• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  A61M
審判 一部無効 2項進歩性  A61M
管理番号 1286372
審判番号 無効2013-800016  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-01 
確定日 2014-04-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第3660678号発明「電子的にロード可能な薬剤ライブラリ付き注入ポンプ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3660678号の請求項33ないし42に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3660678号の請求項1ないし8、29ないし31に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その21分の11を請求人の負担とし、21分の10を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3660678号に係る経緯の概要は、以下に示すとおりである。
平成 5年10月14日 国際出願(特願平6-510282号)
(パリ条約による優先権主張:
1992年10月15日 米国)
平成17年 3月25日 設定登録(請求項の数:59)
平成25年 2月 1日 本件無効審判請求
同年 2月21日 請求書副本の送達通知の送達
同年 6月28日付け 審決の予告


第2 当事者の主張
1.請求人の主張
特許第3660678号の請求項1?8、29?31、33?42に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」、・・・、「本件発明42」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として甲第1号証?5号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張する。

本件発明1、7?8、29?31、33?37は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2?6、38?42は、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明33、34、37は、甲第1号証に記載された発明である。
よって、本件発明1?8、29?31、33?42についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきものである。

[証拠方法]
・甲第1号証:Michael BAZARAL,John PETRE, RECOMMENDATIONS FOR SPECIFICATIONS AND OPERATOR INTERFACE DESIGN FOR NEW MEDICAL INFUSION PUMPS, BIOMEDICAL INSTRUMENTATION & TECHNOLOGY,SEPTEMBER/OCTOBER 1992, p.364-370 及びその翻訳文
・甲第2号証:特開昭61-209666号公報
・甲第3号証:特開昭61-29364号公報
・甲第4号証:特開昭63-238870号公報
・甲第5号証:米国特許第5069668号明細書及びその翻訳文

2.被請求人の主張
請求書の副本を被請求人に送達し(送達日 平成25年2月21日)、相当の期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの答弁がない。
また、平成25年6月28日付け審決の予告に対しても、被請求人からは何らの応答がない。


第3 本件発明
本件発明1?8、29?31、33?42は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1?8、29?31、33?42に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電子的にロード可能な注入ポンプのための特注薬剤ライブラリ作成システムであって、
各薬剤の登録が、薬剤送り出し情報と関連付けられた複数の薬剤登録を含む薬剤ライブラリを格納するメモリと、
前記薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録から1組の薬剤登録を選択する手段と、
前記選択された薬剤登録をこれと関連する薬剤送り出し情報と共に前記注入ポンプのユーザに対する複数の薬剤入力を提供する電子的に格納された特注ライブラリに追加する手段と、
前記システムを作動させて前記電子的に格納された特注ライブラリを前記薬剤注入ポンプにロードするためのロード手段と、
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記関連する各組の薬剤送り出し情報は、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤の投与量、およびボーラスのサイズを含むパラメータ群より選択された情報を有することを特徴とする請求の範囲1記載のシステム。
【請求項3】
前記パラメータ群は、最小、デフォルト、および最大の薬剤送り出し速度を含むことを特徴とする請求の範囲2記載のシステム。
【請求項4】
前記パラメータ群は、最小、デフォルト、および最大の投与量を含むことを特徴とする請求の範囲2記載のシステム。
【請求項5】
前記パラメータ群は、最小、デフォルト、および最大のボーラスサイズを含むことを特徴とする請求の範囲2記載のシステム。
【請求項6】
前記パラメータ群は最大のボーラスレートを含むことを特徴とする請求の範囲2記載のシステム。
【請求項7】
前記特注ライブラリ内において、前記薬剤ライブラリには存在しない薬剤の構成を作成する手段をさらに備えたことを特徴とする請求の範囲1記載のシステム。
【請求項8】
前記特注ライブラリにおける既存の薬剤構成をユーザが編集できるようにする編集モジュールをさらに備えたことを特徴とする請求の範囲1記載のシステム。」
「【請求項29】
コンピュータと一緒に使用するシステムであって、前記システムが、薬剤ライブラリを含む記憶媒体を含み、前記薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、各薬剤登録はプログラム可能な薬剤注入ポンプの構成のための薬剤送り出し関連情報一組と関連づけられていると共に、前記記憶媒体はコンピュータによる読み込みが可能であり、前記システムが前記コンピュータ上で作動するプログラムを含み、前記プログラムは、前記コンピュータのユーザが前記薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録中から薬剤登録一組を選択できるようにする手段と、ユーザが選択した薬剤登録をそれと関連した薬剤送り出し情報と一緒に、特注化したライブラリに追加できるようにする手段と、ユーザが、前記コンピュータをして特注化したライブラリを薬剤注入ポンプに電子的にロードせしめることができるようにする手段と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求の範囲29のシステムであって、ユーザが前記薬剤ライブラリ内に存在しない特注化したライブラリの範囲内で薬剤構成を作り出せるようにする手段を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求の範囲29のシステムであって、ユーザが特注化したライブラリ内で現存の薬剤構成を編集できるようにする手段を更に含むことを特徴とするシステム。」
「【請求項33】
特定の薬剤を含む容器と共に使用するための薬剤注入ポンプであって、
前記ポンプは特定の薬剤を容器から患者に投与する駆動機構と、
前記駆動機構を制御するプログラマブルコントローラと、
前記ポンプ内部の書き換え可能で電子的にロード可能なメモリと、
前記電子的にロード可能なメモリに薬剤ライブラリを電子的にロード可能にする入力回路構成と、
前記ユーザがプログラマブルコントローラをプログラムできるようにするユーザインターフェイスと、を含み;
前記薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、前記薬剤注入ポンプを構成するための関連する薬剤送り出しパラメータおよび/または薬剤送り出しプロトコール一組が各薬剤登録と結びついており、前記インターフェイスは、
前記ユーザが電子的にロードされた薬剤ライブラリから薬剤登録を選択できるようにする手段と、
前記選択した薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータ一組を用いて前記プログラマブルコントローラを構成する手段と、
を含むことを特徴とするポンプ。
【請求項34】
請求の範囲33の薬剤注入ポンプであって、前記の容器が注射器であり、前記駆動機構が前記注射器を作動させることを特徴とする薬剤注入ポンプ。
【請求項35】
請求の範囲33の薬剤注入ポンプであって、前記の電子的にロード可能なメモリが不揮発性メモリであることを特徴とするポンプ。
【請求項36】
請求の範囲35の薬剤注入ポンプであって、前記の電子的にロード可能なメモリがEEPROMであることを特徴とするポンプ。
【請求項37】
請求の範囲33の薬剤注入ポンプであって、前記ユーザインターフェイスが制御パネルを構成し、前記パネルを介して前記ユーザが前記プログラマブルコントローラをプログラムできると共に、また前記薬剤ライブラリからの薬剤登録を画面に表示できることを特徴とするポンプ。
【請求項38】
請求の範囲33の薬剤注入ポンプであって、関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれることを特徴とするポンプ。
【請求項39】
請求の範囲38の薬剤注入ポンプであって、前記パラメータ群に最小、ディフォルト(default)および最大の薬剤送り出し速度が含まれることを特徴とするポンプ。
【請求項40】
請求の範囲38の薬剤注入ポンプであって、前記パラメータ群に最小、ディフォルトおよび最大の薬剤投与量が含まれることを特徴とするポンプ。
【請求項41】
請求の範囲38の薬剤注入ポンプであって、前記パラメータ群に最小、デフォルトおよび最大のボーラスサイズが含まれることを特徴とするポンプ。
【請求項42】
請求の範囲38の薬剤注入ポンプであって、前記パラメータ群に最大のボーラス速度が含まれることを特徴とするポンプ。」


第4 甲各号証の記載内容
1.甲第1号証
甲第1号証は、カナダ国立科学技術情報機関が1992年10月2日に受け入れた刊行物である(当審における職権審理による。)から、本件特許出願の優先権主張日(以下「本件優先日」という。)前に頒布された刊行物といえるところ、その第364?370頁には、図面と共に次の事項が記載されている。なお、摘示箇所の記載として請求人提出の翻訳文に基づく邦訳を記す。

甲1a:翻訳文第1頁第9行?第3頁第3行
「医療用輸液ポンプには、その時々の技術が十二分に活かされていなかった。ポンプは特定の機械的な基準と電気的な基準を満たせばよく、また満たさなければならない。こうした基準として、大きさ、重さ、電池充電後の使用可能時間が挙げられる。我々が使うものとしては、シングルチャネル型ポンプが好ましい。ポンプカセットは、自動エア除去機能を備え、輸液源として輸液バッグとシリンジのどちらでも使用できるものでなければならない。ソフトウェアは、約100の一般的な治療用輸液とそれに対応する単位及び輸液プロトコルのデータベースを含んでいるべきである。さらに、データ入力と画面表示は、薬物又は液体の名前と用量が主たるユーザ入力及び主たる画面表示になるように構成されるべきである。
当院で現在使用しているポンプに置き換わるものはと考えたとき、これまでの技術と比べて大きな向上が認められるものを期待する。論理素子やセンサ、ディスプレイはもはや高価なものではなくなったので、適切に設計すれば、一般的な輸液ポンプをはるかに使いやすいものにすることができる。製造元との会話から、新しい輸液ポンプの具体的な基準をリストアップして検討すれば、有意義な進歩を達成できるかもしれないと確信するに至った。一番の懸案事項は、ディスプレイとソフトウェアであるが、まず最初に機械的基準と電気的基準について述べる。
機械的及び電気的特徴
非常に特殊な状況を除いては、1種類のポンプを病院のあらゆる場所で使用できるように、新しいポンプはどれも皆、集中治療室と手術室と病棟での使用に適したものでなければならない。そのためには、0.5?1、000mL/時の範囲の流量が必要になる。流量設定精度としては、±0.1mL/時又は±5%のいずれか高い方の精度で十分である。ポンプの大きさは1、000cm3以下、重さは2kg以下でなければならない。ポンプは、患者間で使いまわすため、洗浄と消毒が容易であり、消毒液に短時間浸しておくことができなければならない。
現在製造されている特定の輸液ポンプカセットは、治療薬のシリンジと輸液バッグのどちらでも使用することができるので、別途のシリンジポンプを常備しておく必要がない。これらのカセットは、自動エア除去機能も備えている。こうした機能は機械的に簡単なものなので、新しい設計には例外なく取り入れられるべきである。カセットに付属する管の穴は、プライミングが少量でできるように小径でなければならないが、同時に、過剰な圧力を加えずにあらゆる一般的な治療薬を注入することができるだけの大きさでなければならない。両方の条件を考えたときに妥当な内径は1.6mmである。ポンプは、通常は患者と一緒に移送するので、ポンプを1時間、好ましくは2時間駆動することができる電池を装備することが必須となる。ポンプの機械的な部分は、電池に必要な重さと大きさを最小限に抑えるために省電力型でなければならない。ポンプの使用全体に占める割合はわずかであるが、院外搬送時に使用するために、電池寿命は4時間とするべきである。」

