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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1287375
審判番号 不服2013-2061  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-04 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 特願2008-555454「無線システムにおけるマルチプル同時グループ通信のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日国際公開、WO2007/098331、平成21年 7月30日国内公表、特表2009-527945〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2007年(平成19年)2月13日(優先権主張 2006年(平成18年)2月17日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年5月12日付けで拒絶理由が通知され,同年9月7日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,平成24年3月7日付けで拒絶理由が通知され,同年6月13日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,同年9月26日付けで拒絶査定され,平成25年2月4日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものであり,同年6月11日付けで当審から前置報告書を基にした審尋を通知し,同年9月18日付けで回答書の提出がなされたものである。


第2 補正却下の決定

[結論]
平成25年2月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本願補正発明
請求項1に記載された発明は,平成25年2月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により,次のとおりのものとなった(下線は請求人が付与。)。

【請求項1】
音声デバイスを有する無線デバイスが無線ネットワーク上で複数のプッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信をモニターすることを可能にする方法であって、
前記方法は、
各グループがそのグループの全てのメンバーデバイスと通信することが可能な複数の無線デバイスで構成される、複数のPTT通信グループに加入するステップと、
主要なPTT通信グループを選択するステップと、
PTTサーバからの少なくとも1つのPTT通信であって前記主要なPTT通信グループもしくは主要でないPTT通信グループのいずれかからの少なくとも1つのPTT通信を受信し、前記少なくとも1つのPTT通信を前記音声デバイスでプレーするステップと、なお、前記無線デバイスは、前記複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能である、
前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信が前記音声デバイスでプレーしているときに前記主要なPTT通信グループからのPTT通信が前記無線デバイスにおいて受信された場合、前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信を中断し、受信された前記主要なPTT通信グループからのPTT通信を前記無線デバイスの前記音声デバイスでプレーするステップと、
前記主要なPTT通信グループからのPTT通信が音声デバイスでプレーしているときに前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信が受信された場合、前記主要なPTT通信グループからのPTT通信の前記音声デバイスでのプレーを中断することなく、前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信に関する情報を前記表示デバイスで表示するステップと、
を備える。

ここで,上記請求項1における「前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信に関する情報を前記表示デバイスで表示する」の記載のうち,「前記表示デバイス」の「前記」に当たる「表示デバイス」の記載が,本件補正による請求項1の記載されていないことは明らかである。
そこで,請求人の手続の経緯を確認すると,平成23年5月12日付け意見書の記載によれば,当初請求項1の記載事項に対して,当初請求項2の記載事項「【請求項2】 前記無線デバイスはさらに表示デバイスを有し、さらに前記方法は、前記主要なPTT通信が音声デバイスでプレーしているときに前記主要でないPTT通信が受信された場合、前記主要でないPTT通信に関する情報を前記表示デバイスで表示するステップをさらに備えた、請求項1に記載の方法。」を附したことにより,上記した「前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信に関する情報を前記表示デバイスで表示する」ものとなることを,請求人は主張している。
また,請求人がなした他の手続きにおいて,上記主張と異なる主張は請求人によりなされていない。

つまり,請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,正しくは次の記載事項(下線は当審が付与。)により特定されるものであると解される。

音声デバイスさらに表示デバイスを有する無線デバイスが無線ネットワーク上で複数のプッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信をモニターすることを可能にする方法であって、
前記方法は、
各グループがそのグループの全てのメンバーデバイスと通信することが可能な複数の無線デバイスで構成される、複数のPTT通信グループに加入するステップと、
主要なPTT通信グループを選択するステップと、
PTTサーバからの少なくとも1つのPTT通信であって前記主要なPTT通信グループもしくは主要でないPTT通信グループのいずれかからの少なくとも1つのPTT通信を受信し、前記少なくとも1つのPTT通信を前記音声デバイスでプレーするステップと、なお、前記無線デバイスは、前記複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能である、
前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信が前記音声デバイスでプレーしているときに前記主要なPTT通信グループからのPTT通信が前記無線デバイスにおいて受信された場合、前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信を中断し、受信された前記主要なPTT通信グループからのPTT通信を前記無線デバイスの前記音声デバイスでプレーするステップと、
前記主要なPTT通信グループからのPTT通信が音声デバイスでプレーしているときに前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信が受信された場合、前記主要なPTT通信グループからのPTT通信の前記音声デバイスでのプレーを中断することなく、前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信に関する情報を前記表示デバイスで表示するステップと、
を備える。

そして,本願補正発明は,本件補正前(平成24年6月13日付け手続補正書)の請求項1に係る発明に対して,限定事項が本件補正により附されたものであることは明らかである。

そこで,本願補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について検討する。

2.29条2項に関する検討
(1) 引用例及び引用発明
ア 引用例1
原査定の理由に引用された特表平8-508373号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載(下線は当審が付与。)されている。

(ア) 「1.複数のベースステーション(BS1-BSN;BS)と、加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)とを含む無線システムにおけるグループ通話方法であって、
加入者ステーション(MS(A1),MS(B);200)が第1のグループ通話に参加し;
その第1のグループ通話中にグループ通話データ(図6)が加入者ステーション(MS(B);200)へ送信されて(706;図8、811)、加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)が別の進行中グループ通話に参加できるようにし;
加入者ステーション(MS(B);200)は第1のグループ通話に参加し続けるか、又はもし所望であれば、その加入者ステーションにグループ通話データ(図6)が送信された(706)グループ通話(303,304)の中から別のグループ通話を選択する(図10)という段階を備えたことを特徴とするグループ通話方法。
2.上記グループ通話データ(図6)は、グループ通話の優先順位(609)を含み、そして
上記加入者ステーション(MS(B);200)は、最も高い優先順位を有するグループ通話へ移動する請求項1に記載のグループ通話方法。」
(公報第2ページ)

(イ) 「8.加入者ステーション(MS(B);200)により受け取られたデータ又は通話情報メッセージ(D_late_setup)(図6)に応答して、上記加入者ステーション(MS(B);200)が参加できるグループ通話の識別子(303)が、上記加入者ステーション(MS(B);200)のユーザインターフェイス(207,208;図3、302,304)においてユーザに表示され、そしてユーザインターフェイス(207,208;図3、302,304,305)により、ユーザは、加入者ステーションが参加する(1007)グループ通話を選択する(1000)請求項の前記いずれかに記載のグループ通話方法。」
(公報第3ページ)

(ウ) 「10.上記加入者ステーション(MS(B);200)のユーザが、その加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイ(207,303)に識別子が表示されたグループ通話の中から別のグループ通話を選択し(1001)、従って、加入者ステーションがもはや第1グループ通話に参加しなくなったときに、もはや上記グループ通話に参加していないことを知らせる確認をシステム(SwMI)に送信する(1010)請求項の前記いずれかに記載のグループ通話方法。
11.上記加入者ステーション(MS(B);200)のユーザが、その加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイ(207,303)に識別子が表示されたグループ通話の中から別のグループ通話を選択し(1001)、従って、加入者ステーションがもはや第1グループ通話に参加しなくなったときに、システム(SwMI)に新たなグループ通話に参加する確認を送信して(1010)、無線システムのシステムコントローラにその新たなグループ通話の識別子を同時に知らせる請求項の前記いずれかに記載のグループ通話方法。」
(公報第4ページ)

