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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1287104
審判番号 不服2012-7730  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-26 
確定日 2014-04-25 
事件の表示 特願2008- 80365「化粧料およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日出願公開、特開2009-234951〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は,本願は,平成20年3月26日の出願であって,以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成23年 1月25日付け 拒絶理由通知書
平成23年 3月24日 意見書・手続補正書
平成23年 4月 1日 手続補正書
平成23年 4月 8日 上申書
平成23年 4月 6日付け 却下理由通知書
平成23年 7月11日付け 平成23年4月1日付け手続補正書に
対する手続却下の処分
平成24年 2月 8日付け 拒絶査定
平成24年 4月26日 審判請求書・手続補正書
平成25年 3月21日付け 審尋
なお,審尋に対する回答書は提出されていない。

第2 平成24年4月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成24年4月26日付けの手続補正は却下する。

[理由]
1 本件補正

平成24年4月26日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の

「【請求項1】
高級アルコール,油性成分,多糖類及び容易に変質する親油性成分を含有する化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールであって,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール,ドコサノールから選ばれた2種以上を含有し,2種以上の上記高級アルコールの各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,且つ,2種以上の高級アルコールの最少配合量と最多配合量の混合比が,重量比で1:1?1:5の範囲であり,
上記油性成分は,油性成分(A)と油性成分(B)からなり,化粧料の全量に対して1重量%?35重量%含有され,且つ,上記油性成分(A)と上記油性成分(B)の含有量が重量比で1:1?50:1となる範囲で含み,
油性成分(A)が,スクワラン,パラフィン(炭素数16から炭素数50までのn-炭化水素単独あるいはそれらの混合物),流動パラフィン,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,パルミチン酸イソプロピル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドウフォーム油,シア脂,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,テトラオクタン酸ペンタエリスリチル,ホホバ油から選ばれた1種以上を含み,
油性成分(B)が,ミツロウ(蜜蝋),水添パーム油,バチルアルコール,フィトステロール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル,N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・フィトステリル),N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・ベヘニル・フィトステリル),トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリル,ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれた1種以上を含み,
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,
【化1】


化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有され,
上記容易に変質する上記親油性成分は,油性ビタミンとしてビタミンAであり,ビタミン誘導体及びビタミン前駆物質としてカロチン,アスタキサンチン,酢酸レチノール,パルミチン酸レチノール,ニコチン酸トコフェロール,ニコチン酸ベンジル,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルであり,補酵素としてα-リポ酸,ユビキノンであり油性紫外線吸収剤として4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン,メトキシ桂皮酸エチルヘキシル,ジイソプロピル桂皮酸メチルであり,不飽和脂肪酸としてリノール酸,リノレン酸である中から選らばれた1種以上であり,且つ,容易に変質する上記親油性成分は化粧料の全量に対して0.01重量%?5重量%含有され,且つ,その含有量が重量比で油性成分(A)の1/2以下であることを特徴とする乳化状態の化粧料。」を,

「【請求項1】
高級アルコール,油性成分,多糖類及び容易に変質する親油性成分を含有する化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールであって,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール,ドコサノールから選ばれた2種以上を含有し,2種以上の上記高級アルコールの各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,且つ,2種以上の高級アルコールの最少配合量と最多配合量の混合比が,重量比で1:1?1:5の範囲であり,
上記油性成分は,油性成分(A)と油性成分(B)からなり,化粧料の全量に対して1重量%?35重量%含有され,且つ,上記油性成分(A)と上記油性成分(B)の含有量が重量比で1:1?50:1となる範囲で含み,
油性成分(A)が,スクワラン,パラフィン(炭素数16から炭素数50までのn-炭化水素単独あるいはそれらの混合物),流動パラフィン,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,パルミチン酸イソプロピル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドウフォーム油,シア脂,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,テトラオクタン酸ペンタエリスリチル,ホホバ油から選ばれた1種以上を含み,
油性成分(B)が,ミツロウ(蜜蝋),水添パーム油,バチルアルコール,フィトステロール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル,N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・フィトステリル),N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・ベヘニル・フィトステリル),トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリル,ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれた1種以上を含み,
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,
【化1】


化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有され,
上記容易に変質する上記親油性成分は,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルの中から選ばれた1種以上であり,且つ,容易に変質する上記親油性成分は化粧料の全量に対して0.01重量%?5重量%含有され,且つ,その含有量が重量比で油性成分(A)の1/2以下であることを特徴とする乳化状態の化粧料。」

