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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1287059
審判番号 不服2011-22682  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-20 
確定日 2014-04-23 
事件の表示 特願2008-532745「電子文書の評価を取得する方法及び電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日国際公開、WO2007/039498、平成21年 3月12日国内公表、特表2009-510577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
1.手続の経緯の概要
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2006年9月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年10月3日、欧州特許庁、2005年10月14日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年3月26日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、平成20年5月22日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面の翻訳文が提出されると共に、同日付けで平成19年7月10日付けの特許協力条約第34条に基づく補正の翻訳文が提出され、さらに同日付けで審査請求がなされ、平成22年11月10日付けで拒絶理由通知(平成22年11月15日発送)がなされ、平成23年2月10日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、平成23年6月21日付けで拒絶査定(平成23年6月24日謄本送達、発送)がなされ、平成23年10月20日付けで手続補正書が提出されると共に、同日付けで審判請求がされ、平成23年11月15日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成24年7月23日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成24年7月27日発送)がなされ、これに対して平成24年10月23日付けで、特許すべきものであるとの審決がなされない場合には本願発明を説明するための面接を希望する旨の回答書が提出され、これに対して平成25年5月16日の電話応対により面接ではなく審尋とする了解が得られたため、平成25年5月17日付けで審判官の心証に対する意見を求める旨の審尋(平成25年5月20日発送)がなされ、これに対して平成25年8月12日付けで補正案を含む回答書が提出されている。

2.補正の内容
(1)平成23年2月10日付け手続補正
上記平成23年2月10日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正するものである。
「 【請求項1】
少なくとも一つの電子文書の評価を取得する方法であって、
電子装置(110)が第1の電子文書を取得する工程であって、該第1の電子文書は少なくとも第2の電子文書への少なくとも一つの参照を含む工程と、
前記電子装置(110)が前記第1の電子文書から前記第2の電子文書への前記参照を検索する工程と、
前記電子装置(110)が前記検索された参照に関連付けられた前記第2の電子文書の評価の要求をサーバ(130)に送信する工程と、
前記電子装置(110)が前記評価の結果を含む応答を前記サーバ(130)から受信する工程と
を備える電子文書の評価を取得する方法。
【請求項2】
前記検索する工程は、前記第1の電子文書から前記参照を抽出する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項3】
前記検索された参照に関連付けられた前記電子文書の前記評価に影響を与えるために前記電子装置(110)がコンテキストデータを前記要求に組み込む工程をさらに備える請求項1又は2に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項4】
前記電子装置(110)が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程をさらに備える請求項1乃至3の何れか1項に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項5】
前記取得する工程の前に、前記電子装置(110)を備えるサービスプロバイダ・サーバ(440)が、前記第1の電子文書を電子機器(410)へ返信することの要求を該電子機器(410)から受信する工程を備える請求項1乃至4の何れか1項に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項6】
前記統合する工程の後に、前記サービスプロバイダ・サーバ(440)が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを前記電子機器(410)に送信する工程を備える請求項5に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項7】
電子装置(110)に、請求項1乃至4の何れか1項に記載の電子文書の評価を取得する方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
少なくとも一つの電子文書の評価を取得する電子装置(110)であって、
第1の電子文書を取得するように構成された取得部(111)であって、該第1の電子文書は少なくとも第2の電子文書への少なくとも一つの参照を含む取得部(111)と、
前記第1の電子文書から前記第2の電子文書への前記参照を検索し、
前記検索された参照に関連付けられた前記第2の電子文書の評価の要求をサーバ(130)に送信し、
前記評価の結果を含む応答を前記サーバ(130)から受信する
ように構成された処理部(112)と
を備える電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項9】
前記処理部(112)は、前記第1の電子文書から前記参照を抽出するように構成されたことを特徴とする請求項8に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項10】
前記要求は、前記検索された参照に関連付けられた前記電子文書の前記評価に影響を与えるためのコンテキストデータを備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項11】
前記処理部(112)は、前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合するように構成されたことを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項12】
前記電子装置(110)は、前記第1の電子文書を電子機器(410)に返信することの要求を該電子機器(410)から受信するように構成されたことを特徴とする請求項8乃至11の何れか1項に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項13】
前記電子装置(110)は、前記第1の電子文書と前記評価の結果とを前記電子機器(410)に送信するように構成されたことを特徴とする請求項12に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項14】
請求項8乃至11の何れか1項に記載の電子装置(110)を備える移動体端末(210)。
【請求項15】
前記移動体端末は、通信装置、携帯用若しくはハンドヘルド型移動無線通信装置、移動体無線端末、携帯電話、ページャ、コミュニケータ、電子手帳、スマートフォン、又はコンピュータであることを特徴とする請求項14に記載の移動体端末。
【請求項16】
請求項8乃至13の何れか1項に記載の電子装置(110)を備えるサーバ(440)。」