(エ) 「16.無線システムのシステムコントローラ(100)であって、
通話及び信号メッセージを無線システムのベースステーション(BS1-BSN)へ送信するためのインターフェイスユニット(110)と;
加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)の間、又は無線システムに関連した遠隔通信ネットワークの加入者ステーション(200)と加入者との間で通話を交換するための交換マトリクス(108)と;
加入者ステーション(200)及び無線リソースのデータを維持するためのメモリ手段(107)と;
無線システムの交換マトリクス(108)及びベースステーション(BS1-BSN)を制御するためのコントロールユニット(101)とを備えたシステムコントローラにおいて、
第1グループ通話中にグループ通話データ通話情報メッセージ(D_late_setup)を加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)へ送信し(811)、加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)が別の進行中グループ通話に参加できるようにするためのグループ通話コントロールユニット(102)を更に備えたことを特徴とするシステムコントローラ。」
(公報第5ページ?第6ページ)

(オ) 「発明の分野
本発明は、複数のベースステーション及び加入者ステーションを備えた無線システムにおけるグループ通話方法、加入者ステーション及びシステムコントローラに係る。」
(公報第7ページ)

(カ) 「発明の要旨
本発明の目的は、移動電話加入者及びこれにより制御される加入者ステーションに、加入者ステーションがグループ通話の1つに同時に参加していながらも、加入者の位置エリアにおける全ての進行中グループ通話の中から加入者が参加するグループ通話を選択する能力を与えることである。
この新たな形式のグループ通話方法は、加入者ステーションが第1のグループ通話に参加し;その第1のグループ通話中にグループ通話データが加入者ステーションへ送信されて、加入者ステーションが別の進行中グループ通話に参加できるようにし;加入者ステーションは第1のグループ通話に参加し続けるか、又はもし所望であれば、その加入者ステーションにグループ通話データが送信されたグループ通話の中から別のグループ通話を選択するという段階を備えた本発明の方法によって達成される。」
(公報第9ページ)

(キ) 「本発明は、加入者ステーションが第1のグループ通話に参加している間に他の進行中のグループ通話の情報が加入者ステーションヘ送信されるという考え方に基づいている。この情報は、第1のグループ通話、即ち加入者ステーションが参加しているグループ通話に割り当てられたトラフィックチャンネルに関連したチャンネル特有の信号(埋め込まれた信号)を使用することにより送信される。この情報は、時分割システム、例えば、TDMA(時分割マルチプルアクセス)システム、又は周波数分割システム、例えば、FDMA(周波数分割マルチプルアクセス)システムのトラフィックチャンネルに関連したチャンネル特有の信号を用いて送信することができる。この情報は、加入者ステーションが新たなグループ通話に参加するために必要なデータを含む通話情報メッセージ又は通話開始メッセージによって送信される。これらのデータは加入者ステーションのメモリに記憶され、そして加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイは、通話情報メッセージに関連したグループ通話の識別子を示す。このグループ通話識別子により、ユーザは、ユーザインターフェイスのキーボードを用いてこのグループ通話を選択でき、これにより、加入者ステーションは、このグループ通話に自動的に移動し、そして加入者は通話に参加することができる。」
(公報第10ページ)

(ク) 「図1は、無線システムのシステムコントローラ100、典型的に、移動交換機を示している。このシステムコントローラ100は、インターフェイス111を経て無線システムのベースステーションBS1-BSNに接続される。インターフェイス111はインターフェイスユニット110に接続され、該ユニットは、次いで、スピーチを搬送する情報バス103c及び信号メッセージを搬送するバス109を経て交換マトリクス108に接続される。交換マトリクスは、所望の論理チャンネル、典型的に、加入者を互いに接続する。加入者は、単にこの移動無線ネットワークの加入者でもよいし、又は他の遠隔通信ネットワークの加入者でもよい。交換マトリクスは、更に、バス103aを経てシステムコントローラ100のコントロールユニット101に接続される。コントローラユニット101は、更に、バス103bを経てメモリ107に接続される。メモリ107は、無線システムの加入者及び無線リソース、並びに通話及びグループ通話に関するデータを記憶する。
本発明によるシステムコントローラ100のコントロールユニット101は、本発明によるグループ通話データ又は通話情報メッセージ(D_late_setup)をベースステーションBS1-BSNへ送信して更に加入者ステーションヘ送信するためのグループ通話コントロールユニット102を備えている。このコントロールユニット101は、更に、周期カウンタのような時間コントロール手段112も備えており、該手段は、グループ通話データ又は通話情報メッセージを所望の間隔、例えば、所定のインターバルでベースステーションBS1-BSNへ送信して更にグループ通話に参加した加入者ステーションヘ送信するようにグループ通話コントロールユニットに指令する。」
(公報第12ページ)

(ケ) 「加入者ステーション200のコントロールユニット205は、更に、システムコントローラによって送られたグループ通話データ又は通話情報メッセージを受け取ってそこに含まれたグループ通話識別子をユーザインターフェイスのディスプレイヘ送信すると共に、これらのグループ通話データを加入者ステーションのメモリ209に記憶するための手段210を備えている。
更に、コントロールユニットには、加入者ステーションによって受け取られた優先順位データに応答して、関連する通話情報メッセージが最も高い優先順位を含むグループ通話に参加するように加入者ステーションに指令する手段211も設けられている。最も高い優先順位とは、それを受け取ったときに加入者ステーションがあるグループ通話に参加するように強制するオーバーライド優先順位であるか、又は加入者ステーションによって受け取られた通話情報メッセージに含まれた全ての優先順位の中の最も高い優先順位でもよい。
更に、コントロールユニットは、無線システム、通常はそのシステムコントローラ(図1)へ確認信号を送信するための手段212を備えている。この確認信号は、加入者ステーション200があるグループ通話に参加し始めたことを知らせ、即ちユーザによってなされたグループ通話の選択を知らせる。又、この確認信号は、加入者ステーション200がもはやあるグループ通話に参加しないことをシステムコントローラに知らせることもできるし、又は新たなグループ通話に参加したことを知らせて新たなグループ通話の識別子を同時に指示することもできる。」
(公報第13ページ?第14ページ)

(コ) 「図3は、本発明による加入者ステーション200のユーザインターフェイス300を示している。図3は、ユーザインターフェイスの目に見える部分、即ち加入者ステーション即ち移動電話のフロントパネル301を示しており、ここに、本発明の重要な特徴を見ることができる。ユーザインターフェイスは、加入者ステーション200が参加するグループ通話の識別子303を示すディスプレイ302を備えている。表示されたグループ通話の中で、加入者ステーションのユーザは、所与のグループ通話に対し各々存在するボタン304の1つを押すことにより、ユーザが聞いて参加しようとするグループ通話を選択することができる。別の実施形態によれば、所望のグループ通話は、カーソルコントローラ305によって選択され、ユーザはこれによりカーソルをスクロールし、参加しようとするグループ通話の識別子を指示することができる。」
(公報第14ページ)

