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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04M
管理番号 1286485
判定請求番号 判定2013-600039  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2014-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2013-11-20 
確定日 2014-04-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第4357175号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明書に示す「ニンテンドーDS」(携帯型ゲーム機)は、特許第4357175号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は,イ号物件説明書に示す「ニンテンドーDS」(携帯型ゲーム機)(以下,「イ号物件」という。)は,特許第4357175号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。


第2 本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明は,特許明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1,請求項10,請求項19に記載されたとおりの以下のものである。

「【請求項1】
A ハンドヘルド装置を使用する方法であり,そのハンドヘルド装置は,操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも1つの出力デバイスと,操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも1つの入力デバイスと,無線トランスミッタと,これら少なくとも1つの出力デバイス,前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する処理回路とを含み,前記方法は,
B 前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記ディスプレイを通じて表示する段階と,
C 前記少なくとも1つの出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示する段階と,
D 操作者により調節された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なり,且つ第1のコンテンツの形式とは同一又は異なる形式である第2のコンテンツと,少なくとも1つの受信者の識別子とを前記少なくとも1つの入力デバイスを通じて与える段階と,
E 前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して,第1のコンテンツの表現を送らずに,第2のコンテンツの表現と少なくとも1人の受信者の識別子とを送る段階と,
F 第1のコンテンツの識別子と前記操作者により調節された時間的関係の指標とを前記遠隔サーバーに記憶させると共に,この遠隔サーバーが,前記記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも1人の受信者が受信するように,当該メッセージを送信する段階とを含む方法。」(以下,「本件特許発明1」という。)

「【請求項10】
G メッセージを生成するシステムであって,
H (a) ハンドヘルド装置を備え,このハンドヘルド装置は,操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも1つの出力デバイスと,操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも1つの入力デバイスと,第1の無線トランスミッタと,処理回路とを含み,
I その処理回路は前記ハンドヘルド装置に対し,
J (1)前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記ディスプレイを通じて提示させ,
K (2)前記少なくとも1つの出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間したサーバー・サブシステム又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ,
L (3)操作者により調節された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なり,且つ第1のコンテンツの形式とは同一又は異なる形式である第2のコンテンツと,少なくとも一人の受信者の識別子とを表す少なくとも1つの信号とを前記前記少なくとも1つの入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,
M (4)第1のコンテンツの表現を送らずに,第1の無線トランスミッタを通じて,第2のコンテンツの表現と少なくとも一人の受信者の識別子とを送らせ,
N (b)前記サーバー・サブシステムは,無線レシーバーと,少なくとも1つの記憶デバイスと,処理回路とを有し,その処理回路は前記サーバー・サブシステムに対し,
(1)第2のコンテンツの表現及び少なくとも1つの受信者を前記無線レシーバーを通じて受け取り,且つ前記少なくとも1つの記憶デバイスに記憶させると共に,第1のコンテンツの識別子と前記操作者により調節された時間的関係の指標とを前記少なくとも1つの記憶デバイスに記憶させ,
O (2)前記記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも一人の受信者が受信するように送信させるシステム。」(以下,「本件特許発明2」という。)

「【請求項19】
P ハンドヘルド装置を
Q 使用する方法を
R 少なくとも1つの装置により実行するための指令プログラムを実行する装置により読みとり可能な該指例プログラムを担持する記録媒体であり,
A’そのハンドヘルド装置は,操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも1つの出力デバイスと,操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも1つの入力デバイスと,無線トランスミッタと,
前記少なくとも1つの出力デバイス及び前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッ タの操作を制御する処理回路とを含み,前記方法は,
B’前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記ディスプレイを通じて提示する段階と,
C’前記少なくとも1つの出力デバイスを通じて,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示を与える段階と,
D’操作者により調節された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも1つの受信者の識別子とを前記少なくとも1つの入力デバイスを通じて与える段階と,
E’前記無線トランスミッタを通じて,前記遠隔サーバーに対して,第1のコンテンツの表現を送らずに,第2のコンテンツの表現と少なくとも1つの受信者の識別子とを送り,
F’且つ第1のコンテンツの識別子と前記操作者により調節された時間的関係の識別子とを前記遠隔サーバーに記憶させると共に,
前記記憶された時間関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも一人の受信者が受信するように,前記遠隔サーバーがこのメッセージを送信する段階とを含む記録媒体。」(以下,「本件特許発明3」という。)([当審注]:構成要件Rの「該指例プログラム」は「該指令プログラム」の誤記と認める。)

なお,「A」?「R」は,分説のために請求人が付した記号であるが,便宜上そのままこれを利用する。また,判定請求書及びイ号物件説明書における「本発明1」?「本発明3」の記載は特許請求の範囲の記載のとおりのものではないため,特許請求の範囲の記載に対応して分説し直し,本件特許発明1の構成要件A?Fに対応する本件特許発明3の構成要件はA’?F’とした。

