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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2013800212 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C07D
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C07D
管理番号 1287235
審判番号 無効2011-800098  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-06-09 
確定日 2014-05-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第4704362号発明「光学活性ピペリジン誘導体の酸付加塩及びその製法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯・本件特許発明
1.手続の経緯
本件特許第4704362号の請求項1?3に係る発明についての出願は、平成9年12月19日(優先権主張;平成8年12月26日)を出願日とする特願平9-350784の一部を平成12年2月10日に新たな出願とした特願2000-32961号の一部を、更に平成19年1月4日に特願2007-109号として新たな出願としたものであり、平成23年3月18日に特許第4704362号として特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して,請求人遼東化学工業株式会社は、平成23年6月9日に請求項1?3に係る各発明に対して無効審判を請求した。

以後の手続きの経緯は次のとおりである。
平成23年 8月29日付け 答弁書(被請求人)
同年 9月 9日付け 上申書(被請求人)
同年 10月13日付け 審理事項通知書(当審)
同年 12月 1日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 上 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 12月14日付け 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
同年 12月15日 口頭審理
同年 12月15日付け 上申書(被請求人)
平成24年 1月 6日付け 上申書(被請求人)
同年 1月23日付け 上申書(請求人)

なお、被請求人による上記平成24年1月6日付け上申書及び請求人による平成24年1月23日付け上申書は、以下、それぞれ、単に「上申書」という。

2.本件特許発明
本件特許第4704362号の請求項1?3に係る発明は、同特許の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
式(I)



で示される絶対配置が(S)体である光学活性ピペリジン誘導体のベンゼンスルホン酸塩。
【請求項2】
前記式(I)で示される絶対配置が(S)体である光学活性ピペリジン誘導体とベンゼンスルホン酸とを、塩形成反応させることを特徴とする、請求項1記載の光学活性ピペリジン誘導体の酸付加塩の製法。
【請求項3】
請求項1記載の式(I)で示される絶対配置が(S)体である光学活性ピペリジン誘導体のベンゼンスルホン酸塩の結晶。」

以下、これらの請求項に係る各発明をそれぞれの請求項の番号に対応させて「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」という。また、これら各請求項に係る発明をまとめて単に「本件特許発明」ということもある。

第2.当事者の主張の概要
1.請求人の主張の概要
請求人は、「特許第4704362号の請求項1?3についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の無効理由により、本件特許は無効とされるべきである旨主張し、証拠方法として以下に述べる書類を提出している。

そして、請求人の主張する無効理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件の請求項1?3に係る各発明は、下記甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。(以下、「無効理由1」という。)
(2)本件の請求項1?3に係る各発明は、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項により特許を受けることはできないものであって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。(以下、「無効理由2」という。)

(証拠方法)
甲第1号証:特開平2-25465号公報及び特願昭63-175142号についての特許法第17条の2の規定による補正の掲載(写)(平成4年2月6日発行)
甲第2号証:日本化学会編「季刊 化学総説 No.6,1989 光学異性体の分離」、学会出版センター、2,9,16,134,212?213頁(写)
甲第3号証:月刊薬事、第29巻、第10号、23?26頁、1987年(写)
甲第4号証:「光学活性体 その有機工業化学」(1989年1月20日発行)株式会社朝倉書店 20?21頁(写)
甲第5号証:日本化学会編「化学便覧 応用化学編 第5版」(平成7年3月15日発行)丸善株式会社 567?571頁(写)
甲第6号証:不服2007-3391号審決書(写)
甲第7号証:実験報告書
甲第8号証:特願2007-109(特許第4707362号)
甲第8号証-1 拒絶理由通知書及び面接記録
甲第8号証-2 手続補正書
甲第8号証-3 意見書
甲第8号証-4 特許査定
<以上、審判請求書に添付>

甲第9号証:特許第4704362号公報(写) (本件特許公報)
甲第10号証:「物質特許・多項制-その理論と運用-」、株式会社化学工業日報社 昭和51年2月27日発行 289?292頁(写)
甲第11号証:タリオン錠 インタビューフォーム 2007年 2?3頁(写)
甲第12号証:特許第1821360号 特許登録原簿(写)
甲第13号証:「特許判例百選 第三版」、有斐閣 2004年2月20日発行 28?29頁(写)
甲第14号証:表面、第33巻、第1号、48?57頁、1995年(写)
甲第15号証:実験報告書(2)
甲第16号証:有機合成化学、第54巻、第5号、24?33頁、1996年(写)
甲第17号証:「基礎薬理学実験」、株式会社南江堂 1987年5月10日発行 176?181頁(写)
甲第18号証:薬理と治療、第25巻、第4号、9?18,37?54頁、1997年(写)
甲第19号証:医薬品の開発 第20巻 「医薬品の安全性・毒性試験」、株式会社廣川書店 平成2年11月25日 21?33頁(写)
甲第20号証:「医薬品非臨床試験ガイドライン解説2002」、株式会社薬事日報社 2002年7月30日発行 11?15頁(写)
甲第21号証:「毒科学の基礎と実際1」、株式会社薬業時報社 平成7年12月20日発行 15?19頁(写)
甲第22号証:審査報告書、平成12年4月24日(写)
甲第23号証:東京高裁昭和53年(行ケ)第20号事件判決文(写)
<以上、口頭審理陳述要領書に添付>

甲第24号証:Trends in analytical chemistry Vol.6、No.5、125?134頁、1987年(写)
甲第25号証:「分離精製技術ハンドブック」、丸善株式会社発行、472?484頁、1993年(写)
甲第26号証:日本化学会誌、No.2、133?139頁、1992年(写)
甲第27号証:特開平1-221331号公報(写)
甲第28号証:特開平6-192168号公報(写)
甲第29号証:特開平5-103690号公報(写)
甲第30号証:特開平7-126218号公報(写)
甲第31号証:特開平8-92217号公報(写)
甲第32号証:特開平8-73432号公報(写)
甲第33号証:特表平8-506350号公報(写)
<以上、口頭審理陳述要領書(2)に添付>

