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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04M
管理番号 1286486
判定請求番号 判定2013-600040  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2014-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2013-11-20 
確定日 2014-04-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第5033756号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明書に示す「ニンテンドー3DS」(携帯型ゲーム機)は、特許第5033756号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は,イ号物件説明書に示す「ニンテンドー3DS」(携帯型ゲーム機)(以下,「イ号物件」という。)は,特許第5033756号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。


第2 本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明は,特許明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの以下のものである。

「【請求項1】
A ハンドヘルド装置であって,
操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイスと,
操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイスと,
無線トランスミッタと,
前記少なくとも1つの出力デバイス,前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する処理回路と,
B 前記処理回路で実行可能なプログラムとを備え,そのプログラムは,
前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ,
C 前記出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ,
D 操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも単独の受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,
E 前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に,
F この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置。」(以下,「本件特許発明」という。)

なお,「A」?「F」は,分説のために請求人が付した記号であるが,便宜上そのままこれを利用する。

2.本件特許発明の目的及び効果
本件特許発明の目的及び効果は,本件特許明細書の【0002】?【0005】の記載,及び同明細書全体の開示内容に照らせば,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といった聴覚的又は視覚的コンテンツを,個人がセルラーフォンのようなモバイル装置を用いて形成及び分配できるようにし,それを友人らと共有することを可能とすることと認められる。


第3 イ号物件
イ号物件説明書に示された「ニンテンドー3DS」は,以下のとおりである。
「a ニンテンドー3DSは,
i その大きさは縦約74?93ミリメートル,横約134?156ミリメートル,厚さ約21?22ミリメートル及び重さは約235?336グラムであり,手にとって使用することが念頭に置かれたハンドヘルド装置であって,
ii ディスプレイ(可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも1つの出力デバイス)と,
iii ディスプレイ兼タッチパネル(操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも1つの入力デバイス)と,
iv Wi-Fiまたは無線LANの利用を可能とする無線チップ(無線トランスミッタ)と,
v (これらの出力デバイス,前記入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する)Nintendo 1048 0Hプロセッサ等と呼ばれるCPU(処理回路)を含むものである。
bi 前記CPU(処理回路)で実行されるニンテンドー3DSのファームウェアプログラムを備え,
ii そのプログラムは,前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するようにその操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ(ユーザーにディスプレイを通じて操作画面が表示され,ユーザーは,ニンテンドー3DSのディスプレイの表示を見ながら操作を行う)。
c 前記ディスプレイ(出力デバイス)を通じて操作者へ,
(a) ニンテンドー3DS(前記ハンドヘルド装置)から空間的に離間した遠隔サーバー(インターネットサーバー等),又は
(b) 着脱式のメモリカードスロットに挿入して使用されるSDカード等のメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ(例えばマリオカート7のような対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像が提示されてそれを確認すること)
d ユーザーがニンテンドー3DSのディスプレイを触ったり,ボタンを押したりしながらニンテンドー3DSを操作することによって(操作者により決定された時間的関係に従って),第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)の画像を確認した上で,ユーザーの判断により調整されたボタン操作等によって,ゲーム対象物を動かすために信号を入力すると同時にユーザーが自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)をユーザーから受け取らせ),
e 前記無線チップ経由で(前記無線トランスミッタを通じて),ニンテンドー3DS(前記ハンドヘルド装置)から空間的に離間した遠隔サーバーに対して,第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送る(例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)のに乗るキャラクターを選択することをボタン操作等によって情報を入力する(第2のコンテンツ)と同時にユーザーが自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)とともに伝達し,対戦の相手方に送ると共に,
f 前記遠隔サーバーが前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現(例えば自分が操作するレーシングカート)によって相手方と対戦しようとするときに,自分の操作によるゲーム対象物の画像(第1のコンテンツ)の走行状況等(第2のコンテンツを表す更なる表現)が対戦の相手方に送信されるように構成されている(そのような機能を実現することができる)ハンドヘルド装置(ニンテンドー3DS)。」


