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審決分類 |
審判 全部無効 1項2号公然実施 F16C |
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管理番号 | 1285406 |
審判番号 | 無効2013-800130 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2013-07-25 |
確定日 | 2014-03-03 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4827680号発明「摺動部材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4827680号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第4827680号に係る発明についての出願は、平成18年10月6日に特許出願されたものであって、平成23年9月22日に特許権の設定登録がされたものである。 これに対して、平成25年7月25日付けで、大同メタル工業株式会社(以下、「請求人」という。)より無効審判の請求がなされ、大豊工業株式会社外1名(以下、「被請求人」という。)から平成25年12月27日に、被請求人から平成25年12月25日に、それぞれ口頭審理陳述要領書が提出され、平成26年1月16日に口頭審理が行われたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 アルミニウム系又は銅系軸受合金層に、固体潤滑剤が分散した樹脂系コーティング層を設けた摺動部材において、前記樹脂系コーティング層中の全体としての固体潤滑剤の相対C軸強度比が下記式により85%以上である固体潤滑剤を分散したことを特徴とする摺動部材。 相対C軸強度比=X線回折による(002)、(004)、(100)、(101)、(102)、(103)、(105)、(110)、(008)面の積算強度に対する(002)、(004)、(008)面の積算強度の百分率。 【請求項2】 前記固体潤滑剤がMoS_(2)である請求項1記載の摺動部材。」 3.請求人の主張及び証拠 請求人は、甲第1号証?甲第13号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許には、以下の無効理由がある旨主張している。なお、請求人は、口頭審理において、無効理由2?5を取り下げる旨、陳述し、被請求人はこれに同意した。 3-1.無効理由1 請求人の提出した審判請求書、及び口頭審理陳述要領書における主張を整理すると、無効理由1の要旨は次のとおりである。 被請求人大豊工業株式会社の製造に係る、品番を13041-31080-03とするコネクティングロッドメタルは、本件特許出願日である平成18年(2006年)10月6日より前の2005年8月から販売が開始されている(甲第2号証、甲第3号証の1及び2、並びに甲第4号証)。 本件発明1、2の構成は、かかるコネクティングロッドメタルに係る発明の構成と同一であることから(甲第6号証)、本件発明1、2は、本件特許出願日前に公然実施された発明に該当し、特許法第29条第1項第2号の発明に該当するから、特許を受けることができないものである。 3-2.証拠方法 甲第1号証: 公証人宮城正典作成に係る平成25年5月27日付け事実実験公正証書 甲第2号証: トヨタ自動車株式会社発行に係る2013年版のパーツリスト 甲第3号証の1: トヨタ自動車株式会社の2005年7月26日付けプレスリリース 甲第3号証の2: トヨタ自動車株式会社の2006年7月24日付けプレスリリース 甲第4号証: 岐阜日産自動車株式会社発行に係る納品請求書 甲第5号証: 名古屋市工業研究所作成に係る平成25年5月9日付け成績書 甲第6号証: 石橋氏作成に係る平成25年7月5日付け陳述書 甲第7号証: 特開2004-113974号公報 甲第8号証: 特開2002-61652号公報 甲第9号証: 小早川氏作成に係る平成25年7月5日付け実験報告書 甲第10号証: 特開2007-270894号公報 甲第11号証: 本件特許出願に係る平成23年6月3日を起案日とする拒絶理由通知書 甲第12号証: 本件特許出願に係る平成23年8月11日を提出日とする意見書 甲第13号証: 特許第4827680号公報 4.被請求人の主張 被請求人は、口頭審理陳述要領書において無効理由1を認めており、口頭審理においても同様に認める旨、陳述した。 5.無効理由1についての当審の判断 本件発明2は、本件発明1の「固体潤滑剤」について「前記固体潤滑剤がMoS_(2)である」と限定するものにすぎないので、以下、両発明を特に区別することなく検討し、必要に応じて、上記の限定事項について言及することとする。 なお、審判請求書、甲各号証において、「コネクティングロッドベアリング」、「コネクティングロッドメタル」、「コンロッドメタル」等の用語が用いられているが、審判請求書(第3ページ第11?15行)に説明されているように、これらは同義の用語であるので、以下では、「コネクティングロッドメタル」の用語を使用する。 (1)品番を13041-31080-03とするコネクティングロッドメタルが、本件特許出願日前に公然の状態にあったかどうかについて 平成25年5月27日付け事実実験公正証書である甲第1号証(以下、「甲1」と略称することがある。他の甲各号証についても同様。)をみると、「06/01/**」(写真1、2では、「**」は正確に判読することができない。)の日付のステッカーが付された、「品番」を「13041-31080-03」とする未開封のコネクティングロッドメタルが存在していたことが確認できる。 