甲第34号証:Journal of Chromatography A,Vol.737、No.2、157?169頁、1996年6月(写)
甲第35号証:高分子、Vol.49、No.5、316?317頁、2000年(写)
甲第36号証:CHEMISTRY LETTERS、1125?1128頁、1988年(写)
甲第37号証:Journal of Chromatography、Vol.448、454?455頁、1988年(写)
甲第38号証:CHIRALITY1、239?242頁、1989年(写)
甲第39号証:特開平6-157462号公報(写)
甲第40号証:JOURNAL OF LIQUID CHROMATOGRAPHY、Vol.11、No.9&10、2147?2163頁、1988年(写)
甲第41号証:実験報告書(3)
甲第42号証:ぶんせき、Vol.12、994?1002頁、1989年(写)
甲第43号証:JOURNAL OF LIQUID CHROMATOGRAPHY、Vol.9、No.2&3、519?535頁、1986年(写)
甲第44号証:Journal of Chromatography、Vol.461、397?405頁、1989年(写)
甲第45号証:「CHIRAL SEPARATIONS BY HPLC」、A.M.KRSTULOVIC/ELLIS HORWOOD LIMITED、446?475頁、1989年(写)
甲第46号証:「新しい製剤学」、廣川書店、平成5年9月10日、122?133頁(写)
甲第47号証:「医薬品の安定性」、南江堂、1995年2月15日、147?151頁(写)
甲第48号証:東京高裁昭和54年(行ケ)第107号 昭和56年11月5日判決文(写)
<以上、上申書に添付>

2.被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、上記請求人の主張する無効理由1,2は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。

(証拠方法)
乙第1号証:社本一夫「物質特許・多項性-その理論と運用-」(昭和51年2月27日第1刷発行)(株)化学工業日報社 289?291頁(物質特許制度及び多項制に関する運用基準 IV化学物質発明の成立性)(写)
乙第2号証:特許庁編「特許・実用新案 審査基準」(平成5年7月20日発行)(社)発明協会 第2章1?15頁(写)
乙第3号証:知財高裁平成21年(行ケ)第10180号判決文(写)
乙第4号証:東京高裁平成15年(行ケ)第62号判決文(写)
乙第5号証:日本化学会編「季刊 化学総説 No.6,1989 光学異性体の分離」、学会出版センター、2?11,44?45,140?141,212?218頁(写)
乙第6号証:分離技術、第26巻、第6号、15?19頁、1996年11月
乙第7号証:Pharn. Tech. Japan、Vol.11、No.11、1311?1318頁、1995年(写)
乙第8号証:Pharm. Tech. Japan、Vol.11、No.13、1643?1652頁、1995年(写)
乙第9号証:編集代表 野依良治「大学院講義有機化学I.分子構造と反応・有機金属化学」(1999年6月25日発行)東京化学同人 91?92頁(写)
乙第10号証:東京高裁平成8年(行ケ)第136号判決文(写)
乙第11号証:東京高裁平成12年(行ケ)第295号判決文(写)
乙第12号証:知財高等裁判所平成20年(行ケ)第10096号判決文(写)
乙第13号証:特開2000-302698号公報(写)
<以上、答弁書に添付>

乙第14号証:「分離精製技術ハンドブック」丸善株式会社発行、474?482頁、1993年(写)
乙第15号証:「高速液体クロマトグラフィーハンドブック」丸善株式会社発行94?103頁、2000年(写)
乙第16号証:「実験報告・陳述書」
<以上、口頭審理陳述要領書に添付>

乙第17号証:甲第24号証の抄訳
乙第18号証:J. Liq. Chromatogr.、Vol.9、No.2&3、313?340頁、1986年(写)
乙第19号証:Chem. Lett.、1857?1860頁、1987年(写)
乙第20号証:タリオン錠の医薬品インタビューフォーム(2008年8月改訂)(写)
乙第21号証:日本化学会編「化学便覧 基礎編 改訂5版」丸善株式会社発行、II-334?335頁(平成16年2月20日)(写)
<以上、平成24年1月6日付け上申書に添付>

第3 甲号証の記載事項
請求人が提出した、本件特許に係る出願の原出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第5号証には、それぞれ次の事項が記載されている。なお、下記の記載事項中の下線は当審で付した。

(1)甲第1号証の記載事項
(a1)「(1)一般式[I]:



[式中、Ar^(l)及びAr^(2)は、いずれか一方がピリジル基であり、他の一方がフェニル基 又はハロゲン置換フェニル基を表わし;Aは炭素数2?6の直鎖状のアルキレン基又はアルケニレン基を表わし;Bは低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、フェニル基又は低級アルキル置換フェニル基を表す]
で示される化合物、及びその医薬的に許容される酸付加塩。
・・・
(5)請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される酸付加塩を有効成分とする抗ヒスタミン剤。」(補正の掲載1頁、特許請求の範囲)

(a2)「次に本発明の代表的な化合物の一例を列挙するが、本発明がこれらの化合物に限定されることがないことはいうまでもない。
・・・
・4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕-1-ピペリジル〕ブタン酸及びそのベンゼンスルホン酸塩」(補正の掲載3頁左下欄10行?右上欄1行)

(a3)「本発明の化合物(I)においてAr^(l)とAr^(2)が結合する炭素は不斉炭素であり、立体異性体が存在するが、その各々及びそれらの混合物のいずれも本発明に包含される。」(補正の掲載4頁左上欄13行?16行)

(a4)「また、本発明化合物[I]に、適当な酸を作用させることによって、非毒性の、薬理的に有効な酸付加塩にすることができる。この場合、適当な酸の例としては、例えば・・・ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸・・・などの有機酸などが挙げられる。」(補正の掲載5頁右下欄3行?16行)

(a5)「実施例3
a)4[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ]ピペリジン4.98g(16.45ミリモル)及び4-ブロモブタン酸エチル3.85g(19.74ミリモル)をアセトン35mlに溶解させた後、この混合液に炭酸カリウム2.73g(19.75ミリモル)を加えて、4時間加熱還流撹拌した。・・・油状物の4-[4-[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ]-1-ピペリジル]ブタン酸エチル6.26g(91%)を得た。
・・・
b)上述のa)で得られたエチルエステル5.33g(12.78ミリモル)とp-トルエンスルホン酸2.43g(12.78ミリモル)をエタノール70mlに溶解させ均一溶液にした後、この混合溶液を減圧下で濃縮した。・・・再結晶して、4-[1[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ]-1-ピペリジル]ブタン酸エチルp-トルエンスルホン酸塩6.88g(91%)を得た。
融点130-132°C
元素分析値(%):
C_(22)H_(29)ClN_(2)0_(3)・C_(7)H_(8)0_(3)Sとして
計算値:C 61.16 H 6.33 N 4.76
実測値:C 61.14 H 6.25 N 4.75