2.本件特許発明の目的及び効果
本件特許発明の目的及び効果は,本件特許明細書の【0002】?【0005】の記載,及び同明細書全体の開示内容に照らせば,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といった聴覚的又は視覚的コンテンツを,個人がセルラーフォンのようなモバイル装置を用いて形成及び分配できるようにし,それを友人らと共有することを可能とすることと認められる。


第3 イ号物件
イ号物件説明書に示された「ニンテンドーDS」は,以下のとおりである。
「a ニンテンドーDSは,
i その大きさは縦約74?92ミリメートル,横約133?161ミリメートル,厚さ約19?29ミリメートル及び重さは約214?314グラムであり,手にとって使用することが念頭に置かれたハンドヘルド装置であって,
ii ディスプレイ(可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも1つの出力デバイス)と,
iii ディスプレイ兼タッチパネル(操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも1つの入力デバイス)と,
iv Wi-Fiまたは無線LANの利用を可能とする無線チップ(無線トランスミッタ)と,
v (これらの出力デバイス,前記入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する)ARM9及びARM7プロセッサ等と呼ばれるCPU(処理回路)を含むものである。
b ユーザーは,ニンテンドーDSのディスプレイの表示を見ながら操作を行う(前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記ディスプレイを通じて表示する段階)。
c 前記ディスプレイ(出力デバイス)を通じて(ニンテンドーDSに内蔵された無線LANまたはWi-Fiに接続するためのハードウェアを通じて)操作者へ,
(a)インターネットサーバー,イントラネットサーバーなどのニンテンドーDS(前記ハンドヘルド装置)から空間的に離間した遠隔サーバー,又は
(b)ニンテンドーDSのメモリカードスロットに装着された着脱式のメモリ・デバイス(DSカード等のフラッシュメモリカード,SDメモリカード等)から与えられる前記ディスプレイに表示されるコンテンツが現れる(第1のコンテンツの表現を提示する)。すなわち対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像を確認する初期画面。)段階と
d ユーザーがニンテンドーDSのディスプレイを触ってニンテンドーDSを操作することによって,インタラクティブに(操作者により調節された時間的関係に従って)ディスプレイに表示されるコンテンツ(第1のコンテンツの提示。)にオーバーラップして(時間的に重なり),且つ,第1のコンテンツの形式とは同一又は,異なる形式である第2のコンテンツ(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)を選んだ後にそれに乗り込むキャラクターを選択したり,カートを動かしたりすること)と,例えばレーシングカートのIDのような当該ユーザーを特定する識別情報(少なくとも1つの受信者の識別子)とを認識する(前記少なくとも1つの入力デバイスを通じて与える)段階と
e 無線チップ経由で(前記無線トランスミッタを通じて),ニンテンドーDSからインターネットサーバーにアクセスし(前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して),例えばニンテンドーDSを持つユーザーが対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)を確認する際に,第1のコンテンツの表現を送らずに(ユーザー側に表示された初期画面の情報はそのままにしておいたうえで),第2のコンテンツの表現(レーシングカートの種類や乗車するキャラクターを選択したり,カートを動かしたり)とユーザーのレーシングカートのIDなどユーザーを特定する識別情報(少なくとも1人の受信者の識別子)とを送る段階と
f 第1のコンテンツの識別子(例えば特定のカートの識別信号)と前記操作者により調整された時間的関係の指標とを前記遠隔サーバーに記憶させると共に,この遠隔サーバーが前記記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも1人の受信者が受信するように,当該メッセージを送信する段階(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)もって相手方と対戦しようとするときに,自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとって適宜に操作情報等のメッセージ(画像の位置情報など)が相手方に送信される段階)とを含む方法である。」([当審注]:「f」の「・・・レーシングカート)もって相手方と対戦しようと」は「・・・レーシングカート)によって相手方と対戦しようと」の誤記と認める。),

