナビゲーション装置。」(以下,「本件特許発明5」という。)

6 請求項6に係る発明
「【請求項6】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって,
前記加速度判定部は,不適切な急加減速操作を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とするナビゲーション装置。」(以下,「本件特許発明6」という。)

第4 無効理由についての当事者の主張
1 請求人が弁駁書2で追加した無効理由について
請求人が平成25年7月4日付けで提出した弁駁書2の15頁?16頁にかけて,「(3).記載不備について」と題して新たな無効の理由が申し立てられているが,これは,請求の理由の要旨を変更するものにあたる。
当該無効の理由の申立ては,被請求人が行った平成25年5月24日付け訂正請求書による訂正の請求の訂正事項3及び4に係るものであり,明らかに,被請求人が行った新たな訂正の請求に起因するものである。また,請求人の上記弁駁書2の提出は,当審から被請求人の上記訂正請求書の副本及び審判事件上申書の副本を送付すると共に与えた弁駁書提出機会に適時に行われており,それにより審理を遅延させるおそれがないことも明らかというべきである。
よって,請求人が提出した弁駁書2による上記無効の理由の申立てを,平成25年7月19日付けで許可する旨決定した(以下,この申立てに係る無効の理由を「無効理由5」という。)。

2 請求人が主張する無効理由の概要
(1)無効理由1
ア 審判請求書における主張の概要
本件特許の特許請求の範囲第2項は,「前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた場所,時間,回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置」というものだが,急加減速情報に含まれるものが,場所,時間及び回数の全てを含むものであるのか,場所,時間又は回数のいずれかを含むものであるかが明らかではない。
したがって,請求項2に係る特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明を明確に記載したものではないので,特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。
よって,本件特許の請求項2に係る特許は,特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。

(2)無効理由2
ア 審判請求書における主張の概要
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は,いずれも,甲第2号証(特開2002-46498号公報)及び甲第5号証(特開2002-251699号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものだから,それらの発明に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また,本件特許の請求項4及び5に係る発明は,いずれも,甲第2号証,甲第5号証及び甲第6号証(特開2003-106207号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものだから,それらの発明に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 弁駁書2における主張の概要
(ア)本件特許発明1について
・ 審決の予告は,甲第2号証に記載の発明が「運転操作評価装置」であると認定したうえで,「構成の簡素化を課題としてナビゲーション装置の構成の一部であるモニタを兼用することが記載されているので,さらに,制御装置自体を兼用することが当業者にとって格別のものとは認められない。」と認定したのであって,この認定に誤りはない。
・ 審決の予告は,「甲第2号証には,車両の移動速度と加減速度の闘値が関連付けられ,検出された移動速度に応じた闘値によって,急加減速度であるか否かの判別が行われていることが記載されている。一方,2つの関連付けられた量について,一方の量を検出し,その検出された量に対応する他方の量に基づいて制御を行う際に,一方の量を区分するとともに,その区分ごとに対応する他方の量の値を定めたテーブルを作成しておき,そのテーブノレに基づいて一方の量の検出値から他方の量の値を求めることは,コンピュータを用いた制御装置においては普通に行われている周知の技術にすぎない。」とし,その周知の技術の例として,甲第7号証及び甲第8号証を挙げたものであって,工作機械における公知の技術から,車両の移動速度と加減速度の闘値を関連付けることが容易であると認定したものではない。また,甲第7号証及び甲第8号証に記載された技術は,「2つの関連付けられた量について,一方の量を検出し,その検出された量に対応する他方の量に基づいて制御を行う」技術であるという点で,刊行物2の技術と共通する。
・ 訂正後の請求項1を引用する請求項2において,「前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間,回数を含む」とされているとおり,「急加減速操作が行われた状況」には,時間や回数が含まれる。時間や回数は累積値であるからその時,その時のありさまを示すものではない。したがって,訂正後の明細書において「状況」の用語が乙第1号証に示されるような意味で用いられているものではない。
また,訂正後の明細書において,「状況を示す時間」が累積値を含むものであれば,「モード領域走行時間」や「総走行時間」という時間の累積値を記憶する甲第2号証に記載の発明との相違点はない。
(イ)本件特許発明2について
訂正後の請求項2の「前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間,回数を含む」における,時間や回数は累積値であるからその時,その時のありさまを示すものではない。したがって,訂正後の明細書において「状況」の用語が乙第1号証に示されるような意味で用いられているものではない。
また,訂正後の明細書において,「状況を示す時間」が累積値を含むものであるのであれば,「モード領域走行時間」や「総走行時間」という累積値を記憶する甲第2号証に記載の発明との相違点はない。
(ウ)本件特許発明3について
「判定を行っている運転中」は,運転中の特定の時点を特定するものではない。ナビゲーションの設計の仕方としては,常に省エネルギー運転をしているか否かを判定しているもののほかに,省エネルギー運転評価モードを設定し,そのモードにあるときのみ省エネルギー運転をしているか否かを判定するというものも考えられる。このように省エネルギー運転評価モードのときにのみ省エネルギー運転をしているか否かを判定するものの具体的態様としては,ナビゲーション装置の「判定評価開始」ボタンを押して判定処理を開始してから,「判定終了」ボタンを押して判定処理を終了させるものがある。この場合,運転中に「判定評価開始」ボタンを押して判定評価開始し,運転中に判定終了ボタンを押す場合には,「判定を行っている運転中」とは,判定開始ボタンを押して判定処理を開始してから判定終了ボタンを押して判定処理を終了させる間と解される。この場合に,「判定終了」ボタンを押すまでは何らの表示もせず,「判定終了」ボタンを押すと,それまでに累積された急加減速運転時間を表示したうえで判定処理を終了させるものは,「判定を行っている運転中」に出力手段にその旨を報知することになる。この態様は,刊行物2に記載の発明と変わりはない。仮にこの態様の場合,「判定を行っている運転中」が「判定終了」ボタンを押すまでであると解したとしても,その作用効果は刊行物2に記載された発明と変わりはないから,この構成については実質的に同一である。
したがって,訂正後の請求項3に係る発明は,甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)本件特許発明6について
本件特許発明3と同様「判定を行っている運転中出力手段にその旨を報知する」構成は,甲第2号証に記載された発明と実質的に変わりはない。訂正後の請求項6に係る発明も,本件特許発明3と同様の理由で,甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(オ)本件特許発明4,5について
訂正後の請求項4及び請求項5に係る発明は,平成24年9月3日付け訂正請求書で訂正された請求項4及び請求項5に係る発明と内容的に変わるところはない。
訂正後の請求項4及び請求項5に係る発明は,平成24年10月30日付け弁駁書第 11頁10行目-第12頁14行目に記載したとおり,本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(上記弁駁書の指摘個所には,刊行物5(甲第6号証)には,車速の変化のさせ方によって燃費消費評価をする際にはカーブを走行している時に評価することは不適切であることが示唆されているから,刊行物1(甲第2号証)記載の発明のように加減速度の閾値に基づいて燃費に関して適切な運転であるか否かを判定するに際し,カーブを走行している場合を除いて判定することは,容易に想到できる旨記載されている。)。
ウ 弁駁書3における主張の概要
(ア)本件特許発明1,2について
本件特許発明1の「急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報」や「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す時間」は,甲第2号証に記載の発明において実質的に記憶される「モードB領域走行時間」を含むものである。
「時間」の用語は,「時刻」と一義的に解するものではない。本件訂正発明2における「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す時間」における「時間」は,「時の流れの二点間(の長さ)」と解することもできるし,「時刻」と解することもできる。
「状況」の用語の意味する「その時,その時のありさま,ようす」に累積値が含まれるのであれば,「状況」はある期間内のありさまも意味するから,「状況」には被請求人がいう甲第2号証に記載された発明の「単なる最終結果を示す累積値」も含まれる。
上述のとおり,「急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報」には,「時間(時の流れの二点間の長さ)」も含まれるし,何らかの期間の全ての累積値も含まれる。「状況」の用語の意味する「その時,その時のありさま」には,ある期間内のありさまも含まれるから,刊行物1記載の「運転操作評価のスタートから運転操作評価の終了までの間の」ありさまであるモードB領域の時間も,本件訂正発明1の「急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報」に相当する。
したがって,本件訂正発明1の「急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記憶部に記録する」の構成及び本件訂正発明2の「前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた状況を示す(場所,)時間又は回数を含む」の構成は,いずれも刊行物1記載の発明との相違点とはならない。
(イ)本件特許発明3について
本件訂正発明3は,「急加減速操作が行われたことを判定した場合,その旨を報知し,急加減速操作が行われたか否かの判定処理を継続して行うものに」限定されたものではないし,「運転中にリアルタイムに報知し,継続して運転支援を行う」ものに限定されたものでもない。
本件訂正発明3は,「不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すこと」というものであるから,出力手段に報知される判定内容(不適切な急加減速)と繰り返し判定される判定内容(省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否か)とは異なるし,出力手段にその旨を報知する時点と省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を行う時点との関係も特定されていない。
ここで,(1)「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定する」とは,その根拠が特許明細書の段落【0013】の「・・・移動速度に関連して適切な闘値を設定しておき,急激な加減速操作が適切な操作であるか,不適切な操作であるかを識別して省エネルギー運転支援を行うようになせば上記問題点を解消し得ることに想到して・・・」にあるものとされているから(平成24年9月3日付け訂正請求書を補正する平成24年9月24日付け手続補正書第4頁7-16行目参照),移動速度に関連して設定された闘値を超えているか否かの判別を指す。
一方,(2)「不適切な急加減速の判定」については,特許明細書の段落【0059】 に,「ステップ524の処理において,加速度が闘値以下になったかを判定する。加速度が闘値以下になっていなければステップ524の処理を繰り返し,加速度が闘値以下になったならば1回の急加減速操作が行われたものと判定してステップ525の処理に進む。」と記載され,段落【0060】に,「ステップ525の処理において,加速度判定部111は,経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データと現在位置とから車両が交差点またはカーブを走行中であるか否かを判定する。車両が交差点またはカーブ上を走行中であれば,適切な急加減速操作であると判定し,ステップ521の処理に戻る。」と記載され,段落【0061】に,「車両が交差点またはカーブを走行中でなければ,五聾喰立迦越連の操作であると判定し,ステップ526の処理において急加減速情報を急加減速情報記録部18に記憶し,ステップ527の処理において表示部14あるいは音声出力部19などの出力手段を介して,利用者に報知する。」と記載されているから,「不適切な急加減速を判定」とは,単に加速度が閾値以上になったことを判定するというものではなく,少なくとも加速度が闘値以上となった後加速度が闘値以下になるまでの間を1回の「不適切な急加減速を判定」したとするものと解される(図5に示されたフローチャートは,コンピュータのクロックパルスに応じて適当な間隔で繰り返されるステップを表したものであるから,「加速度が闘値以上」となる523のステップごとに報知すると,報知が短時間に繰り返されることになるので不都合である。報知は,加速度が闘値以下になるまでの間を1回として報知されると理解するのが自然である。)。
刊行物1に記載されたものは,モードB領域走行時間を算出し総加減速時間との比を求めることにより「運転操作評価のスタート」から「運転操作評価の終了」までの評価期間内の運転が低燃費走行であるか否かを評価して出カすると共に,評価期間内においては,繰り返し行われる「加減速各モード領域走行時間算出」のステップ(ステップ110)において加減速がいずれのモードにあるかが判定されてその時間を積算するものである。
(1)刊行物1に記載されたステップ110は,本件訂正発明3が引用する本件訂正発明1の「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定」するに相当する。
また,(2)刊行物1には,評価期間内に総走行時間に占める評価基準領域内の走行時間の割合を算出することで運転操作を評価するものが記載されており,その評価は本件訂正発明3の「不適切な急加減速の判定」に相当する。
したがって,刊行物1には,本件訂正発明3と同様,「不適切な急加減速を判定した場合には,前記出カ手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」ものが記載されている。
本件訂正請求書により訂正された請求項3で限定された構成は,刊行物1記載の発明との相違点とはならない。
(ウ)本件特許発明6について
「(イ)本件訂正特許発明3について」で指摘したとおり,「前記加速度判定部は,不適切な急加減速を判定した場合には,前記出カ手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とする」の構成は,刊行物1記載の発明との相違点とはならない。

(3)無効理由3
ア 審判請求書における主張の概要
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は,いずれも,甲第3号証(特開2001-82966号公報)及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものだから,それらの発明に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また,本件特許の請求項4及び5に係る発明は,いずれも,甲第3号証,甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものだから,それらの発明に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)無効理由4
ア 審判請求書における主張の概要
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は,いずれも,甲第4号証(特開2000-171267号公報)及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものだから,それらの発明に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また,本件特許の請求項4及び5に係る発明は,いずれも,甲第4号証,甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものだから,それらの発明に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(5)無効理由5
ア 弁駁書2における主張の概要
訂正された請求項1及び請求項2に係る発明の「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す」における「状況」の用語は,一般的な用語の意味で用いられていない。そして,訂正後の明細書において用いられる「状況」の用語の定義もされていないから,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す」は,明瞭ではない。
したがって,訂正後の明細書は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
イ 弁駁書3における主張の概要
「状況」の用語は一般的な意味で用いられているものではない。

3 被請求人の主張の概要
(1)無効理由1
ア 答弁書における主張の概要
本件特許の請求項2は,本件答弁書とともに提出された訂正請求書により「前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた場所,時間又は回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置」と訂正されたので,本件特許の請求項2の記載は特許を受けようとする発明が明確に記載されている。