実施例4
実施例3で得られた4-[4-[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ]-1-ピペリジル]ブタン酸エチルを用いて、実施例2と同様の方法で4-[4-[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ]-1-ピペリジル]ブタン酸を得た。
質量分析値:EI-MS^(+ )M^(+)ピークなし。
CI-MS m/e=389(M^(+) +1)
^(1)H-NMR(CDCl_(3)):
δ(ppm)=1.84?1.98(6H,b,m),
2.58(2H,t),2.73(4H,b,m),
2.92(2H,b),3.68(lH,m),
7.17?7.22(7H,m),8.51(1H,m),
11.31(1H,b)」(補正の掲載8頁左下欄1行?9頁左上欄15行)

(2)甲第2号証の記載事項
(2の1)光学活性体の薬理活性に対する記載事項
(b1)「不幸な事件のために有名になってしまったサリドマイド・・・も,(R)体は催奇形性をもたないが(S)体には強い催奇形成があり,ラセミ体を実用に供したことが悲惨な薬害事件(Wiedmann syndromeの爆発的出現)をひき起す原因となった.さらに,対掌体の一方が有効な生物活性を示す場合,もう一方の異性体が単にまったく活性を示さないだけでなく,有効な対掌体に対して競合阻害(competitive inhibition)をもたらす結果,ラセミ体の生物活性が有効な対掌体に比べ1/2以下に激減してしまう場合があることは,医薬品の開発研究でしばしば体験するところである.
・・・
したがって,光学的に純粋な対掌体をいかにして入手(合成または分割)するかは,医薬品のみならず生物活性物質を対象とする研究において,不斉中心をもつ化合物を扱う場合,避けて通ることのできない重要課題である.」(2頁6?16行)

(b2)「動物はL-アミノ酸より成るタンパク質から構成されており,生体内の代謝に関与する酵素もタンパク質である.酵素の基質特異性に基質の光学特異性が大きく寄与するのは,酵素側に存在する不斉性を考えれば容易に『当然のこと』と受けとめることができる.生体内で起る複雑でありながら選択性の高い反応は,酵素による『不斉を含む三次元の分子認識』によるものと考えられる.
生理(薬理)活性をもつ物質が生体に摂取され吸収されると,その物質に特異的な親和性をもつ受容体(receptor)との結合により生理活性が発現することになるので,基質が不斉中心をもっていれば,その(S)体と(R)体とでは生理活性に相違が生ずるのはこれまた自然であろう.医薬品の多くは生体にとって異物(xenobiotics)であり,副作用が認められない場合でも,疾病という異常状態から正常状態への復帰に必要な最少限度の用量を(必要期間だけ)投与されるべきである.したがって,医薬品の構造中に不斉中心が存在している薬物は,たとえ一方の光学異性体が生体に対して何らの生理活性を示さないラセミ体であっても,光学分割して目的に適合した対掌体のみを提供すべきであると主張されるようになった.換言すれば,このようなラセミ体は『50%の不純物を含有する医薬品』とみなすべきであるとの提唱であり,これが共感を呼ぶに至ったのはごく自然のことである^(1)).」(16頁3?18行)

(b3)「医薬品はヒトや動物の病気の治療に用いられる化学物質であるが,その作用は薬物が生体内の特定の受容体(レセプター)に結合して活性を発現するものと考えられている.したがって,薬理活性の発現には医薬品と受容体の双方の立体構造が重要な役割を演じ,不斉をもつ薬物ではその鏡像体によって受容体との結合のしやすさに差があり,これにより薬理活性の強さに差を生じることになる.場合によっては,まったく異なった薬理作用を示すこともある.さらに薬物が受容体に到達するまでに各種の酵素によって分解されて活性を失ったり,逆により活性の強い形に変換される場合もあり,その分解あるいは変換の速さが鏡像体によって大きく異なることがしばしば認められていて,これも薬理活性の差となって現れる.また,分解物が毒性をもつ場合には,鏡像体によって異なった副作用を示すこととなる.
このように,医薬品の立体化学は薬効だけでなく,吸収,分布,代謝,排泄,さらに副作用まで,その薬理作用にきわめて大きな役割を果している.治療の目的に適した特定の薬理作用のみをもつ医薬品が強く求められる傾向にあり,今後ますます,目標とする受容体のみに作用する特定の化学構造と立体構造をもつ医薬品開発の重要性が増加するものと考えられる.
・・・
光学異性体間の薬効の差が小さいもの,活性体で投与しても体内でラセミ化されるもの,逆にラセミ体で投与しても体内で活性型の鏡像体に変換されるものなど,薬物代謝にはさまざまな経路があり,不斉をもつ医薬品はすべて光学活性体として使用すべきだとはいえない.現状では上述のような薬物代謝を充分に検討したうえで,ラセミ体で使用するか,光学活性体とするかが決定されている.最近では製造承認を得るために,ラセミ体の薬物については,それぞれの光学異性体の吸収,分布,代謝,排泄など薬物動態を検討した資料の提出が求められている^(2)).」(212頁12行?213頁11行)

(2の2)液体クロマトグラフィーによる光学分割に関する記載事項
(b4)「この領域での飛躍的な進歩は,HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)の進歩に伴ってもたらされた。分子の立体構造に対して大きな識別力をもつ効率のよいカラムが開発され,分割能と同時に量的処理能力が向上したからである.」(9頁7?9行)

(b5)「液体クロマトグラフィー(LC)による光学分割,なかでもHLPCによる光学分割については,分割能の高い種々のタイプのキラル固定相の開発が進んでおり,最も広範囲の光学異性体の分離に対応できるようになっている.GCによる光学分割と比較すると,熱的に不安定な物質や高沸点の物質の分割においてとくに有利であり,分取も容易である。」(134頁11?14行)

(3)甲第3号証
(c1)「生体(酵素や受容体)はこれらの光学異性体を識別する能力を持っており,異性体にはまったく生理活性を持たないもの,弱い同類の生理活性を持つもの,拮抗的な生理活性を持つもの(アンタゴニスト)や別な生理活性を持つものがある。
それゆえ,医薬品として用いるときにはラセミ体としてではなく,目的にあったエナンチオマーのみを用いることが好ましいと考えられるが,現状はほとんどがラセミ体として用いられている。・・・しかし,最近,医薬品としてラセミ体の開発・使用に関して問題が投げかけられてきた。その背景として,最近の薬物分析技術の進歩,とくに高速液体クロマトグラフィーにおけるキラルカラムの開発などにより,光学異性体の分離・定量の技術が進歩し,その結果,合成キラル医薬品の生体内動態,特に代謝に関して異性体間に著しい差があることが明らかになったことがあげられよう^(1,2))。」(23頁左欄7行?右欄3行)