(2)平成23年10月20日付け手続補正
上記平成23年10月20日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正するものである。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
少なくとも一つの電子文書の評価を取得する方法であって、
電子装置(110)が第1の電子文書を取得する工程であって、該第1の電子文書は少なくとも第2の電子文書への少なくとも一つの参照を含む工程と、
前記電子装置(110)が前記第1の電子文書から前記第2の電子文書への前記参照を検索する工程と、
前記電子装置(110)が前記検索された参照に関連付けられた前記第2の電子文書の評価の要求をサーバ(130)に送信する工程と、
前記電子装置(110)が前記評価の結果を含む応答を前記サーバ(130)から受信する工程と、
前記取得した第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるように、前記電子装置(110)が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程と
を備える電子文書の評価を取得する方法。
【請求項2】
前記検索する工程は、前記第1の電子文書から前記参照を抽出する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項3】
前記検索された参照に関連付けられた前記電子文書の前記評価に影響を与えるために前記電子装置(110)がコンテキストデータを前記要求に組み込む工程をさらに備える請求項1又は2に記載の電子文書の評価を取得する方法。
【請求項4】
電子装置(110)に、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電子文書の評価を取得する方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項5】
少なくとも一つの電子文書の評価を取得する電子装置(110)であって、
第1の電子文書を取得するように構成された取得部(111)であって、該第1の電子文書は少なくとも第2の電子文書への少なくとも一つの参照を含む取得部(111)と、 前記第1の電子文書から前記第2の電子文書への前記参照を検索し、
前記検索された参照に関連付けられた前記第2の電子文書の評価の要求をサーバ(130)に送信し、
前記評価の結果を含む応答を前記サーバ(130)から受信する
ように構成された処理部(112)と
を備え、
前記処理部(112)は、前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合し、前記取得した第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるようにする
ことを特徴とする電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項6】
前記処理部(112)は、前記第1の電子文書から前記参照を抽出するように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項7】
前記要求は、前記検索された参照に関連付けられた前記電子文書の前記評価に影響を与えるためのコンテキストデータを備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の電子文書の評価を取得する電子装置(110)。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか1項に記載の電子装置(110)を備える移動体端末(210)。
【請求項9】
前記移動体端末は、通信装置、携帯用若しくはハンドヘルド型移動無線通信装置、移動体無線端末、携帯電話、ページャ、コミュニケータ、電子手帳、スマートフォン、又はコンピュータであることを特徴とする請求項8に記載の移動体端末。」

第2.平成23年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年10月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成23年10月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、上記第1.2.(1)記載の特許請求の範囲から、上記第1.2.(2)記載の特許請求の範囲に補正しようとするものである。
つまり、本件補正は請求項1に「前記取得した第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるように、前記電子装置(110)が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程」との記載を追加する補正を含むものである。

2.新規事項について
本件補正は、上記1.のとおり「第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する」との事項を限定することを含むものである。
しかし、本願の国際特許出願の翻訳文(以下、「翻訳文」という。)には、平成23年10月20日付けの審判請求書において補正の根拠とされている段落【0038】に「取得した電子文書を表示する」と記載され、図1および対応する発明の詳細な説明には、電子装置(110)は、取得部(111)、処理部(112)およびメモリ装置(113)から構成されていることが記載されているものの、電子装置(110)が電子文書を表示する構成を備えるとの記載はなされておらず、またそのことは翻訳文から自明な事項でもない。
よって、上記補正を含む本件補正は、翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