(サ) 「図6は、通話情報メッセージ600として送信される本発明によるグループ通話データの一例を示している。グループ通話データは、一般に、通話情報メッセージ(D_late_setup)として送られ、これは、フィールドに分割され、各フィールドは、グループ通話データを形成する情報の部片の1つに対応する。メッセージにおけるフィールドの順序は自由に選択することができ、1つの適当な順序が図示されている。
第1フィールド601は、メッセージの識別子、典型的に、番号を含む。メッセージ識別子フィールドは、message_idである。第2フィールド602は、各通話又はグループ通話の識別子、call_id、例えば、番号を含んでいる。グループ通話識別子は、無線システムにおいて通話制御を行えるようにする。2つの通話に、移動無線ネットワークにおいて同じ識別子を同時に与えることはできない。
第3フィールド603、basic_service、は基本サービスの形式を定める。個々の通話、グループ通話、確認したグループ通話及び放送通話は、
基本サービスの例である。
第4フィールド604、calling_party、は発呼者又はA加入者の識別子を含み、この識別子は、通常、電話番号で形成される。第5フィールド605、called_party、は個々の加入者又は加入者グループである被呼者を定める。
第6フィールド606、physical_ch、は通話情報メッセージに関連した進行中のグループ通話を搬送する物理チャンネルの番号を含む。物理チャンネルの番号は、グループ通話が送信される物理的周波数に対応する。
第7フィールド607、slot_nbr、は通話の論理チャンネルが配置されたタイムスロットを定める。
第8フィールド608、encryption_info、は使用する暗号化方法及び/又は暗号キーを得る方法を指示する。
第9フィールド609、priority、はグループ通話の優先順位を指示する。優先順位は、通話の形式、グループ又は発呼者の優先順位、又は他のデータに基づいている。加入者ステーションは、その加入者ステーションがデータを受け取った全てのグループ通話の中の最も高い優先順位を有する通話、即ち加入者ステーションが参加を許されるグループ通話、又はオーバーライド優先順位をもつ通話に参加するよう強制される。メッセージの最後のフィールド610は、空きである。
図7は、本発明による方法の動作を示す信号及び事象図700である。図の上部には、加入者ステーションMS(A1)、MS(A2)及びMS(B)と、交換及び管理の基礎施設SwMIに接続されたベースステーションBSとが示されている。無線経路に通常の未確認のグループ通話を確立することについて以下に説明する。加入者ステーションMS(A1)は、加入者MS(B)が属するグループ通話のグループの番号を選択する。選択された番号は、通話設定メッセージ701においてSwMIへ送信され、これは、B加入者即ち加入者ステーションMS(B)へ通話設定メッセージ702を送信することにより通話を設定する。このメッセージの交換は、ベースステーションBSのメイン制御チャンネルにおいて行われる。従って、加入者ステーションMS(A1)とMS(B)との間にグループ通話が確立される。システムは、グループ通話を確立した後に、確認信号703をA加入者へ送信する。
本発明のグループ通話方法の実際の動作を以下に説明する。A加入者が本発明の方法を用いてグループ通話をスタートしたいときに、A加入者、この場合は、加入者ステーションMS(A2)がグループ通話設定要求705をSwMIへ送る。無線システムの交換機は、次いで、ベースステーションBSを経て、本発明による通話情報メッセージ706(図6について詳細に述べる)をB加入者MS(B)へ送信し、これは、その後に、A加入者により確立されたグループ通話をそれが参加するグループ通話として選択する。B加入者がA加入者により確立されたグループ通話を選択しそして通話情報メッセージにより指示されたグループ通話がその基本的な形式の確認されたグループ通話である場合に、B加入者は、このグループ通話を選択するときに、公知技術によれば、確認メッセージ、例えば、u_presentメッセージを送信し、A加入者及びシステムにグループ通話に加わることを知らせる。対応的に、B加入者が確認されたグループ通話から離脱する場合は、システムにu_disconnectメッセージを送信し、グループ通話から切断されることをシステムに知らせる。これらメッセージは、両方とも、B加入者からトラフィックチャンネルに特有の信号チャンネルを経てシステムヘ送信される。」
(公報第16ページ?第18ページ)

(シ) 「図9は、通話情報メッセージを受け取るときの図2に示す加入者ステーション200のコントロールユニット205の動作を示す流れ線図900である。通話情報メッセージ(D_late_setup)--その内容は図6に関連して説明しそしてその送信は図8に関連して説明する--を受信すると(901、902)、加入者ステーションはメッセージをデコードする(902)。その後に、通話情報メッセージが正しい加入者ステーションヘ送られたかどうか調べ(903)、もしそうでなければ(905)、加入者ステーションにおけるメッセージの処理が終了となる(906)。通話情報メッセージ(D_late_setup)が正しい加入者ステーションによって受け取られた場合には(904)、その通話情報メッセージに含まれたデータが新しいものかどうか調べ(907)、もしそうでなければ(908)、加入者ステーションにおけるメッセージの処理は終了となる(909)。通話情報メッセージが新しいものである場合には(910)、そこに含まれたデータが、メモリ(図2の209)に記憶される(911)。その後に、メッセージが確認されるべきグループ通話サービスに関連しているかどうか調べる(911a)。確認されるべきグループ通話に関連している場合には(912)、確認が移動電話システム又はSwMIに送られる。確認されるべきグループ通話に関連していない場合には、確認なしでルーチンが続けられる(914)。その後に、通話情報メッセージに関連したグループ通話がいわゆるオーバーライド優先順位を有するかどうか調べ(915)、換言すれば、加入者ステーションが、ユーザ選択を行うことなく、それ自身をあるグループ通話チャンネルに同調させねばならないかどうか調べる。オーバーライド優先順位の場合に、加入者ステーションは、そのチャンネルを聞くようにその無線を同調する(918)。オーバーライド優先順位に関与しない場合には(917)、無線がオーバーライド優先順位により新たなチャンネルに同調されたとき(918)と同様にディスプレイが更新される(920)。ディスプレイが更新されるときには(920)、受け取った通話情報メッセージ(D_late_setup)に関連したグループ通話の識別子が、加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイ(図3の303)に表示される。通常のグループ通話の場合には、加入者ステーションのユーザは、カーソル(図3の305)又は考えられる選択ボタン(図3の304)を用いることにより、参加するグループ通話を選択することができる。オーバーライドグループ通話、即ちオーバーライド優先順位が与えられたグループ通話の場合には、聞かれるグループ通話が変更されたことだけがディスプレイに示され、そしてその新たなグループ通話のデータも示される。当然、多数の種類の優先順位が存在し、本発明の実施形態によれば、加入者ステーションの受信器-送信器は、最も高い優先順位をもつグループ通話を聞くようにそれ自身を同調する。」
(公報第20ページ?第21ページ)

