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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A01D |
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管理番号 | 1287475 |
判定請求番号 | 判定2013-600048 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2013-11-27 |
確定日 | 2014-05-19 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4639219号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号物件説明図に示す「型式番号SGB-160のローラー式芝生バリカン」は、特許第4639219号の請求項1?3に係る特許発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号物件説明図に示すローラー式芝生バリカンは、特許第4639219号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 第2 本件特許発明 本件特許第4639219号の請求項1?3に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された以下のとおりのものである。 なお、請求項1は、理解を容易にするため、当審が構成要件に分説した。 「【請求項1】 (A)櫛状の切断刃をハウジングの前方に備え、当該切断刃の左右への往復角運動により刈り込みを行う手持式芝刈機であって、 (B)前記切断刃による刈り込みにより生じた切屑を受け止めるレシーバを具備し、 (C)前記レシーバは、底板を有し、前記ハウジングに対してその取り付け位置を上下方向に変更可能に設けられていることを特徴とする (D)手持式芝刈機。」 「【請求項2】 前記底板は、前記切断刃の下部から前記ハウジングにかけて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の手持式芝刈機。」 「【請求項3】 前記レシーバは、着脱手段を介して前記ハウジングに着脱自在に取り付けられるとともに、前記ハウジングに対するその取り付け位置を前記着脱手段を介して上下方向に変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の手持式芝刈機。」 (以下、本件特許の請求項に係る発明を、その項番号により「本件特許発明1」等という。) 第3 イ号物件 イ号物件の構成は、判定請求書、判定請求書に添付されたイ号物件説明図に基づき、請求人が請求書に記載したもの及び被請求人の主張を参酌して、次のとおりのものと特定する。 【イ号物件】 (a)櫛状のブレード2をハウジング1の前方に備え、当該ブレード2の左右への往復角運動により刈り込みを行う手持ち式芝刈機であって、 (b)ハウジング1を取り囲む面積を有するローラーベース3を具備し、 (c)前記ローラーベース3は、底板4を有し、前記ハウジング1に対してその取り付け位置を上下方向に変更可能に設けられ、 底板4の縁部の全周には上方に向かって立ち上がる凸条が形成され、底板4の中央部にも格子状に上方に向かって立ち上がる凸条が形成された (d)手持ち式芝刈機。 第4 当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、判定請求書において、概略次の理由によりイ号物件は、本件特許発明1?3の技術的範囲に属する旨主張している。 (1)イ号物件は、イ号物件説明図に示すように、ハウジング1の前方に櫛状のブレ一ド2を備えると共に、ハウジング1と一体的にハンドル9を備えるものである。 甲第2号証(イ号取扱説明書)には、イ号のブレード2がカムによっで駆動されることが示されており、イ号のブレード2が左右に往復角運動することは明らかである。 甲第2号証の6頁(図3、図4)には、イ号のブレード2によって芝生の刈り込みが行われることが示されている。 (2)イ号物件説明図に示すように、イ号は、ハウジング1を取り囲む面積を有するローラーベース3をハウジング1の下方に配置するものであり、ローラーベース3が刈り込みにより生じた芝草等の切屑を受け止めることは明らかである。 (3)イ号物件説明図に示すように、ローラーベース3は底板4を有している。この底板4の縁部全周には上方に向かって立ち上がる6mm程度の壁が形成されている。 甲第2号証の6頁(図5)には、ローラーベース3はハウジング1に対する取り付け位置を上下方向に変更可能であり、芝生の刈込み高さを3段階(15/25/35mm)に調整できることが示されている。 (4)イ号物件説明図に示すように、イ号はハウジング1と一体的にハンドル9を備え、ブレード2により芝生の刈り込みを行う手持ち式芝刈機である。 (5)イ号は、本件特許発明の構成要件(1)乃至(4)を全て具備する。そして、イ号は、本件特許発明と同様の作用効果を奏する。よって、イ号は、本件特許発明の技術的範囲に属するものである。 2.被請求人の主張 被請求人は、判定請求答弁書において、イ号物件説明図に示すローラー式芝生バリカンは、特許第4639219号の技術的範囲に属しない理由を次のように主張している。 (1)本件特許発明の「レシーバ」は、請求項1の記載では「前記切断刃による刈り込みにより生じた切屑を受け止める」との機能的な表現により特定されているが、その語句の意味からも「(切屑を)受け止める部材」であることは明らかである。 イ号製品のローラーベースは、イ号物件説明図に示す通り、ハウジングを移動させるためのローラーを保持し、芝刈機全体を水平に保持するためのベース部材である。後述の通り、その形態から、切断刃の上側から落ちてくる切屑やその下側に落ちた切屑を受け止める機能を有していない。 イ号製品のローラーベースの全周縁に立ち上がる6mm程度の壁があると請求人は主張するが、これはローラーベースの強度を保持するためのものである。