甲1b:翻訳文第6頁第6?19行
「目標とするソフトウェア
一般に輸液の目的は、一定の薬効を維持することにある。設定速度で薬物を注入し、患者の必要性の変化に応じて折々に設定を変更することで良好な結果を得ることができる。数種類の特定の薬物では初期投与量も用いられる。こうした一般的な用途では、看護士や医師が流量を計算して望ましい薬物投与量にする。この計算には、混合輸液の開始量と、この開始量中に含まれる薬物量と、1時間当たりの望ましい薬物量と、通常は患者の体重とが必要になる。薬物があまり用いられないものであれば、医師や看護士は一般的な用量を記載した表を調べて指定した投与量が適切かどうかを確認しなければならない場合もある。
こうした作業の多くを簡略化するためには、ポンプにデータベースとソフトウェアを内蔵して、特定の薬物又は輸液を使用する際に一般に用いられるプロトコルを呼び出すことができるようにすればよい。そうすれば計算の大部分を自動化することができる。」

甲1c:翻訳文第8頁第4行?第17頁第1行
「オペレータ・インタフェースの設計概要
1.目指すのは、幅広く様々な用途に使用でき、しかも簡単に正しく使えるポンプである。
A.従来どおりの単純な流量制御装置として簡単に使用できる。
B.ほとんどの輸液について、ポンプが自動的に注入速度計算と単位の選択を行なう。
C.ある限られた範囲で、ポンプは特定の集中治療室(ICU)で用いられる薬剤混合を表すデータを取得し、これらの薬剤混合設定をそれ以降のユーザに提供する。

2.実装
A.見やすい大型ディスプレイ
■約4行×50字、画素数64×320以上、ドットアドレス指定可能。
電子発光ディスプレイがベスト。
■全ての関連情報を表示すること。電池電源使用中は設定変更時を除いて表示情報を薬物名と用量のみに減らしてもよい。
■選択肢の表示をその状況の関連項目に制限する。例えば、ドーパミンを選択すると、リドカインのメニュー選択は表示されない。
■略字の使用は控えめにする。一般的でない略字は使わない。
■輸液中に薬物の名前と注入速度を8フィート離れた場所から判読できる。

B.キーボード
■各キーが1つの機能を持ち、その機能はどのオペレーティング・モードでも同じである。
■明確に触知できるフィードバック。ボタンを押したときの「カチッ」という感触、反復せず。
■キーの内部照明で現行モード(「設定」、「実行」、「停止」)を表示する。
■ポンプ速度を変更するときは、意図せぬ変更を防ぐために少なくとも2つのキーを使う操作手順を使用する。

C.薬物と液体のデータベース
■ほとんどの臨床使用を網羅する100以上の製品のデータベース
■データベースが設定(単位等)を指示
■一般的な用量、小児用量、配合禁忌及びその他の要素に関する追加情報を「情報取得」機能として表示

*データベースの構築は製造元と病院とが共同で行なうことになるだろう。データベースには調査対象のICU及び病棟で輸液に使用された全ての薬物が含まれる。データベースに含まれない薬物はメニュー外品目としてそのまま投与することができ、後に一般的になった薬物については折々の更新時にデータベースに追加することができる。

D.不揮発性メモリ
■患者の体重に対する最終使用値を記憶する。
■薬物調合の最終使用値(例:250mL中400mg)を薬物毎に記憶する。薬物調合は同じ施設で長期にわたって変化しないので、ポンプはその施設の調合方法を記憶することになる。
■これらの値をオペレータに表示し、オペレータは具体的な状況に応じて値を変更することができる。

E.適切な処理能力を持つマイクロプロセッサ
■ポンプとディスプレイの駆動、キーパッドの走査等を行なう。
■最終有効設定でポンプの運転を継続しながら、キーボード入力を受理して応答する。
■ウォッチドッグタイマと反復的な読出し専用メモリ(ROM)のチェックサム及びランダムアクセスメモリ(RAM)のチェックを含むセルフチェックを実施する。
■外部通信ポートがある場合は、外部通信ポートにも同時に対応する。

使用説明書見本
「XYZポンプ」は患者ケアの向上を目的として設計されています。はじめに、XYZポンプの使用ステップをドーパミンの投与という一般的な状況に関して説明します。仮に、このポンプは当院でドーパミンの投与に使用したことがあり、この患者に以前に何か他の薬物を投与するために使ったポンプであると仮定します。このため、このポンプでは既に、当院で一般的に使用しているドーパミン混合輸液に合わせた設定と、この患者の体重に合わせた設定がすでになされています。
ステップ1.ドーパミン(標準量:混合輸液250mL中400mg)を吊るし、ポンプカセットを洗い流します。

ステップ2.ポンプの裏側の電源スイッチを入れます。すると、下のような画面が表示されます:

ステップ3.強心剤のボタンを押します。

下のような画面が表示されます:

ステップ4.「ドーパミン」の上のボタンを押して薬物名をハイライト表示します(リドカインを選択する場合はボタンを4回押します)。

ステップ5.「入力」を押して選択を確定します。

すると、ドーパミンに関するデータ画面が表示されます:

数値はいずれも変更可能ですが、この例の場合はポンプを所望の注入速度に設定すればよいだけです。

ステップ6.注入速度がハイライト表示されるまでボタンを押します(3回)。

ステップ7.所望の速度は3.0μg/kg/分です。「3」を押してから、「入力」を押します。

すると、入力したデータが画面に表示されます:

ステップ8.正しく入力されたことを確認して、「実行」を押します。ポンプが始動し、入力したデータの他に速度の計算値と注入された量も表示されます:

ポンプのメニュー中のその他のどの薬物又は輸液についても、同じ手順を使って注入速度や量を自動的に計算することができます。薬物や混合輸液、患者の体重を変更する場合も上述の手順で「設定」から始めます。
次の例では、注人中の薬物や輸液の注入速度と量を手早くリセットする方法を説明します。注入速度を変更する場合や、輸液バッグを同じ薬物混合輸液の新しいバッグに交換するときに「開始量」を設定する場合に、「リセット」ボタンを使います。新シフト開始時に「現シフト」の量をゼロに設定することもできます。」

甲1d:翻訳文第22頁最終行?第25頁第17行
「更に、XYZポンプでは、リドカインの場合のように投与量と維持量を選ぶことができ、「メニュー外薬物」を選択して、まだメモリに記憶されていない一般的でない薬物の注入速度を自動計算することもできます。まずは使用説明書を読まずにリドカインとメニュー外薬物の項目を選択してから使用説明書と照らし合わせてみると、これらの項目については使用説明書を読まなくてもすぐに使えることがわかるはずです。

その他の設計案
上の例は、我々が望むユーザインタフェースの詳細を示すものである。改良や機能の追加については、補飾的なものは主要な用途の妨げになることがあるため、慎重に検討する必要がある。基本原則は、ポンプの論理が注入されている登録薬物や液体に関するデータを保有し、このデータを利用することとする。提案のインタフェースでは、正式なユーザプログラミングは不要である。データベースは、ユーザ変更不能なROM又はその他の記憶装置に薬物名と関連情報を格納する。更に、製造元が不揮発メモリを一般的に用いられる混合比に事前設定する。しかし、装置を特定の混合比(例えば250mL中400mg)に設定することで、使用する薬物に関連ある混合情報が格納されたデータベース部分(不揮発メモリ内の)をリセットすることができる。大抵の場合、後に同じ薬物を使用するときも同じ混合比を使用する。何かの理由で、また別の混合比が必要になった場合には新しい混合比を入力することになり、次のユーザにはこの混合比が提示される。
また他の案は、ユーザ変更不能な記憶装置(ROM)に事前設定した混合比を記憶させておくというものである。ポンプの使用時に必要に応じてメニューを上書きできるが、次に使用するときは変更前のROMメニューに戻っているようにする。この案は、混合比を記憶させておくために各病院専用のROMが必要になるため、あまり妙案ではない。病院専用のメニューを使用するということは、各薬物の好ましい混合比に関して病院内で意見が一致しなければならないという難しい問題が生じるということであり、この合意が実際の使用を表していると見なすことである。
薬物の名前と「情報取得」データ、各薬物特有のその他のデータ(混合量及び濃度を除く)は、いかなる場合もROMに格納される。これらのROMは折々に更新することが望ましく、頻繁に更新する必要はない。その理由は、いかなる新薬もメニュー外品目として投薬可能だからである。「メニュー外薬物」のフォーマットは、薬物名が表示されないことと既定の混合比がユーザに提示されないこととを除いて、登録薬物のフォーマットと同じである。
輸液を登録しておくと、使いやすいだけでなく、他にも利点が得られる。アラームを輸液特有のものにすることができるのである。すなわち。「ビーッ」というアラーム音の代わりに、音声合成を使って、「ビーッ-ドーパミンをチェックしてください」と言葉でアラームを出すことができる。複合環境で他にも同じポンプをいくつか使用している場合は、こうした薬物名を盛り込んだアラームが特に役立つ。自動記録用データポートを用いると、登録輸液を使用する場合にオペレータがデータ入力を行なってデータ管理システム用に輸液を明確に識別する必要がなくなる(ポンプ設定時以外)。

