• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  G01N
審判 全部無効 特38条共同出願  G01N
管理番号 1287093
審判番号 無効2012-800026  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-03-14 
確定日 2014-05-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第3998184号発明「有精卵の検査法および装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3998184号に係る発明についての手続の概要は次のとおりである。

平成14年 9月 4日 特許出願
平成19年 8月17日 特許権の設定登録(請求項の数9)
平成20年10月16日 無効審判請求(無効2008-800209、 請求人)
平成21年 6月30日 無効審判審決
平成21年 8月 5日 無効審判審決の取消訴訟提起(平成21年(行 ヶ)第10213号)
平成22年 4月27日 無効審判審決取消訴訟判決
平成24年 3月14日 本件無効審判の請求(甲第1?46号証)
平成24年 4月12日 手続補正書
平成24年 4月19日 忌避申立書(請求人)
平成24年 5月10日 上申書(1)(請求人:資料1?8)
平成24年 5月31日 忌避の決定
平成24年 5月31日 上申書(2)(請求人:資料1?17)
平成24年 6月 7日 上申書(3)(請求人)
平成24年 8月31日 答弁書(乙第1?4号証、乙第5号証の1?5 、参考資料1?3)
平成24年 9月20日 上申書(4)(請求人)
平成24年11月 2日 審尋(当審)
平成24年12月 4日 回答書(請求人:参考資料1-1?1-2、参 考資料2?7)
平成24年12月 4日 弁駁書

第2 請求人の主張及び証拠方法
(1)請求人の主張
本件審判は、特許第3998184号は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、請求されたものであり、請求人は証拠方法として、審判請求書の甲第1号証?甲第46号証、平成24年5月10日付け上申書(1)の資料1?資料8、平成24年5月31日付け上申書(2)の資料1?資料17、及び平成24年12月4日付け回答書の参考資料1-1?1-2、参考資料2?7を提出し、審判請求書、上申書、弁駁書、及び回答書において、概ね次のとおり主張している。

(ア)特許無効理由について、本件特許はいわゆる冒認出願に対して付与された特許であるから、無効審判によって無効とすべき特許権である(特許法第123条第1項第6号、特許法第38条、特許法第18条の2第1項)とし、次の〔理由1〕?〔理由3〕を挙げている。

〔理由1〕
(a)本件特許出願の真の発明者は坪井條一郎であり、四国計測株式会社(本件特許権者)の従業員ではない。
その理由を、請求人が開発した「検卵装置」について、株式会社熊本アイディーエムに試作品の製作を委託し、2002年10月8日に坪井種鶏孵化場に提出された甲第38号証の「検卵装置の取扱説明書」で立証する。

(b)本件特許出願人は発明者の変更の手続補正書と同時に提出した「発明者相互の宣誓書」(甲第5号証の2と3参照)と、「発明者変更の理由を記載した書面」(甲第5号証の4参照)とによって、真の発明者は「四国計測」の従業員である林高義・三島靖史・大西英希・林亜希子の4名と、「阪大研究会」の研究員である安藤隆章・杉本裕一郎の2名を併せた6名による共同研究による「共同発明」の同宣誓に基づき「職権訂正」(甲第6号証参照)によって、本件特許出願の真の発明者と認定(甲第5号証5参照)されている。これは本件特許出願発明が四国計測と阪大研究所の「共同発明」であることを事実誤認されて、「発明者]と「特許出願人」であることを認めたものである。よって、この手続補正書(甲第4号証参照)は不受理処分にすべきものである。

〔理由2〕
(a)本件特許出願は、冒認出願により取得された特許権であることを甲第39号証によって立証する。
甲第39号証の検卵法は、本件発明者である坪井條一郎が開発して熊本アイディーが作成した試作品とともに、坪井種鶏孵化場に提出した内容、つまり、(甲第38号証の)説明書と全く同じものである。

(b)なお、甲第39号証の記載に基づいて、本件特許が「四国計測」と「阪大研究会」との共同開発、共同発明により収得した特許権であるとしているが、甲第39号証の「本研究をすすめるにあたり、評価サンプルや実験場所をご提供頂き、また、目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」旨の謝辞によって、本件特許は四国計測と阪大研究会の共同開発者でなく、共同発明者でもないことは明白であり、さらに、本件特許が四国計測ではないことは明らかである。

〔理由3〕
本件特許出願は、「四国計測」の従業員4名と「阪大研究会」の研究員2名との共同発明であるから、特許法第38条の規定により、四国計測のみで単独出願できないものであり、本件特許出願は特許法第123条第2項の特許無効審判により、本件特許は無効にすべきである。

(イ)手続取消理由及びその他の理由について
本件特許出願は、違法かつ無効な行政処分によって付与された特許であり、特許無効審判によって無効とすべき特許権である(特許法第33条第3項、特許法34条第1項、特許法第35条第1項)とし、手続取消理由については、次の〔理由1〕?〔理由4〕を挙げ、その他の理由には〔理由1〕?〔理由7〕を挙げている。

(イ-1)手続取消理由について
〔理由1〕
本願特許出願は出願後に、発明者を4名から6名に変更しているが、これを証明する証明書が提出されていないから、発明者変更の手続補正書を却下しなかったことは不適合な行政手続である。

〔理由2〕
本件特許の出願時の四国計測は、追加発明者、阪大研究所の特許を受ける権利の同意を受けていないから、甲第4号証の手続補正書(発明者の変更)は却下すべきものである。

〔理由3〕
本件特許出願人である四国計測は、特許出願前に、阪大研究所から特許を受ける権利を継承していないから、甲第4号証の手続補正書(発明者の変更)は却下すべきものである。