(2)無効理由2
ア 答弁書における主張の概要
刊行物1(「甲第2号証」が相当)及び刊行物4(「甲第5号証」が相当)に記載された発明を組み合わせたとしても,本件特許発明1を容易に想到することは不可能であり,本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
なお,「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定」するために用いられる「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブル」は,他の刊行物2(「甲第3号証」が相当),刊行物3(「甲第4号証」が相当),刊行物5(「甲第6号証」が相当)にも記載も示唆もされておらず,また,いずれの刊行物を組み合わせたとしても本件特許発明1特有の構成である上記閾値テーブルを当業者が容易に想到することはできない。
上述のように本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないため,本件特許発明1の発明特定事項を全て含む本件特許発明2?5についても特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
イ 審判事件上申書における主張の概要
(ア)本件特許発明1について
・ 甲第2号証の段落【0039】には,運転操作評価装置がナビゲーション装置のモニタを兼用して,運転操作の評価結果を表示しても良い旨が開示されているだけであり,運転操作評価装置をナビゲーションシステムを利用して構成するようなことは記載されていない。そもそも,ナビゲーション装置からみれば,運転操作評価装置が自装置のモニタを外部から使用しているだけであり,この記載によれば,ナビゲーション装置と運転評価装置が独立した別構成であることは明確である。
よって,この甲第2号証の段落【0039】における記載に基づいて,運転操作評価装置をナビゲーション装置に組み込むことを甲第2号証が示唆していると認定することは不当である。
甲第2号証には,運転操作評価装置をナビゲーション装置に組み込むような示唆は存在しないため,甲第2号証に記載の発明において,「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部」,「現在位置を測位する GPS 受信部」,「地図情報を記憶した地図情報記憶部」を備える動機付けはなく,審決の予告が認定した相違点1に係る本件特許発明1の構成を甲第2号証に記載の発明に設ける点は当業者が容易に想到することができるものではない。
・ 審決の予告において相違点2についての判断で示された甲第7号証(特開昭51-90083号公報),甲第8号証(特開平6-226590号公報)には,工作機械の温度ごとに加工誤差を補正するための補正量を定めた補正テーブルを用いることが開示されているにすぎない。そして,工作機械の温度と加工誤差との間に相関関係があることと,「省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値」を車両の移動速度の区分ごとに設定することとは技術的には全く無関係であり,このような甲第7号証,甲第8号証を挙げて,本願発明における「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブル」を当業者が容易に想到できたとする認定は失当である。
さらに,甲第8号証に記載されているものは,2箇所の測定点の温度差ごとに補正量が定められたものでしかなく,10度,12度,14度といった一点一点の値に対して補正量が設定されているに過ぎず所定範囲毎に値を設定するというテーブルですらない。
従って,甲第2号証に記載の発明において,相違点2における「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための闘値を設定した閑値テーブル」という本件特許発明1の構成とすることは当業者が容易に想到することができるものではない。
また,今回の訂正により本件特許発明1では,「急加減速情報」は「急加減速操作が行われた状況を示す」ものとなった。
これに対して,甲第2号証に記載の発明において記憶される「時間」は,「モード領域走行時間」や「総走行時間」といった累積値であり,単なる最終結果にすぎず,「急加減速操作が行われた状況を示す」ものではない。このような単なる最終結果だけでは,急加減速操作が行われた状況を把握することは不可能である。
甲第2号証には,急加減速操作が行われた状況を示す情報を記録することは記載も示唆もされていない。
本件特許発明1は,「急加減速操作が行われた状況を示す」急加減速情報を記録することにより,きめ細かい運転支援を行うことが可能になるという効果を得ることができる。これに対し,単なる最終結果のみを算出するだけの甲第2号証に記載の発明では,急加減速操作が行われた状況を把握して,きめ細かな運転支援を行うことは不可能である。
(イ)本件特許発明2について
今回の訂正により本件特許発明2では,「急加減速情報」は,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数を含む」ものとなっており,「急加減速情報」に含まれるのは,単なる「不適切な急加減速操作が行われた場所,時間又は回数」ではなく,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数」であることが明確になっている。
これに対して,甲第2号証に記載の発明において記憶される「時間」は,「モード領域走行時間」や「総走行時間」といった累積値であり,単なる最終結果にすぎず,「急加減速操作が行われた状況を示す」ものではない。
甲第2号証には「急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数」を「急加減速情報」として急加減速情報記録部に記録することは記載も示唆もされていない。
よって,訂正後の本件特許発明2において特定された点は甲第2号証に記載の発明との明確な相違点であり,本件特許発明2は甲第2号証に記載の発明から容易に想到することはできないものである。
(ウ)本件特許発明3について
今回の訂正により本件特許発明3では,「加速度判定部は,不適切な急加減速を判定した場合には,判定を行っている運転中に,出力手段にその旨を報知する」ものとなっている。
つまり,訂正後の本件特許発明3は,急加減速操作が行われたか否かの判定を行っている運転の終了後に,判定結果を報知するものではなく,このような判定を行っている運転中に,不適切な急加減速を判定した旨を報知するものになっている。
これに対して,甲第2号証に記載の発明では,「運転操作評価のスタート」から「運転操作評価の終了」までを評価期間として,モード領域走行時間の総走行時間に占める割合により運転レべルの算出を行うものである。つまり,甲第2号証に記載の発明では,運転操作評価の終了後に採点評価結果を表示して運転者に運転操作技術を認識させるものでしかない(甲第2号証の段落【0024 】,【0025】,図2のフローチャートのステップ104,105参照)。
甲第2号証には,運転操作評価中に運転者に何らかの通知を行うことは記載も示唆もされていない。
よって,評価期間内における各モード領域走行時間の総走行時問に占める割合を算出して,この算出結果に基づいた運転者の総合的なレべルを評価期間の終了後に運転者に通知するような甲第2号証記載の発明からは,判定を行っている運転中に,不適切な急加減速を判定した旨を報知するという本件特許発明3を容易に想到することはできない。
(エ)本件特許発明4.5について
本件特許発明4,5は,審決の予告において,甲第2号証ないし甲第4号に記載された発明,及び,甲第5号証,及び,甲第6号証から当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないと認定された内容に対して,従属関係を解消して独立形式にしたものであるため,特許法第29条第2項の規定に違反しないものであることは当然である。
(オ)本件特許発明6について
本件特許発明6も,上記「(ウ)本件特許発明3について」において説明した理由と同様の理由により,甲第2号証記載の発明からは,容易に想到することはできないものである。
ウ 答弁書2における主張の概要
(ア)本件特許発明1,2について
訂正後の請求項1における時間という用語を「時の流れのある一点」と解釈すれば,時の流れの中で,その時,その時を観念することができ,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す時間」という表現における「状況」の語は,「その時,その時のありさま,ようす」という意味で用いられていることに矛盾はなく,「状況」の語の意味も明確である。
したがって,「不適切な急加減速操作が行われた状況を示す時間」は,単なる最終結果としての累積値ではなく,単なる最終結果としての累積値にすぎない甲第2号証記載の発明における「モード領域走行時間」や「総走行時間」を含むものではない。
(イ)本件特許発明3,6について
本件特許発明3は,急加減速操作が行われたことを判定した場合,その旨を報知し,急加減速操作が行われたか否かの判定処理を継続して行うものになっている。
これに対して,甲第2号証記載の発明は,運転操作評価中に運転者に何らかの報知を行うものではなく,運転操作評価が終了すると最終結果のみを最終評価結果として表示するものでしかない。
よって,甲第2号証記載の発明には,運転中にリアルタイムに報知し,継続して運転支援を行うという概念がなく,不適切な急加減速を判定した場合には,その旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すという本件特許発明3を容易に想到することはできない。
同様の理由により,甲第2号証記載の発明からは,本件特許発明6を容易に想到することはできない。

(3)無効理由3
ア 答弁書における主張の概要
刊行物2(「甲第3号証」が相当)及び刊行物4(「甲第5号証」が相当)に記載された発明を組み合わせたとしても,本件特許発明1を容易に想到することは不可能であり,本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
上述のように本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないため,本件特許発明1の発明特定事項を全て含む本件特許発明2?5についても特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(4)無効理由4
ア 答弁書における主張の概要
「刊行物3(「甲第4号証」が相当)及び刊行物1(「甲第2号証」が相当)に記載された発明を組み合わせたとしても,本件特許発明1を容易に想到することは不可能であり,本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
上述のように本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないため,本件特許発明1の発明特定事項を全て含む本件特許発明2?5についても特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(4)無効理由5
ア 答弁書2における主張の概要
訂正後の請求項1における「急加減速操作が行われた状況を示す」という記載や請求項2における「不適切な急加減速が行われた状況を示す」という記載における「状況」の用語は,「その時,その時のありさま,ようす」という一般的な意味で用いられていることに矛盾はない。
よって,訂正後の請求項1,請求項2における「状況」の用語の意味は明確であり,特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。

第5 無効の理由1についての当審の判断
上記「第2 被請求人による訂正請求」の「3 まとめ」に記載したように,本件訂正請求は適法なものと認める。
そして,本件訂正請求を前提として被請求人が「本件特許の請求項2は,本件答弁書とともに提出された訂正請求書により『前記急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた場所,時間又は回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置』と訂正されています。よって,本件特許の請求項2の記載は特許を受けようとする発明が明確に記載されていると思料します。」と主張しているように,請求人が「急加減速情報に含まれるものが,場所,時間及び回数の全てを含むものであるのか,場所,時間又は回数のいずれかを含むものであるかが明らかではありません」と主張している点は,本件訂正請求により明瞭になっているといえる。
したがって,本件訂正請求特許2に係る特許請求の範囲の記載が,特許を受けようとする発明を明確に記載したものではないとは認められないので,請求人が申し立てる無効理由1は,採用できない。

第6 無効の理由2?4についての当審の判断
1 甲各号証の記載事項
(1)甲第2号証(特開2002-46498号公報)
甲第2号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 あらかじめ用意され,複数の評価基準領域が設定された運転評価基準マップから,運転者の走行目的・意志に合った評価基準領域を選択する評価基準領域選択手段と,
運転評価の開始から終了までの間,検出される運転状態が前記評価基準領域内かどうかを監視する運転操作監視手段と,
該運転操作監視手段による監視結果に基づいて運転者の運転操作を評価する運転操作評価手段と,
該運転操作評価手段により評価された結果を表示する表示手段と,
を備えたことを特徴とする運転者の運転操作評価装置。」
・「【請求項4】 請求項1ないし3に記載の運転者の運転操作評価装置において,
前記運転評価基準マップを,車速と車両の加減速度との関係に基づいて評価基準領域が設定されているマップとし,
前記運転操作監視手段を,車速と車両の加減速度によって表される運転点を運転状態として監視する手段としたことを特徴とする運転者の運転操作評価装置。」
・「【0012】
【発明の作用及び効果】請求項1記載の運転者の運転操作評価装置においては,評価基準領域選択手段において,あらかじめ用意され,複数の評価基準領域が設定された運転評価基準マップから,運転者の走行目的・意志に合った評価基準領域が選択され,運転操作監視手段において,運転評価の開始から終了までの間,検出される運転状態が選択された評価基準領域内かどうかが監視される。すなわち,運転者の操作による運転状態が選択された評価基準領域内かどうかによって,運転者の目的・意志に沿った運転操作が行われているかを監視することができる。そして,運転操作評価手段において,この運転操作監視手段による監視結果に基づいて運転者の運転操作が評価され,この運転操作評価手段により評価された結果が表示手段により表示されることで,運転者自身に運転操作技術を認識させることが可能となり,運転者の操作技術の向上に寄与することができる。」
・「【0014】請求項3に記載の運転者の運転操作評価装置では,運転評価基準マップが,車速とエンジン回転数との関係に基づいて評価基準領域が設定されているマップとされ,運転操作監視手段が,車速とエンジン回転数によって表される運転点を監視する手段とされている。すなわち,例えば運転者が低燃費走行を目的としている場合,車速に対して低いエンジン回転数により運転している領域が操作評価基準領域として設定され,運転者がスポーツ走行を目的としている場合は,車速に対して高いエンジン回転数により運転している領域が操作評価基準領域として設定される。これにより,運転者の走行意図・意志に応じた運転操作が行われているかを正確に監視することができる。
【0015】請求項4に記載の運転者の運転操作評価装置では,運転評価基準マップが,車速と車両の加減速度との関係に基づいて評価基準領域が設定されているマップとされ,運転操作監視手段が,車速と車両の加減速度によって表される運転点を監視する手段とされている。すなわち,請求項3の作用及び効果に説明したように,運転者が低燃費走行を目的としている場合,車速に対して絶対値の小さな加減速度により運転している領域が操作評価基準領域として設定され,運転者がスポーツ走行を目的としている場合は,車速に対して絶対値の大きな加減速度により運転している領域が操作評価基準領域として設定される。これにより,より正確に運転者の走行意図・意志に応じた運転操作が行われているかを監視することができる。」
・「【0019】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)図1は実施の形態1におけるベルト式無段変速機3(以下CVTと記載する)を備えた運転者の運転操作評価装置の全体構成図である。まず構成を説明すると,運転者の目的や意志を入力すると共に,運転操作評価結果を出力する車両に備え付けられたナビゲーションシステムのモニタ1と,アクセル開度を検出するアクセル開度センサ4と,ブレーキが踏まれたかどうかを検出するブレーキスイッチ5と,車両の加減速を検出する加減速度センサ6と,車速を検出する車速センサ7と,エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ8と,プーリ比により無段階に変速比を制御するベルト式無段変速機3と,から構成されている。
【0020】図2は実施の形態1におけるコントロールユニット2の制御を表すフローチャートである。」
・「【0034】上述の制御内容を図3の制御ブロック図により説明する。まず,ブロック10において,モード選択としてモードA:スポーツ走行モードとモードB:燃費モードが選択される。ここで,実施の形態1においては二つのモードを設定したが,これに限られるものではなく,例えばショーファードリブンモード等も考えられる。また,自己運転評価レベルを1?5の間で設定することで,各レベルの採点をすることが可能となり,運転者の考える運転レベルと実際の運転レベルを比較することができる。
【0035】次に自己運転評価レベルから変速線モード境界線及び加減速度モード領域境界線が初期設定される。例えば,ブロック12,15に示すように,スポーツ走行モード選択時に自己運転評価レベルを高くすると,エンジン回転数マップでのA領域の領域境界線は高エンジン回転側に設定され,加速度マップでのA領域の領域境界線は高加速度側及び高減速度側に設定される。なお,この領域境界線は選択レンジ(Dレンジ,Sレンジ,Lレンジ,Mレンジ)や,走行地域属性(勾配,車間距離,前方車両との相対速度)等によって切り替えが可能に設定されている。
【0036】次に,ブロック13,14,16,17に示すように,各モード領域内を走行していた時間を算出し,モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出する。次に,ブロック20に示すように,運転者の入力したモード及びレベルに対応した重み関数を選択する。これにより,自己運転評価レベルに応じた運転者の操作レベルの評価が可能となる。また,走行時間が長くなるほど,選択したモード領域内での走行できる割合は減少することが考えられるため,走行時間に応じた重み関数を設定することで運転操作評価の補正を行う。
【0037】次にブロック18,19に示すように,重みをつけた評価点及び運転者の総合的なレベルを算出する。これにより運転者に運転レベルを認知してもらうと共に,例えばアクセル操作頻度やブレーキ操作頻度等の情報を用いて,改善点のアドバイス表示などを行う。」
・「【0039】また,車両に搭載されたナビゲーション装置のモニタを使用する事で,評価基準領域の選択と結果の表示が一つのモニタで兼用できるため,構成を簡略化することができると共に,従来から車両に搭載されたモニタを使用することで新たに構成を追加する必要が無いという効果が得られる。」