とする補正を含むものである。なお,下線は補正箇所を示す。

2 本件補正の適否

(1)補正の目的の適否

本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要と認める事項である「容易に変質する親油性成分」について,「油性ビタミンとしてビタミンAであり,ビタミン誘導体及びビタミン前駆物質としてカロチン,アスタキサンチン,酢酸レチノール,パルミチン酸レチノール,ニコチン酸トコフェロール,ニコチン酸ベンジル,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルであり,補酵素としてα-リポ酸,ユビキノンであり油性紫外線吸収剤として4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン,メトキシ桂皮酸エチルヘキシル,ジイソプロピル桂皮酸メチルであり,不飽和脂肪酸としてリノール酸,リノレン酸である中から選らばれた1種以上」を,「パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルの中から選ばれた1種以上」に限定するものである。そして,その補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について

そこで,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。なお,本件補正後の明細書を,以下,「本願補正明細書」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされることにより適用される,同法律による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて,以下検討する。

(2-1)本願補正発明

本願補正発明は,以下のとおりである。

「高級アルコール,油性成分,多糖類及び容易に変質する親油性成分を含有する化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールであって,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール,ドコサノールから選ばれた2種以上を含有し,2種以上の上記高級アルコールの各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,且つ,2種以上の高級アルコールの最少配合量と最多配合量の混合比が,重量比で1:1?1:5の範囲であり,
上記油性成分は,油性成分(A)と油性成分(B)からなり,化粧料の全量に対して1重量%?35重量%含有され,且つ,上記油性成分(A)と上記油性成分(B)の含有量が重量比で1:1?50:1となる範囲で含み,
油性成分(A)が,スクワラン,パラフィン(炭素数16から炭素数50までのn-炭化水素単独あるいはそれらの混合物),流動パラフィン,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,パルミチン酸イソプロピル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドウフォーム油,シア脂,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,テトラオクタン酸ペンタエリスリチル,ホホバ油から選ばれた1種以上を含み,
油性成分(B)が,ミツロウ(蜜蝋),水添パーム油,バチルアルコール,フィトステロール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル,N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・フィトステリル),N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・ベヘニル・フィトステリル),トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリル,ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれた1種以上を含み,
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,
【化1】


化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有され,
上記容易に変質する上記親油性成分は,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルの中から選ばれた1種以上であり,且つ,容易に変質する上記親油性成分は化粧料の全量に対して0.01重量%?5重量%含有され,且つ,その含有量が重量比で油性成分(A)の1/2以下であることを特徴とする乳化状態の化粧料。」

(2-2)刊行物及びその記載事項

ア 刊行物

特開2007-238516号公報(原査定における引用文献1。以下,「刊行物1」という。)
特開2007-8901号公報(原査定における引用文献2。以下,「刊行物2」という。)

イ 刊行物の記載事項

本願出願前に頒布された刊行物である刊行物1,2には,以下の事項が記載されている。下線は当審で付与した。以下,同様。

(ア)刊行物1

1a「【請求項1】
高級アルコール,油性成分及び多糖類を乳化状態で含有する化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールを2種以上含有し,化粧料の全量に対して1重量%?20重量%含有され,
上記油性成分は,化粧料の全量に対して1重量%?20重量%含有され,
上記多糖類は,フコース,グルコース,グルクロン酸,ラムノースの内少なくとも1種を構成単糖とし,フコースおよび/又はラムノースを側鎖に含む多糖類を化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有されることを特徴とする乳化状態の化粧料。
【請求項2】
上記油性成分が,少なくとも
油性成分(A)として,シリコーン油,フッ素化炭化水素及びその誘導体,炭化水素,脂肪酸,1価アルコールの脂肪酸エステル,動植物油脂,オキシカルボン酸エステル,多価アルコールの脂肪酸エステル(融点40℃未満),液体ロウから選ばれた1種以上のものと,
油性成分(B)として,固体ロウ,2価の高級アルコール,環状アルコール及びその脂肪酸エステル,多価アルコールの脂肪酸エステル(融点40℃以上),リン脂質から選ばれた1種以上のものを
重量比で上記油性成分(A)と上記油性成分(B)が1:1?50:1となる範囲で含む請求項1記載の乳化状態の化粧料。
【請求項3】
上記油性成分(A)は,ジメチルポリシロキサン,トリメチルポリシロキサン,スクワラン,パラフィン,パルミチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,トリエチルヘキサン酸グリセリル,トリ(カプリル酸・カプリン酸の混合酸)グリセリル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドホーム油,シア油,ホホバ油から選ばれた1種以上のものであり,
上記油性成分(B)は,ミツロウ(蜜蝋),水素添加ホホバ油,キミルアルコール,バチルアルコール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,フィトステロール,トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリルから選ばれた1種以上のものであり,
上記油性成分(A)と上記油性成分(B)を組み合わせて用いる請求項2に記載の乳化状態の化粧料。
【請求項4】
上記多糖類が,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の乳化状態の化粧料。
【化1】