〔理由4〕
本件特許出願は四国計測の従業員と阪大研究所の所員との共同開発による職務発明であるから、定める「職務発明規定」又は「就業規制」などを定めることが義務つけられているが、本願特許出願は「職務発明認定書」が提出されていないので、職務発明であるかないかについて認定することができず無効な出願である。

(イ-2)その他の理由について
〔理由1〕
本件特許出願と請求人の特許出願(P2004-034746)は、同一発明でありながら、別の審査室の審査官により同一適用条文で拒絶理由を通知され、異なった判断をしており、このような結果は、どちらかが、専門外の審査官で審査されたものである。

〔理由2〕
請求人の特許出願は、国内優先権を主張しているが、正当な理由によらないで無効処分になっている。

〔理由3〕
請求人の特許出願は、2回の最後の拒絶理由通知があり2回手続補正したが認められず、拒絶査定になかった。これは部署の異なる審査官によって審査された結果である。

〔理由4〕本件特許出願のの追加発明者の住所が、「財団法人阪大微生物研究会観音寺研究所内」になっているが、正式には「財団法人阪大微生物研究会」であるから、宣誓書、譲渡書などに記載されている阪大研究会の名称・住所で記載されている書面は全て無効とすべきである。

〔理由5〕
本件特許の公開公報と登録公報の発明者野住所・氏名が正しいものではなく、しかも2回発行されていることは無効な公報である。

〔理由6〕
本件特許査定には、発送日が記載されていないので、有効な行政処分ではない。

〔理由7〕
本件特許審判事件の「審決」が送達されているのか、そのうち一部には書記官の「認証」がされておらずこの審決の効力に問題ある。

(2)証拠方法
ア 審判請求書
甲第 1号証 :特許調査報告(本件特許出願)
甲第 2号証 :特許原簿(本件特許権)
甲第 3号証 :特許願(本件特許出願の願書)
甲第 4号証 :手続補正書(本件特許出願の補正書)
甲第 5号証1 :手続補足書(本件特許出願の補足書)
甲第 5号証2 :宣誓書(本件発明者の宣誓書)
甲第 5号証3 :宣誓書(本件追加発明者の宣誓書)
甲第 5号証4 :発明者変更理由書面(本件特許出願人の代理人提出)
甲第 5号証5 :認定(本件特許出願人の担当者)
甲第 6号証 :職権訂正(本件特許出願の方式審査官)
甲第 7号証 :拒絶理由通知(本件特許出願の拒絶理由通知)
甲第 8号証1 :公開特許公報(本件特許出願の公開公報の表紙)
甲第 8号証2 :公開特許公報(本件特許出願の公開公報の表紙)
甲第 9号証 :特許査定(本願特許出願の特許査定)
甲第10号証 :審判請求(本件特許の無効審判請求書)
甲第11号証 :同副本通知(本件審判請求書の副本通知)
甲第12号証 :審判官指定(本件審判請求事件の審判官と書記官の指定 通知)
甲第13号証 :審判事件答弁書(本件審判請求事件の答弁書)
甲第14号証 :審判事件弁駁書(本件審判請求事件の弁駁書)
甲第15号証 :同副本通知(本件審判請求事件の弁駁書副本通知)
甲第16号証 :答弁書副本通知(本件審判請求事件の答弁書副本通知)
甲第17号証 :書面審理通知書(本件無効審判事件の書面審理通知)
甲第18号証 :書面審理通知書(同上通知書)
甲第19号証 :審理終結通知書(本件審判事件の審理終結通知)
甲第20号証 :上申書(本件審判請求人の上申書)
甲第21号証1 :特許出願一覧(四国計測工業の特許出願一覧)
甲第21号証2 :特許出願一覧(阪大微生物病研究会の特許出願一覧)
甲第22号証1 :審決(本件特許無効審判事件の審決)
甲第22号証2 :審決(本件特許無効審判事件の審決)
甲第22号証3 :審決(本件特許無効審判事件の審決)
甲第23号証1 :特許公報(本件特許公報の表紙)
甲第23号証2 :特許公報(本件特許公報の表紙)
甲第24号証 :特許調査報告(本件特許出願と関連坪井出願の調査)
甲第25号証 :特許願(本件特許出願と関連坪井出願)
甲第26号証1 :同上優先権主張無効の通知(委任状不備)
甲第26号証2 :同上通知(優先権主張無効の通知)
甲第26号証3 :同上手続補正書(委任状の提出と受付)
甲第26号証4 :同上返却通知(委任状不備により返却)
甲第26号証5 :同証明書(返却の証明書)
甲第26号証6 :同上手続補足書(委任状再提出)
甲第26号証7 :同通知書(委任状提出通知)
甲第26号証8 :同通知書(証明書の印鑑相違通知)
甲第26号証9 :同上手続補正書(印鑑変更届の補正書)
甲第26号証10:同上手続補足書(委任状提出の補足書)
甲第26号証11:同通知書(出願番号の記載通知)
甲第26号証12:同上手続補正書(委任状提出の補正書)
甲第26号証13:手続補足書(同上手続補正書の補足書)
甲第27号証 :拒絶理由通知書(本件坪井出願の拒絶理由通知)
甲第28号証 :同上手続補正書(同上表紙)
甲第29号証 :同上拒絶理由通知書(別件特許出願の最後通知)
甲第30号証 :同上手続補正書(同上の補正書)
甲第31号証 :同上拒絶査定(同上の拒絶査定)
甲第32号証 :同上審判請求書(同上の拒絶査定)
甲第33号証 :同上拒絶理由通知書(同上の拒絶理由通知)
甲第34号証 :同上手続補正書(同上の補正書)
甲第35号証 :同上上申書(審理状況確認の上申書)
甲第36号証 :同上審査官指定通知(同上担当審判官と書記官の氏名)
甲第37号証 :審決(同上審決の表紙)
甲第38号証 :取扱説明書(本件発明者坪井の委託会社の作成の説明書 )
甲第39号証 :有精卵検査法(四国計測の従業員発表の文献)
甲第40号証 :履歴事項全部証明書(四国計測工業の会社謄本)
甲第41号証 :履歴事項全部証明書(阪大微生物研究会の財団謄本)
甲第42号証 :手続事例集(特許庁発行の職務発明制度の手引き)
甲第43号証 :判決(知財高裁の審決取消請求事件の判決)
甲第44号証 :判決(東京地裁の行政処分無効確認請求事件の判決)
甲第45号証 :判決(知財高裁の行政処分無効確認請求事件の判決)
甲第46号証 :平成23年特許法改正(日本弁理士会作成資料)