以上の記載によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

複数のベースステーション(BS1-BSN;BS)と,加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)とを含む無線システムにおけるグループ通話方法であって,
加入者ステーション(MS(A1),MS(B);200)が第1のグループ通話に参加し;
その第1のグループ通話中にグループ通話データ(図6)が加入者ステーション(MS(B);200)へ送信されて(706;図8,811)、加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)が別の進行中グループ通話に参加できるようにし;
加入者ステーション(MS(B);200)は第1のグループ通話に参加し続けるか,又はもし所望であれば,その加入者ステーションにグループ通話データ(図6)が送信された(706)グループ通話(303,304)の中から別のグループ通話を選択する(図10)という段階を備え,
上記グループ通話データ(図6)は,グループ通話の優先順位(609)を含み,そして
上記加入者ステーション(MS(B);200)は,最も高い優先順位を有するグループ通話へ移動し,
最も高い優先順位は,それを受け取ったときに加入者ステーションがあるグループ通話に参加するように強制するオーバーライド優先順位であり,
加入者ステーションは,ユーザ選択を行うことなく,それ自身をあるグループ通話チャンネルに同調させねばならないかどうか調べ,オーバーライド優先順位の場合に,加入者ステーションは,そのチャンネルを聞くようにその無線を同調し(918),オーバーライド優先順位に関与しない場合には(917),無線がオーバーライド優先順位により新たなチャンネルに同調されたとき(918)と同様にディスプレイが更新され(920),ディスプレイが更新されるときには(920),受け取った通話情報メッセージ(D_late_setup)に関連したグループ通話の識別子が,加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイ(図3,303)に表示され,
上記加入者ステーション(MS(B);200)のユーザが、その加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイ(207,302)に識別子が表示されたグループ通話の中から別のグループ通話を選択し(1001)、従って、加入者ステーションがもはや第1グループ通話に参加しなくなったときに、システム(SwMI)に新たなグループ通話に参加する確認を送信して(1010)、無線システムのシステムコントローラ(100)にその新たなグループ通話の識別子を同時に知らせ,
上記システムコントローラ(100)は,
通話及び信号メッセージを無線システムのベースステーション(BS1-BSN)へ送信するためのインターフェイスユニット(110)と;
加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)の間,又は無線システムに関連した遠隔通信ネットワークの加入者ステーション(200)と加入者との間で通話を交換するための交換マトリクス(108)と;
加入者ステーション(200)及び無線リソースのデータを維持するためのメモリ手段(107)と;
無線システムの交換マトリクス(108)及びベースステーション(BS1-BSN)を制御するためのコントロールユニット(101)とを備えたシステムコントローラにおいて,
第1グループ通話中にグループ通話データ通話情報メッセージ(D_late_setup)を加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)へ送信し(811),加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)が別の進行中グループ通話に参加できるようにするためのグループ通話コントロールユニット(102)を更に備えるシステムコントローラである
グループ通話方法。

イ 引用例2
原査定の理由に引用された特表2004-535097号公報(平成16年11月18日公開。以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載(下線は当審が付与。)されている。

(ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、通信システムに係り、より詳細には、通信システムにおけるパケットモードスピーチ通信に係る。
【背景技術】 【0002】 移動通信システムとは、一般に、ユーザがシステムのサービスエリア内を移動するときにワイヤレス通信を行うことのできるテレコミュニケーションシステムを指す。典型的な移動通信システムは、公衆地上移動ネットワーク(PLMN)である。移動通信ネットワークは、ほとんどの場合に、外部ネットワーク、ホスト、又は特定のサービスプロバイダーによりオファーされるサービスへのワイヤレスアクセスをユーザに与えるアクセスネットワークである。
【0003】 プロフェッショナル移動無線又はプライベート移動無線(PMR)システムは、主として、警察、軍事、オイルプラント等の専門及び政府ユーザのために開発された専用無線システムである。PMRサービスは、専用のPMR技術で構築された専用のPMRネットワークを経てオファーされている。この市場は、アナログ、デジタル、従来型及びトランク式等の多数の技術に振り分けられるが、どれも支配的な役割をもたない。TETRA(地上トランク式無線)は、デジタルPMRシステムのためにETSI(ヨーロピアン・テレコミュニケーションズ・スタンダーズ・インスティテュート)により規定された規格である。米国特許第6,141,347号は、グループコールにマルチキャストアドレッシング及び分散型処理を使用するワイヤレス通信システムを介している。
【0004】 PMRシステムにより与えられる1つの特殊な特徴は、グループ通信である。ここで使用する「グループ」という用語は、同じグループ通信、例えば、コールに参加するよう意図された3人以上のユーザの論理的なグループを指す。グループは、論理的に形成され、即ちネットワーク側に維持された特殊なグループ通信情報が特定のユーザを特定のグループ通信のグループに関連付ける。この関連付けは、容易に形成し、変更し又は取り消すことができる。同じユーザが2つ以上のグループ通信グループのメンバーであってもよい。通常、グループ通信グループのメンバーは、警察、消防団、民間会社等の同じ組織に属する。又、通常、同じ組織は、多数の別々のグループ、即ち1組のグループを有する。
【0005】 グループコールは、典型的に、長時間(最長数日間)のもので、その間に通信がめったに行われずそして各対話は通常短いものである。全アクティブトラフィックは、例えば、1つのコール中に15分に過ぎない。各トークバースト即ちスピーチアイテムは、既存のPMRシステムでは平均長さ7秒である。それ故、無線チャンネル又は他の高価なシステムリソースは、常時割り当てることができない。というのは、サービスが著しく高価なものになってしまうからである。プッシュ・ツー・トーク(押して話す)特徴をもつグループ通信は、この問題を克服するPMRネットワークの重要な特徴の1つである。一般に、「プッシュ・ツー・トーク、リリース・ツー・リッスン(押して話し、放して聞く)」特徴をもつグループボイス通信では、グループコールは、スイッチとして電話に「プレッセル(pressel)(PTT、プッシュ・ツー・トークスイッチ)を使用することをベースとし、即ちPTTを押すことによりユーザが話したいことを指示し、ユーザ装置がサービス要求をネットワークに送信する。ネットワークは、その要求を拒絶するか、又は要求されたリソースを、リソースの入手性、要求を発しているユーザのプライオリティ等の所定の基準に基づいて割り当てる。同時に、特定の加入者グループにおける他の全てのアクティブなユーザにも接続が確立される。ボイス接続が確立された後、要求を発しているユーザが話しをし、そして他のユーザは、チャンネル上でそれを聞くことができる。ユーザがPTTを放すと、ユーザ装置が解除メッセージをネットワークへ信号し、リソースが解除される。従って、リソースは、実際のスピーチトランザクション即ちスピーチアイテムに対してのみ予約される。」
(公報第12ページ?第13ページ)

(イ) 「【0031】 再び図1を参照すれば、ブリッジ10は、VoIPパケットをユーザターミナルへ、それらのグループメンバーシップ、それらのスキャニング設定、及び最終的なプリエンプション又は非常事態に基づいてリアルタイムで配布する役割を果たす。各ブリッジは、CPSによりプログラムされた有効な接続間でのみトラフィックを転送する。ブリッジ10は、次の機能の1つ以上を実行する。
入力チェック:トラフィックソースを識別しそして認証する(任意であるが、以下に説明するリーダーRTPパケットにおけるニューモニックは、ここで処理されねばならない)。又、入力チェックは、セキュリティ手順を実行しそしてサポートするアクションも含む。
【0032】 入力フィルタリング:グループにおいて一度に1人の話し手だけが話す(即ちスピーチアイテムを許可する)ように管理し、そして任意であるが、高いプライオリティのボイスアイテムにプライオリティを与える。
増倍:フィルタリングプロセスの後に、ブリッジ10は、トラフィックが向けられるグループのアクティブなメンバーをチェックし、そして各アクティブなメンバーに対する「ダウンリンク」パケットを到来するパケットから発生する。
スキャニングフィルタリング:同じユーザに向けられる多数の到来するトラフィックストリームから、ユーザのスキャニング設定に基づきユーザ受信者へ転送されるべきものを選択する。」
(公報第21ページ)

