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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1284675
審判番号 不服2011-22685  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-20 
確定日 2014-02-19 
事件の表示 特願2006- 689「フィッシング詐欺防止システムおよびそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日出願公開、特開2007-183744〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成18年1月5日を出願日とする出願であって,
平成18年1月6日付けで手続補正がなされ,
平成20年9月1日付けで審査請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,
平成23年5月31日付けで拒絶理由通知(同年6月7日発送)がなされ,
同年6月30日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,
同年7月13日付けで拒絶査定(同年同月20日謄本送達)がなされ,
同年10月20日付けで審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,
同年11月18日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,
同年12月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成24年1月10日発送)がなされ,
平成24年2月29日付けで回答書の提出があったものである。

第2 平成23年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年10月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正

本件補正は,平成23年6月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載

「【請求項1】
ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)のツールバーにWhois検索アイコン表示ボタンを設け,
表示中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Whois検索アイコン表示ボタン上に表示し,
このWhois検索アイコン表示ボタンのクリック操作により,インターネットを介して前記ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索し,
前記インターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組織名を前記ユーザーパソコンのバッファ内に取り込と共に前記Webサイトの画面に表示することを特徴とするフィッシング詐欺防止システム。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項1を「補正前の請求項1」という。当審注:下記補正後の請求項1との対比を容易にするため,対応する箇所で改行を行った。)

を,

「【請求項1】
ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)のツールバーにWhois検索アイコン表示ボタンを設け,
ユーザーが閲覧中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Whois検索アイコン表示ボタン上に表示し,
このWhois検索アイコン表示ボタンのクリック操作により,前記Webサイトを閲覧したままインターネットを介して前記ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索し,
前記インターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組織名を前記ユーザーパソコンのバッファ内に取り込と共に閲覧中の前記Webサイトと同一の画面上に表示することを特徴とするフィッシング詐欺防止システム。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項1を「補正後の請求項1」という。)
と補正するものである。

上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示中のWebサイト」を「ユーザーが閲覧中のWebサイト」に限定するとともに,
同じく補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「インターネットを介して前記ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索し」を「前記Webサイトを閲覧したままインターネットを介して前記ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索し」に,「前記Webサイトの画面に表示する」を「閲覧中の前記Webサイトと同一の画面上に表示する」に,それぞれ限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。


2.独立特許要件についての検討

(1)引用文献等

1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願日よりも前の日に頒布され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年5月31日付けの拒絶理由通知で引用された,『プロのツール連携ワザ20選,PC Japan,日本,ソフトバンクパブリッシング株式会社,2003年11月1日,第8巻,第11号,p.121-p.130』(以下,「引用文献1」という。)には,関連する図とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「まずはネットワークのセキュリティに役立つツールを見ていこう。セキュリティというとウイルス対策が真っ先に思い浮かぶが,ことウイルス対策に関しては,1本のアンチウイルスソフトを導入して,定義ファイルをきちんと更新するのがもっとも効果的であり,複数のアンチウイルスソフトを導入する意味はほとんどない。そこでここでは,不正侵入(アタック)から身を守るのに有効なファイアウォールソフトと組み合わせて使いたいツールを取り上げる(p.121図1)。
ファイアウォールは基本的に許可されていない外部からのアクセスはすべて不正なアクセスとみなし,シャットアウトする。必要なアクセスでも,設定が不十分な場合などにはシャットアウトしてしまうこともあるわけだ。このような場合,多くのファイアウォールソフトは,具体的なIPアドレスを示して,そこからアクセス要請が来ているが受け入れてよいかとユーザに問い合わせる。よく分からない場合はとりあえず却下するべきだが,先にも触れたように実は不正ではないアクセスの可能性もある。
そこで,IPアドレスを頼りに相手が信用できる者かどうか,悪意を持って不正侵入を仕掛けているのかどうかを調べてみよう。」(121頁右欄1行?122頁左欄20行)

B「より手軽にwhois検索を行いたいなら,「HotWhois」が便利だ。世界中の88か所のwhoisサーバに接続し,指定ホストのwhois情報を検索する。Magic NetTraceと同様に,Internet Explorerの「ツール」メニューから呼び出せ,ツールバーのボタンからはワンクリックで表示中のWebページのサーバのwhois情報を表示できる。」(122頁中欄25行?右欄3行)