・図3には,運転操作評価制御を表すフローチャート中のブロック15には,加速度マップが示されており,車両の走行状況を抽出するセンサ部の出力に基づいて,車速が大きくなるに従って絶対値が小さくなる領域境界線が示されている。

これらの事項及び図示内容を総合すると,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲第2号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「加減速度センサ6及び車速センサ7を含む車両の走行状況を検出するセンサ部を備えた運転操作評価装置であって,
運転評価基準マップと,運転操作監視手段と,運転操作監視手段の監視結果に基づいて評価された運転者の評価を表示するモニタ1を備えており,
運転評価基準マップは,車速と車両の加減速度との関係に基づいた評価基準が設定されているものであって,車速が大きくなるに従って絶対値が小さくなる領域境界線が定められたマップを備えており,運転操作監視手段は車速と車両の加減速度によって表される運転点を運転状態として監視して,加減速度の絶対値が運転評価基準マップの領域境界線より小さいモードB(燃費モード)領域及び加減速度の絶対値が領域境界線より大きいモードA(スポーツ走行モード)領域の各モード領域内を走行していた時間を算出し,各モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出し,この結果に基づいて運転者の総合的なレベルを算出して,運転者に運転レベルを認知させるよう構成された運転操作評価装置。」

(2)甲第3号証(特開2001-82966号公報)
甲第3号証には,図面と共に以下の事項が記載されている
・「【請求項1】 自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と,
この現在位置検出手段によって検出された自車両の現在位置での自車両の走行環境情報を検出する走行環境検出手段と,
この走行環境検出手段によって検出された自車両の走行環境情報と,所定の走行環境しきい値とを比較する比較手段と,
この比較手段によって前記走行環境情報の方が前記走行環境しきい値よりも大きいと判断された場合に,前記現在位置を記憶地点として記憶する記憶手段と,
この記憶手段によって記憶された記憶地点に,前記自車両が所定距離内に接近しているかどうかを判断する接近判断手段と,
この接近判断手段によって前記自車両が前記記憶地点に所定距離内に接近していると判断された場合に報知を行う報知手段と,
を備えたことを特徴とする車両用報知装置。
【請求項2】 請求項1記載の車両用報知装置において,
前記走行環境検出手段は,
車両に加わる前後方向の加速度を前記走行環境情報として検出することを特徴とする車両用報知装置。」
・「【請求項8】 請求項1記載の車両用報知装置において,
前記走行環境検出手段は,ブレーキペダルの変化量およびアクセルペダルの変化量を前記走行環境情報として検出するものであり,
前記比較手段は,前記走行環境検出手段によって検出されたブレーキペダルの変化量が所定の第1の走行環境しきい値よりも大きくなり,且つアクセルペダルの変化量が所定の第2の走行環境しきい値よりも大きくなったかどうかを比較することを特徴とする車両用報知装置。」
・「【0002】
【従来の技術】従来,事故の多発発生個所を提供することを目的とした車両用報知装置としては,例えば特開平10-332409号公報等に記載のものが知られている。
【0003】このものは,事故多発時間,事故多発天候等の事故多発情報を予め地図データに記憶しておき,車両がその事故多発個所に所定基準距離(例えば400m)以内に近づいた場合に,このような事故多発情報をディスプレイ上に表示したり,音声で案内するようにしているものであり,事故の多発発生個所およびその内容をドライバに提供することができるので,ドライバに注意を促すことができるといった利点を有している。」
・「【0006】本発明は,上記に鑑みてなされたもので,その目的としては,ドライバの運転技量に基づいた最適な情報を提供することで,最適な状態でドライバに対して注意を促すことのできる車両用報知装置を提供することにある。」
・「【0019】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば,現在位置検出手段によって検出された自車両の現在位置での自車両の走行環境情報を検出し,この走行環境情報と,所定の走行環境しきい値とを比較し,走行環境情報の方が走行環境しきい値よりも大きいと判断された場合に,現在位置を記憶地点として記憶し,この記憶地点に,自車両が所定距離内に接近しているかどうかを判断し,自車両が前記記憶地点に所定距離内に接近していると判断された場合に報知を行うように構成した。従って,ドライバの運転技量に基づいた最適な情報を提供することで,最適な状態でドライバに対して注意を促すことができる。」
・「【0031】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお,以下の実施の形態では本発明の車両用報知装置をナビゲーション装置に適用したものとして説明する。
【0032】(第1の実施の形態)図1は,本発明の第1の実施の形態に係るナビゲーション装置の基本構成を示す図である。ここで,図1を参照して本実施の形態に係るナビゲーション装置の構成を説明する。
【0033】ナビゲーション装置100は,車両に設けられており,車室内に設けられたキーシリンダにイグニツション・キーが挿入されドライバ等によってイグニッションスイッチ(以下,IGN-SW)50がオン操作された場合に,コントローラ130等にバッテリー(図示せず)からの電力が供給される。
【0034】現在位置検出装置120は,車速センサ102,GPS受信機103,振動ジャイロ104によって構成されている。
【0035】Gセンサ101は,車両に加わる前後方向の加速度(減速度)を検出し,コントローラ130に加速度データを出力する。
【0036】車速センサ102は,例えば従動輪に設けられた車輪速センサを用いて,車両の速度を検出し,コントローラ130に車速データを出力する。
【0037】GPS受信機103は,測位用GPS衛星から発信される電波をGPSアンテナを介して受信し,受信信号から周知の方法によって自車両の現在位置および進行方向を検出し,この現在位置データをコントローラ130に出力する。電波の受信状況によっては,GPS受信機103を用いて自車位置が検出できないことがある。この場合,振動ジャイロ104によって検出される進行方向と車速センサ102によって検出される車速データに基づいて,周知の累積計算方法によって,現在位置および進行方向を推定して,コントローラ130に自車両の現在位置データおよび進行方向データを出力する。
【0038】コントローラ130は,CPU106,RAM105,ROM107等を有している。RAM105は,後述するフローチャートによって危険地点と判定した位置データが記憶され,CPU106からの読み出し要求に従って危険地点と判定した位置データをCPU106に出力する。ROM107は,地域名称,道路種別,道路名称,道路形状等の道路地図データを記憶すると共に,後述するように図3に示す制動初速と減速加速度との関係を示すマップデータを記憶している。なお,ROM107は,道路地図データの縮尺を設定するためのスイッチ(図示せず)が接続されている。」
・「【0050】(4)式のように,理想的にブレーキを踏んだ時の制動初速に応じた減速加速度αmax(υ) より,制動初速(υ)に応じたβ(υ)だけ小さい値をしきい値αth(υ)に設定する。」
・「【0055】そして,ステップS102では,RAM105に記憶された危険地点データを読み込む。
【0056】そして,ステップS103では,ステップS101で検出された自車両の現在位置および進行方向を示すマークと,ステップS102において読み込んだ道路地図データと,危険地点を示すマークをディスプレイ108に表示する。
【0057】そして,ステップS104では,自車両の現在位置とステップS102で読み込んだ危険地点の位置との距離を算出し,その距離が所定基準距離として例えば100m以内であるかどうかを検出する。この場合,危険地点が自車両の進行方向前方に存在する場合にのみ検出し,危険地点が自車両が通過した道路上にある場合には距離の検出を行わないこととする。
【0058】そして,ステップS104の判断処理がYESの場合にはステップS105に進み,進行方向前方に危険地点が存在する旨をスピーカから警報音や警報音声を発生して,ドライバに報知する。一方,ステップS104の判断処理がNOの場合には,ステップS106へ進む。」
・「【0062】そして,ステップS109では,ステップS107で検出した現在の車速を用いて,RAM105に記憶されているマップから現在の車速に対応する危険地点決定しきい値を読み出して決定する。すなわち,図3に示すように,制動初速である現在の車速がA(km/h)であった場合には,B(Km/h^(2) )が危険地点しきい値として決定される。
【0063】ここで,ステップS110では,ステップS109で決定したしきい値と,ステップS106で読み込んだ前後加速度を比較する。読み込んだ前後加速度の方が大きい場合には危険地点であると判断してステップS111に進む。一方,ステップS110の判断処理がNOの場合には危険地点ではないと判断して処理を終了する。
【0064】そして,ステップS111では,ステップS101で読み込んだ現在位置をRAM105に危険地点として記憶し,処理を終了する。
【0065】このように,第1の実施の形態では,Gセンサ101によって現在の車両の(前後方向)の加速度を検出し,この加速度が所定のしきい値よりも大きかった場合に,その地点を危険地点としてRAM105に記憶しておき,車両がその地点に所定基準距離以内に近づいた場合に,ディスプレイ108にその危険地点を表示すると共に,警報を発生してドライバに報知するようにしたので,車両毎にその危険地点の記憶個所が異なることになり,ドライバの運転技量に基づいた最適な危険情報を提供することができる。この結果,最適な状態でドライバに対して注意を促すことができる。
【0066】また,加速度センサを専用のセンサとして説明したが,エアバックの展開制御に用いる加速度センサを兼用して用いれば,新たなセンサが不要となるので,製造コストの低減に寄与することができる。」
・「【0122】(第7の実施の形態)図18は,本発明の第7の実施の形態に係るナビゲーション装置の基本構成を示す図である。ここで,図18を参照して本実施の形態に係るナビゲーション装置の構成を説明する。なお,第7の実施の形態は,図16示す第6の実施の形態に対応するナビゲーション装置と同様の基本的構成を一部有しており,同一の構成要素には同一の符号を付し,その説明を省略することとする。
【0123】本実施の形態における特徴は,アクセルペダル開度センサ701を備え,アクセルペダルの操作による開度の変化量がしきい値より大きくなった場合で,かつブレーキペダルの操作による角速度がしきい値より大きくなったときには,その地点を危険地点として記憶することにある。
【0124】アクセルペダル開度センサ701は,アクセルペダルに設けられたエンコーダであり,ドライバの操作によるアクセルペダルの開度データをコントローラ630に出力する。
【0125】次に,図19に示すフローチャートを参照して,第7の実施の形態に係るナビゲーション装置の制御動作を説明する。なお,図19に示す制御フローチャートは,図17に示す制御フローチャートと同様の基本的手順を有しており,同一の手順には同一の符号を付しているので,その説明を省略する。また,図19に示すフローチャートも,ROM707に制御プログラムとして記憶されている。
【0126】ドライバが何らかの理由で急ブレーキを踏む場合には,まず,アクセルペダルを急激に開放し,次に,ブレーキペダルを急激に踏むという一連の操作が行われる。
【0127】そこで,ステップS701では,アクセルペダル開度センサ701から開度データをコントローラ630に入力する。
【0128】そして,ステップS702では,まず,今回の開度データをRAM105に一時的に記憶しておき,RAM105から読み出した前回の開度データと今回の開度データとの変化量データを算出する。
【0129】ここで,ステップS703では,この変化量データがROM707に記憶されているしきい値よりも大きいかどうかを判断する。変化量データの方が大きい場合にはステップS601に進み,上述した処理を行う。一方,ステップS703での判断処理がNOの場合には処理を終了する。
【0130】このように,第7の実施の形態では,アクセルペダルの操作変化量がしきい値よりも大きくなった場合に,次に,ブレーキペダルを急激に踏むという一連の操作が行われたときには,危険地点として記憶できるので,例えば危険回避に伴う急なアクセルペダルのオフ操作と急なブレーキペダルのオン操作があった地点を記憶できる。
【0131】(第8の実施の形態)図20は,本発明の第8の実施の形態に係るナビゲーション装置の基本構成を示す図である。ここで,図20を参照して本実施の形態に係るナビゲーション装置の構成を説明する。なお,第8の実施の形態は,図16示す第6の実施の形態に対応するナビゲーション装置と同様の基本的構成を一部有しており,同一の構成要素には同一の符号を付し,その説明を省略することとする。
【0132】本実施の形態における特徴は,操舵角センサ801を備え,ステアリング操作による操舵角の変化量がしきい値より大きくなった場合に,その地点を危険地点として記憶することにある。
【0133】操舵角センサ801は,ステアリングに設けられたエンコーダであり,ドライバのステアリング操作による回転角を表す操舵角データをコントローラ830に出力する。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,甲第3号証には,次の発明(以下,「甲第3号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「車速センサ102,GPS受信機103及び振動ジャイロ104によって構成される現在位置検出装置120,車両に加わる前後方向の加速度(減速度)を検出するGセンサ101並びに地域名称,道路種別,道路名称,道路形状等の道路地図データを記憶したROM107を備えたナビゲーション装置であって,
ナビゲーション装置は,車両用報知装置を備えており,
ナビゲーション装置のROM107には,車両の制動初速と減速加速度のしきい値αthとの関係を示すマップデータが格納されており,
車両用報知装置は,現在の車速を用いてマップデータの現在の車速に対する危険地点決定しきい値を読み出し,Gセンサ101から読み込んだ前後加速度の値と比較し,読み込んだ前後加速度が大きい場合には,RAM105に現在位置を危険地点として記憶し,道路地図データと危険地点を示すマークをディスプレイ108に表示するように構成したナビゲーション装置。」
(3)甲第4号証(特開2000-171267号公報)
甲第4号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 記録媒体を離脱自在に収容する媒体収容機構と,
車両の走行速度,三次元姿勢及び前後左右方向の加速度を時系列に計測するセンサ部と,
このセンサ部より取得した計測データ及びその加工データを前記媒体収容機構に収容された記録媒体に記録するレコーダ部とを備え,
前記レコーダ部は,
前記計測データの変位幅が所定の閾値を越えた場合に挙動が発生したとみなして挙動発生時刻と当該時刻の前後所定時間分の計測データを記録し,走行状況に変更が生じた場合は少なくともそのときの時刻と位置情報とを記録し,新たな前記計測データの絶対最大値が既に記録されている計測データの絶対最大値を越えたときは随時その絶対最大値を更新するとともに,所定期間経過する度に前記計測データの平均値を演算して記録するように構成されていることを特徴とする,データレコーダ。」