(ウ) 「【0111】 スキャニングフィルタリング
現在のPMRシステムでは、ユーザにアドレスされた全てのトラフィックが自分のターミナルに配送され、このターミナルは、フィルタリング機能をローカルで実行して、ユーザが聴取したい単一トラフィックを再生する。このタスクは、ユーザのスキャニング設定に基づいて行わねばならず、そしてプライオリティの高いグループ又は非常コールから到来するトラフィックの最終的オーバーライドをサポートしなければならない。
【0112】 ターミナルで再生されないトラフィックを送信するためのダウンリンクにおける帯域巾の浪費を回避するために、フィルタリング機能は、ネットワークにおいて前もって実施されねばならないことが明らかであり、これは、好ましい実施形態に基づいてネットワークアーキテクチャーにPoCブリッジ10を導入するための動機の1つである。
【0113】 この点におけるブリッジ10の役割は、2つの直列のプロセス、即ち図13に示すようなグループ及びユーザ特有のプロセスとして考えられる。グループ特有のプロセスでは、G-UPF21は、グループの全てのアクティブなメンバーへ転送されねばならないか、又は本発明の好ましい実施形態では、トラフィックストリームの行先であるグループ内のアクティブなメンバーを有するU-UPFへ転送されねばならない多数のパケットストリームにおいて到来するトラフィックを増倍しなければならない。ユーザ特有のプロセスでは、U-UPF20は、ユーザにアドレスされた多数の考えられるトラフィックストリームのどの1つを実際にユーザに転送する必要があるか判断しなければならない。又、U-UPFは、グループトラフィックを受信するユーザごとにその現在スキャニング設定に基づいてストリームを増倍する(U-UPFが2人以上のユーザにサービスする場合)。送信トラフィックは、通常、現在聴取されるグループからのトラフィックであるが、時には、オーバーライドトラフィックストリームのこともある。
【0114】 会話の連続性を確保するために(即ち、聴取者がコヒレントな一連の送信を受け取るよう確保するために)、U-UPF20に特定のタイマーが設けられる。このタイマーの機能は、会話中のあるタイムアウトより長い休止がない限り、ユーザが同じグループ(又は個々のコール)において連続的トークスパートを受け取るよう保持することである。ここで
は、その典型的な値は、2ないし15秒である。
【0115】 原理的に、これは、このタイマーの時間中、スキャニングプロセスが各パケット後に受信グループにロックすべきであることを意味する。タイマーは、U-UPFに配置され、そしてタイマー値は、グループ特有であるのが好ましい。又、グループ及び個々のトラフィックに対して異なるタイムアウトを使用するのが望ましい。しかしながら、ユーザにアドレスされた現在聴取されるストリームよりプライオリティの高いトラフィックがU-UPFに到着したときには、プライオリティの高いストリームが、プライオリティの低いトラフィックを直ちにオーバーライドし、会話連続性タイマーは何の作用も与えない。
【0116】 スキャニングフィルタリングプロセスを実施する例が図14に示されている。ステップ141において、プロセスは、G-UPF21(グループ通信)或いは別のユーザ又はU-UPF(1対1通信)からU-UPF20へ到着する多数の(即ち2つ以上の)ボイスパケットトラフィックストリームの1つを選択し、そして選択されたトラフィックストリームをユーザへ転送する。他の到着するトラフィックストリームは破棄され、即ちユーザへ転送されない。選択がなされると、タイマーが所定値「休止周期」、即ち選択されたトラフィックストリームにおける2つの連続するボイスパケット間の最大時間周期にセットされる(ステップ142)。ステップ143では、プロセスは、新たなRTPパケットが受け取られたかどうかチェックする。新たなRTPパケットが到着した場合には、先ず、ステップ145において、そのパケットが以前のパケットよりプライオリティの高いストリームに属するかどうかチェックされる。このパケットが、ユーザのスキャニング設定に基づき、以前のものより高いプライオリティをもたない場合には、プロセスがステップ146へ進み、タイマーがリセットされると共に、パケットがユーザに送信される。その後、プロセスは、ステップ143へ戻る。ステップ145において、新たなパケットが、以前のものよりプライオリティの高いストリームに属すると分かった場合には、新たなパケットがユーザへ送信され、そしてタイマーがリセットされる(ステップ147)。その後、プロセスは、ステップ143へ戻る。新たなパケットが受け取られない場合には、タイマーが時間切れしたかどうかチェックされる(ステップ144)。タイマーが時間切れしない場合には、プロセスはステップ143へ戻る。タイマーが時間切れした場合には、プロセスは、選択されたトラフィックストリームを中断すべきと考え、そしてステップ141へ戻って、新たなトラフィックストリームを選択する。」
(公報第37ページ?第38ページ)

以上の記載によれば,引用例2には,次の技術(以下「引用例記載技術」という。)が記載されているといえる。

「同じユーザに向けられる多数の到来するトラフィックストリームから,ユーザのスキャニング設定に基づきユーザ受信者へ転送されるべきものを選択するものであり,ユーザにアドレスされた全てのトラフィックが自分のターミナルに配送され,このターミナルは,フィルタリング機能をローカルで実行し,ユーザが聴取したい単一トラフィックを再生するものであって,プライオリティの高いグループ又は非常コールから到来するトラフィックの最終的オーバーライドをサポートする」技術。

ここで,上記「トラフィック」が「自分のターミナル」に「割り当てられた通信チャネルを介して」受信されることは,当然である。
また,上記「ユーザにアドレスされた全てのトラフィックが自分のターミナルに配送され」ることが,「自分のターミナル」が複数のトラフィックを「同時に受信」できることを技術的に意味することは明らかである。

(2)29条2項に関する判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明を比較する。

(ア) 引用発明における「加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)」は,本願補正発明における「無線デバイス」及び「メンバーデバイス」に相当し,
引用発明における「ディスプレイ(207,303)」は,本願補正発明における「表示デバイス」に相当する。
そして,上記「加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)」が音声通話を行うことは当然であるから,上記「加入者ステーション」が「音声デバイスを有する」ことは明白である。
また,本願補正発明における「音声デバイスでプレーする」ことが,「無線デバイスで音声通話をする」ことを意味することは技術常識に照らせば明らかである。

(イ) 本願補正発明における「プッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信」は,「そのグループの全てのメンバーデバイスと通信することが可能な複数の無線デバイスで構成される」ものである。
他方,引用発明における「グループ通話」が,そのグループ通話に参加する加入者ステーションと通信することが可能な複数の加入者ステーションで構成される」ものであることは明白である。
このことは,本願補正発明における「プッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信」が,2つのあるいはグループの無線通信デバイスの間で無線通信を行う点において,引用発明における「グループ通話」と共通することを示している。
そして,引用発明における「加入者ステーション(MS(B);200)」は別のグループ通話を選択し参加できるものであるから,該「加入者ステーション(MS(B);200)」が「複数のグループ通話に加入する」ことは明らかである。

(ウ) 引用発明における「加入者ステーション(MS(B);200)」は,ディスプレイの表示を基に別のグループ通話を選択し参加できるものである。さらに,引用発明における「グループ通話」は「無線システム」によって行われるものである。
これらのことから,引用発明は,上記ディプレイによって,「無線ネットワーク上で複数のグループ通話をモニターすることを可能」にしているといえる。

