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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1284827
審判番号 不服2012-17040  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-03 
確定日 2014-02-14 
事件の表示 特願2011-20916「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月2日出願公開、特開2011-104401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成13年5月14日に出願した、特願2001-143056号の特許出願の一部を、平成23年2月2日に特願2011-20916号として分割して特許出願したものであって、平成24年6月29日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成24年9月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされた。
審判合議体は、平成24年11月5日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人からは、同年12月10日に回答書が提出された。
当審においてこれを審理した結果、平成25年9月9日付けで、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成25年10月25日付けで、意見書及び手続補正書を提出した。

2.当審の判断
2.-1.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年10月25日付けで補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり、その記載は次のとおりである。
「普通電動役物が開放可能な特別図柄始動口と、
該特別図柄始動口ヘの入賞に基づいて図柄が所定時間変動する図柄表示装置と、
該図柄表示装置の下方に傾斜状に配列された遊技釘群とが設けられた遊技盤を有するパチンコ機において、
前記傾斜状に配列された遊技釘群は、
前記遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、普通電動役物が開放可能な前記特別図柄始動口に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる複数の隙間が設けられた第1の遊技釘群と、
該第1の遊技釘群の上方にあって、前記遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、普通電動役物が開放可能な前記特別図柄始動口に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる複数の隙間が設けられた第2の遊技釘群とからなり、
前記図柄表示装置の側部には、遊技釘と風車とからなる遊技球振り分け部材が設けられ、
該遊技球振り分け部材によって振り分けられた遊技球の一部は、前記第1の遊技釘群が形成する第1流路又は第2の遊技釘群が形成する第2流路に振り分けられ、
前記第2の遊技釘群に設けられた複数の隙間のうち前記特別図柄始動口に最も近い隙間と前記特別図柄始動口との間の該第2の遊技釘群をなす遊技釘が複数本あることを特徴とするパチンコ機。」

2.-2.引用刊行物の記載事項
当審で通知した拒絶理由に引用した特開2001-113005号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0005】
【発明の実施の形態】図1(正面図)は遊技機としてのパチンコ機1を示し、このパチンコ機1は、カードユニット20と対をなし、このカードユニット20にはカードリーダ(図示略)が内蔵してある。又、このカードユニット20の正面パネル21には、このカードユニットの作動が有効であるときの表示ランプやカード挿入口22が設けてある。一方、パチンコ機の全面パネル11に取り付けてある供給皿12には、前記カードユニット20の操作釦等が配設してあり、具体的には、前記カード挿入口22に挿入されたカードの残高(度数)等を表示する表示器13a、遊技者の操作によりカードユニット20を介してパチンコ機に貸球を供給する変換釦13b、カード返却用の返却釦13cが設けてある。
【0006】尚、供給皿12の下には貯留皿17が配設してあって、供給皿12が満杯となったときオーバーフローした賞品球を貯留する。又、発射装置のハンドル18の操作により前記供給皿12からの1球毎に供給される遊技球をガイドレール2で案内して、遊技盤3Aの遊技領域3に発射する。遊技領域のほぼ中央部に設置の可変表示器Lの左右側部には、普通図柄始動ゲート4a、4bが備えてあり、遊技球が通過すると、可変表示器Lに付設の普通図柄表示器31の図柄が変動を開始し、所定時間経過後に停止し、その確定図柄が予め設定した図柄と一致したとき「当たり」となり、所謂、チューリップ式の始動電動役物5を所定時間開成し、始動口が拡大される。尚、この始動電動役物5の上部には始動口5aが付設されており、始動電動役物5が閉成状態であっても、始動口5aに入賞可能になっている。
【0007】前記可変表示器Lには、複数の変動図柄を介して可変表示ゲームを行う液晶式の表示画面LAが設けてある。この表示画面LAには、種々の情報が表示される他、遊技球が前記始動口5a、5に入賞すると、図柄変動信号を発して可変表示ゲームが開始され、大当たり、外れ等に対応して、第1図柄表示部L1、第2図柄表示部L2、第3図柄表示部L3に図柄「0?9」(10種類)の図柄が表示される。そして、大当たり(特別遊技状態)のときには、第1図柄表示部L1、第2図柄表示部L2、第3図柄表示部L3には、図柄「0、0、0」?「9、9、9」の10通りの同じ図柄(大当たり図柄)を確定表示した後に、大当たり(特別遊技状態)として、大入賞器30の扉が所定時間、開成して多量の賞品球の払出を可能とする。さらに、可変表示ゲームや大当たり時等、遊技状態によって、可変表示器Lやサイドランプ7a、7b等が点滅または点灯し、遊技を盛り上げる構成となっている。」

