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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1284702
審判番号 不服2013-3288  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-20 
確定日 2014-02-13 
事件の表示 特願2009- 16473「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日出願公開、特開2010-176265〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年1月28日の出願であって、平成24年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月29日付けで手続補正がなされたが、同年11月9日付けで拒絶査定され、これに対し、平成25年2月20日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年2月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成25年2月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記第1画像データと比較して、圧縮処理の有無が異なるだけの画像データ、サイズが違うだけの画像データ、及び外周部の全部又は一部が削除された画像データの少なくとも1つ、並びに完全同一の画像データを含む第2画像データ」とあったところを「前記第1画像データと比較して、サイズが違うだけの画像データ及び外周部の全部又は一部が削除された画像データの少なくとも1つ、並びに完全同一の画像データを含む第2画像データ」と補正するものである。
上記補正は、「第2画像データ」についての択一的記載の要素(圧縮処理の有無が異なるだけの画像データ)を削除する補正であるから、特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1画像データが入力される画像データ入力部と、
前記画像データ入力部から入力された第1画像データを保存可能な画像データ保存部と、
前記第1画像データと比較して、サイズが違うだけの画像データ及び外周部の全部又は一部が削除された画像データの少なくとも1つ、並びに完全同一の画像データを含む第2画像データが前記画像データ保存部に保存されていないと、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させ、前記画像データ保存部に前記第2画像データが保存されていると、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させない保存制御部と、を備える
電子機器。」

2.引用例
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2008-250579号公報(公開日:平成20年10月16日。以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0003】
近時は、携帯電話機等におけるHTMLメールに関する仕様として、メール本文中に貼り付けられた画像(静止画および簡易動画)が特定の条件(例えば、画像サイズ等)を満たす場合、その画像を、新たなHTMLメールの作成時にメール本文中に貼り付けて容易に再利用できるようにした規定が策定されている。
【0004】
そのため、受信したHTMLメールのメール本文中に、上述したような特定の条件を満たす画像(以下、特定画像と称す)が貼付されていれば、その特定画像を携帯電話機等に保存することで、新たなHTMLメールの作成時に特定画像を再利用でき、作成するHTMLメールの表現形態を容易に広げることに役立っている。なお、上述したような規定内容に対応した携帯電話機の中には、特定画像を保存する際、新たなHTMLメール作成時に利用しやすいように、専用の特定画像フォルダへ特定画像を自動的に保存するようにした機種も存在する。」(第5頁第7?19行)

(イ)「【0031】
本発明に係るメール受信装置は、受信した画像貼付メールのメール本文を、メール本文に含まれる文字および画像を選択可能にして表示する表示手段と、第1記憶手段および第2記憶手段と、メール本文中に貼り付けられた画像が選択された場合、選択された画像を記憶する記憶操作を受け付ける操作受付手段とを備え、前記操作受付手段が記憶操作を受け付けた場合、前記条件検出手段が、選択された画像が特定画像条件を満たすか否かを検出するようにしてあり、前記条件検出手段で、選択された画像が特定画像条件を満たすことを検出した場合、選択された画像を前記第1記憶手段または前記第2記憶手段のいずれに記憶するかの選択を受け付ける選択メニューの表示処理を行う手段を備えることを特徴とする。
【0032】
本発明にあっては、メール本文を表示して、保存したい特定画像を選択すれば、保存先として第1記憶手段または第2記憶手段を選択メニューで選択できるため、ユーザの使い勝手に応じて自由に特定画像の保存先を選べるようになる。
【0033】
さらに、本発明に係るメール受信装置は、前記選択メニューで、記憶先として前記第1記憶手段が選択された場合、選択された画像に一致する画像が、前記第1記憶手段に記憶された画像の中に存在するか否かを検出する一致画像検出手段と、前記一致画像検出手段が、選択された画像に一致する画像の存在を検出した場合、一致する画像が存在する旨を出力する手段とを備えることを特徴とする。
【0034】
本発明にあっては、第1記憶手段に特定画像を保存しようとすれば、既に第1記憶手段に記憶されている画像と、保存対象の特定画像が同じであるかを検出し、同じであれば保存しようとする特定画像が既に第1記憶手段に存在する旨を出力するので、ユーザの意向に応じて以降の処理を進めることが可能なる。なお、保存しようとする画像(特定画像)が第1記憶手段に存在する旨の出力は、表示画面への表示出力、警告音の出力、発光部での発光出力などが適用可能であり、また、存在する旨を出力した後は、保存処理の続行または保存処理の中止をユーザが選択できるようにすることが好ましい。」(第9頁第32行?第10頁第9行)