イ 平成24年5月10日付け上申書(1)
資料1 :平成23年2月9日付乙号証の証拠説明書(2)
資料2 :平成23年5月11日付東京地方裁判所(民事部29部)提出の 上申書
資料3 :平成23年7月20日言渡の東京地方裁判所(民事第29部)の 判決
資料4 :平成23年12月8日付知的財産高等裁判所(第4部)提出の準 備書面(1)
資料5 :平成23年12月8日付知的財財高等裁判所(第4部)提出の答 弁書
資料6 :平成23年12月8日付知的財産高等裁判所(第4部)提出の上 申書
資料7 :平成24年2月14日付最高裁に対する「上告受理申立書」
資料8 :平成23年12月15日言渡の知的財産高等裁判所(第4部)の 判決

ウ 平成24年5月31日付け上申書(2)
資料1 :上告受理申立理由書(平成24年2月14日提出)
資料2 :上申書(平成24年5月10日提出)
資料3 :上申書(平成23年12月8日提出)
資料4 :忌避申立理由書(平成24年4月19日提出)
資料5 :準備書面(1)(平成23年12月8日提出)
資料6 :知財高裁の判決(平成23年12月15日言渡)
資料7 :控訴理由書(平成23年9月20日提出)
資料8 :上申書(3)(平成22年2月10日提出)
資料9 :特許調査(包袋)
資料10:特許調査(包袋)
資料11:登記謄本(平成22年11月24日付け)
資料12:登記謄本(平成21年7月24日付け)
資料13:ブログ(2010年10月28日付け)
資料14:代理人の経歴理由
資料15:新聞記事(平成24年5月17日朝刊)
資料16:パテント記事(2011年Vol.64)
資料17:AIPPI記事(2011年Vol.56)

エ 平成24年12月4日付け回答書
参考資料1-1:検卵機開発経過報告書
参考資料1-2:有精卵の検卵装置に関する経過説明
参考資料2 :請求人の上申書(1)
参考資料3 :請求人の審査経過対比一覧
参考資料4 :被告の証拠説明書(2)
参考資料5 :原告の準備書面(5)
参考資料6 :原告の上告受理申立理由書
参考資料7 :請求人提出の行政行為論の解釈

(3)証拠等の記載
(3-1)甲第38号証:取扱説明書(本件発明者坪井の委託会社の作成の説明書)
請求人が提出した甲第38号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与したものである。以下、同様である。)

(甲38-1)「坪井種鶏孵化場 殿
取扱説明書
検卵装置 」(表紙)

(甲38-2)「I 運転立ち上げ操作手順」(検卵装置取扱説明1?2頁)

(甲38-3)「II 自動運転の最終払出と停止
1.最終払出
自動運転継続により、最後のトレ-まで自動で払い出しできます。」(検卵装置取扱説明3頁)

(甲38-4)「III 手動操作 」(検卵装置取扱説明4?9頁)

(甲38-5)検卵装置附図書の「名称:全体図」、「図番0226-00(1)」には、卵のトレーが、01投入部、02整列部、03検査部(1)、03検査部(2)、04NG排出部、05良品供給(ピッチ送り部)、06二次検査部(1)、06二次検査部(2)、07取出し部の順で送られること、及び、03検査部(1)、03検査部(2)、06二次検査部(1)、06二次検査部(2)には、作業員が配置され、トレー上の卵を扱うことが描かれている。

(甲38-6)検卵装置附図書の「名称:検査部」、「図番0225-03(1)」には、検査部に光源(部品番号K62)を配置することが描かれている。

(3-2)甲第39号証:有精卵検査法(四国計測の従業員発表の文献)
請求人が提出した甲第39号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲39-1)「有精卵の検査手法
林 亜希子 大西 英希 林 高義 三島 靖史
四国計測工業株式会社」

(甲39-2)「3.システム構成
有精卵の検査業務を自動化するため、所定のパレットに気室側を上に向けて整列された卵を、搬送しながら、卵の内部状態をカメラで撮影し、その発育状態を検査する装置を開発した。図3に画像撮像部のシステム構成を示す。画像検出部の遮光性構造物内において、気室側から卵内部に光を照射し、内部に散乱した光を、カラーCCDカメラにて撮影し、画像処理装置にて発育状態を検査する。」(第2頁左欄第1?9行)

(甲39-3)「4.3 特徴量の計測
撮像した有精卵の画像4枚それぞれから、以下に示す特徴量を計測し、発育状態の判断材料とする。
4.3.1気室付近における出血の状態
気室と血管分布領域の境界にある出血の有無を判定するため、撮影した画像の輝度情報をもとに、出血の分布領域を検出し、領域内の濃度特性を計測する。図7に出血の分布領域の抽出方法を、図8にその領域における濃度特性を示す。計測した画像の輝度情報について、注目点とその近傍の濃度分布を比較し、濃度分布が急激に変化する部分を出血分布領域として抽出する。抽出した出血分布領域と、一定間隔で胎児側へシフトした領域との濃度差を特徴量として定義する。」(第2頁右欄第18行?第3頁左欄第2行)

