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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1287363
審判番号 不服2012-18594  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-24 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 特願2009-541479「発呼者識別カスタマイゼーション、および通信デバイスの遠隔管理のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日国際公開、WO2008/073780、平成22年 4月22日国内公表、特表2010-512718〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は,2007年12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年12月12日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年5月14日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年9月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成25年6月25日付けで当審から拒絶理由が通知され,同年10月18日付けで手続補正がなされたものである。


第2 当審において通知した拒絶理由
当審において平成25年6月25日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は,以下のとおりである。

理由1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由2 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。

(理由3,4は省略)



[理由1について]
請求項41-43,45
引用文献4,5
引用文献4(FIG.3?5及びその説明参照。)には,ネットワークデバイス(SSP,SCP)において,発呼側デバイス識別番号(「404-555-1111」)および共有される秘密(PIN)を含む通信呼要求を発呼側から受信することと,なお,前記共有される秘密は発呼者(caller20,payphone等の使用者)と被呼者(subscrber80)との間で共有され,前記発呼者は前記通信呼のために使用される発呼側通信デバイスの借用者または副次的保持者である,クライアントデータベース(storage,database40)を参照して,前記共有される秘密に関連付けられた発呼者識別(FIG.4のText)を特定することと,なお,前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別は前記発呼側デバイス識別番号とは相違する,および,前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別を含む呼要求を被呼側に通信することと,を備える方法が記載されている。
また,引用文献5(【0017】?【0036】参照。)には,発信者が借りた携帯電話又は公衆電話から発信すると,回線網中のセンターが発信者から受信した識別情報に基づいて保持した通知情報を着信側電話に送り,着信側電話機のディスプレイに当該通知情報が表示されることにより誰からの電話であるかが分かることが記載されている。
したがって,請求項41,45に係る発明は,引用文献4又は5より当業者が容易に想到し得るものである。
また,引用文献4の2欄1?13行の記載によれば,見知らぬ発呼側デバイス識別番号には応答しない子供が母親からの通知であることが分かることにより応答することになるのであるから,呼の優先度を識別する出力信号をもたらす(すなわち,「共有される秘密に関連付けられた呼優先度を特定する」,「呼優先度を含む呼要求を被呼側に通信する」。)といえるから,請求項42,43の限定も格別でない。

[理由2について]
(1)「前記共有される秘密データは発呼者と被呼者との間で共有され」(請求項1,12,13,14,15,23,31,32,36,39,40,41,44,45,46)の点は,発明の詳細な説明に記載されていなく,紛失もしくは盗まれたデバイスの被呼者(すなわち,拾得者もしくは窃盗者。)と秘密データを共用するはずはないから,自明でもない。発明の詳細な説明によれば,「前記共有される秘密データは発呼者と被呼側デバイスとの間で共有され」であるはずである。

引 用 文 献 等 一 覧
(当審の拒絶理由で新たに追加する文献)
4.米国特許第6771755号明細書
5.特開2004-194194号公報


第3 請求人の対応
当審拒絶理由に対して,請求人は,平成25年10月18日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項37(補正前の請求項41に対応。)に記載された発明(以下,「本件発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項37】
通信ネットワークにおいて発呼者識別を実行するための方法であって,
ネットワークデバイスにおいて,発呼者と被呼者との間で共有される秘密を格納することと,
前記ネットワークデバイスにおいて,発呼側デバイス識別番号および前記共有される秘密を含む通信呼要求を発呼側から受信することと,なお,前記発呼者は前記通信呼のために使用される発呼側通信デバイスの借用者または副次的保持者である,
前記ネットワークデバイスにおいて,クライアントデータベースを参照して,前記共有される秘密に関連付けられた発呼者識別を決定することと,なお,前記クライアントデータベースは前記共有される秘密を発呼者識別に関連付ける,
前記通信呼要求中の前記発呼側デバイス識別番号を前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別に置き換えることと,および
前記発呼側識別を備える呼要求を被呼側に通信することと,
を備える方法。」