(エ) つまり,上記(ア)?(ウ)から,引用発明は,「音声デバイスさらに表示デバイスを有する無線デバイスが無線ネットワーク上で複数のグループ通話をモニターすることを可能にする」方法を開示し,また,「各グループがそのグループの全てのメンバーデバイスと通信することが可能な複数の無線デバイスで構成される、複数のグループ通話に加入する」ことを開示しているといえる。

(オ) 本願補正発明における「主要なPTT通信グループからのPTT通信」は,「主要でないPTT通信からの通信を中断し,受信された主要なPTT通信グループからのPTT通信を無線デバイスの音声デバイスでプレーする」ようにするものである。
他方,引用発明における「最も高い優先順位を有するグループ通話」は,「加入者ステーション」を該「最も高い優先順位を有するグループ通話」に参加することを強制するものである。
このことは,引用発明において,オーバーライド優先順位である,つまり,最も高い優先順位を有するグループ通話に参加することを強制することは,ユーザが最も高い優先順位を有さないグループ通話に参加していた場合,最も高い優先順位を有さないグループ通話が中断され,受信された最も高い優先順位を有するグループ通話に参加し通話を行うようになることを示している。
また,引用発明における「オーバーライド優先順位に関与しない場合には(917),無線がオーバーライド優先順位により新たなチャンネルに同調されたとき(918)と同様にディスプレイが更新され(920),ディスプレイが更新されるときには(920),受け取った通話情報メッセージ(D_late_setup)に関連したグループ通話の識別子が,加入者ステーションのユーザインターフェイスのディスプレイ(図3,303)に表示され」ることが,「最も高い優先順位を有するグループ通話をしているときに,オーバーライド優先順位に関与しない,つまり,最も高い優先順位ではないグループ通話を中断することなく,該最も高い優先順位ではないグループ通話の情報をディスプレイに表示する」ことを示している。
そうすると,引用発明における「グループ通話」の「最も高い優先順位を有する」,「オーバーライド優先順位に関与しない(最も高い優先順位ではない)」が技術的に意味することは,それぞれ,本願補正発明における「PTT通信」の「主要な」,「主要でない」が技術的に意味することと共通する。

このことは,引用発明における「加入者ステーション(MS(B);200)は,最も高い優先順位を有するグループ通話へ移動」することと,本願補正発明における「主要なPTT通信グループを選択する」ことが「主要なグループ通話を選択する」点で共通することを示している。

そして,引用発明における「システムコントローラ(100)」は,「加入者ステーション(MS(A1),MS(A2),MS(B);200)の間,又は無線システムに関連した遠隔通信ネットワークの加入者ステーション(200)と加入者との間で通話を交換するための交換マトリクス(108)」を備えるものである。よって,「加入者ステーション」は,該「システムコントローラからの少なくとも1つのグループ通話」を受信し,「主要なグループ通話若しくは主要でないグループ通話のいずれかからの少なくとも1つのグループ通話を受信」することは,明らかである。

つまり,本願補正発明における「PTTサーバ」と引用発明における「システムコントローラ」は,「そこからの少なくとも1つのグループ通話であって主要なグループ通話若しくは主要でないグループ通話のいずれかからの少なくとも1つのグループ通話を受信」される点において共通する「サーバ」であるといえる。
そして,引用発明における「加入者ステーション」に受信されることにより,「少なくとも1つのグループ通話を音声デバイスでプレーする」ことを明らかである。

また,引用発明は,「主要でないグループ通話からのグループ通話が前記音声デバイスでプレーしているときに前記主要なグループ通話からのグループ通話が前記無線デバイスにおいて受信された場合,前記主要でないグループ通話からのグループ通話を中断し,受信された前記主要なグループ通話からのグループ通話を前記無線デバイスの前記音声デバイスでプレーし,前記主要なグループ通話からのグループ通話が音声デバイスでプレーしているときに前記主要でないグループ通話からのグループ通話が受信された場合,前記主要なグループ通話からのグループ通話の前記音声デバイスでのプレーを中断することなく,前記主要でないグループ通話からのグループ通話に関する情報を前記表示デバイスで表示する」ことを開示しているといえる。

以上から,本願補正発明と引用発明は,次の点で一致し,相違するといえる。

[一致点]
音声デバイスさらに表示デバイスを有する無線デバイスが無線ネットワーク上で複数のグループ通話をモニターすることを可能にする方法であって,
前記方法は,
各グループがそのグループの全てのメンバーデバイスと通信することが可能な複数の無線デバイスで構成される、複数のグループ通話に加入するステップと,
主要なグループ通話を選択するステップと,
サーバからの少なくとも1つのグループ通話であって前記主要なグループ通話もしくは主要でないグループ通話のいずれかからの少なくとも1つのグループ通話を受信し,前記少なくとも1つのグループ通話を前記音声デバイスでプレーするステップと,
前記主要でないグループ通話からのグループ通話が前記音声デバイスでプレーしているときに前記主要なグループ通話からのグループ通話が前記無線デバイスにおいて受信された場合、前記主要でないグループ通話からのグループ通話を中断し,受信された前記主要なグループ通話からのグループ通話を前記無線デバイスの前記音声デバイスでプレーするステップと,
前記主要なグループ通話からのグループ通話が音声デバイスでプレーしているときに前記主要でないグループ通話からのグループ通話が受信された場合、前記主要なグループ通話からのグループ通話の前記音声デバイスでのプレーを中断することなく,前記主要でないグループ通話からのグループ通話に関する情報を前記表示デバイスで表示するステップと,
を備える。

[相違点1]
本願補正発明における「グループ通話」は「プッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信」であるのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。

[相違点2]
本願補正発明における「無線デバイス」は「複数のPTT通信グループからのPTT通信を,割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能である」ものに対して,引用発明にはそのような特定がない点。

イ 相違点に対する検討
相違点1,2について
引用例2(【0005】)等にも記載されているように,複数のユーザにより通信を行う際に,「プッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信」により行うことは,周知であり,引用発明における「グループ通話」に周知技術を適用し,本願補正発明のように構成することは,当業者が適宜なしえたことである。

そして,PTT通信が,「ボイス接続が確立された後、要求を発しているユーザが話しをし、そして他のユーザは、通信チャンネル上でそれを聞くことができるものである」ことは,技術常識である。

また,引用発明が,複数のグループ通話の1つを選択し,選択したグループ通話に参加することを開示する無線システムであることは明白である。
このことは,引用発明における複数のグループ通話の1つの選択が,システムコントローラ又は加入者ステーションで行いうることを示している。
つまり,引用発明に引用例記載技術を適用し,「複数のグループ通話からのグループ通話を,割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能である」ようにすることは,当業者が容易になし得ることを示している。

そして,本願補正発明のように構成したことによる効果も,引用発明,引用例記載技術及び,周知技術から予測できる程度のものである。

したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例記載技術及び,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 29条2項に関するまとめ
以上のとおりであるから,本願補正発明は,特許法第29条第2項に該当し,特許を受けることができない。

3.36条4項1号に関する検討
本件補正により,平成24年6月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明に対し,「なお、前記無線デバイスは、前記複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能である」とする事項が附された。

そして,請求人は,上記附した事項に関して,平成25年2月4日付け審判請求書(以下,単に「審判請求書」という。)及び同年9月18日付け回答書(以下,「審尋回答書」という。)において,それぞれ次の事項(1)及び(2)の主張をしている。