3.独立特許要件
上記2.のとおり本件補正は新規事項を含むものであるが、仮に本件補正が上記1.のとおり「前記取得した第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるように、前記電子装置(110)が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程」を追加することによる限定的減縮を目的としたものであったとして、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討することとする。

3-1.本件補正発明
本件補正発明は、上記第1.2(2)において【請求項1】として記載したとおりのものである。

3-2.記載不備
上記2.において新規事項であるとした「第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する」との事項は、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていない。また、該事項が、本来は「第1の電子文書を電子機器(410)が表示する」と記すべきものと仮定した場合には、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、また特許を受けようとする発明が明確でない。
また、「第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する」との事項が、本来は「第1の電子文書を電子装置(110)が他の装置に表示させる」と記すべきものと仮定した場合には、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、また特許を受けようとする発明が明確でない。
よって、請求項1の記載は、特許法第36条第1項および第2項の要件を満たしていないので、この発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-3.進歩性
上記3-2.で検討した「第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する」との事項が、「第1の電子文書を電子機器(410)が表示する」または「第1の電子文書を電子装置(110)が他の装置に表示させる」との事項を意味すると解釈できたとしても、下記に示すとおり、依然として原審の引用文献記載の発明により容易に発明できたものである。

3-3-1.引用文献
本願の第1国出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年11月10日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>
特開平11-328212号公報(平成11年11月30日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項5】他の文書の所在を示すリンク情報の付加された文書をユーザ端末からの当該文書の閲覧要求に応じてネットワークを介して取得し、その取得した文書をユーザ端末に提供するようにした文書閲覧制御システムでのコンピュータに行なわせるためのプログラムを格納した記録媒体において、
ユーザ端末からの文書の閲覧要求に応じて当該文書をユーザ端末に提供する際に、当該文書中に存在するリンク情報を抽出するリンク抽出ステップと、
文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報との対応関係を示す評価情報テーブルを参照して、リンク抽出ステップにて抽出されたリンク情報に対応した評価情報に依存する表現情報を生成する表現情報生成ステップと、
表現情報生成手段にて生成された表現情報をリンク情報と関連づけて当該文書に含めてユーザ端末に提供する制御ステップとを有するプログラムを格納した記録媒体。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0036】このように各リンク情報にて所在が特定される他の文書の引用部分の色表示がその評価値に基づいて変更されたWeb文書(B)を受信したユーザ端末100では、このWeb文書(B)が表示画面上に開かれる。このとき、各リンク情報にて所在が特定される他の文書の引用部分(当該他の文書の説明文)は、当該他の文書の評価値に応じた色にて表示される(color(C'))。ユーザは、この色を見て、引用部分が指す他の文書の大まかな評価を行なうことができる。」

<引用文献2>
特開2002-236700号公報(平成14年8月23日出願公開)

<引用文献記載事項2-1>
「【請求項3】 空間に配置するウェブ情報のページリストおよび任意本の空間軸を指定された、利用者端末からの空間生成リクエストを空間提供サーバが受信した時には、新規に空間識別子を払い出し、当該ページリスト上のURL毎に、当該空間軸に対応する評価情報の取得リクエストを評価情報提供サーバに送信し、該評価情報提供サーバが該リクエストを受信した時には、評価情報データベースを検索し、当該ページに関する評価情報を取得し、該評価情報を前記空間提供サーバに送信し、当該評価情報に対する課金を行ない、空間提供サーバが該評価情報を受信した時には、該評価情報から部分空間情報を生成し、前記空間データベースに投入し、利用者端末に当該空間識別子を送信する、請求項1または2に記載の広域空間提供サービス方法。」

3-3-2.引用発明の認定
(1)引用文献記載事項1-1の「文書閲覧制御システムでのコンピュータに行わせるためのプログラム・・・ステップと・・・ステップと・・・ステップとを有するプログラム・・・」との記載より、引用文献1には、文書閲覧制御システムのコンピュータが各ステップを実行する方法が記載されているから、「文書閲覧制御システムにおける方法」が記載されているものと言える。

(2)引用文献記載事項1-1の「他の文書の所在を示すリンク情報の付加された文書をユーザ端末からの当該文書の閲覧要求に応じてネットワークを介して取得」するとの記載から、引用文献1には「他の文書の所在を示すリンク情報の付加された文書を取得するステップ」が記載されているものと言える。