第4 当審の判断
まず,記載要件に係る「理由2」について判断し,その後,進歩性に係る「理由1」について判断する。

1.「理由2」(特許法第36条第6項第1号違反)について
本件発明の「ネットワークデバイスにおいて,発呼者と被呼者との間で共有される秘密を格納すること」の構成によれば,ネットワークデバイスにおいて格納される秘密は「発呼者と被呼者との間で共有される秘密」ということになる。しかし,そのようなことは発明の詳細な説明に直接記載されていない。
本件明細書の【0011】,【0023】,【0027】,【0086】に「発呼側と被呼側の間で共有される秘密」との記載があり,同【0077】に「当事者間で共有される任意の秘密データ」との記載がある。しかし,共有する秘密に基づいて実際の発呼者を識別し得るようにするのは被呼側の通信デバイス又はネットワークデバイスであって,被呼側のユーザ自身(第1のユーザ)ではないことは明らかである。
そして,本件明細書の【0028】?【0037】及び図1に通信デバイスベースのシステムが開示され,同【0038】?【0048】及び図2にネットワークベースのシステムが開示されており,本件発明はこのうちネットワークベースのシステムに対応するものであることは明らかである。そして,通信呼要求中の発呼側デバイス識別番号を共有される秘密に関連付けられた発呼者識別に置き換えるためには,通信デバイスベースのシステムでは発呼側(第2のユーザ)と被呼側(第1の通信デバイス)の間で秘密を共有する必要があり,一方,ネットワークベースのシステムでは発呼側(第2のユーザ)とネットワークデバイスとの間で秘密を共有する必要があることは明らかである。したがって,本件明細書中の上記「発呼側と被呼側の間で共有される秘密」の記載は,通信デバイスベースのシステムを想定した表現であると解するのが自然である。
また,ネットワークベースのシステムでは,ネットワークデバイスが通信呼要求中の発呼側デバイス識別番号を共有される秘密に関連付けられた発呼者識別に置き換えるのであるから,被呼側である第1の通信デバイスは通常の発呼者識別動作を行っているに過ぎず,第1の通信デバイスは何ら遠隔管理されるものでないことは明らかである。
また,ネットワークベースのシステムを開示する本件明細書の【0038】?【0048】及び図2では,単に「共有される秘密」との記載されるにとどまり,何と何とで共有されるのかまでは明らかにしていない。そして,同【0039】に「第2のユーザ20からネットワークデバイス16へ直接の,共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報24の通信は,矢印36(第2の通信デバイス14に入力される)および無線通信ボルト40(第2の通信デバイス14からネットワークデバイス16への電子通信)によって表される。」と記載され,同【0041】に「第2のユーザ20が共有される秘密22および任意のさらなる共有される秘密情報24をネットワークデバイス14に直接に通信する態様では,共有される秘密および任意の関連する情報を第1のユーザ18に送信する必要性が不要にされる。第2のユーザ20が,第1のユーザ18への通信なしに,共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報をネットワークデバイス14に直接に通信する態様では,カスタマイズされた発呼者ID,遠隔アクセス,および/または通信デバイス管理は,第1のユーザ18が知ることなしに行われる。」と記載されていることから,図2の例では,秘密を「発呼側と被呼側の間で共有される」ものとする必然性がないことは明らかである。
ここで,本件明細書の【0039】に「代替として,第2のユーザから第1のユーザへの共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報24の通信は,図2で矢印26によって表される。」,同【0042】に「しかし,共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報24が第1のユーザ18に通信され,その後,ネットワークデバイス14に通信される態様では,第1のユーザ18は,共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報24をネットワークデバイス14に後で通信するために第1の通信デバイス12に入力する。(中略)一態様では,GUI(グラフィカルユーザインターフェース)モジュール30が第1の通信デバイス12上で実行され,GUIモジュール30は,共有される秘密および任意の関連する共有される秘密情報を入力するように,さらに,オプションとして,共有される秘密および関連する情報をローカルで格納するように動作可能なデータエントリロジック32を含む。また,GUIモジュール30は,ネットワークデバイス14に共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報24をアップロードするように,またはそれ以外で通信するように動作可能なネットワークアップロードロジック51を含む。」との記載があるが,秘密22は被呼側の通信デバイスの個人情報マネージャ内のデータベースに格納されるものではなく,アップロードのために一時的にデータエントリロジック32にローカルに格納されるに過ぎないものと解される。したがって,当該代替の態様においても秘密を「発呼側と被呼側の間で共有される」ものとする必然性がないことは明らかである。
更に,本件明細書の【0043】に「共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報24が第2のユーザ20から第1の通信デバイス12に電子的に通信される代替の態様では,第1の通信デバイスは,共有される秘密および関連する情報を自動的に認識し,さらにネットワークデバイス14に共有される秘密22および任意の関連する共有される秘密情報を自動的にアップロードし,またはそれ以外で通信するように構成されることが可能である。そのような態様では,第1のユーザに,共有される秘密および任意の関連する共有される秘密情報を手動で入力させる必要性が不要にされる。」の記載によれば,被呼者である第1ユーザが共有される秘密22を知ることなしアップロードされるのであるから,当該代替の態様においても秘密を「発呼側と被呼側の間で共有される」ものとする必然性がないことは明らかである。
したがって,ネットワークベースのシステムに係る本件発明において,「ネットワークデバイスにおいて,発呼者と被呼者との間で共有される秘密を格納すること」が自明であるともいえない。