(ウ)「【0046】
本実施形態の携帯電話機1は、受信メールの一覧を表示する際、携帯電話機1に対応したキャリア(通信事業者)がメール送受信に関する仕様の中で策定している画像に関する規格条件(特定画像条件と称す)を満たす画像(特定画像と称す)がメール本文中に貼り付けられている受信メール(画像貼付メールと称す)を、他の受信メールと相違する形態で表示するようにしたことを特徴にしている(図5の40a、40c参照)。」(第11頁第49行?第12頁第4行)

(エ)「【0049】
また、上述したようにメール本文中にインライン添付で貼り付けられる画像が、特定画像条件を満たす場合、その画像は特定画像として扱われ、本実施形態の携帯電話機1では新たなHTMLメールを作成する際、メール本文中に貼り付けることができる絵文字画像として保存できるようになっている。携帯電話機1に対応したキャリアは、下記の第1条件乃至第3条件の全ての条件(特定画像条件に相当)を満たす画像を特定画像と規定している。特定画像条件を構成する第1条件は、対象となる画像がJPEGファイルまたはGIFファイル(アニメーションGIFも含む)であることであり、第2条件は、対象となる画像の画像サイズが、水平画素数が20画素、垂直画素数が20画素であることであり、第3条件は、対象となる画像が再配布可能(再利用許諾済み)になっていることである。」(第12頁第19?29行)

(オ)「【0051】
図2は、ユーザが使用する携帯電話機1の本発明に関連する内部構成を示したブロック図である。携帯電話機1は、各種制御処理を行うCPU1aに、通信部1b、RAM1c、ROM1d、表示用インタフェース1e、操作部インタフェース1f、音出力処理部1g、発光駆動部1h、振動発生部1iおよび記憶部2を内部バス1kで接続した構成にしている。なお、本実施形態の携帯電話機1は、各種処理を規定したプログラムデータに基づきCPU1aが様々な処理を行うことが可能であるため、一種のコンピュータとして機能する。
【0052】
通信部1bは、図示しない多数の中継基地局と無線通信を行い、通信先の機器との間でデータ等の送受信を行う通信手段であり、本実施形態では電子メールの受信を行うメール受信手段にも相当する。RAM1cはCPU1aの処理に従うデータ及びファイル等を一時的に記憶し、本実施形態では、記憶部2の受信メールフォルダ9に記憶された受信メールの一覧を表す受信メールリストを生成するときのワークエリアとして機能する。また、ROM1dは各種データ等を記憶する手段に相当し、CPU1aが行う基本的な処理内容を規定したプログラム等を予め記憶している。」(第12頁第39行?第13頁第4行)

(カ)「【0056】
記憶部2は不揮発性メモリ等で構成されており、端末プログラム7、メールプログラム8等を保存するメインフォルダ2a、通信部1bで受信した電子メール(受信メール)を記憶(保存)する受信メールフォルダ9、上述した特定画像(特定画像ファイル)を専用に記憶(保存)する特定画像フォルダ11(第1記憶手段に相当)および各種画像(あらゆる種類の画像ファイル)を記憶(保存)する一般画像フォルダ12(第2記憶手段に相当)を含んでいる。なお、記憶部2は図2では図示していないが、各種メニュー表示用のメニュー画像データ等も記憶しているものとする。また、特定画像フォルダ11は、HTMLメールの作成時に保存した画像(絵文字画像)を簡単な操作で参照できる仕様になっているが、一般画像フォルダ12は、そのような仕様になっていない。」(第13頁第28?37行)