・「【請求項16】 請求項1ないし3のいずれかの項記載のデータレコーダと,請求項4ないし15のいずれかの項記載の運行管理支援装置とを含み,前記データレコーダに記録された,走行速度を含む車両の挙動特徴を表す計測データに基づいて,当該運転者による運転傾向性を表す判定用情報を生成することを特徴とする,
運行管理システム。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,メモリカード等の記録媒体に記録された車両別及びその運転者別の運行データをもとに,運転者の運転傾向性や,運転傾向性と燃料消費傾向,交通事故,運転者の疲労度等との相関関係等を分析することができる運行管理システムに関し,特に,車両運行に関するリスクマネジメントを可能にする運転傾向性の分析手法に関する。」
・「【0012】本発明は,また,基本的には2つの構成態様で特定される運行管理支援装置を提供する。第1の態様の運行管理支援装置は,車両の挙動特徴を表す計測データがその挙動の発生日時及び発生場所を表すデータとリンクして記録された記録媒体から記録データを読み出すデータ読出手段と,所定の挙動特徴であることを表すデータ条件を設定する条件設定手段と,前記データ読出手段で読み出した前記記録データから前記設定されたデータ条件に適合するものを抽出して挙動特徴毎に分類し,分類されたデータを所定期間毎に集計するとともに,集計されたデータにリンクする前記発生場所のデータを地名データに置換するデータ処理手段とを備え,前記集計されたデータを視認可能な形態で出力して前記車両及びその運転者の運行管理に供するように構成されたものである。
【0013】前記条件設定手段は,例えば,所定の設定画面上に案内表示された埋め込み領域への,危険挙動を含む車両挙動の特徴,あるいは運転癖を特定するための条件パターンの入力を許容するように構成される。
【0014】また,前記データ処理手段は,前記記録データと運転中断の特徴を表す前記データ条件とを比較することにより運転中断の発生時刻及びその発生場所を特定し,特定した運転中断場所に対応する地名データを時系列に生成するように構成される。
【0015】本発明の第2の態様の運行管理支援装置は,走行速度を含む車両の挙動特徴を表す計測データが記録された記録媒体から前記計測データを読み出すデータ読出手段と,前記データ読出手段で読み出した前記計測データを複数の走行速度範囲毎に分類し,各速度範囲における前記車両の挙動を検出するとともに,この検出結果に基づいて当該車両の運転者の運転傾向性を事後的に判定するための判定用情報を生成するデータ処理手段とを備え,この判定用情報を視認可能な形態で出力して前記車両及びその運転者の運行管理に供するように構成されたものである。
【0016】第2の態様の運行管理支援装置において,前記データ処理手段は,例えば,異種の計測データ間の相関分析を行うことで,前記判定用情報を生成するように構成される。この場合,前記相関分析の対象となる計測データの一方は,車両の所定方向の運動加速度データを含むものである。また,データ処理手段は,例えば,複数の運転者の記録データについて分類されたデータの統計値と分析対象となる対象運転者の同種データとを比較することで,あるいは,特定の運転傾向性を呈する特定の基準運転者(例えば危険挙動の特徴を表すデータが相対的に少ない運転者)の記録データについて分類されたデータと分析対象となる対象運転者の同種データとを比較することで,当該対象運転者についての前記判定用情報を生成するように構成する。
【0017】前記データ処理手段は,また,個々の運転者による前記判定用情報をもとに当該運転者の燃料消費傾向を定量的に特定する燃焼消費傾向分析モジュールを含んで構成される。この燃料消費傾向分析モジュールは,具体的には,前記挙動特徴を分析して得た当該車両のアイドリング時間と走行速度及び加速度の変動度合いとを含む運転者の運転傾向要素を変数として,前記燃料消費傾向を定量化する。」
・「【0022】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は,本発明を適用した運行管理システムの構成図である。この運行管理システム1は,車両に取り付けられるデータレコーダ10と,車両の挙動特徴や走行状況を表すデータを運転者毎に記録するためのメモリカード20と,このメモリカード20に記録されたデータを読み出して車両の運転傾向性を判定するための判定用情報を生成する運行管理支援装置30とを有している。まず,各装置の具体的な構成例を説明する。
【0023】[データレコーダ10]データレコーダ10は,センサ部11,カード収容機構12,レコーダ部13,設定部14を含んで構成される。センサ部11は,データレコーダ10を搭載する車両における三次元軸線回りの角速度データ(ロールレート,ピッチレート,ヨーレート)を計測する角速度計111x,111y,111z,車両の前後左右方向の加速度データ(アクセル加速度,ブレーキ加速度,旋回加速度等)を計測する加速度計112x,112y,車両の現在の緯度・経度・速度・方位・時刻等を表すGPSデータを受信するGPSレシーバ113,車両計器等から車速パルスを取得するパルス取得機構114を有している。」
・「【0026】カード収容機構12は,メモリカード20を離脱自在に収容してレコーダ部13との間のデータ読出やデータ書込を支援するものである。レコーダ部13は,CPUとメモリとを含み,CPUがメモリの一部に記録された所定のプログラムを読み込んで実行することにより形成される,前処理部131,イベント抽出部132,データ記録部133の機能ブロックを少なくとも具備して構成される。」
・「【0028】イベント抽出部132は,前処理部131でオフセット成分等が除去された蓄積データから,ノイズレベルや一時停止に至らない停止挙動等を排除するために設定された所定の閾値を越えた挙動(以下,この状態を「イベント」と称する)を表すデータ(角速度データ,加速度データ,GPSデータ,車速パルス等:以下,「イベントデータ」)を予め設定した集計時間毎に抽出し,抽出したイベントデータ,イベント発生日時(GPS時刻),イベント発生場所,各イベントの記録数(設定による),イベント発生後の走行距離(例えば,ブレーキをかけた後の走行距離:車速パルスが1パルス発生したら所定の車速パルスのスケールファクタ分だけカウントする。車速パルスが取得できない場合は,GPS緯度・経度の変化によって速度が検出できるので,これを積分することにより,距離を出す),及び初期情報(レコーダ番号,運転手名,車両番号名等)等をデータ記録部133に送出する。」
・「【0030】データ記録部133は,前処理部131による処理,イベント処理132による処理を経て加工されたデータを管理データ,状態収集データ,イベントデータ,集計データ(ファイル)に分類するとともに,分類後のデータをメモリカード20に記録するものである。また,車両のイグニッションON/OFF,データレコーダ10の電源ON/OFF,走行/停止のほか,GPS通信正常・異常等が発生したときは,その発生時間,発生内容(何時,何処で,何が起こったか)を予め定めたビットパターンで記録する。」
・「【0034】運転が開始され,車両が動き始めると,センサ部11で計測された,車両の挙動特徴を表す各種計測データが,バッファ131aに逐次蓄積される。レコーダ部13は,図2に示されるように,まず,計測開始の時刻をGPSデータ(GPS時刻)から割り出し,これを管理データの一部としてメモリカード20に記録する(ステップS101)。イベントが発生した場合,つまり閾値を越えた計測データを検出した場合は,その前後一定期間,例えば30秒間の計測データをバッファ131aをスキャンして抽出し,これをイベントデータとしてメモリカード20に記録する(ステップS102:Yes,S103)。
【0035】閾値は,計器のオフセットや坂道に対応できるようにするため,固定値ではなく変動幅とする。例えば,角速度計111x,111y,111zの出力と過去3秒間の平均値との差,又は,加速度計112x,112y,112zの出力と過去3秒間の平均値との差のいずれか一方が予め設定した変動幅を越えたかどうかでイベントが発生したかどうかを判定する。計器出力及び平均値は,それぞれ3つの計器出力のベクトル合成(ピタゴラスの定理)によって求めることができる。なお,イベント処理中に新たなイベントが発生した場合はそれを無視し,イベント処理後30秒以内に新たなイベントが発生した場合は,直前のイベント処理終了後から60秒間,データを記録する。」
・「【0045】[運行管理支援装置30]次に,運行管理支援装置30について説明する。この運行管理支援装置30は,CPU,各種RAM,ROM,外部記憶装置を有し,BIOSやオペレーティングシステム(OS)等の制御プログラム下で動作するコンピュータ装置によって実現される。このコンピュータ装置は,例えば図11のように,メモリカード20を収容してデータ記録及びその読み出しを行うカードリーダライタ31,各種設定情報の入力画面や解析結果を確認するための表示装置32,データやコマンド等を入力するためのデータ入力装置33,公知の地図情報管理システム34,これらの装置と内部機能との間の入出力制御を行う入出力制御機構35を有するものである。地図情報管理システム34は,少なくとも位置情報の入力を契機にその位置情報に対応する地名データ(行政区画名等)や地理画像を索出するデータベース管理機構を備えたものである。」
・「【0049】条件設定部37は,データ処理部38において車両の個々のイベントの内容を認識するためのデータ条件,すなわち,イベントが事故に直結する可能性がある危険挙動であるかどうかを判定するための条件パターン(データレベルの単独の閾値あるいは複数の閾値の組み合わせ),危険挙動に該当しない安全挙動であることを特定するための条件パターン(一定時間内のデータ変位量の有無),運転者の運転癖を判定するための条件パターン(危険挙動と同じ),一時停止や運転中断を認識するための条件パターン(停止継続時間)その他の条件パターンを設定するものである。それぞれの条件パターンは,本システムを利用する解析者が任意に設定することができる。
【0050】この条件設定部37においても,解析者の便宜を図るため,所定の埋め込み式ダイヤログウインドウを有する設定用インタフェース画面を表示装置32に案内表示させ,解析者が,データ入力装置33を通じてこれらのダイヤログウインドウの埋め込み領域に該当データを入力することによって条件パターンを設定できるようになっている。例えば図13は,運転癖のうち悪癖部分を判定するための悪癖閾値,図14は危険挙動を判定するための危険挙動閾値の設定画面である。なお,図13及び図14の内容は例示であり,図示のような設定内容に拘束されるものではない。」
・「【0052】挙動分析モジュール381は,イベントデータ,集計データ,状態収集データから予め設定された条件パターンに適合するものを抽出して,運転開始後,運転終了までの間の車両の挙動特徴を特定するとともに,運転開始場所(出庫場所)及びその時刻,挙動発生場所及びその時刻ないし継続時間,運転終了場所(入庫場所)及びその発生時刻を特定する。危険挙動や悪癖に該当する挙動特徴については,漏らさず特定し,これを記録しておく。また,走行方向(前方/後方),走行速度,走行中の加速度の発生事実,走行距離,一時停止の発生事実,アイドリング時間,運転中断場所,電源異常の有無等を特定する。さらに,各場所に対応する地名データを地図情報管理システム34より索出し,当該場所に関する部分を,索出した地名データに置換する。」
・「【0057】判定用情報としては種々のものが考えられるが,ここでは,速域別の平均値と標準偏差を用いて,各運転者が安全運転傾向か危険運転傾向かを把握できるようにする場合の例を挙げる。平均値と標準偏差は,例えば平均速度に対する加速度のゆらぎの分布として把握することができる。図15は,標準的な運転を行う運転者による平均値(バーX)とそのゆらぎを示した図であり,横軸は加速度(G),縦軸は加速度の発現頻度(1a)である。図16は,この運転者による速域別の加速度のゆらぎを示した図である。ここで,「低速域」は30km/h未満の速域,「中速域」は70km/h未満の速域,「高速域」は70km/h以上の速域を想定している。図16から,0.1G程度の加速度を生じさせるアクセル操作,ハンドル操作は,低速域であれば安全であるが,高速域では極めて危険であることが判る。」
・「【0062】燃料相関分析モジュール384は,車両の燃料消費傾向を運転者別に分析して定量化し,効率の良い走行と効率の悪い走行とを区別できるようにするための判定用情報を生成するものである。この場合の定量化は,具体的には,挙動分析モジュール381で特定した車両のアイドリング時間,走行速度及び集計データによる加速度累積値を変数とする所定の燃料消費量を演算することによって行う。燃料消費量は,例えばアイドリング時間をI,加速度累積値をGd,その他の要素,例えば走行平均速度や走行時間等を定数αと仮定すると,ほぼaI+bGd+αの演算結果で表される。つまり,発進回数が少なく且つ等速走行時間が継続される限り加速度累積値Gdは“0”に近づくので,消費燃料は,アイドリング時間Iや走行時間のような時間要素と,平均走行速度のような速度要素との関数となる。各係数a,bは,以下のようにして求めることができる。
(係数a)「Gd=0,α=0」の場合,消費燃料量は,係数a・アイドリング時間Iの演算結果となる。そこで,一定時間,アイドリング状態を保ち,このときの燃料消費量を実測する。これを上記演算式に代入することで,係数aを求める。
(係数b)アイドリング時間Iが0の状態で同一の平均速度で走行を行う。n回目の走行の際の燃料消費量と加速度累積値をそれぞれ「消費燃料量n」,「加速度累積値Gdn」とすると,燃料消費量nは,「b・Gdn+α」で表される。
同一の平均速度のためαが共通なので,各回の燃料消費量nの差を加速度累積値Gdnの差で除算することによって,係数bを特定することができる。
(評価)上記手順で係数a,b及び定数αを確定し,アイドリング時間I及び加速度累積値Gdを状態収集データ等から求め,「aI+bGd+α」の演算結果を得る。この演算結果が相対的に小さい場合は「効率の良い走行」,大きい場合は「効率の悪い走行」と評価することができる。評価結果は,例えば同一データフィールド内に複数の運転者のものを統合的に表示することで,各運転者による燃料消費傾向を一目で判定できるようになる。」

・第13図には,運転癖(悪癖)の条件設定画面例を示した説明図が示されており,「急発進」,「定速からの急発進」,「急制動」の加減速度の閾値を設定することが示されている。また,第14図には,危険挙動の条件設定画面例を示した説明図が示されており,「急発進」,「定速からの急加速」,「急制動」の加減速度の閾値を設定することが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,甲第4号証には,次の発明(以下,「甲第4号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「搭載される車両における前後左右方向の加速度データを計測する加速度計112x,112y,車両の現在の緯度・経度・速度・方位・時刻等を表すGPSデータを受信するGPSレシーバ113及び車速パルスを取得するパルス取得機構114を有するデータレコーダ10であって,
設定された所定の閾値を超えた挙動(イベント)を表すデータを抽出し,送出するイベント抽出部132及び送出されたデータを記録するデータ記録部133を具備したレコーダ部13を備え,
イベントを表すデータを抽出するための設定された閾値は,急発進,定速からの急加速,急制動を識別するための加速度データであり,設定された所定の閾値を超えた挙動(イベント)を表すデータを抽出し,送出するイベント抽出部132及び送出されたデータをデータ記録部133に記録するデータレコーダ10。」

