• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1285818
審判番号 不服2013-14077  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-22 
確定日 2014-03-14 
事件の表示 特願2009- 32907「電池」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月14日出願公開、特開2009-105075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年5月27日に出願した特願2002-151808号(以下、「原出願」ということがある。)の一部を平成21年2月16日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月2日付けで意見書と手続補正書が提出され、平成25年4月30日付けで拒絶査定がなされ、同年7月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書が提出され、その後、当審から同年9月24日付けで特許法第164条第3項の報告書を引用した審尋がなされ、同年11月15日に回答書が提出されたものである。

第2.平成25年7月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
平成25年7月22日付けの手続補正を却下する。

2.理由
(1) 平成25年7月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」ということがある。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「 【請求項1】
絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子と、この電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続された外部接続端子を備えた電池において、前記外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定されたことを特徴とする電池。」を
「 【請求項1】
絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子と、この電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続された外部接続端子を備えた電池において、
前記端子接続部材は、平板状の部材であって、
前記外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定されたことを特徴とする電池。」と補正することを含むものである。
(2)この請求項1に係る補正事項は、「前記端子接続部材は、平板状の部材であって」という発明特定事項を追加するものである。
(3)この補正事項が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当するためには、特許請求の範囲を減縮するだけでなく、発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならない(必要ならば、平成19年(行ケ)10055号 審決取消請求事件、知的財産高等裁判所 平成20年2月17日判決を参照されたい。)ところ、本件補正前の請求項1には、端子接続部材の形状に関する発明特定事項が記載されていないから、当該補正事項が本件補正前の請求項1に記載された発明を特定すために必要な事項を限定する補正であるとすることができない。
(4)また、当該補正事項が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことは明らかである。
(5)したがって、当該補正事項は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、予備的に、前記補正事項が上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当するとしたとしても、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正後発明」という。)は、以下の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(5-1)補正後発明
補正後発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認められる。
「 【請求項1】
絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子と、この電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続された外部接続端子を備えた電池において、
前記端子接続部材は、平板状の部材であって、
