• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04M
管理番号 1286490
判定請求番号 判定2013-600036  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2014-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2013-11-06 
確定日 2014-04-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第5033756号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明書に示す「iPhone」は、特許第5033756号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は,イ号物件説明書に示す「iPhone」(以下,「イ号物件」という。)は,特許第5033756号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。


第2 本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明は,特許明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの以下のものである。

「【請求項1】
A ハンドヘルド装置であって,
操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイスと,
操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイスと,
無線トランスミッタと,
前記少なくとも1つの出力デバイス,前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する処理回路と,
B 前記処理回路で実行可能なプログラムとを備え,そのプログラムは,
前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ,
C 前記出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ,
D 操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも単独の受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,
E 前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に,
F この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置。」(以下,「本件特許発明」という。)

なお,「A」?「F」は,分説のために請求人が付した記号であるが,便宜上そのままこれを利用する。

2.本件特許発明の目的及び効果
本件特許発明の目的及び効果は,本件特許明細書の【0002】?【0005】の記載,及び同明細書全体の開示内容に照らせば,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といった聴覚的又は視覚的コンテンツを,個人がセルラーフォンのようなモバイル装置を用いて形成及び分配できるようにし,それを友人らと共有することを可能とすることと認められる。


第3 イ号物件
イ号物件説明書に示された「iPhone」は,以下のとおりである。
「a iPhoneは,
i その大きさは高さ約124ミリメートル?115ミリメートル,幅約58ミリメートル,厚さ7.5?13.4ミリメートル及び重さは約112?140グラムであり,手にとって使用することが念頭に置かれたハンドヘルド装置であって,
ii ディスプレイ(可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも1つの出力デバイス)と,
iii ディスプレイ兼タッチパネル(操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも1つの入力デバイス)と,
iv WiFi及び/または3G回線/あるいはLTE回線の利用を可能とする無線チップ(無線トランスミッタ)と,
v (これらの出力デバイス,前記入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する)RISC ARM,ARM Cortex-A8,Apple A4?A7プロセッサ等と呼ばれるCPU(処理回路)を含むものである。
bi 前記CPU(処理回路)で実行されるiPhoneのオペレーティングシステムであるiPhone OSないしiOS等のシステムプログラムを備え,
ii そのプログラムは,前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するようにその操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ(ユーザーにディスプレイを通じて操作画面が表示され,ユーザーは,iPhoneのディスプレーの表示を見ながら操作を行う)。
c 前記ディスプレイ(出力デバイス)を通じて操作者へ,
(a) iPhone(前記ハンドヘルド装置)から空間的に離間した遠隔サーバー(iPhoneに内蔵された3G/LTE回線またはWiFiを通じてAppleや電話会社などが手配する遠隔サーバー),又は
(b) iPhoneと接続コネクタや接続ケーブルなどで接続された取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ(例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときに表示されるスカイプの稼働状況及び交信しようとする相手方がオンライン状態であることを示す初期画面。)
d ユーザーがiPhoneのディスプレイを触ってiPhoneを操作することによって(操作者により決定された時間的関係に従って),第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ(例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにiPhoneのカメラによって認識・入力される自分の顔の画像)と,少なくとも単独の受信者の識別子(例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにその相手方を選択する操作をしたときに認識される相手方の識別子)とを前記入力デバイス(前記ディスプレイ)を通じて操作者から受け取らせ,
e 前記無線チップ経由で(前記無線トランスミッタを通じて),iPhone(前記ハンドヘルド装置)から空間的に離間した遠隔サーバーに対して,第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送る(例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにその相手方を選択する操作をしたときに認識される相手方の識別子及びiPhoneのカメラによって認識・入力されるユーザーの顔の画像)と共に,
f 前記遠隔サーバーが前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現(例えばスカイプでユーザーが相手方にコールするときに,ユーザーの顔等のメッセージ情報やスカイプ名などのユーザーを特定する情報)を前記少なくとも単独の受信者(ユーザーが交信しようとしている相手方。複数のこともある。)が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されている(そのような機能を実現することができる)ハンドヘルド装置(iPhone)。」


第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は,均等に関し,「イ号物件である「iPhone」は,本件特許請求の範囲に記載の構成と同一か少なくとも均等であることから,本件特許発明の技術的範囲に属する。イ号物件である「iPhone」によって実施されている本件特許発明の技術的範囲と抵触するアイデアは,本件特許発明の特許出願時における公的技術と同一のものとはいえないし,また被請求人が公知技術から本件特許発明の特許出願時に容易に推考できたものではない。そもそも,イ号物件である「iPhone」によって実施されている(本件特許発明の技術的範囲と抵触する)アイデアが,仮に,本件特許発明の特許出願時における公的技術と同一であり,または被請求人によって公知技術から本件特許発明の特許出願時に容易に推考できたものであるとするならば,本件特許発明は特許として認可されるはずがない。」(判定請求書7頁下から12行?末行)と主張している。