(1) 審判請求書に記載された主張
請求人は,審判請求書における3.(1),(3),(5)において,次の主張を概略している(下線は当審が付与。)。

ア 「(1)引用文献1の第20ページ第15行目?第21ページ第10行目及び図9には、通話情報メッセージが新しいものである場合の加入者ステーションにおける処理について記載されており、新しい通話情報メッセージに関連したグループ通話がいわゆるオーバーライド優先順位を有する場合には、加入者ステーションはそのチャンネルを聞くように同調し、オーバーライド優先順位に関与しない場合には、無線がオーバーライド優先順位により新たなチャンネルに同調されたときと同様にディスプレイが更新されることが記載されている。しかしながら、引用文献1には、新しい通話情報メッセージに関連したグループ通話がオーバーライド優先順位に関与しない場合に、進行中のグループ通話をそのまま継続するかどうかについて記載されていない。」

イ 「(3)本願の例えば請求項1に係る発明は、主要なPTT通信が音声デバイスでプレーしているときに主要でないPTT通信が受信された場合に、前記主要なPTT通信の音声デバイスでのプレーを中断することなく、前記主要でないPTT通信に関する情報を表示デバイスで表示することによって、無線デバイスが複数のPTT通信グループを同時にモニターすることを可能とし、また例えば請求項8に係る発明は、主要なPTT通信が第2のユーザーデバイスに送信されているときに主要でないPTT通信が受信された場合に、前記主要なPTT通信の第2のユーザーデバイスへの送信を中断することなく、前記主要でないPTT通信に関する情報を第2のユーザーデバイスに送信するようにしており、それによって、第2のユーザーデバイスが複数のPTT通信グループを同時にモニターすることを可能としており、このような構成を備える本願発明は引用文献1には開示されていない。」

ウ 「(5)以上に述べた通り、本願発明は引用文献1及び2には開示されていない特有の構成を備えるものであり、これらの引用文献から容易に想到し得るものではないと思料するが、出願人は、本願発明と引用文献1との相違をより明確にするために、この意見書と同時に提出した手続補正書によって特許請求の範囲を補正した。
例えば補正後の独立請求項1は、無線デバイスが複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信可能であることを規定し、例えば補正後の独立請求項8は、PTT通信サーバが複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に送信可能であることを規定しており、補正後の他の独立請求項14、19、20、27、33、35及び36も補正後の独立請求項1及び8と同様の構成を備えるが、これら補正により追加された構成要件は、引用文献1、2のいずれにも開示されていない。
なお、これらの補正は、本願明細書の段落[0010]における「システムはまた無線通信ネットワークを通してサーバと通信することができるユーザーデバイスを含み、このユーザーデバイスは複数のPTT通信グループからのPTT通信を同時に受信して、もしサーバから主要なPTT通信を受信したならば、プレー中のPTT通信を中断する」という記載、段落[0015]における「PTT通信中、無線通信デバイス102は、割り当てられた通信チャネル上で音声データを送受信し、制御データはデータチャネルによって送受信される」という記載、及び段落[0020]における「もし、サーバ404が主要なPTT通信を無線デバイス402に送信している時に同じ無線デバイス402宛ての他のPTT通信(主要な通信もしくは主要でない通信のいずれか)を受信した場合は、サーバ404は主要なPTT通信の送信を中断することなく、その代わりにサーバ404は入ってくるPTT通信に関する情報を無線デバイス402に送る」という記載に基づく。」

(2) 審尋回答書に記載された主張
請求人は,審尋回答書における2.(1)及び(3)において,次の主張を概略している(下線は当審が付与。)。

ア 「引用文献1の発明においては、他の進行中のグループ通話への参加を選択した場合は、現在参加しているグループ通話で使用しているチャンネルから、通話情報メッセージ600で指定されたチャンネルに切り換えられる。つまり、現在参加しているグループ通話のチャンネルと他の進行中のグループ通話のチャンネルとは同じではなく、従って両方のグループ通話を同時に受信することはできない。」(審尋回答書2.(1))

イ 「引用文献1の図12は、単に、スピーチ1202(SPEECH)及び他の通信グループに関する「通話情報メッセージ」が含まれる「信号120(SIGNALLING)」が時分割で送信されることを示しているに過ぎず、補正後の本願発明における、無線デバイスは複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能であることを示すものではない。」(審尋回答書2.(3))

(当審注 上記請求人の主張における「引用文献1」は,この審決における「引用例1」と同一のものである。)

(3) 請求人の主張に対する当審の見解及び36条4項1号に関する判断
請求人の主張,上記(1)及び(2)を検討するに,請求人の主張は,要するに,「引用例1記載のものは,現在使用しているチャネルから,別のチャネルに切り換えるものであるから,複数のグループを同時にモニター,同時に受信することはできない」というものであると解される。
しかしながら,以下の事項を勘案すると,上記の請求人の主張は,明細書の記載に基づくものではない,また仮に,請求人が主張するとおりであるとするのならば,本願補正発明は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというべきである。

ア 当初国内明細書記載事項
まず,明細書における記載を確認する。
本願に関し,最初に提出された明細書翻訳文(以下「当初国内明細書」という。)における段落【0010】,【0015】及び【0020】の記載(下線は当審が付与。)は,次のとおりである。

「【0010】 他の実施例では、システムは、無線通信ネットワークにおいて無線デバイス間での複数のPTT通信を可能にする。そのシステムは、無線通信ネットワークと通信するサーバを含み、このサーバは多重チャネルを通してユーザーデバイスとの複数のPTT通信を選択的に維持する。システムはまた、無線通信ネットワークを通してサーバと通信することができるユーザーデバイスを含み、このユーザーデバイスは複数のPTT通信グループからのPTT通信を同時に受信して、もしサーバから主要なPTT通信を受信したならば、プレー中のPTT通信を中断する。」

「【0015】 図1は、本発明によって使用される通信ネットワーク100を示す。通信ネットワーク100は1つ以上の通信タワー106を含み、そのそれぞれは基地局(BS)110に接続され、また、通信デバイス102でユーザーにサービスを供給する。通信デバイス102は、プッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信をサポートする携帯電話、ページャー、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータあるいはその他の携帯型、固定、あるいはポータブル通信デバイスである。各ユーザーによるコマンドおよびデータの入力は、デジタルデータとして通信タワー106に送信される。通信デバイス102を使用するユーザーと通信タワー106との間の通信は、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、周波数分割多元接続(FDMA)、グローバル移動体通信システム(GSM)あるいは無線通信ネットワークやデータ通信ネットワークで使用されるその他のプロトコルなどの異なる技術に基づいてもよい。各ユーザーからのデータは通信タワー106から基地局(BS)110に送られ、移動通信交換局(MSC)114へ転送され、交換局(MSC)は公衆交換電話網(PSTN)118およびインターネット120に接続されている。MSC 114は、通信ネットワーク100においてPTT機能をサポートするサーバ116に接続される。オプションとして、サーバ116はMSC114の一部であってもよい。PTT通信中、無線通信デバイス102は割り当てられた通信チャネル上で音声データを送受信し、制御データはデータチャネルによって送受信される。サーバは、また、特定の無線デバイスへのPTT通信の送信を、その無線デバイスからの要求によって抑制する。」