「g (例えばニンテンドーDSに装着された着脱式メモリデバイスに格納された画像や音響などの)メッセージを生成するシステムであって,
h ハンドヘルド装置(本発明1Aに同じ)を備え,
i その処理回路(ARM9及びARM7と呼ばれるCPU)は前記ハンドヘルド装置に対し,
j 前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するようにその操作に関する情報を前記ディスプレイを通じて提示させ(例えば対戦ゲームソフトウェアの操作画面がディスプレイに表示されること),
k 前記少なくとも1つの出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間したサーバー・サブシステム(インターネットサーバー等)又は(b)着脱式のメモリカードスロットに挿入して使用されるメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像が提示されて確認すること),
l 操作者により調節された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なり,且つ第1のコンテンツの形式とは同一又は異なる形式である第2のコンテンツと,少なくとも一人の受信者の識別子とを表す少なくとも1つの信号とを前記少なくとも1つの入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)の画像を確認した上で,ユーザーの判断により調整されたボタン操作等によって,ゲーム対象物を動かすために信号を入力すると同時にユーザーが自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)をシステムに送り),
m 第1のコンテンツの表現を送らずに,第1の無線トランスミッタを通じて第2のコンテンツの表現と少なくとも一人の受信者の識別子とを送らせ,(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)の画像は変更しないでカートに乗るキャラクターを選択することをボタン操作等によって情報を入力すると同時にユーザーが自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)とともに伝達し,対戦の相手方に提示する)
n 第2のコンテンツの表現及び少なくとも1つの受信者を前記無線レシーバーを通じて受け取り,且つ前記少なくとも1つの記憶デバイスに記憶させると共に,第1のコンテンツの識別子と前記操作者により調節された時間的関係の指標とを前記少なくとも1つの記憶デバイスに記憶させ,(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)によって相手方と対戦しようとするときに,自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとるための指標となる情報をニンテンドーDSの本体メモリ及び/または着脱式のメモリカード等の記憶デバイスに記憶させ)
o 前記記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも一人の受信者が受信するように送信させる(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)によって相手方と対戦しようとするときに,自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとってユーザーの操作にしたがって適宜にレーシングカートの走行画像等のメッセージが相手方に送信される)システム。」,

「p ハンドヘルド装置(本発明1Aに同じ)を
q 使用する方法(本発明1BCDEFに同じ)を
r 少なくとも1つの装置(ニンテンドーDS)により実行するための指令プログラム(ニンテンドーDSのファームウェア)を実行する装置により読みとり可能な当該指令プログラムを担持する記録媒体(ニンテンドーDSに内蔵されている本体メモリなどの記録媒体)」

ここで,判定請求書の「6 請求の理由」の「(1)判定請求の必要性」における「被請求人がイ号物件説明書に示す「ニンテンドーDS」を,家電販売店などを通じて販売していることを確認した。そこで,本件判定請求人は,被請求人に対し,特許侵害に基づく損害賠償請求等訴訟を提起する準備中である・・・」との記載,甲第2号証の「NINNTENDO DSシリーズ一覧表」に鑑みれば,イ号物件は,被請求人が家電販売店などを通じて販売している「ニンテンドーDS」シリーズの各端末装置であると認められる。


第4 当事者の主張
1.請求人の主張
(1)請求人は,本件特許発明1に関し,「本発明1はいわゆる方法特許であり,イ号物件(ニンテンドーDS)のユーザーが,イ号物件を使用してワイヤレスで他のゲームユーザーとゲームプレイ情報あるいはメッセージなどの情報をやりとりしながら,いわゆるネット対戦をする際に,本発明1の特許を実施しているというべきである。例えば,イ号物件のユーザーが,イ号物件に装着された着脱式メディアカード(フラッシュメモリやSDメモリカード等)に記録された対戦ゲームソフトウェアを用いて,いわゆるネット対戦をする場合に,ゲームプレイ情報を無線によりインターネットサーバー経由でハンドヘルド装置等(ハンドヘルド装置に限られない)を所持・使用するゲームユーザーとゲームプレイ情報を交換(対戦)する事例である。」(判定請求書4頁下から4行?5頁7行)と主張している。

(2)請求人は,間接侵害に関し,「イ号物件のニンテンドーDSは,以上の方法(本発明1)の使用にのみ用いる物(特許法101条4号),又はこの方法(本発明1)の使用に用いる物のうち本発明による課題の解決に不可欠なもの(特許法101条5号)である。したがって,被請求人は,イ号物件(ニンテンドーDS)が,上記発明1の方法の使用に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なものにつき,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をしたものである(特許法101条5号所定のみなし侵害の対象)。」(判定請求書6頁下から6行?7頁4行)と主張している。

(3)請求人は,均等に関し,「イ号物件である「ニンテンドーDS」は,本件特許請求の範囲に記載の構成と同一か少なくとも均等であることから,本件特許発明の技術的範囲に属する。イ号物件である「ニンテンドーDS」によって実施されている本件特許発明の技術的範囲と抵触するアイデアは,本件特許発明の特許出願時における公的技術と同一のものとはいえないし,また被請求人が公知技術から本件特許発明の特許出願時に容易に推考できたものではない。そもそも,イ号物件である「ニンテンドーDS」によって実施されている本件特許発明の技術的範囲と抵触するアイデアが,仮に,本件特許発明の特許出願時における公的技術と同一であり,または被請求人が公知技術から本件特許発明の特許出願時に容易に推考できたものであるとするならば,本件特許発明は特許として認可されるはずがない。」(判定請求書14頁11?22行)と主張している。