前記外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定されたことを特徴とする電池。」
(5-2)刊行物1の記載事項
本願の原出願の出願前に頒布され、当審からの平成25年9月24日付けの審尋において引用された特開平6-333555号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】導電性金属板よりなる本体とリング材とからなり、
上記本体は平板状とし、中央部にバッテリー・ポスト嵌合穴を有する円環状の電極嵌合部を設けると共に、該電極嵌合部の両側に電線接続部とリング材支持部とを連続して設け、電線接続部にはスタットボルトを上向きに突出させる一方、
上記リング材の中央部にバッテリー・ポスト嵌合穴を有すると共にその円周部に沿って台円錐筒形状の圧接片を立設した電極嵌合部を設け、該電極嵌合部の両側にボルト穴を穿設した電線接続部と締付部とを連続して設け、かつ、電極嵌合部と電線接続部との間を傾斜させ、
上記リング材を本体の上面に載置し、リング材の締付部先端を本体のリング支持材で支持して電極嵌合部および電線接続部を上方に傾斜させて取り付けると共に、該電線接続部のボルト穴にスタットボルトを通して突出させて組み付け、
上記本体およびリング材の電極嵌合部のバッテリー・ポスト嵌合穴をバッテリー・ポストに外嵌すると共に、上記スタットボルトに電線接続端子を嵌合し、ナットで締付固定する時に、同時に上記傾斜してバッテリー・ポストに外嵌しているリング材の圧接片を押し下げてバッテリー・ポストに圧接する構成としていることを特徴とするバッテリー・ターミナル。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「【産業上の利用分野】本発明は、自動車等に搭載されるバッテリーの電極(バッテリー・ポスト)に取付られるバッテリー・ターミナルに関し、特に、該バッテリー・ターミナルのバッテリー・ポストへの固定作業と、該バッテリー・ターミナルに設けた電線接続部に対する端子の固定作業とを一回のねじ締め作業により行うことが出来るようにしたものである。」(【0001】)
(5-3)刊行物1に記載された発明
ア 刊行物1の(ア)に記載されている「バッテリー・ターミナル」は、同(イ)の記載によれば、「バッテリーの電極(バッテリー・ポスト)に取付けられる」ものであるから、刊行物1には、「電極(バッテリー・ポスト)」に上記(ア)の「バッテリー・ターミナル」が「取付けられ」た「バッテリー」が記載されているといえる。
イ 上記アの検討を踏まえて、刊行物1に記載された事項を補正後発明の記載ぶりに則して整理すると、刊行物1には、
「バッテリー・ポストと、中央部に該バッテリー・ポスト嵌合穴を有する円環状の電極嵌合部を設けると共に、該電極嵌合部の片側に電線接続部を設け、該電線接続部のボルト穴にはスタットボルトを上向きに突出させて組み付けた、導電性金属板よりなる平板状の本体と、を含むバッテリー」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
(5-4)補正後発明と刊行物1発明との対比・判断
ア 補正後発明と刊行物1発明とを対比する。
イ 刊行物1発明の「バッテリー・ポスト」は、バッテリー内部の発電要素の電極に接続される導体であり、また、バッテリーに絶縁されて、バッテリーの外部に突出していることは明らかである。
一方、補正後発明の「電池引出端子」に関し、本願明細書の【0028】には、「電池引出端子は、・・・電池外装体の内部で発電要素の電極に接続されると共に、絶縁封止されて外部に突出する導電部品である」と記載されている。
そうすると、刊行物1発明の「バッテリー・ポスト」は、補正後発明の「絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子」と、「絶縁されて電池外装体の外部に突出する電池端子」である点で共通する。
ウ 刊行物1発明の「導電性金属板よりなる平板状の本体」には、「中央部に該バッテリー・ポスト嵌合穴を有する円環状の電極嵌合部を設け」ているから、「バッテリー・ポスト」の「外部突出部が接続固定されている」とみることができる。
エ また、刊行物1発明の該「導電性金属板よりなる平板状の本体」は「スタットボルトを上向きに突出させるように組み付けた電線接続部」を有しているから、「導電性金属板よりなる平板状の本体」を介して「スタットボルト」が備えられているといえる。
オ 刊行物1発明の「導電性金属板よりなる平板状の本体」は、バッテリーの外部にあることは明らかであり、上記ウ及びエの検討を踏まえると、補正後発明の「端子接続部材」に相当する。
カ また、刊行物1の(ア)には、「スタットボルトに電線接続端子を嵌合し、ナットで締付固定する」との記載があるから、刊行物1発明の「スタットボルト」は、補正後発明の「外部接続端子」と「端子」である点で共通している。
キ 本願明細書の【0029】には、「電池の種類も特に限定されない。」と記載されているから、刊行物1発明の「バッテリー」は、補正後発明の「電池」に相当する。
ク そうすると、両者は、
「絶縁されて電池外装体の外部に突出する電池端子と、この電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続された端子を備えた電池において、