ローラーベースの中央部分にも強度を保持するためのリブが形成されているが、このリブと同じ高さであることからも明らかである。 仮にイ号製品の使用により、切屑がローラーベース上に落ち込んだとしても、6mm程度の壁では本体の移動により切屑がこぼれ落ちて行くことが明白であって、切屑を受け止める機能をもつ高さとは到底言えない。 しかも、このローラーベース前方には、その縁に壁(前方縁壁)があり、その上端はローラーベースを切断刃の下面に当接している。そのため、切断刃により切断された切屑を下側から受け止められる形態ではない。 また、イ号製品のローラーベースは、切断刃の後部であって、本体の両側に所定高さのローラーを覆うローラーカバーがせり出すように配置されている切断刃により刈り込まれ、切断刃の上側からローラーベース側に落ちる切屑は、このローラーカバーにより阻害されてしまうため、切屑がローラーベースにより受け止められる形態ではない。 (2)本件特許発明の刈り込み高さ調整機構は、「レシーバ」により刈り込み高さを調整するものである。イ号製品は、当該「レシーバ」を有しておらず、その前提を欠く。 また、本件特許発明の「レシーバ」は、取り付け角度を変更することにより、刈り込み高さを変更している。また、長孔による「レシーバ」の高さを変更した場合には、ハウジングの前方にしか位置しない「レシーバ」によりハウジング及び切断刃を支えなければならず、安定的ではない。 イ号製品は、芝刈機の底面全体を覆うようにローラーベースが取り付けられており、このローラーベースのローラーで芝刈機本体を水平方向に安定的に維持した状態で、水平方向の刈り込み高さを調整する機構である。すなわち、芝刈機本体を安定的に保持し、水平方向に維持した状態で刈り込み高さを調整することができる。 第5 本件特許発明1について 1.対比・判断 本件特許発明1とイ号物件とを対比する。 (1)イ号物件の構成a及びdは、本件特許発明1の構成要件A及びDを充足しており、この点について被請求人も争っていない。 (2)イ号物件の構成bと、本件特許発明1の構成要件Bを対比する。 (2-1)本件特許明細書には、構成要件Bの「切断刃による刈り込みにより生じた切屑を受け止めるレシーバ」に関して次のように記載されている。 「レシーバ5は、櫛状の切断刃2による刈り込みにより生じた切屑を受け止めるための捕集具であり、図5及び図6に示すように、手持式芝刈機の左右方向に延びる底板6と、底板6の後部から斜め後方に立ち上がる背板7とを具備する。・・・レシーバ5がハウジング1に取り付けられると、底板6、背板7及びハウジング1との間に切屑を受け止める捕集部が形成される。」(段落【0016】) 「刈り込みにより生じた切屑は手持式芝刈機下に落下することなくレシーバ5の底板6と背板7との間の空所に受け止められレシーバ5上に蓄積する。」(段落【0016】) (2-2)他方、イ号物件の構成bの「ハウジング1を取り囲む面積を有するローラーベース3」は、「底板4を有し」「底板4の縁部の全周には上方に向かって立ち上がる凸条が形成され、底板4の中央部にも格子状に上方に向かって立ち上がる凸条が形成された」ものであるものの、被請求人が「イ号製品のローラーベースの全周縁に立ち上がる6mm程度の壁があると請求人は主張するが、これはローラーベースの強度を保持するためのものである。」「6mm程度の壁では本体の移動により切屑がこぼれ落ちて行くことが明白であって、切屑を受け止める機能をもつ高さとは到底言えない。」「ローラーベース前方には、その縁に壁(前方縁壁)があり、その上端はローラーベースを切断刃の下面に当接している。そのため、切断刃により切断された切屑を下側から受け止められる形態ではない。」等と主張するように、さらに、ローラーベース3の横幅がブレード2の幅よりも狭いものであるように、イ号製品のローラーベースは、その形態が切屑を受け止めるのに適した構成のものではない。 (2-3)そうすると、イ号物件の「ハウジング1を取り囲む面積を有するローラーベース3」は、本件特許発明1の構成要件Bの「切断刃による刈り込みにより生じた切屑を受け止めるレシーバ」には相当しない。 したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明1の構成要件Bを充足していない。 (3)イ号物件の構成cと、本件特許発明1の構成要件Cを対比する。 本件特許発明1の構成要件Cは、「レシーバは、底板を有し、前記ハウジングに対してその取り付け位置を上下方向に変更可能に設けられている」ものであるところ、上記(2)の如く、イ号物件の「ローラーベース3」は、本件特許発明1の構成要件Bの「切断刃による刈り込みにより生じた切屑を受け止めるレシーバ」に相当するものではないので、イ号物件の構成cは、本件特許発明1の構成要件Cを充足していない。 (4)以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件B、Cを充足していないから、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。 第6 本件特許発明2?3について 本件特許発明2?3についても、イ号物件が構成要件B、Cを充足しないことに変わりないので、上記「第5」と同様に、イ号物件は、本件特許発明2?3の技術的範囲に属しない。 第7 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1?3の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2014-05-13 |
出願番号 | 特願2007-238240(P2007-238240) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(A01D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 隆彦 |
特許庁審判長 |
高橋 三成 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 中川 真一 |
登録日 | 2010-12-03 |
登録番号 | 特許第4639219号(P4639219) |
発明の名称 | 手持式芝刈機 |
代理人 | 藤田 典彦 |
代理人 | 藤田 邦彦 |