一方,請求人は,意見書にて「これに対して出願人は補正後の請求項1に示すように「第1の通信デバイスにおいて,発呼者と被呼者との間で共有される秘密を格納することと」という文言を追加することによって,発呼者と被呼者との間で共有される秘密は,それが被呼側デバイスに格納されることにより,発呼者と被呼側デバイスとの間で共有されるものでもあることを明確にしました。同様に補正前の請求項12-15,23,31,32,36,39-41及び45に対応する補正後の請求項10-13,21,27,28,32,35-37及び40においても,発呼者と被呼者との間で共有される秘密は,発呼者と被呼側デバイスとの間で共有されるものでもあることを明確にしました。これらの補正により当該拒絶の理由は解消されたものと思料します。」と主張している。
しかし,本件発明には,「発呼者と被呼者との間で共有される秘密が被呼側デバイスに格納される」ことは特定されておらず,上述のとおり共有される秘密を第1のユーザ18に送信する必要性がない例が記載されていることからしても,本件発明に「発呼者と被呼者との間で共有される秘密が被呼側デバイスに格納される」ことが記載されていると同然と理解することはできない。
そして,「被呼側デバイスに格納されることにより,発呼者と被呼側デバイスとの間で共有される」との上記主張によれば,本件発明に「発呼者と被呼者との間で共有される秘密が被呼側デバイスに格納される」ことが特定されていない以上,拒絶理由2(1)が解消されていないことは明らかである。

以上のとおり,本件発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから,本件出願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.「理由1」(特許法第29条第2項違反)について
(1)本件発明
上記「第3」の項に記載した「本件発明」のとおりのものと認める。

(2)刊行物記載発明
当審拒絶理由で引用した米国特許第6771755号明細書(以下,「刊行物」という。)には「PERSONALIZED CALLER IDENTIFICATION IN A TELEPHONE NETWORK」([当審仮訳]:電話ネットワークにおける個人的な発呼者識別)として,図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates generally to the field of telephony, and, more particularly, to a system and method for providing a personalized caller identification service.
BACKGROUND OF THE INVENTION
Caller identification ("caller ID") services allow a called party to determine the source of the call before answering the telephone. In order to use a caller ID service, a customer of a telephone network subscribes to the caller ID service and purchases caller ID equipment. When a call is terminated at the subscriber's line, the network provides data which includes the directory number of the line from which the call originated, and the record name of the party associated with that number. By using such a service, the subscriber is able to decide whether or not to answer the phone based on who is calling.
While caller ID services are useful tools for screening calls (e.g., unwanted sales calls), the disadvantage of such systems is that they are predicated on the assumption that the caller can always be identified by the particular telephone station from which he or she places the call. This assumption does not hold in the case where a caller places a call at a payphone, a hotel, or other location that is unlikely to be familiar to the calling party. For example, parents may instruct their children not to answer the phone for strangers. However, if a parent attempts to call the children from an unknown location (e.g., a payphone), the children will conclude (incorrectly) that a stranger is calling, and will not answer the phone.
In view of the foregoing, there is a need for a caller ID system and method that overcomes the drawbacks of the prior art. subscriber's record in the database and compares the entered PIN to the PIN listed in the database. If the entered PIN matches the PIN in the database, the subscriber's personalized message is inserted into the CNAM field of the data that is transmitted to the subscriber's caller ID equipment, so that the personalized message may be displayed on the caller ID equipment.
Other features of the invention are described below. 」(1欄50行?2欄23行)
([当審仮訳]:本発明の分野
本発明は,概して電話通信の分野に関し,より詳細には,個人的な発呼者識別サービスを提供するためのシステム及び方法に関する。
本発明の背景
発呼者識別(発呼者ID)サービスは,被呼側が電話に応答する前に呼の源を決定することを可能とする。発呼者IDサービスを使用するには,電話ネットワークの顧客は発呼者IDサービスに加入し,発呼者ID設備を購入する。呼が加入者の電話線に終端すると,ネットワークは,呼が発された電話線のディレクトリ番号を含むデータ及び当該番号に関連する者の記録された名前を提供する。このようなサービスを利用することにより,加入者は誰が発呼しているかに基づいて応答するか否か決定することができる。
発呼者IDサービスは,呼をふるい分ける(例えば,望まないセールスの呼。)のに有用な手段であるが,このシステムの欠点は,発呼者はいつも彼又は彼女が電話をかける特定の電話機により識別されるという仮定に基づいていることである。この仮定は,発呼者が,公衆電話やホテル又は発呼者に馴染みのない他の場所で電話をかける場合には当てはまらない。例えば,親が子供に見知らぬ者からの電話に出ないように教えることがある。もし親が知らない場所(例えば,公衆電話。)から子供に電話をかけようとしても,子供は見知らぬ者が電話をかけていると(誤って)考え,電話に出ないだろう。
上述のことを考慮して,先行技術の欠点を克服する発呼者識別システム及び方法が必要とされる。データベースの加入者の記録及びデータベースにリスト化されたPINと入力されたPINとを比較する。もし入力されたPINがデータベースのPINと一致すると,加入者の個人的なメッセージが,加入者の発呼者ID設備に送信されるデータのCNAMフィールドに挿入され,そのため個人的なメッセージが発呼者ID設備に表示され得る。
本発明のその他の特徴は以下に説明される。)