(c2)「1.光学異性体間で薬理作用を異にするもの
Thalidomideの催奇形作用で見られたような,異性体間で薬効・毒性を異にするものの代表的なものにつき述べる。たとえば,DOPAではl-体はlevodopaとして抗パーキンソン病薬として用いられているが,d-体は薬理作用がなく,顆粒球減少作用を起こす。Barbituratesは(-)-体は鎮静作用を示すが,(+)-体はむしろ興奮作用を示す。Ketamineの(+)-体は強い麻酔作用を持つが,(-)-体は弱い麻酔作用と不安・興奮作用,心拍増加作用を持つ。Pentazocinは(-)-体はより強い鎮痛作用を持つが,(+)-体はむしろ強い不安誘起作用を持つ。Verapamilは(-)-体も(+)-体とほぼ同じ程度の冠血管拡張作用を持つが,その心筋収縮力抑制作用および心筋伝導抑制作用は(+)-体の方が少ないので,(+)-体の方が安全性の高い,より好ましい抗狭心薬と考えられている。
・・・
Ariёns(1984)はこれらラセミ体間で異なった薬理作用を持つ薬を“psendohybrid drug”と呼んで,エピネフリンのように一つの分子内にαおよびβ-作用を持っている“hybrid drug”から区別している^(3))。」(23頁右欄19行?24頁左欄27行)

(4)甲第4号証
(d)「農薬,医薬には光学活性体が多く存在し,エナンチオマーによってまったく効果の異なる場合や作用強度に差がある場合がある.特に,生理効果がまったく異なる場合,より直接的に人体に関与する農薬,医薬では,重大な問題となる.
・・・
以上の例は,1対のエナンチオマーの間でその生理活性の強度に差異がある場合であるが,次に示すようにまったく異なる作用をするものが数多く知られている.
置換基としてブチル基とフェニル基を有するバルビツール酸誘導体では,(R)-体は鎮痛,催眠作用があるが,(S)-体はけいれん作用を示す.また,ジルチアゼムの(+)-体は冠血管拡張作用を示し,有用な化合物であるが,(-)-体は脳波覚醒作用をもっている^(7)).このように,両エナンチオマーの生理作用が異なる例は他にも多くあるが,サリドマイドがその最も悲劇的な例であろう.サリドマイトの(R)-体は催奇性がなく,鎮静催眠作用を示す化合物としてきわめて優れた化合物である.しかし,その(S)-体には強い催奇性がある.サリドマイドの悲劇は,その鎮静催眠作用にのみ着目し,催奇性を有する(S)体を半量含むラセミ体を使用したことによって起こった.この例も,いかに光学活性体が必要であり,いかに光学活性体を純粋かつ効率よく調製することが重要であるかを端的に示している.」(20頁10行?21頁15行)

(5)甲第5号証
(e1)「一般に行われる光学分割の手法は、1)結晶化を利用する方法,2)化学反応を利用する方法,3)吸着を利用する方法に大別できる.
1)はこれまでもっともよく行われてきた手法であり,小スケールの分離から興行的規模の分離まで行える.・・・1),2)の欠点としては,分割できる化合物が限られていること,時間と労力を要することなどがある.
3)は1980年代にはいり急速に発展した手法であり,主としてクロマトグラフィーによる.・・・なかでも高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学分割は,光学純度決定と分取のための主要な手法になっており,化学,薬学などの学術研究上だけでなく,光学活性な医薬品などの開発や光学活性物質の品質管理などに欠くことのできない分析法になっている.また,キログラムスケールの分取も行うことができる.」(II-567頁右欄下から23?2行)
(当審注:前記(e1)及び下記(e2)においては、証拠に記載されている丸数字の表記が審決中では表示不可能なため、便宜的に「1)」等の表記で記載した。)

(e2)「b.高分子系キラル固定相
高分子系キラル固定相の例を図12.73に示す.(当審注;図の記載は省略する。)使用されている光学活性高分子は,1)多糖誘導体(19),(20),2)タンパク質(21),3)ポリ(α-アミノ酸)(22)?(25),4)ポリメタクリル酸エステル(26),5)ポリアクリルアミド(27)などである.
・・・
(i)多糖誘導体 セルロースやアミロースなどの多糖はもっとも入手しやすい高分子であり,かつ光学活性である.これらの多糖自体もある程度の光学分割能を示すが,実用性の高い充填剤は得られていない.しかし,多糖は反応性に富むOH基を有しており,誘導化すると優れた光学分割能を示し,シリカゲルに吸着させることにより実用性の高いキラル充填剤が調製できる.
セルロースの誘導体としては,エステル(28)?(30)とフェニルカルバメ-ト誘導体(31)?(34)がよい.・・・
・・・
多くの誘導体のうち,(31)?(34)はシリカゲルに吸着させるととくに実用性の高いキラル充填剤を与える.なかでも3,5-ジメチルフェニル誘導体(34)は,芳香族炭化水素やハロゲン化合物からアミンやカルボン酸まで,きわめて広範囲の化合物をかなりの確率(約60%)で光学分割することができる.・・・
1,4-α-グルカンであるアミロースのカルバミン酸フェニル誘導体も,シリカゲルに吸着させると実用性のあるキラル充填剤となる.この場合もカルバミン酸3,5-ジメチルフェニル(35)がもっとも高い光学分割能を示すことが多い.(35)の不斉識別能は(34)のそれとは異なり,両者はかなり相補的である.したがって,(34)と(35)を用いると80%前後の確率でラセミ体を分割できる可能性がある.
・・・
(ii)タンパク質
・・・卵白中に存在するオボムコイド(OVM)・・などは,いずれもシリカゲルに結合させると,特徴のある光学分割能を示すキラル充填剤となる.・・溶離液には緩衝液を使用し,イオン結合と疎水的相互作用が,溶質との分子間力としておもに働くと考えられる.なお,不斉識別に強く関与するサイトはタンパク質の一部であるので,分取にはあまりむかない.・・・
(iii)ポリ(α-アミノ酸)
・・・
(iv)ポリメタクリル酸エステル
・・・
(v)置換ポリアクリルアミド
・・・
(vi)その他の高分子
・・・
c.市販されている高分子系キラル固定相
現在市販されている高分子系キラル固定相を表12.66に示す.天然高分子を利用したものが多く,これらはキラルカラム全体をみても,非常に高い光学分割能を有しており,HPLC用キラムカラムとして主要な位置を占めている.