C「自分のマシンだけでなく,LAN全体のセキュリティ強化に役立つツールも紹介しておこう(図2)。」(122頁右欄22行?24行)

以下に,上記引用文献1の記載事項について検討する。

(ア)上記Bに記載の「HotWhois」は,上記Aの「ネットワークのセキュリティに役立つツール」との記載から,ネットワークのセキュリティのためのツールであると言え,また,上記Cにおける「自分のマシン」の「セキュリティ強化に役立つツール」とは,上記A及びBに記載されたツールを指すものと解されることから,以上より上記「HotWhois」は,マシンとネットワークのセキュリティ強化のためのツールであると言える。
ここで,上記「HotWhois」が上記Bに記載のような機能を実現するマシンとネットワークとは,それらにより構成されるシステムであると言え,また,上記Aの「不正侵入(アタック)から身を守るのに有効なファイアウォールソフトと組み合わせて使いたいツール」,「悪意を持って不正侵入を仕掛けているのかどうかを調べてみよう」との記載から,上記「HotWhois」が機能を実現するシステムは,不正侵入を防ぐことができるものと言えることから,これらより,引用文献1には,
“「HotWhois」の機能が実現される,不正侵入を防ぐためのマシンとネットワークよりなるシステム”が記載されていると言える。

(イ)上記Bの「Internet Explorerの「ツール」メニューから呼び出せ,ツールバーのボタンからはワンクリックで表示中のWebページのサーバのwhois情報を表示できる。」との記載から,前記「HotWhois」は,“Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させるものであ”ると言える。

(ウ)上記“Whois情報”に関し,
上記Bの「世界中の88か所のwhoisサーバに接続し,指定ホストのwhois情報を検索する」との記載から,前記“Whois情報”は,“世界中のWhoisサーバから,指定ホストのWhois情報を検索した結果である”と言える。

以上,(ア)?(ウ)で指摘した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「HotWhois」の機能が実現される,不正侵入を防ぐためのマシンとネットワークよりなるシステムであって,
前記「HotWhois」は,Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させるものであり,
前記Whois情報は,世界中のWhoisサーバから,指定ホストのWhois情報を検索した結果である,システム。

2)引用文献2

本願の出願日よりも前の日に頒布され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年5月31日付けの拒絶理由通知で引用された,『堀内かほり,BYTE LAB セキュリティ対策ソフトの新機能,NIKKEI BYTE,日本,日経BP社,2005年11月22日,第271号,p.56-p.61』(以下,「引用文献2」という。)には,関連する図とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

D「フィッシング詐欺はメールを使ってユーザーを偽サイトへおびき寄せ,カード情報や個人情報などを入力させて情報を盗む行為である。
・・・(中略)・・・
こうした手口には,ユーザーがメールやWebサイトに不審な点がないかをチェックすることが肝心だ。」(57頁中欄4行?右欄8行)

E 58頁の図4には,「Internet Explorer」のツールバーについて表示するとともに,当該ツールバーの「アドレス」バーの横にブラウザに表示中のページのアドレス情報が表示された態様が示され,
当該「アドレス」バーに関連して,下段のURL表示に関する説明として
「実際に入力したURLを表示(異なるサイトにリダイレクトされたかどうかをアドレスバーと比較できる)」と記載されている。

F「DNSの応答後にデータベースに接続
これらの機能をオンにしてWebサイトへアクセスする際の流れを図5に示した。一般的にURLを入力すると,・・・(中略)・・・
DNSサーバーで名前解決後,ウイルスバスター2006はトレンドマイクロのデータベースに接続してWebサイトの評価情報を取得する。評価情報とは,ドメイン名,IPアドレス,Webサイトのカテゴリ,信頼性情報(信頼サイト,フィッシング詐欺サイト,未登録サイト)の四つ。」(58頁中欄15行?右欄14行)