b.「A Personalized Caller ID Service
A personalized caller ID service may be implemented within the AIN infrastructure described above. In a conventional caller ID service, the party subscribed to the service installs a caller ID display device on his or her telephone line. When an incoming call is terminated to the subscriber's line, the caller ID device is generally provided with information including: (1) the telephone number of the calling party's telephone station (the "CgPN" field); and (2) the name associated with that telephone station (the "CNAM" field). These two pieces of information are displayed at the subscriber's caller ID device at the time the call is terminated to the subscriber's line so that the subscriber can decide whether or not to answer the phone.
In a personalized caller ID service according to the invention, the caller may cause the CNAM field to be replaced with a personalized text string by entering a personal identification number (PIN). When a telephone customer enrolls in the personalized caller ID service, a PIN is selected by, or assigned to, the customer, and the customer selects a text string to be stored in a database along with the PIN. When a call is placed to the customer's telephone, the caller is given the opportunity to enter a PIN. If the PIN entered matches the PIN stored in the database, then the CNAM field is replaced with the text string from the database. Such a technique may be used when the customer wishes to call his or her own phone from a remote location and also wishes the caller ID device to indicate that the call is coming from the customer rather than from a stranger. For example, the subscriber's children may have been instructed not to answer the phone for unknown numbers when they are at home alone; in this case, the text string "Mom is calling" might be used to indicate to the customer's children that they may answer the phone even though they do not recognize the calling party number. 」(4欄31?65行)
([当審仮訳]:個人的な発呼者識別サービス
個人的な発呼者識別サービスは,上述したAINインフラストラクチャ内で実行され得る。従来の発呼者識別サービスでは,サービスに加入した者が彼又は彼女の電話線に発呼者ID表示装置を取り付ける。入来呼が加入者の電話線に終端すると,発呼者ID装置は,一般に,(1) 発呼側の電話機の電話番号(CgPNフィールド)及び(2) 電話機に関連する名前(CNAMフィールド)を含む情報を提供する。これら2つの情報部分は,呼が加入者の電話線に終端されたときに加入者の発呼者ID装置に表示され,そのため加入者は電話に応答するか否かを決めることができる。
本発明の個人的な発呼者識別サービスでは,発呼者は,個人識別番号(PIN)を入力することにより,CNAMフィールドを個人的なテキスト列に置き換えることができる。電話の顧客が個人的な発呼者IDサービスに登録するとき,PINが顧客により選択され,あるいは顧客に割り当てられ,顧客はPINと一緒にデータベースに蓄積されるテキスト列を選択する。顧客の電話機に電話がかけられると,発呼者はPINを入力する機会が与えられる。もし入力されたPINがデータベースに蓄積されたPINと一致すると,CNAMフィールドがデータベースからのテキストで置き換えられる。このような技術は,顧客が遠隔地から彼又は彼女自身の電話機に電話をかけようとし,そしてまた発呼者ID装置が見知らぬ者からではなく当該顧客からの電話であることを表示することを望むときに使用され得る。例えば,加入者の子供が家に一人で居るときに見知らぬ電話番号からの電話に出ないように教えられているかもしれず,その場合,加入者の子供にたとい発呼側の電話番号が分からなくても電話に出てもよいこと示すために,テキスト列「ママが電話している」が用いられるかも知れない。)