(II-569頁左欄28行?571頁左欄下から9行,571頁表12.66)

第4 本件特許発明1について
1.甲第1号証記載の発明
(ア)甲第1号証には、一般式[I](式は省略する。)で示される化合物及びその医薬的に許容される酸付加塩が記載されている。(前記(a1))
(イ)実施例4として、実施例3で製造された、4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕-1-ピペリジル〕ブタン酸エチルから4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕-1-ピペリジル〕ブタン酸が製造されたこと、及び、その質量分析値、^(1)H-NMRのデータが記載されている。(前記(a5))
(ウ)適当な酸付加塩とすることができ、適当な酸としてベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられることが記載され、また、実施例3-bに、p-トルエンスルホン酸塩の調整例が記載されている(前記(a4),(a5))。
(エ)代表的な化合物として、4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕-1-ピペリジル〕ブタン酸及びそのベンゼンスルホン酸塩が例示されている。(前記(a2))
してみると、甲第1号証の上記記載に照らして、「4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕-1-ピペリジル〕ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩」の発明(以下、「甲第1号証発明」という。)が実質的に記載されているということができる。

2.対比
本件特許発明1と、甲第1号証発明とを対比する。
本件特許発明1の化合物は、絶対配置が(S)体である4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジノ〕ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩であることは、式(I)の化学構造式から明らかである。(以下、「4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジノ〕ブタン酸を「本件化合物」と、また、「本件化合物」のベンゼンスルホン酸塩を「本件化合物のベシル酸塩」ということがある。)
また、甲第1号証発明の「4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕-1-ピペリジル〕ブタン酸」は、本件特許発明1の「4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジノ〕ブタン酸」と同義であるから、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジノ〕ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩」である点。

[相違点]
「4-〔4-〔(4-クロロフェニル) (2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジノ〕ブタン酸」が、本件特許発明1では「絶対配置が(S)体である」のに対し、甲第1号証発明では絶対配置が(S)体であることが特定されていない点。

3.相違点についての判断
(1)最初に無効理由1について検討する。
甲第1号証の一般式[I]から明らかなとおり、本件化合物は、不斉炭素1個をもっており、絶対配置が(S)である異性体(この審決においては、「(S)体」と表記している。)と絶対配置が(R)である異性体(この審決においては、「(R)体」と表記している。)の1対の光学異性体が存在する。
そして、請求人は、上記相違点について、甲第1号証に、光学異性体の各々が包含される旨の言及があることから、「甲第1号証には、4-〔4-〔(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジノ〕ブタン酸・ベンゼンスルホン酸塩のラセミ体とともに、これを構成する(R)体と(S)体のそれぞれのエナンチオマーが開示されている」と主張する。また、被請求人の、甲第1号証に光学異性体についての具体的な記載がない旨の主張に対し、「新規な化合物であればともかく、ラセミ体とそれを構成する光学異性体については、対比される刊行物の記載にラセミ体が開示されていれば、それを構成する光学異性体も内在的に開示されていることは自明であり、また本件原出願前から種々のラセミ分割の方法が行われていたという技術常識に基づけば、たとえラセミ体の光学分割の方法について明示的な記載はなくても当業者によって実施可能な開示がすでになされていたということができる」と主張し、これは、「(s)α-シアノ-3-フェノキシベンジルアルコール」に関する発明に関しての平成3年(行ケ)8号判決の考えとも一致し、物質特許制度についての運用基準(乙第1号証)の考え方とも一致すると主張する。(審判請求書9?11頁の(3)(ii),(iii)、陳述要領書2?3頁の(イ)(i),(ii))

しかしながら、ラセミ体が開示されていてもそれを構成する光学異性体がいかなる薬理活性を有するかは、実際に光学分割によって特定の異性体を単離し、薬理試験を行わない限り知ることができないことは明らかであって、「サリドマイド事件」は、(R)体には鎮静催眠作用があり催奇性がなく、(S)体には強い催奇性があるにもかかわらず、(S)体を含むラセミ体を使用したことによって起こった悲劇であることは当業者ばかりでなく、広く一般に知られている事実である。
(甲第2号証(b1)、甲第3号証(c2)、甲第4号証(d))
そして、最近では、ラセミ体は50%の不純物を含有する医薬品とみなすべきとの提唱がなされたり、製造承認を受けるためにラセミ体の薬物については、それぞれの光学異性体の吸収、分布、代謝、排泄など薬物動態を検討した資料の提出が求められている。
(甲第2号証(b2),(b3))

してみれば、医薬に用いられる化合物の場合には、光学異性体を単に旋光性のみが異なる化合物とすることはできないから、ラセミ体が開示されていることをもってそれを構成する光学異性体が開示されているとすることはできない。

そして、甲第1号証に記載の化合物は医薬に用いられる化合物であるところ、甲第1号証には、「本発明の化合物は…立体異性体が存在するが、その各々及びそれらの混合物のいずれも本願発明に包含される」(前記(a3))と記載されているにすぎず、具体的な異性体の分割方法や、分割された異性体の薬理作用については何ら記載されていないのであるから、甲第1号証に、本件特許発明にかかる(S)体の化合物の発明が記載されているということはできない。

なお、平成3年(行ケ)8号判決(甲第13号証参照)は、殺虫剤の中間体である「(s)α-シアノ-3-フェノキシベンジルアルコール」の発明に関するものであって、医薬の有効成分として用いられる化合物の発明である本件とは事案を異にする。

(2)また、請求人は、第7号証として、キラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフ法によって(S)体の本件化合物を分割できたことを示す実験報告書を提出し、本件特許出願の原出願の分割の元となった特願平9-350784号の優先件主張の日当時(以下、単に「本願出願当時」という。)、甲第2号証,甲第3号証,および甲第5号証(前記(2の2)),(c1),(e1))に示すとおりラセミ体を分割する方法として、高速液体クロマトグラフィーに用いるキラルカラムが開発されており、「CHIRALCEL OD やCHIRALPAK AD」など、光学分割能に優れ、また、多岐にわたる化合物の光学分割が可能な、最も実用性の高い主要なキラルカラムが市販されて利用できる状態にあったから(甲第5号証)、甲第1号証には、(S)体の本件化合物のベシル酸塩が記載されていることは明らかであると主張している。(審判請求書11?12頁(iv))

そこで、上記の理由について、以下、検討する。

甲第7号証における分割の条件は次のとおりである。
カラム:CHIRALPAK AD 内径20mm、長さ250mm、粒子径10μm
移動相:ヘキサン/2-プロパノール/トリフルオロ酢酸混液(800:200:1)
試 料:ラセミ体(本件化合物):120mg/回