2.被請求人の主張
(1)被請求人は,スカイプ及びイ号物件に関し,以下のとおり主張している。
「まず厳然たる事実として,Apple社が販売するどのiPhoneもスカイプを搭載しない。スカイプはユーザーによるiPhoneの購入後,ユーザー自身の判断でインストールされるアプリケーションであって,販売時点に予めインストールされている種類のアプリケーションではない。更に言えば,スカイプとはMicrosoft社が提供するアプリケーションである(スカイプホームページの『Skypeについて』https://skype.com/ja/about/:乙1号証を参照。)
スカイプをiPhoneにインストールするためには,ホーム画面の「App Store」アイコンをタップして起動したApp Store上でスカイプ・アプリケーションを検索し,スカイプのアプリケーションプログラムをiPhoneにダウンロードしてインストールしなければならない。このように,スカイプがインストールされる以前の販売時のiPhoneは,各種のアプリケーション・ソフトウェアの実行環境を提供する単なる汎用コンピュータに過ぎない。被請求人は汎用コンピュータを販売しているだけであって,判定請求に係るイ号物件(汎用コンピュータとスカイプのソフトウエアとを含み,スカイプはユーザが購入後に当該汎用コンピュータにインストールしたものである)を販売してはいない。
即ち,請求人はユーザーの行う行為,行った行為を前提としてイ号物件を特定し,当該イ号物件が特許発明の技術的範囲に属するかどうかの判定を求めている。しかし,請求人が求めている当該判定はiPhoneが特許発明の技術的範囲に属するかどうかの判定ではない。当該判定の対象は,請求人がイ号物件の説明に記載したように「例えばスカイプで・・・」として,無理やり構成したイ号物件であり,本請求は,実際の販売時のiPhoneではない別の製品をイ号物件として判定請求に他ならない。」(判定請求答弁書3頁3行?下から6行)

(2)被請求人は,イ号物件は本件特許発明の構成要件C,D,E,Fを充足しないとして,概略,以下の旨主張している。

ア.構成要件Cについて
スカイプはP2P通信を前提としており,特定の遠隔サーバを介した通信を行っていない(乙2号証(スカイプの動作説明のページ)参照)から,iPhoneにおいてスカイプを起動してユーザーが使用可能な状況で,何らかのコンテンツが特定のサーバーから送信されてくることはない。また,イ号物件説明書でいう初期画面の画面情報は「遠隔サーバー」や「取り外し可能なメモリ・デバイス」から与えられるものではない。したがって,イ号物件とされるiPhoneは構成要件Cを充足しない。

イ.構成要件Dについて
イ号物件における「第1のコンテンツ」はイ号物件説明書の説明のとおり「初期画面」とする。初期画面の表示状態においてiPhoneは音声やビデオの入力を受け付けることはなく,相手方の応答により通話が開始されるまでiPhoneのカメラによって通話者の顔の画像が認識・入力されることはない。そして,通話が開始され顔画像が入力可能となった状態では既に初期画面は消えているから,顔画像が操作者により調節された時間的関係に従って初期画面の提示に時間的に重なって入力されることはあり得ない。したがって,イ号物件とされるiPhoneは構成要件Dを充足しない。

ウ.構成要件Eについて
スカイプはP2P通信を前提としているから,スカイプにおいてビデオ通話を行った場合であっても,ビデオ通話で相手方に送信されるべき音声・映像はネットワーク上のノードを介して相手方の端末に送信されるのであって,特定のサーバーへ送信されることはない。また,第2のコンテンツが送信される遠隔サーバーは第1のコンテンツをハンドヘルド装置に与えることが可能なサーバーでなければならないところ,第1のコンテンツである初期画面をiPhoneに対して与えることが可能なサーバーは存在しないのであるから,どのようなインターネットサーバーを想定しようとも,イ号物件とされるiPhoneは構成要件Eが充足されることはない。