2.被請求人の主張
被請求人は,判定請求答弁書にて以下のとおり主張している。
「判定請求書では,イ号物件が実施する方法においては,ゲーム操作中(レーシングカートをボタン操作する間)において,ハンドヘルド装置が遠隔サーバーに対して「第2のコンテンツの表現と少なくとも1人の受信者の識別子」を送り,遠隔サーバーが受信者へ「第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージ」を送信する(中略)と主張されている。つまり,判定請求書では,イ号物件は,通信ゲーム中において,端末(イ号物件)同士がサーバーを介して通信を行う(いわゆるクライアント-サーバー型の通信を行う)ものと主張している。しかし,イ号物件は,判定請求書で主張されるような,サーバーを介して通信を行うものではなく,イ号物件同士が直接通信を行うことで通信ゲームが行われる。少なくともこの点に関して,判定請求書におけるイ号物件の認定は誤りである。」(判定請求答弁書5頁7?19行),
「具体的には,乙1号証の“Q3”の欄には,次の記載がある。 『ニンテンドーWi-Fiコネクションはユーザ同士をマッチングしたら,あとはサーバーを介さずにお互いのニンテンドーDS同士が接続した状態になるのがポイント』 また,乙4号証の“世界のユーザー体験をよりリッチなものに。エンジニアの醍醐味”の欄の3段落目には,次の記載がある。 『任天堂製品のゲーム機器は,複数のゲーム機との間でP2Pネットワークを構築し,通信する。』 上記の記載から明らかなように,イ号物件は,イ号物件同士がサーバーを介さずに直接通信を行って(いわゆる,P2P通信で)通信ゲームを行う。」(判定請求答弁書6頁3?12行),
「本件特許発明1では,構成要件EおよびFから明らかなように,端末間(ハンドヘルド装置と受信者との間)の通信は,遠隔サーバーを介して行われる。これに対して,(中略),イ号物件は,通信対戦中においてイ号物件同士がサーバーを介さずに直接通信を行うものである。つまり,イ号物件は,本件特許発明1における構成要件EおよびFのように,ハンドヘルド装置から遠隔サーバーへデータを送り,遠隔サーバーから受信者へデータを送る構成ではない。以上より,イ号物件を用いて実施される方法は,少なくとも構成要件EおよびFを充足しない。」(判定請求答弁書9頁下から6?10頁3行),
また,被請求人は,同様に趣旨で,イ号物件は,本件特許発明2の構成要件M,N,O,本件特許発明3の構成要件E,Fを充足しない旨主張している。

第5 対比及び判断
1.イ号物件の「対戦ゲームソフトウェア」に関して
上記「第4」の項の「1.(1)」の請求人の主張及びイ号物件説明書の説明によれば,着脱式のメモリ・デバイス(DSカード等のフラッシュメモリカードやSDメモリカード等)が装着されたニンテンドーDSにて,当該着脱式のメモリ・デバイスに記憶された対戦ゲームソフトウェアを用いて,いわゆるネット対戦する場合の対戦ゲームソフトウェアにかかる動作が,本件特許発明1の実施に当たるとされているものである。
しかしながら,対戦ゲームソフトウェア(DSカード等)は,ユーザーが任意に購入してニンテンドーDSのメモリカードスロットに装着して使用するものであり,家電販売店などを通じて販売されているイ号物件である「ニンテンドーDS」本体に対戦ゲームソフトウェアが備えられていると認めるに足る証拠は明らかにされていない。
すなわち,イ号物件である「ニンテンドーDS」自体は,対戦ゲームソフトウェアを含まないから,それ自体で対戦ゲームソフトウェアにかかる動作をなすことはないことは明らかである。

2.本件特許発明1に関して
(1)構成要件の対比
ア.構成要件Aについて
本件判定請求にかかるイ号物件の「ニンテンドーDS」は「ハンドヘルド装置」に該当するが,本件特許発明1は「ハンドヘルド装置を使用する方法」であるから,発明のカテゴリーは物の発明ではなく方法の発明である。
そして,「ハンドヘルド装置を使用する方法」なる方法発明を実施するのはユーザであって,ハンドヘルド装置自体ではないから,ハンドヘルド装置自体である「ニンテンドーDS」は「ハンドヘルド装置を使用する方法」なる方法発明の構成を充足するものではない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドーDS」は構成要件Aを充足しない。