また、「トヨタ自動車株式会社発行に係る2013年版のパーツリスト」である甲第2号証をみると、その第1ページの「No」が「007」の欄に、「品番」として「13041-31080-03」、「始期終期」として「200508-200808」、「品名」として「コネクティングロッド」、「適用型式/備考」として「2GRFSE..GSE21」、「MARK3」が記載されていること、 「トヨタ自動車株式会社の2005年7月26日付けプレスリリース」である甲3の1をみると、その1/4ページ、及び2/4ページの表(【メーカー希望小売価格】)には、「LEXUS」は2005年9月28日より「新型IS」を発売すること、「IS350」は「2GR-FSE V6・3.5L」のエンジンを備えていること、 「トヨタ自動車株式会社の2006年7月24日付けプレスリリース」である甲3の2をみると、その1/2ページには、「LEXUS」は2006年7月24日より「IS」を一部改良して発売すること、「IS350」は「2GR-FSE(V6・3.5L)」のエンジンを備えていること、 岐阜日産自動車株式会社発行に係る納品請求書である甲4をみると、請求人が2006年1月に、岐阜日産自動車株式会社から、品番が「13041-31080-03」であるコネクティングロッドメタルを購入し、納品を受けたこと、 以上を確認することができる。 そして、これらを総合すると、品番が「13041-31080-03」であるコネクティングロッドメタルは、本件特許出願日前に公然の状態にあったと認めることができる。 (2)品番を「13041-31080-03」とするコネクティングロッドメタルに対して、どのような発明が実施されているかについて 甲1(特に「5 事前説明」、「6 試料の調製」の(1))をみると、品番を「13041-31080-03」とするコネクティングロッドメタルの断片である試料1?4(甲6のサンプル名♯1?♯4)が切り出され、同試料が名古屋市工業研究所へ郵送されたことが確認できる。 名古屋市工業研究所作成に係る平成25年5月9日付け成績書である甲5には、試料1?4(甲6のサンプル名♯1?♯4)についてX線回折分析を行った結果が示されている。石橋氏作成に係る平成25年7月5日付け陳述書である甲6には、試料1?4(サンプル名♯1?♯4)についての「相対C軸強度比」の値が算出されている。 そして、甲5の各試料についてのX線回折分析データのそれぞれの最終ページをみると、試料1?4(サンプル名♯1?♯4)のいずれの試料についても、アルミニウム特有のピークが同定されているとともに、MoS_(2)特有のピークが同定されている。 さらに、甲6の別紙第1ページをみると、相対C軸強度比は、試料1が92.0%、試料2が91.5%、試料3が91.7%、試料4が90.7%であり、試料1?4(サンプル名♯1?♯4)のいずれの試料についても、相対C軸強度比が85%以上の値となっている。 以上からすると、品番を「13041-31080-03」とするコネクティングロッドメタルの断片である試料1?4(サンプル名♯1?♯4)は、アルミニウム合金層に、MoS_(2)が分散した樹脂系コーティング層を設けたものであって、樹脂系コーティング層中の全体としての固体潤滑剤の相対C軸強度比が85%以上であると認められる。 したがって、品番を「13041-31080-03」とするコネクティングロッドメタルには、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が実施されている。 「アルミニウム合金層に、MoS_(2)が分散した樹脂系コーティング層を設けたコネクティングロッドメタルにおいて、前記樹脂系コーティング層中の全体としてのMoS_(2)の相対C軸強度比が下記式により85%以上であるMoS_(2)を分散したコネクティングロッドメタル。 相対C軸強度比=X線回折による(002)、(004)、(100)、(101)、(102)、(103)、(105)、(110)、(008)面の積算強度に対する(002)、(004)、(008)面の積算強度の百分率。」 (3)品番を「13041-31080-03」とするコネクティングロッドメタルに実施されている発明(すなわち引用発明1)と本件発明1及び本件発明2が同一かどうかについて 本件発明1と引用発明1を対比すると、後者の「コネクティングロッドメタル」は前者の「摺動部材」に相当し、同様に、「アルミニウム合金層」は「アルミニウム系又は銅系軸受合金層」に、「MoS_(2)」は「固体潤滑剤」に、それぞれ相当する。 また、本件発明2と引用発明1を対比すると、後者の「コネクティングロッドメタル」は前者の「摺動部材」に相当し、同様に、「アルミニウム合金層」は「アルミニウム系又は銅系軸受合金層」に相当する。 したがって、引用発明1は本件発明1及び本件発明2と同一であり、品番を「13041-31080-03」とするコネクティングロッドメタルには、本件発明1及び本件発明2が実施されているということができる。 (4)まとめ 以上より、本件発明1及び本件発明2は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の発明に該当し、特許を受けることができないものである。 6.結語 以上のとおりであるから、本件発明1及び本件発明2についての特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-01-23 |
出願番号 | 特願2006-275033(P2006-275033) |
審決分類 |
P
1
113・
112-
Z
(F16C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 西堀 宏之 |
特許庁審判長 |
山岸 利治 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 島田 信一 |
登録日 | 2011-09-22 |
登録番号 | 特許第4827680号(P4827680) |
発明の名称 | 摺動部材 |
復代理人 | 浅村 昌弘 |
復代理人 | 白江 克則 |
代理人 | 村井 卓雄 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |
復代理人 | 安武 洋一郎 |
復代理人 | 橋本 裕之 |
代理人 | 村井 卓雄 |