エ.構成要件Fについて
構成要件Fは遠隔サーバーの動作を規定しているが,スカイプの動作においてこのようなサーバーによる動作はあり得ず,また,イ号物件とされるiPhoneはハンドヘルド装置であって遠隔サーバーとして機能することはないから,構成要件Fが充足されることはない。また,イ号物件説明書では,「前記操作者により決定された前記関係を保って」との要件が,イ号物件の何に相当するのか特定されていない。更に,第1のコンテンツは「初期画面」であり,第2のコンテンツは「顔画像」であるところ,イ号物件では決定された(時間的)関係を保って配置された初期画面及び顔画像を表す更なる表現を送信していない。初期画面は発呼者に固有の情報であって,そのような固有の情報が遠隔サーバーに格納され,相手方に提供されることは一般常識から考えてもあり得ない。また,スカイプを使用してビデオ通話を行った場合,画面に表示されるのは通話画面であって,初期画面の情報が表示されることはない。したがって,イ号物件とされるiPhoneは構成要件Fを充足しない。

(3)被請求人は,均等に関し,イ号物件が充足しない本件特許発明の構成要件C,D,E,Fは,本件特許明細書の記載から見て,本件特許発明の本質的部分であるから,イ号物件は本件特許発明と均等ではない旨主張している。


第5 対比及び判断
1.イ号物件の「スカイプ」に関して
イ号物件説明書の説明によれば,請求人は,「スカイプ・アプリケーションがインストールされたiPhone」が,本件特許発明の技術的範囲に属すると主張していると解される。
しかしながら,アップルストアやインターネットウェブ上,あるいはソフトバンク,KDDI及びNTTドコモなどの通信キャリアサービス提供会社などの代理店を通じて販売している「iPhone」にスカイプ・アプリケーションがインストールされていることを認めるに足る証拠は明らかにされていない。
一方,スカイプのホームページ(https://skype.com/ja)によれば,スカイプはMicrosoft社の一事業部門であって,同社が提供するアプリケーションであることが認められる。そして,iPhoneでスカイプを利用するには,ユーザーがスカイプのホームページにアクセスし,使用許諾を得た上で,スカイプのアプリケーションプログラムをiPhoneにダウンロードしてインストールしなければならないことは明らかである。
すなわち,イ号物件である「iPhone」自体は,いわば汎用コンピュータに相当するものでしかなく,スカイプ・アプリケーションがインストールされていない「iPhone」は,スカイプ・アプリケーションにかかる動作をなすことはないと認められる。

2.構成要件の対比
(1)構成要件Aについて
イ号物件である「iPhone」は,ディスプレイ,操作者からの入力を受けるスイッチ配列を備える入力手段,無線送信を行う手段,iPhoneの動作を制御する制御手段を備えることは明らかであるから,構成要件Aを充足する。

(2)構成要件Bについて
本件特許明細書の【0030】,【0048】の記載によれば,ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,ディスプレイを通じて表示される,その操作に関する情報は,「操作者により入力された電話番号の通常の表示」や処理中に操作者を案内するプロンプトや他の情報を含むものと認められるところ,iPhoneシリーズの各端末装置は少なくとも操作者により入力された電話番号を表示することは行われており,当該動作は制御手段で実行可能なプログラムによりなされているといえるから,イ号物件である「iPhone」は構成要件Bを充足する。

(3)構成要件Cについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Cの「第1のコンテンツ」に相当するイ号物件の構成は,「例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときに表示されるスカイプの稼働状況及び更新しようとする相手方がオンライン状態であることを示す初期画面」とされているが,スカイプ・アプリケーションをインストールしていない販売時の「iPhone」には当該初期画面が存在しないことは明らかであり,また,販売時の「iPhone」における「第1のコンテンツ」に相当するものは明らかにされていない。
また,イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Cの「遠隔サーバー」に相当するイ号物件の構成は,「iPhoneに内蔵された3G/LTE回線またはWiFiを通じてAppleや電話会社などが手配する遠隔サーバー」であるが,仮にスカイプ・アプリケーションがインストール済みであるとしも,スカイプはサーバー・クライアントシステムではなくP2P通信を前提とするものであることに鑑みれば,スカイプにおいて第1のコンテンツが遠隔サーバーから与えられることはないはずである。
また,「第1のコンテンツ」が「スカイプの稼働状況及び更新しようとする相手方がオンライン状態であることを示す初期画面」であるならばリアルタイム性が必須であることから「取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる」こともないはずである。
更に,FacetimeはiPhone4以降のモデルで,iMessageはiOS5以降で動作するモデル(iPhone4S以降)で,それぞれ販売時において内蔵アプリケーションとして予めインストールされていると推察されるが,イ号物件説明書ではこれらのアプリケーションについて言及していないし,本件判定請求のイ号物件であるiPhoneはこれらのモデルより前のモデルも含むものである。したがって,Facetime,iMessageの存在を考慮しても,イ号物件である「iPhone」における「第1のコンテンツ」,「遠隔サーバー」に相当するものは確認できない。
したがって,イ号物件である「iPhone」が構成要件Cを充足するということはできない。