イ.構成要件Bについて
本件特許明細書の【0030】,【0048】の記載によれば,ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,ディスプレイを通じて表示される,その操作に関する情報は,「操作者により入力された電話番号の通常の表示」や処理中に操作者を案内するプロンプトや他の情報を含むものと認められるところ,ニンテンドーDSシリーズの各端末装置は,少なくとも操作者による操作に基づく情報を表示することは行っているといえるから,イ号物件である「ニンテンドーDS」は構成要件Bを充足する。

ウ.構成要件Cについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明1の構成要件Cの「第1のコンテンツ」に相当するイ号物件の構成は,「対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像を確認する初期画面」とされているが,当該初期画面は対戦ゲームソフトウェアに含まれるものと理解され,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスから与えられるといえるから,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着して使用する際に構成要件Cの「(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示する段階」が存在するといえる。
したがって,イ号物件である「ニンテンドーDS」を使用する際に構成要件Cを充足する場合がある。

なお,乙1号証の“Q3”の欄の『ニンテンドーWiFiコネクションはユーザー動作をマッチングしたら,後はサーバーを介さずにお互いのニンテンドーDS同士が接続した状態になるのがポイント』,乙4号証の”世界のユーザー体験をよりリッチなものに。エンジニアの醍醐味”の欄の3段落目の『任天堂製品のゲーム機器は,複数のゲーム機との間でP2Pネットワークを構築し,通信する。』の記載に照らせば,インターネットを介してオンラインゲームを行う場合に,対戦相手を決定する際にはサーバーを用いるものの,それ以降のゲームに係る情報のやり取りはサーバーを介さずにP2P通信で行われると認められる。したがって,前記初期画面である第1のコンテンツが遠隔サーバーから与えられることはないはずである。ここで,乙3号証の27頁には「DSワイヤレス通信(DSダウンロードプレイ)」に関する記載があるが,これは同26,28頁の記載によれば,複数の「ニンテンドーDS」が1m以内の範囲で直接ワイヤレス通信を行う場合のものと推察され,前記初期画面である第1のコンテンツが遠隔サーバーから与えられると認めるに足る証拠は明らかにされていない。
したがって,「(a)前記ハンドヘルド装置化に空間的に離間した遠隔サーバーから与えられる第1のコンテンツの表現を提示する段階」の存在は確認できない。

エ.構成要件Dについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明1の構成要件Dの「第2のコンテンツ」と「少なくとも1つの受信者の識別子」に相当するイ号物件の構成は,「例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)を選んだ後にそれに乗り込むキャラクターを選択したり,カートを動かしたりすること」と「例えばレーシングカートのIDのような当該ユーザーを特定する識別情報」とされているが,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着していない販売時の「ニンテンドーDS」には,例示された当該「第2のコンテンツ」も「レーシングカートのID」も存在しないことは明らかである。また,販売時の「ニンテンドーDS」における「第2のコンテンツ」,「受信者の識別情報」に相当するものは明らかにされていない。
また,イ号物件説明書でいう「レーシングカートのIDのような当該ユーザーを特定する識別情報」は,送信者に当たるユーザー自身の識別情報であると推察され,「受信者の識別情報」であることは確認できない。
更に,イ号物件説明書によると「第1のコンテンツ」は「対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像を確認する初期画面」であり,「第2のコンテンツ」(を入力デバイスを通じて与えること)は「例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)を選んだ後にそれに乗り込むキャラクターを選択したり,カートを動かしたりすること」であるが,キャラクターを選択したりカートを動かしたりすることはゲーム対象物を選んだ後に行われるのであるから,前記初期画面からキャラクター選択用の画面に切り替えられているとも考えられ,自分のゲーム対象物(レーシングカート)を確認する初期画面とキャラクターの選択が「操作者により調節された時間的関係に従って」「時間的に重な」ることは確認できない。また,カートを動かすのはゲームプレイ中(対戦中)のユーザーによる操作と推察されるが,ゲームプレイはゲーム対象物の選択やキャラクターの選択などの設定の後に開始されるのであるから,ゲーム対戦中に前記初期画面が提示されていることは不自然であり,「操作者により調節された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重な」ることは確認できない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドーDS」が構成要件Dを充足するということはできない。