基本原則として、ポンプの論理が注入されている登録薬物や液体に関するデータを保有し、このデータを利用することとする。

結論
機械的及び電気的仕様としては、1?2時間のバックアップ用電池電源を有する小型の単一チャネル型ポンプである。ソフトウェアは特に重要である。ここに提示したソフトウェアの要件とディスプレイに関する内容は完全ではないが、フォーマットについては明確に規定している。薬物や輸液は名前で選択され、その名前が画面に表示されて、プロトコルと単位がROM及び不揮発メモリ内でこの名前と関連付けられ、メモリのデータを使って自動的に流量計算が行なわれる。ROM内の一般的な薬物と液体に関する詳細情報の表示は単純明快でなければならない。ここに示したフォーマットを用いると、救急治療時の時間と手間を大幅に削減でき、医療事故の防止も促進される。これらの仕様を満たすポンプを製造できない技術的理由はないので、このようなポンプが市販されるようになるまで当院ではポンプの購入を見合わせるよう働きかけを行なっている。」

続いてこれらの記載について検討する。
1-1 甲1発明1
(ア)摘記事項甲1aの「ソフトウェアは、約100の一般的な治療用輸液とそれに対応する単位及び輸液プロトコルのデータベースを含んでいるべきである。」、甲1bの「ポンプにデータベースとソフトウェアを内蔵して、特定の薬物又は輸液を使用する際に一般に用いられるプロトコルを呼び出すことができるようにすればよい。」、甲1cの「■データベースが設定(単位等)を指示」、甲1dの「データベースは、ユーザ変更不能なROM又はその他の記憶装置に薬物名と関連情報を格納する。更に、製造元が不揮発メモリを一般的に用いられる混合比に事前設定する。しかし、装置を特定の混合比(例えば250mL中400mg)に設定することで、使用する薬物に関連ある混合情報が格納されたデータベース部分(不揮発メモリ内の)をリセットすることができる。」、「基本原則は、ポンプの論理が注入されている登録薬物や液体に関するデータを保有し、このデータを利用することとする。」の各記載に加え、甲1cの「ステップ5」に示す図面(表示画面)における「開始量」、「開始分量」、「注入速度」等の記載によれば、ポンプは、内蔵するデータベースを利用すること、データベースは記憶装置に格納されていること、データベースは、登録薬物の各薬物名とその関連情報を有すること、関連情報には、混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコルを含むことが、それぞれ分かる。
よって、甲第1号証には、“データベースを利用するポンプであって、ポンプは、登録薬物の薬物名と輸液プロトコルを含む関連情報を有するデータベースを格納する記憶装置を備えている”事項が実質的に記載されている。

(イ)摘記事項甲1cの「ステップ4.「ドーパミン」の上のボタンを押して薬物名をハイライト表示します(リドカインを選択する場合はボタンを4回押します)。」の記載から、甲第1号証には、“ポンプは、データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択する手段を備える”事項が実質的に記載されている。

(ウ)摘記事項甲1cの「D.不揮発性メモリ ■患者の体重に対する最終使用値を記憶する。 ■薬物調合の最終使用値(例:250mL中400mg)を薬物毎に記憶する。薬物調合は同じ施設で長期にわたって変化しないので、ポンプはその施設の調合方法を記憶することになる。 ■これらの値をオペレータに表示し、オペレータは具体的な状況に応じて値を変更することができる。」、甲1dの「更に、製造元が不揮発メモリを一般的に用いられる混合比に事前設定する。しかし、装置を特定の混合比(例えば250mL中400mg)に設定することで、使用する薬物に関連ある混合情報が格納されたデータベース部分(不揮発メモリ内の)をリセットすることができる。大抵の場合、後に同じ薬物を使用するときも同じ混合比を使用する。何かの理由で、また別の混合比が必要になった場合には新しい混合比を入力することになり、次のユーザにはこの混合比が提示される。」の各記載によれば、データベースにおける関連情報は、ユーザにより変更され、最終使用値が記憶されるとともに、次のユーザに対しては関連情報として変更後の最終使用値が提示されるのであるから、ユーザにより関連情報が変更されることによりデータベース自体が更新されているものといえる。
また、この更新後のデータベースが記憶装置に記憶されるのであるから、データベースが記憶装置に電子的に書き込み可能であることは明らかである。
よって、甲第1号証には、“ポンプは、選択された登録薬物の関連情報を変更してデータベースを更新する手段及び更新されたデータベースを前記記憶装置に電子的に書き込む手段を備える”事項が実質的に記載されている。

以上における各摘記事項の記載及び(ア)?(ウ)の検討を総合すれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されている。
「電子的に書き込み可能なデータベースを利用するポンプであって、
登録薬物の薬物名と輸液プロトコルを含む関連情報を有するデータベースを格納する記憶装置と、
データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択する手段と、
選択された登録薬物の関連情報を変更してデータベースを更新する手段と、
更新されたデータベースを前記記憶装置に電子的に書き込む手段と、
を備えたポンプ。」

1-2 甲1発明2
(エ)上記摘記事項1aの「ポンプは特定の機械的な基準と電気的な基準を満たせばよく、また満たさなければならない。・・・ポンプカセットは、自動エア除去機能を備え、輸液源として輸液バッグとシリンジのどちらでも使用できるものでなければならない。」甲1cの「輸液バッグを同じ薬物混合輸液の新しいバッグに交換する」の各記載から、甲第1号証には、“薬物混合輸液のバッグ又はシリンジと共に使用するためのポンプ”が実質的に記載されている。
さらに、甲1aの「カセットに付属する管の穴は、・・・一般的な治療薬を注入することができるだけの大きさでなければならない。・・・ポンプは、通常は患者と一緒に移送するので、ポンプを1時間、好ましくは2時間駆動することができる電池を装備することが必須となる。」、甲1cの「E.適切な処理能力を持つマイクロプロセッサ ■ポンプとディスプレイの駆動、キーパッドの走査等を行なう。」の各記載も併せみれば、甲第1号証には、“ポンプは、薬物を輸液バッグ又はシリンジから患者に注入するポンプであって、ポンプを駆動するマイクロプロセッサを含む”事項が実質的に記載されている。

(オ)摘記事項甲1bの「ポンプにデータベースとソフトウェアを内蔵して、特定の薬物又は輸液を使用する際に一般に用いられるプロトコルを呼び出すことができるようにすればよい。」、甲1cの「データベースに含まれない薬物はメニュー外品目としてそのまま投与することができ、後に一般的になった薬物については折々の更新時にデータベースに追加することができる。」、甲1dの「データベースは、ユーザ変更不能なROM又はその他の記憶装置に薬物名と関連情報を格納する。」の各記載から、甲第1号証には、“ポンプは、ポンプに内蔵された折々に更新することができる記憶装置を含み、データベースは記憶装置に格納される”事項が実質的に記載されている。

(カ)上記(ア)の検討を踏まえると、データベースは複数の登録薬物を含むこと、ポンプデータベースを利用すること、データベースは、登録薬物の各薬物名とその関連情報を有すること、関連情報には、混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコルを含むことが、それぞれ分かる。
よって、甲第1号証には、“データベースは複数の登録薬物を含み、ポンプで利用するための混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコルを含む関連情報を有する”事項が実質的に記載されている。

(キ)摘記事項甲1cの「オペレータ・インタフェースの設計概要」、「A.見やすい大型ディスプレイ」、「B.キーボード」の各記載及び上記(イ)の検討によれば、ポンプは、ディスプレイ及びキーボードを有するインタフェースを含み、インタフェースにより、オペレータはデータベースから登録薬物を選択できるものといえる。
また、摘記事項甲1cの「ステップ4.「ドーパミン」の上のボタンを押して薬物名をハイライト表示します(リドカインを選択する場合はボタンを4回押します)。」、「ステップ5.「入力」を押して選択を確定します。すると、ドーパミンに関するデータ画面が表示されます: 数値はいずれも変更可能ですが、この例の場合はポンプを所望の注入速度に設定すればよいだけです。」、「ステップ8.正しく入力されたことを確認して、「実行」を押します。ポンプが始動し、入力したデータの他に速度の計算値と注入された量も表示されます:」の各記載から、インタフェースは、選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動するようにしているものといえる。
よって、甲第1号証には、“ポンプは、ディスプレイ及びキーボードを有するインタフェースを含み、インタフェースは、オペレータがデータベースから登録薬物を選択できるようにする手段と、選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動するようにしている手段を含む”事項が実質的に記載されている。

以上における各摘記事項の記載及び(エ)?(キ)の検討を総合すれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されている。
「薬物を輸液バッグ又はシリンジから患者に注入するポンプであって、
ポンプは、ポンプを駆動するマイクロプロセッサと、
ポンプに内蔵された折々に更新することができる記憶装置と、
ディスプレイ及びキーボードを有するインタフェースと、を含み;
データベースは記憶装置に格納され、前記データベースは複数の登録薬物を含み、ポンプで利用するための混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコルを含む関連情報を有し、前記インターフェースは、
オペレータがデータベースから登録薬物を選択できるようにする手段と、
選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動するようにしている手段と、
を含むポンプ。」