前記端子接続部材は、平板状の部材である電池」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:電池端子につき、補正後発明では封止されているのに対し、刊行物1発明では封止されているかが不明である点
相違点2:端子に関し、補正後発明では、「頭部が端子接続部材に接続固定され」ているのに対し、刊行物1発明では、「スタットボルトを導電性金属板よりなる平板状の本体に上向きに突出させて組み付け」ている点
なお、回答書において請求人は、「特開平06-333555号公報では、平板状の端子接続部材が開示されているのみであって、頭部を有する外部接続端子は開示されていない」(2.(2))と主張しており、上記一致点・相違点の認定はこの主張に沿うものである。
ケ 相違点1について検討する。
ケ-1 刊行物1の(イ)の記載をみると、刊行物1発明の電池は自動車に搭載されるものといえる。
ケ-2 ここで、自動車に搭載される電池として密閉型鉛蓄電池はごく普通のものであって(要すれば、特開平6-196145号公報の【0019】、特開平5-283053号公報の【0002】、特開平3-43954号公報等を参照。)、この密閉型鉛蓄電池では、当然に電池端子が封止されている。一方、刊行物1において、電池として密閉型鉛蓄電池を排除する記載は見当たらない。
ケ-3 そうすると、刊行物1発明の電池を密閉型鉛蓄電池として、上記相違点1に係る補正後発明の発明特定事項をなすことは当業者であれば困難なくなし得ることである。
コ 相違点2について検討する。
コ-1.スタットボルトとは、「丸棒の両端にネジを切ったボルト」(要すれば、「図解 機械用語辞典」昭和57年1月25日、日刊工業新聞社発行、31頁の「植込ボルト」の項)であるから、刊行物1発明において「スタットボルトを上向きに突出させて組み付け」ていることは、スタットボルトの「一端」を「端子接続部材」に相当する「本体」に「接続固定」していることに他ならなず、このスタットボルトの「一端」を「頭部」というか、「一端」というかは、単なる称呼の違いに過ぎず、実質的な差異は認められない。そして、仮に、実質的な差異であるとしても、この「接続固定」は「ねじ込み」によってなされているから、このスタットボルトに代え、ねじ込みによって固定する周知の部材であって、外部接続端子としてもごく普通に使用されているボルト置き換えることは、当業者であれば適宜なし得ることである。
コ-2. よって、上記相違点2に係る補正後発明の発明特定事項は、実質的な差異でないか、仮に、実質的な差異であるとしても、当業者であれば適宜なし得る程度のものである。

なお、請求人の特許出願に係る特開2000-228183号公報(以下、「刊行物2」という。)に記載された発明についても念のため検討する。
ア 刊行物2の特許請求の範囲の請求項1には、「【請求項1】ボルト出しの端子を有する鉛蓄電池において、ボルト頭部分は折り曲げ加工された金属板体によって勘合(当審注:「嵌合」の誤記と認める。)、固定されており、前記金属板体は電池の極柱と溶接され、さらに前記勘合部分(当審注:「嵌合部分」の誤記と認める。)および溶接部分には接着剤が充填、硬化されていることを特徴とする鉛蓄電池。」が記載され、「本発明鉛蓄電池の一実施例にかかる端子部構造図」である図1をみると、「金属板体は蓋の外部にあり、極柱が接着剤で封止されて蓋の外部に突出していること」が見て取れる。
イ 上記アの記載を補正後発明の記載ぶりに則して整理すると、刊行物2には、「接着剤で封止されて蓋の外部に突出する極柱と、電池の極柱と溶接する金属板体と、ボルト頭部分を折り曲げ加工された該金属板体によって嵌合、固定されたボルト出しの端子と、を有する鉛蓄電池」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。
ウ 補正後発明と刊行物2発明を対比すると、刊行物2発明の「接着剤で封止されて蓋の外部に突出する極柱」、「金属板体」、「ボルト出しの端子」、「鉛蓄電池」は、それぞれ、「絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子」、「端子接続部材」、「外部接続端子」、「電池」に相当し、上記アの視認事項からみて、刊行物2発明の「金属板体」は「極柱の外部突出部に接続固定」されて、「鉛蓄電池の蓋、すなわち、外装体の外部にある」といえるし、刊行物2発明の「ボルト出しの端子」は「金属板体を介して接続され」、「ボルト頭部分は折り曲げ加工された金属板体によって嵌合、固定されて」いるから、「ボルトの頭部は金属板体に接続固定されている」といえる。
エ そうすると、両者は、
「絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子と、この電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続された外部接続端子を備えた電池において、前記外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定された電池」で一致し、相違するところがないし、仮に、相違するところがあるにしても微差であって、当業者であればその微差に係る補正後発明の発明特定事項は容易になし得ることである。