第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は,均等に関し,「イ号物件である「ニンテンドー3DS」は,本件特許請求の範囲に記載の構成と同一か少なくとも均等であることから,本件特許発明の技術的範囲に属する。イ号物件である「ニンテンドー3DS」によって実施されている本件特許発明の技術的範囲と抵触するアイデアは,本件特許発明の特許出願時における公的技術と同一のものとはいえないし,また被請求人が公知技術から本件特許発明の特許出願時に容易に推考できたものではない。そもそも,イ号物件である「ニンテンドー3DS」によって実施されている(本件特許発明の技術的範囲と抵触する)アイデアが,仮に,本件特許発明の特許出願時における公的技術と同一であり,または被請求人によって公知技術から本件特許発明の特許出願時に容易に推考できたものであるとするならば,本件特許発明は特許として認可されるはずがない。」(判定請求書7頁13?24行)と主張している。

2.被請求人の主張
被請求人は,判定請求答弁書にて以下のとおり主張している。
「判定請求書では少なくとも,イ号物件では,通信ゲーム中において,ハンドヘルド装置が遠隔サーバーに対して「第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子」を送り,遠隔サーバーが受信者(対戦の相手方)へ「第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」を送信することを主張しているものと考えられる。つまり,判定請求書では,イ号物件は,通信ゲーム中において,端末(イ号物件)同士がサーバーを介して通信を行う(いわゆるクライアント-サーバー型の通信を行う)ものと主張している。しかし,イ号物件は,判定請求書で主張されるような,サーバーを介して通信を行うものではなく,イ号物件同士が直接通信を行うことで通信ゲームが行われる。少なくともこの点に関して,判定請求書におけるイ号物件の認定は誤りである。」(判定請求答弁書4頁10?21行),
「具体的には,イ号物件においてゲームソフト「マリオカート7」を実行する場合,イ号物件同士で通信ゲームを行うことができる(乙1号証の“16 フレンドやライバルと”の欄参照)。ここで,イ号物件による通信ゲーム中においては,通信を行うイ号物件同士が,サーバーを介さずに,直接通信を行っている。すなわち,乙2号証の“世界のユーザー体験をよりリッチなものに。エンジニアの醍醐味”の欄には「ニンテンドーDS」やその後継機であるイ号物件(ニンテンドー3DS)がP2P通信を行うことが記載されている。特に,上記欄の3段落目には,次の記載がある。 『任天堂製品のゲーム機は,複数のゲーム機との間でP2Pネットワークを構築し,通信する。』 上記の記載から明らかなように,イ号物件は,イ号物件同士がサーバーを介さずに直接通信を行って(いわゆる,P2P通信で)通信ゲームを行う。」(判定請求答弁書4頁22行?5頁8行),
「本件特許発明では,構成要件EおよびFから明らかなように,端末間(ハンドヘルド装置と受信者との間)の通信は,遠隔サーバーを介して行われる。これに対して,(中略)イ号物件は,通信ゲーム中においてイ号物件同士がサーバーを介さずに直接通信を行うものである。つまり,イ号物件は,本件特許発明における構成要件EおよびFのように,ハンドヘルド装置から遠隔サーバーへデータを送り,遠隔サーバーから受信者へデータを送る構成ではない。以上より,イ号物件は,少なくとも構成要件EおよびFを充足しない。」(判定請求答弁書6頁13?20行)


第5 対比及び判断
1.イ号物件の「対戦ゲームソフトウェア」に関して
イ号物件説明書の説明によれば,請求人は,着脱式のメモリ・デバイス(SDカード等)に格納された対戦ゲームソフトウェアに従って動作する「ニンテンドー3DS」が,本件特許発明の技術的範囲に属すると主張していると解される。
しかしながら,対戦ゲームソフトウェア(SDカード等)は,ユーザーが任意に購入してニンテンドー3DSのメモリカードスロットに装着して使用するものであり,家電販売店などを通じて販売されているイ号物件である「ニンテンドー3DS」本体に対戦ゲームソフトウェアが備えられていると認めるに足る証拠は明らかにされていない。
すなわち,イ号物件である「ニンテンドー3DS」自体は,対戦ゲームソフトウェアを含まないから,それ自体で対戦ゲームソフトウェアにかかる動作をなすことはないことは明らかである。

2.構成要件の対比
(1)構成要件Aについて
イ号物件である「ニンテンドー3DS」は,ディスプレイ,操作者からの入力を受けるスイッチ配列を備える入力手段,無線送信を行う手段,ニンテンドー3DSの動作を制御する制御手段を備えることは明らかであるから,構成要件Aを充足する。