c.「The processing of a call using the personalized caller ID service is now described with particular reference to the elements of an AIN in connection with FIG.3. Referring now to FIG.3, a caller places a call (indicated by arrow "1") at telephone station 20. For the purpose of the example, the directory number of calling station 20 is 404-555-1111. The call is placed to the subscriber's calling station 80, which, for the purpose of this example, has directory number 404-555-2222. The call travels through SSP 30 to SSP 70. Because SSP 70 is the central office that services subscriber calling station 80, and because the subscriber has subscribed to enhanced services such as caller ID and personalized caller ID, a TAT 71 is provisioned on SSP 70, which actuates whenever a call is placed to the subscriber's line.
Upon actuation of TAT 71, SSP 70 sends a query (indicated by arrow "2") up to SCP 50. The query is in a format which includes fields for a calling party number ("CgPN") and a called party number ("CdPN"). In this example, CgPN"404-555-1111 and CdPN"404-555-2222. SCP 70 then determines that the personalized caller ID service has been provisioned for subscriber 80 's line. Thus, SCP 70 instructions the SSP to prompt the caller for a DTMF PIN. As noted above, the DTMF PIN is entered by the caller using the touch-tone keys on telephone station 20, and the "prompt" may simply be the ringing tone that is normally used when a caller is waiting for the called party to answer. During the time that SSP is prompting for a PIN, SCP 50 waits for the PIN to be collected (indicated by "3"). ([当審注]:「SCP 70」(2箇所)は,「SCP 50」の誤記と認められる。)
After the PIN digits have been collected, they are transmitted from SSP 70 to SCP 50. SCP then performs a lookup in database 40. Database 40 is shown as being a separate component connected to SCP 50 but, alternatively, database 40 may be included within SCP 50.
Database 40 contains entries for each subscriber of the personalized caller ID service. An exemplary entry 304 is shown for subscriber 80. The entry includes the following fields having values as indicated:
FIELD VALUE
CdPN 404-555-2222
PIN 5678
Text "Mom is calling"
Thus, by comparing the entered PIN against database entry 304 , SCP 50 determines: (1) whether the correct PIN has been entered, and (2) the text message associated with that PIN. It should be noted that the exemplary database entry shows one PIN and one text message for the subscriber. However, database 40 could include several entries for the subscriber, where each entry stores a different PIN and a different text message. Thus, the caller could enter a different PIN depending on which text message he wanted to display. FIG.4 shows an alternative exemplary database entry 304 a, which includes plural PINs for the same subscriber number. In the example of FIG.4, each member of a family ("Mom", "Dad", "Rhonda", and "Daniel") each have their own PIN, so that each can display their own text message when calling from a remote location.
Returning now to FIG.3 , it should be observed that the comparison of the entered PIN against the PIN (or PINs) in database 40 can result in two possibilities (represented in FIG.2 as decisional step 214 ). Either (1) a PIN is entered that matches a PIN in database entry 304 , or (2) no PIN is entered (or, equivalently, an incorrect PIN is entered that does not match any PIN in database 40 ). In either case, SCP 50 authorizes SSP 70 to terminate the call to the subscriber's line. If a valid PIN is entered (case " 4 (a)" in FIG.3 )([当審注]:「(case " 4 (a)" in FIG.3 )」は,「(case " 4 (b)" in FIG.3 )」の誤記と認められる。), then the text retrieved from database 40 is entered in the CNAM field of the data delivered to subscriber 80 when the call is terminated. On the other hand, if no PIN (or an invalid PIN) is entered (case " 4 (b)" in FIG. 3 )([当審注]:「(case " 4 (b)" in FIG. 3 )」は,「(case " 4 (a)" in FIG. 3 )」の誤記と認められる。), then the CNAM information associated with the caller's line is retrieved and is provided in the CNAM field of the delivered data. Thus, as shown in the drawing, in case " 4 (a)", subscriber 80 's caller ID equipment 81 displays the calling party number ("404-555-1111") and the CNAM associated with that calling party ("Dr. Joe Schanpp", in the example). In case " 4 (b)," subscriber 80 's caller ID equipment 81 displays the calling party number as in case " 4 (a)", but displays the text retrieved from the database "Mom is calling," rather than the CNAM information associated with the calling party number.
While the invention may be used with a conventional caller ID device 81, as shown in FIG.3 , it may be useful to provide an enhanced caller ID device 81a , as shown in FIG.5 . As noted above, when a conventional caller ID device 81a ([当審注]:「a conventional caller ID device 81a」は「a conventional caller ID device 81」の誤記と認められる。) is used, the personalized text associated with a particular PIN is provided in the CNAM field of the data that is provided to the subscriber's line when the call is terminated. Thus, the personalized text replaces the CNAM value for the calling party number. When an enhanced caller ID device 81a is used, then the personalized text string may be provided along with the CNAM data from the database. Thus, an enhanced caller ID device can display both the name associated with the calling party's telephone station 504 (e.g., "Payphone") and directory number 506 (e.g., "404-555-1111"), as well as the personalized caller ID string 502 (e.g., "Mom is calling"). 」(6欄54行?8欄18行)
([当審仮訳]:
図3に関連して,個人的な発呼者識別サービスを利用した呼の処理について,AINの要素に特に関連して説明する。図3を参照すると,発呼者は電話機20にて電話をかける(矢印1で示す)。例示的な目的で,電話機20のディレクトリ番号は404-555-1111である。電話は,例示的な目的でディレクトリ番号404-555-2222の加入者の電話機80にかけられる。呼はSSP30を通ってSSP70に伝わる。SSP70は加入者の電話機80にサービスを提供する電話局であり,そして加入者は発呼者ID及び個人的な発呼者IDのような拡張サービスに加入しているので,加入者の電話線に電話がかけられるときはいつでも始動するTAT71がSSP70に準備される。
TAT71が始動すると,SSP70はSCP50に質問を送る(矢印2で示す)。当該質問は,発呼側の番号のためのフィールド(CgPN)と被呼側の番号のためのフィールド(CdPN)を含むフォーマットである。この例では,CgPN=404-555-1111であり,CdPN=404-555-2222である。SCP50は個人的な発呼者識別サービスが加入者80の電話線のために準備されていることを決定する。こうしてSCP50はSSPに対して発呼者にDTMF PINを促すように命令する。上述したように,発呼者により電話機20のタッチ・トーン・キーを用いてDTMF PINが入力され,上記「促し」は発呼者が被呼者が電話に出るのを待つときに使用される単なる着信音であるかも知れない。SSPがPINを促している間,SCP50は収集されるPINを待っている(矢印3)。
PIN数字が収集されると,それはSSP70からSCP50に送信される。するとSCP50はデータベース40を参照する。データベース40はSCP50に接続された分離した構成要素として示されているが,代替的に,データベース40はSCP50内に含まれてもよい。
データベース40は個人的な発呼者識別サービスの各加入者のためのエントリーを収容している。加入者80の例示的なエントリー304が示されている。エントリーは例示されている値を有する以下のフィールドを含む。
フィールド 値
CdpN 404-555-2222
PIN 5678
Text 「ママが電話している」
入力されたPINをデータベースのエントリーと比較することにより,SCP50は,(1) 正しいPINが入力されたかどうか,(2) PINに関連付けられたテキストメッセージ を決定する。例示されたデータベースのエントリーは加入者に対して1つのPIN及び1つのテキストメッセージであるが,データベース40は加入者に対して複数のエントリーを含むことができ,そこでは各エントリーは異なるPIN及び異なるテキストメッセージを蓄積することに注意すべきである。このため,発呼者は,表示したいテキストメッセージによって異なるPINを入力することができる。図4は代替的な例示的データベース・エントリー304aを示しており,それは同じ加入者番号に対して複数のPINを含んでいる。図4の例では,家族の各員(「ママ」,「パパ」,「ロンダ」,「ダニエル」。)が各々のPINを有し,そのため各自が遠隔地から電話をするときに自分自身のテキストを表示させることができる。
図3に戻り,入力されたPINとデータベース40のPIN(PINs)の比較は2つの可能性(図2の決定ステップ214に示される)があることが気付く。(1) データベース・エントリー304のPINと一致するPINが入力された,(2) PINが入力されない(または,同等なものとして,データベース40のPINと一致しない正しくないPINが入力された。)。どちらの場合も,SCP50はSSP70に対して加入者の電話線への呼を終端するようにオーソライズする。もし有効なPINが入力されると(図3の4(b)の場合。),データベース40から取り出されたテキストが,呼が終端するときに加入者80に送られるデータのCNAMフィールドに入れられる。一方,もしPINが入力されないと(又は有効でないPINが入力されると)(図3の4(a)の場合。),加入者の電話線に関連するCNAM情報が取り出されて,送られるデータのCNAMフィールドに与えられる。図に示されるように,4(a)の場合,加入者80の発呼者ID装置81は発呼側の電話番号(「404-555-1111」)と発呼側に関連するCNAM(例えば,「ジョー・シャンプ先生」)を表示する。4(b)の場合,加入者80の発呼者ID装置81は4(a)の場合と同様に発呼側の電話番号を表示するが,発呼側の電話番号に関連するCNAM情報ではなくデータベースから取り出されたテキスト「ママが電話している」が表示される。
図3に示されるように,本発明は従来の発呼者ID装置81を用いることができるが,図5に示されるように拡張された発呼者ID装置81aを用いることがより便利である。上述したように,従来の発呼者ID装置81が用いられると,特定のPINに関連する個人的なテキストが呼が終端するときに加入者80に送られるデータのCNAMフィールドに入れられる。このようにして,個人的なテキストは発呼側の電話番号のCNAM値を置き換える。拡張された発呼者ID装置81aが用いられると,個人的なテキスト列はデータベースからCNAMデータとともに提供され得る。このため,拡張された発呼者ID装置は,個人的な発呼者ID列502(例えば,「ママが電話している」。)と同様に,発呼側の電話機に関連する名前504(例えば,「公衆電話」。)及びディレクトリ番号506(例えば,「404-555-1111」。)の双方を表示できる。