(甲39-4)「4.3.2 気室付近における濃度勾配
気室と血管分布領域の境界の明瞭さを評価するため、計測した画像の輝度情報から、気室付近における濃度勾配を定量化する。図9に定量化の方法を示す。計測した画像の輝度情報について、予め設定した気室から胎児までの領域に着目し、領域内におけるY軸への最大濃度投影値を利用して、濃度勾配を計測する。図10に良卵と死卵それぞれについてY軸への最大濃度投影値をプロットした図を示す。」(第3頁左欄第3?12行)

(甲39-5)「4.3.3 血管分布領域の面積
血管分布領域が著しく狭い卵を検出するため、血管分布領域の面積を計測する。図11に血管分布領域の抽出方法を示す。撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出する。図12に、良卵と死卵それぞれについて、血管分布領域の代表例を示す。実線で囲まれた部分が血管分布領域として抽出された領域である。」(第3頁右欄第1?11行)

(甲39-6)「4.3.4 血管分布領域における血管の分布状況
血管の有無や発育状態を評価するため、血管分布領域における血管の分布状況を計測する。図13に血管部の濃度特性を示す。上の画像は、計測したRGB画像をL*a*b*表色系に変換後、a*成分の一部をコントラスト強調したもので、下のグラフは、画像上の横線で示した部分の濃度分布をプロットしたものである。図14に血管の抽出方法を示す。血管の抽出には、図14に示す差分フィルタを使用し、注目画素付近の濃度平均値とその外側の領域の濃度平均値とを比較し、濃度分布の凹部を、血管候補点として抽出する。垂直方向についても同様の処理を行う。抽出した候補点の集合を血管とし、その長さと分布範囲を計測する。図15に血管を抽出した結果を示す。画像中の白い線が、血管として抽出した部分である。」(第3頁右欄第12行?第4頁左欄第7行)

(甲39-7)「4.4 発育状態の判定
気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長、血管分布範囲などの計測結果をもとに、経験的に設定した判別式を用いて、良卵/死卵を判定する。」(第4頁右欄第1?5行)

(甲39-8)「7.謝辞
本研究をすすめるにあたり、評価サンプルや実験場所をご提供頂き、また、目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」(第4頁右欄第33?37行)

第3 被請求人の主張の概要
(1)被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と主張し、被請求人は証拠方法として、答弁書において、乙第1号証?乙第5号証の5、及び参考資料1?参考資料3を提出し、概ね次のとおり主張している。

(ア)特許無効理由について
〔理由1〕に対して
(1)甲第38号証は、第一次無効審判においては提出されていないが、第一次無効審判の甲第9号証(乙第1号証)と実質的に同じ証拠であり、「同一の事実」、「同一の証拠」による一事不再理の原則から、特許法第135条の規定により却下されるべきである。

(2)甲第38号証に記載された発明は、「目視によって、良否を行」う検卵装置であって、本件特許発明の「正常卵を自動判定」する「検査法」及びそれを実現するために「検査装置」とは異なる発明である。
よって、甲第38号証を根拠に本願特許出願の真の発明者が坪井條一郎であるとはいえない。

〔理由2〕に対して
(1)請求人は、甲第39号証に特許法第49条第7号の無効理由を主張しているが、請求人の提出した甲第39号証の「有精卵の検査手法」は、第1次無効審判で甲第10号証(乙第4号証)と「同一の証拠」であり、第1次無効審判審決では、この「有精卵の検査手法」を甲第10号証の2とし、甲第10号証の2に基づき無効理由5(特許法第49条第7号)の存否を判断しているから、請求人の理由2の主張は「同一の事実」及び「同一の証拠」に基づくものであり、特許法第135条に基づき却下されるべきである。

(2)甲第39号証は、四国計測工業株式会社の林亜希子、大西英希、林高義、三島靖史の4名により発表された文献であるから、甲第39号証の記載内容と本件特許発明が類似することからといって、甲第39号証を根拠に本件特許発明の発明者が坪井條一郎であるとの結論を結びつけることは不可能である。
なお、本件特許発明の発明者が、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子、安藤隆章、杉本裕一郎であることは、第一次無効審判で確定した事実であるし、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子の平成15年1月28日付け宣誓書(甲第2号証2)、平成15年1月24日付け宣誓書(甲第5号証3)、及び、安藤隆章、杉本裕一郎の特許を受ける権利の譲り受けを財団法人阪大微生物研究会観音寺研究所が放棄し、安藤孝弘、杉本裕一郎の相互の同意のもと被請求人が両名から特許を受ける権利を譲り受けて本特許に係る特許出願をしたものであるから、本件特許発明の発明者が、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子、林高義、安藤隆章が発明者であり、被請求人が特許権者であることは明らかであり、本件特許発明の発明者が請求人の坪井條一郎であるとの主張は成り立たない。

〔理由3〕対して
被請求人が「阪大研究会」の発明者から本件特許発明に係る特許を受ける権利を継承していたことは乙第5号証の4の「確認書」から明らかであり、請求人の理由の主張は成り立たない。

(イ)手続取消理由及びその他の理由について
(イ-1)手続取消理由について
請求人の主張する手続取消理由1?4は、いずれも特許法第123条第1項各号に該当するものではなく、いずれも不適法な審判の請求であるから、特許法第135条に基づき却下されるべきである。

(イ-2)その他の理由について
請求人の主張するその他の理由1?7は、いずれも特許法第123条第1項各号に該当するものではなく、いずれも不適法な審判の請求であるから、特許法第135条に基づき却下されるべきである。