2.甲第2号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には図面と共に次の事項が記載されている。

甲2a:特許請求の範囲第8項
「(8)患者に治療剤を適用する装置に於て、患者に対する予め選ばれた治療剤の送出しを制御する駆動手段と、当該プログラム可能な論理カートリッジがプログラムされて動作位置にある時、前記駆動手段の動作を制御する為の流れの経過を設定する着脱自在のプログラム可能な論理カートリッジを含む電子式手段と、前記着脱自在のプログラム可能な論理カートリッジを受入れて、患者の需要及び治療剤の能力の予め選ばれたパラメータに基づいて、その時選ばれた流れの経過を該カートリッジにプログラムする計算機手段とを有する装置。」

甲2b:第5頁左上欄第15?19行
「汎用計算機の様な計算機を使って、送出し装置(これはポンプであってよい)から離れた所にあるプログラム可能な要素をプログラムし、このプログラム可能な要素は、送出し装置の中に配置した後、送出し装置の動作を制御する。」

甲2c:第6頁左上欄第7?16行
「プログラミング装置13が、(第1図に示す様に)送出し装置14内に配置した時に送出し装置14の動作を制御する為に使われるプログラム可能な論理装置18をプログラムすることが出来る計算機16,好ましくは汎用計算機を含んでいる。
更に例として、第1図に示す様に、計算機16が機械プログラム20と接続され、それと共に、論理装置をプログラムする為に、必要に応じて、データベース22、補助プログラム24及び薬効プログラム26と接続されている。」

甲2d:第6頁右上欄第5行?右下欄第3行
「論理装置18はプログラム可能な論理カートリッジであることが好ましい。プログラム可能な論理カートリッジ18は任意の形の持久型論理装置(つまり、プログラムされた形が電力がない場合にも保持される)又は小形支援電池の様な付属の電源によって維持される非持久型論理装置であってよい。これに限らないが、好ましい形としては、プログラム可能な固定メモリ(PROM)、消去可能なプログラム可能な固定メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な固定メモリ(EEPROM)、電気的に変更し得るプログラム可能な固定メモリ(EAPROM)、持久型ランダムアクセス・メモリ(NVRAM)及びプログラム可能な論理配列(PLA)の様な市場で入手し得る装置がある。
論理カートリッジが制御装置の論理通路の形成可能な部分を持っていて、論理ゲートに入っている形式又は送出し装置の状態に応じて、その動作を設定する。プログラム20は、計算機16を動作させる為に使われる機械プログラムであり、装置は利用者から供給された情報を、利用者の初期の送出し条件に従って送出し装置を動作させるのに適した論理形式に変換する。この時、計算機16がこの形式を論理カートリッジ18に書込み、正しい入力がされたことを自動的に検証する。
利用者が誤りのない情報を入力するのを助ける為、計算機が適当なデータベース22及び補助プログラム24を使って、喰違いを決定し、第2図に詳しく示す様に、利用者支援情報を提供し並びに/又は計算を助ける。従って、例として云えば、データベース(DBS)22は患者DB 22a及び薬剤DB 22bを含むことが出来る。これを(プロトコル24a、装置の定義24b及びグラフィックス24c)の様な補助プログラム24と薬効アルゴリズム26で補強して、一般的に受入れられている薬剤量の範囲、同時に患者内に存在する時の薬剤の間の相互作用、各々の薬剤に対する数字的な薬量-応答又は薬効モデルのパラメータの様な情報を提供することが出来る。」

甲2e:第6頁右下欄第12行?第7頁左上欄第2行
「計算機はデータベースを利用して、個々の患者の処置及び応答の履歴を保持することが出来、患者の関連する生理学的な又はその他のパラメータを利用して、安全で有効な薬量の決定を助けることが出来る。更に、計算機は、製造業者によって提供されるか、利用者によって開発されるが、或いは第3者によって提供されるかの何れかの送出しプロトコルの「ライブラリー」を使う。こういうプロトコルは、個々の患者に対する薬量を正確に調節する為に必要な最小限の量のデータだけを要求することにより、利用者を助ける。」

甲2f:第7頁右上欄第15行?左下欄第16行
「第2図に示す様に、データが計算機16により変換器38を介して論理カートリッジ18に書き込まれる。希望する場合、計算機は(論理カートリッジに取付ける為の適当なラベルを作る)ラベル装置40に対する出力をも発生する。第2図に示す様に、計算機16は電話接続装置42を介して送出し装置14接続することが出来る。電話接続装置42が電話装置48の両側にモーデム44,46を含んでいるが、その目的は後で更に説明する。
送出し装置14が制御装置50を含んでおり、これが着脱自在のプログラム可能な論理装置18を受入れる。制御装置50が駆動器52を駆動し、この駆動器が、それを介して治療剤を患者34に送出す注射器54の様なアプリケータの動作をする。論理装置18を制御装置50から取外した場合、送出し装置14は動作しない。
駆動機構は任意の適当な形式であってよく、例えば現在好ましいと考えられる様に、注射器のプランジャを押下げる機構であってよい。薬剤の流体組成物と接触する全ての部品は使い捨てであることが好ましい。」

以上の各記載及び図面の図示内容を総合すれば、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「プログラミング装置13が、プログラム可能な論理カートリッジ18をプログラムすることが出来る計算機16を含み、利用者から供給された情報を、利用者の初期の送出し条件に従って送出し装置を動作させるのに適した論理形式に変換し、計算機16がこの形式を論理カートリッジ18に書込み、論理カートリッジ18はEPROMであり、論理カートリッジ18は、送出し装置14の中に配置された後、送出し装置14の動作を制御する、患者に治療剤を適用する装置。」

3.甲第3号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には図面と共に次の事項が記載されている。

甲3a:特許請求の範囲第11項
「(11)投与される薬品を含む液体を入れる注射器を受けるための手段、注射器作動装置手段及び該作動装置手段を駆動させ該注射器のプランジャを動かして、そこから液体を放出させるための手段からなる点滴ポンプで、該駆動手段は、該駆動手段と該作動装置手段を常時監視するための位置感知装置との間に永久的に保持される接続を持つ点に特長のある点滴ポンプ。」

甲3b:特許請求の範囲第23項
「(23)特許請求の範囲第11項のポンプにおいて、さらに、該薬品を含む液体の放出率を制御する該ポンプのための制御回路構成からなり、該制御回路構成には、時間とともに変化し、薬品を含む液体を投与する患者の体内で、薬品を望ましいほぼ一定のレベルに保つ予め決められたプロフィールに従って、該点滴ポンプによって投与される各薬品に関しての情報を予めプログラムした、プログラム可能なモジュールがあるポンプ。」

以上の各記載及び図面の図示内容を総合すれば、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「投与される薬品を含む液体を入れる注射器を受けるための手段、注射器作動装置手段及び該作動装置手段を駆動させ該注射器のプランジャを動かして、そこから液体を放出させるための手段からなる点滴ポンプで、該駆動手段は、該駆動手段と該作動装置手段を常時監視するための位置感知装置との間に永久的に保持される接続を持つ点に特長のある点滴ポンプであって、該薬品を含む液体の放出率を制御する該ポンプのための制御回路構成からなり、該制御回路構成には、時間とともに変化し、薬品を含む液体を投与する患者の体内で、薬品を望ましいほぼ一定のレベルに保つ予め決められたプロフィールに従って、該点滴ポンプによって投与される各薬品に関しての情報を予めプログラムした、プログラム可能なモジュールがあるポンプ。」

4.甲第4号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には図面と共に次の事項が記載されている。

甲4a:特許請求の範囲
「(1)注入液を貯留するシリンジと、このシリンジ内に挿通されプランジャにより一定方向に押圧移動するピストンと、前記プランジャに結合してこれを往復動作させる移動体と、この移動体に螺合する送りねじ軸と、この送りねじ軸を回転駆動する駆動手段とを備えた連続微量注入ポンプにおいて、
昼間注入開始時刻、昼間注入速度、夜間注入開始時刻、夜間注入速度、注入液濃度および予定注入量などの注入パターンを決定する複数の項目を逐次選択し得る1個の項目選択スイッチと、
選択された項目の設定数値を逐次入力し得る設定数値入力スイッチと、
開始/停止スイッチとからなる3つのスイッチによりプログラム制御システムを構成し、前記各スイッチの操作により予め設定した注入パターンに従って前記駆動手段を駆動制御することを特徴とするプログラム可能な連続微量注入ポンプ。
(2)特許請求の範囲第1項記載のプログラム可能な連続微量注入ポンプにおいて、項目選択スイッチは、一時注入開始時刻および一時注入速度からなる注入パターンを決定する項目を含むことを特徴とするプログラム可能な連続微量注入ポンプ。
(3)特許請求の範囲第1項記載のプログラム可能な連続微量注入ポンプにおいて、項目選択スイッチは、最新ボーラス注入量および最新ボーラス注入時刻を表示する項目を含み、さらにボーラス注入可能な外部操作レバーを備えることを特徴とするプログラム可能な連続微量注入ポンプ。」

甲4b:第3頁左下欄第14行?右下欄第7行
「〔作用〕
本発明に係るプログラム可能な連続微量注入ポンプによれば、ポンプの駆動制御を行うプログラム制御システムにおいて、注入プログラムの設定および変更につき、注入開始時刻、注入速度、予定注入量および注入液濃度等の注入パターンを1個の項目選択スイッチで順次選択することができ、しかも選択された前記注入パターンの各項目に対し1個の設定数値入力スイッチで予め設定された範囲内で所定のステップ変化で逐次所望の値に設定することができる。従って、簡便な操作で注入プログラムの作成ができ、注入液の適正な連続微量注入を実現することができる。」