(キ)「【0070】
また、図5の受信メールリスト40は、選択枠41がいずれかの欄に合わさった状態で操作部4の決定キー4eが押圧される操作が行われると、その欄に係る受信メールの選択が決定されたことになり、決定された受信メールに係るメールデータ(メール本文の内容)が受信メールフォルダ9から読み出されて、メール本文の内容が図2(a)(b)に示すように表示部3で表示されるようになる。また、図2(a)のHTMLメール20を示した状態で下欄の中から「編集」が選択されると、図6(a)に示す編集モードでHTMLメール20が表示部3に表示される。
【0071】
編集モードのHTMLメニュー20は、メール本文20aに含まれる各文字および画像30a?30dがカーソル32の移動で選択できるように表示されており、カーソル32の移動は操作部4の上下左右キー4a?4dを行うことになる。また、カーソル32で画像が選択された状態で、下欄の保存ボタン33の選ぶ操作(選択された画像を記憶する記憶操作に該当)を操作部4で受け付けた場合、メールプログラム8は、選択された画像が上述した特定画像条件を満たすか否かをCPU1aに検出させることを規定している。なお、この処理も選択された画像ごとに特定画像条件(第1条件から第3条件の全条件)を満たすか否かを比較して検出することをCPU1aが行う。
【0072】
選択された画像が特定条件を満たすことを検出した場合、メールプログラム8は、図6(b)に示す保存先選択メニュー45を表示させる処理をCPU1aに行わせることも規定している。保存先選択メニュー45は、選択された画像の保存先を特定画像フォルダ11または一般画像フォルダ12のいずれにするかの選択を受け付けるための第1選択ボックス45aおよび第2選択ボックス45bを選択可能に設けた内容になっている。よって、ユーザが第1選択ボックス45aまたは第2選択ボックス45bを選択した状態で保存ボタン45cが選択される操作が行われると、選択されたボックスに応じたフォルダ(特定画像フォルダ11または一定画像フォルダ12のいずれか)が保存先(記憶先)として選択された旨がCPU1aに伝えられる。なお、画像の保存時に、図6(b)に示す保存先選択メニュー45を表示することで、ユーザが自由に画像の保存先を選択できるようになり、ユーザの使い勝手に応じたデータ保存状態を提供している。
【0073】
図6(b)の保存先選択メニュー45で、特定画像フォルダ11が保存先として選択された場合、メールプログラム8は、図6(a)で選択された画像(特定画像)に一致する画像が既に特定画像フォルダ11に存在するか否かを、CPU1aに一致画像検出手段として検出させることを規定している。一致する画像が検出されなかった場合、選択された画像(特定画像)は、そのまま特定画像フォルダ11に記憶(保存)されると共に、図7(a)に示すように保存完了ウインドウ46が表示部3に表示される。これにより、携帯電話機1のユーザが、新たなHTMLメールの作成時に利用できる特定画像(絵文字画像)の数を豊富にでき、豊かな表現のHTMLメールを作成しやすくなる。
【0074】
一方、一致する画像が検出された場合、メールプログラム8は、図7(b)に示すように、特定画像フォルダ11に、選択された画像(特定画像)に一致する画像が既に存在する旨(同一の画像が既に保存されている旨)を表した通知ウインドウ47を表示部3に表示出力する制御をCPU1aに行わせることを規定している。なお、図7(b)の通知ウインドウ47は、ユーザから保存処理の中止指示を受け付けるための第1ボタン47aと、保存処理の続行指示を受け付けるための第2ボタン47bを設けており、これらのボタン47a、47bでユーザからの操作指示を受け付けると、CPU1aは受け付けたボタン47a、47bに対応付けられた処理を行うことになる。
【0075】
なお、選択された画像が、特定画像フォルダ11に保存されている各画像と一致するか否かの処理は、比較対象の画像ファイルを形成するバイナリデータの一致度を検出することで行っている。なお、別の方法としては、特定画像フォルダ11に画像を保存する際に、検出用のデータを作成しておき、その検出用のデータと保存対象となる画像のデータとを比較することで、一致するか否かの検出処理の迅速に行うことも可能である。
」(第15頁第30行?第16頁第32行)(当審注、第【0070】段落に「図2」とある記載は「図3」の誤記と認められる。)