(2)証拠方法
乙第1号証 :第1次無効審判の甲第9号証(写し)
乙第2号証 :第1次無効審判の審決書(写し)
乙第3号証 :平成19年12月26日付けで訂正発行された本件特許公 報
乙第4号証 :第1次無効審判の甲第10号証(写し)
乙第5号証の1:第1次取消訴訟の平成22年1月29日付け証拠説明書 (写し)
乙第5号証の2:第1次取消訴訟の乙第2号証(写し)
乙第5号証の3:第1次取消訴訟の乙第3号証(写し)
乙第5号証の4:第1次取消訴訟の乙第4号証(写し)
乙第5号証の5:第1次取消訴訟の乙第5号証(写し)
参考資料1 :知的財産高等裁判所平成18年4月11日判決・平成17 年(行ケ)第10467号
参考資料2 :新注解特許法[下巻]2316頁?2321頁
参考資料3 :工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第18版〕34 2頁?351頁

第4 当審の判断
無効理由1として、請求人が、「特許無効理由」についての「〔理由1〕」として挙げている点について検討する。
無効理由2として、請求人が、「特許無効理由」についての「〔理由2〕」として挙げている点について検討する。
無効理由3として、請求人が、「特許無効理由」についての「〔理由3〕」として挙げている点について検討する。
無効理由4として、請求人が、「手続取消理由」についての「〔理由1〕?〔理由4〕」及び「その他の理由」についての「〔理由1〕?〔理由7〕」として挙げている点について検討する。

・無効理由1について
(1)本件特許発明
本件特許第3998184号の請求項1?9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明9」という。また、「本件特許発明1」?「本件特許発明9」の全ての特許発明を「本件特許発明」という。)。

「【請求項1】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。
【請求項2】 前記検査領域面積に占める総血管長の割合に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1に記載の有精卵の検査法。
【請求項3】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、
前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、
第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。
【請求項4】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。
【請求項5】 前記検査領域内の血管情報を計測し、該検査領域を複数のブロックに分割し、血管の分布するブロック数に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。
【請求項6】 前記カラー画像における気室境界より胎児側に向けて所定の間隔で投影値減衰率を計測し、計測した投影値減衰率の平均値に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。
【請求項7】
L*a*b*表色系の色情報に基づいて、卵殻の斑点状の模様を除去した後に、前記検査領域内における計測を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。
【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置であって、
有精卵を配置する検査用ホイルと、有精卵内部に光を照射する照明装置を有する照明部と、卵内部のカラー画像を撮像する画像撮像部と、撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部とを備えた有精卵の検査装置。
【請求項9】 前記検査用ホイルは、昇降・回転ユニットにより昇降および回転自在に支持され、
前記照明部は、先端部が柔らかい材質で構成され、内部に照明装置が配置される照明用筒を備え、
前記画像撮像部は、遮光性のある撮影用筒を備えることを特徴とする請求項8に記載の有精卵の検査装置。」

(2)甲第38号証について
(2-1)請求人は、甲第38号証が2002年10月8日に坪井種鶏孵化場に提出されたとしているが、甲第38号証の「検卵装置の取扱説明書」には次の日付けが記載されているものと認める。

・取扱説明書の日付 :2003年1月(1.序文)
・取扱説明書の附図書の設計図の日付
:2002年11月19日(名称:全体図)
・2002年11月10日(名称:取出部)
・2002年11月18日(名称:暗幕フレーム)
・2002年11月 6日(名称:投入部)
・2002年11月15日(名称:投入部リフト用 センサー取付図、図番:0225-01(2))
・2002年11月16日(名称:投入部トレー検 知センサー取付図、図番:0225-01(3))
・2002年11月 5日(名称:整列部)
・2002年11月26日(名称:ピッチ送り部( 不具合修正図))
・2002年12月18日(名称:取り出し部送り 機構追加)
・2002年11月11日(名称:制御板取付図)
・取扱説明書の附図書の制御回路図の日付け
:2002年11月 7日(名称:制御回路)
:2003年 2月18日(回路先頭ステップ:00 0000)

そうすると、請求人の提出した甲第38号証の「検卵装置の取扱説明書」は、株式会社熊本アイディーエムから坪井條一郎に提出されたものであるから、甲第38号証に記載された発明の発明者は、株式会社熊本アイディーエムの従業員とも考えられるし、さらに、甲第38号証の「検卵装置の取扱説明書」中、最後の日付は、平成15年2月18日であるから、甲第38号証の「検卵装置の取扱説明書」は本件特許の出願日の平成14年9月4日以降に作成されたものであると認められることを考慮すると、甲第38号証からは本件出願の真の発明者が誰であるのか特定できないことは明らかである。
なお、請求人は当審の審尋に対する平成24年12月4日付けの回答書において、参考資料1-1、参考資料1-2を提出し、検卵機開発の経緯及び図面を提出しているが、検卵機開発の経緯は、単に、請求人と株式会社熊本アイディーエムとの開発の経緯を示すものであって、2001年1月5日付けの図面(名称:卵検卵シリンダー機構、構想図)、及び2001年12月10日付けの図面(名称:たまご検卵)と、甲第38号証の「検卵装置の取扱説明書」の附図書の図面との関係が不明である。
したがって、請求人が回答書において提出した参考資料を検討したとしても、上述のごとく、甲第38号証からは、本件出願の真の発明者が誰であるかは認定できないことは明らかである。