ア.上記a.の記載によれば,刊行物には「電話ネットワークにおいて個人的な発呼者識別サービスを提供するための方法」について記載されていると認められる。

イ.上記a.の第4段落,上記b.の第2段落,上記c.の第3,4段落及び図2,図3の記載によれば,SCP内のデータベースにはPINが格納され,当該PINは電話の顧客が個人的な発呼者IDサービスに登録するとき顧客により選択されるか又は顧客に割り当てられるものであり,発呼者が入力したPINとデータベースに蓄積されたPINと一致を判断するものであるから,発呼者と電話ネットワークとの間で共有されるものであるといえる。
したがって,刊行物には「SCPに発呼者と電話ネットワークとの間で共有されるPINを格納する」ことが記載されていると認められる。

ウ.上記c.の第1?3段落及び図2,図3の記載によれば,SCPは発呼側の電話機の電話番号(「404-555-1111」)及びPINを発呼側から受信していることは明らかである。そして,上記a.の第3段落,上記b.の第2段落,上記c.の第4?6段落の記載によれば,発呼者は,公衆電話,ホテル又は「ジョー・シャンプ先生」の電話機から電話をかけるのであるから,当該電話機は発呼者によって通常保有される電話機ではなく,発呼者は発呼側電話機の借用者といえる。
したがって,刊行物には「前記SCPにおいて,発呼側の電話機の電話番号および前記共有されるPINを発呼側から受信することと,なお,発呼者は電話をかけるために使用される電話機の借用者である」ことが記載されていると認められる。