(4)構成要件Dについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Dの「第2のコンテンツ」と「少なくとも1つの受信者の識別子」に相当するイ号物件の構成は,「例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにiPhoneのカメラによって認識・入力される自分の顔の画像」と「例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにその相手方を選択する操作をしたときに認識される相手方の識別子」とされているが,スカイプ・アプリケーションをインストールしていない販売時の「iPhone」には,例示された当該「第2のコンテンツ」も「スカイプ名」も存在しないことは明らかである。また,販売時の「iPhone」における「第2のコンテンツ」,「受信者の識別情報」に相当するものは明らかにされていない。
また,上述のとおり,Facetime,iMessageは,iPhoneは一部のモデルで販売時において内蔵アプリケーションとして予めインストールされていると推察されるが,イ号物件説明書ではこれらのアプリケーションについて言及していないし,本件判定請求にイ号物件であるiPhoneはこれらのモデルより前のモデルも含むものである。そして,甲第2号証によると少なくともiPhone3G以前のモデルに前面カメラが搭載されているとは認められないから,ユーザーが最初に相手方にコールするときにiPhoneのカメラによって認識・入力される自分の顔の画像である「第2のコンテンツ」を,どのようにして「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる」ように入力し得るのか不明である。したがって,Facetime,iMessageの存在を考慮しても,イ号物件である「iPhone」における「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ」「を前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」に相当するものは確認できない。
更に,イ号物件説明書によると「第1のコンテンツ」は「スカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときに表示されるスカイプの稼働状況及び更新しようとする相手方がオンライン状態であることを示す初期画面」であり,「第2のコンテンツ」は「スカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにiPhoneのカメラによって認識・入力される自分の顔の画像」であるが,イ号物件である「iPhone」において操作者により決定された(時間的)関係に従って初期画面の提示に時間的に重なる顔画像が入力デバイスを通じて与えられることは確認できない。
したがって,イ号物件である「iPhone」が構成要件Dを充足するということはできない。

(5)構成要件Eについて
イ号物件説明書によると,本件特許発明の構成要件Eの「前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に」に相当するイ号物件の構成は,「無線チップ経由で,iPhoneから空間的に離間した遠隔サーバーに対して,例えばスカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにその相手方を選択する操作をしたときに認識される相手方の識別子及びiPhoneのカメラによって認識・入力されるユーザーの顔の画像(を送る)と共に」とされているが,スカイプ・アプリケーションをインストールしていない販売時の「iPhone」がスカイプに係る当該動作をなすことはない。
また,本件特許発明の「遠隔サーバー」は,本件特許明細書によれば,「サーバー30」に当たるものであり,記憶デバイス33等に記憶された第1のコンテンツ(バックグランドミュージック)をハンドヘルド装置に与え(【0032】),ハンドヘルド装置から第2のコンテンツ(操作者コンテンツ)を受け取り(【0034】),記憶デバイス33等に別々に記憶された第1のコンテンツ,第2のコンテンツ,時間的関係の指標に基づいて,第1のコンテンツと第2のコンテンツがこれら2つのコンテンツの間の時間的関係を実質的に保存する方式で組み合わせられたメッセージを操作者又は受信者に送信する(【0021】,【0036】,【0041】,【0043】)ものであるが,イ号物件説明書でいう「iPhoneに内蔵された3G/LTE回線またはWiFiを通じてAppleや電話会社などが手配する遠隔サーバー」がこのような動作をなすことは確認できない。
また,スカイプはサーバー・クライアントシステムではなくP2P通信を前提とするものであるから,スカイプにおいてサーバーがスカイプに係る特定の機能をなすことは考えられず,iPhoneがスカイプ以外の動作において電話会社などが手配する遠隔サーバーにアクセスすることはあるにせよ,当該遠隔サーバーがスカイプにおける動作をなすとはいえない。
すなわち,イ号物件説明書においてハンドヘルド装置が第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送る先である「遠隔サーバー」とされる「iPhoneに内蔵された3G/LTE回線またはWiFiを通じてAppleや電話会社などが手配する遠隔サーバー」は,構成要件C及びFの機能をなす本件特許発明の「遠隔サーバー」に相当するとはいえない。
したがって,イ号物件である「iPhone」は構成要件Eを充足しない。