G 58頁の図5左図には,ユーザ端末からWebサイトへアクセスするために,トレンドマイクロのデータベースにおいてサイト評価を行った後,Webサーバーからコンテンツを受け取る仕組みが示されており,
図中下方のユーザ端末から,DNSサーバーにURLを送信して(2:○)名前解決を行った後,トレンドマイクロのデータベースに「ドメイン情報」を送信し(4:○),ドメイン名を含むサイト評価情報が返される(5:○)態様が示されている。(当審注:○数字を便宜上,「数字:○」と代えて表示した。)

3)参考文献1

本願の出願日よりも前の日に頒布された,『吉野 真理子,ウィンドウズ基本レッスン 第3回,日経PCビギナーズ,日本,日経BP社,2001年12月13日,Vol.6,No.24,p.84-p.90』(以下,「参考文献1」という。)には,図とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H「「履歴」の一覧を表示するには,時計の形をした「履歴」ボタンをクリックします(図4)。するとウインドウの左側に日付順にまとまって表示されるので,そのページをいつ見たかを思い出してその日のアイコンをクリックします(図5 1:○)。すると,過去に見たホームページがサイトごとに表示されます。サイト名をクリックすると(図5 2:○),今度はページ単位で表示されるので,見たいページを選んでクリックすれば(図5 3:○),ウインドウの右側にそのページが表示されます(図6)。」(84頁第3段目右から15行?85頁第1段目右から7行、当審注:○数字を便宜上,「数字:○」と代えて表示した。)

J 85頁の図「5」には,ブラウザのページ表示画面が示されており,ブラウザ表示画面中で,右側にページの表示画面が,左側に履歴の一覧表示画面が,同一画面において表示され,また,左側の履歴一覧表示では,ページ単位で表示された履歴が,クリック可能な状態で,アイコン及び対応するアドレス情報の表示とともに表示された態様が示されている。

4)参考文献2

本願の出願日よりも前の日に頒布された,特開2002-183024号公報(平成14年6月28日公開,以下,「参考文献2」という。)には,図面について,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

K 図面第10図には,ホームページの表示と,それに関連した広告情報の表示とが,同一画面内(図10(a)),または画面上の別ウインドウ(図10(b))として表示された態様が示されている。

5)参考文献3

本願の出願日よりも前の日に頒布された,『河内 清人他 ,whoisサービスを用いたフィッシング詐欺防止技術の提案,第67回(平成17年)全国大会講演論文集(3) データベースとメディア ネットワーク,日本,社団法人情報処理学会,2005年3月2日,第3-337?3-338頁』(以下,「参考文献3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

L「本方式では,あらかじめ表1に示されるような有名サイト情報をシステム内に格納しておく。表1における特徴文字列とは,各有名サイトのドメイン名を特徴付ける文字列(企業名部分等)をあらわし,組織名は,そのドメイン名の所有者として登録されている企業のWHOISサービス上の名称をあらわす。組織名はaaa.co.jp,aaa.comのように複数のレジストリに同一の特徴文字列を使用してドメイン名を登録することを想定し,複数個数登録可能とする。」(3-337頁左欄30行?右欄3行)

(2)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(2-1)本願補正発明における「フィッシング詐欺」とは,ユーザのコンピュータに不正に侵入し偽サイト情報を提示するものであるから,上位概念において不正侵入であると言え,よって,引用発明の「不正侵入を防ぐためのマシンとネットワークよりなるシステム」と,本願補正発明の「フィッシング詐欺防止システム」とは,ともに,“不正侵入防止システム”である点で共通すると言える。

(2-2)引用発明の「マシン」は「HotWhois」の機能が実現され,かつ当該「HotWhois」はユーザが「ワンクリック」する「Internet Explorerのツールバー」に関連することから,ユーザが使用し,かつ「Internet Explorer」が搭載されているものであると言え,本願補正発明の「IE(インターネットエクスプローラー)」を搭載する「ユーザーパソコン」に相当する。また,上記「Internet Explorerのツールバー」上の「ボタン」とは「Whois情報を検索した結果」を表示させるためのボタンであり,本願補正発明の「Whois検索アイコン表示ボタン」と,“Whois検索表示ボタン”である点で共通する。
従って,引用発明の「マシン」の「Internet Explorerのツールバーのボタン」を設けることと,本願補正発明の「ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)のツールバーにWhois検索アイコン表示ボタンを設け」ることとは,ともに,“ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)のツールバーにWhois検索表示ボタンを設け”ることである点で共通すると言える。