(2-2)また、請求人が開発したとされる甲第38号証に係る「検卵装置」について、株式会社熊本アイディーエムに試作品の製作を委託した日が本件特許出願の前であることすら立証されておらず、また、本件出願の6名の発明者と、請求人、又は、株式会社熊本アイディーエムの関係、請求人が開発したとされる「検卵装置」について、株式会社熊本アイディーエムに試作品の製作を委託した内容を本件特許出願の日前に知り得た点についても立証されていないが、仮に、請求人が開発したとされる「検卵装置」について、株式会社熊本アイディーエムに試作品の製作を委託した日時が本件特許出願の前であり、請求人が、自ら開発し、株式会社熊本アイディーエムに、「検卵装置」の試作品の製作を委託した内容が、甲第38号証に記載された内容と同じであった場合に、本件特許の真の発明者が請求人であり、さらに、本件特許が、発明者でないものであってその発明について特許を受ける権利を継承しないものの特許出願(以下、同要件に係る出願を「冒認出願」という場合がある。)に対して特許されたものであるから、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成23年改正前」という。)の特許法第49条7号の規定及び特許法第123条第1項第6項の規定に該当するかどうか検討する。
本件特許発明が、請求人が主張するように冒認出願に対してなされたものであると言えるためには、「本件特許発明1」?「本件特許発明9」が甲第38号証に記載された発明(以下、「甲38発明」という。)と実質的に同一であることが前提となる。

(2-2a)甲第38号証の記載事項
上記「第2 請求人の主張の及び証拠方法」の(3-1)の摘記事項(甲38-1)?(甲38-5)のうち、特に(甲38-5)の記載を参照すると、甲第38号証には、
「作業員が配置された、03検査部(1)、03検査部(2)、06二次検査部(1)、06二次検査部(2)において、トレー上の卵を検卵する方法。」
の「甲38発明」が記載されているものと認める。

(2-2b)本件特許発明と甲38発明との対比・判断
本件特許第39981814号の「本件特許発明1」?「本件特許発明9」は、上記「・無効理由1について」の「(1)本件特許発明」において、検討したとおりものである。

(2-2b-1)まず最初に、本件特許発明1と甲38発明とを対比・判断する。

本件特許発明1は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。」

そこで、本件特許発明1と甲38発明とを対比すると、
(i)上記甲38発明では、03検査部(1)、03検査部(2)、06二次検査部(1)、06二次検査部(2)に作業員が配置されていること、及び請求人も審判請求書において、「本件検卵装置が目視によって、良否判定を行い」と認めていることから、作業員が目視で卵を検卵しているものと解される。

(ii)また、(甲38-6)には、検査部に光源が配置されていることから、作業員が目視で卵を検卵する際に、光源からの光を利用して検卵しているものと解される。

(iii)さらに、上記甲第38号証の摘記事項(甲38-1)に
「坪井種鶏孵化場 殿」
と記載されており、この「孵化」は「動物の卵が孵ること」を意味することから、甲38発明の「トレー上の卵を検卵する方法」は、本特許件発明1の「有精卵の検査法」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲38発明とは、
「有精卵の検査法」
である点一致するものの、本件特許発明1と甲38発明とは、
本件特許発明1が「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」のに対して、甲38発明では、光源の光を利用して作業員が目視で卵を検卵する点で相違する。
そして、本件特許発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」構成が周知慣用された技術事項等の構造上の微差とはいえないから、本件特許発明1と甲38発明とは、実質的に同一でない。

(2-2b-2)本件特許発明2甲38発明との対比・判断
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成を含む特許発明であるから、本件特許発明2と甲38発明とは実質的に同一ではない。

(2-2b-3)本件特許発明3と甲38発明との対比・判断
本件特許発明3は、次のとおりのものである。

「【請求項3】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、
前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、
第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。」

上記(2-2b-1)の本件特許発明1と甲38発明との対比を参考にすると、本件特許発明3と甲38発明とは、
「有精卵の検査法」
である点一致するものの、本件特許発明3と甲38発明とは、
本件特許発明3が「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」のに対して、甲38発明では、光源の光を利用して作業員が目視で卵を検卵する点で相違する。
そして、本件特許発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」構成が周知慣用された技術事項等の構造上の微差であるとはいえないから、本件特許発明3と甲38発明とは、実質的に同一でない。

(2-2b-4)本件特許発明4と甲38発明との対比・判断
本件特許発明4は、次のとおりのものである。

「【請求項4】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。」

上記(2-2b-1)の本件特許発明1と甲38発明との対比を参考にすると、本件特許発明4と甲38発明とは、
「有精卵の検査法」
である点一致するものの、本件特許発明4と甲38発明とは、
本件特許発明4が「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」のに対して、甲38発明では、光源の光を利用して作業員が目視で卵を検卵する点で相違する。
そして、本件特許発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」構成が周知慣用された技術事項等の構造上の微差であるとはいえないから、本件特許発明4と甲38発明とは、実質的に同一でない。