(3)引用文献記載事項1-1の「他の文書の所在を示すリンク情報の付加された文書」および「文書中に存在するリンク情報を抽出するリンク抽出ステップ」との記載より、引用文献1には「文書中に存在する他の文書の所在を示すリンク情報を抽出するリンク抽出ステップ」が記載されていると言える。

(4)引用文献1には引用文献記載事項1-1より「文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報との対応関係を示す評価情報テーブルを参照して、リンク抽出ステップにて抽出されたリンク情報に対応した評価情報に依存する表現情報を生成する表現情報生成ステップ」が記載されている。

(5)引用文献記載事項1-1の「表現情報生成手段にて生成された表現情報をリンク情報と関連づけて当該文書に含めてユーザ端末に提供する制御ステップ」との記載における「表現情報生成手段」は「表現情報生成ステップ」の誤記と認められ、また引用文献記載事項1-2の「各リンク情報にて所在が特定される他の文書の引用部分の色表示がその評価値に基づいて変更されたWeb文書(B)を受信したユーザ端末100では、このWeb文書(B)が表示画面上に開かれる。」との記載から、ユーザ端末に提供した文書は表示するためのものであることは明らかであるから、引用文献1には「表現情報生成ステップにて生成された表現情報をリンク情報と関連づけて当該文書に含めてユーザ端末に表示するために提供する制御ステップ」が記載されているものと言える。

(6)上記(4)より「文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報」を評価情報テーブルから「取得する」ことは明らかであるから、上記(1)も考慮すると、引用文献1には「文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報を取得する文書閲覧制御システムにおける方法」が記載されているものと言える。

(7)よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報を取得する文書閲覧制御システムにおける方法であって、
他の文書の所在を示すリンク情報の付加された文書を取得するステップと、
文書中に存在する他の文書の所在を示すリンク情報を抽出するリンク抽出ステップと、
文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報との対応関係を示す評価情報テーブルを参照して、リンク抽出ステップにて抽出されたリンク情報に対応した評価情報に依存する表現情報を生成する表現情報生成ステップと、
表現情報生成ステップにて生成された表現情報をリンク情報と関連づけて当該文書に含めてユーザ端末に表示するために提供する制御ステップと、
からなる方法。

3-3-3.対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明の「文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報を取得する文書閲覧制御システムにおける方法」は、少なくとも一つの文書の評価を取得する方法であることは明らかであるから、本件補正発明と同様に「少なくとも一つの電子文書の評価を取得する方法」といえる。

(2)引用発明の「リンク情報の付加された文書」および「他の文書」は、本件補正発明の「第1の電子文書」および「第2の電子文書」にそれぞれ相当し、引用発明の「他の文書の所在を示すリンク情報の付加された文書を取得するステップ」は、本件補正発明における「第1の電子文書を取得する工程であって、該第1の電子文書は少なくとも第2の電子文書への少なくとも一つの参照を含む工程」に相当するものである。

(3)引用発明における「文書中に存在する他の文書の所在を示すリンク情報を抽出するリンク抽出ステップ」は、本件補正発明における「前記第1の電子文書から前記第2の電子文書への前記参照を検索する工程」に相当するものである。

(4)引用発明における「文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報との対応関係を示す評価情報テーブルを参照して、リンク抽出ステップにて抽出されたリンク情報に対応した評価情報に依存する表現情報を生成する表現情報生成ステップ」は、リンク情報に対応した文書の評価を取得していることから、本件補正発明における「前記電子装置(110)が前記検索された参照に関連付けられた前記第2の電子文書の評価の要求をサーバ(130)に送信する工程と、前記電子装置(110)が前記評価の結果を含む応答を前記サーバ(130)から受信する工程」とは、「前記第2の電子文書の評価を取得する工程」である点において共通するものである。