オ.構成要件Eについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明1の構成要件Eの「前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して,第1のコンテンツの表現を送らずに,第2のコンテンツの表現と少なくとも1人の受信者の識別子とを送る」に相当するイ号物件の構成は,「ニンテンドーDSからインターネットサーバーにアクセスし,例えばニンテンドーDSをもつユーザーが対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)を確認する際に,ユーザー側に表示された初期画面はそのままにしておいたうえで,レーシングカートの種類や乗車するキャラクターを選択したりカートを動かしたり,ユーザーのレーシングカートのIDなどユーザーを特定する識別情報を送る」とされているが,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着していない販売時の「ニンテンドーDS」が対戦ゲームソフトウェアに係る当該動作をなすことはない。
また,「ニンテンドーDS」を用いたオンラインゲームはサーバー・クライアントシステムではなくP2P通信を前提とするものであるから,ゲーム対戦中においてサーバーがゲームに係る特定の機能をなすことは考えられない。そして,「ニンテンドーDS」がインターネットを介して通信を行う際にインターネットサーバーにアクセスすることはあるにせよ,当該インターネットサーバーが対戦ゲームソフトウェアに係る動作をなすとはいえない。すなわち,構成要件C及びFの機能をなす送り先の「遠隔サーバー」は確認できない。
また,上記「エ.構成要件Dについて」で述べたとおり,イ号物件説明書でいう「レーシングカートのIDのような当該ユーザーを特定する識別情報」は,送信者に当たるユーザー自身の識別情報であると推察され,「受信者の識別情報」であることは確認できない。
更に,本件特許明細書の【0002】?【0005】等の記載によれば,本件特許発明のコンテンツは,音楽のような聴覚的コンテンツ及び動画のような視覚的コンテンツが意図されていると認められ,第2のコンテンツの入力は,【0050】等に例示されているように,マイクロフォンを通じて直接的に又はスイッチを起動することにより間接的になされるところ,これらの入力によりハンドヘルド装置においてコンテンツ(聴覚的コンテンツ)の表現(すなわち,音声コンテンツや音楽コンテンツそのもの。)が形成されるものであることは明らかである。一方,自分が操作するレーシングカートに乗り込むキャラクターを選択したり,カートを動かしたりするための入力が入力デバイスから与えられたとしても,当該入力はスイッチ(ボタン)操作情報に過ぎず,「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作に対応する「画像」。)そのものではない。すなわち,スイッチ(ボタン)操作情報自体は,請求人が判定請求書13頁末行?14頁4行で定義する「コンテンツ」に該当しない。そして,イ号物件である「ニンテンドーDS」から遠隔サーバーに対して,操作入力に対応するスイッチ(ボタン)操作情報ではなく「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作入力に対応する「レーシングカートやキャラクター等の画像」。)そのものが送信されることは確認できない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドーDS」は構成要件Eを充足しない。

カ.構成要件Fについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明1の構成要件Fの「第1のコンテンツの識別子と前記操作者により調節された時間的関係の指標とを前記遠隔サーバーに記憶させると共に,この遠隔サーバーが,前記記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも1人の受信者が受信するように,当該メッセージを送信する」に相当するイ号物件の構成は,「例えば特定のカートの識別信号と前記操作者により調整された時間的関係の指標とを前記遠隔サーバーに記憶させると共に,例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)によって相手方と対戦しようとするときに,自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとって適宜に操作情報等のメッセージ(画像の位置情報など)が相手方に送信される」とされているが,上述のとおり,「ニンテンドーDS」を用いたオンラインゲームはサーバー・クライアントシステムではなくP2P通信を前提とするものであるから,ゲーム対戦中においてサーバーがゲームに係る特定の機能をなすことは考えられず,また,インターネットサーバーが「特定のカートの識別信号」や「操作者により調整された時間的関係の指標」を記憶することも一般的になされていることではない。
また,本件特許明細書の【0036】,【0041】,【0043】の記載によれば,本件特許発明の遠隔サーバーは,その記憶デバイスに,ハンドヘルド装置から送信された操作者コンテンツ(第2のコンテンツ),選択されたバックグラウンド・ミュージック(第1のコンテンツ)の識別,2つのコンテンツの間の一時的な関係の指標を記憶し,校閲や受信先への送信の際に,コンテンツ・データベースに記憶された第1のコンテンツと上記記憶デバイスに記憶された第2のコンテンツが上記一時的な関係を実質的に保存する方式で組み合わせられて送信されるものと認められる。一方,ゲーム対戦はリアルタイムに行われるのであるから,「第2のコンテンツ」や「操作者により調整された時間的関係の指標」を一旦記憶することは不自然であり,また,校閲の概念が存在しないことも明らかであり,イ号物件である「ニンテンドーDS」が「第1のコンテンツの識別子と前記操作者により調節された時間的関係の指標とを前記遠隔サーバーに記憶させる」ことは確認できない。
また,本件特許発明1の「遠隔サーバー」が送信する「メッセージ」は,「記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージ」であるが,イ号物件とされるもののメッセージは,「操作情報等のメッセージ(画像の位置情報など)」のみであって,初期画面である「第1のコンテンツ」は表されておらず,当該操作情報(画像の位置情報など)が「自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとって適宜に」「相手方に送信される」だけであるから,本件特許発明1の「メッセージ」に相当するものではない。
更に,構成要件Dによれば,本件特許発明1の「時間的関係」とは,時間的に重なる「第1のコンテンツ」の提示と「第2のコンテンツ」との間の時間的関係であるが,イ号物件説明書でいう「第1のコンテンツ」は「対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像を確認する初期画面」であるから,イ号物件における「第1のコンテンツ」の提示と「第2のコンテンツ」との間の時間的関係は,ゲーム対戦中における自分の操作と対戦相手の操作に係る時間的関係ではないことは明らかである。すなわち,「前記記憶された時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージを前記少なくとも1人の受信者が受信するように,当該メッセージを送信する」ことと「自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとって適宜に操作情報等のメッセージが相手方に送信される」こととは,技術的内容が全く異なるものである。
したがって,イ号物件である「ニンテンドーDS」は構成要件Fを充足しない。