ところで、化学の技術分野において汎用の便覧である甲第5号証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学分割は、光学純度決定と分取のための手法となっており、キログラムオーダーの分取も行うことができることが記載されている(甲第5号証II-567頁右欄、前記(e1))。また、各種の光学分割材料について記載されており、多糖は誘導化すると優れた光学分割能を示し、シリカゲルに吸着させることにより実用性の高いキラル充填剤が調製できること、多糖類誘導体としては、セルロースのカルバミン酸3,5-ジメチルフェニル誘導体(34)は、きわめて広範囲の化合物を約60%の確率で光学分割することができることや、アミロースでもカルバミン酸3,5-ジメチルフェニル誘導体(35)が最も高い分割性能を示すことが多いことも記載されている(特に、II-570頁左欄、前記(e2))。そして、「HPLC用キラムカラムとして主要な位置を占めている」(II-570頁左欄下から9行)市販高分子系キラル固定相として、甲第5号証の同頁表12.66には(34)に相当するものとしてCHIRALCEL ODが、(35)に相当するものとしてCHIRALPAK ADが記載されており、これらのカラムでは、溶離液として、「ヘキサン-2-プロパノール」が用いられることも記載されている。

しかしながら、甲第5号証には、これらを使用して分割できた具体的な化合物については記載されておらず、また、溶離液として、ヘキサン、2-プロパノールにトリフルオロ酢酸を加えることについても記載されていない。
この点について、請求人が提出した、甲第25号証(分離精製技術ハンドブック、乙第14号証と同じ証拠である。)には、セルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)(CHIRALCEL OD)やアミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)(CHIRALPAK AD)により多くの化合物の分割ができたことが記載されており(480頁左欄1行?同頁右欄1行)、分割された化合物の例(図11.37、図11.38)も記載されているが、本件化合物あるいは、本件化合物と構造が類似した化合物は含まれていない。

そうすると、本件特許出願当時、光学分割の手法として、キラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフ法が周知であったとしても、本件化合物を光学分割する方法として、甲第7号証の方法が当業者にとって自明であったということはできないから、上記の理由により、甲第1号証に本件特許発明1にかかる(S)体の発明が記載されているということはできない。

(3)更に、請求人は、(S)体である本件化合物のベシル酸塩を含む医薬が受けた製造承認に基づいて、被請求人が甲第1号証に係る出願の特許(特許第1821360号)についての存続期間の延長登録を得ていること(甲第12号証)、および、特許法67条の3第1項1号に規定する延長登録の要件を満たすためには、1)政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除されたこと、2)政令で定める処分によって禁止が解除された行為が「その特許発明の実施」に該当する行為に含まれることが必要とされ(知財高裁平成20年(行ヶ)10460号判決)、仮に(S)体である本件化合物のベシル酸塩を含む医薬が甲第1号証に記載も示唆もされておらず発明として成立していないのであれば延長の対象になり得ないのに、被請求人は延長登録申請を行っていることから、(S)体である本件化合物のベシル酸塩が甲第1号証に記載されていることは被請求人が認識していたことであると主張する。(口頭審理陳述要領書5?6頁の(ロ))
そして、これに関連して、請求人は、特許権の禁止権の範囲、すなわち特許発明の技術的範囲と、公知文献としてのその特許明細書に記載された公知技術の範囲は、特許請求の範囲に記載された事項に関しては一致すべきものであるところ(甲第48号証)、甲第1号証の特許発明の技術的範囲に(S)体である本件化合物のベシル酸塩が含まれるとして延長登録出願がされ、審査で登録されていることからも甲第1号証に記載された公知技術の範囲に(S)体である本件化合物のベシル酸塩が含まれると解される旨主張する(上申書13頁の(3))。

しかしながら、特許法第67条の3で規定される延長登録を得るための要件(特許発明の実施に当該処分が必要であったこと)は、当該処分を受けたものにかかる発明が、特許発明の特許請求の範囲の技術的範囲に包含されていることが必要とされるのであって、当該処分を受けたものにかかる発明が特許発明の明細書等に個別具体的に記載された発明であることが必要とされるものではない。

したがって、上記の理由により、甲第1号証に、本件特許発明1にかかる(S)体である本件化合物のベシル酸塩の発明が記載されているということはできない。

以上のとおりであるから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであるということはできない

(4)次に無効理由2について検討する。
上記(1)で述べたとおり、甲第1号証記載の本件化合物について、光学分割することについての動機付けがあることは甲第2号証?第4号証から明らかである。
しかしながら、上記したとおり、甲第25号証を参照しても、甲第5号証から、本件化合物をHPLC法により光学分割し得ることが自明であるとすることはできない。
一方、上記(2)で、甲第5号証についての記載事項(e2)として指摘したとおり、キラル固定相としてCHRALCEL OD やCHIRALPAK AD は、高い光学分割能を示し、HPLCキラルカラムとしても主要な、特に実用性の高いものであることから、本件化合物をHPLC法により光学分割する際には、キラル固定相として、CHRALCEL OD やCHIRALPAK AD を採用することは、当業者が最初に検討することといえる。

そこで、当業者が、本件化合物をCHIRALCEL OD やCHIRALPAK AD を用いたHPLC法により光学分割するにあたり、甲第7号証における条件を採用することを、容易に想到できたものであるか、更に検討する。

前述の甲第5号証の表12.66から明らかなとおり、CHIRALCEL OD やCHIRALPAK AD を用いたHPLC法による光学分割における移動相条件としては、ヘキサン-2-プロパノールが一般的である。
そして、請求人は、甲第7号証における移動相条件(ヘキサン/2-プロパノール/トリフルオロ酢酸混液(800:200:1))を採用する点に関し、甲第16号証を提示して、遊離のカルボン酸基を有する化合物を、CHRALPAK AD等のカラムを用いたHPLC法により光学分割する際に、トリフルオロ酢酸を添加した移動相を用いることは、本件優先日当時の周知慣用の光学分割手段であったから、甲第7号証の条件を採用することは当業者が容易に想到し得るものである旨主張する(口頭審理陳述要領書11頁の(iv)-4)。
そこで、以下に検討する。