(5-5)以上のとおり、補正後発明は、刊行物2に記載された発明であるか、仮に、そうでなくても、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項3号に該当し、または、同法同条第2項の規定に基づいて、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第3.本願発明
平成25年7月22日付けの特許請求の範囲及び明細書に係る補正は、上記のとおり補正の却下の決定がなされたから、本願の請求項1?3に係る発明は、平成24年10月2日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ということがある。)は、次の事項により特定されるものである。

【請求項1】
絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子と、この電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続さた外部接続端子を備えた電池において、前記外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定されたことを特徴とする電池。

第4.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、原出願の出願前に公知となった、特開2000-164199号公報、または、実願平5-152号(実開平6-54205号)のCD-ROMに記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、同文献から容易に発明をすることができたものであって、特許法法第29条第1項第3号に該当し、または、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含む。

第5.当審の判断
1.引用例の記載事項
1-1.引用例1
原出願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定で引用文献1として引用された特開2000-164199号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載さている。
(ア)「【請求項3】蓋に平行で極柱挿入口を有する底面、蓋に垂直な側面及び蓋に平行でボルト挿入口を有する上面から構成される階段状をしたボルト固定金具を用い、前記ボルト挿入口に、ボルトの頭部の端面を下にした状態で挿入した後、ボルト固定金具にボルトを溶接することによってボルトを固定した出力端子部品を用いることを特徴とする鉛蓄電池。」(特許請求の範囲の請求項3)
(イ)「(実施例1)・・・図7に示す本発明の出力端子部品9を用いた鉛蓄電池についての断面図を図1に示す。図1において、発電素子(図なし)は鉛アンチモン合金製の極柱11に溶接されている。極柱11のうち発電素子と接続していない部分に封口剤封止ゴム12をかませた後、極柱11に出力端子部品9の極柱挿入口3を嵌合させる。そして、前記極柱11と極柱挿入口3の嵌合部分の上部をバーナによって加熱し、前記極柱11の素材である鉛-アンチモン合金を溶解・凝固させてこれらを溶接する。・・・そして、電解液の濾液(当審注:「漏液」の誤記と認める。)を防止するためのエポキシ樹脂よりなる封口剤37を封口剤埋め込み枠13の内側に充填し、硬化させることによって鉛蓄電池を密封する。なお、図1に示すようにボルト1の底面は、蓋7及び封口剤10の上面よりも上に位置するようにした。このように配置することによって、ボルト1の底面に封口剤10が着かない。したがって、リード線取り付け時にボルト1にかかるトルクが、封口剤10の部分に直接かからなくできる。本発明の出力端子部品9を用いることにより、従来の出力端子部品8に比べて、この部分の容積を約50%低減することができる。」(【0008】)
(ウ)「本発明の出力端子部分の断面図」である図1をみると、上記(イ)の事項を窺うことができ、極柱が蓋から突出していることが見て取れる。
1-2.引用例4
原出願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定で引用文献4として引用された実願平5-152号(実開平6-54205号)のCD-ROM(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載さている。
(カ)「【請求項1】 電線と接続する電線接続部を備えたターミナル本体に円環形状の電極嵌合部を設けると共に該電極嵌合部の開放した自由端と連続する左右一対の締付板部を設け、かつ、これら締付板部を外嵌するテーパ面を備えた締付具にボルトを貫通させ、該ボルトを締付板部の内部に配置するナットに締め付けて上記締付具を垂直方向に下降させ、上記締付板部と連続する電極嵌合部の自由端を閉鎖する方向に移動させてバッテリー・ポストへ圧接固定するバッテリー・ターミナルであって、