(2-3)引用発明の「Whois情報」を「検索」する先である「世界中のWhoisサーバ」とは,検索のために「Whois情報」を登録しているものと解され,Whois情報登録システムと言えるものである。一方,本願補正発明の「ドメイン名」は,上位概念において,“Whois情報”と言え,同様に「ドメイン情報登録センタ」も,上位概念において,Whois情報登録システムと言える。
従って,引用発明の「Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表示させるものであり,前記Whois情報は,世界中のWhoisサーバから,指定ホストのWhois情報を検索した結果である」ことと,本願補正発明の「このWhois検索アイコン表示ボタンのクリック操作により,前記Webサイトを閲覧したままインターネットを介して前記ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索」することとは,ともに,“このWhois検索表示ボタンのクリック操作により,インターネットを介してWhois情報をWhois情報登録システムから検索”することである点で共通すると言える。

(2-4)引用発明の,「Whois情報を表示させるものであり,前記Whois情報は,世界中のWhoisサーバから,指定ホストのWhois情報を検索した結果である」ことと,本願補正発明の「前記インターネットを介して検索結果のドメイン名およびその組織名を前記ユーザーパソコンのバッファ内に取り込と共に閲覧中の前記Webサイトと同一の画面上に表示する」こととは,ともに,“前記インターネットを介して検索結果のWhois情報を前記ユーザーパソコンに取り込むと共に画面上に表示する”ことである点で共通すると言える。

以上から,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
ユーザーパソコンに搭載されているIE(インターネットエクスプローラー)のツールバーにWhois検索表示ボタンを設け,
このWhois検索表示ボタンのクリック操作により,インターネットを介してWhois情報をWhois情報登録システムから検索し,
前記インターネットを介して検索結果のWhois情報を取り込み前記ユーザーパソコンの画面上に表示する不正侵入防止システム。

(相違点1)
本願補正発明が「フィッシング詐欺防止システム」であるのに対し,引用発明は,「不正侵入防止システム」である点。

(相違点2)
Whois検索表示ボタンに関し,本願補正発明が「Whois検索アイコン表示ボタン」であるのに対し,引用発明は,「ボタン」に「アイコン」を表示するかは明りょうでない点。

(相違点3)
本願補正発明が,「ユーザーが閲覧中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Whois検索アイコン表示ボタン上に表示」することとしているのに対し,引用発明は,そのような構成になっていない点。

(相違点4)
Whois情報の検索に関し,本願補正発明が,「Webサイトを閲覧したまま」検索を行っているのに対し,引用発明は,どのような状態で検索を行っているか言及していない点。

(相違点5)
Whois情報の検索先に関し,本願補正発明が,「ドメイン名をドメイン情報登録センタから検索」しているのに対し,引用発明は,そのような構成になっていない点。

(相違点6)
表示するWhois情報に関し,本願補正発明が「検索結果のドメイン名およびその組織名」としているのに対し,引用発明は,Whois情報の内容について具体的に明示していない点。

(相違点7)
Whois情報の表示方法に関し,本願補正発明が「閲覧中の前記Webサイトと同一の画面上に表示」しているのに対し,引用発明は,そのような構成になっていない点。

(相違点8)
表示するWhois情報の取扱いに関し,本願補正発明が「ユーザーパソコンのバッファ内に取り込」んでいるのに対し,引用発明は,Whois情報をどのように取り扱っているか明りょうでない点。

(3)判断

上記相違点1ないし相違点8について検討する。

(3-1)相違点1について
Webにおける不正侵入としてフィッシング詐欺が課題であること,及びその対策としてWebサイトの不審点を見てチェックすることは,当業者にとって自明な事項であり(例えば,引用文献2の上記Dの記載を参照),してみると,引用発明のシステムを,フィッシング詐欺防止のために用いること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点1は格別なものではない。