イ.図1における記載事項
・可変表示器Lの下部の左右角部の外方に見える「中心点を有する円盤状体」について、当該円盤状体を説明する記載はないが、パチンコ機の技術分野の常識からみて「風車」である。
・可変表示器Lの左右方向の中央の下方には「始動電動役物5」が設けられている。
・左右にある前記風車と前記始動電動役物5の間にあって、風車から始動電動役物5にかけて下り傾斜状に見える「微小な丸を連ねたもの」は、当該微小な丸を説明する記載はないが、パチンコ機の技術分野の常識からみて「遊技釘」であって、「微小な丸を連ねたもの」は「遊技釘群」である。そして、「遊技釘群」である以上、遊技球を誘導する機能を有していることは当業者にとって自明であり、遊技釘の配列方向が遊技球の誘導方向であることも当業者にとって自明である。さらに、遊技釘群の中心寄りの終端部の位置と始動電動役物5の位置の上下方向の関係から、遊技釘群は、遊技球を始動電動役物5に誘導する機能を有していることは当業者にとって自明である。
・前記遊技釘群は、左右側とも、上下方向に2段に設けられているものである。
・前記遊技釘群には、複数箇所において「微小な丸が記載されない部分」が設けられており、特に「微小な丸が記載されない部分」の長さと遊技球の直径に関する記載はなく、図面にも遊技球は記載されないが、この部分はパチンコ機の技術分野の常識からみて「遊技球を落下させる隙間」である。
・前記風車の周辺には、前記遊技釘群を構成する遊技釘以外の遊技釘が設けられており、前記風車と前記遊技釘群を構成する遊技釘以外の遊技釘が、遊技球を振り分ける機能を有していることは、パチンコ機の技術分野の常識からみて明らかであるから、前記風車と前記遊技釘群を構成する遊技釘以外の遊技釘は、「遊技球振り分け部材」であることは当業者にとって自明である。

2.-3.引用文献1に記載の発明の認定
上記2.-2.の「ア.」及び「イ.」の記載を総合すると、引用文献1には、
「始動電動役物5が開放可能であって、
該始動電動役物5ヘの入賞に基づいて図柄が変動する可変表示器Lと、
該可変表示器Lの下方に傾斜状に配列された遊技釘群とが設けられた遊技盤を有するパチンコ機において、
前記傾斜状に配列された遊技釘群は、
前記遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、開放可能な始動電動役物5に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる複数の隙間が設けられた下段の遊技釘群と、
該下段の遊技釘群の上方にあって、前記遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、開放可能な始動電動役物5に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる隙間が設けられた上段の遊技釘群とからなり、
前記可変表示器Lの側部には、遊技釘と風車とからなる遊技球振り分け部材が設けられ、
該遊技球振り分け部材によって振り分けられた遊技球の一部は、前記下段の遊技釘群が形成する下段側の流路又は上段の遊技釘群が形成する上段側の流路に振り分けられ、
前記上段の遊技釘群に設けられた隙間と前記始動電動役物5との間の該上段の遊技釘群をなす遊技釘が複数本あるパチンコ機。」が開示されていると認めることができる。(以下、「引用発明」という。)