(2)目的・効果の検討
本件特許発明の目的は,「第2」の項の「2」の項で述べたとおり,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といった聴覚的又は視覚的コンテンツを,個人がセルラーフォンのようなモバイル装置を用いて形成及び分配できるようにし,それを友人らと共有することを可能とすることである。
一方,上記「(1)オ」で述べたとおり,イ号物件である「ニンテンドーDS」は,「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作入力に対応する「レーシングカートやキャラクター等の画像」。)そのものが送信されることは確認できない。
また,上記「(1)カ」で述べたとおり,「自分の操作によるゲーム対象物の動きと相手方の操作によるゲーム対象物の動きが不自然にならないように時間的タイミングをとって適宜に」「相手方に送信される」「操作情報等のメッセージ(画像の位置情報など)」は,自分が操作するレーシングカートの位置情報に過ぎず,「時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージ」に該当せず,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といったコンテンツとはいえない。
また,仮に受信者が「時間的関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表すメッセージ」を受信するとしても,当該「メッセージ」に含まれる「第1のコンテンツ」は,受信者にとっては対戦相手がそのゲーム対象物(例えばレーシングカート)の画像を確認する初期画面であって,ゲーム対戦中の画面ではないから,そのような「第1のコンテンツ」を操作者と受信者とが共有する意義は見いだせない。また,同様の理由で,「メッセージ」が,第1のコンテンツ及び第2のコンテンツが記憶された時間的関係を保って配置されるものであることの意義も見いだせない。
そして,『時間的関係を保って配置された「対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像を確認する初期画面」及び「例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)を選んだ後にそれに乗り込むキャラクターを選択したり,カートを動かしたりすること」』をハンドヘルド装置が形成・分配できたところで,本件特許発明1の目的・効果を達成し得るものでないことは明らかである。

以上のとおりであるから,イ号物件である「ニンテンドーDS」は本件特許発明1の技術的範囲に属しない。

3.本件特許発明2に関して
(1)構成要件の対比
ア.構成要件G,N,Oについて
本件特許発明2は「システム」に係る発明であり,構成要件N,Oはサーバー・サブシステムに係る構成であるところ,イ号物件である「ニンテンドーDS」は,システムの一部分を構成するにせよ,システム自体ではなく,サーバー・サブシステムを備えるものではないから,本件特許発明2の構成要件G,N,Oを有するものではない。
また,本件特許発明2の構成要件N,Oは,本件特許発明1の構成要件Fに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「カ」で述べたとおり,イ号物件説明書に示されるイ号物件である「ニンテンドーDS」の構成fは,構成要件Fを充足するものではないから,構成要件N,Oも充足しないことは明らかである。

イ.構成要件H?Kについて
イ号物件である「ニンテンドーDS」は,ディスプレイ,操作者からの入力を受けるスイッチ配列を備える入力手段,無線送信を行う手段,ニンテンドーDSの動作を制御する制御手段を備えることは明らかであるから,構成要件H,Iを充足する。
また,本件特許発明2の構成要件Jは本件特許発明1の構成要件Bに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「イ」で述べたとおり,イ号物件説明書に示されるイ号物件の構成bは,構成要件Bを充足するから,構成要件Jも充足する。
また,本件特許発明2の構成要件Kは本件特許発明1の構成要件Cに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「ウ」で述べたとおり,イ号物件である「ニンテンドーDS」を使用する際に構成要件Cを充足する場合があるから,同様にイ号物件である「ニンテンドーDS」を使用する際に構成要件Kを充足する場合がある。

ウ.構成要件L,Mについて
本件特許発明2の構成要件L,Mは本件特許発明1の構成要件D,Eに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「エ」,「オ」で述べたとおり,イ号物件説明書に示されるイ号物件の構成d,eは,構成要件D,Eを充足するものではないから,構成要件K?Mも充足しないことは明らかである。