(ク)「【0086】
なお、本発明に係るメール受信装置は、上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変形例が存在する。例えば、本発明に係るメール受信装置は、図1に示す外観の携帯電話機1に以外にも、ストレートタイプの外観の携帯電話機等にも勿論適用可能であり、また、携帯電話機以外にも、電子メールを送受信できる各種情報機器(通信機能を有するコンピュータ、PDAおよびスマートフォン等)にも上述した内容を適用可能である。」(第18頁第18?24行)

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「メール受信装置であって、多数の中継基地局と無線通信を行い、通信先の機器との間でデータ等の送受信を行う通信手段であり、電子メールの受信を行うメール受信手段にも相当する通信部1bと、特定画像(特定画像ファイル)を専用に記憶(保存)する特定画像フォルダ11(第1記憶手段に相当)および各種画像(あらゆる種類の画像ファイル)を記憶(保存)する一般画像フォルダ12(第2記憶手段に相当)を含む記憶部2とを含んで構成され、
受信した画像貼付メールのメール本文を、メール本文に含まれる文字および画像を選択可能にして表示する表示手段と、
メール本文中に貼り付けられた画像が選択された場合、選択された画像を記憶する記憶操作を受け付ける操作受付手段とを備え、
前記操作受付手段が記憶操作を受け付けた場合、条件検出手段が、選択された画像が特定画像条件を満たすか否かを検出するようにしてあり、
前記条件検出手段で、選択された画像が特定画像条件を満たすことを検出した場合、選択された画像(特定画像)を前記第1記憶手段(特定画像フォルダ11)または前記第2記憶手段(一般画像フォルダ12)のいずれに記憶するかの選択を受け付ける選択メニューの表示処理を行ない、
前記選択メニューで、記憶先として前記第1記憶手段(特定画像フォルダ11)が選択された場合、選択された画像(特定画像)に一致する画像が、前記第1記憶手段(特定画像フォルダ11)に記憶された画像の中に存在するか否かを検出する一致画像検出手段と、
前記一致画像検出手段が、選択された画像(特定画像)に一致する画像の存在を検出した場合、一致する画像が存在する旨(同一の画像が既に保存されている旨)を出力する手段とを備え、
一致する画像が存在する旨(同一の画像が既に保存されている旨)を出力した後は、保存処理の続行または保存処理の中止をユーザが選択できるようにすることが好ましく、
一致する画像が検出されなかった場合、選択された画像(特定画像)は、そのまま特定画像フォルダ11に記憶(保存)され、
選択された画像が、前記第1記憶手段(特定画像フォルダ11)に保存されている各画像と一致するか否かの処理は、比較対象の画像ファイルを形成するバイナリデータの一致度を検出すること、又は検出用のデータを作成しておき、その検出用のデータと保存対象となる画像のデータとを比較することで行なう、
メール受信装置。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「メール本文中に貼り付けられ」るための「特定画像条件を満たす」「特定画像(特定画像ファイル)」と、本願補正発明の「第1画像データ」とは、「メール本文中に貼り付けられ」るための「特定画像条件」が付されているか否かの点を除き、「第1画像データ」の点で共通する。