【請求項5】
上記高級アルコールは,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール及びドコサノールから選ばれた2種以上であり,選ばれた2種以上の各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有されている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の乳化状態の化粧料。
【請求項6】
上記2種以上の高級アルコールの混合比は,最大配合量となる高級アルコールと最少配合量となる高級アルコールと混合比が1:5?5:1の範囲とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の乳化状態の化粧料。」

1b「【0026】
請求項6の発明では,2種類以上の高級アルコールの混合物の混合比は,最大配合量となる高級アルコールと最少配合量となる高級アルコールと混合比が1:5?5:1の範囲であるため,2種以上混合された高級アルコールは,1つの高級アルコールが少なくとも他の1つの高級アルコールに対して五分の一以上混合されているので,分子量の異なる高級アルコールと多糖類の会合体が実質的に相当量の異なる大きさの会合体を形成して,均一な粒子構造を形成することを防止して,乳化状態を安定化させることができる。」

1c「【発明の効果】
【0049】
本発明において,特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコールを2種類以上を使用し,熱安定性や経時安定性に優れた乳化状態を有する化粧料を得ることができる。このため,界面活性剤を使用しないでも,安定した乳化状態を保つことができると共に,感触も優れた化粧料を得ることができる。更に,界面活性剤等を添加しなくても,肌馴染みが良い化粧料を製造することができる。
また,本発明において特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコール2種類以上を使用して,他の油性成分も配合することが可能となることから,化粧料に多種類含まれる被乳化油性成分の所要HLB値に関係なく,油脂成分を乳化させることが可能となるので,炭化水素系油性成分やシリコーン系油性成分の乳化も可能となる。このため,化粧料の製造において,多種類の被乳化成分に適合する乳化分散剤を選択する煩わしさや労力を最小限にすることが可能となる。」

1d「【0087】
本発明の化粧料は,その使用目的により種々のものがあり,従って必要によりさらに,薬品類,医薬部外品類,化粧品類などに配合される成分である精製水,温泉水,深層水,増粘剤,色素,保湿剤,収れん剤,美白剤,紫外線防止剤,抗炎症(消炎)剤,皮膚(細胞)賦活化剤,抗菌剤,経皮吸収促進剤,清涼剤,酸化防止剤,防腐剤,キレート剤,褪色防止剤,緩衝剤などが任意に加えられる。本発明は,その目的とする効果を妨げない範囲でこれら各種添加剤の配合することを制限するものではない。」

(イ)刊行物2

2a「【請求項1】
フコース,グルコース,グルクロン酸,ラムノースの内少なくとも1種類を構成単糖とし,フコースおよび/又はラムノースを側鎖に含む多糖類,および/又は,マンノースおよび/又はグルクロン酸を側鎖に含む多糖類を化粧料の全量に対して0.01?1重量%含有し,少なくとも炭素数14?22の高級アルコールを,上記化粧料の全量に対して1?50重量%含有し,実質的な界面活性能を有する物質を含まず,上記高級アルコールが乳化状態であることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
上記化粧料は,上記高級アルコールと上記高級アルコール以外の油性成分の混合状態における融点が40℃?90℃の範囲である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれている請求項1又は請求項2に記載の化粧料。
【化1】




2b「【発明の効果】
【0022】
以上述べたように,この発明においては,特定の多糖類と特定の高級アルコールを使用し,熱安定性や経時安定性に優れた乳化状態にすることができる。このため,界面活性剤を使用しないでも,安定した乳化状態を保つことができると共に,感触も優れた化粧料を得ることができる。
また,本発明の特定の多糖類と特定の高級アルコールを使用すると,他の油性基剤も配合することが可能となることから,化粧料に多種類含まれる被乳化油性基剤の所要HLB値に関係なく,油脂成分を乳化させることが可能となるので,炭化水素系油性基剤やシリコーン系油性基剤の乳化も可能となる。このため,化粧料の製造において,多種類の被乳化成分に適合する乳化分散剤を選択する煩わしさや労力を最小限にすることが可能となる。更に,界面活性剤を添加しなくても肌なじみが良い化粧料を製造することができる。」