甲4c:第4頁左下欄第17行?第5頁左上欄第9行
「第3図は、第2図に示す連続機は注入ポンプの操作スイッチ10,12,14と表示器18の構成配置を示し、これら操作スイッチのうち、項目選択スイッチ12と設定数値入カスイッチ14を使用して注入プログラムを作成することができる。すなわち、項目選択スイッチ12を順次操作することにより、(1)インスリン濃度、(2)昼間注入開始時刻、(3)昼間注入速度、(4)一時注入開始時刻、(5)一時注入速度、(6)夜間注入開始時刻、(7)夜間注入速度、(8)現在時刻、(9)予定量、(10)積算量、(11)最新ボーラス注入量、(12)最新ボーラス注入時刻についての項目が順次選択される。そこで、各項目において、数値の設定もしくは変更を行う場合、これらは前記設定数値入力スイッチ14により、予め設定した設定範囲および単位によって順次大入力することができる。例えば、インスリン濃度痕の場合、その設定範囲は、予め20U、40Uまたは100Uと設定されており、設定数値入力スイッチ14を操作することにより、前記いずれかのインスリン濃度を選択設定することができる。このように選択設定された注入プログラムは、第4図に示すように、表示することができる。また、各種の注入開始時刻は、1:00?12:00の設定範囲で午前(AM)から午後(PM)に亘って各1詩間単位(ステップ)にて設定することができ、しかもその場合の注入速度についても、前述したインスリン濃度によって0.00?12.75の設定範囲で0.01?0.05U/H)単位(ステップ)にて設定することができる。なお、これらの詳細は第4図に示す通りである。」

甲4d:図4を参照すれば、上記摘記事項甲4bの「注入開始時刻、注入速度、予定注入量および注入液濃度等の注入パターン」には、ボーラス注入量も含まれることが分かる。

以上の各記載及び図面の図示内容を総合すれば、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
「注入ポンプにおいて、
注入速度、予定注入量、注入液濃度、ボーラス注入量が含まれる注入パターンを1個の項目選択スイッチで順次選択することができ、しかも選択された前記注入パターンの各項目に対し1個の設定数値入力スイッチで予め設定された範囲内で所定のステップ変化で逐次所望の値に設定することができ、
前記各スイッチの操作により予め設定した注入パターンに従って前記駆動手段を駆動制御するプログラム可能な注入ポンプ。」

5.甲第5号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には図面と共に次の事項が記載されている。なお、摘示箇所の記載として請求人提出の翻訳文に基づく邦訳を記す。

甲5a:翻訳文第8頁最終行?第10頁最終行
「本願発明は主に「事前設定(プリセット)可能な」又は「プログラミング可能な」輸液ポンプの操作方法に関するものであるから、ポンプユニットに与えられる指示が、ダイヤル設定によるものか、スイッチ切り換えによるものか、ボタンを押すことによるものか、あるいは、その指示の少なくとも一部がマイクロプロセッサチップにおけるコード化されたフォーマットのようなより高度な技術によるものかは問題とはならない。実際に好ましくは、図1に参照符号10で示されているような事前設定可能なマイクロプロセッサ制御された輸液ポンプユニットが、本願発明の方法を実行するものとして発明者が現在知る限り最適なものである。

本発明の方法

図2を参照すると、プリセットされたパラメータに従って、且つ押しボタン28(図1参照)等の制御部を操作することによって登録された患者の「要求」を考慮して、鎮痛剤を投与するための本発明の方法は、概略のシステム図によって示されている。図示されたシステムは、一般に参照符号100で示される。初期入力が、矢印102で示されるようにシステム100に与えられる。矢印102が示すものは、ダイヤルによる設定、スイッチのオンオフ、ボタンを押すこと、文は以下のもっと洗練された技法によるシステム制御装置の「プリセット」又は「プログラミング」である。より洗練された技法とは、マイクロプロセッサのチップ等でエンコードされたフォーマットによる命令の少なくとも一部を用いるような技法である(本発明の方法を実施するために用いられる構造の性質が重要でなく、本発明を実施するために使用可能な市販の一般的な輸液ホップユニットが当業者にとってよく知られているので、どれも図示されない)。図2め矢印102に示されるようにたくさんのパラメータがシステム100に入力される。以下に、これら入力されるパラメータの代表的なセットが示される。
「バックグラウンド」注入用 初期「現在レート」設定
投与(ボーラス)量 鎮痛剤 3mg
この例では、モルヒネ
開始注入レート 2mg/hr

「間隔投与」 制御のパラメー夕設定
間隔投与量 1mg
ロックアウト間隔 10分

「バックグラウンド」注入の変更のパラメータ設定
目標要求数 1時間当たり2回
レート調整係数 +/-1 mg/hr

注入量の制限値を定義する制限値設定
最大注入レート 5mg/hr
最小注入レート 0.1mg/hr
4時間最大量 28mg

システム100は、符号102で示されるように、医師処方入力を受領し記録することによりその運転を始める。医師処方入力102は、(前述のポンプ10のような)輸液ホップユニットの動作の制御、管理、及び柔軟な制限のために利用され(本例の継続する議論中で説明される通り)、鎮痛剤等の液剤を患者「P」(図2の下部中央に示される)に送達する。
本例に戻る前に、図2に何が示されているか直ぐに理解されるように、簡単な説明がなされる。参照符号104によって示される図2の左側は、間隔投与による患者Pへの薬剤供給に関する。すなわち、矢印1:L4によって示される「患者要求」に応答して患者Pに薬剤が供給される。参照符号106によって示される図2の右側は、矢印116に示される「持続投与」による患者Pへの薬剤供給に関する。患者「要求」(通常、ユニ薬剤供給に関する。患者「要求」(通常、ユニット10の一部を構成する図1に示されたボタン28のようなボタンを患者が押すことによって供給される)は、矢印120によって示される。
例に戻って、上述の入力102は、システム100に入力されて、システム100の動作を管理する。術後患者Pは、システム100を実行するように「指示」された(図1に示されたユニット10のような)輸液ポンプユニットに配置される。通常、患者は、病院の回復室におけるポンプユニットに「取り付けられる」。
上記リストに記載されたプリセットされたパラメータにしたがって、システム100は鎮痛剤の投与を開始する。これらパラメータが鎮痛剤投与にどう作用し。制御するかを以下に説明する。
システム動作の開始時、鎮痛剤の1回目の投与量、すなわち3mgのモルフィネが患者に投与される。図2において、これは、システム100の「間隔」投与機能104の部分である矢印、すなわち矢印124a、124b、124c及び114によって示される。」

以上の記載及び図面の図示内容を総合すれば、甲第5号証には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。
「開始注入レート、最大注入レート、最小注入レートのようなパラメータがシステム100に入力され、パラメータにしたがって鎮痛剤の投与が開始されるポンプユニット。」


第5 当審の判断
1.本件発明1について
1-1 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア)甲1発明1の「電子的に書き込み」は、文言の意味、機能又は構造等からみて本件発明1の「電子的にロード」に相当し、以下同様に、「ポンプ」は「注入ポンプ」又は「薬剤注入ポンプ」に、「薬物」は「薬剤」に、「輸液プロトコルを含む関連情報」は「薬剤送り出し情報」に、「記憶装置」は「メモリ」に、それぞれ相当する。

(イ)甲1発明1のデータベースは、「登録薬物の薬物名と輸液プロトコルを含む関連情報を有する」のであるから、各薬物の登録が輸液プロトコルを含む関連情報と関連付けられて、登録薬物としてデータベースを構築しているものといえる。
よって、甲1発明1の「登録薬物の薬物名と輸液プロトコルを含む関連情報を有するデータベース」は、本件発明1の「各薬剤の登録が、薬剤送り出し情報と関連付けられた複数の薬剤登録を含む薬剤ライブラリ」に相当する。

(ウ)上記摘記事項甲1cの「ステップ5.「入力」を押して選択を確定します。すると、ドーパミンに関するデータ画面が表示されます:数値はいずれも変更可能ですが、この例の場合はポンプを所望の注入速度に設定すればよいだけです。」との記載によれば、甲1発明1において「データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択する」と続いて「輸液プロトコルを含む関連情報」が表示されることから、甲1発明1は、「一の薬物名を選択する」することにより、薬物名と「輸液プロトコルを含む関連情報」とから成る一組の登録薬物を実質的に選択しているものといえる。
よって、甲1発明1の「データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択する手段」は、本件発明1の「薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録から1組の薬剤登録を選択する手段」に相当する。

(エ)甲1発明1の「更新されたデータベース」は、「データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択」し、「選択された登録薬物の関連情報を変更して」作成された新たなデータベースである。
一方、本件発明の「特注薬剤ライブラリ」は、「薬剤ライブラリ内」から、「選択された薬剤登録をこれと関連する薬剤送り出し情報と共に」「追加する」ことにより「作成」された新たな薬剤ライブラリである。
そうすると、甲1発明1の「更新されたデータベース」と本件発明1の「特注薬剤ライブラリ」は、“新たな薬剤ライブラリ”である点で共通する。
また、甲1発明1の「選択された登録薬物の関連情報を変更してデータベースを更新する手段と、更新されたデータベースを前記記憶装置に電子的に書き込む手段」は、“新たな薬剤ライブラリを作成する手段と、新たな薬剤ライブラリを薬剤注入ポンプにロードするためのロード手段”である点で本件発明1と共通している。
さらに、甲1発明1の「電子的に書き込み可能なデータベースを利用するポンプ」は、“電子的にロード可能な注入ポンプのための新たな薬剤ライブラリ作成システム”である点でも本件発明1と共通している。

以上によれば、本件発明1と甲1発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
電子的にロード可能な注入ポンプのための新たな薬剤ライブラリ作成システムであって、
各薬剤の登録が、薬剤送り出し情報と関連付けられた複数の薬剤登録を含む薬剤ライブラリを格納するメモリと、
前記薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録から1組の薬剤登録を選択する手段と、
新たな薬剤ライブラリを作成する手段と、
新たな薬剤ライブラリを薬剤注入ポンプにロードするためのロード手段
を備えたシステム。