次に、本願明細書第【0073】段落には「また、本実施形態において、画像入力部として無線通信部200の説明をしている」と記載されているから、以下の相違点を除き、引用発明において上記「特定画像(特定画像ファイル)」の貼付された「画像貼付メール」を受信している「通信部1b」が、本願補正発明の「第1画像データが入力される画像データ入力部」に相当する。
次に、引用発明の「特定画像(特定画像ファイル)を専用に記憶(保存)する特定画像フォルダ11(第1記憶手段に相当)」が、以下の相違点を除き、本願補正発明の「前記画像データ入力部から入力された第1画像データを保存可能な画像データ保存部」に相当する。
次に、引用発明における「選択された画像(特定画像)に一致する画像」、つまり、「同一の画像」とは、「比較対象の画像ファイルを形成するバイナリデータの一致度を検出すること、又は検出用のデータを作成しておき、その検出用のデータと保存対象となる画像のデータとを比較すること」により「一致するか否かの処理」がなされる画像である。
よって、引用発明における「選択された画像(特定画像)に一致する画像」、つまり、「同一の画像」と、本願補正発明の「前記第1画像データと比較して、サイズが違うだけの画像データ及び外周部の全部又は一部が削除された画像データの少なくとも1つ、並びに完全同一の画像データを含む第2画像データ」のうち、「完全同一の画像データ」とは、以下の相違点を除き、「前記第1画像データと完全同一の画像データである第2画像データ」の点で共通する。
次に、引用発明において、「選択された画像(特定画像)に一致する画像」、つまり、「同一の画像」が検出された場合、「保存処理の続行または保存処理の中止をユーザが選択できるようにする」制御を行う部分と、本願補正発明の「前記画像データ保存部に、前記第2画像データが保存されていると、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させない保存制御部」とは、以下の相違点を除き、「前記画像データ保存部に、前記第2画像データが保存されていると、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させないことができる保存制御部」の点で共通する。
次に、引用発明において、「一致する画像が検出されなかった場合、選択された画像(特定画像)は、そのまま特定画像フォルダ11に記憶(保存)され」るよう制御を行う部分が、以下の相違点を除き、本願補正発明の「第2画像データが前記画像データ保存部に保存されていないと、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させ」る保存制御部に相当する。
次に、引用発明の「メール受信装置」が、以下の相違点は除いて、本願補正発明の「電子機器」に相当する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「第1画像データが入力される画像データ入力部と、
前記画像データ入力部から入力された第1画像データを保存可能な画像データ保存部と、
前記第1画像データと完全同一の画像データである第2画像データが前記画像データ保存部に保存されていないと、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させ、前記画像データ保存部に前記第2画像データが保存されていると、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させないことができる保存制御部と、を備える
電子機器。」