2c「【0039】
本発明に使用する高級アルコールは,少なくとも炭素数14?22の高級アルコールである。例えば,1-テトラデカノール,1-ペンタデカノール,1-ヘキサデカノール,1-ヘプタデカノール,1-オクタデカノール,1-ノナデカノール,1-ドゥオデカノール,1-ドコサノール,1-テトラコサノール,1-ヘキサコサノール,1-オクタコサノール,1-トリアコンタノール,1-ドトリアコンタノール,1-テトラトリアコンタノール,アラキルアルコール,オレイルアルコール,ホホバアルコール,バチルアルコール,リスチルアルコール,パルミチルアルコール,ステアリルアルコール,ベヘニルアルコール,ヘキサデシルアルコール,オレイルアルコール,イソステアリルアルコール,ヘキシルドデカノール,オクチルドデカノール,セトステアリルアルコール,2-デシルテトラデシノール,キミルアルコール,等がある。」

2d「【0040】
本発明の化粧料は,その使用目的により種々のものがあり,従って必要によりさらに,薬品類,医薬部外品類,化粧品類などに配合される成分である精製水,温泉水,深層水,増粘剤,色素,保湿剤,収れん剤,美白剤,紫外線防止剤,抗炎症(消炎)剤,皮膚(細胞)賦活化剤,抗菌剤,経皮吸収促進剤,清涼剤,酸化防止剤,防腐剤,キレート剤,褪色防止剤,緩衝剤などが任意に加えられる。本発明は,その目的とする効果を妨げない範囲でこれら各種添加剤の配合することを制限するものではない。・・・
【0044】
美白剤(成分)としては,チロシナーゼ阻害薬,エンドセリン拮抗薬,α-MSH阻害薬,グラブリジン,グラブレン,リクイリチン,イソリクイリチン,エラグ酸およびその塩やその誘導体,コウジ酸およびその塩さらにはその誘導体,アルブチン及びその塩さらにはその誘導体,システインおよびその塩さらにはその誘導体,アスコルビン酸,アスコルビン酸ナトリウム,ステアリン酸アスコルビル,パルミチン酸アスコルビル,ジパルミチン酸アスコルビル,アスコルビン酸リン酸マグネシウムなどのビタミンC類及びそれらの塩やその誘導体,グルタチオン及びその塩さらにはその誘導体,レゾルシン及びその塩さらにはその誘導体,ルシノール,ネオアガロビオース,アガロースオリゴサッカライド,植物抽出液類が上げられる。植物抽出液類としては,アスパラガス抽出物,アルテア抽出物,イブキトラノオ抽出物,インチンコウ抽出物,エンドウ豆抽出物,エイジツ抽出物,オウゴン抽出物,オノニス抽出物,海藻抽出物,火棘抽出物,カンゾウ抽出物,キイチゴ抽出物,クジン抽出物,黒砂糖抽出物,ケイケットウ抽出物,ゴカヒ抽出物,小麦胚芽抽出物,サイシン抽出物,サンザシ抽出物,サンペンズ抽出物,シャクヤク抽出物,シラユリ抽出物,センプクカ抽出物,ソウハクヒ抽出物,大豆抽出物,胎盤抽出物,タラノキ抽出物,茶抽出物,トウキ抽出物,糖蜜抽出物,ノイバラ抽出物,ビャクレン抽出物,ブドウ種子抽出物,ブナノキ抽出物,フローデマニータ抽出物,ホップ抽出物,マイカイカ抽出物,モッカ抽出物,ユキノシタ抽出物,ヨクイニン抽出物,羅漢果抽出物などをあげることができ,その1種または2種以上を適宜選択して配合される。美白剤成分の配合量は,通常0.01?10重量%である。植物抽出物等を抽出液のまま用いる場合は乾燥固形分換算の量である。」

(2-3)刊行物1に記載された発明

刊行物1は,「高級アルコール,油性成分及び多糖類を乳化状態で含有する化粧料」(1a 請求項1)に関し記載するものであり,請求項1ないし5を引用して特定されている請求項6に係る発明(1a)を書き下すと,刊行物1には,

「高級アルコール,油性成分及び多糖類を乳化状態で含有する化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールで,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール及びドコサノールから選ばれた2種以上含有し,選ばれた2種以上の各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,上記2種以上の高級アルコールの混合比は,最大配合量となる高級アルコールと最少配合量となる高級アルコールと混合比が1:5?5:1の範囲であり,
上記油性成分は,化粧料の全量に対して1重量%?20重量%含有され,油性成分(A)と上記油性成分(B)を組み合わせて用い,重量比で油性成分(A)と油性成分(B)が1:1?50:1となる範囲で含み,
上記油性成分(A)は,ジメチルポリシロキサン,トリメチルポリシロキサン,スクワラン,パラフィン,パルミチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,トリエチルヘキサン酸グリセリル,トリ(カプリル酸・カプリン酸の混合酸)グリセリル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドホーム油,シア油,ホホバ油から選ばれた1種以上のものであり,
上記油性成分(B)は,ミツロウ(蜜蝋),水素添加ホホバ油,キミルアルコール,バチルアルコール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,フィトステロール,トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリルから選ばれた1種以上のものであり,
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,
【化1】