(相違点1)
新たな薬剤ライブラリを作成するに当たり、本件発明1では、「選択された薬剤登録をこれと関連する薬剤送り出し情報と共に前記注入ポンプのユーザに対する複数の薬剤入力を提供する電子的に格納された特注ライブラリに追加する」ことにより作成しているのに対し、甲1発明1は、「選択された登録薬物の関連情報を変更してデータベースを更新」しているのであるから、薬剤ライブラリの内からある薬剤登録を選択し、選択された薬剤登録のみから成る新たな薬剤ライブラリを、薬剤ライブラリとは別に特注薬剤ライブラリとして作成するものではなく、元の薬剤ライブラリ自体を変更して新たな薬剤ライブラリに置き換えるものである点。

(相違点2)
ロード手段に関し、本件発明1では、「電子的に格納された特注ライブラリを」「薬剤注入ポンプにロード」しているのに対し、甲1発明1では、「更新されたデータベースを前記記憶装置に電子的に書き込む」のであるから、新たなライブラリを薬剤注入ポンプにロードしてはいるものの、ロード前の新たなライブラリが「電子的に格納された」ライブラリであるのか否か不明な点。

1-2 判断
請求人は、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると主張する。
そこで、まず相違点1について検討する。
甲第2号証には、上記甲2発明が記載されており、甲2発明のプログラミング装置13は、送出し装置14を動作させるのに適した情報を作成し、論理カートリッジ18に書込むものである。
しかしながら、甲第2号証には、送出し装置14を動作させるのに適した情報を作成するに当たり、薬剤ライブラリの内からある薬剤登録を選択し、選択された薬剤登録のみから成る新たな薬剤ライブラリを、薬剤ライブラリとは別に特注薬剤ライブラリとして作成する点については、記載も示唆もない。
そうすると、甲2発明は、相違点1における本件発明1の特定事項を具備するものでないのであるから、甲1発明1と甲2発明とに基づいて、当業者が「選択された薬剤登録をこれと関連する薬剤送り出し情報と共に前記注入ポンプのユーザに対する複数の薬剤入力を提供する電子的に格納された特注ライブラリに追加する手段」を容易に想到することができたものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

1-3 小括
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件発明1に係る特許についての無効理由は理由がない。

2.本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
甲第3号証には上記甲3発明が、甲第4号証には上記甲4発明が、甲第5号証には上記甲5発明が、それぞれ記載されてはいるが、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項については、甲第3?5号証に何らの記載がない。
よって、本件発明2?8は、本件発明1について示した理由と同様の理由により、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件発明2?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件発明2?8に係る特許についての無効理由は理由がない。

3.本件発明29について
3-1 対比
上記「1-1 対比」における検討を踏まえつつ、本件発明29と甲1発明1とを対比する。
(カ)甲1発明1の「データベース」は、文言の意味、機能又は構造等からみて本件発明1の「薬剤ライブラリ」に相当し、以下同様に、「ポンプ」は「薬剤注入ポンプ」に、「登録薬物」は「薬剤登録」に、「輸液プロトコルを含む関連情報」は「薬剤送り出し情報」に、「記憶装置」は「記憶媒体」に、「電子的に書き込む」は「電子的にロードせしめる」に、それぞれ相当する。

(キ)甲1発明1の「ポンプ」は、「データベースを格納する記憶装置」「を備え」ているのであるから、甲1発明1は、「薬剤ライブラリを含む記憶媒体を含む」なる事項を具備するものといえる。
また、甲1発明は、「データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択」できるのであるから、「薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み」なる事項を具備するものといえる。

(ク)甲1発明1のデータベースは、「登録薬物の薬物名と輸液プロトコルを含む関連情報を有する」のであるから、各登録薬物が輸液プロトコルを含む関連情報と関連づけられてデータベースを構築しているものといえる。
また、甲1発明1の「ポンプ」は、「データベースを利用する」ものであって、データベース内の薬物に関連付けられた輸液プロトコルに応じて作動するものといえるから、各輸液プロトコルに応じて作動するようプログラム可能なポンプといえる。
よって、甲1発明は、「各薬剤登録はプログラム可能な薬剤注入ポンプの構成のための薬剤送り出し関連情報一組と関連づけられている」なる事項を具備するものといえる。

(ケ)甲1発明1の「ポンプ」がユーザにより使用されることは明らかである。よって、上記「1-1 対比」における(ウ)の検討を踏まえれば、甲1発明1の「データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択する手段」は、本件発明29の「ユーザが前記薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録中から薬剤登録1組を選択できるようにする手段」に相当する。

(コ)甲1発明1の「更新されたデータベース」は、「データベース内の複数の登録薬物から一の薬物名を選択」し、「選択された登録薬物の関連情報を変更して」作成された新たなデータベースである。
一方、本件発明29の「特注薬剤ライブラリ」は、「薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録中から」、「ユーザが選択した薬剤登録をそれと関連した薬剤送り出し情報と一緒に」「追加」することにより作成された新たな薬剤ライブラリである。
そうすると、甲1発明1の「更新されたデータベース」と本件発明29の「特注薬剤ライブラリ」は、“新たな薬剤ライブラリ”である点で共通する。
また、甲1発明1の「選択された登録薬物の関連情報を変更してデータベースを更新する手段と、更新されたデータベースを前記記憶装置に電子的に書き込む手段」は、“新たな薬剤ライブラリを作成する手段と、新たな薬剤ライブラリを薬剤注入ポンプに電子的にロードすることができるようにする手段”である点で本件発明29と共通している。

(サ)甲1発明1の「電子的に書き込み可能なデータベースを利用するポンプ」もその具体的な機能はさておき、ある種の“システム”といい得るものである。

以上によれば、本件発明29と甲1発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
システムであって、前記システムが、薬剤ライブラリを含む記憶媒体を含み、前記薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、各薬剤登録はプログラム可能な薬剤注入ポンプの構成のための薬剤送り出し関連情報一組と関連づけられていると共に、前記コンピュータのユーザが前記薬剤ライブラリ内の複数の薬剤登録中から薬剤登録一組を選択できるようにする手段と、新たな薬剤ライブラリを作成する手段と、新たな薬剤ライブラリを薬剤注入ポンプに電子的にロードすることができるようにする手段と、を含むシステム。

(相違点3)
本件発明29が、「コンピュータと一緒に使用するシステム」であり、「記憶媒体はコンピュータによる読み込みが可能であり、前記システムが前記コンピュータ上で作動するプログラムを含」むのに対し、甲1発明1は、ポンプであって、「コンピュータと一緒に使用するシステム」であるのか否か明らかでなく、それ故、記憶媒体がコンピュータによる読み込みが可能であるのか否か、システムがコンピュータ上で作動するプログラムを含むのか否かが、いずれも不明な点。

(相違点4)
新たな薬剤ライブラリを作成するに当たり、本件発明29では、「ユーザが選択した薬剤登録をそれと関連した薬剤送り出し情報と一緒に、特注化したライブラリに追加できるようにする」ことにより作成しているのに対し、甲1発明1は、「選択された登録薬物の関連情報を変更してデータベースを更新」しているのであるから、薬剤ライブラリの内からある薬剤登録を選択し、選択された薬剤登録のみから成る新たな薬剤ライブラリを、薬剤ライブラリとは別に特注化した薬剤ライブラリとして作成するものではなく、元の薬剤ライブラリ自体を変更して新たな薬剤ライブラリに置き換えるものである点。

(相違点5)
新たな薬剤ライブラリを薬剤注入ポンプに電子的にロードすることができるようにする手段に関し、本件発明29では、「ユーザが、前記コンピュータをして特注化したライブラリを薬剤注入ポンプにロードせしめる」のに対し、甲1発明1では、ユーザが、コンピュータをして新たなライブラリを薬剤注入ポンプにロードせしめているのか否か不明な点。

3-2 判断
請求人は、本件発明29は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると主張する。
そこで、まず相違点4について検討するに、相違点4は、上記相違点1と実質的に差違はない。
そうすると、上記「1-2 判断」で示した理由と同様の理由により、本件発明29は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

3-3 小括
したがって、本件発明29に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件発明29に係る特許についての無効理由は理由がない。

4.本件発明30?31について
本件発明30?31は、本件発明29の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そうすると、本件発明30?31は、本件発明29について示した理由と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
したがって、本件発明30?31に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件発明30?31に係る特許についての無効理由は理由がない。

5.本件発明33について
5-1 対比・判断
本件発明33と甲1発明2とを対比する。
(タ)甲1発明2の「薬物」は、文言の意味、機能又は構造等からみて本件発明33の「薬剤」に相当し、以下同様に、「輸液バッグ又はシリンジ」は「容器」に、「ポンプ」は「薬剤注入ポンプ」又は「ポンプ」に、「記憶装置」は「メモリ」に、「ディスプレイ及びキーボードを有するインタフェース」は「ユーザインターフェイス」に、「データベース」は「薬剤ライブラリ」に、「登録薬物」は「薬剤登録」に、「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコルを含む関連情報」は「関連する薬剤送り出しパラメータおよび/または薬剤送り出しプロトコール一組」に、それぞれ相当する。

(チ)甲1発明2のポンプは、「薬物を輸液バッグ又はシリンジから患者に注入するポンプ」であるところ、薬物が患者の治療に適した特定の薬物であること、輸液バッグ又はシリンジ内に薬物が含まれていること、ポンプがバッグ又はシリンジと共に使用されることは、いずれも明らかである。
また、一般にポンプが適宜の駆動機構を備えていることも併せて考慮すれば、甲1発明2は、「特定の薬剤を含む容器と共に使用するための薬剤注入ポンプ」及び「ポンプは特定の薬剤を容器から患者に投与する駆動機構」を実質的に具備するものといえる。
また、甲1発明2のポンプは、「ポンプを駆動するマイクロプロセッサ」を含むのであるから、この「マイクロプロセッサ」は、ポンプの駆動に際し、ポンプの駆動機構を駆動制御するためのプロセッサといえる。