(2-2-5)本件特許発明5?9と甲38発明との対比・判断
本件特許発明5は、本件特許発明1?4の構成を含み、本件特許発明6は本件特許発明1?5の構成を含み、本件特許発明7は本件特許発明1?6の構成を含み、本件特許発明8は本件特許発明1?7の構成を含み、さらに、本件特許発明9は、本件特許発明1?7の構成を含む本件特許発明8の構成を含むものである。
よって、上記(2-2b-1)?(2-2b-4)において検討したように、本件特許発明1?4と甲38発明とは、実質的に同一でないことから、本件特許発明1?4の構成を含む本件特許発明5?9と甲38発明とは実質的に同一でないことは明らかである。
そして、本件特許の発明者が、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子、林高義、安藤隆章であることは、同一請求人が、平成20年10月16日付けで請求した無効審判(無効2008-800209号。以下、「第1次無効審判」という。)の審決(甲第22号証1、甲第22号証2、甲第22号証3、乙第2号証)の66頁15行?67頁23行に記載された「(2)本件特許の発明者が四国計測工業株式会社の4名のみであるかについて」の項において、
「本件特許の発明者が、安藤隆章、杉本有一郎、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子の6名でないことを示す証拠も存在しない。
したがって、本件特許の発明者は四国計測工業株式会社に所属する4名のみではなく、安藤隆章および杉本有一郎を含めた6名であると認められる。」(67頁19?23行)
と記載され、また、第1次無効審判の審決に対する取消訴訟において、知的財産高等裁判所第3部から出された判決(平成21年(行ケ)第10213号、平成22年4月27日判決言渡、甲第43号証)の38頁2行?40頁15行に記載された「2 冒認出願に関する判断の誤り(取消事由2)について」の項において、
「本件発明の発明者は,林高義,三島靖史,大西英希,林亜希子,林高義,安藤隆章及び杉本有一郎の6名であり,これらの発明者から被告に本件特許を受ける権利が承継されたものと推認される。」(39頁下から4?末行)
と記載され、さらに、
「なお,本訴において提出された乙2ないし5及び弁論の全趣旨によれば(1)(なお(1)は○の中に数字の1に表記したものを意味する。以下同じ。)被告は,平成13年3月28日,微研と検卵機実用化に関する共同開発契約を締結し,同契約に基づいて,被告の従業員である林高義,三島靖史,大西英希及び林亜希子と微研の研究員である安藤隆章及び杉本有一郎の6名本件発明をしたこと,(2)林高義,三島靖史,大西英希及び林亜希子は被告に本件特許の特許を受ける権利を譲渡し,また,微研の同意のもとで,安藤隆章及び杉本有一郎が被告に本件特許の特許を受ける権利を譲渡し,被告が本件特許の出願をしたことが認められ,本件特許の出願は冒認出願ではないことが認められる。」(40頁6?14行)
と記載されているように明らかな事実である。
そうすると、本件特許発明は、甲第38号証に記載された発明ではないので、甲38発明の発明者が請求人であったとしても、本件特許の真の発明者が請求人となることはありえず、また、本件特許の発明者は、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子、林高義、安藤隆章及び杉本有一郎の6名であり、これらの発明者から被告に本件特許を受ける権利が承継されていることから、本件特許出願が、平成23年改正前の特許法第49条7の「その特許出願人が発明者でない場合でおいて、その発明について特許を受ける権利を承継していないとき。」に規定する要件に該当しないと判断され、本件特許に、「その特許がその発明について発明者でない者であつて特許を承継しないものの特許出願に対してされたとき。」(平成23年改正前の特許法第123条第1項第6号)との無効事由はなく、本件特許は冒認出願に対してされたものではないといえる。

2.無効理由2について
(ア)請求人は、「甲第39号証の検卵法は、本件発明者である坪井條一郎が開発して熊本アイディーが作成した試作品とともに、坪井種鶏孵化場に提出した内容、つまり、(甲第38号証の)説明書と全く同じものである」と主張しているのでこの点について検討する。

(1)甲38発明は、上記「1.無効理由1」の「(2-1)甲第38号証の記載事項」において検討したように、次のとおりのものと認める。

「作業員が配置された、03検査部(1)、03検査部(2)、06二次検査部(1)、06二次検査部(2)において、トレー上の卵を検卵する方法。」

(2)甲第39号証の記載事項
上記「第2 請求人の主張の及び証拠方法」の(3-2)の摘記事項(甲39-1)?(甲39-8)の記載を参照すると、甲第39号証には、
「画像検出部の遮光性構造物内において、気室側から卵内部に光を照射し、内部に散乱した光を、カラーCCDカメラにて撮影し、画像処理装置にて、撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出し、気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長の計測結果をもとに、良卵/死卵を判定する発育状態を検査する有精卵の検査法。」
の発明(以下、「甲39発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)甲39発明と甲38発明の対比・判断
上記「・無効理由1について」の「(2-2b)」の「本件特許発明と甲38発明との対比・判断」において検討したことを参考にすると、甲39発明と甲38発明とは、
「有精卵の検査法」
である点一致するものの、甲39発明と甲38発明とは、
甲39発明が「画像検出部の遮光性構造物内において、気室側から卵内部に光を照射し、内部に散乱した光を、カラーCCDカメラにて撮影し、画像処理装置にて、撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出し、気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長の計測結果をもとに、良卵/死卵を判定する発育状態を検査する」構成を有するのに対して、甲38発明では、そのような構成を備えていない点で相違する。
そして、甲39発明の「画像検出部の遮光性構造物内において、気室側から卵内部に光を照射し、内部に散乱した光を、カラーCCDカメラにて撮影し、画像処理装置にて、撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出し、気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長の計測結果をもとに、良卵/死卵を判定する発育状態を検査する」構成が周知慣用された技術事項等の構成上の微差であるとはいえないから、甲39発明と甲38発明とは、実質的に同一でない。
したがって、「本件発明者である坪井條一郎が開発して熊本アイディーが作成した試作品とともに、坪井種鶏孵化場に提出した内容、つまり、(甲第38号証の)説明書と全く同じものである」とはいえない。

(イ)請求人は、甲第39号証の謝辞の記載により、「本件特許は四国計測と阪大研究会の共同開発者でなく、共同発明者でもないことは明白であり、さらに、本件特許が四国計測ではないことは明らかである」旨の主張しているのでこの点について検討する。

(1)本件特許の発明者は、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子、林高義、安藤隆章及び杉本有一郎の6名であることは、上記「1.無効理由1」の「(2-2)本件特許発明と甲38発明との対比・判断」において検討したように、証拠上明らかである。