(4)甲第5号証(特開2002-251699号公報)
甲第5号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 予め設定した基準値と比較することにより危険走行を検出する危険走行検出手段と,前記危険走行が検出された場合に警告案内を音声で出力する音声出力手段とを備えた走行警告案内装置。
【請求項2】 前記危険走行検出手段が,急発進または急停車を検出することを特徴とする請求項1記載の走行警告案内装置。」
・「【0012】マイク14は,車内の運転者近傍に配置され,ユーザが発声した語句を入力するものであり,音声認識部15は,マイク14から入力された語句の単語を周波数分析して入力音声を認識する。画像プロセッサ16は,地図データや自車の現在位置データ,建物データなどに基づき表示画像の形成処理を行う。記憶部17は,プログラムやデータを格納したROM,作業データを一時的に格納するRAM,画像データを格納するVRAMなどを備えている。音声プロセッサ18は,音声認識結果として出力された音素記号系列を音声信号に変換したり,記憶部17のROMに記憶された音声データを音声信号に変換する。スピーカ19は,音声プロセッサ18とともに音声出力手段を構成し,検索結果や音声認識結果,走行ルート上の交差点案内,分岐案内,料金所案内,出口案内,警告案内などの音声案内,およびリモコン7からの操作内容などを音声で出力する。CPU(中央処理装置)20は,装置全体を制御するとともに,ナビゲーション機能を実現するために,現在位置検出手段21,経路探索手段22,危険走行検出手段23などを備えており,これらはソフトウエアとして実現される。
【0013】次に,本実施の形態における動作について,まずナビゲーション装置としての動作について説明する。図1において,所定の操作により装置を立ち上げると,CPU20内の現在位置検出手段21が,GPS受信機8からの位置情報と,方位センサ1および車速センサ2からの信号をセンサ信号処理部4により処理したデータを基に自車の正確な現在位置を算出する。この自車位置情報に基づき,CPU20が,DVD-ROMドライブ5を通じてDVD-ROMから該当する道路地図データを読み出し,画像プロセッサ16により画像データに変換して記憶部17のVRAMに一旦記憶した後,色信号に変換して通信インターフェイス13を通じて液晶ディスプレイ6の画面上に自車位置とともに表示する。道路地図データの取得は,外部通信制御部10を通じて外部のサーバから取得することもできる。一方,マイク14を通じて目的地などの住所名を入力すると,音声認識部15がその住所名を認識し,CPU20はその住所名を目的地に設定し,記憶部17のRAMに記憶する。経路探索手段22は,この特定された目的地までの自車の現在位置からの最適な案内経路を算出し,液晶ディスプレイ6の地図上に重ねて表示する。運転者は液晶ディスプレイ6に表示された案内経路に沿って車両を進めると,CPU20は,現在位置検出手段21が算出した現在位置情報と道路地図データ上の道路ネットワークデータを基に,液晶ディスプレイ6上の自車位置マークを順次更新してゆく。車両が案内経路中の分岐点などに差し掛かると,道路地図データに付加された音声案内のデータがスピーカ19から出力される。運転者は,このようなナビゲーション装置の誘導により,迷うことなく最短距離で目的地まで走行することができる。
【0014】次に,運転者が急発進や急停車などの危険走行をした場合の動作について図2のフロー図を参照して説明する。車速センサ2は,車両走行中は常に動作状態にあり,車速センサ2からの車速パルスは,CPU20内のカウンタにより2秒間に何パルスをカウントしたかによって車速が検出される。また,加速度センサ3も,車両走行中は常に動作状態にあり,例えば静電容量型の加速度センサの場合は,センサとして働く振り子をコンデンサの片方の極にして,加速度が振り子に加わると,その変位によってコンデンサの静電容量が変化するので,この変化を基に+の加速度と-の減速度を検出できるようになっている。CPU20の危険走行検出手段23は,加速度センサ3からの信号を入力して加速度の値を監視しており(ステップS1),入力された加速度が基準値以上で,かつ車速が基準値以上である危険走行か否かを判断し(ステップS2),危険走行と判断された場合には,CPU20が,記憶部17のROMに格納された音声信号の中から該当する警告音声信号を読み出して,音声プロセッサ18を介してスピーカ19から危険である旨の警告を出力する(ステップS3)。記憶部17のROMには,図2(b)に示すような,加速度と車速の対応テーブルが格納されており,加速度の値GがG_(1)以上で,かつ車速VがV_(1)以上の場合に危険走行と判断する。危険走行の判断は,車速Vが大きくなるほど加速度の値Gも大きくなるように設定されている。これらの数値は,実験的に求めたものを使用する。なお,検出された加速度が同じであっても,車速が大きい場合には警告を出力し,車速が小さい場合には警告を出力しないようにプログラムされている。警告音声は,例えば,「危ない!」「ぶつかるぞ!」「ぶつけられるぞ!」などである。」

・図2(b)には,加速度と車速の対応テーブルが記載されており,車速が大きいほど加速度が大きくなっている点が示されている。

(5)甲第6号証(特開2003-106207号公報)
甲第6号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【請求項16】 車速を検出する第1の過程と,所定の時間毎に車速を検出し,前回検出値との差の極性が変化する極性変化点を検出する第2の過程と,今回極性変化点が前回極性変化点より所定時間内に起こり,且つ前回極性変化点からのアクセル開度変化量が所定値以上の場合に燃費悪化車速変化と判定する第3の過程と,前記燃費悪化車速変化の回数を記録する第4の過程と,該燃費悪化車速変化回数に応じて,燃費が良い運転かどうか評価する第5の過程とを具えたことを特徴とする車両運行燃費評価方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,車両の運転の仕方につき,燃費が小の運転をしたか,燃費が大の運転をしたかを評価する車両運行燃費評価装置および方法に関するものである。」
・「【0010】(作 用)本発明では,アクセル操作による燃費評価を,具体的,実際的に行う。即ち,アクセルペダルの踏み込み,或いは離しといったアクセル操作によるアクセル開度極性変化点を,その時間間隔,アクセル開度の変化量という点で監視し,燃費を悪くするアクセル操作の回数を記録する。そして,単位走行距離当たり何回か,あるいは単位走行時間当たり何回かを求め,その回数を燃費評価点表に照らし,点数により燃費を評価する。この燃費評価は,一般道路での走行も含めた全ての走行時について行うことが可能だが,高速走行時に限って行えば,燃費評価を精度高く行うことが出来る。なぜなら,高速走行時には,交通信号もなく歩行者の飛び出しもないので,それら外的要因により止むなく急激なアクセル操作をさせられる機会が少なく,また一般道路では前後の車の流れにあわせて走る必要がある場合が多いのに対し,高速走行時では比較的そのような制約が少なく,より運転者の意思通りに走りやすいため,燃料消費量は,運転者の運転のうまさ,まずさを反映した量となるからである。なお,アクセル操作の代わりに車速変化に注目し,同様にして燃費評価をすることも出来る。」
・「【0012】しかしながら,一般道路と高速道路とでは運転環境が大きく異なる。一般道路走行時には,交通信号,歩行者の飛び出し,カーブが多い等といった外的要因のために,やむを得ずアクセル開度や車速を変化させざるを得ないことが多いから,アクセル開度や車速の変化で運転者の運転を評価しようとすると,評価の精度は多少落ちる。しかし,高速道路走行時には前記のような外的要因がなく,燃料消費量は運転者の運転の仕方をより一層正確に反映したものとなるから,評価の精度は高くなる。したがって,本発明の実施形態としては,高速走行時のみに評価する形態,高速走行,一般走行を区別して別々に評価する形態,高速走行・一般走行を区別せずに評価する形態等が考えられる。」
・「【0037】(第6の実施形態)第1?第5の実施形態は,「アクセル開度」を検出し,アクセル開度の変化のさせ方に注目して燃費評価をするものであったが,アクセル開度の代わりに「車速」を検出し,車速の変化のさせ方によって燃費評価をすることも出来る。その場合,燃費評価の精度は,一般走行をしている場合より,高速走行をしている場合の方が良い。その理由は,アクセル開度の場合で述べたのと同様の理由である(交通信号,歩行者の飛び出し,カーブが少ない等)。第6の実施形態は,高速走行の場合にのみ,車速の変化のさせ方に注目して燃費評価を行うものである。」
・「【0042】なお,前記した図1等のフローチャートでの高速走行判定(ステップ2?7)は,検出した車速Vを基準値V_(0) と比較するという厳密な方法で装置に判定させているが,そのようにする代わりに運転者に判定させても良いし,他の車載機器により判定することとしてもよい。例えば,運転者が高速走行に入ったと判定した時にボタンスイッチを押すことにしておき,このボタンスイッチから信号が出された時,高速走行に入ったとして,ステップ8以降の処理をするようにしてもよい。また,有料道路自動料金収受システム(ETC)による情報や,車載ナビゲーションシステムからの情報を利用してもよい。」

2 無効理由2について
(2-1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1(以下,「前者」という。)と甲第2号証記載の発明(以下,「後者」という。)とを対比する。
(ア)後者の「運転操作評価装置」も,前者の「ナビゲーション装置」と同様に,運転者の操作を評価するものといえることから,両者は「運転操作評価装置」との概念で共通する。また,後者の「加減速度センサ6及び車速センサ7を含む車両の走行状況を検出するセンサ部」及び「モニタ1」が,前者の「車両の走行状況を検出するセンサ部」及び「出力手段」に,それぞれ相当する。
したがって,後者の「加減速度センサ6及び車速センサ7を含む車両の走行状況を検出するセンサ部を備えた運転操作評価装置であって・・・モニタ1を備えており,」と,前者の「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」とは,「車両の走行状況を検出するセンサ部と,出力手段と,を備えた運転操作評価装置」との概念で共通する。
(イ)後者の「運転評価基準マップ」は,「車速と車両の加減速度との関係に基づいた評価基準が設定されているものであって,車速が大きくなるに従って絶対値が小さくなる領域境界線が定められた」ものであるから,かかる「運転評価基準マップ」と前者の「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブル」とは,「移動速度に基づいて加減速度を判定するための閾値を設定した閾値テーブル」との概念で共通する。
また,後者は,低燃費走行が達成されているかどうかの評価も行うものであるから,その「運転評価基準マップ」の「加減速度」は,前者で言う「省エネルギー運転に影響を与える急加減速」も含むものである。
さらに,後者も,加減速度を判定するための「運転評価基準マップ」を用いて運転評価を行うものであるから,当然,前者の「加減速判定部」に相当するものを備えているといえる。
加えて,後者も,加減速度に基づく判定の結果をモニタ1に表示するものであるから,そのような表示をするに当たって,当然,前者の「急加減速情報記録部」に相当するものを備えているといえる。
したがって,後者の「運転評価基準マップと,運転操作監視手段と,運転操作監視手段の監視結果に基づいて評価された運転者の評価を表示する表示手段」を備えている点と,前者の「ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部」を備えている点とは,「運転操作評価装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて省エネルギー運転に影響を与える急加減速度を評価するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部」を備えているとの概念で共通する。
(ウ)後者の「運転評価基準マップは,車速と車両の加減速度との関係に基づいた評価基準が設定されているものであって,車速が大きくなるに従って絶対値が小さくなる領域境界線が定められたマップを備えており,運転操作監視手段は車速と車両の加減速度によって表される運転点を運転状態として監視して,加減速度の絶対値が運転評価基準マップの領域境界線より小さいモードB(燃費モード)領域及び加減速度の絶対値が領域境界線より大きいモードA(スポーツ走行モード)領域の各モード領域内を走行していた時間を算出し,各モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出」している点は,車両の移動速度に応じて運転評価基準マップから判定の基準たる加減速度の値を取得し,センサ部の出力に基づいて得られる加減速度を当該判定の基準たる加減速度の値と比較する,といった内容を含むものであるから,前者の「前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較」している点に相当する。
(エ)後者は,車両の移動速度に応じて閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,センサ部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,「この結果に基づいて運転者の総合的なレベルを算出して,運転者に運転レベルを認知させる」のであるが,これは,運転状態を判定する,という内容を含むものであるし,加速度に基づく判定の結果をモニタ1に表示するものであるのだから,加減速情報を記録しておくものと解せる。そして,後者は,前述したように,前者の「急加減速情報記録部」に相当するものを備えているといえる。
ここで,後者について,加減速情報は,前者で言う「省エネルギー運転に影響を与える急加減速」も含むものであるし,記録される加減速情報として,前者で言う「急加減速が行われた状況を示す急加減速情報」も含まれるものである。
そうしてみると,後者の「この結果に基づいて運転者の総合的なレベルを算出して,運転者に運転レベルを認知させる」点は,前者の「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する」点に相当する。
(オ)したがって,両者は,
「車両の走行状況を検出するセンサ部と,出力手段と,を備えた運転操作評価装置において,
前記運転操作評価装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて省エネルギー運転に影響を与える加減速度を評価するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する運転操作評価装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点1]
運転操作評価装置が,本件特許発明1では「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図情報記憶部」を備えている「ナビゲーション装置」であるのに対し,甲第2号証記載の発明ではそのような特定がない「運転操作評価装置」である点。
[相違点2]
閾値テーブルが,本件特許発明1では「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに」閾値を設定したものであるのに対し,甲第2号証記載の発明ではそのような特定がない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)[相違点1]について
本件特許発明1において,指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図情報記憶部を備えているナビゲーション装置であることを特定したことについて,本件訂正請求明細書等には殊更その技術的な意義を説明する個所はない。
ところで,第1回口頭審理調書の記載事項として次のものがある。
「訂正後の請求項1ないし3において,経路探索部及び地図記憶部の技術的な意義について
(被請求人側)
訂正後の請求項1ないし3では,ナビゲーション装置であることを特定するために,経路探索部及び地図記憶部を特定した。
(請求人側)
主張はない」
この被請求人側の主張もふまえれば,通常のナビゲーション機能を備えた装置である以上の意味はないと解するのが相当である。
そして,甲第2号証には,「【0039】また,車両に搭載されたナビゲーション装置のモニタを使用する事で,評価基準領域の選択と結果の表示が一つのモニタで兼用できるため,構成を簡略化することができると共に,従来から車両に搭載されたモニタを使用することで新たに構成を追加する必要が無いという効果が得られる。」と記載されているように,構成の簡素化を課題としてナビゲーション装置の構成の一部であるモニタを兼用することが記載されているので,運転操作評価装置に係る甲第2号証記載の発明をナビゲーション装置として構成することは,当業者が適宜採用し得たことといえる。
もとより,指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部等を備えたナビゲーション装置は,甲第5号証に例示されるように,本件特許出願時において周知であり,甲第2号証記載の発明に経路探索部等を設けることにより不都合が生じるものでもない。
したがって,甲第2号証記載の発明において,指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図情報記憶部を備えているナビゲーション装置とすることには,当業者にとっての格別の創意工夫は見いだせない。
(イ)[相違点2]について
甲第2号証には,車両の移動速度と加減速度の閾値が関連付けられ,検出された移動速度に応じた閾値によって,急加減速度であるか否かの判別を行うことが記載されている。
ところで,2つの関連付けられた量について,一方の量を検出し,その検出された量に対応する他方の量に基づいて制御等の処理を行う場合に,一方の量を“区分”するとともに,その“区分”ごとに対応する他方の量の値を定めたテーブルを作成しておき,そのテーブルに基づいて一方の量の検出値から他方の量の値を求めることは,コンピュータを用いた装置においては普通に行われている周知の技術にすぎない。
例えば,工作機械は運転中温度が変化すると加工誤差が生じるものであるが,工作機械の温度と加工誤差との間には相関関係があり(甲第7号証;特開昭51-90083号公報第2頁左上欄9-13行目,第2頁右下欄2-13行目及び第3図等参照),このような熱変形による加工誤差を補正するために工作機械の温度ごとに補正量を定めたテーブルを設け,このテーブルに基づいて検出された温度に対応する補正量を求めて制御しており(甲第8号証;特開平6-226590号公報第2頁左欄2-15行目及び第4頁左欄26-31行目等参照),特に,甲第8号証は,温度ごとに補正量を定める旨記載されているが,温度は連続量なので,補正テーブルは温度区分ごとに補正量を定めたものとなっている(例えば,温度差は連続量なので,1℃ごとの飛び飛びの値をとるわけではなく,11.8℃とか,12.3℃という値をとる場合がある。温度差が12℃という場合は,四捨五入して12℃という区分を意味することとなる。)。
甲第2号証記載の発明も,関連する量の一方である車両の移動速度を検出し,これに対応する他方の量である加減速度に基づいて評価,判定という処理を行うものであるので,一方の量である車両の移動速度を“区分”し,これに対応する他方の量の値を定めたテーブルを作成しておき,これに基づき評価,判定に必要な値を求めることは,当業者が容易に行うことができる。
したがって,甲第2号証記載の発明において,上述した周知の技術を踏まえて上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは,当業者が容易になし得たことである。
なお,被請求人は,「ナビゲーション装置で,省エネルギー運転の急加減速を評価するパイオニア的発明です。」とも主張する(第1回口頭審理調書参照)が,ナビゲーション装置に各種の機能を搭載することは常套手段であり,さらに,甲第2号証の【0039】に示唆もあるから,かかる主張を採用することはできない。
(ウ)そして,本件特許発明1の発明特定事項により奏される効果も,甲第2号証記載の発明及び上記周知の技術からみて格別顕著であるとはいえない。
よって,本件特許発明1は,甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。