(ツ)甲1発明2の記憶装置は、「折々に更新することができる」のであるから、書き換え可能なものといえ、また、記憶装置のデータを更新する際に更新データは、通常、記憶装置に電子的にロードされるものである。
よって、甲1発明2の「ポンプに内蔵された折々に更新することができる記憶装置」は、本件発明33の「ポンプ内部の書き換え可能で電子的にロード可能なメモリ」に相当する。
また、甲1発明2のデータベースは、「折々に更新することができる」「記憶装置に格納され」ているのであるから、甲1発明2のポンプには、その更新ないし格納を行うための適宜の入力回路が当然に設けられているものといえる。
よって、甲1発明2のポンプは、「電子的にロード可能なメモリに薬剤ライブラリを電子的にロード可能にする入力回路構成」を実質的に具備するものである。

(テ)上記摘記事項甲1dには、「薬物や輸液は名前で選択され、その名前が画面に表示されて、プロトコルと単位がROM及び不揮発メモリ内でこの名前と関連付けられ」との記載があり、また、甲1発明2では、「選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動するようにしている」のであるから、甲1発明2の「ポンプで利用するための混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコルを含む関連情報」は各「薬物」と関連して結びつけられた情報であるといえる。よって、甲1発明2は、「薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、前記薬剤注入ポンプを構成するための関連する薬剤送り出しパラメータおよび/または薬剤送り出しプロトコール一組が各薬剤登録と結びついており」なる事項を具備するものである。

(ト)甲1発明2のデータベースは、「記憶装置に格納され」ているのであるから、記憶装置に対し電子的にロードされたものといえる。
よって、甲1発明2の「オペレータがデータベースから登録薬物を選択できるようにする手段」は、本件発明33の「ユーザが電子的にロードされた薬剤ライブラリから薬剤登録を選択できるようにする手段」に相当する。

(ナ)甲1発明2は、「選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動する」のものであり、また、その始動は、「ポンプを駆動するマイクロプロセッサ」により行われるのであるから、マイクロプロセッサは、選択した薬物の関連情報に応じた信号を生成するように構成され、この生成された信号によりポンプが駆動されるものといえる。
よって、甲1発明2の「選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動するようにしている手段」は、本件発明33の「選択した薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータ一組を用いて前記プログラマブルコントローラを構成する手段」に相当する。
また、甲1発明2は、「オペレータがデータベースから登録薬物を選択」すると、マイクロプロセッサが選択した薬物の関連情報に応じた信号を生成するのであるから、マイクロプロセッサは、選択した薬物の関連情報に応じた信号を生成できるようにプログラム可能なものともいえる。
よって、甲1発明2は「インタフェース」として、「ユーザがプログラマブルコントローラをプログラムできるようにするユーザインターフェイス」を実質的に具備するものといえる。

以上によれば、本件発明33と甲1発明2は、本件発明33の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
(一致点)
「特定の薬剤を含む容器と共に使用するための薬剤注入ポンプであって、
前記ポンプは特定の薬剤を容器から患者に投与する駆動機構と、
前記駆動機構を制御するプログラマブルコントローラと、
前記ポンプ内部の書き換え可能で電子的にロード可能なメモリと、
前記電子的にロード可能なメモリに薬剤ライブラリを電子的にロード可能にする入力回路構成と、
前記ユーザがプログラマブルコントローラをプログラムできるようにするユーザインターフェイスと、を含み;
前記薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、前記薬剤注入ポンプを構成するための関連する薬剤送り出しパラメータおよび/または薬剤送り出しプロトコール一組が各薬剤登録と結びついており、前記インターフェイスは、
前記ユーザが電子的にロードされた薬剤ライブラリから薬剤登録を選択できるようにする手段と、
前記選択した薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータ一組を用いて前記プログラマブルコントローラを構成する手段と、
を含む、ポンプ。」

してみると、両者に相違点はなく、本件発明33は、甲1発明2である。

5-2 小括
したがって、本件発明33は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

6.本件発明34について
6-1 対比・判断
本件発明34と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「輸液バッグ又はシリンジ」は本件発明34の「注射器」に相当する。また、一般にポンプが適宜の駆動機構を備えていることを考慮すれば、甲1発明2は、“ポンプが駆動機構を含む”事項及び“駆動機構が注射器を作動させる”事項を実質的に具備するものといえる。
よって、上記「5-1 対比・判断」での検討をも踏まえれば、本件発明34と甲1発明2は、
「特定の薬剤を含む注射器と共に使用するための薬剤注入ポンプであって、
前記ポンプは特定の薬剤を注射器から患者に投与する駆動機構と、
前記駆動機構を制御するプログラマブルコントローラと、
前記ポンプ内部の書き換え可能で電子的にロード可能なメモリと、
前記電子的にロード可能なメモリに薬剤ライブラリを電子的にロード可能にする入力回路構成と、
前記ユーザがプログラマブルコントローラをプログラムできるようにするユーザインターフェイスと、を含み;
前記駆動機構が前記注射器を作動させ、
前記薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、前記薬剤注入ポンプを構成するための関連する薬剤送り出しパラメータおよび/または薬剤送り出しプロトコール一組が各薬剤登録と結びついており、前記インターフェイスは、
前記ユーザが電子的にロードされた薬剤ライブラリから薬剤登録を選択できるようにする手段と、
前記選択した薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータ一組を用いて前記プログラマブルコントローラを構成する手段と、
を含む、ポンプ。」
という点で一致し、両者の間に相違点はない。

よって、本件発明34は、甲1発明2である。

6-2 小括
したがって、本件発明34は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

7.本件発明36について
7-1 対比
上記「5-1 対比・判断」における検討を踏まえつつ、本件発明36と甲1発明2を対比すると、両者は、上記「5-1 対比・判断」で示した一致点で一致し、次の点で相違する。
(相違点6)
本件発明36では、メモリが不揮発性メモリであって、EEPROMであるのに対し、甲1発明2の記憶装置はEEPROMであるのか否か不明な点。

7-2 判断
相違点6について検討する。
甲第2号証には、上記甲2発明が記載されている。
甲2発明の「治療剤」は薬剤と、「送り出し装置14」は薬剤注入ポンプと、「論理カートリッジ18」はメモリと、それぞれ言い換えることができ、EEPROMは不揮発性メモリの一種であることは技術常識であるから、甲2発明は、「薬剤注入ポンプであって、ポンプの中に配置され、ポンプの動作を制御するメモリは、不揮発性メモリのEEPROMである、薬剤注入ポンプ」なる事項を包含する発明といえる。
よって、甲1発明2に甲2発明を適用し、相違点6における本件発明36に係る特定事項とすることは、甲1発明2、甲2発明の属する技術分野の関連性からみて、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件発明36の効果も、甲1発明2及び甲2発明から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

7-3 小括
したがって、本件発明36は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

8.本件発明35について
本件発明35は、本件発明36から、「メモリがEEPROMであること」を省いた発明であるから、上記「7.本件発明36について」において示した理由と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

9.本件発明37について
9-1 対比・判断
本件発明37と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2のインタフェースは、「ディスプレイ及びキーボードを有する」と共に、「オペレータがデータベースから登録薬物を選択できるようにする手段と、選択した薬物の関連情報を用いてポンプが始動するようにしている手段」を含むのであるから、甲1発明2は、「ユーザインターフェイスが制御パネルを構成し、前記パネルを介してユーザが前記プログラマブルコントローラをプログラムできる」事項を具備するものといえる。
また、上記摘記事項甲1cの「ステップ4.「ドーパミン」の上のボタンを押して薬物名をハイライト表示します(リドカインを選択する場合はボタンを4回押します)。」の記載からみて、甲1発明2の「ディスプレイ」も、データベースの登録薬物を画面に表示できることは明らかである。

よって、上記「5-1 対比・判断」における検討をも踏まえれば、本件発明37と甲1発明2は、
「特定の薬剤を含む容器と共に使用するための薬剤注入ポンプであって、
前記ポンプは特定の薬剤を容器から患者に投与する駆動機構と、
前記駆動機構を制御するプログラマブルコントローラと、
前記ポンプ内部の書き換え可能で電子的にロード可能なメモリと、
前記電子的にロード可能なメモリに薬剤ライブラリを電子的にロード可能にする入力回路構成と、
前記ユーザがプログラマブルコントローラをプログラムできるようにするユーザインターフェイスと、を含み;
前記薬剤ライブラリは複数の薬剤登録を含み、前記薬剤注入ポンプを構成するための関連する薬剤送り出しパラメータおよび/または薬剤送り出しプロトコール一組が各薬剤登録と結びついており、前記インターフェイスは、
前記ユーザが電子的にロードされた薬剤ライブラリから薬剤登録を選択できるようにする手段と、
前記選択した薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータ一組を用いて前記プログラマブルコントローラを構成する手段と、
を含み、
ユーザインターフェイスが制御パネルを構成し、前記パネルを介して前記ユーザが前記プログラマブルコントローラをプログラムできると共に、また前記薬剤ライブラリからの薬剤登録を画面に表示できる、ポンプ。」
という点で一致し、両者の間に相違点はない。

よって、本件発明37は、甲1発明2である。

9-2 小括
したがって、本件発明37は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

10.本件発明38について
10-1 対比
上記「5-1 対比・判断」における検討を踏まえつつ、本件発明38と甲1発明2を対比すると、両者は、上記「5-1 対比・判断」で示した一致点で一致し、次の点で相違する。
(相違点7)
薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータに関し、本件発明38では、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれる」のに対し、甲1発明2では、薬剤送り出しパラメータに「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等」が含まれるものの、「薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれる」か否か明らかでない点。