「【0020】 図4は、複数のPTT通信グループをモニタリングしている無線デバイス402を示すダイアグラム400である。無線デバイス402は、1つのPTT通信グループが主要な通信グループである、1つの以上のPTT通信グループのモニターを選択する。1つの主要でないPTTグループ414からPTT通信が受け取られ、無線デバイス402上でプレーしているときに、サーバ404が主要なPTTグループ416からPTT通信を受け取る。サーバ404は、そのPTT通信が主要なPTTグループからであって、また、無線デバイス402に現在送られている音声通信が主要なPTT音声通信でないことを検証し、その後、サーバ404は現在の主要でないPTT音声通信を中断し、主要なPTTグループ416からの主要なPTT音声通信を無線デバイス402に送る。もし、サーバ404が主要なPTT通信を無線デバイス402に送信している時に、同じ無線デバイス402宛ての他のPTT通信(主要な通信もしくは主要でない通信のいずれか)を受信した場合は、サーバ404は主要なPTT通信の送信を中断することなく、その代わりに、サーバ404は入ってくるPTT通信に関する情報を無線デバイス402に送る。情報はデータチャネルによって送られる。情報は、送り手およびPTT通信グループに関する情報を含む。無線デバイス402は、サーバ404から情報を得た後に、主要なPTT通信を中断して主要でないPTT通信を送信するよう要求することができる。」

イ 当審における請求人の主張に対する見解及び36条4項1号に関する判断
当初国内明細書における【0034】には,次の事項が記載されている。
(なお,審判請求書の提出の日まで,明細書翻訳文における発明の詳細な説明に対して,補正及び誤訳訂正はなされていない。)

「【0034】 図8は無線デバイスメッセージプロセス800である。メッセージを受け取った後に、無線デバイスは、それが入ってくるPTT通信かどうかチェックする(ステップ802)。それが入ってくるPTT通信である場合、無線デバイスは音声チャネルをセットアップして、PTT通信を受け取り、プレーする(ステップ804)。メッセージがPTT通信でない場合、無線デバイスはそれがペンディングのPTT通信に関するデータメッセージかどうかをチェックする(ステップ806)。もし、メッセージがPTTデータメッセージでない場合、無線デバイスはエラーメッセージを表示する(ステップ808)。もし、メッセージがPTTデータメッセージである場合、無線デバイスは表示デバイスにデータメッセージを表示し(ステップ810)、また、ユーザーがチャンネルを切り替えて(ステップ812)新しいPTT通信の受信を欲するかどうかをチェックする。ユーザーが新しいPTT通信をモニターすることを選べば、無線デバイスは、チャンネル切り替え要求をサーバに送る(ステップ814)。」

上記【0034】の記載,そして,図8,【0010】及び【0020】における「1つの主要でないPTTグループ414からPTT通信が受け取られ、無線デバイス402上でプレーしているときに、サーバ404が主要なPTTグループ416からPTT通信を受け取る。サーバ404は、そのPTT通信が主要なPTTグループからであって、また、無線デバイス402に現在送られている音声通信が主要なPTT音声通信でないことを検証し、その後、サーバ404は現在の主要でないPTT音声通信を中断し、主要なPTTグループ416からの主要なPTT音声通信を無線デバイス402に送る。」の記載からは,次のことがいえる。

本願補正発明における「前記無線デバイスは、前記複数のPTT通信グループからのPTT通信を、割り当てられた通信チャネルを介して同時に受信することが可能である」とは,「ユーザが主要でないPTT通信グループに参加しているときに,主要なPTT通信をサーバが受信すると,サーバがチャネルを切り替えて,主要なPTT通信グループに,ユーザは参加するようになる。他方,ユーザが主要なPTT通信グループに参加しているときに,主要でないもしくは主要なPTT通信をサーバが受信すると,表示ユニットに表示され,その表示を基に,ユーザがチャネルを切り替えるか否かを選択する。」ことを技術的に意味していると解するべきである。
つまり,「無線デバイスが複数のPTT通信グループを同時に受信する」とは,「無線デバイスが複数のPTT通信グループを,「音声」及び「表示ユニットにおける表示」によって,同時にモニターすること」を意味していると解される。

そうすると,請求人がいう,要するに「引用例1記載のものは,現在使用しているチャネルから,別のチャネルに切り換えるものであるから,複数のグループを同時にモニター,同時に受信することはできない」との主張は,本願の当初国内明細書の記載による「同時に受信する」の意味に基づくものではないといわざるを得ない。
また,請求人の主張の意図するものが,本願補正発明が,複数のグループを同時にモニター,同時に受信するに際し,現在使用しているチャネルから別のチャネルに切り換えずに,現在使用しているチャネルと同じチャネルを使用する発明であるとするものならば,発明の詳細な説明の記載は,本願補正発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。

(5) 当審における請求人の主張に対する見解及び36条4項1号に関する判断のまとめ
上記のとおりであるから,請求人の主張を採用することはできない。
また,仮に,請求人の主張を採用した場合,本願補正発明は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4.補正却下の決定のまとめ
以上のとおりであるから,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定に該当するものである,または,同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって,本件補正は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

上記第2のとおり,本件補正は却下された。
そうすると,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年6月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載(下線は請求人が付与。)された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
音声デバイスを有する無線デバイスが無線ネットワーク上で複数のプッシュ・トゥ・トーク(PTT)通信をモニターすることを可能にする方法であって、
前記方法は、
各グループがそのグループの全てのメンバーデバイスと通信することが可能な複数の無線デバイスで構成される、複数のPTT通信グループに加入するステップと、
主要なPTT通信グループを選択するステップと、
PTTサーバからの少なくとも1つのPTT通信であって前記主要なPTT通信グループもしくは主要でないPTT通信グループのいずれかからの少なくとも1つのPTT通信を受信し、前記少なくとも1つのPTT通信を前記音声デバイスでプレーするステップと、
前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信が前記音声デバイスでプレーしているときに前記主要なPTT通信グループからのPTT通信が前記無線デバイスにおいて受信された場合、前記主要でないPTT通信グループからのPTT通信を中断し、受信された前記主要なPTT通信グループからのPTT通信を前記無線デバイスの前記音声デバイスでプレーするステップと、
前記主要なPTT通信が音声デバイスでプレーしているときに前記主要でないPTT通信が受信された場合、前記主要なPTT通信の前記音声デバイスでのプレーを中断することなく、前記主要でないPTT通信に関する情報を前記表示デバイスで表示するステップと、
を備える。


第4 当審の判断

1.引用例及び引用発明
引用例及び引用発明は,上記「第2 2.(1) 引用例及び引用発明」に記載したとおりである。

2.検討
本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」において検討した本願補正発明から,附された限定を省いたものである。
そうすると,本願発明を特定する事項をすべて含み,さらに,限定を附したのに相当する本願補正発明が,上記「第2 2.29条2項に関する検討」に記載したとおり,引用発明,引用例記載技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明,引用例記載技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例記載技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-21 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-09 
出願番号 特願2008-555454(P2008-555454)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
P 1 8・ 536- Z (H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 昌秋  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 加藤 恵一
近藤 聡
発明の名称 無線システムにおけるマルチプル同時グループ通信のためのシステムおよび方法  
代理人 野河 信久  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 砂川 克  
代理人 井上 正  
代理人 峰 隆司  
代理人 堀内 美保子  
代理人 竹内 将訓  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 直樹  
代理人 福原 淑弘  
代理人 佐藤 立志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 中村 誠  
代理人 白根 俊郎  
代理人 幸長 保次郎  
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