上記円環形状の電極嵌合部は、垂直方向の帯状金属板を湾曲させて縦方向の円筒形状として形成し、該電極嵌合部の自由端より連続させる左右一対の締付板部は縦方向の帯状金属板より形成し、これら締付板部を屈曲させて上記締付具のテーパ面に沿う摺動部を設けていることを特徴とするバッテリー・ターミナル。」(実用新案登録の範囲の請求項1)
(キ)「 【産業上の利用分野】
本考案は、自動車等に搭載されるバッテリーの電極(バッテリー・ポスト)に取り付けられるバッテリー・ターミナルに関し、特に、垂直上方から締付工具によりボルト締めを行い、バッテリー・ターミナルをバッテリー・ポストへ確実な圧接状態で固定するものである。」(【0001】)
(ク)「 上記電線接続部16は、矩形状の基板を水平方向に2つ折りして重ね合わせ、上側部16Aおよび下側部16Bの上下2段配置としており、この折り曲げた上側部16Aの先端を下向きに屈曲して下側部16Bに固定している。また、上側部16Aには略中央位置にスタットボルト20を突設し、電線を圧着した端子(図示なし)をナット(図示なし)で締め付けて接続するようにしている。」(【0014】)

2.引用例に記載された発明
2-1.引用例1に記載された発明
ア 引用例1の(ア)には、「蓋に平行で極柱挿入口を有する底面、蓋に垂直な側面及び蓋に平行でボルト挿入口を有する上面から構成される階段状をしたボルト固定金具を用い、前記ボルト挿入口に、ボルトの頭部の端面を下にした状態で挿入した後、ボルト固定金具にボルトを溶接することによってボルトを固定した出力端子部品を用いる・・・鉛蓄電池」が記載されている。
イ 上記アの「鉛蓄電池」の「出力端子部品」は、「極柱挿入口」を有しているから、該「鉛蓄電池」は「極柱」を有していることは明らかであり、該「鉛蓄電池」は、該「出力端子部品」及び該「極柱」を有しているといえる。
ウ そうすると、引用例1には、
「極柱と、蓋に平行で極柱挿入口を有する底面、蓋に垂直な側面及び蓋に平行でボルト挿入口を有する上面から構成される階段状をしたボルト固定金具を用い、前記ボルト挿入口に、ボルトの頭部の端面を下にした状態で挿入した後、ボルト固定金具にボルトを溶接することによってボルトを固定した出力端子部品とを有する鉛蓄電池」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
2-2.引用例4に記載された発明
ア 引用例4の(カ)に記載された「バッテリー・ターミナル」は、「バッテリー(電池)」の「電極」すなわち「バッテリー・ポスト」に嵌合するものであるから、該バッテリー(電池)は、「電極(バッテリー・ポスト)」を有しているといえ、この「バッテリー(電池)」に着目すると、引用例4には、該「電極(バッテリー・ポスト)」と該「バッテリ・ターミナル」とを有する「電池」が記載されているといえる。
イ また、引用例4の(ク)には、電線接続部に電線を接続するスタットボルトが突出していることが記載されているといえる。
そうすると、引用例4には、
「バッテリー・ポストと、電線接続部に突設したスタットボルトを備えたターミナル本体に円環形状のバッテリー・ポスト嵌合部を有するバッテリー・ターミナルとを含む電池」の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されていると認められる。

3.本願発明と引用例に記載された発明との対比・判断
3-1.本願発明と引用例1に記載された発明との対比・判断
ア 本願発明と引用例1発明とを対比する。
イ 本願発明の「電池引出端子」に関し、上記第2.2.(5-4)で検討したように、本願明細書の【0028】には、「電池引出端子は、・・・電池外装体の内部で発電要素の電極に接続されると共に、絶縁封止されて外部に突出する導電部品である」と記載されている。
一方、引用例1の(イ)の「発電素子(図なし)は鉛アンチモン合金製の極柱11に溶接されている」との記載をみると、引用例1発明の「極柱」は、発電要素の電極に接続されているということができる。
また、同「極柱」は、同(イ)「電解液の濾液を防止するためのエポキシ樹脂よりなる封口剤37を封口剤埋め込み枠13の内側に充填し、硬化させることによって鉛蓄電池を密封する。」の記載、及び同(ウ)の視認事項により、「鉛蓄電池」の蓋から突出しているから、「鉛蓄電池」の外部にあり、「絶縁封止されて電池外装体の外部に突出」している本願発明の「電池引出端子」に相当する。
ウ 引用例1発明の「ボルト」は、引用例1の(イ)の「リード線取り付け時にボルト1にかかるトルクが、封口剤10の部分に直接かからなくできる。」との記載及び図1をみると、本願発明1の「外部接続端子」に相当する。
また、同(イ)の「図1に示すようにボルト1の底面は、蓋7及び封口剤10の上面よりも上に位置するようにした。」との記載によれば、引用例1発明の「ボルト」は、「鉛蓄電池」の「蓋」から突出しているといえるから、「電池外装体の外部に設置され」ているといえる。
エ 引用例1発明の「ボルト固定金具である出力端子部品」は、本願発明の「端子接続部材」に相当することは明らかである。