請求人が提出した甲第16号証には、次の事項が記載されている。
「カルバメート誘導体の中でもセルロース3,5-ジメチルフェニルカルバメート(OD)は,広い範囲のラセミ体に高い光学分割能を示す。特に,・・・アミノ基を保護したアミノ酸誘導体等がよく光学分割される。」(28頁右欄末行?29頁左欄6行)
「図6には,有機溶媒を移動相に用いる場合の分割条件(カラム,移動相)設定の考え方を示した。まずラセミ体の官能基から,その化合物が中性,塩基性,酸性のいずれに相当するかを判断する。中性,塩基性ならばヘキサン/2-プロパノール混合溶媒を移動相に用いて,分割能が高いOD,ADから順に試みるのが良い。部分分割した場合には,両溶媒の混合比率を変化させて最適化を試みる。・・・遊離のカルボン酸基を持つラセミ体の場合にはOD,OJを用いて移動相にトリフルオロ酢酸を0.1%添加すると効果かある。酸無添加系ではラセミ体は溶出せず,酸添加によりラセミ体(当審注:「セラミ体」と記載されているが「ラセミ体」の誤記であることは明らかである。)が有するカルボン酸の解離が抑えられ,固定相との好ましい相互作用が促進されると考えられる。
・・・塩基性化合物の場合には,酸性のラセミ体ほど顕著な効果はないが,移動相にジエチルアミンを加えることにより,シャープな分離を達成できることがある。」(29頁左欄17行?同頁右欄17行)

上記記載事項によれば、本件化合物をHPLC法によって分割しようとする際には、本件化合物について塩基性、中性、酸性のいずれかに当てはめて検討するものと解されるところ、本件化合物は、遊離のカルボン酸基を有する酸性化合物である一方、酸付加塩を形成することから塩基性化合物であるから、単純に塩基性、中性、酸性のいずれかにあてはまるものではなない。

この点について、請求人は、甲第34号証等を提示し、カルボン酸基とともに一級アミノ基を有する両イオン性化合物が、CHIRALPAK AD を用い、ヘキサン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸を含む移動相によって光学分割できたことから、本件化合物も同様の条件で光学分割できることは容易に想到できる旨主張している。(上申書3頁26行?4頁12行、同5頁4?17行)
しかしながら、甲第34号証の161頁Fig. 1中のCOMPOUND2.における1級アミノ基はベンゼン環に結合しており、その塩基性は脂肪族アミンに比べてはるかに弱く、COMPOUND2.は、両イオン性化合物というよりは、むしろ、酸性化合物に近いものと解される。しかも、甲第34号証では、移動相のトリフルオロ酢酸の添加量(1%)が、甲第16号証および甲第7号証における条件(0.1%)と異なっている。
(アミン類の塩基性については、たとえば、新井貞夫著「工学のための有機化学」(株)サイエンス社2001年7月10日初版発行の224-225頁等参照。)
同様に、甲第28号証のアルミノプロフェンもその2級アミノ基はベンゼン環に結合しており、塩基性は弱く、甲第39号証のキノリン環も塩基性は弱いもので、やはり、本件化合物とは異なり、むしろ、酸性化合物に近いものである。さらに、甲第28号証では、甲第7号証では採用されてないセルトーストリスベンゾエート系のカラムを使用している点や、甲第39号証では、n-ヘプタン96%及び1%の水及び0.2%のトリフルオル酢酸を含む2-プロパノールの混合物4%からなる溶媒系が使用されており、甲第16号証の溶媒系を示唆するものではない。

一方、本件化合物は、分子中にカルボン酸基と、塩基性のピリジル基及びピペリジル基を有しており、塩基性の強いピペリジル基と酸性のカルボン酸基を有している点で、アミノ酸のような両イオン性の化合物に近いものである。
ところで、甲第16号証の図6 (Fig. 6)には、塩基性化合物(Basic compds.)の例としてアミン類(amins,etc.)及びアミノ酸のエステル(esters of amino acids, etc.)が記載されていることからみて、本件化合物のような両性化合物をHPLC法によって分割しようとする際には、カルボン酸基をエステル化した塩基性化合物として分割を試みるのが順当な判断というべきである。
そして、以上述べたとおり、いずれの証拠にも、本件化合物のような官能基を有する両性化合物を誘導体化することなく直接AD又はODカラムを用い、ヘキサン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸を含む移動相によって光学分割した例は記載されていないし、そのような示唆もなされていない。

してみると、これらの証拠の記載を参酌しても、本件化合物の光学分割に当たり、ヘキサン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸(0.1%)を含む移動相を選択することを当業者が容易に想到できるとはいえない。

したがって、当業者が本件化合物を、HPLC法によって分割しようとする際に、甲第7号証(及び甲第15号証、甲第41号証)における条件を採用することを容易に想到できたということはできない。

なお、請求人が提出した甲第27,29?33, 36?38号証における光学分割の対象化合物はいずれも酸性化合物であって、本件化合物のような両イオン性化合物ではない。また、請求人は、本件化合物はカルボキシル基を有し、等電点からみても酸性化合物であるから、酸性化合物として光学分割を行うものである旨主張している。(平成24年1月23日提出の上申書4頁27?30行)
しかしながら、本件化合物は、酸と反応して酸付加塩を形成するものである(甲第1号証の補正の掲載5頁右下欄3?5行)以上、甲第16号証における酸性化合物であるということはできない。
さらに、請求人は、甲第15号証によれば、Ultron ES-OVMによっても本件化合物のラセミ体が光学分割ができたと主張する(口頭審理陳述要領書20頁6?8行)が、甲第15号証では、各異性体の分離を溶出ピークにより確認しているのみで、分取はしていないところ、Ultron ES-OVMカラムのようなタンパク質カラムは分取に適さないものであることが従来から知られている(甲第5号証II-570頁右欄2?4行、前記(e2))し、本件化合物の光学分割にかかる甲第15号証に記載の条件を採用することを記載あるいは示唆する証拠も何ら示されていないから、この点の請求人の主張も採用できない。

ところで、乙第5号証(甲第2号証と同じ書籍であるが、引用箇所が異なる)には、光学異性体を得る方法として、光学分割による方法と不斉合成によって直接合成する方法があり、光学分割の方法としては、結晶化法(優先晶出法とジアステレオマー法)、クロマトグラフィーを用いる方法等があることが記載されている。(乙第5号証2?3頁)
また、同証には、ジアステレオマー法がラセミ体から光学活性体を得る方法として、最初に試みる価値のある方法であることが記載されている(乙第5号証45頁)。
してみると、本件化合物の光学分割を行う際に、当業者はジアステレオマー法をまず最初に検討するものと解される。
また、乙第5号証には、クロマトグラフィーを用いる方法は、カラム中の不斉中心と相互作用を利用するという意味で、ジアステレオマー法と同じ原理に基づくものであることが記載されている(乙第5号証3頁)ことからみて、ジアステレオマー法によって分割できなかった場合には、クロマトグラフィーを用いる方法を用いても分割は困難であると予想できる。