(2)さらに、被請求人が提出した、平成13年3月28に締結した被請求人と財団法人阪大微生物研究会観音寺研究所(以下、「微研」という。)とが締結した「検卵機実用化に関する開発」に係る「共同開発契約書」(乙第5号証の2)、被請求人の小林功の平成22年1月28日付け「陳述書」(乙第5号証の3)、微研が作成した平成22年1月28日付け確認書(乙第5号証の4)、及び安藤隆章、及び杉本有一郎が作成した平成14年10月29日付け譲渡書(乙第5号証の5)の記載によれば、被請求人は、平成13年3月28日、微研と検卵機実用化に関する共同開発契約を締結し、同契約に基づいて、被請求人の従業員である林高義、三島靖史、大西英希、及び林亜希子と微研の研究員の安藤隆章、及び杉本有一郎の6名が本件特許を発明し、さらに、林高義、三島靖史、大西英希、及び林亜希子は被請求人に本件特許の特許を受ける権利を譲渡し、また、微研の同意のもとで、安藤隆章、及び杉本有一郎は被請求人に本件特許の特許を受ける権利を譲渡し、被請求人が本件特許の出願をしたことが認められるから、本件特許に、「その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。」(平成23年改正前の特許法第49条第1項第7号)の規定に該当しないから、無効事由がなく、本件特許出願人は四国計測工業株式会社であって、本件特許は冒認出願に対してされたものではないといえる。

なお、上記乙第5号証の2?乙第5号証の5は、無効審判審決取消訴訟(平成21年(行ケ)第10213号)において、被請求人が知的財産高等裁判所に証拠として提出した乙第2号証?乙第5号証と同じ証拠である。

3.無効理由3について
請求人は、「本件特許出願は、『四国計測』の従業員4名と『阪大研究会』の研究員2名との共同発明であるから、特許法第38条の規定により、四国計測のみで単独出願できないものであり、本件特許出願は特許法第123条第2項の特許無効審判により、本件特許は無効にすべきである。」旨の主張をしているのでこの点について検討する。

(1)上記「2.無効理由2」の(イ)の(1)及び(2)において検討したように、被請求人が提出した乙第5号証の2?乙第5号証の5により、被請求人は、平成13年3月28日、微研と検卵機実用化に関する共同開発契約を締結し、同契約に基づいて、被請求人の従業員である林高義、三島靖史、大西英希、及び林亜希子と微研の研究員の安藤隆章、及び杉本有一郎の6名が本件特許を発明し、さらに、林高義、三島靖史、大西英希、及び林亜希子は被請求人に本件特許の特許を受ける権利を譲渡し、また、微研の同意のもとで、安藤隆章、及び杉本有一郎は被請求人に本件特許の特許を受ける権利を譲渡し、被請求人が本件特許の出願をしたことが認められるから、本件出願は、四国計測工業株式会社の単独出願ができるものであり、本件特許出願が、特許法第38条の「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ特許出願をすることができない。」の規定に違反するものでないことは明らかである。
よって、本件特許は、平成23年改正前の特許法第123条第1項第2号の「その特許が・・・第38条・・・の規定に違反してされたとき。」の規定、及び第6号の「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。」の規定に違反するものではない。

(2)なお、上記「1.無効理由1」及び「2.無効理由2」において検討したように、本件特許の発明者は、被請求人の従業員である林高義、三島靖史、大西英希、及び林亜希子と微研の研究員の安藤隆章、及び杉本有一郎の6名であり、本件特許の出願人は四国計測工業株式会社であることは明らかである。
ところで、平成23年改正前の特許法第123条第2項には、「特許無効審判は、何人も請求することができる。ただし、特許が前項第二号に該当すること(その特許が第三十8条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由とするものは、利害関係人に限り請求することができる。」と規定されているところ、請求人は、本件特許の発明者でもなく、共同発明者でもないから、本件特許に対する「利害関係人」とはいえず、請求人の「本件特許出願は、『四国計測』の従業員4名と『阪大研究会』の研究員2名との共同発明であるから、特許法第38条の規定により、四国計測のみで単独出願できないものであり、「本件特許出願は特許法第123条第2項の特許無効審判により、本件特許は無効にすべきである。」旨の主張は採用できないものである。

4.無効理由4について
無効審判を請求する際に、平成23年改正前の特許法第123条第1項では、「特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。・・・」と規定しており、同条項各号に該当する場合に限り、特許無効審判を請求することとしており、その具体的な各号の請求理由に該当するものは、次のとおりである。

(1)「その特許が第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く)にたいしてされたとき。」(第1号)
(2)「その特許が、第25条第29条第29条の2第32条第38条又は第39条第1項から第4項での規定に違反してされたとき。」(第2号)
(3)「その特許が条約に違反してされたとき。」(第3号)
(4)「その特許が第36条第4項第1号又は第6項(第4項を除く)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。」(第4号)
(5)「外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。」(第5号)
(6)「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。」(第6号)
(7)「特許された後において、その特許権者が第25条の規定により特許権を享有することができないものになつたとき、又はその特許が条約に違反することになつたとき。」(第7号)
(8)「その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第126条第1項ただし書若しくは第5項から第7項まで(第134条の2第9項において準用する場合を含む。)又は第134条の2第1項ただし書の規定に違反してされたとき。」(第8号)

他方、請求人が主張する、手続取消理由についての〔理由1〕?〔理由4〕、及びその他の理由の〔理由1〕?〔理由7〕のいずれも、被請求人と特許庁との間の各種の手続上の処分ないしは別出願に関するものであり、いずれも特許法第123条第1項各号に該当するものではない。
よって、手続取消理由についての〔理由1〕?〔理由4〕、及びその他の理由の〔理由1〕?〔理由7〕は、いずれも無効の理由にならない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることができない。
また、他に本件特許を無効とするべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
審理終結日 2013-01-17 
結審通知日 2013-01-21 
審決日 2013-02-14 
出願番号 特願2002-259297(P2002-259297)
審決分類 P 1 113・ 151- Y (G01N)
P 1 113・ 152- Y (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 田部 元史
信田 昌男
登録日 2007-08-17 
登録番号 特許第3998184号(P3998184)
発明の名称 有精卵の検査法および装置  
代理人 唐木 浄治  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