(2)目的・効果の検討
上記「2(2)」の項で述べたとおりであるから,イ号物件説明書に示される「ニンテンドーDS」は本件特許発明2の目的・効果を達成し得るものでないことは明らかである。

以上(1),(2)のとおりであるから,イ号物件である「ニンテンドーDS」は本件特許発明2の技術的範囲に属しない。

4.本件特許発明3に関して
(1)構成要件の対比
ア.構成要件A’?F’について
イ号物件である「ニンテンドーDS」は,ディスプレイ,操作者からの入力を受けるスイッチ配列を備える入力手段,無線送信を行う手段,ニンテンドーDSの動作を制御する制御手段を備えることは明らかであるから,構成要件A’を充足する。
本件特許発明3の構成要件B’は本件特許発明1の構成要件Bに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「イ」で述べたとおり,イ号物件説明書に示されるイ号物件の構成bは,構成要件Bを充足するから,構成要件B’を充足する。
本件特許発明3の構成要件C’は本件特許発明1の構成要件Cに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「ウ」で述べたとおり,イ号物件である「ニンテンドーDS」を使用する際に構成要件Cを充足する場合があるから,同様にイ号物件である「ニンテンドーDS」を使用する際に構成要件C’を充足する場合がある。
本件特許発明3の構成要件D’?F’は本件特許発明1の構成要件D?Fに対応するものであるが,上記「2(1)」の項の「エ」?「カ」で述べたとおり,イ号物件説明書に示されるイ号物件の構成d?fは,構成要件D?Fを充足するものではないから,構成要件D’?F’を充足しない。

イ.構成要件P?Rについて
請求人は,分説をP,Q,Rと分けているが,「ハンドヘルド装置を使用する方法を少なくとも1つの装置により実行するための指令プログラム」が1つの纏まりのある技術的概念であるから,構成要件P?Rについてまとめて判断する。
「ニンテンドーDS」に内蔵されているメモリ等の記録媒体は,ニンテンドーDSを動作させるための基本プログラムを担持するものであるが,本件特許発明3の構成要件B?Fの段階を有する方法を実行するための指令プログラムは,ユーザが別途購入する着脱式のメモリ・デバイスに記憶された対戦ゲームソフトウェアであると考えられる。すなわち,販売時点の「ニンテンドーDS」の記録媒体には,対戦ゲームソフトウェアは担持されておらず,販売時の「ニンテンドーDS」における「指令プログラム」に相当するものは明らかにされていない。
また,構成要件Fはサーバーに動作に係るものであって,ハンドヘルド装置である「ニンテンドーDS」が指令プログラムとして担持するものではないことは明らかである。
そして上記アのとおりであるため,イ号物件である「ニンテンドーDS」は,本件特許発明3の構成要件D’?F’の段階を有する方法を実行するための指令プログラムを担持しているとはいえない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドーDS」は,構成要件P?Qの構成を充足しない。

(2)目的・効果の検討
上記「2(2)」の項で述べたとおりであるから,イ号物件説明書に示される「ニンテンドーDS」は本件特許発明3の目的・効果を達成し得るものでないことは明らかである。

以上(1),(2)のとおりであるから,イ号物件である「ニンテンドーDS」は本件特許発明3の技術的範囲に属しない。

5.均等に関して
均等と判断するには,以下(i)?(v)の5要件を全て満たすことが必要である。
(i) 特許請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が発明の本質的な部分ではない(発明の本質的な部分)。
(ii) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する(置換可能性)。
(iii) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが,イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである(置換容易性)。
(iv) イ号が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に遂行できたものではない(自由技術の除外)。
(v) イ号が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない(禁反言:出願等の経緯の参酌)。
しかしながら,上記1?3のとおり,少なくとも上記(i),(ii)の要件を満たさないことが明らかであるから,他の要件を判断するまでもなく,均等とはいえない。

6.間接侵害に関して
間接侵害に関しては,本判定の対象外であるので,判断しない。


第6 むすび
以上のとおりであるから,イ号物件説明書に示されるイ号物件である「ニンテンドーDS」(携帯型ゲーム機)は,本件特許に係る発明の構成要件を具備しないから,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
判定日 2014-04-03 
出願番号 特願2002-590620(P2002-590620)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸次 一夫  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 田中 庸介
山本 章裕
登録日 2009-08-14 
登録番号 特許第4357175号(P4357175)
発明の名称 実時間対話型コンテンツを無線交信ネットワーク及びインターネット上に形成及び分配する方法及び装置  
代理人 小沢 昌弘  
代理人 野村 吉太郎  
代理人 寺本 亮  
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