また、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、「第1画像データ」について条件が付されていないのに対し、引用発明では、「特定画像」について、「メール本文中に貼り付けられ」る画像であるための「特定画像条件」が付されている点。

<相違点2>
本願補正発明では、「画像データ保存部」に「第1画像データと比較して、サイズが違うだけの画像データ及び外周部の全部又は一部が削除された画像データの少なくとも1つ、並びに完全同一の画像データを含む第2画像データ」が保存されているか否かを調べているのに対し、引用発明では、「バイナリデータの一致度を検出すること、又は検出用のデータを作成しておき、その検出用のデータと保存対象となる画像のデータとを比較すること」で、「第1記憶手段(特定画像フォルダ11)」に、「一致する画像」、つまり「同一の画像」が既に保存されているか否かを調べている点。

<相違点3>
本願補正発明では、「画像データ保存部」に「第2画像データ」が保存されていると、「前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させない」のに対し、引用発明では、「一致する画像の存在を検出した場合」、「一致する画像が存在する旨(同一の画像が既に保存されている旨)を出力した後は、保存処理の続行または保存処理の中止をユーザが選択できるようにすることが好まし」いとされている点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1>及び<相違点2>について:
人間が「同一の画像」であると認識する画像には、完全同一の画像だけでなく、「画像の表示倍率」が変更された画像や、「領域を切り取ることによって得られ」た画像も含まれることは、周知の事項である(例えば、本願の出願前に頒布された、特開2007-172344号公報(以下、「周知例」という。)の【発明が解決しようする課題】欄には、「従来の電子アルバム作成装置」において、「これからアルバムに取り込まれようとする画像ファイル」と、「既に取り込まれている画像ファイル」とが「重複していないかどうかを自動的に確認」し、「重複する画像ファイルがあれば警告を発する」際、完全同一の画像だけでなく、「画像の表示倍率」が変更された画像も、「領域を切り取ることによって得られ」た画像も、「同一の画像ファイル」として判断することが示されている。また、該周知例の第【0094】段落及び第【0121】段落にも同じ趣旨の記載がある。)。
一方、引用発明における「特定画像(特定画像ファイル)」とは、「メール本文中に貼り付けられた画像」であるから、画像が同一か否かは、上記周知の事項と同様に、人間とって「同一の画像」であると認識されるか否かにより判断すべきことは明らかである。
また、例えば、特開2005-37655号公報の【背景技術】欄に、「近年では、携帯電話機の表示装置の解像度が向上していることにより、標準サイズよりも大きなサイズの画像を表示することが要求される。同じ種類(同じ文字、同じ絵文字)の画像をサイズ別に記憶装置に格納する場合、その記憶装置の記憶容量を増加させなければならない。
記憶容量を増加させることを回避するために、携帯電話機には、画像のサイズを変更する画像変換機能が搭載される。」(第4頁第23?28行)と記載されているように、技術の進歩に伴って、「メール本文中に貼り付けられ」る画像、すなわち「絵文字」として用いられる画像であるための「特定画像条件」(サイズ)を緩和すべきことは当然の要求である。
してみれば、引用発明において、「第1記憶手段(特定画像フォルダ11)」に保存される、「メール本文中に貼り付けられ」る画像であるための「特定画像条件」(サイズ)を緩和するとともに、「バイナリデータの一致度を検出すること、又は検出用のデータを作成しておき、その検出用のデータと保存対象となる画像のデータとを比較すること」で、「第1記憶手段(特定画像フォルダ11)」に、「一致する画像」、つまり「同一の画像」が既に保存されているか否かを調べる際、「同一の画像」として、完全同一の画像だけでなく、「画像の表示倍率」が変更された画像も、「領域を切り取ることによって得られ」た画像も含まれるようにし、上記相違点1及び相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点3>について:
引用発明に示された「一致する画像が存在する旨(同一の画像が既に保存されている旨)を出力した後は、保存処理の続行または保存処理の中止をユーザが選択できるようにすることが好まし」い、との要件は、単に設計における希望を述べたものに過ぎないから、引用発明において、「一致する画像の存在を検出した場合」に、「保存処理の中止」を自動的に行うようにし、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知の事項より、当業者が予測し得たものである。

従って、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
従って、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年2月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成24年10月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「第1画像データが入力される画像データ入力部と、
前記画像データ入力部から入力された第1画像データを保存可能な画像データ保存部と、
前記第1画像データと比較して、圧縮処理の有無が異なるだけの画像データ、サイズが違うだけの画像データ、及び外周部の全部又は一部が削除された画像データの少なくとも1つ、並びに完全同一の画像データを含む第2画像データが前記画像データ保存部に保存されていないと、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させ、前記画像データ保存部に前記第2画像データが保存されていると、前記第1画像データを前記画像データ保存部に保存させない保存制御部と、を備える
電子機器。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本願補正発明において、「第2画像データ」についての択一的記載の要素に、さらに「圧縮処理の有無が異なるだけの画像データ」を付加したものに相当する。
そうすると、本願発明における発明特定事項のうち、「第2画像データ」についての択一的記載の要素(圧縮処理の有無が異なるだけの画像データ)を削除したもの相当する本願補正発明が、前記「第2 [理由]4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
従って、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-28 
結審通知日 2013-12-03 
審決日 2013-12-20 
出願番号 特願2009-16473(P2009-16473)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新田 亮▲はま▼中 信行  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 小曳 満昭
和田 志郎
発明の名称 電子機器  
代理人 正林 真之  

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