(2-2)本件特許発明2について
本件特許発明2は,本件特許発明1に対して「急加減速情報は,不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所,時間又は回数を含む」点を発明特定事項として付加したものである。
甲第2号証記載の発明は,「運転操作監視手段は車速と車両の加減速度によって表される運転点を運転状態として監視して,加減速度の絶対値が運転評価基準マップの領域境界線より小さいモードB(燃費モード)領域及び加減速度の絶対値が領域境界線より大きいモードA(スポーツ走行モード)領域の各モード領域内を走行していた時間を算出し,各モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出し,この結果に基づいて運転者の総合的なレベルを算出して,運転者に運転レベルを認知させる」ものであるから,本件特許発明2でいう「不適切な急加減速操作が行われた」場合に対応するものといえる。
また,甲第2号証記載の発明も,「各モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出」するものであるから,明らかに“時間”を考慮するものである。
したがって,本件特許発明2において本件特許発明1に対して特定された点は,実質的な相違点にはならない。
よって,本件特許発明2は,甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。

(2-3)本件特許発明3について
本件特許発明3は,本件特許発明2に対してさらに「加速度判定部は,前記不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」点を発明特定事項として付加したものに相当する。
甲第2号証記載の発明は,「運転操作監視手段は車速と車両の加減速度によって表される運転点を運転状態として監視して,加減速度の絶対値が運転評価基準マップの領域境界線より小さいモードB(燃費モード)領域及び加減速度の絶対値が領域境界線より大きいモードA(スポーツ走行モード)領域の各モード領域内を走行していた時間を算出し,各モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出し,この結果に基づいて運転者の総合的なレベルを算出して,運転者に運転レベルを認知させる」ものであって,その「運転操作監視手段」,「各モード領域走行時間の総走行時間に占める割合を算出し,この結果に基づいて運転者の総合的なレベルを算出」及び「運転者に運転レベルを認知させる」点は,それぞれ,本件特許発明3の「加速度判定部」,「不適切な急加減速を判定」及び「出力手段にその旨を報知する」点に相当するものといえる。
しかしながら,甲第2号証記載の発明は,「各モード領域走行時間の総走行時間」を算出し,それが全体の運転時間に占める「割合」を求めていることから明らかなように,不適切な急加減速に係る運転毎に判定を行うものではない。これに対し,本件特許発明3は,既に訂正事項5について述べたように,加速度判定部が不適切な急加減速を判定した場合に行われる出力手段への報知が,不適切な急加減速を判定する都度行われるものに限定されたものと解せる(「第2 2 (1) オ (イ)」参照。)。
そうしてみると,甲第2号証記載の発明は,「不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」ものとは明らかに異なる技術内容のものというべきであるし,また,「各モード領域走行時間の総走行時間」を算出して,それが全体の運転時間に占める「割合」を求める甲第2号証記載の発明に基づいて「不適切な急加減速を判定した場合には,前記出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」構成を得ることが容易であるとはいえない。
したがって,本件特許発明3は,甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

(2-4)本件特許発明4について
本件特許発明4は,本件特許発明1に対して,「前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する」点を発明特定事項として付加し,かつ,「急加減速情報」についての「急加減速操作が行われた状況を示す」点を省いたものに相当する。
本件明細書の段落【0028】には,「請求項4にかかる発明においては,請求項1にかかるナビゲーション装置において,前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する。このような構成によれば,急加減速操作の適否を識別することができ,きめ細かい省エネルギー運転支援を行うことができるようになる。」と記載されており,本件特許発明4は,地図情報に基づいて現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定するものと理解できる。
請求人は,審判請求書の「エ.無効理由2について e.本件特許発明4及び本件特許発明5について」において,「刊行物5(「甲第6号証」が相当)には,車速の変化によって車両運行燃費評価を行う発明が記載されており・・・その際,カーブでは,「やむを得ずアクセル開度や車速を変化させざるを得ないことが多いから,アクセル開度や車速の変化で運転者の運転を評価しようとすると,評価の精度は多少落ちる」旨記載されています・・・。また,刊行物5(「甲第6号証」が相当)の車速の変化とは加減速度にあたります。そうすると,刊行物1発明の如く加減速度を基に適切な運転であるか否かを判断する際に,評価の精度が下がるカーブでの評価を避けて,直線道路又は,直線に近い(所定の曲率以下の)道路のみを評価対象の道路とすることは,当業者が容易に想到することができるものです。」と主張している。
しかし,地図情報に基づいて現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する点は,甲第6号証には記載されていない。
したがって,本件特許発明4は,請求人が主張するように甲第2号証記載の発明及び甲6号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

(2-5)本件特許発明5について
本件特許発明5は,本件特許発明1に対して「前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する」点を発明特定事項として付加し,かつ,「急加減速情報」についての「急加減速操作が行われた状況を示す」点を省いたものに相当する。
本件明細書の段落【0029】には,「請求項5にかかる発明においては,請求項1にかかるナビゲーション装置において,前記加速度判定部は,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合,前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて,現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する。このような構成によれば,急加減速操作の適否を識別することができ,きめ細かい省エネルギー運転支援を行うことができるようになる。」と記載されており,地図情報に基づいて,現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定するものであると理解できる。
そうしてみると,上述した「(2-4)本件特許発明4について」と同様の理由により,本件特許発明5は,請求人が主張するように甲第2号証記載の発明及び甲6号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

(2-6)本件特許発明6について
本件特許発明6は,本件特許発明1に対して「加速度判定部は,不適切な急加減速を判定した場合には,出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」点を発明特定事項として付加し,かつ,「急加減速情報」についての「急加減速操作が行われた状況を示す」点を省いたものに相当する。
既に「(2-3)本件特許発明3について」で述べたように,甲第2号証記載の発明は,「不適切な急加減速を判定した場合には,出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」ものとは異なる技術内容のものであるし,また,「各モード領域走行時間の総走行時間」を算出し,それが全体の運転時間に占める「割合」を求める甲第2号証記載の発明に基づいて「不適切な急加減速を判定した場合には,出力手段にその旨を報知し,省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す」構成を得ることが容易であるとはいえないのであるから,本件特許発明6も,甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

3.無効理由3について
(3-1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲第3号証記載の発明とを対比する。
(ア)後者の「車速センサ102,GPS受信機103及び振動ジャイロ104によって構成される現在位置検出装置120,車両に加わる前後方向の加速度(減速度)を検出するGセンサ101並びに地域名称,道路種別,道路名称,道路形状等の道路地図データを記憶したROM107を備えたナビゲーション装置」と,前者の「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」とは,「車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」との概念で共通する。
(イ)後者の「マップデータ」は,「車両の制動初速と減速加速度のしきい値αthとの関係」が格納されたものであり,その「減速加速度」とは,最終的には危険地点を決定するために用いられるものでもあることから,「急減速」ということができる。
そうすると,後者の「マップデータ」と前者の「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブル」とは,「車両の移動速度に応じた,急減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブル」との概念で共通する。
また,後者は,車両の制動初速に応じた減速加速度を判定するものであるから,当然,「減速判定部」と称せるものを備えているといえる。
したがって,後者の「ナビゲーション装置は,車両用報知装置を備えており,ナビゲーション装置のROM107には,車両の制動初速と減速加速度のしきい値αthとの関係を示すマップデータが格納されて」いる点と,前者の「ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え」ている点とは,「ナビゲーション装置は,更に,減速判定部と,車両の移動速度に応じた,急減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,を備え」ているとの概念で共通する。
(ウ)後者の「車両用報知装置は,現在の車速を用いてマップデータの現在の車速に対する危険地点決定しきい値を読み出し,Gセンサ101から読み込んだ前後加速度の値と比較し」ている点と,前者の「加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し」ている点とは,「減速判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し」ているとの概念で共通する。
(エ)後者の「読み込んだ前後加速度が大きい場合には,RAM105に現在位置を危険地点として記憶し,道路地図データと危険地点を示すマークをディスプレイ108に表示する」点と,前者の「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する」点とは,「急加減速が行われた状況を示す急減速が行われたか否かを判定する」との概念で共通する。
(オ)したがって,両者は,
「車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置において,
前記ナビゲーション装置は,更に,減速判定部と,車両の移動速度に応じた,急減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,を備え,前記減速判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,急加減速が行われた状況を示す急減速が行われたか否かを判定するナビゲーション装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点3]
本件特許発明1が「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部」を備えているのに対し,甲第3号証記載の発明は,経路探索部を備えているか明らかでない点。
[相違点4]
閾値テーブルに設定した閾値が,本件特許発明1では「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値」であるのに対して,甲第3号証記載の発明では「車両の制動初速」に応じた危険地点を決定するための「減速加速度」のしきい値であって,本件特許発明1では「急加減速情報記録部」が備えられていて「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する」のに対して,甲第3号証記載の発明では急減速が行われたか否かを判定するにとどまる点。
イ 判断
(ア)[相違点3]について
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部を備えたナビゲーション装置は,甲第5号証に例示されるように,本件特許出願時において周知であり,甲第3号証記載の発明に経路探索部等を設けることにより不都合が生じるものでもない。
したがって,甲第3号証記載の発明のナビゲーション装置に「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部」を備えさせることには,当業者にとっての格別の創意工夫は見いだせない。
(イ)[相違点4]について
甲第3号証に記載された発明は,ドライバの運転技量に基づいた最適な情報を提供することを目的としたものであるが,さらに具体的にいえば,ドライバの運転技量により異なるものである急ブレーキを要する危険地点をドライバに教えるものである。
その急ブレーキの判定のためには,ブレーキペダル角速度センサ601のみならずアクセルペダル角速度センサ701も用いることもできるのであるが,このアクセルペダル角速度センサ701の利用の仕方は,危険回避に伴う急なアクセルペダルのオフ操作の検出にとどまり,“急加速”の検出を意図したものではない。しかも,甲第3号証に記載された発明が検出する“急減速”は,危険回避の観点から定められたものであって,「省エネルギー運転に影響を与える」か否かの観点から定められるものとは,明らかに別異のものというべきである。
また,甲第3号証に記載された発明が最終的にドライバに提示しようとしている情報は,あくまで危険地点なのであって,急な加減速の存在自体ではない。
そうしてみると,甲第3号証記載の発明において,さらに「省エネルギー運転に影響を与える」か否かの観点から急な減速のみならず急な加速も検出して,急加減速情報を記録するような構成を採用することが技術的に可能であるか否かはともかくとして,当業者にとってわざわざそのような構成を採用するという起因を欠いているというべきである。
(ウ)以上からすると,甲第3号証記載の発明に基づいて相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を当業者が容易に採用することができたとはいえない。
よって,本件特許発明1は,請求人が主張するように甲第3号証記載の発明及び甲第5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

(3-2)本件特許発明2?6について
上述したように,本件特許発明1が甲第3号証記載の発明及び甲第5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではないことをふまえると,本件特許発明1に対してさらなる発明特定事項を付加した本件特許発明2,3も,請求人が主張するように甲第3号証記載の発明及び甲第5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではないことは明らかであるし,本件特許発明1に対してさらに別の発明特定事項を付加した本件特許発明4?6も,請求人が主張するように甲第3号証記載の発明,甲第5号証記載及び甲6号証記載の発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではないことは明らかである。