(6)構成要件Fについて
上記(3)?(5)で述べたとおり,スカイプ・アプリケーションをインストールしていない販売時の「iPhone」には,例示された「第1のコンテンツ」及び「第2のコンテンツ」は存在しないから,送信されるべき「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」も存在しないはずである。また,Facetime,iMessageの存在を考慮しても,初期画面である「第1のコンテンツ」と操作者の顔画像である「第2のコンテンツ」とが操作者により決定された関係を保って配置された「更なる表現」なるものは,イ号物件である「iPhone」において確認することはできない。
また,本件特許発明の構成要件Fの「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」とは,本件特許明細書の開示によれば,第1のコンテンツと当該第1のコンテンツに対して時間的関係を保って配置された第2のコンテンツとの双方を含むメッセージと理解されるが,上記(3),(5)で述べたように,イ号物件説明書でいう「iPhoneに内蔵された3G/LTE回線またはWiFiを通じてAppleや電話会社などが手配する遠隔サーバー」がこのようなメッセージを送信することは確認できない。
更に,本件特許発明の構成要件Bも併せて考慮すれば,ハンドヘルド装置が備える「処理回路で実行可能なプログラム」が遠隔サーバーに対して構成要件Fの「この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させる」なる動作を「させる」ようにするとも解されるが,「iPhone」が販売時に備えているプログラムが遠隔サーバーに対してそのような動作をさせることは確認できない。
したがって,イ号物件である「iPhone」は構成要件Fを充足しない。

3.目的・効果の検討
本件特許発明の目的は,「第2」の項の「2」の項で述べたとおり,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といった聴覚的又は視覚的コンテンツを,個人がセルラーフォンのようなモバイル装置を用いて形成及び分配できるようにし,それを友人らと共有することを可能とすることである。
一方,イ号物件説明書の説明によれば,「第1のコンテンツ」は「ユーザーが最初に相手方にコールするときに表示されるスカイプの稼働状況及び更新しようとする相手方がオンライン状態であることを示す初期画面」であり,「第2のコンテンツ」は「スカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにiPhoneのカメラによって認識・入力される自分の顔の画像」であるから,「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」は視覚的コンテンツと言い得るものの,ポップカルチャーの重要な部分である音楽及び動画といったコンテンツとはいえない。
また,受信者が受信する前記「更なる表現」に含まれる「第1のコンテンツ」は,受信者にとっては,操作者が最初に自分にコールするときに操作者に対して初期画面として表示される自分がオンライン状態であることを示すものであるから,そのような「第1のコンテンツ」を操作者と受信者とが共有する意義は見いだせない。また,本件特許明細書の開示によれば「操作者により決定された関係」とは「時間的関係」であるが,同様の理由で,「更なる表現」が「操作者により決定された関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す」ものであることの意義も見いだせない。
そして,『時間的関係を保って配置された「ユーザーが最初に相手方にコールするときに表示されるスカイプの稼働状況及び更新しようとする相手方がオンライン状態であることを示す初期画面」及び「スカイプでユーザーが最初に相手方にコールするときにiPhoneのカメラによって認識・入力される自分の顔の画像」を表すメッセージ』をハンドヘルド装置が形成・分配できたところで,本件特許発明の目的・効果を達成し得るものでないことは明らかである。

4.均等に関して
均等と判断するには,以下(i)?(v)の5要件を全て満たすことが必要である。
(i) 特許請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が発明の本質的な部分ではない(発明の本質的な部分)。
(ii) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する(置換可能性)。
(iii) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが,イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである(置換容易性)。
(iv) イ号が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に遂行できたものではない(自由技術の除外)。
(v) イ号が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない(禁反言:出願等の経緯の参酌)。
しかしながら,上記1?3のとおり,少なくとも上記(i),(ii)の要件を満たさないことが明らかであるから,他の要件を判断するまでもなく,均等とはいえない。

以上のとおりであるから,イ号物件である「iPhone」は本件特許発明の技術的範囲に属しない。


第6 むすび
以上のとおりであるから,イ号物件説明書に示されるイ号物件である「iPhone」は,本件特許に係る発明の構成要件を具備しないから,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
判定日 2014-04-02 
出願番号 特願2008-266432(P2008-266432)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司戸次 一夫  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
田中 庸介
登録日 2012-07-06 
登録番号 特許第5033756号(P5033756)
発明の名称 実時間対話型コンテンツを無線交信ネットワーク及びインターネット上に形成及び分配する方法及び装置  
代理人 大塚 康徳  
代理人 江嶋 清仁  
代理人 野村 吉太郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大戸 隆広  
代理人 坂田 恭弘  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