2.-4.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
a.引用発明における「始動電動役物5」は本願発明の「普通電動役物」に相当し、該始動電動役物5を有する装置が本願発明の「特別図柄始動口」に相当する。
b.引用発明における「可変表示器L」は本願発明の「図柄表示装置」に相当し、パチンコ機の技術分野の常識からみて「可変表示器L」で行われる図柄の変動は、「所定時間」行われるものであることは明らかである。
c.引用発明における「下段の遊技釘群」、「下段側の流路」、「上段の遊技釘群」、「上段側の流路」は、それぞれ本願発明の「第1の遊技釘群」、「第1流路」、「第2の遊技釘群」、「第2流路」に相当する。

以上のことより、引用発明と本願発明とは、
〈一致点〉
「普通電動役物が開放可能な特別図柄始動口と、
該特別図柄始動口ヘの入賞に基づいて図柄が所定時間変動する図柄表示装置と、
該図柄表示装置の下方に傾斜状に配列された遊技釘群とが設けられた遊技盤を有するパチンコ機において、
前記傾斜状に配列された遊技釘群は、
前記遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、普通電動役物が開放可能な前記特別図柄始動口に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる複数の隙間が設けられた第1の遊技釘群と、
該第1の遊技釘群の上方にあって、前記遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、普通電動役物が開放可能な前記特別図柄始動口に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる隙間が設けられた第2の遊技釘群とからなり、
前記図柄表示装置の側部には、遊技釘と風車とからなる遊技球振り分け部材が設けられ、
該遊技球振り分け部材によって振り分けられた遊技球の一部は、前記第1の遊技釘群が形成する第1流路又は第2の遊技釘群が形成する第2流路に振り分けられ、
前記第2の遊技釘群に設けられた隙間と前記特別図柄始動口との間の遊技釘群をなす遊技釘が複数本あるパチンコ機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
「第2の遊技釘群に設けられた隙間」に関して、本願発明は「複数の隙間」であるが、引用発明では「一つの隙間」である点。

2.-5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
遊技釘群に設けられた隙間に関して、本願発明の効果として【0008】には「遊技釘群に隙間を設けることにより、更に遊技球の変化を生じさせることができた」と記載されている。
しかしながら、これはパチンコ機の遊技釘群中の「隙間」の一般的な効果に過ぎず、複数の隙間を設けたことによる効果ではない。
また、他に複数の隙間を設けたことによる格別の作用効果について記載があるものでもなく、隙間が多いと、流下する遊技球の動きが複雑になることは、当業者にとって自明の技術常識にすぎない。
そして、本願発明と同じような「遊技盤の中央にかけて下り傾斜状に、かつ、普通電動役物が開放可能な始動口に遊技球を誘導する方向に配列され、その途中に遊技球を落下させる複数の隙間が設けられた遊技釘群」は、パチンコ機の技術分野において周知技術にすぎない。
周知技術として必要であれば、
周知技術1:特願平11-290512号公報(特に図1)
周知技術2:特開2000-317080号公報(特に【図3】、【0024】、【0025】)
なお、周知技術2において、補助釘71は、「上案内釘列70の並び方向に沿っている」「上案内釘列70が設けられているので、3本釘70a上に乗った遊技球は、4本釘70b→補助釘71→普通電動役物48と誘導される可能性が高い」等の記載から、上案内釘列70と一体に遊技釘群を形成していることは明かである。
そして、一つの隙間を有する遊技釘群に、周知技術を用いて複数の隙間を有する遊技釘群とすることに技術的困難性はなく、本願発明の作用効果が引用発明と周知技術が有する作用効果の総和以上のものであるとも認められないから、引用発明に周知技術を適用して相違点1にかかる本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2.-6.進歩性のまとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、当該構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-06 
結審通知日 2013-12-11 
審決日 2013-12-26 
出願番号 特願2011-20916(P2011-20916)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
長崎 洋一
発明の名称 パチンコ機  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 田上 明夫  
代理人 ▲高▼ 昌宏  
代理人 小野塚 薫  
代理人 萼 経夫  

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