(2)構成要件Bについて
本件特許明細書の【0030】,【0048】の記載によれば,ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,ディスプレイを通じて表示される,その操作に関する情報は,「操作者により入力された電話番号の通常の表示」や処理中に操作者を案内するプロンプトや他の情報を含むものと認められるところ,電子機器はそのハードウェアを制御するためのプログラム(ファームウェア,システムソフトウェア)を有していることは一般的なことであり,ニンテンドー3DSシリーズの各端末装置は,少なくとも操作者による操作に基づく情報を表示することは行っているといえるから,イ号物件である「ニンテンドー3DS」は構成要件Bを充足する。

(3)構成要件Cについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Cの「第1のコンテンツの表現を提示させ」に相当するイ号物件の構成は,「対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像が提示されてそれを確認すること」とされているが,当該画像は対戦ゲームソフトウェアに含まれるものと理解され,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスから与えられるといえるから,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着して使用する際に構成要件Cの「(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ」が存在するといえる。
したがって,イ号物件である「ニンテンドー3DS」を使用する際に構成要件Cを充足する場合がある。

なお,乙2号証の”世界のユーザー体験をよりリッチなものに。エンジニアの醍醐味”の欄の3段落目の『任天堂製品のゲーム機器は,複数のゲーム機との間でP2Pネットワークを構築し,通信する。』の記載に照らせば,インターネットを介してオンラインゲームを行う場合には,P2P通信で行われると推測される。そして,請求人からは,自分が操作するレーシングカートの画像を確認するための「第1のコンテンツの表現」が遠隔サーバーから与えられることを認めるに足る証拠は明らかにされていない。
したがって,「(a)前記ハンドヘルド装置化に空間的に離間した遠隔サーバーから与えられる第1のコンテンツの表現を提示する段階」の存在は確認できない。

(4)構成要件Dについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Dの「第2のコンテンツ」及び「少なくとも1つの受信者の識別子」を入力デバイスを通じて操作者から受け取らせることに相当するイ号物件の構成は,「例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)の画像を確認した上で,ユーザーの判断により調整されたボタン操作等によって,ゲーム対象物を動かすために信号を入力する」ことと「ユーザーが自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)をユーザーから受け取らせ」ることとされているが,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着していない販売時の「ニンテンドー3DS」には,例示された「自分が操作するレーシングカートの画像」も「ゲーム対象物を動かすための信号」も「レーシングカートごとに振られるID」も存在しないことは明らかである。ここで,構成要件Cにおいて遠隔サーバー又は取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられるのは「第1のコンテンツの表現」のみであって,対戦ゲームソフトウェア自体が遠隔サーバー又は取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられることは規定されておらず,特許明細書全体の開示内容からみても構成要件Dの動作を為すためのプログラムはハンドヘルド装置が備える「前記処理回路で実行可能なプログラム」(構成要件B参照。)であると認められるところ,ファームウェアプログラムが対戦ゲームソフトウェア特有の動作を為すとは認められない。そして,販売時の「ニンテンドー3DS」における,「第2のコンテンツ」及び「少なくとも1つの受信者の識別子」を入力デバイスを通じて操作者から受け取らせることに相当するものは明らかにされていない。
また,イ号物件説明書でいう「自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)」は,送信者に当たるユーザー自身の識別情報であると推察され,「受信者の識別情報」であることは確認できない。
更に,イ号物件説明書によると「第1のコンテンツの表現の提示」は「対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(例えば自分が操作するレーシングカート)の画像が提示されてそれを確認する」ことであり,「第2のコンテンツ」(を入力デバイスを通じて与えること)は「例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)の画像を確認した上で,ユーザーの判断により調整されたボタン操作等によって,ゲーム対象物を動かすために信号を入力する」ことであって,ゲーム対象物である自分が操作するレーシングカートを動かすことは,ゲームプレイ中(対戦中)のユーザーによる操作と推察されるが,ゲームプレイはゲーム対象物を確認した上でその後に開始されるのであるから,ゲーム対戦中に自分が操作するレーシングカートの確認のための画像(第1のコンテンツの表現)が提示されていることは不自然であり,「操作者により調節された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重な」ることは確認できない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドー3DS」が構成要件Dを充足するということはできない。