(3-2)相違点2及び相違点3について
インターネットアクセスに通常用いられるブラウザのツールバー上に,現在表示しているページのアドレス情報を表示することは,本願出願時において周知(例えば,引用文献2の上記Eの記載(記載中の「下段のURL表示」が,「実際に入力したURLを表示」し「アドレスバーと比較できる」とされていることから,比較対象の「アドレス」バーのアドレス情報は,入力したままのURLではない,現在,実際に表示されているページのアドレス情報が表示されているものと解される。)を参照)であり,
また,ブラウザ上でクリックするボタン機能をアイコンやページに関する情報とともに表示させることや,ページに関する情報としてのドメイン名をURLより生成することは,いずれも常套手段(例えば,前者については,参考文献1の上記H及びJの記載を,後者については,引用文献2の上記F及びGを,それぞれ参照)であることを考慮すれば,上記周知の表示技術をブラウザ上のボタン表示に適用する際に,アイコンとページに関する情報としてのドメイン名の表示を,ボタン表示に組み込むようにすることに格別困難性は認められない。
してみると,引用発明のツールバーのボタン表示に,周知技術を採用し,「Whois検索アイコン表示ボタン」として「ユーザーが閲覧中のWebサイトのURLからドメイン名を抽出し,前記Whois検索アイコン表示ボタン上に表示」するよう構成すること,すなわち,相違点2及び相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点2及び相違点3は格別なものではない。

(3-3)相違点4ないし相違点6について
引用発明の「Whois情報」の「検索」は,「表示中のWebページ」に対して,「ボタン」への「ワンクリック」操作により開始されるものであるから,検索開始後にも「表示中のWebページ」を表示中のままとすること,及び検索開始後に表示中の「Webページ」が閲覧可能な状態であることは,当業者にとって自明の事項である。
また,「Whois情報」の「検索」先の構成として,「ドメイン情報登録センタ」を設けることは,インターネット上でのセキュリティを確保するための人為的取り決めに関する事項であり,また,当該「検索」項目をどのように登録・設定するかは,必要により適宜決定する事項であり,技術上格別の困難性は認められない(なお,フィッシング防止に係る照会のための登録事項として,ドメイン名と組織名を含む事例については,参考文献3の上記Lの記載を参照されたい)。
してみると,引用発明におけるWhois情報の表示のための検索を,「Webサイトを閲覧したまま」「ドメイン名をドメイン情報登録センタから」行い,「検索結果のドメイン名およびその組織名」を取得すること,すなわち,相違点4ないし相違点6に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点4ないし相違点6は格別なものではない。

(3-4)相違点7及び相違点8について
インターネットアクセスのためのブラウザの表示ページに関連する情報を,表示ページと同一画面上において表示することは,周知技術(例えば,参考文献1の上記Jの記載,参考文献2の上記Kの記載を参照)であり,
また,コンピュータ装置における取得情報を表示する際に,取得した情報をバッファ等のメモリに取り込んで行うことは常套手段であるから,
引用発明における検索結果であるWhois情報の表示において,当該周知技術を適用し,「ユーザーパソコンのバッファ内に取り込」み,「閲覧中の前記Webサイトと同一の画面上に表示」すること,すなわち,相違点7及び相違点8に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点7及び相違点8は格別なものではない。

(3-4)小括

上記で検討したごとく,相違点1ないし相違点8は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び周知技術等の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願補正発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.本件補正についての結び

上記2.で検討した通り,本願補正発明は,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成23年10月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,平成23年6月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2 平成23年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.本件補正」の本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用文献等

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献およびその記載事項は,前記「第2 平成23年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2.独立特許要件についての検討」の「(1)引用文献等」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は,前記「第2 平成23年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.本件補正」の「本願補正発明」から,実質的に,「ユーザーが閲覧」,「前記Webサイトを閲覧したまま」,「閲覧中の」,「と同一」「上」を削除したものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 平成23年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2.独立特許要件についての検討」の「(3)判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当該引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-06 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2006-689(P2006-689)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 長島 孝志
田中 秀人
発明の名称 フィッシング詐欺防止システムおよびそのプログラム  
代理人 坂本 智弘  

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