オ また、上記検討を踏まえると、引用例1発明において、「蓋に平行で極柱挿入口を有する底面、蓋に垂直な側面及び蓋に平行でボルト挿入口を有する上面から構成される階段状をしたボルト固定金具を用い、ボルト挿入口に、ボルトの頭部の端面を下にした状態で挿入した後、ボルト固定金具にボルトを溶接することによってボルトを固定した」ことは、本願発明1の「電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子に接続固定された端子接続部材を介して接続された外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定されたこと」に相当する。
カ 引用例1発明の「鉛蓄電池」は、本願明細書の【0029】によれば、本願発明の「電池」に含まれる。
キ そうすると、両者は、
「絶縁封止されて電池外装体の外部に突出する電池引出端子と、電池外装体の外部に配置され、この電池引出端子に接続固定された端子接続部材を介して接続された外部接続端子を備えた電池において、前記外部接続端子の頭部が前記端子接続部材に接続固定された電池」である点で一致し、相違するところがないし、仮に、相違するところがあるにしても微差であって、当業者であればその微差に係る本願発明の発明特定事項は容易になし得ることである。
3-2.本願発明と引用例4に記載された発明との対比・判断
ア 本願発明と引用例4発明とを対比する。
イ 引用例4発明の「バッテリー・ターミナル」は、「電池の外装体の外部に配置され」ていることは明らかである。
ウ 引用例4発明の「バッテリー・ターミナル」は「バッテリー・ポスト嵌合部」を設けており、上記イで述べたように「バッテリーターミナル」が電池の外装体の外部に配置されているから、「バッテリー・ポスト嵌合部」も電池の外装体の外部に配置されている。
エ 上記ウの検討を踏まえると、引用例4発明の「バッテリー・ポスト」は、「絶縁されて電池外装体に突出する」ものであることは明らかであり、この「バッテリー・ポスト」は、上記第2.2.(5-4)で述べたように、電池内部の発電要素の電極に接続される導体であるから、本願明細書の【0028】の記載を踏まえると、本願発明の「電池引出端子」と、「絶縁されて電池外装体の外部に突出する電池端子」である点で共通する。
オ 引用例4発明の「電線接続部に突設したスタットボルト」は、電線を接続しており、外部回路との接続を行っていることは明らかであるから、本願発明の「外部接続端子」と「端子」である点で共通している。
カ 引用例4発明では「バッテリー・ターミナル」が「電線接続部」を有しているから、引用例4発明において、「バッテリー・ターミナルを介して電線接続部が接続されている」といえ、引用例4発明の「バッテリー・ターミナル」は、本願発明の「端子接続部材」に相当する。
キ 以上の検討を踏まえると、両者は、
「絶縁されて電池外装体の外部に突出する電池端子と、この電池外装体の外部に配置され、この引出端子の外部突出部に接続固定された端子接続部材を介して接続された端子を備えた電池」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点3:電池端子につき、本願発明では封止されているのに対し、引用例4発明では封止されているか不明である点
相違点4:端子に関し、本願発明では、「頭部が端子接続部材に接続固定され」ているのに対し、引用例4発明では、「スタットボルトが電線接続部であるバッテリー・ターミナル突設し」ている点
ク 次に、相違点3及び4について検討する。
引用例4の(キ)の記載によれば、引用例4発明の電池は自動車に搭載されるものといえる。そうすると、相違点3及び4は、それぞれ、相違点1及び2と実質的に同じであるから、上記第2(5-4)で述べたように、相違点4は実質的な相違点ではないし、仮に実施的な相違点であるとしても、相違点3及び4に係る本願発明の発明特定事項は当業者であれば適宜なし得る程度のものである。
4.小括
よって、本願発明は、引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、引用例1または4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に公知となった引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、引用例1または4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定に基づいて、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-07 
結審通知日 2014-01-14 
審決日 2014-01-28 
出願番号 特願2009-32907(P2009-32907)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
P 1 8・ 57- Z (H01M)
P 1 8・ 113- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 充司  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 小川 進
大橋 賢一
発明の名称 電池  
代理人 中原 正樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