4.無効理由4について
(4-1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲第4号証記載の発明とを対比する。
(ア)後者の「データレコーダ」と前者の「ナビゲーション装置」とは,「車両に搭載された装置」という概念で共通する。
したがって,後者の「搭載される車両における前後左右方向の加速度データを計測する加速度計112x,112y,車両の現在の緯度・経度・速度・方位・時刻等を表すGPSデータを受信するGPSレシーバ113及び車速パルスを取得するパルス取得機構114を有するデータレコーダ10」と前者の「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」とは,「車両に搭載された装置」との概念で共通する。
(イ)後者の「設定された所定の閾値」は,「テーブル」形式とされているものと考えられる。
また,後者は,「イベントを表すデータを抽出するための設定された閾値は,急発進,定速からの急加速,急制動を識別するための加速度データであり」とあるように,その「設定された所定の閾値を超えた挙動(イベント)」には,加減速度の急な変動も含まれるから,後者の「イベント抽出部132」,「データ記録部133」は,それぞれ,前者の「加速度判定部」,「急加減速情報記録部」に相当する。
したがって,後者の「設定された所定の閾値を超えた挙動(イベント)を表すデータを抽出し,送出するイベント抽出部132及び送出されたデータを記録するデータ記録部133を具備したレコーダ部13を備え」ている点と,前者の「前記ナビゲーション装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え」ている点とは,「前記車両に搭載された装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じた,急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え」ているとの概念で共通する。
(ウ)後者の「イベントを表すデータを抽出するための設定された閾値は,急発進,定速からの急加速,急制動を識別するための加速度データであり,設定された所定の閾値を超えた挙動(イベント)を表すデータを抽出し,送出するイベント抽出部132及び送出されたデータをデータ記録部133に記録する」との点は,前者の「加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部又はGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,」「急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する」点に相当する。
(エ)したがって,両者は,
「車両に搭載された装置において,
前記車両に搭載された装置は,更に,加速度判定部と,車両の移動速度に応じた,急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと,急加減速情報記録部と,を備え,前記加速度判定部は,車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに,前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し,急加減速が行われたか否かを判定し,急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する車両に搭載された装置」
の点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点5]
車両に搭載された装置に関し,本件特許発明1が「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」を備えているのに対し,甲第4号証記載の発明は,そのようなナビゲーション装置を備えていない点。
[相違点6]
閾値テーブルに設定した閾値が,本件特許発明1では「車両の移動速度に応じて区分され,移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値」であるのに対して,甲第4号証記載の発明では「車両の移動速度に応じて区分する」という概念及び急加減速についての「省エネルギー運転に影響を与える」という概念がなくて,本件特許発明1では「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定」するのに対して,甲第3号証記載の発明では急減速が行われたか否かを判定するにとどまる点。
イ 判断
(ア)[相違点5]について
・ 既に「2 無効理由2について (2-1)本件特許発明1について イ判断」の「(ア)[相違点1]について」で述べたように,本件明細書等には,本件特許発明1において「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図情報記憶部を備えているナビゲーション装置」であることを特定した技術的な意義について殊更説明する個所はなく,また,第1回口頭審理調書の記載事項の被請求人側の主張もふまえれば,通常のナビゲーション機能を備えた装置である以上の意味はないと解される。
・ しかし,「データレコーダ」という装置自体と「ナビゲーション装置」は,明らかに別異の目的のために構成された装置であって,「車両に搭載された装置」という以上の共通点はないものである。
そして,甲第4号証には,車両に搭載された装置を「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」とすることについて,記載がないだけでなく,示唆もない。
・ 以上を踏まえると,相違点5に係る本件特許発明1の構成,すなわち「指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と,車両の走行状況を検出するセンサ部と,現在位置を測位するGPS受信部と,地図情報を記憶した地図記憶部と,出力手段と,を備えたナビゲーション装置」が例えば甲第5号証に記載されるように良く知られたものであるとしても,甲第4号証記載の発明に係る「データレコーダ」を「ナビゲーション装置」として構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって,甲第4号証記載の発明に基づいて当業者が相違点5に係る本件特許発明1の構成を容易に採用し得たものではない。
(イ)[相違点6]について
・ 既に「2 無効理由2について (2-1)本件特許発明1について イ判断」の「(イ)[相違点2]について」で述べたように,閾値テーブルに設定した閾値を「区分」すること自体には,当業者にとっての格別の創意工夫がみいだせるものではない。
・ 甲第4号証記載の発明は,車両別及びその運転者別の運行データをもとにした運転者の運転傾向性の分析に供されるだけでなく,運転傾向性と燃料消費傾向等との相関関係等の分析にも供されるものであるが,特に「省エネルギー運転に影響を与える」か否かの観点で閾値を設定したものではなく,“燃費消費傾向”についても急な加減速度の出現のみに対応して分析するものではない(段落【0017】【0062】等を参照。)。
・ 甲第2号証記載の発明は,既に「2 無効理由2について (2-1)本件特許発明1について ア 対比」で述べたように,「省エネルギー運転に影響を与える加減速度を評価するための閾値」を用いて「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定」するものと評価できるものである。
しかし,この甲第2号証記載の発明を考慮に入れても,甲第4号証記載の発明自体は,運転傾向性等の分析のために加速度等の閾値を設定し,かつ,燃費消費傾向を分析は加減速度の値のみなずアイドリング時間のような加減速とは直接関係がないデータも用いることを想定したものであるから,甲第4号証記載の発明において加減速度を評価するための閾値を「省エネルギー運転に影響を与える加減速度を評価するための閾値」としてそれを用いて「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定」することは,甲第4号証記載の発明において前提としている運転傾向性の分析や加減速とは直接関係がないデータも用いることで燃費消費傾向を分析するという技術内容に影響を与え,実質的に変容させてしまうことになるのは明らかである。すなわち,甲第4号証記載の発明と,甲第2号証記載の発明における「省エネルギー運転に影響を与える加減速度を評価するための閾値」を用いて「省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定」することは,相容れないというべきである。
・ したがって,甲第4号証記載の発明において,相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項を当業者が容易に採用することができたとはいえない。
(ウ)以上をふまえると,本件特許発明1は,請求人が主張するように甲第4号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

(4-2)本件特許発明2?6について
上述したように,本件特許発明1が甲第4号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではないことをふまえると,本件特許発明1に対してさらなる発明特定事項を付加した本件特許発明2,3も甲第4号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではないことは明らかであるし,本件特許発明1に対してさらに別の発明特定事項を付加した本件特許発明4?6も,請求人が主張するように甲第4号証記載の発明,甲第2号証記載の発明及び甲6号証記載の発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではないことは明らかである。

第7 無効理由5についての当審の判断
訂正事項に関する当事者双方の主張を踏まえて,「第2 2 (1) ウ (イ)」で判断したとおり,訂正事項3に係る「急加減速操作が行われた状況を示す」という字句は,“急加減速が行われた状況に関する”という程度の意味と理解するのが相当なのであって,ここでの「状況」という字句の使用により,「急加減速操作が行われた状況を示す」という事項の内容が不明瞭であるというのは当たらない。
したがって,本件特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないとはいえない。