化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有されることを特徴とする乳化状態の化粧料。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-4)本願補正発明と引用発明との対比

ア 本願補正発明の「高級アルコール,油性成分,多糖類及び容易に変質する親油性成分を含有する」「乳化状態の化粧料」と,引用発明の「高級アルコール,油性成分及び多糖類を乳化状態で含有する化粧料」とは,高級アルコール,油性成分及び多糖類を乳化状態で含有する化粧料である点で,共通する。

イ 引用発明の「上記2種以上の高級アルコールの混合比は,最大配合量となる高級アルコールと最少配合量となる高級アルコールと混合比が1:5?5:1の範囲」について,高級アルコールの含量につき「0.4重量%以上・・0.8重量%?20重量%」と重量単位で特定されていることから,上記混合比は重量比であるといえる。
そして,「混合比が1:5?5:1の範囲」につき,刊行物1には「請求項6の発明では,2種類以上の高級アルコールの混合物の混合比は,最大配合量となる高級アルコールと最少配合量となる高級アルコールと混合比が1:5?5:1の範囲であるため,2種以上混合された高級アルコールは,1つの高級アルコールが少なくとも他の1つの高級アルコールに対して五分の一以上混合されている」(1b)と記載されていること,及び,最大配合量と最少配合量との混合比が,例えば「1:5」というように最大配合量が最小配合量より混合割合が小さいことは常識的にあり得ず,最低でも「1:1」のはずであることから,引用発明の「混合比が1:5?5:1の範囲」は,実質的に「混合比が1:1?5:1の範囲」のことであるといえる。
そうすると,引用発明の「上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールで,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール及びドコサノールから選ばれた2種以上含有し,選ばれた2種以上の各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,上記2種以上の高級アルコールの混合比は,最大配合量となる高級アルコールと最少配合量となる高級アルコールと混合比が1:5?5:1の範囲であり」は,本願補正発明の「上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールであって,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール,ドコサノールから選ばれた2種以上を含有し,2種以上の上記高級アルコールの各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,且つ,2種以上の高級アルコールの最少配合量と最多配合量の混合比が,重量比で1:1?1:5の範囲であり」に相当する。

ウ 引用発明の「上記油性成分は,化粧料の全量に対して1重量%?20重量%含有され,油性成分(A)と上記油性成分(B)を組み合わせて用い,重量比で油性成分(A)と油性成分(B)が1:1?50:1となる範囲で含み,上記油性成分(A)は,ジメチルポリシロキサン,トリメチルポリシロキサン,スクワラン,パラフィン,パルミチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,トリエチルヘキサン酸グリセリル,トリ(カプリル酸・カプリン酸の混合酸)グリセリル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドホーム油,シア油,ホホバ油から選ばれた1種以上のものであり,上記油性成分(B)は,ミツロウ(蜜蝋),水素添加ホホバ油,キミルアルコール,バチルアルコール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,フィトステロール,トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリルから選ばれた1種以上のものであり」は,本願補正発明の「上記油性成分は,油性成分(A)と油性成分(B)からなり,化粧料の全量に対して1重量%?35重量%含有され,且つ,上記油性成分(A)と上記油性成分(B)の含有量が重量比で1:1?50:1となる範囲で含み,油性成分(A)が,スクワラン,パラフィン(炭素数16から炭素数50までのn-炭化水素単独あるいはそれらの混合物),流動パラフィン,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,パルミチン酸イソプロピル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドウフォーム油,シア脂,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,テトラオクタン酸ペンタエリスリチル,ホホバ油から選ばれた1種以上を含み,油性成分(B)が,ミツロウ(蜜蝋),水添パーム油,バチルアルコール,フィトステロール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル,N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・フィトステリル),N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・ベヘニル・フィトステリル),トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリル,ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれた1種以上を含み」に包含される。

エ 引用発明の「上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,【化1】(省略)化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有される」は,本願補正発明の「上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,【化1】(省略)化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有され」に相当する。