(5)構成要件Eについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Eの「前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に」に相当するイ号物件の構成は,「無線チップ経由で,ニンテンドー3DSから空間的に離間した遠隔サーバーに対して,例えば対戦ゲームソフトウェアを使用してユーザーが自分のゲーム対象物(自分が操作するレーシングカート)のに乗るキャラクターを選択することをボタン操作等によって情報を入力する(第2のコンテンツ)と同時にユーザーが自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)とともに伝達し,対戦の相手方に送ると共に」とされているが,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着していない販売時の「ニンテンドー3DS」が対戦ゲームソフトウェアに係る当該動作をなすことはない。そして,上記(4)のとおり,イ号物件説明書にて「ニンテンドー3DSのファームウェアプログラム」とされるハンドヘルド装置が備える「前記処理回路で実行可能なプログラム」が,対戦ゲームソフトウェア特有の動作を為すとは認められない。
また,本件特許発明の「遠隔サーバー」は,本件特許明細書によれば,「サーバー30」に当たるものであり,記憶デバイス33等に記憶された第1のコンテンツ(バックグランドミュージック)をハンドヘルド装置に与え(【0032】),ハンドヘルド装置から第2のコンテンツ(操作者コンテンツ)を受け取り(【0034】),記憶デバイス33等に別々に記憶された第1のコンテンツ,第2のコンテンツ,時間的関係の指標に基づいて,第1のコンテンツと第2のコンテンツがこれら2つのコンテンツの間の時間的関係を実質的に保存する方式で組み合わせられたメッセージを操作者又は受信者に送信する(【0021】,【0036】,【0041】,【0043】)ものであるが,一般的なインターネットサーバーがこのような動作をなすことは確認できない。すなわち,イ号物件説明書においてハンドヘルド装置が第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送る先である「遠隔サーバー」とされる「インターネットサーバー」は,構成要件C及びFの機能をなす本件特許発明の「遠隔サーバー」に相当するとはいえない。
また,上記(4)で述べたとおり,イ号物件説明書でいう「自分の識別子(各ユーザーのレーシングカートごとに振られるID)」は,送信者に当たるユーザー自身の識別情報であると推察され,「受信者の識別情報」であることは確認できない。
更に,本件特許明細書の【0002】?【0005】等の記載によれば,本件特許発明のコンテンツは,音楽のような聴覚的コンテンツ及び動画のような視覚的コンテンツが意図されていると認められ,第2のコンテンツの入力は,【0050】等に例示されているように,マイクロフォンを通じて直接的に又はスイッチを起動することにより間接的になされるところ,これらの入力によりハンドヘルド装置においてコンテンツ(聴覚的コンテンツ)の表現(すなわち,音声コンテンツや音楽コンテンツそのもの。)が形成されるものであることは明らかである。一方,自分が操作するレーシングカートに乗り込むキャラクターを選択したり,ゲーム対象物を動かしたりするための入力が入力デバイスから与えられたとしても,当該入力はスイッチ(ボタン)操作情報に過ぎず,「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作に対応する「画像」。)そのものではない。すなわち,スイッチ(ボタン)操作情報自体は,請求人が判定請求書7頁5?9行で定義する「コンテンツ」に該当しない。そして,イ号物件である「ニンテンドー3DS」から遠隔サーバーに対して,操作入力に対応するスイッチ(ボタン)操作情報ではなく「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作入力に対応する「レーシングカートやキャラクター等の画像」。)そのものが送信されることは確認できない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドー3DS」は構成要件Eを充足しない。

(6)構成要件Fについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Fの「この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されている」に相当するイ号物件の構成は,「前記遠隔サーバーが(例えば自分が操作するレーシングカート)によって相手方と対戦しようとするときに,自分の操作によるゲーム対象物の画像(第1のコンテンツ)の走行状況等(第2のコンテンツを表す更なる表現)が対戦の相手方に送信されるように構成されている(そのような機能を実現することができる)」とされているが,上述のとおり,対戦ゲームソフトウェアを記憶した着脱式のメモリ・デバイスを装着していない販売時の「ニンテンドー3DS」が対戦ゲームソフトウェアに係る動作をなすことはないから,送信されるべき「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」も存在しないはずである。そして,上記(4)のとおり,イ号物件説明書にて「ニンテンドー3DSのファームウェアプログラム」とされるハンドヘルド装置が備える「前記処理回路で実行可能なプログラム」が,対戦ゲームソフトウェア特有の動作を為すとは認められない。
また,本件特許明細書の【0036】,【0041】,【0043】の記載によれば,本件特許発明の「遠隔サーバー」が送信する「操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」は,コンテンツ・データベースに記憶された第1のコンテンツと記憶デバイスに記憶された第2のコンテンツが一時的な関係を実質的に保存する方式で組み合わせられたものであり,第1のコンテンツの表現と当該第1のコンテンツの表現に対して時間的関係を保って配置された第2のコンテンツの表現との双方を含む更なるコンテンツの表現といえるメッセージと理解される。一方,上記(5)のとおり,「走行状況等」自体は,「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作に対応する「画像」。)とはいえず,請求人が判定請求書7頁5?9行で定義する「コンテンツ」に該当しないから,「自分の操作によるゲーム対象物の画像の走行状況等」は構成要件Fの「操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」に相当しない。そして,請求人からは,ゲーム対戦において対戦している「ニンテンドー3DS」間において,具体的にどのような信号のやり取りが為されているかについては明らかにされていない。
また,上記(5)で述べたように,インターネットサーバーが上述の「更なる表現」を送信することは確認できない。
更に,本件特許発明の構成要件Bも併せて考慮すれば,ハンドヘルド装置が備える「処理回路で実行可能なプログラム」(ファームウェアプログラム)が遠隔サーバーに対して構成要件Fの「この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させる」なる動作を「させる」ようにするとも解されるが,「ニンテンドー3DS」が販売時に備えているプログラム(ファームウェアプログラム)が遠隔サーバーに対してそのような動作をさせることは確認できない。
したがって,イ号物件である「ニンテンドー3DS」は構成要件Fを充足しない。