(5)本件補正発明における「前記取得した第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるように、前記電子装置(110)が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程」との記載について、上記2.で示したように「第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する」ことは新規事項であり、本願の発明の詳細な説明における実施形態の説明等とも整合しないものであるところ、この記載は「第1の電子文書を前記電子装置(100)が(他の装置に)表示させる」ことを表現しようとした記載であると解釈することができる。
すると、引用発明における「文書の所在を表すリンク情報と対応する文書の評価情報との対応関係を示す評価情報テーブルを参照して、リンク抽出ステップにて抽出されたリンク情報に対応した評価情報に依存する表現情報を生成する表現情報生成ステップ」および「表現情報生成手段にて生成された表現情報をリンク情報と関連づけて当該文書に含めてユーザ端末に表示するために提供する制御ステップ」における「表現情報」とは評価の結果を示したものであると言える。すなわち、引用発明では、評価の結果をリンク情報と関連づけて当該文書に含めてユーザ端末に表示するために提供していることから、上記「表現情報生成ステップ」および「制御ステップ」は、本件補正発明の「前記取得した第1の電子文書を前記電子装置(110)が表示する際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるように・・・前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程」に相当するものである。

(6)引用発明における上記(2)ないし(5)で示したステップの動作主体は、「文書閲覧制御システム」であり、本件補正発明における「電子装置(110)」に相当する。

(7)よって、本件補正発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「少なくとも一つの電子文書の評価を取得する方法であって、
電子装置が第1の電子文書を取得する工程であって、該第1の電子文書は少なくとも第2の電子文書への少なくとも一つの参照を含む工程と、
前記電子装置が前記第1の電子文書から前記第2の電子文書への前記参照を検索する工程と、
前記電子装置が前記第2の電子文書の評価を取得する工程と、
前記取得した第1の電子文書を前記電子装置が表示させる際に前記第2の電子文書の前記評価の結果が示されるように、前記電子装置が前記第1の電子文書と前記評価の結果とを統合する工程と
を備える方法。」

<相違点>
本件補正発明においては、電子装置が、第2の電子文書の評価の要求をサーバ(130)に送信し、前記評価の結果を含む応答を前記サーバ(130)から受信しているのに対し、引用発明においては、文書閲覧制御システムが自ら有する評価情報テーブルを参照して評価を行っている点。

3-3-4.判断
以下、上記相違点について検討する。
引用文献2には引用文献記載事項2-1より、「ウェブ情報のページリスト上のURL毎に、評価情報の取得リクエストを評価情報提供サーバに送信し、該評価情報提供サーバが評価情報データベースを検索し、当該ページに関する評価情報を取得し、該評価情報を送信」することが記載されている。
引用発明と、引用文献2に記載された発明は、いずれもウェブ情報の評価に関する技術で共通するものであることから、引用発明における評価の実施主体として、引用文献2に記載された評価情報提供サーバを採用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものである。
してみると、本件補正発明の構成は引用発明および引用文献2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、上記相違点に係る構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであり格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明および引用文献2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3-5.小結
以上のとおり、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、平成25年8月12日付けの回答書中の補正案の内容についても参酌したが、上記判断を覆すほどのものではない。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本件審判請求の成否について

1.手続の経緯、本願発明の認定
本願の手続の経緯は上記第1.記載のとおりのものであり、更に、平成23年10月20日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
したがって、本願の特許請求の範囲は、上記第1.2.(1)に記載したとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)はそこに【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.先行技術・引用発明の認定
上記第2.3-2.(1)で示したとおり、本願の第1国出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年11月10日付けの拒絶理由通知において引用された引用文献1および引用文献2にはそれぞれ上記引用文献記載事項が記載されている。
そして、引用文献1には上記第2.3-3.で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
上記第2.3.で検討した本件補正発明は、本願発明に対し上記第2.3.で述べた限定的減縮をしたものであるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件をなくしたものに相当する。
すると、本願発明と引用発明との相違点は、上記第2.3-4.で検討した相違点と同様のものとなる。
そして、上記第2.3-5.に記載したとおり、上記引用発明および引用文献2に基づいて、上記相違点に係る構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものにすぎない。
したがって、本願発明は、上記引用発明および引用文献2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その第1国出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-25 
結審通知日 2013-11-29 
審決日 2013-12-10 
出願番号 特願2008-532745(P2008-532745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 貴孝  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 浜岸 広明
石井 茂和
発明の名称 電子文書の評価を取得する方法及び電子装置  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  

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