第8 むすび
本件特許発明1及び2は,いずれも,甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,それらに係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである。
本件特許発明3?6は,いずれも,請求人が主張するように甲第2号証ないし甲第6号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,請求人の本件特許請求の範囲の記載についてのいずれの主張にも理由がない。
したがって,本件特許発明3?6に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものではないし,また,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもないから,請求人の主張及び提出した証拠方法によっては無効にすることはできない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法64条の規定により,請求人がその3分の2を,被請求人が3分の1を負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ナビゲーション装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃費を考慮して省エネルギー運転を支援する省エネルギー運転支援機能を有する車載用のナビゲーション装置に関するものであり、特に、ナビゲーション装置が各種センサや測位手段から取得する情報に基づいて急な加速、減速を識別し、走行中の道路における車両の位置により急な加速、減速が適切な操作か否かを識別するようにしたナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図データや道路データを用いて、所望の出発地から目的地までの経路を探索して利用者を案内するナビゲーション装置、ナビゲーションシステムが知られており、このようなナビゲーション装置、ナビゲーションシステムとしては自動車に搭載して運転者に経路を案内するカーナビゲーション装置、携帯電話をナビゲーション端末として利用して経路探索サーバに経路探索要求を送り、その結果を受信して経路案内を受ける通信型のナビゲーションシステムなどが実用化されている。
【0003】
上記カーナビゲーション装置は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を利用したものであり、地球上を周回している複数のGPS衛星から送信されるGPS信号をGPSアンテナで受信し、該GPS信号に含まれる衛星位置や時計情報等を解析して位置の特定化を行うものである。該複数のGPS衛星の個数は少なくとも4個以上必要である。GPSの単独測位精度は一般的に10m強であるが、DGPS(Differential GPS:ディファレンシャルGPS)を採用することにより5m以下に向上する。
【0004】
ナビゲーション装置は経路探索のために道路ネットワークのデータベースを備えている。この道路ネットワークのデータベースは、地図データの道路(経路)を、その結節点、屈曲点などの位置をノードとするノードデータ、各ノードを結ぶ経路をリンクとするリンクデータ、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)を有するリンクコストデータを蓄積したものである。ナビゲーション装置は、このデータベースを参照して、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるノード、リンクをたどって案内経路とすることによって最短の経路を探索して案内する。このようなデータベースを用いた経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる手法が用いられる。
【0005】
また、最近では、地球環境、エネルギー資源を有効に活用することが大きな課題になっており、自動車の走行に伴う排気ガスによる地球環境の悪化を抑制し、エネルギー資源の不適切な消費を防止するためのシステムが考慮されている。このような機能は省エネルギー運転支援機能ということができ、例えば、車両から運転の状況を示すデータを収集して、燃料などのエネルギーの消費が不適切になるような運転状況があった場合に、統計的にあるいはリアルタイムに報知するシステムが提案されている。
【0006】
このような省エネルギー運転支援機能を有するシステムは、例えば、下記の特許文献1(特開2003-316864号公報)に車両の運行管理システムとして開示されている。この特許文献1に開示された車両の運行管理システムは、車両から運転状況を示すデータを収集する情報センタを備えて構成されている。また、各車両には制御回路が備えられ、この制御回路により各種センサから速度やエンジン回転数などの車両情報を取得し、情報センタに送信する。情報センタは、車両情報から現在の車両の運転状態を分析して省エネ運転が実行されていない場合には、省エネ運転を守るように指示を出す。制御回路は情報センタからの指示を表示器に表示する。
【0007】
例えば、省エネ運転をしていないとして定められる条件としては、次のような項目を設定している。すなわち、速度に比べてエンジン回転数が高い場合、つまり低速走行しているにも関わらず、エンジン回転数が高い、または速度変化が小さいにもかかわらずエンジン回転数が頻繁に高くなるという事象が発生した場合、走行距離が増加しないにもかかわらず、エンジン回転数が高い、またはアイドリング状態に長期間ある場合、速度に適したシフトポジションが選択されていない場合、急な加減速が頻繁に発生している場合、車速が高い場合、短時間のうちにシフトポジションが頻繁に変わる場合、アクセル開度が短時間のうちに頻繁に大小変化している場合などの条件に当てはまる場合である。同様にして安全運転を支援する機能を盛り込むこともできる。
【特許文献1】特開2003-316864号公報(図1、段落[0015]、[0016])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された運行管理システムは、運転状況に関するデータを収集して情報センタに送信する車載機器を車両に設置し、また、その車載機器に情報センタからの情報を表示する機能を備える必要があり、設置のためのコストが必要になるという問題点がある。また、運行管理、運転支援のための情報センタを設置するため設備投資が必要であり、多くの一般ドライバを対象とする支援装置として提供可能なシステムには不適切であるという問題点がある。
【0009】
自動車において不適切に燃料を消費するケースとしては、急激な加減速操作を行った場合があげられる。しかしながら、上記特許文献1に開示された運行管理、運転支援システムにおいては、急激な加減速が頻繁に繰り返されたことを検出して車載機器に報知するものではあるが、車載装置を持つ車両がどのような経路を走行しているかを分析するものではないので、一定の基準で画一的に加減速操作の適否を判断せざるを得ないという問題点がある。
【0010】
自動車は、様々な形状の道路を走行するものであり、カーブなどでは走行の安全上やむを得ずブレーキ操作して減速する必要がありこの場合の急激な減速操作は適切な操作である。また、高速道路、一般道路など属性の異なる道路を走行することもある。高速道路は通常の走行速度が速く、ランプやインターチェンジではカーブがあり、急減速して所望の道路に分岐する場合がある。この場合の減速操作も適切な操作である。逆にカーブから高速道路に入る場合には遅い速度から高速に急加速する場合もある。この場合の急加速も適切な運転操作である。
【0011】
また、単に加速度を単一の閾値と比較して急加減速操作を判定しただけでは、きめ細かい判定をすることができない。例えば、高速道路を走行している場合、移動速度が速いため、空気抵抗などの要因により急加減速操作を行っても加速度の変動が小さく、閾値が適切に設定されていないと急加減速操作の判定ができないという問題点もある。
【0012】
すなわち、上記特許文献1に開示された運行管理、運転支援システムにおいては、車両が実際に走行している道路の状況を知ることができないので、上記のように急激な加速、減速が行われても、それが適切な運転操作であるか、不適切な運転操作であるのかをきめ細かく識別できず、有効な省エネルギー運転支援をすることができないという問題点があった。
【0013】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、運転を支援するための既存の車載装置として、所望の出発地から目的地までの経路を探索して目的地までの距離や所要時間が最も小さい最適経路を案内するナビゲーション装置が普及している点に着目し、ナビゲーション装置が各種センサや測位手段から取得する情報、あるいは、走行中の道路を含む地図情報に基づいて、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき、急激な加減速操作が適切な操作であるか、不適切な操作であるかを識別して省エネルギー運転支援を行うようになせば上記問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、急加減速操作が行われたことを検出して報知する運転支援機能を備え、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき急加減速操作が行われたことを検出するようにしたナビゲーション装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とする。
【0018】
本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記急加減速情報は、不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所、時間又は回数を含むことを特徴とする。
【0019】
本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とする。
【0020】
本願の請求項4にかかる発明は、
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、
前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とする。
【0021】
本願の請求項5にかかる発明は、
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、
前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とする。
本願の請求項6にかかる発明は、
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、
前記加速度判定部は、不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1にかかる発明においては、
ナビゲーション装置は、経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する。
【0023】
このような構成によれば、車両の移動速度に応じて適切に設定された閾値と加速度を比較することにより、空気抵抗などに影響されることなく、急激な加速操作または減速操作が行われたことをきめ細かく識別することができるようになる。このため、有効な省エネルギー運転支援機能を有するナビゲーション装置を提供することができるようになる。
【0026】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、急加減速情報は、不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所、時間又は回数を含む。このような構成によれば、急加減速操作が行われた状況を記録し、きめ細かい運転支援を行うことができるようになる。
【0027】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項2にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す。このような構成によれば、不適切な急加減速操作が行われた場合に利用者に報知し、省エネルギー運転を促すことができるようになる。
【0028】
また、請求項4にかかる発明においては、指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する。このような構成によれば、急加減速操作の適否を識別することができ、きめ細かい省エネルギー運転支援を行うことができるようになる。
【0029】
また、請求項5にかかる発明においては、指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する。このような構成によれば、急加減速操作の適否を識別することができ、きめ細かい省エネルギー運転支援を行うことができるようになる。
また、請求項6にかかる発明においては、指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、前記加速度判定部は、不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返す。このような構成によれば、不適切な急加減速操作が行われた場合に利用者に報知し、省エネルギー運転を促すことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーション装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、制御部11、GPS受信部12、地図記憶部13、表示部14、センサ部15、入力部16、経路記憶部17、急加減速情報記録部18、音声出力部19などを備えて構成されている。
【0032】
GPS受信部12は、複数のGPS衛星から送信されている信号を受信し、現在の位置を緯度・経度で算出する測位手段であり、ナビゲーション装置10が搭載された自動車の現在位置を所定の時間間隔で測位するものである。地図記憶部13には地図および経路探索のためのネットワークデータ(ノード、リンク、リンクコスト)が蓄積されている。
【0033】
表示部14は、液晶表示ユニットなどで構成される表示手段であり、地図や案内経路が表示される。表示部14に表示される地図や案内経路は、GPS受信部12で測位した現在位置を中心にして表示され、現在位置が経路上を進行するに従ってスクロール表示される。現在位置が案内経路上の交差点などの手前(所定の距離)になると、当該交差点の進行方向(直進、右折、左折)などのガイダンスを表示部14に表示したり、スピーカなどで構成された音声出力部19を介して出力したりする。
【0034】
入力部16はテンキーや文字入力キー、機能キー、タッチパネルなどを備えた入力手段であり、また、入力部16は表示部14に表示されたメニュー画面の項目を選択するための選択キー、カーソルキーを備えている。
【0035】
制御部11はマイクロプロセッサからなる制御回路であり、図示していないROM、RAMを備えている。ROMには各部動作を制御するプログラムを記憶している。例えば、制御部11が経路探索するためのプログラム、ナビゲーション装置10が搭載された車両の加速度を検出して所定の閾値と比較し、急激な加減速を生じる運転操作がなされたか否かを判定するとともに、車両が走行中の案内経路とGPS受信部12から取得する情報に基づいて、急激な加減速が適切な操作か不適切な操作かを判定するプログラムが記憶されている。従って、制御部11は加速度判定部111、経路探索部113が含まれて構成されたものとなっている。
【0036】
表示部14に表示される地図は、現在位置を中心とした所定の範囲の地図情報か地図記憶部13から取得(読み出し)され、表示画面の中央を現在位置として表示される。経路探索部が経路探索をして案内経路が求められている場合には、表示部14に表示された地図上に表示色を異なる色としたりして案内経路が重ね合わせて表示される。
【0037】
一般に、日常的に走行している自宅と職場などの経路はその都度ナビゲーション機能を用いて経路探索することはなく、地図と現在位置だけが表示部14に表示され、ガイダンスを受けないで使用することが殆どであり、ナビゲーション機能が使用されるのは、行楽地や観光地に出かける場合やドライブなどで経路の不案内な場所に出かける場合である。
【0038】
経路探索部113は、入力部16から入力された出発地、目的地などの経路探索条件に応じて地図記憶部13に記憶された経路探索用のネットワークデータを参照して最適な経路を案内経路として探索する。経路探索部113が探索した案内経路の情報や交差点ノードごとのガイダンスの情報は経路記憶部17に記憶され、表示部14に案内経路を表示し、音声出力部19を介して音声ガイドを行う。
【0039】
センサ部15は、車速センサ、舵角センサ、エンジン回転数センサ、タイマなどから構成され、車両の走行状態を検出するものであり、各センサ出力を連続的に計測することにより、走行軌跡を取得することができる。加速度判定部111は、センサ部15の車速センサ出力に基づいて加速度を算出する。また、加速度は後述するように、GPS受信部12が所定の間隔で測位した現在位置と測位の時間間隔から求めた速度をもとに算出することもできる。
【0040】
また、制御部11には加速度を比較するための閾値テーブル112を備えている。閾値テーブル112には、図2に示すように道路属性に応じた閾値が設定されている。すなわち、閾値テーブル112には、加速時の加速度閾値(m/sec^(2))と、減速時の加速度閾値(m/sec^(2))の値が、道路属性ごとに設定されている。道路属性は、制限速度40Km未満の一般道路と、制限速度40Km以上の一般道路と、側道・合流車線と、高速道路にわけてそれぞれの加速度閾値が設定されている。
【0041】
また、閾値テーブル112に加速時の加速度(加速度の値はプラスの値になる)と減速時の加速度(加速度の値はマイナスの値になる)を比較するための閾値を、異なる値として設定している。この理由は、減速時にはわずかなブレーキ操作で所望の加速度を生じるのに対して、加速時には所望の加速度を生じさせるためには、かなりアクセルを踏み込む必要がある。このため、加速時と減速時とでは閾値をそれぞれに応じた値とするためである。
【0042】
加速度判定部111は、センサ部15の車速センサ出力に基づいて加速度を算出する。また、加速度はGPS受信部12が所定の間隔で測位した現在位置と測位の時間間隔から求めた速度をもとに算出することもできる。GPS受信部12の測位データにより加速度を算出する場合は、例えば、1秒毎に位置を測位し、A-B間、B-C間の速度が夫々5m/sec、10m/secだとすると、加速度a=(V-Vo)/t=10-5/1=5m/sec^(2)」となる。そして、算出した加速度が閾値以上(急加減速が行われた)か否かを判別する。そして加速度が所定の閾値を下回ったらば1回の急加減速操作が行われたものとして回数をカウントする。
【0043】
この判定を行うため、実施例1においては道路属性に応じて閾値テーブル112に設定された閾値から該当する閾値を読み出して比較する。車両がどの道路属性を持つ道路を走行しているかは、GPS受信部12で測位した現在位置に基づいて地図記憶部13から読み出した地図情報の道路のデータ、あるいは、経路探索部113が探索した案内経路のデータから識別することができる。
【0044】
例えば、車両が高速道路を走行中で加速度判定部111が加速時の加速度を検出した場合には該当する閾値である「3」(図2参照)を閾値として比較し、加速度がこの閾値以上であるか否かにより、急激な加速操作の有無を判定する。減速時の加速度を検出した場合も同様の処理を行う。このように車両の移動速度に応じて適切に設定された閾値と加速度を比較することにより、空気抵抗などに影響されることなく、急激な加速操作または減速操作が行われたことをきめ細かく識別することができる。
【0045】
以上のようにして加速度判定部111が急激な加減速操作を検出し、不適切な操作であると判定した場合には、急加減速情報としてその操作が行われた場所や時間、回数を記憶する。そして、表示部14や音声出力部19を介して利用者に報知する。
【0046】
加速度判定部111は上記のようにして、車速センサまたはGPS受信部12の出力に基づいて算出した加速度と、道路属性に基づく移動速度に応じた閾値とを比較して不適切な急加減速の操作が行われたかを判定する。この判定に際して加速度判定部111は、GPS受信部12で測位した現在位置の情報(緯度・経度)と、現在位置に基づいて地図記憶部13から得た地図情報に基づいて、または、経路探索部113が探索した案内経路の情報とに基づいて、車両の走行状態を加味して急激な加減速操作が適切な操作であるか、不適切な操作であるかを判定するようにしてもよい。
【0047】
例えば、ここでは、現在位置がカーブした道路上である場合は適切な操作と判定し、直線道路である場合には不適切な操作と判定する。カーブした道路と直線道路の判別は道路属性情報に基づいて所定の曲率以上である場合にカーブと判定し、所定の曲率以下の場合直線道路と判定すればよい。加速度判定部111が不適切な操作であると判定した場合には、急加減速情報としてその操作が行われた場所や時間、回数を記憶する。そして、表示部14や音声出力部19を介して利用者に報知する。
【0048】
カーブと直線道路の識別のための道路の曲率としては、例えば、高速道路では曲率半径が「半径300m」以下となる道路をカーブ、それ以上の道路を直線道路、一般道路では曲率半径が「半径150m」以下となる道路をカーブ、それ以上の道路を直線道路と判定するように設定する。
【0049】
このように、本発明においては、道路属性に基づく移動速度に応じて設定した閾値と加速度とを比較することにより、高速移動時の空気抵抗などの影響による加速度変化に追随してきめ細かく不適切な急加減速の操作を識別することかできるようになる。
【0050】
次に、上記実施例1のナビゲーション装置の動作手順について、図3のフローチャートに基づいて説明する。先ず、加速度判定部111は、経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データから走行中の道路を識別し、その道路属性を取得する。次いでステップS12の処理において道路属性に変化があったか否かを判定する。
【0051】
道路属性に変化があった場合は、ステップS13の処理において、閾値テーブル112から該当する道路属性に対して設定されている閾値を読み出す。道路属性に変化がなければ、それまでの道路属性に従って閾値テーブル112から既に読み出された閾値が使用される。そして、ステップS14の処理において加速度判定部111はセンサ部15またはGPS受信部12のセンサ出力に基づいて加速度を算出し、これを閾値と比較して閾値以上であるかを判定する。この判定において加速度が閾値以上でなければステップS11の処理に戻る。
【0052】
ステップS15の処理において、加速度が閾値以下になったかを判定する。加速度が閾値以下になっていなければステップS15の処理を繰り返し、加速度が閾値以下になったならば1回の急加減速操作が行われたものと判定してステップS16の処理に進む。
【0053】
ステップS16の処理において、加速度判定部111は、経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データと現在位置とから車両が交差点またはカーブを走行中であるか否かを判定する。車両が交差点またはカーブ上を走行中であれば、適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS11の処理に戻る。
【0054】
車両が交差点またはカーブを走行中でなければ、不適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS17の処理において急加減速情報を急加減速情報記録部18に記憶し、ステップS18の処理において表示部14あるいは音声出力部19などの出力手段を介して、利用者に報知する。
【実施例2】
【0055】
以上説明した実施例1のナビゲーション装置10においては、道路属性に応じて閾値を設定した閾値テーブル112を備えた構成であったが、GPS受信部12の出力から算出した車両の移動速度またはセンサ部15の車速センサで検出した車両の実際の移動速度を何段階かの移動速度区分に分け、移動速度区分ごとに閾値を設定した図4に示す閾値テーブルを備えた構成であってもよい。実施例2にかかるナビゲーション装置10は閾値テーブル114を除く他の構成は図1に示す実施例1にかかるナビゲーション装置10と同様であり、説明の重複を避けるため各構成要素の説明は省略する。
【0056】
図4に示す閾値テーブルは、車両の移動速度を20Km/h以下、20?40Km/h、40?60Km/h、60?80Km/h、80Km以上の5つの移動速度区分に分けてある。各移動速度区分ごとに、加速時の加速度閾値(m/sec^(2))と、減速時の加速度閾値(m/sec^(2))の値が、道路属性ごとに設定されている。例えば、80Km以上の移動速度で加速時の加速度閾値は4(m/sec^(2))である。
【0057】
次に、実施例2にかかるナビゲーション装置10の動作手順を、図5のフローチャートを参照して説明する。先ず、加速度判定部111は、ステップS21の処理においてセンサ部15の車速センサ出力またはGPS受信部12の出力から車両の移動速度を検出する。次いで、ステップS22の処理において移動速度に基づいて閾値テーブル(図4参照)を参照し、該当する移動速度区分に設定してある閾値(加速度閾値)を読み出す。
【0058】
ステップS23の処理において、加速度判定部111はセンサ部15のセンサ出力またはGPS受信部12の出力に基づいて加速度を算出し、これをステップS22の処理で読み出した閾値と比較して閾値以上であるかを判定する。この判定において加速度が閾値以上でなければステップS21の処理に戻る。
【0059】
ステップS24の処理において、加速度が閾値以下になったかを判定する。加速度が閾値以下になっていなければステップS24の処理を繰り返し、加速度が閾値以下になったならば1回の急加減速操作が行われたものと判定してステップS25の処理に進む。
【0060】
ステップS25の処理において、加速度判定部111は、経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データと現在位置とから車両が交差点またはカーブを走行中であるか否かを判定する。車両が交差点またはカーブ上を走行中であれば、適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS21の処理に戻る。
【0061】
車両が交差点またはカーブを走行中でなければ、不適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS26の処理において急加減速情報を急加減速情報記録部18に記憶し、ステップS27の処理において表示部14あるいは音声出力部19などの出力手段を介して、利用者に報知する。
【0062】
以上、説明したように、本発明によれば、急加減速操作が行われたことを検出して報知する運転支援機能を備えたナビゲーション装置において、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき急加減速操作が行われたことを検出するので、有効な省エネルギー運転支援機能を有するナビゲーション装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置に備えられる閾値テーブルの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置における動作手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2にかかるナビゲーション装置に備えられる閾値テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例2にかかるナビゲーション装置における動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10・・・・ナビゲーション装置
11・・・・制御部
111・・・加速度判定部
112・・・閾値テーブル
113・・・経路探索部
12・・・・GPS受信部
13・・・・地図記憶部
14・・・・表示部
15・・・・センサ部
16・・・・入力部
17・・・・経路記憶部
18・・・・急加減速情報記録部
19・・・・音声出力部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速操作が行われた状況を示す急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記急加減速情報は、不適切な急加減速操作が行われた状況を示す場所、時間又は回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記加速度判定部は、前記不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、
前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、
前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が所定の曲率以下の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに省エネルギー運転に影響を与える急加減速を判定するための閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置であって、
前記加速度判定部は、不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知し、省エネルギー運転に影響を与える急加減速が行われたか否かの判定を繰り返すことを特徴とするナビゲーション装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-11-21 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-09 
出願番号 特願2006-129934(P2006-129934)
審決分類 P 1 113・ 537- ZDA (G01C)
P 1 113・ 121- ZDA (G01C)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 竹下 晋司  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 堀川 一郎
田村 嘉章
登録日 2009-12-04 
登録番号 特許第4416756号(P4416756)
発明の名称 ナビゲーション装置  
代理人 特許業務法人ウィンテック  
代理人 特許業務法人ウィンテック  

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