エ.上記c.の第3?5段落及び図2,図3の記載によれば,SCPはデータベースを参照し,PINに関連する個人的なテキストを取り出すものであり,当該データベースは共有されるPINを個人的なテキストに関連付けるものであることは明らかである。
したがって,刊行物には「前記SCPにおいて,データベースを参照して,前記共有されるPINに関連付けられた個人的なテキストを決定することと,なお,前記データベースは前記共有されるPINを個人的なテキストに関連付ける」ことが記載されていると認められる。

オ.上記a.の第4段落,上記b.の第2段落上記c.の第5,6段落及び図2,図3の記載によれば,入力されたPINがデータベースに蓄積されたPINと一致すると,当該PINに関連する個人的なテキストが,呼が終端するときに加入者80に送られるデータのCNAMフィールドに,電話をかけた電話機の加入者の電話線に関連するCNAM情報に置き換えて入れられ,被呼側の発呼者ID装置に当該個人的なテキストが表示されるのであるから,個人的なテキストを備えるデータを被呼側に通信していることは明らかである。ここで,当該データは,呼が終端するときに加入者80に送られるデータであり,被呼側がかかってきた電話に応答するかどうかを判断するために使われるのであるから,呼要求といえる。
したがって,刊行物には「前記発呼側の電話機の加入者の電話線に関連するCNAM情報を前記共有されるPINに関連付けられた前記個人的なテキストに置き換えることと,および前記個人的なテキストを備える呼要求を被呼側に通信する」ことが記載されていると認められる。

以上を総合すると,刊行物には以下の発明(以下,「刊行物記載発明」という。)が記載されているものと認める。
「電話ネットワークにおいて個人的な発呼者識別サービスを提供するための方法であって,
SCPに発呼者と電話ネットワークとの間で共有されるPINを格納することと,
前記SCPにおいて,発呼側の電話機の電話番号および前記共有されるPINを発呼側から受信することと,なお,発呼者は電話をかけるために使用される電話機の借用者である,
前記SCPにおいて,データベースを参照して,前記共有されるPINに関連付けられた個人的なテキストを決定することと,なお,前記データベースは前記共有されるPINを個人的なテキストに関連付ける,
前記発呼側の電話機の加入者の電話線に関連するCNAM情報を前記共有されるPINに関連付けられた前記個人的なテキストに置き換えることと,および
前記個人的なテキストを備える呼要求を被呼側に通信することと,
を備える方法。」

(3)対比・判断
本件発明と刊行物記載発明とを対比すると,
a.刊行物記載発明の「電話ネットワーク」は明らかに「通信ネットワーク」であり,「個人的な発呼者識別サービスを提供する」のであるから「発呼者識別を実行する」ものであることは明らかである。

b.刊行物記載発明の「SCP」(サービス制御ポイント)は,電話ネットワークの一部を構成するAIN(先進的インテリジェントネットワーク)上のデバイスであるから,「ネットワークデバイス」といえる。そして,本件明細書の【0030】の記載によれば,本件発明の「共有される秘密」は2桁以上の数値コードなどの数値コードを含むものであり,刊行物記載発明の「共有されるPIN」のPINは通常第三者に対して秘密にされる暗唱番号であるから,下記の相違点1は別として,両者は「ネットワークデバイスにおいて,発呼者と共有される秘密を格納する」点で一致している。

c.刊行物記載発明の「発呼側の電話機の電話番号」は「発呼側デバイス識別番号」といえ,「電話をかけるために使用される電話機」は「通信呼のために使用される発呼側通信デバイス」といえる。したがって,下記の相違点2は別として,両者は「前記ネットワークデバイスにおいて,発呼側デバイス識別番号および前記共有される秘密を発呼側から受信することと,なお,前記発呼者は前記通信呼のために使用される発呼側通信デバイスの借用者である」点で一致している。

d.刊行物記載発明の「データベース」は顧客に関する情報が蓄積されているといえるから,これを「クライアントデータベース」と称するのは任意である。また,本件明細書の【0037】,【0046】等の記載によれば,本件発明の「発呼者識別」は,実際の発呼側に関連する発呼者ID情報である電話番号および/または名前,メッセージを含むものと認められるところ,刊行物記載発明の「個人的なテキスト」は,刊行物の図4の記載から明らかなとおり,「ママが電話している」や「ダニエルが電話している」等のように被呼者が実際の発呼者(ママ,ダニエル等)を識別し得るものであるから,刊行物記載発明の「個人的なテキスト」は本件発明の「発呼者識別」に相当する。したがって,両者は「前記ネットワークデバイスにおいて,クライアントデータベースを参照して,前記共有される秘密に関連付けられた発呼者識別を決定することと,なお,前記クライアントデータベースは前記共有される秘密を発呼者識別に関連付ける」の点で一致している。

e.刊行物記載発明の「前記発呼側の電話機の加入者の電話線に関連するCNAM情報」と本件発明の「発呼側デバイス識別番号」とは,「発呼側デバイスを識別する情報」の点で差異は無いから,下記の相違点3は別として,両者は「通信呼要求中の発呼側デバイスを識別する情報を前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別に置き換えることと,および前記発呼側識別を備える呼要求を被呼側に通信すること」の点で一致している。