そうすると,両者は,

「高級アルコール,油性成分及び多糖類を含有する乳化状態の化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールであって,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール,ドコサノールから選ばれた2種以上を含有し,2種以上の上記高級アルコールの各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,且つ,2種以上の高級アルコールの最少配合量と最多配合量の混合比が,重量比で1:1?1:5の範囲であり,
上記油性成分は,油性成分(A)と油性成分(B)からなり,化粧料の全量に対して1重量%?35重量%含有され,且つ,上記油性成分(A)と上記油性成分(B)の含有量が重量比で1:1?50:1となる範囲で含み,
油性成分(A)が,スクワラン,パラフィン(炭素数16から炭素数50までのn-炭化水素単独あるいはそれらの混合物),流動パラフィン,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,パルミチン酸イソプロピル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドウフォーム油,シア脂,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,テトラオクタン酸ペンタエリスリチル,ホホバ油から選ばれた1種以上を含み,
油性成分(B)が,ミツロウ(蜜蝋),水添パーム油,バチルアルコール,フィトステロール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル,N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・フィトステリル),N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・ベヘニル・フィトステリル),トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリル,ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれた1種以上を含み,
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,【化1】(省略)
化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有される,乳化状態の化粧料。」

である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

乳化状態の化粧料が,本願補正発明では,容易に変質する親油性成分を含み,該容易に変質する親油性成分は,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルの中から選ばれた1種以上であり,且つ,化粧料の全量に対して0.01重量%?5重量%含有され,且つ,その含有量が重量比で油性成分(A)の1/2以下であるのに対し,引用発明では,そのような容易に変質する親油性成分を含んでいるか明らかでない点。(以下,「相違点」という。)

(2-5)相違点についての判断

ア 相違点について

刊行物1には,引用発明における特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコール2種類以上を使用すると,熱安定性や経時安定性に優れた乳化状態を有する化粧料を得ることができ,他の油性成分も配合することが可能となることから,化粧料に多種類含まれる被乳化油性成分の所要HLB値に関係なく,油脂成分を乳化させることが可能となること(1c),さらに,化粧料の使用目的により美白剤を任意に加えられること(1d)が記載されている。

一方,刊行物2の請求項3には,請求項1,2を用いて書き下すと「少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれている多糖類
【化1】


を化粧料の全量に対して0.01?1重量%含有し,少なくとも炭素数14?22の高級アルコールを,上記化粧料の全量に対して1?50重量%含有し,上記高級アルコールと上記高級アルコール以外の油性成分の混合状態における融点が40℃?90℃の範囲で,実質的な界面活性能を有する物質を含まず,上記高級アルコールが乳化状態であることを特徴とする化粧料」(2a)が記載されている。そして,該高級アルコールとして,刊行物2には,具体的に1-ヘキサデカノール,1-オクタデカノール,1-ドコサノールを適用できること(2c)が記載されており,これらは引用発明において融点が45℃以上の高級アルコールとして示されているヘキサデカノール,オクタデカノール,ドコサノールに他ならない。そして,該高級アルコールとして複数種類用いることも妨げていない。そうすると,刊行物2には,引用発明の特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコール2種類以上を使用するものが記載されているといえる。
そして,刊行物1と同じく,刊行物2にも,この特定の多糖類と特定の高級アルコールを使用すると,熱安定性や経時安定性に優れた乳化状態にすることができ,他の油性成分も配合することが可能となることから,化粧料に多種類含まれる被乳化油性成分の所要HLB値に関係なく,油脂成分を乳化させることが可能となること(2b),化粧料の使用目的により美白剤を任意に加えられること(2d【0040】)が記載されているのみならず,さらに刊行物2には,美白剤成分として,パルミチン酸アスコルビルやジパルミチン酸アスコルビル等のビタミンC類誘導体があり,該美白剤成分の配合量は通常0.01?10重量%であること(2d【0044】)も記載されている。ちなみに,この美白剤成分の配合量は,技術常識的に,化粧料全量に対しての重量%と考えられる。

一般に,アスコルビン酸類は,チロシンからメラニンを生成するチロシナーゼの作用を阻害したり,生成している濃色酸化型メラニンを淡色還元型メラニンに戻す作用を有していることから,肌の美白化作用を期待し化粧料の一原料として広く使用されていること(B1),しかしながら,酸化分解を受けやすく着色しやすいという欠点を持っていることから,上記特性を保持しつつ安定性を高め油溶性を与えることを目的として,種々のアスコルビン酸誘導体が提案され(A1),該特性を有する油溶性アスコルビン酸誘導体として,ジパルミチン酸アスコルビルやパルミチン酸アスコルビルがあること(A2)は,以下に示す刊行物A,Bの記載からも明らかなように,本願出願前,周知技術であった。