3.目的・効果の検討
本件特許発明の目的は,「第2」の項の「2」の項で述べたとおり,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といった聴覚的又は視覚的コンテンツを,個人がセルラーフォンのようなモバイル装置を用いて形成及び分配できるようにし,それを友人らと共有することを可能とすることである。
一方,上記「2(5)」で述べたとおり,イ号物件である「ニンテンドー3DS」は,「第2のコンテンツの表現」(a representation of the second cotent)(すなわち,操作入力に対応する「レーシングカートやキャラクター等の画像」。)そのものが送信されることは確認できない。
また,上記「2(6)」で述べたとおり,遠隔サーバーから送信される「自分の操作によるゲーム対象物の画像の走行状況等」は,「操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」に該当せず,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といったコンテンツとはいえない。また,ゲーム対戦において対戦している「ニンテンドー3DS」間において,具体的にどのような信号のやり取りが為されているかについては明らかにされていないため,ハンドヘルド装置においてコンテンツが形成及び分配されていることを確認できない。
更に,仮に受信者が「操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」を受信するとしても,当該「更なる表現」に含まれる「第1のコンテンツ」は,受信者にとっては対戦相手がそのゲーム対象物(例えばレーシングカート)を確認する画像であって,ゲーム対戦中の画面ではないから,そのような「第1のコンテンツ」を操作者と受信者とが共有する意義は見いだせない。また,同様の理由で,「メッセージ」が,第1のコンテンツ及び第2のコンテンツが記憶された時間的関係を保って配置されるものであることの意義も見いだせない。
そして,「自分の操作によるゲーム対象物の画像の走行状況等」を遠隔サーバーが送信したところで,本件特許発明の目的・効果を達成し得るものでないことは明らかである。

4.均等に関して
均等と判断するには,以下(i)?(v)の5要件を全て満たすことが必要である。
(i) 特許請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が発明の本質的な部分ではない(発明の本質的な部分)。
(ii) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する(置換可能性)。
(iii) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが,イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである(置換容易性)。
(iv) イ号が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に遂行できたものではない(自由技術の除外)。
(v) イ号が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない(禁反言:出願等の経緯の参酌)。
しかしながら,上記1?3のとおり,少なくとも上記(i),(ii)の要件を満たさないことが明らかであるから,他の要件を判断するまでもなく,均等とはいえない。

以上のとおりであるから,イ号物件である「ニンテンドー3DS」は本件特許発明の技術的範囲に属しない。


第6 むすび
以上のとおりであるから,イ号物件説明書に示されるイ号物件である「ニンテンドー3DS」(携帯型ゲーム機)は,本件特許に係る発明の構成要件を具備しないから,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
判定日 2014-04-03 
出願番号 特願2008-266432(P2008-266432)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司戸次 一夫  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
田中 庸介
登録日 2012-07-06 
登録番号 特許第5033756号(P5033756)
発明の名称 実時間対話型コンテンツを無線交信ネットワーク及びインターネット上に形成及び分配する方法及び装置  
代理人 小沢 昌弘  
代理人 寺本 亮  
代理人 野村 吉太郎  
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