したがって,本件発明と刊行物記載発明とは,以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)
「通信ネットワークにおいて発呼者識別を実行するための方法であって,
ネットワークデバイスにおいて,発呼者と共有される秘密を格納することと,
前記ネットワークデバイスにおいて,発呼側デバイス識別番号および前記共有される秘密を発呼側から受信することと,なお,前記発呼者は前記通信呼のために使用される発呼側通信デバイスの借用者である,
前記ネットワークデバイスにおいて,クライアントデータベースを参照して,前記共有される秘密に関連付けられた発呼者識別を決定することと,なお,前記クライアントデータベースは前記共有される秘密を発呼者識別に関連付ける,
通信呼要求中の発呼側デバイスを識別する情報を前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別に置き換えることと,および
前記発呼側識別を備える呼要求を被呼側に通信することと,
を備える方法。」

(相違点1)
「発呼者と共有される秘密」に関し,本件発明は「発呼者と被呼者との間で共有される」ものであるのに対して,刊行物記載発明は「発呼者と電話ネットワークとの間で共有される」ものであって,「発呼者と被呼者との間で共有される」ことが明らかにされていない点。

(相違点2)
「前記ネットワークデバイスにおいて,発呼側デバイス識別番号および前記共有される秘密を発呼側から受信すること」に関し,本件発明は「発呼側デバイス識別番号および前記共有される秘密を含む通信呼要求」として受信するのに対し,刊行物記載発明のPINは,発呼者がSSPから着信音等で促されて入力することにより,SCPが発呼側から受信するものである(上記(2)c.の第2段落参照。)点。

(相違点3)
「通信呼要求中の発呼側デバイスを識別する情報を前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別に置き換えること」に関し,本件発明は「前記通信呼要求中の前記発呼側デバイス識別番号を前記共有される秘密に関連付けられた前記発呼者識別に置き換える」のに対し,刊行物記載発明は「CNAM」は置き換えるものの発呼側デバイス識別番号である「CgPN」は置き換えていない点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
上記「1.「理由2」(特許法第36条第6項第1号違反)について」の項で述べたとおり,ネットワークベースのシステムに係る本件発明においては,共有される秘密を「発呼者と被呼者の間で共有される」ものとする必然性はなく,第三者に対して秘密であれば足りることであるから,刊行物記載発明のPINを「発呼者と被呼者の間で共有される」ものとすることは適宜なし得る程度のことにすぎない。
なお,刊行物記載発明のPINは,顧客が個人的な発呼者識別サービスに登録するときに顧客により選択されるか又は顧客に割り当てられるものであり,被呼側の電話機の電話番号に関連付けられるものであるから(上記(2)b.の第2段落及び刊行物の図4参照。),被呼側の電話機について複数のPIN及びテキストメッセージを登録する場合,登録者(例えば,「パパ」。)は当然ながら複数のPINを知っており,当該PINを家族(「ママ」,「ロンダ」,「ダニエル」。)に伝えているはずである。そして,刊行物記載発明では家族同士が発呼者及び被呼者になることが想定されていることは明らかであるから,「発呼者と被呼者との間で共有される秘密」は格別なものではない。

(相違点2について)
発呼側デバイス識別番号に制御情報を付加して呼要求することは普通に行われていること(例えば,特開平11-331381号公報の【0001】,特開2002-64591号公報の【0022】,特開2005-328306号公報の【0028】参照。)であるから,相違点2は格別ではなく,当業者が適宜採用し得ることにすぎない。

(相違点3について)
刊行物記載発明は,発呼側デバイスを識別する情報のうち発呼者の名前のみを置き換えるものであるが,子供が見知らぬ電話番号には応答しないように教えられていることから実際には親からの電話が無視されてしまうという問題を解決するためのものであるに鑑みれば(上記(2)a.の第3段落,同b.の第2段落参照。),発呼者の名前を個人的なテキストに置き換えるとともに,更に発呼側デバイス識別番号である発呼側の電話機の電話番号(CgPN:404-555-1111)をも置き換えるようにすることは,当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

そして,本件発明の作用効果も,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

(4)まとめ
したがって,本件発明は,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第5 むすび
以上のとおり,本件出願は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。また,本件発明は,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-22 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-09 
出願番号 特願2009-541479(P2009-541479)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
P 1 8・ 537- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 新川 圭二
田中 庸介
発明の名称 発呼者識別カスタマイゼーション、および通信デバイスの遠隔管理のためのシステムおよび方法  
代理人 砂川 克  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 野河 信久  
代理人 堀内 美保子  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 佐藤 立志  
代理人 竹内 将訓  
代理人 岡田 貴志  
代理人 白根 俊郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
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