そうすると,引用発明における特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコール2種類以上を使用するものと,刊行物2記載の特定の多糖類と特定の高級アルコールを使用するものとは,同じもので,被乳化油性成分の所要HLB値に関係なく油脂成分を乳化させることが可能で,美白剤を任意に加えられる点で共通し,刊行物2には,さらに,任意に加えられる美白剤成分として,油溶性アスコルビン酸誘導体であるパルミチン酸アスコルビルやジパルミチン酸アスコルビルを適用し,該美白剤成分の配合量としては化粧料全量に対して0.01?10重量%と記載されていることから,引用発明において,美白剤を加えること,該美白剤として,刊行物2の記載及び周知技術より,肌の美白化作用を保持しつつ安定性が高められた油溶性アスコルビン酸誘導体であるパルミチン酸アスコルビルやジパルミチン酸アスコルビルを含有させること,それらを化粧料全量に対して0.01?10重量%含有させることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,この際,油溶性アスコルビン酸誘導体は油性成分に溶けるものであり,一般的に,溶質である油溶性物質の量が溶媒である油性成分のおよそ半分以上となってしまうと,技術常識的に溶け難いと予測されることから,上記油溶性アスコルビン酸誘導体であるパルミチン酸アスコルビルやジパルミチン酸アスコルビルの含有量として,引用発明の油性成分の重量比から溶媒として主要成分といえる油性成分(A)の約半分以下とすることに,格別の困難性はない。

刊行物A:特開2006-8620号公報
A1「【背景技術】
【0002】
L-アスコルビン酸(ビタミンC)はメラニン生成抑制作用,抗酸化作用,コラーゲン合成促進作用などの化粧品原料として優れたいくつかの薬理,生理作用が知られているが,酸化分解を受けやすく,着色しやすいという欠点を持っている。そこでL-アスコルビン酸を誘導体とすることによりこれらの特性を保持しつつ,安定性を高め,脂溶性を与えて製剤的に用途を拡大することを目的として種々のエステル誘導体が提案されている(例えば,非特許文献1を参照)。」

A2「【0011】
本発明で使用することのできる油溶性アスコルビン酸誘導体としては,ジパルミチン酸アスコルビル,ステアリン酸アスコルビル,パルミチン酸アスコルビル,テトライソパルミチン酸L-アスコルビル等が挙げられる。」

刊行物B:特開2004-59496号公報
B1「【0002】
【従来の技術】
アスコルビン酸又はその塩,アスコルビン酸リン酸エステル,アスコルビン酸脂肪酸エステル,アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸類は,チロシンからメラニンを生成するチロシナーゼの作用を阻害したり,あるいは生成している濃色酸化型メラニンを淡色還元型メラニンに戻す作用を有していることから,肌の美白化作用を期待し化粧料の一原料として広く使用されている。」

B2「【0022】
油性成分としては,例えば,油溶性ビタミン類(ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンF,ビタミンK群のビタミン,ジカプリル酸ピリドキシン,ジパルミチン酸ピリドキシン,ジパルミチン酸アスコルビル,モノパルミチン酸アスコルビル,モノステアリン酸アスコルビル等のビタミン誘導体等)・・・等が挙げられる。」

イ 本願補正発明の効果について

本願補正発明の効果は,本願補正明細書の段落【0052】に記載されているように,「化粧料として重要な効果を示す容易に変質する親油性成分を,水と遮断した状態で経時的に安定的に配合する乳化状態を有する化粧料を得ることができる」ことである。
しかしながら,引用発明の効果として,刊行物1には「本発明において,特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコールを2種類以上を使用し,熱安定性や経時安定性に優れた乳化状態を有する化粧料を得ることができる」(1c)と記載されている。引用発明に美白剤として油溶性アスコルビン酸誘導体を含有させると,油溶性アスコルビン酸誘導体は油性成分に溶け込み,その誘導体が溶け込んだ油性成分は,引用発明の特定の多糖類と融点が45℃以上の高級アルコール2種類以上を使用して得られる乳化状態で乳化されると予測される。ここで,油溶性アスコルビン酸誘導体に着目すると,油溶性アスコルビン酸誘導体は油性成分に溶け込んで水と遮断された状態であり,加水分解等の恐れがないことから,経時的に安定的に化粧料へ配合されているといえる。それ故,引用発明に油溶性アスコルビン酸誘導体を含有させると,油溶性アスコルビン酸誘導体を水と遮断した状態で経時的に安定的に配合する乳化状態を有する化粧料を得ることができるといえる。
したがって,本願補正発明の効果は,刊行物1,2の記載事項及び本願出願前の周知技術から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものではない。

(2-6)独立特許要件のまとめ

したがって,本願補正発明は,その出願前に頒布された刊行物1,2に記載された発明及び本願出願前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび

以上のように,本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,請求項1についての補正は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされることにより適用される,同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,本件補正は,その余の点を検討するまでもなく,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成24年4月26日付けの手続補正は,上記のとおり却下されることとなったので,この出願の請求項1及び2に係る発明は,平成23年3月24日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「高級アルコール,油性成分,多糖類及び容易に変質する親油性成分を含有する化粧料において,
上記高級アルコールは,融点が45℃以上の高級アルコールであって,ヘキサデカノール,オクタデカノール,エイコサノール,ドコサノールから選ばれた2種以上を含有し,2種以上の上記高級アルコールの各々が化粧料の全量に対して0.4重量%以上含まれ,その合計が化粧料の全量に対して0.8重量%?20重量%含有され,且つ,2種以上の高級アルコールの最少配合量と最多配合量の混合比が,重量比で1:1?1:5の範囲であり,
上記油性成分は,油性成分(A)と油性成分(B)からなり,化粧料の全量に対して1重量%?35重量%含有され,且つ,上記油性成分(A)と上記油性成分(B)の含有量が重量比で1:1?50:1となる範囲で含み,
油性成分(A)が,スクワラン,パラフィン(炭素数16から炭素数50までのn-炭化水素単独あるいはそれらの混合物),流動パラフィン,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸イソステアリル,パルミチン酸イソプロピル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,ぶどう種子油,ローズヒップ油,ヒマワリ油,オリブ油,アボガド油,マカデミアナッツ油,メドウフォーム油,シア脂,トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル,テトラオクタン酸ペンタエリスリチル,ホホバ油から選ばれた1種以上を含み,
油性成分(B)が,ミツロウ(蜜蝋),水添パーム油,バチルアルコール,フィトステロール,コレステロール,ステアリン酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル,N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・フィトステリル),N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル・ベヘニル・フィトステリル),トリミリスチン酸グリセリル,トリステアリン酸グリセリル,ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれた1種以上を含み,
上記多糖類は,少なくとも下記の一般式(化1)で表される多糖が含まれており,
【化1】


化粧料の全量に対して0.01重量%?1重量%含有され,
上記容易に変質する上記親油性成分は,油性ビタミンとしてビタミンAであり,ビタミン誘導体及びビタミン前駆物質としてカロチン,アスタキサンチン,酢酸レチノール,パルミチン酸レチノール,ニコチン酸トコフェロール,ニコチン酸ベンジル,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルであり,補酵素としてα-リポ酸,ユビキノンであり油性紫外線吸収剤として4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン,メトキシ桂皮酸エチルヘキシル,ジイソプロピル桂皮酸メチルであり,不飽和脂肪酸としてリノール酸,リノレン酸である中から選らばれた1種以上であり,且つ,容易に変質する上記親油性成分は化粧料の全量に対して0.01重量%?5重量%含有され,且つ,その含有量が重量比で油性成分(A)の1/2以下であることを特徴とする乳化状態の化粧料。」

2 原査定の拒絶の理由の概要

本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は,本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

(「第2 2(2)(2-2)ア」に示した刊行物1と同じ。)以下,この刊行物を「刊行物1」と続けて用いる。
(「第2 2(2)(2-2)ア」に示した刊行物2と同じ。)以下,この刊行物を「刊行物2」と続けて用いる。

3 刊行物の記載事項

前記「第2 2(2)(2-2)イ」に記載したとおりである。

4 刊行物1に記載された発明

前記「第2 2(2)(2-3)」に記載したとおりである。

5 対比・判断

本願発明は,請求項1に記載した発明を特定するために必要と認める事項である「容易に変質する親油性成分」について,上記「第2 2(2)(2-4),(2-5)」で検討した本願補正発明における「パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルの中から選ばれた1種以上」も含まれる「油性ビタミンとしてビタミンAであり,ビタミン誘導体及びビタミン前駆物質としてカロチン,アスタキサンチン,酢酸レチノール,パルミチン酸レチノール,ニコチン酸トコフェロール,ニコチン酸ベンジル,パルミチン酸L-アスコルビル,ジパルミチン酸L-アスコルビル,テトラヘキシルデカン酸L-アスコルビルであり,補酵素としてα-リポ酸,ユビキノンであり油性紫外線吸収剤として4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン,メトキシ桂皮酸エチルヘキシル,ジイソプロピル桂皮酸メチルであり,不飽和脂肪酸としてリノール酸,リノレン酸である中から選らばれた1種以上」とする発明であるから,本願補正発明を包含する発明である。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の発明特定事項を減縮したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(2)(2-4),(2-5)」に記載したとおり,この出願前に頒布された刊行物1,2に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,この出願前に頒布された刊行物1,2に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余について言及するまでもなく,この出願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-27 
結審通知日 2014-02-28 
審決日 2014-03-11 
出願番号 特願2008-80365(P2008-80365)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 明子  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 齊藤 真由美
小川 慶子
発明の名称 化粧料およびその製造方法  
代理人 糟谷 敬彦  
代理人 糟谷 敬彦  
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