10-2 判断
相違点7について検討する。
甲第4号証には、上記甲4発明が記載されている。
甲4発明における「注入ポンプ」は薬剤注入ポンプと、「注入速度」は薬剤送り出し速度と、「予定注入量」は薬剤投与量と、「注入液濃度」は薬剤濃度と、「ボーラス注入量」はボーラスのサイズと、「注入パターン」は薬剤送り出しパラメータと、それぞれ言い換えることができるので、甲4発明は、「薬剤送り出し速度、薬剤投与量、薬剤濃度、ボーラスのサイズを含む薬剤送り出しパラメータの各項目を所望の値に設定することができ、予め設定した注入パターンに従って駆動制御するプログラム可能な薬剤注入ポンプ。」なる事項を包含する発明といえる。
そうすると、甲1発明2における薬剤送り出しパラメータについて、甲4発明の各パラメータを適用して、相違点7における本件発明38に係る特定事項とすることは、甲1発明2、甲4発明の属する技術分野の関連性からみて、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件発明38の効果も、甲1発明2及び甲4発明から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

10-3 小括
したがって、本件発明38は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

11.本件発明39について
11-1 対比
本件発明39と甲1発明2を対比する。
上記摘記事項甲1bの「ポンプにデータベースとソフトウェアを内蔵して、特定の薬物又は輸液を使用する際に一般に用いられるプロトコルを呼び出すことができる」の記載からみて、甲1発明2の「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等の輸液プロトコル」は、一般的なプロトコルであってデフォルトのプロトコルといえる。
よって、上記「5-1 対比・判断」における検討をも踏まえれば、本件発明39と甲1発明2は、上記「5-1 対比・判断」で示した一致点で一致し、次の点で相違する。
(相違点8)
薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータに関し、本件発明39では、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」、さらに、「パラメータ群に最小、ディフォルト(default)および最大の薬剤送り出し速度が含まれる」のに対し、甲1発明2では、薬剤送り出しパラメータに「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等」が含まれるものの、「薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれる」か否か明らかでなく、また、甲1発明2の薬剤送り出しパラメータはディフォルトのパラメータであって、「最小、ディフォルト(default)および最大の薬剤送り出し速度が含まれる」ものではない点。

11-2 判断
相違点8について検討する。
甲第4号証には、上記甲4発明が記載されている。
甲4発明における「注入ポンプ」は薬剤注入ポンプと、「注入速度」は薬剤送り出し速度と、「予定注入量」は薬剤投与量と、「注入液濃度」は薬剤濃度と、「ボーラス注入量」はボーラスのサイズと、「注入パターン」は薬剤送り出しパラメータと、それぞれ言い換えることができる。
また、甲4発明は、「選択された前記注入パターンの各項目に対し1個の設定数値入力スイッチで予め設定された範囲内で所定のステップ変化で逐次所望の値に設定することができ」るのであるから、注入パターンの各項目に対し設定する値には、最小値及び最大値が予め含まれていることは明らかである。
よって、甲4発明は、「薬剤送り出し速度、薬剤投与量、薬剤濃度、ボーラスのサイズを含む薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定することができ、予め設定した注入パターンに従って駆動制御するプログラム可能な薬剤注入ポンプ。」なる事項を包含する発明といえる。
甲1発明2及び甲4発明は、いずれも薬剤注入ポンプという共通の技術分野に属するものであるから、甲1発明2における薬剤送り出しパラメータについて、甲4発明の各パラメータを適用して、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」るようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、この適用に当たり、甲4発明の「薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定する」点を踏まえて、「パラメータ群に最小、ディフォルト(default)および最大の薬剤送り出し速度が含まれる」ようにすることも当業者が適宜なし得た程度のことである。
そして、本件発明39の効果も、甲1発明2及び甲4発明から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

11-3 小括
したがって、本件発明39は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

12.本件発明40について
12-1 対比
上記「11-1 対比」における検討を踏まえつつ、本件発明40と甲1発明2を対比すると、両者は、上記「5-1 対比・判断」で示した一致点で一致し、次の点で相違する。
(相違点9)
薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータに関し、本件発明40では、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」、さらに、「パラメータ群に最小、ディフォルトおよび最大の薬剤投与量が含まれる」のに対し、甲1発明2では、薬剤送り出しパラメータに「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等」が含まれるものの、「薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれる」か否か明らかでなく、また、甲1発明2の薬剤送り出しパラメータはディフォルトのパラメータであって、「最小、ディフォルトおよび最大の薬剤投与量が含まれる」ものではない点。

12-2 判断
相違点9について検討する。
甲第4号証には、上記甲4発明が記載されており、上記「11-2 判断」で示したとおり、甲4発明は、「薬剤送り出し速度、薬剤投与量、薬剤濃度、ボーラスのサイズを含む薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定することができ、予め設定した注入パターンに従って駆動制御するプログラム可能な薬剤注入ポンプ。」なる事項を包含する発明といえる。
甲1発明2及び甲4発明は、いずれも薬剤注入ポンプという共通の技術分野に属するものであるから、甲1発明2における薬剤送り出しパラメータについて、甲4発明の各パラメータを適用して、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」るようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、この適用に当たり、甲4発明の「薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定する」点を踏まえて、「パラメータ群に最小、ディフォルトおよび最大の薬剤投与量が含まれる」ようにすることも当業者が適宜なし得た程度のことである。
そして、本件発明40の効果も、甲1発明2及び甲4発明から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

12-3 小括
したがって、本件発明40は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

13.本件発明41について
13-1 対比
上記「11-1 対比」における検討を踏まえつつ、本件発明41と甲1発明2を対比すると、両者は、上記「5-1 対比・判断」で示した一致点で一致し、次の点で相違する。
(相違点10)
薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータに関し、本件発明41では、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」、さらに、「パラメータ群に最小、デフォルトおよび最大のボーラスサイズが含まれる」のに対し、甲1発明2では、薬剤送り出しパラメータに「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等」が含まれるものの、「薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれる」か否か明らかでなく、また、甲1発明2の薬剤送り出しパラメータはデフォルトのパラメータであって、「最小、デフォルトおよび最大のボーラスサイズが含まれる」ものではない点。

13-2 判断
相違点10について検討する。
甲第4号証には、上記甲4発明が記載されており、上記「11-2 判断」で示したとおり、甲4発明は、「薬剤送り出し速度、薬剤投与量、薬剤濃度、ボーラスのサイズを含む薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定することができ、予め設定した注入パターンに従って駆動制御するプログラム可能な薬剤注入ポンプ。」なる事項を包含する発明といえる。
甲1発明2及び甲4発明は、いずれも薬剤注入ポンプという共通の技術分野に属するものであるから、甲1発明2における薬剤送り出しパラメータについて、甲4発明の各パラメータを適用して、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」るようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、この適用に当たり、甲4発明の「薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定する」点を踏まえて、「パラメータ群に最小、デフォルトおよび最大のボーラスサイズが含まれる」ようにすることも当業者が適宜なし得た程度のことである。
そして、本件発明41の効果も、甲1発明2及び甲4発明から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

13-3 小括
したがって、本件発明41は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

14.本件発明42について
14-1 対比
上記「11-1 対比」における検討を踏まえつつ、本件発明42と甲1発明2を対比すると、両者は、上記「5-1 対比・判断」で示した一致点で一致し、次の点で相違する。
(相違点11)
薬剤と関連する薬剤送り出しパラメータに関し、本件発明42では、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」、さらに、「パラメータ群に最小、デフォルトおよび最大のボーラスサイズが含まれる」のに対し、甲1発明2では、薬剤送り出しパラメータに「混合情報、開始量、開始分量、注入速度等」が含まれるものの、「薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれる」か否か明らかでなく、また、甲1発明2の薬剤送り出しパラメータはデフォルトのパラメータであって、「最小、デフォルトおよび最大のボーラス速度が含まれる」ものではない点。

14-2 判断
相違点11について検討する。
甲第4号証には、上記甲4発明が記載されており、上記「11-2 判断」で示したとおり、甲4発明は、「薬剤送り出し速度、薬剤投与量、薬剤濃度、ボーラスのサイズを含む薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定することができ、予め設定した注入パターンに従って駆動制御するプログラム可能な薬剤注入ポンプ。」なる事項を包含する発明といえる。
甲1発明2及び甲4発明は、いずれも薬剤注入ポンプという共通の技術分野に属するものであるから、甲1発明2における薬剤送り出しパラメータについて、甲4発明の各パラメータを適用して、「関連した薬剤送り出しパラメータ群のそれぞれに、薬剤濃度、薬剤送り出し速度、薬剤投与量およびボーラスのサイズを含むパラメータ群から選択した情報が含まれ」るようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、薬剤をボーラス投与する際に、ボーラス投与をどの程度の速度で行うべきかは、医療従事者により普通に考慮される事項にすぎないことから、甲4発明の「薬剤送り出しパラメータの各項目を最大値及び最小値を含む所望の値に設定する」点を踏まえて、「パラメータ群に最小、デフォルトおよび最大のボーラス速度が含まれる」ようにすることも当業者が適宜なし得た程度のことである。
そして、本件発明42の効果も、甲1発明2及び甲4発明から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

14-3 小括
したがって、本件発明42は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第6 むすび
以上のとおり、本件発明1?8、29?31についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明1?8、29?31についての特許を無効とすることはできない。
また、本件発明33、34、37は、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明35、36、38?42は、特許法第29条第2項の規定により、それぞれ特許を受けることができないものであるから、本件発明33?42についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その21分の11を請求人の負担とし、21分の10を被請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-01 
結審通知日 2013-11-06 
審決日 2013-11-22 
出願番号 特願平6-510282
審決分類 P 1 123・ 113- ZC (A61M)
P 1 123・ 121- ZC (A61M)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 石川 太郎北村 龍平  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 関谷 一夫
蓮井 雅之
登録日 2005-03-25 
登録番号 特許第3660678号(P3660678)
発明の名称 電子的にロード可能な薬剤ライブラリ付き注入ポンプ  
代理人 大内 秀治  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 山野 明  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 吉田 研二  
代理人 坂井 志郎  
代理人 吉田 研二  
代理人 仲宗根 康晴  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