そして、本件化合物については、本件特許出願の審査における意見書(甲第8号証-3の6?9頁)によれば、実際、通常の光学分割剤を用いたジアステレオマー法を試みたところ光学分割できなかったことが記載されている。そして、そのため、中間体について光学分割する方法を検討したとされており、実際、本件特許明細書でも、ラセミ体の本件化合物についてのジアステレオマー法による光学分割は記載されておらず、中間体アミン化合物である、(±)4-[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジンを、(-)ジベンゾイル-(L)一酒石酸一水和物等を用いた結晶化法(乙第5号証のジアステレオマー法に相当する方法である。)によって光学分割した(S)-(-)-4-[(4-クロロフェニル)(2-ピリジル)メトキシ〕ピペリジンを用いて、(S)体である本件化合物が製造されている。

してみれば、かかる点からも、(S)体である本件化合物を得ようとする場合、あえて、本件化合物のラセミ体のHPLC法による方法に執着し、試行錯誤の末に甲第7号証の条件に到達することの必然性があったということはできない。

以上述べたとおり、「絶対配置が(S)体である」本件化合物は、本願出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に製造すること(光学分割すること)ができなかったものである。

したがって、本件特許発明1が、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

なお、請求人は、本件特許発明1は物の発明であって製造方法の発明ではないから製造方法の容易想到性や実現の困難性は、本件発明1の進歩性に判断において考慮すべきでなく、発明とは技術思想であるから特許法第29条第2項における容易想到性は思想としての想到容易性であって、思想を具現化する実現容易性を意味するではない旨主張している。(口頭審理陳述要領書3頁の(ロ)、同8?9頁の(ロ)(i),(ii))
しかしながら、特許の対象となるのは、産業上利用できる発明であることが特許法第29条に規定されており、産業上利用できる発明である以上、単なる思想ではなく具現化された(あるいは、事実上具現化されうる)思想としての発明について判断されることになる。
また、その物の製造方法も具現化されていない限り、物の発明が具現化されることはあり得ないから、物の発明について容易想到性を判断する際には、その製法についても判断の対象となる。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

(5)次に、本件特許発明1の効果について検討する。
(ア)請求人は、本件特許発明1の薬理効果(回腸のヒスタミン収縮抑制作用、ヒスタミン誘発ショック死に対する生存率、急性毒性)を示す試験について、薬効を比較する場合は、各々の薬物について用量の対数に対して反応を求めたS字状曲線データを作成し、作用が50%となる用量を示すID_(50)、IC_(50)等によって比較するのが通常である(甲第17号証)のに、本願出願の審査において提出された意見書に添付された実験成績証明書(3及び4)においては1点のみで比較しており意味がない旨の主張をしている(口頭審理陳述要領書12?14頁の(ハ)(i)?(iii)、口頭審理陳述要領書(2)4?6頁の(3))。
しかしながら、本件特許明細書には、(S)体である本件化合物のベシル酸塩の薬理効果に関し、本件明細書には、本件化合物のエチルエステルのフマル酸塩において、(S)体が、(R)体よりもヒスタミンショック死抑制作用およびPCA反応抑制試験において優れていることを示す薬理試験結果がED_(50)あるいは用量依存的反応の結果として記載されている(本件特許明細書の【0030】?【0035】、特に【0035】))。
そして、その結果は、上記実験成績証明書の結果と矛盾するものではないし、薬理作用について定量的に検討するためには、ID_(50)、IC_(50)等で薬理効果を記載すべきであるとしても、上記の試験結果から、定性的には(S)体である本件化合物のベシル酸塩とラセミ体との効果上の違いを理解し得ると解される。

したがって、本件特許発明1の薬理効果に意味がないとはいえない。

(イ)結晶安定性について
請求人は、本件特許発明1の化合物の結晶安定性の点の効果に関し、医薬品開発において、吸湿性や光学純度などの安定性を検討することは当業者が当然に行うことであり(甲第46,47号証)、本件特許発明は、薬効から必然的に選択した(S)体について、このような安定性を単に確認したに過ぎないし、また、ラセミ化しにくい点は(S)体の塩が本来有する性質でしかなく、エステル体でも全体の1%未満がラセミ化するのみで医薬に対する影響は軽微だから安定性の点の効果は顕著とはいえない旨主張する。(上申書の11頁下から15行?12頁下から5行)
しかしながら、医薬品開発において、吸湿性等の安定性の検討は当業者が当然に行うことであるとしても、実際に、光学分割してみない限り(S)体の効果が優れていることを確認することはできないのであって、本件特許発明を、薬効から必然的に選択したものであるということはできない。
また、いずれの酸との塩が結晶性がよく吸湿性がないのか予測することはできないのであるから、この点は、甲第1号証から予想し得なかった効果であるというべきである。

してみると、この点からも、本件特許発明1は、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

なお、請求人は、選択発明が成立するためには、刊行物において上位概念で示された発明が有する効果とは異質な効果、又は同質であるが際立って優れた効果を有し、これらが技術水準から当業者が予測できたものでないことが必要とされるが、審査基準で引用されている判例(甲第23号証)によれば、選択発明が認められるためには、当該発明が、刊行物で具体的に記載された上位概念の発明と比較して、具体的な作用効果上の顕著な差異を有することが明細書中に直接明瞭に記載されている必要がある旨主張する。(口頭審理陳述要領書24?25頁の(4))
しかしながら、上記判例は特許法第39条の判断についてなされたものであって、本件とは事案を異にする。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。

第5 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2は、本件特許発明1に係る化合物の製造方法の発明であり、本件特許発明3は、本件特許発明1に係る化合物の「結晶」についての発明である。
上記のとおり、本件特許発明1に係る発明が、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものでも、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものでもない以上、上記と同様の理由により、本件特許発明2及び3に係る発明についても、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであるとすることも、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとすることもできない。

第8 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1乃至3に係る発明の特許を無効とすることができない。また、他にこれら発明を無効にすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-04 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2007-109(P2007-109)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (C07D)
P 1 113・ 113- Y (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新留 素子冨永 保  
特許庁審判長 横尾 俊一
特許庁審判官 渕野 留香
田名部 拓也
登録日 2011-03-18 
登録番号 特許第4704362号(P4704362)
発明の名称 光学活性ピペリジン誘導体の酸付加塩及びその製法  
代理人 小澤 圭子  
代理人 塩見 敦  
代理人 小澤 圭子  
代理人 小國 泰弘  
代理人 小國 泰弘  
復代理人 齋藤 房幸  
代理人 塩見 敦  
代理人 特許業務法人 小野国際特許事務所  
代理人 津国 肇  
代理人 津国 肇  
復代理人 齋藤 房幸  
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